説明

ネガパターンを有する物品を製造する方法

【課題】
透過膜として使用可能で、厚さ方向に孔の体積分率を連続的に変化させることが可能なネガパターンを有する物品を簡便に得る。
【解決手段】
(1)固化可能で流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけて気相由来の昇華性物質のポジパターンを形成する工程、(2)前記流動性がある材料を固化する工程、(3)昇華性物質を除去する工程、をこの順で行い、前記流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを有する物品を製造する方法を提供する。更に、この方法で製造された電池やキャパシタのセパレーター、更に発泡剤が配合されたセパレーター、及び前記セパレーター中の発泡剤が熱暴走時に発泡し電極間の距離を引き離すことで安全に電流を遮断できる電池又はキャパシタを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固化可能で流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけて気相由来の固体の昇華性物質のポジパターンを形成する工程、(2)前記材料を固化する工程、(3)前記昇華性物質を除去する工程、をこの順で行う、前記材料表面又は表面から内部にかけてネガパターンを有する物品を製造する方法、及び前記製造方法により製造された多孔質パターンを有する物品をセパレーターとして用いる電池、及び前記多孔質パターンを有する物品に更に任意の温度で発泡する発泡剤を含有し、任意の温度以上になると前記セパレーターが発泡して安全に電気の流れを遮断できる電池に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質材料の製造方法としては、水を含んだ水溶性高分子を凍結乾燥させる方法(特許文献1)、水溶性高分子を複合させた樹脂を凍結乾燥させる方法(特許文献2)がある。また、空気中の水分を利用して流動性がある材料表面にパターンを形成する方法として、結露水を利用する方法がある(特許文献3)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−146084号公報
【特許文献2】特開2003−171496号公報
【特許文献3】国際公開第2004/048064号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の凍結乾燥を用いた多孔質材料の製造方法では、固化可能で流動性がある材料に凍結乾燥できる物質を含ませる必要があり、前記凍結乾燥できる物質を含んだ物質に製造方法の適応が限定されており、水が凍結乾燥に用いられる一般的な例については、更にその適応は水溶性の物質や水溶性の物質を懸濁させることなどによって水を安定に含むことができる組成物に限定される。
【0005】
結露水を利用したパターンの製造方法では、パターニングに必要な物質を流動性がある材料に含ませる必要は無いため製造方法の適応範囲は広いが、溶媒の蒸発の潜熱に伴う結露を利用しているため流動性がある材料に揮発性の溶媒を含有させる必要があり、更に液滴でパターニングしているため孔の形状は球の一部に限定される。
【0006】
これらの文献の方法により製造されたパターンの孔はランダムな方向を向いているか球状であるため孔の方向に異方性は無く、透過膜としての性質は理想的な状態に無い。
【0007】
また、凍結乾燥を用いる方法では多孔質材料が得られるが、固化可能で流動性がある材料の表面の全体から多孔質中の揮発性物質が揮発するため、基板やデバイス表面に直接密着した状態で形成することが困難であり、多孔質材料を改めて基板やデバイスに設置する必要がある。
【0008】
また凍結乾燥を用いる方法では、孔の分布は多孔質材料中で概略均一となり多孔質材料の厚さ方向の孔の分布を傾斜させることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意研究を行った結果、(1)固化可能で流動性がある材料(以下、流動性がある材料という)の表面又は表面から内部にかけて気相由来の固体の昇華性物質によるポジパターンを形成する工程、(2)前記材料を固化する工程、(3)前記昇華性物質を除去する工程、をこの順で行うことにより前記材料の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを有する物品を製造できる方法を開発し、これを電池のセパレーターとして利用できることを見出し、更に前記セパレーター中に発泡剤を含有することで熱暴走時に前記含有された発泡剤が発泡し電極間の距離を引き離すことにより安全に電流を遮断できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
よって、第1の本発明は、(1)固化可能で流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけて気相由来の固体の昇華性物質のポジパターンを形成する工程、(2)前記材料を固化する工程、(3)前記昇華性物質を除去する工程、をこの順で行い、前記材料の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを有する物品を製造する方法に関する。
【0011】
また、第2の本発明は、昇華性物質が誘電率及び/又は磁化率に異方性がある物質であり、少なくとも前記材料を固化する前に、更に、前記昇華性物質を電場及び/又は磁場で任意の方向に配向させる工程を含む、ネガパターンを有する物品の製造方法に関する。
【0012】
また、第3の本発明は、ネガパターンが、前記流動性がある材料の表面から内部にかけて孔の体積分率を連続的に変化させたパターンであり、ネガパターンを有する物品を製造する方法、及び前記流動性がある材料の表面から内部にかけて連続的に変化する屈折率を有する物品の製造方法に関する。
【0013】
また、第4の本発明は、(1)電極に塗布した前記流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけて、気相由来の固体の昇華性物質のポジパターンを形成する工程、(2)前記材料を固化する工程、(3)前記昇華性物質を除去する工程、をこの順で行う、ネガパターンを有する物品が表面に形成された電極の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
第1の本発明の物品を製造する方法によれば、低いコストで高速にネガパターンを材料の表面又は表面から内部にかけて形成した物品を製造することが可能である。
【0015】
また、第1の本発明によれば、固体の昇華性物質が概略不溶の流動性がある材料であれば、昇華性物質と流動性がある材料のありとあらゆる組み合わせに対して適応が可能である。特に、氷を昇華性物質として用いた場合、従来の凍結乾燥技術に必要だった水を含有できる流動性がある材料以外にもネガパターンを有する物品を製造することができ、多孔質パターンを有する物品を流動性がある材料としてエネルギー線硬化型樹脂を用いることで連続的かつ高速で製造することもでき、エネルギー線硬化型樹脂として光硬化性のアクリル樹脂プレポリマーや光硬化性のエポキシ樹脂プレポリマーを用いることで、一般的に透明性や耐熱性に優れる熱硬化性の材料でネガパターンを有する物品を製造することも簡便にできる。
【0016】
また、第1の本発明によれば、流動性がある材料を任意の形状に固化することができるため、複雑な形状の物品表面に流動性がある材料からなる塗膜を形成することでその表面に多孔質パターンを簡便に製造することが可能である。
【0017】
更に、第1の本発明を複雑な形状を有する生体材料表面に適用することで多孔質パターンを有する物品を簡便に製造でき、更に流動性がある材料に水を含有しない材料を用いることができるため湿度や水分による溶解の心配が無い多孔質パターンを有する物品を簡便に生体材料表面に製造できる。
【0018】
また、第1の本発明において固化可能で流動性がある材料が接着性を有する場合、任意の材料の表面に多孔質パターンを有する物品を直接製造できる。
【0019】
また、第2の本発明によれば、任意の方向にパターンの異方性を発現できる。
【0020】
また、第3の本発明によれば、前記流動性がある材料の表面から内部にかけて孔の体積分率を連続的に変化させたパターンを有する物品を製造でき、また、前記流動性がある材料の表面から内部にかけて連続的に変化する屈折率を有する物品を製造できる。
【0021】
また、第4の本発明によれば、流動性がある材料が固化後に絶縁性を示す場合、ネガパターンを有する物品をセパレーターに使用することができ、多孔質パターンであるセパレーターを電池もしくはキャパシタの電極表面に直接形成できる。
【0022】
また、第4の本発明で、ネガパターンを有する物品を電池やキャパシタの活物質層にすると、電池活物質層の表面積が大きい電極を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のネガパターンを有する物品を製造する方法は、(1)固化可能で流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけて気相由来の固体の昇華性物質のポジパターンを形成する工程、(2)前記材料を固化する工程、(3)前記昇華性物質を除去する工程、をこの順で行うことで前記材料の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを有する物品を製造することを特徴とする。
【0024】
本発明における固化可能で流動性がある材料は、ネガパターンを形成できる流動性を有し、ネガパターンを形成した後に固化可能であるものをいう。固化可能で流動性がある材料であればあらゆるものを使用でき、例えば、液体や流動性を有する粉体等が挙げられる。液体の場合には、溶融した液体の冷却による固化、固体が溶解した溶液の溶剤を揮発させることによる固化、液状のエポキシ樹脂プレポリマーやアクリル樹脂プレポリマーなどの反応性を有する各種プレポリマーの重合による固化などが利用できる。粉体の場合には、圧着や焼成などによる固化が可能な流動性がある粉体を利用できる。本明細書で例示した流動性がある材料の他にも、固化可能で流動性がある材料ならば、あらゆる材料を用いることができる。なお、液体は、ゲル状、ペースト状などを含む。
【0025】
また、流動性がある材料として、絶縁性材料、導電性材料、これらを混合したものも使用できる。この流動性がある絶縁性材料として、硬化性の有機成分及び無機成分を適宜用いることができる。これらのうち有機成分としては、各種エポキシ化合物、アクリル化合物、シロキサン化合物等のほか、硬化性のモノマーやオリゴマー等のプレポリマーを使用でき、これらをポリマーの状態で融解させたり溶媒に溶解させて使用したり流動性がある微粉末を使用したりすることもできる。これらには熱可塑性樹脂も熱硬化性樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂としては、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、塩化ビニル、メタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、エチレン、アミド、セルロース、イソブチレン、ビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等からなるプレポリマーやポリマーを挙げることができる。また、熱硬化性樹脂としては、尿素、メラミン、フェノール、レゾルシノール、エポキシ、オキセタン、エピスルフィド、イソシアネート、ポリビニルアルコールとポリカルボン酸の混合物、イミド等からなるプレポリマーやポリマーを挙げることができる。また、これらのプレポリマーやポリマーは、硬化剤、重合硬化剤の種類により、光硬化性にすることもできる。これらの化合物は、1種類、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用できる。
【0026】
このような硬化性のプレポリマーを配合する際には、プレポリマーを硬化させるための硬化剤、重合開始剤を必要に応じて配合できる。これらの硬化剤、重合開始剤の種類は、配合するプレポリマーの種類に応じて適宜選択できる。このような硬化剤、重合開始剤としてエネルギー線により反応を開始する化合物を好ましく用いることができる。例えば、アクリルモノマー・オリゴマーの光ラジカル重合型樹脂、ポリエン−チオール硬化系の光マイケル付加型樹脂、エポキシ及びオキセタン及びビニルエーテルモノマー・オリゴマーの光カチオン重合型樹脂が例示できる。また、これら配合には各種公知の光反応増感剤を使用できる。このような光硬化性樹脂を用いることで、パターン形成時の形状を速やかに固定できる。
【0027】
電池のセパレーターとして利用する場合は、電解液として用いられている有機溶媒に不溶な樹脂の利用が好ましく、更に好ましくは水溶性のポリマーであり、その一例として水溶性のポリマーであるポリビニルアルコールやポリビニルアルコールを重合性の置換基であるエポキシ、オキセタン、あるいはアクリル、メタクリル基で変性し三次元的に重合したものが挙げられる。また、電池が異常発熱した際、軟化して孔がふさがるタイプも好ましく、熱で解重合を起こすウレタン変性のアクリル樹脂プレポリマーをラジカル重合して得たアクリル樹脂などをその一例として示すことができる。この場合、ウレタン結合部位が熱によって開裂し、分子量の低下に伴う軟化が起きるタイプを得ることができる。
【0028】
加熱による固化する流動性がある絶縁性材料としては、熱で硬化する樹脂や、溶剤の揮発によって固化する樹脂、ゾルゲル法で得られる金属酸化物等多種多様な材料を用いることができる。
【0029】
また、流動性がある絶縁性材料(以下、流動性がある絶縁材料という)には、公知のホットメルト樹脂を使用できる。
【0030】
また、流動性がある絶縁性材料の無機成分としては、各種金属アルコキシド、各種金属塩化物、水ガラス、コロイダルシリカ、各種ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素フッ化物、金属酸化物、金属窒化物、金属ケイ化物、金属ホスフェートの溶液を使用したり流動性があるこれらの微粉末を使用したりできる。
【0031】
このような無機成分を含む流動性がある絶縁性材料は、ゾルゲル反応や高温焼付け等を用いることで固化でき、またゾルゲル反応の触媒を流動性がある材料に配合することもできる。
【0032】
上記ゾルゲル反応の触媒としては、無機成分を加水分解し重縮合させる、塩酸のような酸;水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムのようなアルカリ;アミン;あるいはジブチルスズジアセテ−ト、ジブチルスズジオクテ−ト、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジマレート、オクチル酸スズ等の有機スズ化合物;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、テトラアルキルチタネート等の有機チタネート化合物;テトラブチルジルコネート、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトライソブチルジルコネート、ブトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物;トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム等の有機アルミニウム化合物;ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等の有機金属触媒等を挙げることができる。これらの中でも、市販品としてジブチルスズ化合物(三共有機化学(株)製SCAT−24)を具体的に挙げることができる。これらの化合物は、1種類、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用できる。
【0033】
これらの有機成分及び無機成分は、必要に応じて単体でも有機・無機の組み合わせでも適宜組み合わせて使用できる。
【0034】
固化可能で流動性がある導電性材料(以下、流動性がある導電性材料という)としては、溶融した金属又は合金等を使用できる。また、溶融させたもしくは溶媒に溶解させた導電性高分子を使用できる。また、これらの導電性材料を流動性がある粉体にして使用でき、焼き固めたり圧縮したりすることにより固化できる。
【0035】
このような金属又は合金として、特に低融点の合金を好ましく使用でき、Sn−Pb系、Sn−In系、Sn−Bi系、Sn−Ag系、Sn−Zn系の合金等を例示できる。
【0036】
次に、このような導電性高分子として、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホナート)などを例示できる。
【0037】
流動性がある材料が絶縁体である場合には、流動性を有する限りにおいて流動性がある材料に導電性フィラーを含有させることができる。このような導電性フィラーとしては、Ag、Cu、Au、Al、Mg、Rh、W、Mo、Co、Ni、Pt、Pd、Cr、Ta、Pb、V、Zr、Ti、In、Fe、Zn等の金属粉末やフレーク、あるいはコロイドを用いることができ、Sn−Pb系、Sn−In系、Sn−Bi系、Sn−Ag系、Sn−Zn系の合金粉末やフレーク、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックやグラファイト、グラファイト繊維、グラファイトフィブリル、カーボンファイバー、活性炭、木炭、カーボンナノチューブ、フラーレン等の導電性炭素系材料、金属酸化物系導電性フィラーとしては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン(二酸化チタン、一酸化チタン等)、これらの化合物等のうち格子欠陥の存在により余剰電子が生成し導電性を示すフィラー、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム、などの導電性のアルカリ金属塩等が挙げられる。このようなフィラーは、1種類、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用でき、更に表面をカップリング剤等で処理したフィラーを利用することも好ましい。また、層間にアルカリ金属を挿入したグラファイト及び/又は粘土層状化合物を配合することでイオン伝導性を向上させることもできる。この場合、電子伝導が起きない程度配合することによって、電子伝導に対しては絶縁でイオン伝導に対しては導電性の物品を製造する事ができる。このような特性を有する物品は、例えば電池用のセパレーターのイオン導電性フィラーとして好ましく用いる事ができる。
【0038】
導電性フィラーは、導電性粒子であることが好ましく、粒子の大きさは形成する部材の大きさよりも小さいほうが更に好ましい。導電性粒子を固化可能で流動性がある絶縁性組成物に配合すると、導電性粒子が固化可能で流動性がある絶縁性組成物中で接触しあうことで導電性を付与することができる。このような導電性粒子としては、上記金属若しくは合金の粉末やフレーク等を使用できる。
【0039】
これらの導電性材料は、必要に応じて単体でも、2種以上の組み合わせでも適宜組み合わせて使用できる。
【0040】
上述のように導電性の粒子を用いて導電性の物品を作製する場合、絶縁性材料の粒子と導電性粒子とを組み合わせた流動性がある材料を固化させて導電性組成物を作製することが可能である。絶縁性材料が液体である場合とは異なり絶縁性材料による導電性粒子の濡れによる被覆がないため、導電性粒子同士が接触しやすく、また導電性粒子自体の抵抗値が低いため、できあがった導電性組成物の抵抗値を低くできる。この絶縁性材料の粒子の流動性を無くし固化する手段としては、焼付けや圧縮固定等の任意の手段を用いることができる。
【0041】
また、流動性がある導電性材料として、イオン性を有する液体を例示できる。イオン性を有する液体としては、イオンが溶解した液体を例示でき、溶媒が水の場合、電解質として塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が例示でき、溶媒がジメチルカーボネート等の有機物の場合、電解質として六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等が例示できる。イオン性を有する液体のその他の例として、イオン性液体を例示できる。イオン性液体の例としては、イミダゾリウム塩誘導体として1,3−ジメチルイミダゾリウムメチルスルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、ピリジニウム塩誘導体として、3−メチル−1−プロピルピリジミウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、アルキルアンモニウム誘導体として、テトラブチルアンモニウムヘプタデカフルオロオクタンスルフォネート、テトラフェニルアンモニウムメタンスルフォネート、ホスホニウム塩誘導体として、テトラブチルフォスフォニウムメタンスルフォネート等を示すことができる。
【0042】
これらのイオン性を有する液体を、本発明の昇華性物質を用いて作製した多孔質材料に含浸させることで、導電性を有する物品を形成できる。
【0043】
更に必要に応じて、流動性がある材料には配合成分に応じて適宜選択した溶媒を含有させることができる。このような溶媒としては凝固した昇華性物質が概略溶解しないものを用いることができ、具体的には炭化水素(プロパン、n−ブタン、n−ペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アミルベンゼン、テレピン油、ピネン等)、ハロゲン系炭化水素(塩化メチル、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、臭化メチル、臭化エチル、クロロベンゼン、クロロブロモメタン、ブロモベンゼン、フルオロジクロロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジフルオロクロロエタン等)、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、2−オクタノール、n−ドデカノール、ノナノール、シクロヘキサノール、グリシドール等)、エーテル、アセタール(エチルエーテル、ジクロロエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルベンジルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、シネオール、メチラール)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−アミルケトン、ジイソブチルケトン、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等)、エステル(ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸−n−アミル、酢酸メチルシクロヘキシル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、ステアリン酸ブチル等)、多価アルコールとその誘導体(エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル等)、脂肪酸及びフェノール(ギ酸、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、無水プロピオン酸、酪酸、イソ吉草酸、フェノール、クレゾール、o−クレゾール、キシレノール等)、窒素化合物(ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジアミルアミン、アニリン、モノメチルアニリン、o−トルイジン、o−クロロアニリン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、アセトニトリル、ピリジン、α−ピコリン、2,4−ルチジン、キノリン、モルホリン等)、硫黄、リン、その他化合物(二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、4,4−ジエチル−1,2−ジチオラン、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メタンチオール、プロパンスルトン、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、ホウ酸アミル等)、無機溶剤(液体アンモニア、シリコーンオイル等)、水等を挙げることができる。
【0044】
流動性がある材料には、更に必要に応じて、安定剤、カップリング剤等を適宜選択して配合することができる。このような安定剤としては、具体的には2,6−ジ−tert−ブチル−フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−フェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチル−フェノール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル−アニリノ)−1,3,5−トリアジン等によって例示されるフェノール系酸化防止剤、アルキルジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン等によって例示される芳香族アミン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3′−チオジプロピオネート、ビス[2−メチル−4−{3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ}−5−tert−ブチル−フェニル]スルフィド、2−メルカプト−5−メチル−ベンゾイミダゾール等によって例示されるサルファイド系ヒドロペルオキシド分解剤、トリス(イソデシル)ホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスファートジエチルエステル、ナトリウムビス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファート等によって例示されるリン系ヒドロペルオキシド分解剤、フェニルサリチラート、4−tert−オクチルフェニルサリチラート等によって例示されるサリチレート系光安定剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等によって例示されるベンゾフェノン系光安定剤、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等によって例示されるベンゾトリアゾール系光安定剤、フェニル−4−ピペリジニルカルボナート、セバシン酸ビス−[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル]等によって例示されるヒンダードアミン系光安定剤、[2,2′−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノラート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケル−(II)によって例示されるNi系光安定剤、シアノアクリレート系光安定剤、シュウ酸アニリド系光安定剤等を挙げることができる。またこのようなカップリング剤としては、具体的にはフッ素系のシランカップリング剤として、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、エポキシ変性シランカップリング剤として信越化学工業株式会社製カップリング剤(商品名:KBM−403)、オキセタン変性シランカップリング剤として東亞合成株式会社製カップリング剤(商品名:TESOX)、あるいは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート、チタニウムラクテートアンモニウム塩、テトラステアリルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリイソステアロイルチタネート、チタニウムラクテートエチルエステル、オクチレングリコールチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、トリイソステアリルイソプロピルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタン系カップリング剤を挙げることができる。これらの化合物は、1種類、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用できる。
【0045】
流動性がある材料が液体の場合は、ぬれを調節するために各種界面活性剤を含有することができる。このような界面活性剤としては、アニオン界面活性剤として、石ケン、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、メチルタウリン酸塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、脂肪酸アルキルベタイン、スルホベタイン、アミノオキサイド等が挙げられ、非イオン(ノニオン)型界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキルエーテル型化合物、ポリオキシソルビタンエステル等のエステル型化合物、アルキルフェノール型化合物、フッ素型化合物、シリコーン型化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種類、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用できる。
【0046】
流動性がある材料は、固化後の機械的強度や熱的特性を向上させるために、必要に応じて各種のフィラーを必要なその他の物性を損なわない範囲で配合できる。絶縁性フィラーとしてはアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物の粉末や、コロイダルシリカやチタニアゾル、アルミナゾル等のゾル、タルク、カオリナイト、スメクタイト等の粘土鉱物、炭化ケイ素、炭化チタン等の炭化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の窒化物、窒化ホウ素、ホウ化チタン、酸化ホウ素等のホウ化物、ムライト等の複合酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ポリプロピレン粉末、ポリエチレン粉末、アラミド繊維状粉末等の樹脂等が挙げられる。このようなフィラーを添加した流動性を有する材料を用いて製造した多孔質材料は強度が高いため、電池用のセパレーターとして好ましく用いることができ、電極間に発生するデンドライトがセパレーターを突き抜けることによって発生する短絡の可能性を下げることができる。
【0047】
流動性がある材料は、上記成分を混合し撹拌することによって溶液、懸濁液又は粉体等として得ることができる。撹拌には、プロペラ式ミキサー、プラネタリーミキサー、ハイブリッドミキサー、ニーダー、乳化用ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等の各種撹拌装置を適宜選択できる。また、必要に応じて加熱又は冷却しながら撹拌できる。
【0048】
流動性がある材料が液体である場合には、ディスペンサーやスクリーン印刷機、インクジェットプリンター等の様々な装置で任意の形状に簡便に印刷したり形成したりできる。また、中空の支持体間にシャボン球のように前記材料の極薄い膜を形成することができ、前記膜の片面あるいは両面あるいは表面から内部にかけてあるいは両面を貫通したパターンを形成できる。
【0049】
昇華とは物質が液体を介さずに固体から気体、気体から固体へと相転移する現象を指し、本発明における昇華性物質とは気体から固体へと相転移する物質と固体から気体へと相転移する物質を指す。工程(1)では、気体から固体へと相転移する性質を用いる。また、工程(3)では固体から気体へと相転移する性質を用いることができるが、流動性がある物質を固化形成した後なら固体から液体へと相転移した後に取り除くこともできる。昇華性物質として、ナフタレン、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン、固体二酸化炭素、ヨウ素、氷を例示することができる。なお、相転移し易さの観点から昇華性物質は蒸気圧が高い方が好ましい。また、流動性がある材料が液体の場合、昇華性物質は前記液体に概略不溶のものが好ましい。
【0050】
本発明におけるポジパターンは、気相由来の固体の昇華性物質により形成されるパターンを指し、昇華性物質の結晶等の形状がポジパターンとなる。この固体の昇華性物質は、流動性がある材料の表面及び表面から内部に侵入し、ポジパターンの形状を流動性がある材料にネガパターンを与えるように形成できる。ここで、気相由来とは、固体の昇華性物質が気体に由来することを示す。気相由来の固体の昇華性物質は、昇華性物質自体の重力、昇華性物質と流動性がある材料との静電的な相互作用などにより、流動性がある材料の内部に進入すると考えられる。
【0051】
工程(1)のポジパターンの形成は、昇華性物質を昇華点以下の温度に冷却することにより達成できる。気相中に存在する昇華性物質は、昇華点以下の温度に冷却すると流動性がある材料の表面で固体となり、ポジパターンを形成する。
【0052】
昇華性物質は氷であることが実用上の観点から好ましく、工程(1)におけるポジパターンの形成が、流動性がある材料を霜点(そうてん)以下に冷却し、空気中の水分を霜として形成させることで達成できる。
【0053】
本発明の工程(2)における流動性がある材料の固化は、エネルギー線照射もしくは加熱による材料の硬化、材料の冷却又は材料中の溶剤の揮発による固化を用いることができる。エネルギー線としては、アルファー線、陽子線、中性子線などの粒子線やベータ線のような電子線、ガンマ線やエックス線や紫外線のような電磁波などが例示できる。特に、昇華性物質のポジパターンは高温になると昇華するので、熱の発生が少なくまた冷却しながら固化できるエネルギー線を用いた硬化を好ましく用いることができる。
【0054】
工程(2)をエネルギー線照射により行う場合には、流動性がある材料がエネルギー線硬化型樹脂又はエネルギー線硬化型接着剤を用いることができる。エネルギー線硬化型樹脂又はエネルギー線硬化型接着剤には、上述のプレポリマー等を用いることができる。
【0055】
活性エネルギー線で硬化する流動性がある絶縁性材料として樹脂を用いる場合、加熱硬化に比べて硬化時の熱の発生が少ないので、熱に弱い昇華性物質や昇華温度が低い昇華性物質を用いることができ、また発泡性物質を含有する物品を製造する場合には発泡温度が低い発泡剤を用いることができる。活性エネルギー線としては、前述の陽子線、電子線、電磁波などを例示できる。また、活性エネルギー線を照射する際の雰囲気は限定されるものではなく、大気、窒素やアルゴン等の不活性ガス、真空中等様々な雰囲気、温度環境下で照射することができる。
【0056】
また、工程(2)は、流動性がある材料が溶融した高分子又は金属、合金等である場合には冷却により行うことができる。
【0057】
溶融状態の流動性がある材料を冷却固化する場合には、流動性がある物質を固化するスピードが速く大量生産が必要な場合に有利である。また、流動性がある材料が発泡性物質を含有し、溶融温度が発泡温度よりも低い場合には、発泡性物質の発泡を速やかにかつ効率よく行うことができ、更に溶融した材料によって発泡に伴う流動性がある物質の破断に伴う破片の発生を防ぐことができる。
【0058】
流動性がある材料が揮発性を有する溶剤を含有する場合には、工程(2)における流動性がある材料の固化を、材料中の溶剤の少なくとも一部を揮発させることにより達成することができる。また、この工程のみにより工程(2)が完了することは必要ではなく、溶剤の揮発により流動性がある材料中のプレポリマー等の密度が高くなった状態でエネルギー線照射による硬化等を行うことにより、硬化時の変形、収縮等を抑制することができる。
【0059】
工程(3)は、昇華性物質を加熱昇華又は減圧昇華することにより容易に行うことが可能である。また、固化した流動性がある材料を実質的に溶解しないが、昇華性物質を溶解する溶剤により行うこともできる。
【0060】
以上の工程を、図1の模式図で示す。
【0061】
ここで、図1は(1)気化した昇華性物質雰囲気1中に固化可能で流動性がある材料2の塗膜が形成された基板3の冷却により、固体の昇華性物質のポジパターン4を流動性がある材料2の表面又は表面から内部にかけて形成させ、次いで(2)流動性がある材料2を固化させた後、(3)昇華性物質を昇華させて除去し、ネガパターン5が形成された物品を製造する方法を示した例である。(a)は気化した昇華性物質雰囲気1中に流動性がある材料2の塗膜を形成した基板3を設置した状態、(b)は流動性がある材料2を昇華性物質の昇華点以下まで冷却し固体の昇華性物質のポジパターン4を流動性がある材料2の表面又は表面から内部にかけて形成した状態、(c)は流動性がある材料を固化した後、昇華性物質を除去させネガパターン5が形成された物品が得られた状態を示している。
【0062】
図1の例の場合、基板3は流動性がある材料2の支持体になっているが、リング状の支持体に流動性がある材料の膜を張りそこに固体の昇華性物質のポジパターンを形成させてパターニングすることや複雑な形状の表面に流動性がある材料の塗膜を形成しパターニングすることも可能であり、特にその実施態様は制限されない。
【0063】
また、本発明のネガパターンとして多孔質パターンを例示することができ、固体の昇華性物質のポジパターンが固化可能で流動性がある材料表面から内部に侵入する場合には表面から内部にかけて貫通した多孔質パターンを形成することができる。
【0064】
次に、図2はネガパターンが固化可能で流動性がある材料の裏面まで貫通している様子を模式的に示す例である。
【0065】
図2(c)に示す様に、固体の昇華性物質のポジパターン4が、流動性がある材料2の裏面まで貫通する場合、貫通したネガパターン5を形成することができる。固体の昇華性物質のポジパターン4が、流動性がある材料2を貫通するかどうかは固体の昇華性物質のポジパターン4の量や結晶の成長度合いによって変わり、冷却時間や温度、昇華性物質雰囲気1中の昇華性物質の濃度を調整することによって決めることができる。また、固体の昇華性物質のポジパターン4の大きさも、冷却時間や温度、昇華性物質雰囲気1中の昇華性物質の濃度、流動性がある材料と個体の昇華性物質間の比重差や静電的な相互作用や濡れ性によって調整できる。
【0066】
本発明のネガパターンを有する物品を製造する方法の一実施態様は、前記固体の昇華性物質が誘電率及び/又は磁化率に異方性がある物質である場合、少なくとも前記材料を固化する前に、前記固体の昇華性物質を電場及び/又は磁場で任意の方向に配向させる工程を含む。
【0067】
ここで図3は、電場及び/又は磁場6を印加することで、固体の昇華性物質を配向させたときの様子と、配向した固体の昇華性物質のポジパターン7を固化可能で流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを形成したときの様子を模式的に示した例である。
【0068】
図3(b)に示す様に、固体の昇華性物質のポジパターン4が誘電率及び/又は磁化率に異方性を有する場合、電場及び/又は磁場6を印加することによって電場及び/又は磁場を印加した方向に対応した方向に配向したネガパターン8を形成できる。
【0069】
ここで、本発明でいう磁場(磁界)H(単位はAT/m=アンペア-ターン/メートル)とは、電荷が動くことによって生じる渦状の場を指し、電荷の動きに力を及ぼす。磁場の強さは磁束密度B(単位はT=テスラ)で表され、磁界と垂直な面積S(m2)を貫く磁力線の数Φ(単位はWb=ウェーバー)を面積で割ったものである。
【0070】
式1 B=Φ/S (Wb/m2=T)
【0071】
このような磁場は、電磁石のように電流を流すことで発生させたり、永久磁石のように物質が持つ電子スピンの磁気モーメントの方向を揃えることで発生させたりすることができる。また、磁束密度Bと磁場Hは、真空中では以下の関係式で表せる。
【0072】
式2 B=μ0
【0073】
ここで、μ0は真空の透磁率で、有理単位で4Π×10−7(ヘンリー/メートル=H/m)、非有理単位で1(無名数)であり、磁束密度Bと磁場強度Hを結びつける係数である。また、磁場中に物質を置いた際の磁束密度Bと磁場の強さHとの比μをμ0で割ったものを透磁率K(ヘンリー/メートル=H/m)という。
【0074】
式3 K=μ/μ0
【0075】
磁場による物質の相互作用の強さは磁化率χで示され、その絶対値が大きい方がより強く物質に磁場が誘起され、誘起した磁場と強い磁気的相互作用を起こす。そして、上述した透磁率Kとは非有理単位で以下の関係式が成り立つ。
【0076】
式4 K=1+χ
【0077】
以下の説明においては、特に断りが無い限り、磁化率χは非有理単位で示す。次に、代表的な物質の磁気異方性を表1に示す。ここで例示したのは、結晶構造に由来する磁気異方性であるが、高分子を延伸して得られた繊維や、磁化率の違う材料を組み合わせた材料等、人工的に磁気異方性を持たせた物質や形状異方性を有する材料に対しても適切な磁場を印加することで配向させることができる。
【0078】
【表1】

【0079】
磁場と物質との相互作用は、磁場の強さと磁化率χの絶対値で決まり、磁場が強く磁化率χの絶対値が大きい軸が磁場に対して平行に配向しようとする力が強くなる。実際にどの方向に向くか(磁化容易軸)は結晶の3軸の磁気異方性の釣り合いで決定される。
【0080】
また、磁気異方性とは、外部磁場によって励起される磁化に対して物質内で異方性を有することをさし、磁場内では磁気的相互作用によりトルクを発生し、より安定な方向に回転する。分子構造に異方性を有する物質は、磁気的にも異方性を持ち、例えば延伸して作った繊維は分子鎖が延伸方向に並んでいるため、繊維方向(//)とそれに垂直な方向(⊥)では磁化率が異なる。繊維が反磁性を示す場合は、その差を反磁性異方性磁化率(χa)と呼び、任意の軸に対する磁化率の差で表す。
【0081】
χa=χ//−χ⊥
【0082】
このような磁気異方性を持つ反磁性物質を強度Bの磁場中に置くと、物質は磁気エネルギーEを獲得する。
【0083】
【数1】

【0084】
ここでμは真空の透磁率、Vは物体の体積、θは磁場と繊維軸方向のなす角度、Bは外部磁場強度である。
【0085】
χa>0の場合には、繊維軸方向が磁場と平行になったほうが磁気エネルギーは小さくなり安定である。その結果、磁場に平行に配向する。
【0086】
このように一軸配向する繊維については、以上のように記述することができる。一方、磁気異方性が三軸で異なる物質は、配向の方向が空間的に決まる。この場合、三軸の磁気異方性の数値から外場に対してどの方向に物質が配向するかが決まる。
【0087】
また、外部磁場が大きいとき、体積が大きいとき、より強く磁気的エネルギーを受けることが式からわかる。
【0088】
磁気異方性を有する物質には、物質内の電子状態に異方性を有するものがある。上述したような繊維の場合、延伸した方向に分子が並ぶことで、結合を通じた電子の流れに異方性が生じる。また、結晶構造に異方性を有する物質も磁場内で配向する。一方、磁気的な異方性が無い場合も物質の形状に異方性を有する場合は配向する。
【0089】
このような物質に磁場を印加すると磁気的に安定な方向に配向するが、例えば一軸回転する磁場を、磁気異方性を有する材料に印加した場合、回転軸に対して物質の磁化困難軸が磁場の回転軸に平行に配向する。また、このように、磁気異方性を有する物質に印加する磁場は前記回転磁場を含め、時間的に磁場の印加方向や強度が変動する磁場を印可することも可能である。
【0090】
以上、磁場中における磁気異方性を有する物質の挙動について述べたが、電場中の誘電率異方性を有する物質の挙動も同等の原理で説明できる。
【0091】
このような磁場配向を行う物質に他の物質をコーティングしたり複合したりすることもできるが、磁場配向を実施する場合は有効な磁気異方性が失われない範囲で行う必要がある。
【0092】
流動性がある材料中で、磁気及び/又は誘電率の異方性を有する物質を磁場及び/又は電場で配向させる場合、熱エネルギーに由来するランダムな回転運動や、粘性抵抗に打ち勝つ必要がある。磁気及び/又は誘電率の異方性が小さい物質を配向させるためには、強い磁場及び/又は電場を用いるのが有利であり、粘度の低い流体を用いることによりプロセスを短時間で終わらせることもできる。
【0093】
また、磁気及び/又は誘電率の異方性を有する物質が沈降しないように、比重を調整した流動性がある材料中で磁場及び/又は電場を用いて配向させることが好ましい。
【0094】
磁気異方性が無い材料を配向させるその他の方法として、磁気異方性の無い材料に異方性を有する物質を配向付着させる方法を用いることができる。この場合、配向付着した異方性を有する物質の異方性によって磁気異方性の無い材料を間接的に磁場配向させることができる。例えば、界面活性剤がその分子間力によって配向付着した扁平な形状の磁気異方性が無い物質は、界面活性剤の磁気異方性によって静磁場でも配向できる。
【0095】
特に、磁場及び/又は電場を用いた配向の観点から述べると、流動性がある材料が液体である場合が好ましく、液体の粘度が低いほど磁場及び/又は電場を用いた配向に対する粘性抵抗が小さくなり、その結果、磁場及び/又は電場による配向をスムーズに行えるため、更に好ましいといえる。これ以外にも、流動性を有する粉や、気体に対しても適応可能であり、材料の種類にはとらわれない。
【0096】
また、磁場もしくは電場は磁化率の高い物質もしくは誘電率の高い物質に吸い込まれ、磁力線もしくは電気力線を曲げることができる。このような特性を利用して磁力線もしくは電気力線を磁化率もしくは誘電率の高い物質からなるパターンに沿って曲げ、曲がった磁力線もしくは電気力線に沿って磁気異方性もしくは誘電率に異方性を有する物質を傾斜配向させることもできる。
【0097】
本発明のネガパターンを有する物品を製造する方法のその他の実施態様は、ネガパターンが、流動性がある材料の表面から内部にかけての孔の体積分率を連続的に変化させたパターンである物品を製造する方法である。工程(1)で形成されたポジパターンの形状がネガパターンとして形成されるため、ネガパターンは、ポジパターンが表面から内部にかけて進入したときの形状になる。よって、表面から内部にかけてパターンの空隙率が連続的に変化したパターンを形成することが可能であり、傾斜材料の作製に応用できる。
【0098】
この応用例として、得られる物品が、流動性がある材料の表面から内部にかけて連続的に体積分率が変化する光の波長以下の直径かつ光の波長以上の深さの空孔を有する場合、屈折率が連続的に変化する傾斜材料を得ることができる。この場合の孔の直径は100nm以下であることが好ましく50nm以下であることが更に好ましく、孔の深さは500nm以上が好ましく1μm以上が更に好ましい。このような材料は空気と固化後の材料の体積分率に比例した連続的な屈折率を有する傾斜材料となり、空気界面の光反射を小さくすることができる。
【0099】
本発明のネガパターンを有する物品を製造する方法のその他の実施態様は、流動性がある材料をガラス表面に塗布したものであり、工程(1)〜(3)によりネガパターンが、ガラス表面に形成される方法である。このネガパターン内には空気層が存在するため、ガラス表面にネガパターンによる断熱効果を持つガラスを製造することに好ましく適応することができる。このネガパターンは多孔質パターンであることが更に好ましく、ネガパターンのサイズは光の波長以下であるほうが透明性の観点から更に好ましい。また、ネガパターン表面の表面張力を表面処理剤などで下げることにより、超撥水表面を形成することもできる。
【0100】
また、本発明のネガパターンを有する物品が表面に形成された電極を製造する方法の態様は、流動性がある材料が接着性を有しかつ少なくとも固化後に絶縁性を示すものであって、(1)電極に塗布した前記流動性がある材料の表面から内部にかけて、気相由来の固体の昇華性物質のポジパターンを形成する工程、(2)前記材料を固化する工程、(3)前記昇華性物質を除去する工程、をこの順で行う。絶縁性のネガパターンを有する物品の内孔が裏面まで貫通している物品はセパレーターとして使用することができる。この場合、流動性がある材料で電極を被覆し次いで多孔質パターンを形成することによって、対向電極と接することなくイオンによる電気伝導のみを起こすセパレーター一体型の電極を製造できる。このように、固体の昇華性物質のポジパターンは表面から内部にかけて進入するため、表面から裏面にかけて貫通した多孔質パターンを簡便に形成でき、多孔質パターンによる透過性を有する物品としての利用が可能で、特に電池もしくはキャパシタ用のセパレーターとしての応用に好ましく適応できる。また、流動性がある材料の塗布形成が可能であるため極薄い多孔質パターンを有する物品の膜で電極表面を被覆することも可能であり、その分電極間距離を小さくできるためハイレートで充放電が行える電池の開発や薄い電池の開発および薄くなった分活物質を詰め込むことで容量の大きい電池の開発に有効に用いることができる。更に、電極とセパレーターを一体形成できるため、工程の簡略化を行うこともできる。更に、発泡性物質を配合したセパレーターは、熱暴走時に発泡して電気の流れを安全に止める安全機構としても用いることができる。更に、本方法によると三次的に重合する熱硬化性の光ラジカル硬化性アクリル樹脂や光カチオン硬化性エポキシ樹脂およびオキセタン樹脂を用いて連続的にセパレーターを製造できるため、異常発熱時にセパレーターが溶解して熱暴走が起きる可能性が低い耐熱性の高いセパレーターを簡便に製造することができる。
【0101】
図4はセパレーターが一体形成された電極の製造方法の模式図であり、(a)は電極9の表面に接着性を有する固化可能で流動性がある材料2をコーティングした状態、(b)は固体の昇華性物質によるポジパターン4を流動性がある材料2の表面に形成した状態、(c)は昇華性物質を除去することで貫通した多孔質パターンの孔10を形成した状態を示している。
【0102】
図4に示す様に、多孔質材料が一体化した電極を容易に作製することが可能であり、セパレーターやセパレーターを設置する工程を削減することができる。また、電極表面全体をセパレーターで保護できるため、対向電極とのショートによる事故の確率を減らすこともできる。
【0103】
電池やキャパシタにおいては、電極面積や体積がその電気的な容量、出力及び/又は効率を決めるため、一般に電極面積が広くなるように作製されるためその全面に安全装置を組み込むことは困難である。一方、セパレーターとして発泡性物質を有する多孔質材料を用いることで電極全面に安全装置を簡便に設置できる。また、本発明は発泡によって電流の流れを遮断するため、電極間に導電性の異物が入ったりデンドライトが発生したりすることによってショートが発生した場合でも、異物やデンドライトを発泡による膨張で押し上げることでショートを解消できる。
【0104】
本発明のネガパターンを有する物品を製造する方法のその他の実施態様は、流動性がある材料が任意の温度で発砲する発泡性物質を含有することで、得られた物品が所定の温度で発泡することを特徴とする。
【0105】
上記発泡性物質は、一般的に固体もしくは液体から気体になるときの体積膨張率が大きいため、前記所定の温度で気化する固体もしくは液体であることが好ましく、気化は、化学的分解、昇華、沸騰等により起こるものを選べる。発泡性物質の発泡倍率が大きいものを選ぶことで発泡効率を高めることができ、10倍以上の体積膨張率を有する物質が好ましく、50倍以上の体積膨張率を有する物質が更に好ましい。
【0106】
所定の温度に達すると化学的分解を起こす発泡性物質が、例えば1の分子からなる物質が化学的に分解して2以上の分子になる場合、更に体積膨張率が大きくなるため、発泡剤の発泡倍率を大きくし発泡効率を高めることができる。このような化学的分解を起こす物質としては、炭酸水素ナトリウム、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾジカルボン酸アミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等を例示できる。
【0107】
所定の温度に達すると昇華する発泡性物質としては、ナフタレン、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン、固体二酸化炭素、ヨウ素等を例示できる。
【0108】
所定の温度に達すると沸騰する発泡性物質としては、炭化水素(プロパン、n−ブタン、n−ペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アミルベンゼン、テレピン油、ピネン等)、ハロゲン系炭化水素(塩化メチル、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、臭化メチル、臭化エチル、クロロベンゼン、クロロブロモメタン、ブロモベンゼン、フルオロジクロロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジフルオロクロロエタン等)、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、2−オクタノール、n−ドデカノール、ノナノール、シクロヘキサノール、グリシドール等)、エーテル、アセタール(エチルエーテル、ジクロロエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルベンジルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、シネオール、メチラール)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−アミルケトン、ジイソブチルケトン、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等)、エステル(ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸−n−アミル、酢酸メチルシクロヘキシル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、ステアリン酸ブチル等)、多価アルコールとその誘導体(エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル等)、脂肪酸及びフェノール(ギ酸、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、無水プロピオン酸、酪酸、イソ吉草酸、フェノール、クレゾール、o−クレゾール、キシレノール等)、窒素化合物(ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジアミルアミン、アニリン、モノメチルアニリン、o−トルイジン、o−クロロアニリン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、アセトニトリル、ピリジン、α−ピコリン、2,4−ルチジン、キノリン、モルホリン等)、硫黄、リン、その他化合物(二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、4,4−ジエチル−1,2−ジチオラン、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メタンチオール、プロパンスルトン、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、ホウ酸アミル等)、無機溶剤(液体アンモニア、シリコーンオイル等)、液体金属、水等の液体を例示できる。
【0109】
発泡性物質から発生した気体は、難燃性であることが好ましく、異常発熱の結果燃焼した場合の損傷を最小限にとどめることができる。
【0110】
発泡性物質は、前記所定の温度以上で軟化する軟化性物質で被覆できる。この軟化性物質の被膜が発泡性物質の発泡の結果破裂せず、内部で発生した気体を閉じ込めて膨らむものが好ましく、軟化性物質を発泡により風船のように膨らませることで発泡効率を高めることができる。また、発泡後に温度が下がったり外部から応力が掛かったりした場合に、収縮してしまうことを膨らんだ軟化性物質によって防げる。
【0111】
この軟化性物質が、軟化する温度は発泡する温度に近いほど好ましく、発泡する温度よりも高いほうが更に好ましい。軟化する温度と発泡する温度の温度差は100℃以内が好ましい。このような軟化する物質として、有機物である各種熱可塑性高分子をあげることができ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂等を例示することができる。
【0112】
更に、発泡性物質の表面を導電性材料で緻密に被覆することにより発泡前の発泡性物質から徐徐に発生するガスを封じ込めることができ、長期間にわたって発泡性物質の発泡特性を維持できる。長期にわたって発泡特性の維持が求められる用途(家電製品や車載用の電子装置等)に対しては、上述のような処方は有効である。なお、発泡性物質の発泡に伴い被覆した導電性材料は破断するが、発泡性材料が軟化性物質で被覆されている場合には、軟化性物質が発泡性物質から発生した気体の漏れにより発泡効率が低下することを防ぎ発泡効率を維持できる。
【0113】
発泡性物質は任意の量を添加することが可能だが、特に電池やキャパシタの熱時の暴走を発泡によって電流の流れを遮断して止める用途に用いる場合は、導電性組成物が発泡によって絶縁性、すなわち少なくとも発泡前よりも電気的な抵抗が大きい状態、もしくは使用条件において実質的に電流が流れない状態になるために必要な量を添加する。この量は、導電性材料の種類、粒径、形状等、発泡性物質の種類、粒径、形状等、発泡温度、発泡温度までの昇温速度、発泡温度での保持時間、発泡環境の気圧、発泡環境中の水分量等で異なり、特に導電性粒子の種類、発泡性物質の種類、発泡温度によって異なるが、電気的な抵抗値の変化は発泡前後の抵抗値を測定することで簡単に求めることができる。
【0114】
一例として、導電性材料に銀粉、発泡性物質に所定の温度で化学的に分解して気化する物質(例えば、炭酸水素ナトリウム)、絶縁体に合成樹脂(例えば、エポキシ樹脂)を使用する場合には、導電性材料1重量部に対して好ましい発泡性物質の添加量は0.1〜0.8重量部、より好ましくは0.16〜0.24重量部である。次の例として、導電性材料に銀粉、発泡性物質に所定の温度以上で軟化する軟化性物質で所定の温度で化学的に分解して気化する物質を被覆しているもの(例えば、日本フィライト株式会社、商品名:EXPANCEL)、絶縁体に合成樹脂(例えば、エポキシ樹脂)を使用する場合には、導電性材料1重量部に対して、好ましい発泡性物質の添加量は0.3〜0.5重量部、より好ましくは0.36〜0.44重量部である。他の例としては、導電性材料に銀粉、発泡性物質に所定の温度以上で軟化する軟化性物質で所定の温度で化学的に分解して気化する物質を軟化性物質で被覆しているもの(例えば、日本フィライト株式会社、商品名:EXPANCEL)を導電性材料(例えば、ニッケル−リンめっき)で更に被覆したもの、絶縁体に合成樹脂(エポキシ樹脂)を使用する場合には、導電性材料1重量部に対して、好ましい発泡性物質の添加量は0.4〜1.6重量部、より好ましくは0.4〜0.6重量部である。上述の例において、合成樹脂の添加量は0.1〜0.2重量部であることが好ましい。
【0115】
これらの発泡性物質は、必要に応じて単体でも、2種以上を適宜組み合わせても使用することができる。
【0116】
図5の(a)は、セパレーターが発泡性物質11を含み、電解液を含浸させた多孔質パターンの孔10を通って電極9間をイオン12が行き来し、電気が流れている状態を示す模式図であり、(b)は、発泡後の発泡性物質13によって電極間距離が押し広げられ導通が妨げられる様子を示した例である。
【0117】
図5(b)に示す様に、発泡により電極間距離を大きく引き離すことでイオン伝導を止めることができる。また、コアシェル型の発泡剤を用いれば、発泡後の発泡剤が空気を含む絶縁体になるため、更に確実に電極間の電気の流れを止めることができる。ここでいう絶縁とは、少なくとも発泡前よりも抵抗値が大きい状態を指し、好ましくは実質電気を流さない状態を指す。
【0118】
好ましく適用できる電池もしくはキャパシタとしては、セパレーターに電解液を染み込ませたタイプが例示でき、具体的には、マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池、リチウムイオン二次電池、色素増感型太陽電池、電気二重層型キャパシタなどを例示することができる。
【0119】
本発明のネガパターンを有する物品を製造する方法のその他の実施態様は、少なくとも固化後に導電性を有する固化可能で流動性がある材料を用いて導電性を有する物品を製造することを特徴とする。
【0120】
この導電性粒子は、電場あるいは磁場あるいはその両方によって配向可能な扁平な形状であることが好ましく、その場合導電性粒子を配向させた状態で導電性組成物を固化させることができる。この導電性組成物の固化物は、電場及び/又は磁場によって配向した方向に対応して電気的な抵抗値に異方性を有し、かつ電気的な抵抗値が低い部材を形成することは、電子装置の電気的な効率を高める上で好ましい実施態様である。また、発泡性物質が扁平な形状の粒子であり、磁気的な異方性や誘電率の異方性がある場合、電場及び/又は磁場によって配向させることもできる。
【0121】
また、本発明のネガパターンを有する物品が表面に形成された電極の製造方法のその他の実施態様は、固化可能で流動性がある材料が少なくとも固化後に導電性を示すものであって、(1)電極に塗布した前記材料の表面又は表面から内部にかけて、気相由来の固体の昇華性物質のポジパターンを形成する工程、(2)前記材料を固化する工程、(3)前記昇華性物質を除去する工程、をこの順で行う。例えば、電池の活物質層を固化形成可能な流動性を有する物質をバインダーとして集電体表面に塗布形成する際、塗膜表面にネガパターンを形成することで比表面積の大きい電極を製造できる。このような電極を有する電池は、表面積が大きくなることにより、充放電レートなどの電池の電気的特性が向上する。また、この方法で製造されたネガパターンを有する物品が表面に形成された電極を含む電池もしくはキャパシタを製造できる。
【0122】
流動性がある材料からなる多孔質材料が接着性を有し、活物質を含む場合について説明する。図6は電池の製造方法の模式図であり、(a)は活物質14と導電性フィラー15を含有し流動性がある材料である接着剤16の塗膜を電極9上に形成した状態、(b)は磁場を印加させた状態で活物質14と導電性フィラー15を含有する皮膜の表面又は表面から内部にかけてポジパターン4を配向させた状態、次いで(c)は固体の昇華性物質のポジパターン4を除去して配向した活物質と導電性材料と孔のパターンが形成された電極を作製した状態を示している。
【0123】
ここで、活物質14として電池がリチウムイオン電池の場合、陽極にはコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどを用いることができ、陰極にはグラファイト、カーボンファイバー、Si合金、チタン酸リチウムなどを用いることができる。キャパシタの場合、活性炭などを用いることができる。太陽電池の場合、ルテニウム系色素が吸着したチタニア粒子、カチオン性ポルフィリンを層間に挿入したニオブ酸カリウムなどを用いることができる。これらの活物質のうち、磁気異方性及び/又は誘電率に異方性を有する材料の場合は、磁場及び/又は電場によって電気特性的に有利な、あるいは太陽電池については光吸収効率が向上する方向及び/又は電気特性的に有利な方向に配向できる。カチオン性ポルフィリンを層間に挿入したニオブ酸カリウムの場合、ニオブ酸カリウムの磁気異方性を利用して層間のポルフィリンを光吸収が有利な方向に磁場配向を行うことができる。導電性フィラー15については必要に合わせて任意の量を配合することが可能であり、前述の通り磁気異方性及び/又は誘電率に異方性を有する材料の場合は、磁場及び/又は電場によって電気特性的に有利な方向に配向できる。一方、磁気異方性がない導電性材料については、時間変動磁場を用いることによって磁場配向させることができる。ここでいう「時間変動磁場」とは、導電性材料を貫く磁束の量が時間変化する磁場のことを意味する。更に詳細に説明すると、時間変動磁場を導電性材料に印加することによって、導電性材料中に誘導電流が発生し、誘導電流は磁束の変化を打ち消す方向に誘導磁場を発生させる。このとき、発生した誘導磁場と時間変動磁場間で磁気的相互作用が起き、導電性物質は磁束の変化が少なくなる方向に移動又は回転する。誘導磁場を用いた配向を用いれば、磁気異方性を持たない材料であっても導電性があれば配向させることができる。例えば、ロッド形状の立方晶の金属粒子に一軸回転磁場を印加した場合、ロッドの長軸と回転磁場の軸とが平行になるように並ぶ。ディスク形状の金属粒子に一軸回転磁場を印加した場合、ディスクの法線と回転磁場の軸とが平行になるように並ぶ。このような誘導磁場を用いた配向は、磁気異方性が無い立方晶の金属などに対しても利用できるため適応の範囲が広く、電気的特性などに優れた材料を選択できる機会が増える。
【0124】
これらの活物質、導電性材料、昇華性物質の1以上が、誘電率及び/又は磁化率に異方性がある物質は電場及び/又は磁場で配向させることが可能で、形状的にあるいは電気的に有利な方向に前記部材を配向させ、電極の効率を高めることができる。
【0125】
また、流動性がある材料が発泡剤を含有することにより、電池が充放電の際に異常発熱した際、発泡することで電極のどの部位であっても電流を安全に遮断できる。上述のような少なくとも固化形成後導電性を示す材料に発泡剤を配合する用途においては、導電性材料で被覆された発泡性物質を好ましく用いることができる。発泡性物質や前記軟化性物質で被覆した発泡性物質のうち絶縁性のものを導電性組成物中に混合すると、電気的な抵抗が上昇し電気的な効率が落ちる。しかし、発泡性物質や前記軟化性物質で被覆した発泡性物質の表面を導電性物質で被覆することで電気的な抵抗の上昇を抑えることができる。具体的には、発泡性物質又は軟化性物質で被覆した発泡性物質の表面に金属をめっきしたり導電性の粒子を付着させたりして得ることができる。導電性物質としては前述した金属、合金や炭素系材料、導電性を有する各種無機物を用いることができ、導電性物質が金属である場合、めっき法で発泡性物質表面に緻密な金属層を形成できる。このように、導電性を付与することにより、発泡性物質の含有量を増加させることができ、発泡倍率の選択の幅を広げることが可能になる。
【0126】
固化可能で流動性がある材料の表面に形成した固体の昇華性物質が誘電率及び/又は磁化率に異方性を有する場合、同様に電場及び/又は磁場で配向させることができる。この場合、ポジパターン及びネガパターンの方向に異方性を持たせることが可能で、ネガパターンが多孔質パターンである場合、電解液を含浸させた多孔質パターンを通じてイオン電導などを起こすことができるので、多孔質パターンの向きをイオン電導がおきやすい方向に配向させることもできる。あるいは、任意の方向に配向させた多孔質パターンの孔の中にめっきしたり低融点金属を流し込んだりすることで、任意の方向に対して導電性に異方性を有する物品も製造できる。
【0127】
また、インピーダンスを下げる目的で誘電率の高い粒子を複合することも可能で、チタン酸バリウムの粒子を複合することができる。また、磁場及び/又は電場を用いて前記誘電率の高い粒子を配向させることもできる。
【0128】
また、本発明は、固化可能で流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを有する物品の製造装置であって、(1)固化可能で流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけて気相由来の固体の昇華性物質のポジパターンを形成する手段、(2)前記材料を固化させる手段、(3)前記昇華性物質の除去手段を備えた、前記材料の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを有する物品の製造装置に関する。
【0129】
(1)の手段は、昇華性物質を昇華点以下の温度に冷却することにより行うことができる。(2)の手段は、材料を固化させ流動性がある物質の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを形成する手段であって、エネルギー線照射もしくは加熱による材料の硬化、材料の冷却又は材料中の溶剤の揮発による固化により行うことができる。(3)の手段は、硬化した流動性がある物質からポジパターンを形成する昇華性物質を除去する手段であって、昇華性物質を加熱昇華、減圧昇華、又は昇華性物質を溶解することにより行うことができる。
【0130】
また、昇華性物質が誘電率及び/又は磁化率に異方性がある物質である場合には、上記装置に、更に、昇華性物質を電場及び/又は磁場で任意の方向に配向させる手段を備えることにより、昇華性物質のポジパターンを配向させることができる。
【0131】
図7は、多孔質膜をフィルム基板の表面に連続的に形成するための装置を模式的に示したもので、昇華性物質を磁場配向させるための磁石が設置されたタイプである。ロール17から送り出されたフィルム基板18の表面にコーター19を用いて流動性がある材料のUV硬化性樹脂を塗布し、次いで冷却ステージ20でフィルム基板を冷却することでUV硬化性樹脂の表面に昇華性物質である霜のポジパターンを形成させる(手段(1))。その間磁石21で磁場を印加し続けることで形成した霜を磁場配向させ、その状態でUV照射機22によりUVを照射してUV硬化性樹脂を固化し(手段(2))、次いでドライヤー23で付着した霜を蒸発させ、除去する(手段(3))。このように、連続的に膜状のネガパターンを有するフィルム24を形成することができる。なお、この装置は、上記のように1体として構成することができるが、各手段を複数体で分離して行うように構成することもできる。
【0132】
以下に、実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。添加量の表示は、断りのない限り重量部である。
【実施例1】
【0133】
実施例1では、昇華性物質のポジパターンを用いてエネルギー線硬化性樹脂の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを有する物品を製造した。
【0134】
協立化学産業株式会社製光硬化型アクリル樹脂(製品名:ワールドロックNo. XFL−06L;1%以上は水を溶解することができない樹脂)をガラス板に厚み50μmで塗布したものを冷凍庫で−40℃まで冷却し、次いで25℃、湿度80%の雰囲気に30秒間静置後、紫外線を3000mJ/cm照射し膜状の硬化物を得た(工程(2))。硬化物を乾燥させて霜を除去した(工程(3))。
【0135】
(パターンの観察)
図8は、走査型電子顕微鏡写真であり、(a)に示すように硬化物の内部に多数の孔が開いていることが確認できた。膜状の硬化物をガラス板から引き剥がし裏面を同様に走査型電子顕微鏡で観察したところ、(b)に示すようにネガパターンは裏面まで達していることが確認できた。硬化樹脂膜の断面を観察したところ(c)に示すようにネガパターンが多孔質パターンであることが確認できた。空孔率は約30%である。
【実施例2】
【0136】
実施例2では、実施例1のパターン作製条件で更に磁場を印加し、ネガパターンが配向する物品の製造を行った。
【0137】
協立化学産業株式会社製光硬化型アクリル樹脂(製品名:ワールドロックNo. XFL−06L)をガラス板に厚み50μmで塗布したものを冷凍庫で−40℃まで冷却、次いで14.09T(テスラ)の磁場を印加しながら、25℃、湿度80%の雰囲気に60秒間静置し表面又は表面から内部にかけて霜を配向させた。この状態で紫外線を3000mJ/cm照射し硬化物を得た(工程(2))。硬化物を乾燥させて霜を除去した(工程(3))。
【0138】
(パターンの観察)
図9は、走査型電子顕微鏡であり、(a)に示すように硬化物の内部に多数の孔が開いていることが確認できた。硬化樹脂膜をガラス板から引き剥がし裏面を同様に走査型電子顕微鏡で観察したところ、(b)に示すようにネガパターンは裏面まで達していることが確認できた。硬化樹脂膜の断面を観察したところ(c)に示すようにネガパターンが配向した多孔質パターンであることが確認できた。空孔率は約50%である。
【実施例3】
【0139】
(Liイオン電池用部材の製造)
実施例3では、電極の製造方法を用いてLiイオン電池電極上にセパレーターを製造した。
【0140】
(電極の製造)
大日本インキ化学工業株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:エピクロン850)5部、ダイセル化学工業株式会社製脂環型エポキシ樹脂(製品名:セロキサイド2021P)5部、三新化学工業株式会社製光熱カチオン開始剤(製品名:サンエイドSI-100L)0.2部、信越化学工業株式会社製エポキシ変性シランカップリング剤(製品名:KBM−403)0.2部、電気化学工業株式会社製カーボンブラック(製品名:デンカブラック)5部、コバルト酸リチウム粉末80部、NMP500部を冷却ジャケットつきプラネタリーミキサーに入れ、均一な液体になるまで攪拌し陽極の活物質形成用の塗液を作製した。これを、厚さ30μmのアルミニウム集電体に塗布しアルミニウム集電体の面法線方向から2Tの磁場を印加しながら50℃×1時間乾燥させ、その後磁場の印加を取りやめて130℃×1時間加熱硬化して陽極を製造した。
大日本インキ化学工業株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:エピクロン850)5部、ダイセル化学工業株式会社製脂環型エポキシ樹脂(製品名:セロキサイド2021P)5部、三新化学工業株式会社製光熱カチオン開始剤(製品名:サンエイドSI-100L)0.2部、信越化学工業株式会社製エポキシ変性シランカップリング剤(製品名:KBM−403)0.2部、日本黒鉛株式会社製グラファイト粉末10部、NMP500部を冷却ジャケットつきプラネタリーミキサーに入れ、均一な液体になるまで攪拌し陰極の活物質形成用の塗液を作製した。これを、厚さ50μmの銅集電体に塗布し、2Tの回転磁場を磁場の回転軸と銅集電体の面が平行になるように印加しながら50℃×1時間乾燥させ、その後磁場の印加を取りやめて130℃×1時間加熱して陰極を製造した。
【0141】
(多孔質膜の形成)
製造した陽極に日本フィライト株式会社製発泡性物質(製品名:EXPANCEL920DU40)50部と協立化学産業株式会社製光硬化性接着剤(製品名:ワールドロックNo.XFL−06L)50部とジエチルエーテル100部を混合した液を5μm厚みでコーティングし、−40℃まで冷却した(工程(1))。これを電極の面法線方向から14.09Tの磁場を印加しながら25℃、湿度80%の雰囲気に60秒間静置し霜を配向させた後、そのままUVを6000mJ/cm照射して硬化させた(工程(2))。磁場印加を取りやめ、硬化物を乾燥させて霜を除去した(工程(3))。
【0142】
(電池の組み立て)
製造した多孔質パターンを有する硬化物でコートされた陽極と陰極に5%の六フッ化リン酸リチウムを含有するジメチルカーボネート溶液を含浸し、陰極と陽極を圧着して電池を組み立てた。
【0143】
(充放電試験)
充放電試験を行った結果、陰極と陽極間でショートは起きておらず、製造した多孔質膜を通じて充放電を行うことができた。
【0144】
(高温過熱試験)
電池の熱暴走を想定して、150℃×1分間上述の方法で製造したセルを加熱したところ、発泡剤が膨らみ充放電が起きなくなった。
【0145】
以上の様に、本発明の昇華性物質を用いたパターン形成法を用いることで、簡便にパターンを形成することが可能である。本発明によると、流動性がある材料を貫通する多孔質パターンも形成できるため、電池やキャパシタ用のセパレーターとして利用することが可能である。更に、発泡性物質を配合することによって電池の異常発熱に対する安全装置として用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】(a)は、気化した昇華性物質雰囲気中に固化可能で流動性がある材料からなる塗膜が形成された基板を設置した状態を示す図であり、(b)は、固体の昇華性物質のポジパターンを固化可能で流動性がある材料からなる塗膜の表面又は表面から内部にかけて形成した状態を示す図であり、(c)流動性がある材料を固化した後、昇華性物質を除去しネガパターンを形成した物品が得られた状態を示す図である。
【図2】(a)は、気化した昇華性物質雰囲気中に固化可能で流動性がある材料からなる塗膜が形成された基板を設置した状態を示す図であり、(b)は、固体の昇華性物質のポジパターンを固化可能で流動性がある材料からなる塗膜の表面又は表面から内部にかけて形成し、更にポジパターンが塗膜の裏面まで達した状態を示す図であり、(c)は、流動性がある材料を固化した後、塗膜を貫通した昇華性物質を除去し、塗膜を貫通したネガパターンを形成した物品が得られた状態を示す図である。
【図3】(a)は、固体の昇華性物質のポジパターンを固化可能で流動性がある材料からなる塗膜の表面又は表面から内部にかけて形成した状態を示す図であり、(b)は、電場及び/又は磁場によって流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけて形成した固体の昇華性物質のポジパターンを配向させた状態を示す図であり、(c)は、配向した昇華性物質のポジパターンによりネガパターンを形成した状態を示す図である。
【図4】(a)は、電極表面を固化可能で流動性がある材料からなる塗膜でコーティングした状態を示す図であり、(b)は、電極表面を覆った塗膜の表面に固体の昇華性物質のポジパターンを形成した状態を示す図であり、(c)は、電極表面を本発明によって製造した多孔質材料で全面コーティングした状態を示す図である。
【図5】(a)は、発泡性物質を含有するセパレーターを本発明の方法で製造した状態を示す図であり、(b)は、発泡性物質が発泡することで電極間の距離が広がった状態を示す図である。
【図6】(a)は、活物質と導電性材料を含有し固化可能で流動性がある材料である接着剤の塗膜を集電体上に形成した状態を示す図であり、(b)は、電場及び/又は磁場によって配向した活物質と導電性材料を含む塗膜の表面又は表面から内部にかけて固体の昇華性物質のポジパターン4を配向させた状態を示す図であり、(c)は、配向した活物質と導電性材料と孔のパターンが形成された電極を示す図である。
【図7】ネガパターンを有する物品の製造装置を模式的に示した図である。
【図8】(a)は、本発明の方法で製造した多孔質パターンを有する物品の表面の走査型電子顕微鏡写真であり、(b)は、本発明の方法で製造した多孔質パターンを有する物品の裏面の走査型電子顕微鏡写真であり、(c)は、本発明の方法で製造した多孔質パターンを有する物品の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】(a)は、磁場を印加して昇華性物質を配向させて製造した多孔質パターンを有する物品の表面の走査型電子顕微鏡写真であり、(b)は、磁場を印加して昇華性物質を配向させて製造した多孔質パターンを有する物品の裏面の走査型電子顕微鏡写真であり、(c)は、磁場を印加して昇華性物質を配向させて製造した多孔質パターンを有する物品の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0147】
1 昇華性物質雰囲気
2 固化可能で流動性がある材料
3 基板
4 固体の昇華性物質のポジパターン
5 ネガパターン
6 電場及び/又は磁場の印加方向
7 電場及び/又は磁場で配向した昇華性物質
8 印加した電場及び/又は磁場に対応した方向に配向したネガパターン
9 電極
10 貫通した多孔質パターンの孔
11 発泡性物質
12 イオン
13 発泡後の発泡性物質
14 活物質
15 導電性フィラー
16 接着剤
17 ロール
18 フィルム基板
19 コーター
20 冷却ステージ
21 磁石
22 UV照射機
23 ドライヤー
24 ネガパターンを有するフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)固化可能で流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけて気相由来の固体の昇華性物質のポジパターンを形成する工程、(2)前記材料を固化する工程、(3)前記昇華性物質を除去する工程、をこの順で行い、前記材料の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを有する物品を製造する方法。
【請求項2】
前記昇華性物質が誘電率及び/又は磁化率に異方性がある物質であり、少なくとも前記材料が固化する前に、更に、前記昇華性物質を電場及び/又は磁場で任意の方向に配向させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料が任意の温度で発泡する発泡性物質を含有し、得られた物品が任意の温度で発泡することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ネガパターンが、前記材料の表面から内部にかけての孔の体積分率を連続的に変化させたパターンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
(1)電極に塗布した固化可能で流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけて、気相由来の固体の昇華性物質のポジパターンを形成する工程、(2)前記材料を固化する工程、(3)前記昇華性物質を除去する工程、をこの順で行う、前記材料の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを有する物品が表面に形成された電極の製造方法。
【請求項6】
(1)固化可能で流動性がある材料の表面又は表面から内部にかけて気相由来の固体の昇華性物質のポジパターンを形成する手段、(2)前記材料を固化させる手段、(3)前記昇華性物質を除去する手段を備え、場合により、更に、昇華性物質を電場及び/又は磁場で任意の方向に配向させる手段を備えた、前記材料の表面又は表面から内部にかけてネガパターンを有する物品の製造装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項記載の方法により製造されたパターンを有する物品を用いる電池もしくはキャパシタ。
【請求項8】
請求項5記載の方法により製造された電極を含む電池もしくはキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−227923(P2009−227923A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78129(P2008−78129)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】