説明

ネコ科動物の慢性腎疾患を予防または治療するための組成物および方法

本発明は、約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含むネコの慢性腎疾患(例えば慢性腎不全)を予防するための組成物、および、約26〜約30%または約28〜約30%(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)を含むネコにおける慢性腎疾患を治療するための組成物、ならびに、ネコの慢性腎疾患を予防または治療するためにこのような組成物を用いる方法を提供する。本発明はまた、本組成物の製造方法、本組成物を含む製造品、および、本組成物、方法および製造品に関する情報を伝達するための手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本願は、2006年1月19日付けで出願された米国仮出願第60/760,068号の利益を主張する(あらゆる目的のために、参照によりその全体を本発明に含める)。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般的に、慢性腎疾患を予防または治療するための組成物に関し、具体的には、ネコ科動物の慢性腎疾患を予防または治療するための組成物に関する。
【0003】
関連技術の説明
腎臓は、5つの主要な機能を有する。腎臓は、身体から老廃物(例えば、尿素、および、クレアチニン)をろ過し、電解質(例えば、カリウム、カルシウム、リンおよびナトリウム)を調節し、エリスロポイエチン(これは、骨髄を刺激して赤血球を生産させる)を生産し、レニン(これは、血圧を制御する)を生産し、尿を生産し濃縮する。
【0004】
慢性腎疾患(「CKD」)、例えば慢性腎不全は、4つの相(すなわち腎予備能の損失、腎機能不全、高窒素血症および尿毒症)を有する進行性腎疾患である。正常な腎機能に必要なのは腎臓の能力のわずか約30%だけであるため、腎臓は本来備わっている大きい予備能を有する。腎臓の能力は、例えば高齢および病気、ならびに腎臓にダメージを与える薬物療法のような様々な理由で時間に伴って減少する。腎機能不全は、腎機能の低下を特徴とし、一般的に、腎機能の約70%が失われた場合(すなわち、腎臓の能力のうちわずか約30%しか利用できない場合)に観察される。腎予備能の損失および腎機能不全の相中においては、臨床徴候がはっきりしないことが一般的であり、このためにCKD検出を難しくしている。CKDの第三相である高窒素血症は、血液中の異常に高濃度の尿素、クレアチニンおよび/またはその他のタンパク質以外の窒素含有物質を特徴とする。高窒素血症の相の間、臨床徴候は軽度の場合があり、検出されないままの可能性があるが、腎機能は著しく減少する。尿毒症は、異常に大量の尿、または、血液中の尿成分の存在を特徴とする。尿毒症の相は、明らかな臨床徴候を特徴とする。
【0005】
CKDは、末期的な病気である。CKDは、ネコ科動物の主な死亡原因の1つである。従って、ネコ科動物においてCKDを予防する組成物および方法への必要性がある。また、部分的な、または完全な軽減を提供するCKDを治療する組成物および方法の必要性もある。
【0006】
腎機能を測定するためには、クレアチニンのモニターが有用である。例えば、腎疾患が進行するにつれて、血清クレアチニン値は増加する。血清クレアチニン値の増加は、糸球体のろ過率の低下に関連すると考えられる。それゆえに、CKDに罹りやすいネコ科動物またはCKDに罹ったネコ科動物において、血清クレアチニン値の増加を予防するか、または、血清クレアチニン値の減少を引き起こす食品組成物または食物は、有益な作用を有すると予想される。
【0007】
発明の要約
本発明の一つの目的は、ネコ科動物におけるCKDの予防に適した組成物を提供することである。
【0008】
その他の目的は、ネコ科動物におけるCKDの治療に適した組成物を提供することである。
【0009】
さらなる目的は、ネコ科動物におけるCKDの予防方法を提供することである。
【0010】
その他の目的は、ネコ科動物におけるCKDの治療方法を提供することである。
【0011】
さらなる目的は、ネコ科動物におけるCKDを予防するための、本発明の組成物、または、一緒に混合すると(任意に追加成分と共に)、本発明の組成物が生じる2種またはそれより多くの成分を含む製造品を提供することである。
【0012】
その他の目的は、ネコ科動物におけるCKDを治療するための、本発明の組成物、または、一緒に混合すると(任意に追加成分と共に)、本発明の組成物が生じる2種またはそれより多くの成分を含む製造品を提供することである。
【0013】
その他の目的は、本発明の組成物、方法および製造品に関する情報を伝達するための手段を提供することである。
【0014】
これらのおよびその他の目的の1つまたはそれより多くは、ネコ科動物に、乾量基準で約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含む組成物を与えることによってネコ科動物の慢性腎疾患を予防することによって達成され、さらに、ネコ科動物に、乾量基準で約26〜約30%、約28〜約30%または約33〜約35%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)を与えることによって、ネコ科動物の慢性腎疾患を治療することによって達成される。
【0015】
本発明のさらなる目的、特徴および利点は、当業者にはよく知られていると予想される。
【0016】
発明の詳細な説明
一態様において、本発明は、CKDを発症させやすいネコ科動物におけるCKDの予防方法を提供する。本方法は、ネコ科動物に、乾量基準で約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、ネコ科動物に、約33〜約35%または約28〜約31%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本方法は、ネコ科動物に、約33〜約34%または約28〜約30%のタンパク質を含む組成物を与えることを含む。このような実施態様のうちその他において、本方法は、ネコ科動物に、約34〜約35%または約29〜約31%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。このような実施態様のうちさらにその他において、本方法は、ネコ科動物に、約28または約28.5〜約29、約29.5、約30、約30.5または約31%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。その他の実施態様において、本方法は、ネコ科動物に、約33または約33.5〜約34、約34.5または約35%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、ネコ科動物に、本発明の腎機能不全を予防するための組成物から選択される組成物を与えることを含む。当業者であれば当然ながら、本発明の単一の組成物をネコ科動物に与えてもよいし、またあるいは、このような組成物のうち異なる組成物を、様々な時間間隔でネコ科動物に与えてもよい。
【0017】
このような実施態様のうちその他において、本方法は、ネコ科動物に、約31〜約35%または約35〜約38%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本方法は、ネコ科動物に、約32〜約34%または約36〜約37%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。このような実施態様のうちその他において、本方法は、ネコ科動物に、約32〜約35%または約36〜約38%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。このような実施態様のうちさらにその他において、本方法は、ネコ科動物に、約33〜約35%または約36.5〜約38%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。さらなるこのような実施態様において、本方法は、ネコ科動物に、約31、約32または約33〜約34または約35%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。その他の実施態様において、本方法は、ネコ科動物に、約35、約36または約36.5〜約37または約38%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85%、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。その他の実施態様において、本方法は、ネコ科動物に、約31〜約32、約33、約34または約35%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。その他の実施態様において、本方法は、ネコ科動物に、約35〜約36、約36.5、約37または約38%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。
【0018】
CKDの予防方法のいくつかの実施態様において、ネコ科動物に与えられる本組成物は、乾量基準で約0.45〜約0.8%、または、0.51〜約0.70%のリンをさらに含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、ネコ科動物に与えられる本組成物は、約0.45〜約0.6%、または、約0.51〜約0.65%のリンを含み、例えば、約0.45〜約0.55%、約0.45〜約0.5%のリン、約0.51〜約0.60%または約0.51〜約0.55%のリンを含む。このような実施態様のうちその他において、ネコ科動物に与えられる本組成物は、約0.6〜約0.8%のリンを含み、例えば、約0.7〜約0.8%または約0.6または0.65〜約0.75%のリンを含む。
【0019】
CKDの予防方法のいくつかの実施態様において、ネコ科動物に与えられる本組成物は、乾量基準で約0.2または0.25〜約0.40%または約0.2〜約0.35%のナトリウムをさらに含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、ネコ科動物に与えられる本組成物は、約0.2〜約0.35%のナトリウムを含み、このような実施態様のうちその他において、ネコ科動物に与えられる本組成物は、約0.2〜約0.25%のナトリウムを含む。
【0020】
CKDの予防方法のいくつかの実施態様において、ネコ科動物に与えられる本組成物は、乾量基準で約0.75〜約1%のカリウムをさらに含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、ネコ科動物に与えられる本組成物は、約0.8〜約1%のカリウムを含み、このような実施態様のうちその他において、本組成物は、約0.75〜約0.9%のカリウムを含む。
【0021】
CKDの予防方法のいくつかの実施態様において、ネコ科動物に与えられる本組成物はさらに、リン、ナトリウムおよびカリウムのうちいずれか2種またはそれより多くを上記で考察された量のあらゆる組み合わせで含む。
【0022】
その他の態様において、本発明は、ネコ科動物におけるCKDの治療方法を提供する。本方法は、ネコ科動物に、乾量基準で約26〜約30%、または、約28〜約30%のタンパク質を含む組成物(ここで本組成物中に存在する該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、ネコ科動物に、約26〜約27%または約28〜約29%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。このような実施態様のうちその他において、本方法は、ネコ科動物に、約27または29〜約30%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、ネコ科動物に、約28または約28.5〜約29、約29.5または約30%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む)を与えることを含む。いくつかの実施態様において、本組成物は、約26または約27〜約28、約29または約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。いくつかの実施態様において、本方法は、ネコ科動物に、CKDを治療するための本発明の組成物から選択される組成物を与えることを含む。当業者であれば当然ながら、本発明の単一の組成物をネコ科動物に与えてもよいし、またあるいは、このようなうち異なる組成物を、多様な時間間隔でネコ科動物に与えてもよい。
【0023】
ネコ科動物におけるCKDの治療方法のいくつかの実施態様において、ネコ科動物に与えられる本組成物は、乾量基準で約0.20〜約0.50%または約0.45〜約0.6%のリンをさらに含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、ネコ科動物に与えられる本組成物は、約0.20〜約.045%または約0.45〜約0.55%のリンを含む。このような実施態様のうちその他において、ネコ科動物に与えられる本組成物は、約0.20〜約0.40%または約0.45〜約0.5%のリンを含む。
【0024】
ネコ科動物におけるCKDの治療方法のいくつかの実施態様において、ネコ科動物に与えられる本組成物は、乾量基準で約0.2〜約0.25%または約0.23〜約0.30%のナトリウムをさらに含む。
【0025】
ネコ科動物におけるCKDの治療方法のいくつかの実施態様において、ネコ科動物に与えられる本組成物は、乾量基準で約0.75〜約1%のカリウムをさらに含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、ネコ科動物に与えられる本組成物は、約0.7〜約0.9%のカリウムを含む。このような実施態様のうちその他において、ネコ科動物に与えられる本組成物は、約0.75〜約0.85%のカリウムを含む。
【0026】
ネコ科動物におけるCKDの治療方法のいくつかの実施態様において、ネコ科動物に与えられる本組成物はさらに、リン、ナトリウムおよびカリウムの2種またはそれより多くを上記で考察された量のあらゆる組み合わせで含む。
【0027】
いくつかの実施態様において、本発明のCKDを予防および治療するための方法は、ネコ科動物に抗CKD剤を投与することをさらに含む。抗CKD剤とは、CKDを予防および/または治療するために用いられる化合物、それらの誘導体(例えば、その化合物の塩、溶媒化合物、または、水和物)、または、このような化合物、および/または誘導体を含む組成物である。このような薬剤は、本発明の組成物の供給と共に投与される。用語「〜と共に」とは、薬剤を、本発明の組成物と共に、または、本組成物とは別々に、同一または異なる頻度で、同一または異なる投与経路によってのいずれかで、さらに、組成物とほぼ同じ時間に、または、定期的にのいずれかでネコ科動物に投与されることを意味する。「〜を投与する(こと)」とは、上記薬剤が、適切な剤形で、適切な投与経路(例えば経口、外用または非経口)でネコ科動物に導入されることを意味する。「ほぼ同じ時間に」とは、一般的に、ネコ科動物に、本発明の組成物がネコ科動物に与えられる時に薬剤が投与されるか、または、本組成物の供給から約72時間以内に投与されることを意味する。「定期的に」とは、本発明の組成物は、ネコ科動物に、そのネコ科動物に適切な慣例的手順で与えられるが、一般的には、薬剤が、その薬剤の投与に適した処方計画に従ってネコ科動物に投与されることを意味する。従って、用語「〜と共に」には、具体的には、薬剤は既定された期間ネコ科動物に投与されるが、本発明の組成物は、それよりずっと長い期間(例えば、死ぬまで)ネコ科動物に与えられるような状況も含まれる。1種より多くの薬剤が投与される場合、薬剤それぞれの剤形および投与経路は様々であってよい。加えて、本発明のある種の組成物は、特定の薬剤がネコ科動物に投与される間、その他の本発明の組成物で代用してもよい。
【0028】
適切な抗CKD剤としては、例えば、血圧を下げる薬剤、例えば、カルシウムチャンネル遮断薬(例えば、ベシル酸アムロジピン)、または、尿中のタンパク質を減少させる薬剤、ACE阻害剤(例えば、ベナゼプリル)、アナボリックステロイド、抗生物質、貧血治療薬剤、例えば、ネコ科動物の組換えエリスロポイエチン、利尿薬、例えば、フロセミド(ラシックス)、および、制吐剤、例えば、抗嘔吐薬(例えば、REGLAN(登録商標))が挙げられる。このような薬剤は、例えば無機酸または有機酸から誘導された塩の形態で投与することができる。特定の化合物によっては、例えば異なる温度および湿度における強化された薬剤としての安定性、または、望ましい水溶性または油溶性のような塩の物理特性のうち1種またはそれより多くのために、その化合物の塩が有利である場合がある。このような塩として好ましくは、製薬上許容できる塩である。
【0029】
抗CKD剤の1日あたりの総用量(単一用量、または、数回に分けた用量のいずれかで投与される)は、典型的には、約0.001〜約100mg/kg体重、好ましくは約0.001〜約30mg/kg体重、さらにより好ましくは約0.01〜約10mg/kg体重である。投与単位の組成物は、上述したような量を含んでいてもよいし、または、合計して1日用量になるそれらの分割量(submultiples)を含んでいてもよい。多くの例において、抗CKD剤の投与は、複数回繰り返されると予想される。1日あたり複数回の用量は、典型的には、必要に応じて1日あたりの総用量を増やすために用いられることがある。好ましい用法に影響を与える要因としては、例えば、ネコ科動物の年齢、体重および状態;病気の重症度;投与経路;薬理学的な考察(例えば、具体的な抗CKD剤の活性、有効性、および、薬物動態学的および毒物学的なプロファイル);薬物送達システムが利用されるかどうか;および、抗CKD剤が複合薬の一部として投与されるかどうかが挙げられる。従って、実際に用いられる投与計画は広範に様々であってよく、従って、上記の投与計画とは異なっていてもよい。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、腎機能不全を発症しやすいネコ科動物におけるCKDの予防に適した組成物を提供する。本組成物は、乾量基準で約約33〜約38%または28〜約35%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む。
【0031】
CKDはネコ科動物において末期的な病気であるため、ネコ科動物におけるCKDの臨床徴候を示さない腎機能の低下を予防することが重要である。このようなネコ科動物はこれまでCKDと診断されてこなかったが、例えば高齢、遺伝性素因、または、ネコ科動物の腎臓にダメージを与える可能性がある病気もしくは薬物療法によってCKDを発症する危険を有する。CKDの予防は、CKDを発症する危険を減少させること、CKDの発病を遅らせること、および/または、ネコ科動物がCKDを発症させないようにすることを含む。従って、CKDを予防するために本発明の組成物を与えることによって、ネコ科動物がCKDを発症させる危険を減少させることができる。加えて、このような組成物を与えることによって、ネコ科動物腎臓に本来備わっている予備能の損失の進行を遅らせることができ、それによって、その後のCKDの相の発病を遅らせることができる。
【0032】
本発明のCKDを予防するための組成物は、CKDを発症させやすいあらゆるネコ科動物に適している。いくつかの実施態様において、上記ネコ科動物は、コンパニオンキャット(companion feline)である。コンパニオンキャットは、ペットとして飼われているネコ科動物であってもよい。またコンパニオンキャットは、ペットとして飼われているかどうかに関わらず、例えばネコ(Felis domesticus)のような広く飼いならされた種に由来するネコ科動物であってもよい。いくつかの実施態様において、上記ネコ科動物は、成長したネコ科動物である。成長したネコ科動物とは、若年期の成長および発達が終わった後のあらゆる年齢のネコ科動物であり、年長のネコ科動物、および、老齢のネコ科動物が含まれる。例えば、成長したネコとは、典型的には約1歳からその寿命の最後までのいずれかの年齢のネコ科動物である。年長のネコ科動物とは、ネコ科動物が明白な老化の身体的または行動徴候を示すかどうかに関わらず、加齢随伴病に罹る危険を有するような年齢のネコ科動物である。例えば、年長のネコは、典型的には約7〜11歳のネコである。老齢のネコ科動物とは、老化の徴候を示すネコ科動物である。例えば、老齢のネコは、典型的には、約12歳およびそれより高齢のネコである。
【0033】
ネコ科動物におけるCKDを予防するための本組成物は、約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含む。例えば、市販の成長したネコ用のキャットフードは、典型的には、乾量基準で約35〜約45%のタンパク質を含む。従って、本発明のCKDを予防するための組成物は、ほとんどの市販の成長したネコ用のキャットフードよりも少ないタンパク質を含む可能性がある。
【0034】
いくつかの実施態様において、CKDを予防するための本組成物は、乾量基準で約28〜約31%または約33〜約38%のタンパク質を含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、約28〜約30%または約33〜約34%のタンパク質を含み;および、このような実施態様のうちその他において、本組成物は、約29〜約31%のタンパク質、または、約33.5〜約35%のタンパク質を含む。このような実施態様のうちさらにその他において、本組成物は、約28または約28.5〜約29、約29.5、約30、約30.5または約31%のタンパク質を含む。その他の実施態様において、本組成物は、約33または約33.5〜約34、約34.5または約35%のタンパク質を含む。
【0035】
その他の実施態様において、CKDを予防するための本組成物は、約31〜約35%または約35〜約38%のタンパク質を含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、約32〜約34%のタンパク質、または、約36〜約37%のタンパク質を含む。その他の実施態様において、本組成物は、約32〜約35%のタンパク質、または、約36〜約38%のタンパク質を含む。その他の実施態様において、本組成物は、約33〜約35%または約34〜約38%のタンパク質を含む。その他の実施態様において、本組成物は、約31、約32または約33〜約34または約35%のタンパク質を含む。その他の実施態様において、本組成物は、約35、約36または約36.5〜約37または38%のタンパク質を含む。さらなる実施態様において、本組成物は、約31〜約32、約33、約34または約35%のタンパク質を含む。その他の実施態様において、本組成物は、約35〜約36、37または約38%のタンパク質を含む。
【0036】
食事のタンパク質制限は、CKDの予防および治療において有益である。過剰なタンパク質は尿素やその他の窒素化合物に異化され、これらは通常、腎臓によって排出される。腎機能の低下により、これら化合物の蓄積が起こる。一方で、アミノ酸摂取が窒素バランスを維持するには不十分である場合、内因性タンパク質が分解されると予想される。従って、本発明のCKDを予防および/または治療するための組成物は、窒素バランスの達成を容易にすることができ、さらに、タンパク質摂取を減少させることによって老廃物の蓄積の制限を補助することができる。
【0037】
ネコ科動物は肉食動物であるため、キャットフードは、典型的には、主成分として動物および魚類のタンパク質を含むよう配合される。しかしながら、CKDを有する動物にとって、草食動物用の食物のいくつかの特徴が望ましい(例えば、より低い量のタンパク質、より低いリンの生物学的利用率、より低い量の硫黄を含むアミノ酸であり、それによって食物の酸性度を減少させる)。従って、本発明のCKDを予防するための組成物におけるタンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質で構成される(すなわち、本発明のCKDを予防するための組成物は、約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含み、ここで本組成物中に存在するタンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、少なくとも約80%の植物性タンパク質を含む。その他の実施態様において、本組成物は、少なくとも約85%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちその他において、該タンパク質は、少なくとも約90%の植物性タンパク質を含む。加えて、このような実施態様のうちその他において、該タンパク質は、少なくとも約95%の植物性タンパク質(すなわち、少なくとも約95〜約100%の植物性タンパク質)を含む。
【0038】
従って、いくつかの実施態様において、CKDを予防するための本組成物は、約28〜約31%のタンパク質を含む(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、約26〜約30%または約28〜約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちその他において、本組成物は、約29〜約31%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちさらにその他において、本組成物は、約28または約28.5〜約29、約29.5、約30、約30.5または約31%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。
【0039】
その他の実施態様において、CKDを予防するための本組成物は、約31〜約35%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、約31、約32または約33〜約34または約35%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。その他の実施態様において、本組成物は、約31〜約32、約33、約34または約35%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。さらにその他の実施態様において、本組成物は、約28または約28.5〜約29、約29.5または約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。
【0040】
本明細書において考慮されているように、本発明の組成物の製造に適した植物性タンパク質としては、これらに限定されないが、ジャガイモ濃縮物、ダイズ濃縮物、分離されたダイズタンパク質産物、ダイズ粉末、トウモロコシのグルテン粉末、分離された米タンパク質産物、エンドウマメのタンパク質の濃縮物、コムギタンパク質の濃縮物、および、分離されたコムギタンパク質産物が挙げられる。植物性タンパク質は、当業者既知の方法によって、植物のあらゆる部分から単離してもよいし、植物の1種より多くの部分から単離してもよいし、1種より多くの植物から単離してもよい。また植物性タンパク質は、当業者既知の方法によって濃縮してもよい。
【0041】
二次副甲状腺機能亢進症、および、リンの蓄積は、CKDを引き起こす原因とされてきた。従って、ネコ科動物の食物におけるリンの減少は、CKDの予防および/または治療に関して有益な可能性がある。従って、いくつかの実施態様において、本発明のネコ科動物におけるCKDを予防するための組成物は、乾量基準で約0.45〜約0.8%、0.51〜約0.80%または約0.51〜約0.70%のリンをさらに含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、約0.45〜約0.6%のリン、または、約0.51〜約0.65%、例えば、約0.45〜約0.55%または約0.45〜約0.5%のリン、または、約0.51〜約0.60、または、約0.51〜約0.55%のリンを含む。このような実施態様のうちその他において、本組成物は、約0.6または約0.65〜約0.8%のリン、例えば、約0.7〜約0.8%または約0.6または0.65〜約0.75%のリンを含む。用語「リン」は、その分子またはイオンの形態に関係なく、リン原子を意味する。
【0042】
食事のナトリウム摂取を変化させた場合、ナトリウムバランスを維持するために、ナトリウムの部分的な排出も同様に変化させなければならない。CKDを有するネコ科動物は、限定された範囲でしかナトリウム排出を変化させることができず、その範囲は糸球体のろ過率が低下するに従って徐々に狭くなる。従って、このようなネコ科動物は、食事における過度に高い、または、過度に低いナトリウム摂取を許容することができない。ネコ科動物に本発明のCKDを予防および/または治療するための組成物を与えることは、最適なナトリウムバランスの維持を補助することができる。従って、いくつかの実施態様において、本発明のネコ科動物におけるCKDを予防するための組成物は、乾量基準で約0.20または0.25〜約0.40%または約0.2〜約0.35%のナトリウムをさらに含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、約0.2〜約0.25または0.30%のナトリウムを含む。このような実施態様のうちその他において、本組成物は、約0.25〜約0.3または0.35%のナトリウムを含む。用語「ナトリウム」は、その分子またはイオンの形態に関係なく、ナトリウム原子を意味する。
【0043】
通常は、摂取したカリウムの大部分は尿に排出され、その残りは便に排出される。CKDを有するネコ科動物の場合、便に排出されたカリウムの比率は増加する。またこのようなネコ科動物は、典型的には、カリウムのホメオスタシスにおいても障害を有する。このようなネコ科動物に、本発明のCKDを予防および/または治療するための組成物を与えることによって、最適なカリウムバランスの維持を補助することができる。従って、いくつかの実施態様において、本発明のネコ科動物におけるCKDを予防するための組成物は、乾量基準で約0.75〜約1%のカリウムをさらに含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、約0.8〜約1%のカリウムを含む。このような実施態様のうちその他において、本組成物は、約0.75〜約0.9%のカリウムを含む。用語「カリウム」は、その分子またはイオンの形態に関係なく、カリウム原子を意味する。
【0044】
いくつかの実施態様において、本発明のCKDを予防するための組成物はさらに、リン、ナトリウムおよびカリウムのうちいずれか2種またはそれより多くを、上記で考察された量のあらゆる組み合わせで含む。
【0045】
その他の態様において、本発明は、ネコ科動物におけるCKDの治療に適した組成物を提供する。本組成物は、乾量基準で約26〜約30%、または、約28〜約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む。
【0046】
治療は、CKDを有するネコ科動物がより健康で、より長く、さらにより活動的な生活を送るための手助けになり得る。CKDの治療は、CKDを改善および/または抑制することを含み、例えば、動物の腎機能の低下、または、糸球体のろ過率の低下を遅らせることを含んでいてもよい。当業者であれば、血液および尿検査、それに加えて、例えば放射線写真法、超音波、腎生検および/または触診を利用することによってCKDを診断することができる(加えて、CKDを、例えば腎臓腫瘍、糖尿病および甲状腺機能亢進症のようなその他の病気と区別することができる)。その他の症状に加えて、CKDを有するネコ科動物は、典型的には、高い血清クレアチニンおよび/またはBUNを示す。本発明のCKDを治療するための組成物は、CKDを有するあらゆるネコ科動物に適している。本発明の組成物で治療することができるネコ科動物の例は、上記で本発明のCKDを予防するための組成物に関して考察されている通りである。
【0047】
その他の実施態様において、本組成物は、約28〜約29%のタンパク質を含み、このような実施態様のうちその他において、本組成物は、約29〜約30%のタンパク質を含む。このような実施態様のうちさらにその他において、本組成物は、約28または約28.5〜約29、約29.5または約30%のタンパク質を含む。CKDを治療するための本組成物におけるタンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む(すなわち、本発明のネコ科動物におけるCKDを治療するための組成物は、約26〜約30%または約28〜約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、少なくとも約80%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちその他において、本組成物は、少なくとも約85%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちその他において、該タンパク質は、少なくとも約90%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちその他において、該タンパク質は、少なくとも約95%の植物性タンパク質(すなわち、少なくとも約95〜約100%の植物性タンパク質)を含む。いくつかの実施態様において、ネコ科動物におけるCKDを治療するための本組成物は、約28または約28.5〜約29、約29.5または約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。
【0048】
いくつかの実施態様において、CKDを治療するための本組成物は、乾量基準で約0.20〜約0.50%または約0.45〜約0.6%のリンをさらに含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、約0.20〜約0.45、または、約0.45〜約0.55%のリンを含み;および、このような実施態様のうちその他において、約0.20〜約0.40、または、約0.45〜約0.5%のリンを含む。
【0049】
いくつかの実施態様において、CKDを治療するための本組成物は、乾量基準で約0.2〜約0.25%または約0.23〜約0.30%のナトリウムをさらに含む。
【0050】
いくつかの実施態様において、CKDを治療するための本組成物は、乾量基準で約0.75〜約1%のカリウムをさらに含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、約0.7〜約0.9%のカリウムを含み;および、このような実施態様のうちその他において、約0.75〜約0.85%のカリウムを含む。
【0051】
いくつかの実施態様において、CKDを治療するための本組成物はさらに、リン、ナトリウムおよびカリウムの2種またはそれより多くを、上記で考察された量のあらゆる組み合わせで含む。
【0052】
いくつかの実施態様において、本発明のCKDを予防および/または治療するための組成物は、食品組成物を含む(すなわち、本組成物は、1種またはそれより多くの本発明の食品組成物を含む)。いくつかの実施態様において、本組成物は、繁殖または維持に必要なAAFCOの最低栄養基準を満たしているか、それ未満である。当業者は、CKDに影響を与える組成物のリン及びタンパク質レベルはAAFCOの推奨よりも低くてもよいことを理解している。いくつかの実施態様において、食品組成物は、ドライフードを含む。いくつかの実施態様において、食品組成物は、セミモイストフードを含む。いくつかの実施態様において、食品組成物は、モイストフードを含む。いくつかの実施態様において、食品組成物は、特別食(treat)、スナック、サプリメント、または、部分的に、もしくは完全に食用の玩具を含む。いくつかの実施態様において、本組成物は、1種またはそれより多くの食品の混合物を含む。
【0053】
さらなる態様において、本発明は、本発明の組成物を含むキットを提供する。本キットは、ネコ科動物におけるCKDを予防および/または治療することに適している。いくつかの実施態様において、本キットは、抗CKD剤(すなわち、1種またはそれより多くの抗CKD剤)をさらに含む。いくつかの実施態様において、本キットは、以下の(1)〜(6)のうち1種またはそれより多くに関する説明をさらに含む:(1)ネコ科動物に本組成物を与えること、(2)ネコ科動物に本組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与すること、(3)ネコ科動物に本組成物を与えることによって、ネコ科動物におけるCKDを予防すること、(4)ネコ科動物に本組成物を与えることによって、ネコ科動物におけるCKDを治療すること、(5)ネコ科動物に本組成物を与えることと共にネコ科動物に抗CKD剤を投与することによって、ネコ科動物におけるCKDを予防すること、および、(6)ネコ科動物に本組成物を与えることと共にネコ科動物に抗CKD剤を投与することによってネコ科動物におけるCKDを治療すること。
【0054】
いくつかの実施態様において、本キットは、一緒に混合すると(ここで任意に、キットの一部である追加成分またはキットの一部ではない追加成分を共に混合してもよい)、本発明の組成物が生じる2種またはそれより多くの成分を含む。このような追加成分を用いる予定がある場合、本キットは、これらの成分に関する説明を提供する。いくつかの実施態様において、本キットは、抗CKD剤をさらに含む。いくつかの実施態様において、本キットは、以下の(1)〜(10)のうち1種またはそれより多くに関する説明をさらに含む:(1)上記成分を混合することによって、本発明のネコ科動物におけるCKDを予防するための組成物を製造すること、(2)上記成分を混合することによって、本発明のネコ科動物におけるCKDを治療するための組成物を製造すること、(3)ネコ科動物に、本発明のCKDを予防するための組成物を与えること、(4)ネコ科動物に、本発明のCKDを治療するための組成物を与えること、(5)ネコ科動物に本発明のCKDを予防するための組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与すること、(6)ネコ科動物に本発明のCKDを治療するための組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与すること、(7)ネコ科動物に本発明のCKDを予防するための組成物を与えることによって、ネコ科動物におけるCKDを予防すること、(8)ネコ科動物に本発明のCKDを治療するための組成物を与えることによって、ネコ科動物におけるCKDを治療すること、(9)ネコ科動物に本発明のCKDを予防するための組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与することによって、ネコ科動物におけるCKDを予防すること、および、(10)ネコ科動物に本発明のCKDを治療するための組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与することによって、ネコ科動物におけるCKDを治療すること。
【0055】
いくつかの実施態様において、本キットは、キットの構成要素に応じて適切になるように単一包装中の別個の容器、または、仮想包装中の別個の容器に、本発明の組成物、または、一緒に混合すると(ここで任意に、キットの一部である追加成分またはキットの一部ではない追加成分を共に混合してもよい)、本発明の組成物が生じる2種またはそれより多くの成分を含み、ならびに、以下の(1)〜(10)のうち1種またはそれより多くに関する説明を含む:(1)上記成分を混合することによって、本発明のネコ科動物におけるCKDを予防するための組成物を製造すること、(2)上記成分を混合することによって、本発明のネコ科動物におけるCKDを治療するための組成物を製造すること、(3)CKDを予防するために、ネコ科動物に本発明の組成物を与えること、(4)CKDを治療するために、ネコ科動物に本発明の組成物を与えること、(5)CKDを予防するためにネコ科動物に本発明の組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与すること(6)CKDを治療するためにネコ科動物に本発明の組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与すること、(7)ネコ科動物に本発明のCKDを予防するための組成物を与えることによって、ネコ科動物におけるCKDを予防すること、(8)ネコ科動物に本発明のCKDを治療するための組成物を与えることによって、ネコ科動物におけるCKDを治療すること、(9)ネコ科動物に本発明のCKDを予防するための組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与することによって、ネコ科動物におけるCKDを予防すること、および、(10)ネコ科動物に本発明のCKDを治療するための組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与することによって、ネコ科動物におけるCKDを治療すること。
【0056】
用語「単一包装」とは、一般的に、キットの構成要素が、物理的に1個またはそれより多くの容器にはいっているか、または付随している状態を意味し、これらは、製造、分配、販売または使用の単位とみなされる。容器としては、例えば、バッグ、箱、ボトル、収縮包装、ステープル留め、または、その他の方法で固定した構成要素、および、それらの組み合わせが挙げられる。単一包装は、例えば、製造、分配、販売もしくは使用の単位とみなされるように物理的に一まとまりになった、容器または個々の食品組成物であり得る。用語「仮想包装」は、一般的に、1個またはそれより多くの物理的または仮想のキットの構成要素上に、どのように追加の構成要素を得るかを使用者に教示する説明によってキットの構成要素が関連付けられている形態を意味しており、例えば、バッグ中に、1種の構成要素が含まれ、それに加えて、ウェブサイトに行き、録音メッセージにアクセスし、画像メッセージを見るか、または、治療奉仕者と連絡を取って本キットをどのように使用するかに関する説明を入手することを使用者に教示する指示が含まれている形態である。本キットが仮想包装を含む場合、本キットは、1個またはそれより多くの物理的なキットの構成要素を含む仮想の環境における説明に限定される。
【0057】
いくつかの実施態様において、本キットは、ネコ科動物における慢性腎疾患を予防するのに適しており、さらに本キットは、単一包装中の別個の容器、または、仮想包装中の別個の容器に、必要に応じて、以下:乾量基準で約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)、または、一緒に混合すると(ここで任意に、キットの一部である追加成分またはキットの一部ではない追加成分を共に混合してもよい)、約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)が生じる2種またはそれより多くの成分、ならびに、以下の(1)〜(5)のうち1種またはそれより多く:(1)抗慢性腎疾患剤、(2)本組成物の製造に関する説明、(3)本組成物のネコ科動物への供給に関する説明、(4)ネコ科動物に本組成物を与えることによってネコ科動物における慢性腎疾患を予防するための説明、および、(5)ネコ科動物に本組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗慢性腎疾患剤を投与することによって、ネコ科動物における慢性腎疾患を予防するための説明
を含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本キットは、約31〜約35%のタンパク質を含む組成物、または、一緒に混合すると(ここで任意に、キットの一部である追加成分またはキットの一部ではない追加成分を共に混合してもよい)、約31〜約35%のタンパク質を含む組成物が生じる2種またはそれより多くの成分を含む。
【0058】
その他の実施態様において、本キットは、ネコ科動物における慢性腎疾患を治療することに適しており、本キットは、単一包装中の別個の容器、または、仮想包装中の別個の容器に、必要に応じて、約26〜約30%または約28〜約30%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)、または、一緒に混合すると(ここで任意に、キットの一部である追加成分またはキットの一部ではない追加成分を共に混合してもよい)、約26〜約30%または約28〜約30%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)が生じる2種またはそれより多くの成分、ならびに、以下の(1)〜(5)のうち1種またはそれより多くを含む:(1)抗慢性腎疾患剤、(2)本組成物の製造に関する説明、(3)本組成物のネコ科動物への供給に関する説明、(4)ネコ科動物に本組成物を与えることによって、ネコ科動物において慢性腎疾患を治療するための説明、および、(5)ネコ科動物に本組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗慢性腎疾患剤を投与することによって、ネコ科動物において慢性腎疾患を治療するための説明。
【0059】
その他の態様において、本発明は、以下の(1)〜(10)のうち1種またはそれより多くに関する情報または説明を伝達するための手段を提供する:(1)CKDを予防するために、ネコ科動物に本発明の組成物を与えること、(2)CKDを治療するために、ネコ科動物に本発明の組成物を与えること、(3)CKDを予防するためにネコ科動物に本発明の組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与すること(4)CKDを治療するためにネコ科動物に本発明の組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与すること、(5)ネコ科動物に本発明のCKDを予防するための組成物を与えることによって、ネコ科動物におけるCKDを予防すること、(6)ネコ科動物に本発明のCKDを治療するための組成物を与えることによって、ネコ科動物におけるCKDを治療すること、(7)ネコ科動物に本発明のCKDを予防するための組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与することによって、ネコ科動物におけるCKDを予防すること、(8)ネコ科動物に本発明のCKDを治療するための組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗CKD剤を投与することによって、ネコ科動物におけるCKDを治療すること、(9)CKDを予防するために、本発明のキットを用いること、および、(10)CKDを治療するために、本発明のキットを用いること。上記伝達手段は、例えば、上記情報または説明を含む、文書、デジタル記憶媒体、光学記憶媒体、音声による提示もしくは視覚表示端末を含む。好ましくは、上記伝達手段は、このような情報または説明を含むウェブサイト表示、または、小冊子、製品ラベル、添付文書、広告、または、視覚表示端末である。有用な情報または説明としては、例えば、(1)本発明の組成物、方法またはキットをどのように使用するかに関する情報および説明、および、(2)使用者が本発明およびその使用に関して質問がある場合、動物の治療奉仕者に関する連絡先が挙げられる。
【0060】
いくつかの実施態様において、本発明は、(1)ネコ科動物に本発明の組成物を与えることによって、ネコ科動物における慢性腎疾患を予防すること[ここで本組成物は、約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む]、(2)ネコ科動物に本発明の組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗慢性腎疾患剤を投与することによって、ネコ科動物における慢性腎疾患を予防すること[ここで本組成物は、約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む]、および、(3)本発明のネコ科動物におけるCKDを予防するためのキットを用いること、のうち1種またはそれより多くに関する情報または説明を伝達するための手段を提供し、ここで本キットは、約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)、または、一緒に混合すると(任意に追加成分と共に)、約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)が生じる2種またはそれより多くの成分を含む組成物を含む。このような手段は、上記情報または説明を含む、文書、デジタル記憶媒体、音声による提示もしくは視覚表示端末を含む。
【0061】
その他の実施態様において、本発明は、(1)ネコ科動物に本発明の組成物を与えることによって、ネコ科動物における慢性腎疾患を治療すること[ここで本組成物は、乾量基準で約26〜約30%または約28〜約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む]、(2)ネコ科動物に本発明の組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗慢性腎疾患剤を投与することによって、ネコ科動物における慢性腎疾患を治療すること[ここで本組成物は、乾量基準で約26〜約30%または約28〜約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む]、および、(3)本発明のネコ科動物におけるCKDを治療するためのキットを用いること、のうち1種またはそれより多くに関する情報または説明を伝達するための手段を提供し、ここで本キットは、約26〜約30%または約28〜約30%のタンパク質(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)、または、一緒に混合すると(任意に追加成分と共に)、約26〜約30%または約28〜約30%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)が生じる2種またはそれより多くの成分を含む組成物を含む。このような伝達手段は、上記情報または説明を含む、文書、デジタル記憶媒体、音声による提示もしくは視覚表示端末を含む。
【0062】
その他の態様において、本発明は、ネコ科動物のCKDの予防に適した医薬品を製造するための、本発明の組成物の使用を提供する。本明細書において説明されているように、本組成物は、一般的に、乾量基準で約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む。いくつかの実施態様において、本組成物は、約33〜約35%または約28〜約31%のタンパク質を含み、ここで本組成物中に存在する該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、約33〜約34%または約26〜約30%または約28〜約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちその他において、本組成物は、約34〜約35%または約29〜約31%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちさらにその他において、本組成物は、約28または約28.5〜約29、約29.5、約30、約30.5または約31%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。その他の実施態様において、本組成物は、約33または約33.5〜約34、約34.5または約35%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。その他の実施態様において、本組成物は、約31〜約35%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちいくつかにおいて、本組成物は、約31、約32または約33〜約34または約35%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。その他の実施態様において、本組成物は、約35、約36または約36.5〜約37または約38%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。このような実施態様のうちその他において、本組成物は、約31〜約32、約33、約34または約35%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。いくつかの実施態様において、本組成物はさらに、ナトリウム、リン、および、カリウムのうち1種またはそれより多くを上記で考察された量で含む。その他の実施態様において、本組成物は、約35〜約36、約36.5、約37または約38%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。加えて、いくつかの実施態様において、本組成物は、食品組成物を含む。
【0063】
その他の態様において、本発明は、ネコ科動物のCKDの治療に適した医薬品を製造するための、本発明の組成物の使用を提供する。本明細書において説明されているように、本組成物は、一般的に、乾量基準で約26〜約30%または約28〜約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む。いくつかの実施態様において、本組成物は、約28または約28.5〜約29、約29.5または約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。いくつかの実施態様において、本組成物は、約26または約27〜約28、約29または約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、または、少なくとも約95%の植物性タンパク質を含む。いくつかの実施態様において、本組成物はさらに、リン、ナトリウムおよびカリウムのうち1種またはそれより多くを上記で考察された量で含む。加えて、いくつかの実施態様において、本組成物は、食品組成物を含む。
【0064】
一般的に、医薬品は、化合物または組成物と、賦形剤、緩衝液、結合剤、可塑剤、着色剤、希釈剤、圧縮剤(compressing agent)、潤滑剤、香味物質、湿潤剤、および、ネコ科動物への投与に適した医薬品製造および医薬品の製剤化に有用なその他の当業者既知の成分とを混合することによって製造される。
【0065】
その他の態様において、本発明は、本発明のCKDを予防および/または治療するための組成物の製造方法を提供する。このような組成物は、例えば、混合すると本発明の組成物が得られる様々な成分(食品組成物を含む)を混合することによって製造することができる。また本発明の組成物は、例えば、Small Animal Nutrition,127〜146頁(2000)で考察されている方法によって製造することもできる。上記で考察したように、本発明の組成物の製造に適した植物成分としては、例えば、ジャガイモ濃縮物、ダイズ濃縮物、ダイズ粉末、分離されたダイズタンパク質産物、トウモロコシのグルテン粉末、分離された米タンパク質産物、エンドウマメのタンパク質の濃縮物、コムギタンパク質の濃縮物、および、分離されたコムギタンパク質産物が挙げられる。
【0066】
動物におけるクレアチニン値は、当業者既知のあらゆる方法によって測定することができる。本発明の組成物、例えばCKDを治療または予防するための組成物はまた、動物における血清クレアチニン値を低くするのにも適切である可能性がある。好ましくは、このような動物は、コンパニオンアニマルであり、例えばネコ科動物である。本発明の方法、例えばCKDを治療または予防するための本発明の方法は、動物における血清クレアチニン値を低くするのに適切である可能性がある。
【0067】
本発明の方法に関して、好ましくは有効量が動物に与えられる。「有効量」は、本明細書で説明されている化合物、材料または組成物の、特定の生物学的な結果を達成するのに有効となり得る量を意味する。このような結果としては、これらに限定されないが、CKDの治療および/または予防が挙げられる。有効量は、動物の理想的な体重、本組成物の代謝エネルギー、および、動物への本発明の組成物の供給頻度(例えば1日1回、2回または3回)、および、動物に与えられるその他の組成物などの数種の要因に基づいていてもよい。
【0068】
方法論、プロトコールおよび試薬は様々であってよいため、本発明は、本明細書において説明される特定の方法論、プロトコールおよび試薬に限定されない。さらに、本明細書において用いられる用語は、単に具体的な実施態様を説明するためであり、本発明の範囲を限定することは目的としない。本明細書および添付の請求項で用いられるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈において特に明記されない限り、複数形も示すこととする。同様に、「〜を含む(comprise)」、「〜を含む(comprises)」、および、「〜を含む(comprising)」という言葉は、限定的ではなく包括的に解釈することとする。
【0069】
特に他の指定がない限り、本明細書において用いられる全ての専門用語や科学用語およびあらゆる頭字語は、本発明の分野における当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施において、本明細書において説明されるものと類似しているか、または同等であるあらゆる方法および材料を用いることができるが、ここで好ましい方法、装置および材料を説明する。
【0070】
本明細書で述べられた全ての特許、特許出願およびその他の参考文献は、そこで開示された本発明と共に用いられる可能性がある化合物、プロセス、技術、手法、技術、論文、ならびにその他の組成物および方法を説明し開示する目的で法的に許容される程度に、参照により開示に含まれる。しかしながら、先行発明によって、本発明がこのような開示より前になされたものではないとすることを認めるように解釈されるべきではない。
【0071】
実施例
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、当然ながらこれらの実施例は単に説明のために示されたものであり、特に他の指定がない限り本発明の範囲を限定することは目的としない。
【0072】
実施例1
実施例1は、健康なネコにおいてCKDを予防することに対する本発明の組成物の作用を説明する。
【0073】
フードAは、ネコの維持に関するAAFCOの最低栄養基準を満たしたネコ用ドライフードとして配合された。これは、タンパク質成分としてダイズ粉末、トウモロコシのグルテン粉末、トリ肉の粉末、および、ブタ肉の分離されたタンパク質産物を含む。フードAは、乾量基準で約34%の総タンパク質量を含み、これらタンパク質の97%は、野菜由来であり、3%は動物由来であった。またフードAは、0.61%のリン、および、0.35%のナトリウムも含む。
【0074】
フードB1は、ネコの維持に関するAAFCOの最低栄養基準を満たしたネコ用ドライフードとして配合された。これは、タンパク質成分としてダイズ粉末、トウモロコシのグルテン粉末、トリ肉の粉末、および、ブタ肉の分離されたタンパク質産物を含む。フードB1は、乾量基準で約34%の総タンパク質量を含み、これらタンパク質の77%は、野菜由来である。またフードB1は、0.60%のリン、および、0.33%のナトリウムも含む。
【0075】
フードB2は、ネコの維持に関するAAFCOの最低栄養基準を満たしたネコ用ウェットフードとして配合した。これは、タンパク質成分としてダイズ粉末、トウモロコシのグルテン粉末、ブタの肺、ニワトリ、および、ブタの肝臓を含む。フードB2は、乾量基準で約34%の総タンパク質量を含み、これらタンパク質の32%は、野菜由来である。またフードB2は、0.60%のリン、および、0.30%のナトリウムも含む。
【0076】
フードCは、ネコの維持に関するAAFCOの最低栄養基準を満たしたネコ用ドライフードとして配合された。これは、タンパク質成分としてトウモロコシのグルテン粉末、トリ肉の粉末、および、ブタ肉の分離されたタンパク質産物を含む。フードCは、乾量基準で約34%の総タンパク質量を含み、これらタンパク質の85%は、野菜由来である。またフードCは、0.62%のリン、および、0.35%のナトリウムも含む。
【0077】
8匹の健康なネコに、フードAを26週間与えた。それ以外の8匹の健康なネコに、フードCを26週間与えた。6匹の健康なネコに、フードB1を26週間与えた。加えて、それ以外の6匹の健康なネコに、フードB2を26週間与えた。全てのネコの血清クレアチニン値を、実験の開始時および完了時(すなわち、それぞれ0日目および26週目)に測定した(ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)の自動血清化学解析器)。その結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
全てのネコは、実験の開始時には正常な血清クレアチニン値を有していた。約0.8〜約1.8mg/dLの血清クレアチニン値は正常とみなされる。フードB1を与えられたネコは、最も低い血清中の初期のクレアチニン値を示した。特にフードB2(すなわち、最も低い植物性タンパク質含量を含むフード)が与えられたネコと比較した場合、フードAおよびC(すなわち、最大の植物性タンパク質含量を含むフード)が与えられたネコにおいて、血清クレアチニン値における有意な減少が観察された。フードB2が与えられたネコと比較して、フードB1が与えられたネコでは、血清クレアチニン値の有意な減少は観察されなかった。
【0080】
実施例2
実施例2は、腎機能不全を有するネコ、および、年齢をあわせた正常なネコにおいてCKDを治療することに対する本発明の組成物の作用を説明する。
【0081】
フードDは、ネコの維持に関するAAFCOの最低栄養基準を満たしたネコ用ドライフードとして配合された。これは、乾量基準で約28%の総タンパク質量を含み、これらタンパク質の79%は、野菜由来である。
【0082】
腎機能不全と診断された6匹のネコおよび6匹の健康なネコに、フードDを26週間与えた。全てのネコの血清クレアチニンおよび血清リン値は、実験の開始時、13および26週目に測定した。26週目のデータは、26週目の時点でn=2であるため存在しない。その結果を、表2および3に示す。
【0083】
【表2】

【表3】

【0084】
フードDを与えることによって、健康なネコとCKDを有するネコの両方において血清クレアチニン値が減少した。加えて、フードDを与えることによっても、健康なネコとCKDを有するネコの両方において血清リン値の減少が起こった(約3〜約5.6mg/dLのリン値は、正常とみなされる)。
【0085】
特に他の指定がない限り、本明細書で示された全てのパーセンテージは、乾量基準による重量パーセンテージである。用語「乾量基準」(DMB)は、組成物中の成分の濃度を、組成物中の水分を除去した後に測定することを意味する。
【0086】
本明細書において本発明の典型的な好ましい実施態様を開示し、特定の用語を用いたが、これらは一般的で説明的な意味でのみ用いられ、請求項に記載の本発明の範囲を限定することは目的としない。上記の教示の観点から、極めて多くの本発明の改変および変更が可能である。従って当然ながら、本発明は、添付の請求項の範囲内であれば、具体的に説明したもの以外の方法で実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネコ科動物における慢性腎疾患の予防方法であって、該方法は、乾量基準で約33〜約38%のタンパク質を含む組成物をネコ科動物に与えることを含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む、上記方法。
【請求項2】
前記組成物が、約31〜約35%のタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、乾量基準で約0.6〜約0.8%のリンをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、乾量基準で約0.25〜約0.35%のナトリウムをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、乾量基準で約0.75〜約1%のカリウムをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ネコ科動物が、ネコである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、食品組成物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ネコ科動物における慢性腎疾患の治療方法であって、該方法は、乾量基準で約26〜約30%のタンパク質を含む組成物をネコ科動物に与えることを含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む、上記方法。
【請求項9】
前記組成物が、約0.20〜約0.50%のリンをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、乾量基準で約0.23〜約0.30%のナトリウムをさらに含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、乾量基準で約0.75〜約1%のカリウムをさらに含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ネコ科動物が、ネコである、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、食品組成物である、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、ネコ科動物に抗慢性腎疾患剤を投与することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
乾量基準で約33〜約38%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む組成物。
【請求項16】
前記組成物が、約31〜約35%のタンパク質を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、乾量基準で約0.6〜約0.8%のリンをさらに含む、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、乾量基準で約0.25〜約0.35%のナトリウムをさらに含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、乾量基準で約0.75〜約1%のカリウムをさらに含む、請求項15〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記ネコ科動物が、ネコである、請求項15〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、食品組成物である、請求項15〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
ネコ科動物における慢性腎疾患の予防に適した、請求項15〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
乾量基準で約26〜約30%のタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む組成物。
【請求項24】
前記組成物が、乾量基準で約0.20〜約0.50%のリンをさらに含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、乾量基準で約0.23〜約0.30%のナトリウムをさらに含む、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、乾量基準で約0.75〜約1%のカリウムをさらに含む、請求項23〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記ネコ科動物が、ネコである、請求項23〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が、食品組成物である、請求項23〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
ネコ科動物における慢性腎疾患の治療に適した、請求項23〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
ネコ科動物における慢性腎疾患の予防に適したキットであって、キットの構成要素に応じて適切になるように単一包装中の別個の容器、または、仮想包装中の別個の容器に、以下:乾量基準で約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)、または、一緒に混合すると(ここで任意に、キットの一部である追加成分またはキットの一部ではない追加成分を共に混合してもよい)、乾量基準で約33〜約38%または約28〜約35%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)が生じる2種またはそれより多くの成分、ならびに、以下の(1)〜(5)のうち1種またはそれより多く:(1)抗慢性腎疾患剤、(2)該組成物の製造に関する説明、(3)該組成物のネコ科動物への供給に関する説明、(4)ネコ科動物に該組成物を与えることによってネコ科動物における慢性腎疾患を予防するための説明、および、(5)ネコ科動物に該組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗慢性腎疾患剤を投与することによって、ネコ科動物における慢性腎疾患を予防するための説明
を含むキット。
【請求項31】
前記キットが、約31〜約35%のタンパク質を含む組成物、または、一緒に混合すると(ここで任意に、キットの一部である追加成分またはキットの一部ではない追加成分を共に混合してもよい)、約31〜約35%のタンパク質を含む組成物が生じる2種またはそれより多くの成分を含む、請求項28に記載のキット。
【請求項32】
ネコ科動物における慢性腎疾患の治療に適したキットであって、該キットは、単一包装中の別個の容器、または、仮想包装中の別個の容器に、必要に応じて、以下:乾量基準で約26〜約30%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)、または、一緒に混合すると(ここで任意に、キットの一部である追加成分またはキットの一部ではない追加成分を共に混合してもよい)、乾量基準で約26〜約30%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)が生じる2種またはそれより多くの成分、ならびに、以下の(1)〜(5)のうち1種またはそれより多く:(1)抗慢性腎疾患剤、(2)該組成物の製造に関する説明、(3)該組成物のネコ科動物への供給に関する説明、(4)ネコ科動物に該組成物を与えることによって、ネコ科動物において慢性腎疾患を治療するための説明、および、(5)ネコ科動物に該組成物を与えることと共に、ネコ科動物に抗慢性腎疾患剤を投与することによって、ネコ科動物において慢性腎疾患を治療するための説明
を含むキット。
【請求項33】
下記:
(1)乾量基準で約33〜約38%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)をネコ科動物に与えることによる、ネコ科動物における慢性腎疾患の予防、(2)乾量基準で約33〜約38%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)をネコ科動物に与えることと共に、ネコ科動物に抗慢性腎疾患剤を投与することによる、ネコ科動物における慢性腎疾患の予防、および、(3)請求項29に記載のキットの使用
のうち1種またはそれより多くに関する情報または説明を伝達するための手段であって、
該情報または説明を含む、文書、デジタル記憶媒体、音声による提示もしくは視覚表示端末を含む該手段。
【請求項34】
下記:
(1)乾量基準で約26〜約30%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)をネコ科動物に与えることによる、ネコ科動物における慢性腎疾患の治療、(2)乾量基準で約26〜約30%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)をネコ科動物に与えることと共に、ネコ科動物に抗慢性腎疾患剤を投与することによる、ネコ科動物における慢性腎疾患の治療、および、(3)請求項34に記載のキットの使用
のうち1種またはそれより多くに関する情報または説明を伝達するための手段であって、
該情報または説明を含む、文書、デジタル記憶媒体、音声による提示もしくは視覚表示端末を含む該手段。
【請求項35】
ネコ科動物における慢性腎疾患の予防に適した医薬品を製造するための、乾量基準で約33〜約38%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)の使用。
【請求項36】
ネコ科動物における慢性腎疾患の治療に適した医薬品を製造するための、乾量基準で約26〜約30%のタンパク質を含む組成物(ここで該タンパク質は、少なくとも約75%の植物性タンパク質を含む)の使用。
【請求項37】
動物に請求項15〜29のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、動物における血清クレアチニン値を低下させる方法。

【公表番号】特表2009−523827(P2009−523827A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551549(P2008−551549)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/060773
【国際公開番号】WO2007/084986
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】