説明

ネットシステムを有する脈管内デバイス

【課題】脈管内の事前に狭窄した部位を開いたままにし、かつ、そのような部位において組織残屑が脈管を閉鎖することを最小化するための脈管内デバイスを提供する。
【解決手段】このデバイス10は、複数の開口13を有する骨格12によって画定される実質的にチューブ状の拡張性本体11を含む。このデバイスは、更に、それぞれの開口に広がる構造デザインを有する可撓性ネットシステム14も含む。そのようなデザインは、ネットシステムが骨格におけるそれぞれの開口と共に拡張してその部位における組織残屑の放出が脈管腔を閉鎖することを最小化することを可能にする。このネットシステムは、脈管内の流体流と脈管壁とのコミュニケーションを可能にする複数の孔、および特定の疾患の治療または予防に関する少なくとも一種類の薬物療法薬を含み得る。このデバイスの注目の部位への配置方法も更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈管内デバイス、特に、脈管内の開存腔(open lumen)を維持し、かつ、血栓形成並びに組織残屑(tissue debris)の放出を最小化して脈管内の流体流閉塞を防ぐためのステントに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医療用脈管内デバイスが、高血圧、糖尿病、および脳卒中に関連する疾患に対して処置を施すために現在一時的にまたは永久的に人体内で使用されている。脈管内デバイスの一例は、例えば、冠動脈血管形成術における使用のためのステントである。ステントは、脈管構造、例えば血管や動脈、内に埋め込まれ得る小さな機械装置であり、狭窄位置において機械的に拡張させられて開存腔を維持し、それを通る実質的に障害物のない流路にさせ得る。ステントは、更に、崩壊しやすい領域において脈管壁を支持するようにも作用する。
【0003】
狭窄脈管の機械的再開通(mechanical reopening)は、場合によっては狭窄部位または閉鎖部位における組織の損傷を招く。そのような損傷は、しばしば、そのような部位における血栓の形成、並びに次に脈管内の流体流を閉塞するように作用し得る組織残屑の放出を促進し得る。更に、増殖させられると、著しい新生内膜過形成または再狭窄が生じ得る。血栓生成は、最も一般的なステント挿入後の臨床的問題の一つを残し、その再発を防ぎ、かつ/または、制御するための、有効な処置または対策を必要とする。
【0004】
現在、血栓を防いだり制御したりする方法は、特に、外部または内部組織刺激(stimulant)、例えば、血管形成術、ステント挿入術および/またはウィルス、に対する身体反応に関与すると考えられている影響因子を対象としている。再狭窄を防いだり制御したりするのに使用されてきた一般的な対策は、通常、(1)機械的アテローム切除術(mechanical atheroablative techniques)、例えば、デバルキング、脈管フィルタ(vascular filters)、および塞栓トラップデバイス(emboli−trapping devices)、(2)超音波開始アテローム切除術、(3)光補助法、主エキシマーレーザー血管形成術(predominantly excimer laser angioplasty)、(4)薬剤および遺伝子治療、(5)免疫モジュレータと考えられている紫外線フォトフォレシス(ultraviolet photophoresis)、(6)放射線治療、例えば外部および脈管内小線源治療、並びに(7)再ステント挿入、を含む、いくつかのカテゴリーの一種類に該当する。
【0005】
加えて、ステントデザインおよび材料の変更が提案されて再狭窄が防がれ、かつ/または制御されてきた。一つのアプローチにおいて、非金属生分解性ステント材料、例えば、高分子量ポリ−l−乳酸(PLLA)が使用される。
【0006】
多くの無機コーティングおよび表面処理も更に開発されて金属ステントの化学的不活性および生体適合性を改良した。しかしながら、いくつかのコーティング、例えば金、は、非コーティングステントよりも高いステント内再狭窄率を生じる。炭化ケイ素およびターボスタティックカーボン(turbostatic carbon)を含む別のコーティングは、有望であるが更なる研究が行われなければならない。
【0007】
合成コーティングと天然コーティングの両方を含む有機コーティングも更に広く研究されてきた。合成コーティングの中で、ダクロン(Dacron)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチルアクリレート/ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、シリコーン、コラーゲンおよび酸化イリジウムが研究されている。研究の結果(例えばPTFEコートステントの研究結果)は、期待はずれであるか、または、せいぜい混合したものである。なぜなら、遅発性血栓閉塞事象(late thrombo−occlusive events)の発生が高いからである。ほんのわずかな例外はあるが、全体的な認識は、良好な結果がPTFEコートステントを用いる従来のステント内再狭窄の治療と関連しないということで一致している。
【0008】
更に、冠動脈インターベンション(intracoronary intervention)を用いてバルーン血管形成後の平滑筋細胞増殖を減らすことによって内膜新生を減少していた。しかしながら、そのようなインターベンションは、しばしば、亜急性晩期血栓症によって困難になる。冠動脈血栓アスプドラギレイション(coronary thrombo−aspdrugiration)および冠動脈パルススプレー治療、続く即時脈管内療法、が特にプラークに関連する血栓材料の除去において有用であった。
【0009】
加えて、免疫抑制剤、抗凝血薬および抗炎症化合物、化学療法薬剤、抗生物質、抗アレルギー薬、細胞周期阻害剤、遺伝子治療化合物、およびセラミド治療化合物を含む薬物療法薬が、いくつかの主な血管形成後の合併症の治療に使用されてきた。薬物療法薬は、全身的に送達されても局所的に送達されてもよい。全身的治療は、ステント埋め込み後の再狭窄の減少においてある程度の成功を示した。これは、損傷部位における薬物療法薬の不充分な濃度によると思われる。しかしながら、投与量の増加は、起こりうる全身毒性によって制約される。薬剤溶出ステントによるより高い用量の局所的送達が不利な全身的作用を大きく減少させ得ることが観測された。しかしながら、ステントによる薬剤の局所送達は、薬剤溶出に関する表面積の量によって制限され得る。
【0010】
遺伝子療法もまた血栓生成の治療において用いられてきた。この療法は、平滑筋細胞に対して行われ、染色体の一体化と共にまたは染色体の一体化なしにDNAによる選択細胞への遺伝子導入を伴う。一体化なしの形質導入において、遺伝子は細胞質と核の両方に送達され、従って非選択的である。一体化に関する遺伝子移動は、成長促進物質(growth stimulators)に影響を与えるレトロウィルスを用いる。
【0011】
抗生物質が、同様に、冠動脈疾患の治療に使用されてきた。抗生物質は、動脈を閉塞する脂肪プラークにおいて見つかる種々の感染体によって生じる炎症の制御に有効であることが知られている。例えばアジスロマイシンを用いる臨床試験の結果は、心臓病患者に穏当な抗生物質の有益性を示唆する。
【0012】
同様に、免疫抑制作用を示すリン脂質は、T細胞の活性化および増殖をブロックし、タキソール誘発細胞周期アポトーシスを抑制し、かつ悪性筋原細胞におけるプロテインキナーゼシグナル翻訳を活性化することを示した。ラパマイシンおよびその類似体は、軽度の副作用しか起こさずに比較的低い用量レベルにおいて抗腫瘍活性を示す。このことは患者の治療の極めて重要な側面である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の要旨
本発明は、一態様において、脈管内の事前に狭窄した脈管内部位を開き続け、かつそのような部位からの組織残屑が脈管を閉鎖することを最小化するための脈管内デバイス、例えばステント、を提供する。このデバイスは、更に、再狭窄の治療や予防のための、少なくとも一種類の薬物療法薬の脈管内部位への局所的送達にも用いられ得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によると、脈管内デバイスは、脈管壁に対する配置用の実質的にチューブ状の拡張性本体を含む。このデバイスの本体は、一態様において、複数の開口を有する骨格によって画定され得る。このデバイスは、更に、それぞれの開口に広がる構造デザインを有する可撓性ネットシステム(netting system)も含む。そのようなデザインは、ネットシステムを骨格中のそれぞれの開口と共に拡張させて血栓形成および組織残屑が脈管腔を閉鎖することの発生を最小化する。このネットシステムは、脈管内の流体流と脈管壁とのコミュニケーションを可能にする複数の孔、および特定の疾患の治療や予防に関する少なくとも一種類の薬物療法薬を含んでもよい。一態様において、ネットシステムは、それぞれマトリックスの開口内にしっかりと設けられるようにデザインされている、複数の伸張性パネルを含む。別の態様において、ネットシステムは、実質的に可撓性のマトリックス上に配置されるメッシュ、例えばメッシュが本体の骨格の周囲に同心円状に置かれるものを含む。必要に応じて、可撓性マトリックスを、充分な強度で提供して、骨格が拡張されるまでネットシステムが脈管腔を一時的に開いたままにすることを可能にしてもよい。本発明のデバイスは、一態様において、更に、チューブ状本体の第一の骨格内に同心円状に位置決めされた第二の実質的にチューブ状の拡張性骨格を含んでもよい。
【0015】
本発明は、更に、脈管内デバイスの脈管内への配置方法も提供する。この方法は、最初に複数の開口を有する骨格によって画定される実質的にチューブ状の拡張性本体、およびそれぞれの開口内に設けられた複数のネットパネルを有するデバイスを提供する工程を含む。次に、このデバイスを、脈管腔に沿って注目の部位に進める。その後、骨格を注目の部位において拡張して脈管腔を開いたままにさせる。このデバイスは、次に、疾患の治療に関する少なくとも一種類の薬物療法薬をネットパネルから溶出するように作用し得る。これらのネットパネルは、更に、組織残屑をネットパネルと脈管壁との間に保持するように作用し得る。
【0016】
本発明は、更に、脈管内デバイスの脈管内への配置に関する別の方法も提供する。この方法は、複数の開口を有する骨格によって画定される実質的にチューブ状の拡張性本体、および骨格の周囲にゆるく位置決めされた実質的に可撓性のマトリックス上に配置されるメッシュ、を有するデバイスを提供する工程を含む。次に、このデバイスを脈管腔に沿って注目の部位に進める。その後、骨格を注目の部位において拡張し、可撓性マトリックス上のメッシュを骨格と脈管壁との間に固定させ得る。一態様において、骨格の拡張前に、メッシュが配置される可撓性マトリックスを拡張し得る。次に、このデバイスは、疾患の治療に関する少なくとも一種類の薬物療法薬をメッシュから溶出するように作用し得る。このメッシュは、更に、ネットパネルと脈管壁との間に組織残屑を保持するようにも作用し得る。
【0017】
別の態様において、脈管内デバイスの脈管内への配置に関する別の方法を提供する。この方法は、最初に複数の開口を有する第一の実質的にチューブ状の拡張性骨格、それぞれの開口内に設けられる複数のネットパネル、および第一のチューブ状骨格内に同心円状に位置決めされる第二の実質的にチューブ状の拡張性骨格、を有するデバイスを提供する工程を含む。次に、このデバイスを脈管腔に沿って注目の部位に進め得る。その後、このデバイスを注目の部位において拡張して脈管腔を開いたままにさせ得る。一態様において、第一および第二のチューブ状骨格を、独立して拡張してもよい。別の態様において、第一および第二のチューブ状骨格を同時に拡張してもよい。このデバイスは、次に、疾患の治療に関する少なくとも一種類の薬物療法薬をネットパネルから溶出するように作用し得る。ネットパネルは、更に、組織残屑をネットパネルと脈管壁との間に保持するようにも作用し得る。
【0018】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の一態様による脈管内デバイスの側面図である。
図2A〜Bは、本発明の一態様によるネットシステムを有する図1のデバイスの一部の詳細な図である。
図3は、本発明の一態様による別の脈管内デバイスの縦断面図である。
図4は、本発明の別の態様による同心骨格を有する脈管内デバイスの斜視図である。
【0019】
特定の態様の詳細な説明
図1に示されるように、事前に狭窄した脈管内部位の内腔を開いたままにし、かつ、そのような部位からの組織残屑が内腔を閉鎖することを最小化するための拡張性脈管内デバイス、例えばステント、が本発明の態様により示される。このデバイスは、一態様において、更に、血栓形成による再狭窄の治療や防止のための少なくとも一種類の薬物療法薬の脈管内部位への局所送達にも用いられ得る。
【0020】
図1に示される脈管内デバイス10は、脈管壁に対する配置用の実質的にチューブ状の本体11およびその構造支持体を含む。本体11は、一態様において、複数の開口13を有する拡張性骨格12によって画定され得る。事前に狭窄していてもよい所定の部位における開口を維持するためにステント10を使用してそれを通る通路を提供するので、ステント10の拡張性骨格12は、開口を維持し、かつ、支持するのに充分強い生体適合性材料でつくられる必要がある。本発明の一態様において、骨格12がつくられる材料としては、金属、合金、プラスチック、またはそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、金属骨格12を有するステント10を提供することによって、ステント10は、更に、ステント10の脈管内への配置中に、例えば、蛍光透視法によって視覚化され得る。もちろん、骨格12は、別の強い材料、例えば、当業者によく知られているポリマー材料、からつくられてもよい。
【0021】
ステント10は、更に、骨格12におけるそれぞれの開口13に広がる可撓性ネットシステム14も含み得る。ステント10が事前に狭窄された部位に位置決めされ得るので、骨格12におけるネットシステム14の存在は、そのような部位における組織残屑が脈管腔へ放出されること、および、場合によっては内腔を閉鎖することの発生を最小化するように作用し得る。特に、ネットシステム14は、組織残屑をネットシステムと脈管壁との間に保持するように作用し得る。一態様において、可撓性ネットシステム14は弾性を有するので、ネットシステム14は、開口13を通って脈管腔の中に半径方向に約0.01mm〜約0.5mm伸張し得る。内腔へ伸張するが、ネットシステム14は、脈管を通る充分な流体流のためにそのような伸張が内腔の約75%〜約80%が開いたままになるようにデザインされ得る。
【0022】
更に図1に言及すると、ネットシステム14は、複数の孔141を備えて脈管壁と脈管内の流体成分、例えば血液、との流体コミュニケーションを可能にし得る。これらの孔141は、一態様において、ネットシステム14中に同様のまたは様々なパターンまたは形態で移され得る。例えば、ネットシステム14は、図2Aに示されるように一連の連結チェーン22を備え得る。一態様において、孔141は、骨格12中の開口13のサイズの約1/1000〜約1/10であり得る。好ましくは、孔141は、約0.1μm〜約100μmであり得る。サイズに関わらず、孔141は、組織残屑の通過の発生を最小限にしながら脈管壁との流体コミュニケーションを可能にするように作用しなければならない。加えて、孔141の存在が、例えば、血管形成後のステント挿入部位における適切な組織(例えば内皮細胞(endothial cell))成長を提供し得ると考えられている。更に、孔141は、周囲組織がそれを通って伸張してステント10を適当な位置に固定する空間を提供し得る。
【0023】
ネットシステム14は、更に、例えば血栓抑制薬の、局所送達に関する貯蔵庫および直接輸送ビヒクルとしての機能も果たし得る。そこで、ネットシステム14は、周囲の組織からの毒性反応を最小化するために、実質的に一様な厚さを備え、かつ、生体適合性材料からつくられ得る。ネットシステム14の存在は、更に、薬物療法薬を溶出するかまたは送達する追加の表面積も提供する。
【0024】
ネットシステム14に組み込まれ得る薬物療法薬の例としては、免疫抑制作用を示すリン脂質であるラパマイシンが挙げられる。加えて、ヘパリンおよびグリコサミノグリカンは、脈管内デバイスの埋め込み後に局所的に送達され得る抗凝血薬である。これらの抗凝血薬は、成長因子および別の糖タンパク質と相互作用し、このことが新生内膜増殖を減少させ得る。
【0025】
アブシキシマブは、遺伝子操作されたヒト−マウスモノクローナルキメラ抗体のフラグメントである。これは糖タンパク質阻害剤であり、フィブリノゲンおよび別の物質の、凝集および凝固に不可欠な血小板における糖タンパク質受容体(GBIIb/IIIa)への結合の阻害によって作用する。アブシキシマブは、アスピリンおよびヘパリンと使用されると血小板凝集を防ぐのに有効であるようであり、かつ、動脈の突然閉鎖を防ぐのに有効であるようである。
【0026】
抗生物質は、同様に、冠動脈疾患の治療に用いられ得る。抗生物質は、動脈を閉塞する脂肪プラークにおいて見られる様々な感染体によって生じる炎症の制御に有効であることが知られている。アジスロマイシンは、心臓病患者に穏当な抗生効果を提供することが観測されている。
【0027】
ネットシステム14に組み込まれ得る別の薬物療法薬としては、病変組織の治療用の放射性核種、および酵素が挙げられ、これはキャリア、例えばネットシステム14内に分散される生分解性ゾル−ゲルカプセル、内に封入されてもよい。
【0028】
当然のことながら、薬物療法薬の濃度、並びに放出速度は、薬剤の放出速度がその治療に適切かつ充分であるように、ステント10が使用されている治療によって調節され得る。例えば、ネットシステム14は、それぞれ少なくとも一種類の薬物療法薬が中に分散されている、複数の層でコーティングされ得る。
【0029】
次に、図2A〜Bを見ると、本発明のネットシステム14は、複数の個別パネル21を含み、それぞれ骨格12の開口13内にしっかりと位置決めされていてもよい。それぞれのパネル21は、一態様において、充分な強度を提供してパネル21と脈管壁との間の組織残屑の保持を可能にする構造デザインを含み得る。一態様によると、実行され得る構造デザインは、例えば金属、合金、ポリマーまたはそれらの組み合わせからつくられる、一連の伸張性連鎖22を含む。そのようなデザインは、更に、図2Bに示されるように、骨格12の拡張中にそれぞれのパネル21がそれぞれの開口13と共に拡張することも可能にする。もちろん、それぞれのパネル21が充分に強く、適宜拡張し、かつ組織残屑が脈管腔に入らないことを可能にする限り、別の構造デザインが用いられてもよい。
【0030】
次に、図3を見ると、本発明の別の態様によるネットシステム30が記述されている。ネットシステム30は、図3に示されるように、例えば、実質的に可撓性のマトリックス32上に配置される、シートの形態のメッシュ31を含み得る。可撓性デザインを有するネットシステム30を提供することによって、ネットシステム30は、ステント10の骨格12周囲に置かれ得る。デザインが可撓性であるが、メッシュ31およびマトリックス32が構造的に充分な強度を有するネットシステム30を提供して、ネットシステム30と脈管壁33との間に組織残屑を保持し得ることに注目すべきである。加えて、可撓性マトリックス32の利用は、その上のメッシュ31を骨格12の拡張中に開口13と共に拡張させ得る。ネットシステム30は、一態様において、骨格12の周囲にゆるく位置決めされ得る。そのようなもとして、ネットシステム30は、ネットシステム30を損傷せずに骨格12につけられたり骨格12から外されたりし得る。当然のことながら、ネットシステム30は、骨格12の周りにゆるく位置決めされるが、その脈管内での拡張に続いて、骨格12によって脈管壁33に対して押されて、ネットシステム30の動きを最小化し得る。代わりに、ネットシステム30は、骨格12の様々なセクション、例えばフィラメント122間の複数の交点121、にゆるく固定されてもよい。それにもかかわらず、非固定態様と同様に、このネットシステム30は、骨格12によって脈管壁33に対して押されて、そこで固定されたままにしてもよい。
【0031】
本発明の別の態様によると、ネットシステム30は、骨格12が拡張されるまで脈管壁の一時的支持を可能にする強化剛性を備え得る。そのようなデザインで、必要であれば、ネットシステム30を、最初に骨格12と独立して挿入部位において拡張してもよい。その後、ネットシステム30内に同心円状に位置決めされた骨格12を拡張して脈管壁に必要な支持を提供してもよい。ネットシステム30に脈管腔を一時的に開いたままにしておくのに充分な構造デザインを提供するために、可撓性マトリックス32を、骨格12を画定するフィラメントの容積の約50%〜約70%を含むようにデザインしてもよい。もちろん、可撓性マトリックス32を構成するフィラメントの量は、骨格12が拡張するまでマトリックスが一時的に脈管壁を閉鎖しないようにする限り、より少なくてもよい。一態様において、ネットシステム30の強度および構造特性は、材料、材料の量(すなわち、容積)、もしくはそれらの量の選択によって計算されるかまたは調節され得る。
【0032】
別の態様として、ネットシステム30は、それ自体ステントになってもよい。特に、図4を見ると、ネットシステムは、骨格12(すなわち、内部ステントB)の周囲に同心円状に位置決めされる外部ステントAであってもよい。そのように示されていないが、この態様において二種類のステントが実質的に互いに類似していてもよい。外部ステントAすなわちネットシステム30は、一態様において、図2Aに示されるパネル21のように、その骨格の開口内にしっかりと位置決めされている個々のパネル41を含み得る。これらのパネル41は、パネル21同様、組織残屑が脈管腔内に入らないように、かつ、血栓形成の発生を最小化するために上記少なくとも一種類の薬物療法薬を注目の部位に溶出するように作用し得る。
【0033】
使用において、脈管内デバイス、例えば図1に示されるステント10、を脈管腔に沿って注目の部位、例えば、被膜(cap)が薄くなるエリアである、事前に狭窄した部位、例えば、頸動脈において見られる不安定プラーク、または石灰化部位と関連する部位、に前進させてもよい。その後、ステント10、特にその骨格12、を注目の部位において拡張してかみ合わせ、脈管壁を支持してもよい。
【0034】
ネットシステムが可撓性ネットシステム30に類似する態様において、骨格12を注目の部位において拡張させてネットシステム30をそれと共に拡張させてもよい。一旦骨格12が完全に拡張されると、ネットシステム30は、骨格12と脈管壁との間に固定され得る。
【0035】
ネットシステム30が充分剛性である別の態様において、ネットシステム30が最初に拡張されて、脈管壁とかみ合って、そこに一時的に支持を提供してもよい。次に、拡張されたネットシステム30内に同心円状に位置決めされた骨格12を拡張してネットシステム30を脈管壁と骨格12との間に固定してもよい。同様の拡張プロトコル(protocol)を、ネットシステム30がそれ自体ステントであり、かつ、第二のステントがそれらの間に同心円状に存在する態様において実行してもよい。
【0036】
一旦、ステント10が拡張されると、ネットシステムは、少なくとも一種類の薬物療法薬の注目の部位への溶出を円滑にされ得る。加えて、ネットシステムは、組織残屑をネットシステムと脈管壁との間に保持するように作用し得る。
【0037】
本発明のステントを使用して様々な脈管内の開口を支持および維持し得る。例えば、ステントは、冠動脈または頸動脈内に置かれてそれらの動脈を通る流体流を円滑にし得る。流体流を円滑にすることによって、老化、高血圧、糖尿病または別の同様の物理的条件の結果として動脈内に石灰化または不安定プラークを有する患者において心臓発作や脳卒中が回避され得る。ステントは、更に、通路、例えば特に冠静脈洞、を狭窄させるためにも使用され得る。通路の狭窄のために、ステントは、チューブ状の骨格がチューブ状の骨格を狭窄するように、実質的に拡張に耐えるようにされ得る。ステントは、更に、腎臓ステント、胃腸ステント、放射線および化学療法ステントとしても使用され得る。
【0038】
本発明を特定の態様に関連して記述したが、当然のことながら更に変形してもよい。例えば、ステントを患者の身体内への埋め込み用の別の脈管内デバイスとの使用に適応させてもよい。更に、本願は、本発明が関連する技術において知られたり慣行になったりするような本開示からの逸脱および付属の特許請求の範囲内に含まれるような本開示からの逸脱を含む、本発明の全ての変形、使用、または適応を包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の一態様による脈管内デバイスの側面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の一態様によるネットシステムを有する図1のデバイスの一部の詳細な図である。
【図2B】図2Bは、本発明の一態様によるネットシステムを有する図1のデバイスの一部の詳細な図である。
【図3】図3は、本発明の一態様による別の脈管内デバイスの縦断面図である。
【図4】図4は、本発明の別の態様による同心骨格を有する脈管内デバイスの斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)脈管壁に対する配置用の実質的にチューブ状の拡張性本体であって、複数の開口を有する骨格によって画定される本体;および
(b)ネットシステムが骨格におけるそれぞれの開口と共に拡張して血栓の形成および組織残屑が脈管腔を閉じることの発生を最小化し得るように、それぞれの開口に広がる構造デザインを有する可撓性ネットシステム
を備える、脈管内の開存腔維持用脈管内デバイス。
【請求項2】
該骨格が実質的に剛性であり、脈管内の構造支持を提供する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
該ネットシステムが脈管内の流体流と脈管壁との間のコミュニケーションを可能にする複数の孔を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
該孔のサイズが骨格の穿孔のサイズの約1/1000〜1/10である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
該孔のサイズが約0.1μm〜約100μmである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
該ネットシステムが薬物療法薬を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
該薬物療法薬が、免疫抑制剤、抗生物質、細胞周期阻害剤、抗炎症薬、抗凝血剤、抗アレルギー性物質、遺伝子治療化合物およびセラミド治療化合物の少なくとも一種類を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
該ネットシステムが、薬物療法薬が溶出され得る更なる表面積を提供する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
該構造デザインが充分な強度を有するネットシステムを提供して該ネットシステムと該脈管壁との間の組織残屑の保持を可能にする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
該構造デザインがネットシステムの脈管腔の中への放射伸張を最小化して内腔の約75%〜約80%が開いたままになることを可能にする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
該ネットシステムが複数の伸張性パネルを含み、それぞれマトリックスの開口内にしっかりと設けられるようにデザインされている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
メッシュが該本体の骨格の周囲に置かれるように、該ネットシステムが実質的に可撓性のマトリックス上に配置されるメッシュを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
該ネットシステムを該本体の骨格にゆるく取り付けて脈管内デバイスの配置中に骨格にとどまらせる、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
該可撓性マトリックスが充分な強度を有して、該ネットシステムが、該本体の骨格の拡張まで脈管腔を一時的に開いたままにすることを可能にする、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
該チューブ状本体内に同心円状に位置決めされた、実質的にチューブ状の拡張性骨格を更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
複数の開口を有する骨格によって画定される実質的にチューブ状の拡張性本体、および該骨格におけるそれぞれの開口と共に拡張し得るようにそれぞれの開口内に設けられた複数のネットパネル、を有するデバイスを提供する工程;
該デバイスを脈管腔に沿って注目の部位に進める工程;並びに
該注目の部位において該骨格を拡張して該脈管腔を開いたままにさせる工程
を包含する、脈管内デバイスの脈管内への配置方法。
【請求項17】
該提供する工程が、少なくとも一種類の薬物療法薬を有するネットパネルを供給することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
更に、該薬物療法薬を該ネットパネルから脈管壁に溶出させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
更に、該ネットパネルが該ネットパネルと脈管壁との間に組織残屑を保持することを可能にすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
複数の開口を有する骨格によって画定される実質的にチューブ状の拡張性本体、および該骨格の周囲にゆるく位置決めされた実質的に可撓性のマトリックス上に配置されるメッシュ、を有するデバイスを提供する工程;
該デバイスを脈管腔に沿って注目の部位に進める工程;
該注目の部位において該骨格を拡張して該脈管腔を開いたままにさせる工程;並びに
該可撓性マトリックス上のメッシュを骨格と脈管壁との間に固定させる工程
を包含する、脈管内デバイスの脈管内への配置方法。
【請求項21】
該提供する工程が少なくとも一種類の薬物療法薬を有するメッシュを供給することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
更に、該薬物療法薬をメッシュから脈管壁に溶出することを可能にすることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
更に、該ネットパネルがメッシュと脈管壁との間に組織残屑を保持することを可能にすることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
該骨格を拡張する工程の前に、該方法が、メッシュが配置される可撓性マトリックスを拡張する工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
複数の開口を有する第一の実質的にチューブ状の拡張性骨格、それぞれの開口内に設けられる複数のネットパネル、および該第一のチューブ状骨格内に同心円状に位置決めされた第二の実質的にチューブ状の拡張性骨格、を有するデバイスを提供する工程;
該デバイスを脈管腔に沿って注目の部位に進める工程;並びに
該注目の部位において該デバイスを拡張して該脈管腔を開いたままにさせる工程
を包含する、脈管内デバイスの脈管内への配置方法。
【請求項26】
該提供する工程が、少なくとも一種類の薬物療法薬を有するネットパネルを供給することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
更に、該薬物療法薬を該ネットパネルから脈管壁に溶出することを可能にすることを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
更に、該ネットパネルが該ネットパネルと脈管壁との間に組織残屑を保持することを可能にすることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
該拡張する工程が、第一のチューブ状骨格と第二のチューブ状骨格とを独立して拡張することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
該拡張する工程が、第一のチューブ状骨格と第二のチューブ状骨格とを同時に拡張することを含む、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6035(P2013−6035A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−175117(P2012−175117)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【分割の表示】特願2008−558372(P2008−558372)の分割
【原出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(508270842)
【氏名又は名称原語表記】David ELMALEH
【Fターム(参考)】