説明

ネットロール保持供給器

【課題】食肉塊にネットを装着する際に、ネットロールからネットをスムーズに巻きほどくことができ、食肉塊のネット掛けを短時間で行うことができ、且つ作業台にネットロールを直に置かなくても良いネットロール保持供給器を提供する。
【解決手段】食肉塊に装着するためのネットを巻回してなるネットロールを保持供給するための器具1であって、前板12、背板16、左右側板14,15及び底板18からなりネットロールMを保護被覆するための筺体10と、少なくとも一方の端縁が先細に構成され、ネットロールを保持するための着脱可能なシャフト20と、からなり、前記筺体10の前記左右側板14,15には、前記シャフト20を回転可能に支持し、且つ前記シャフトに設けられた凹溝24,24’と枢着可能な軸受部21が設けられていることを特徴とするネットロール保持供給器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉塊に装着するためのネットを巻回してなるネットロールを保持供給するための器具であって、ネットを食肉塊に装着し包装して店頭に並べるにあたり、より清潔に短時間で食肉塊にネットを装着するための器具に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉塊は、見栄えを良くし、調理の際の型くずれを防いだり、肉の旨味を閉じこめ且つ調味をしみ込みやすくするため、店頭に並べる際にしばしば伸縮性のネットを装着する。
近年は、特許文献1に記載されたような、一端が開口された袋状のケーシングと、前記ケーシングの外側を覆い且つ該ケーシングの底部で一側端部が固着される略有底筒状のネットとを備えるネット付きケーシングも提供されている。しかしながら、ハムや焼き豚等の加工食肉用にはネット付きケーシングが適しているが、生肉の場合、肉塊の大きさによりネット長さを変える必要があり、個々のネット付きケーシングは適していない。
【0003】
食肉塊に装着するためのネットは、業務用には、筒状のネットを一条に巻回して芯のないトイレットペーパーや粘着テープ等の形状にしたネットロールとして流通している。小売店等において食肉塊に前記ネットを装着する際には、このネットロールから適当な長さを切り出して装着している。
上記ネットロールは直接食肉塊に装着するものであるから、常に清潔であることが求められる。しかしながら、作業の性質上、前記ネットロールは剥き出しの状態で肉汁や肉屑の付着した作業台の上に置かざるをえず、衛生上大きな問題があった。
【0004】
また、前記ネットロールは一条に巻回してなるため、前記ネットロールを作業台の上に平置きにした状態で使用のために巻きほどくときは、ネットロールは自由な回転を阻害されている。そのため、ネットは上方向に渦巻き状のまま引き抜かれることになり、ネットに常によじれが生じることになる。この状態でさらにネットを巻きほどこうとすると、このよじれが閉塞点となってそれ以上はたぐることができないため、このよじれを時間をかけて人の手で修正しながら作業を行っていた。
しかしながら、生肉を扱う作業においては、食品衛生上は迅速な作業が必須であり、食肉塊に前記ネットを装着する作業においても改善の必要があった。
【特許文献1】実用新案登録第3104485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するためになされたもので、迅速に食肉塊にネットを装着し、かつ異なる大きさの肉塊に応じた長さのネットを切り出すことができるネットロール保持供給器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1のネットロール保持供給器は、
食肉塊に装着するためのネットを巻回してなるネットロールを保持供給するためのネットロール保持供給器であって、
前板、背板、左右側板及び底板からなり上方に開口した筺体と、
少なくとも一方の端縁が先細に構成されネットロールを保持して前記筺体の軸受部に着脱可能なシャフトと、からなり、
前記筺体の前記左右側板上部には、前記シャフトを回転可能に保持し且つ前記シャフトに設けられた凹溝に装着可能な軸受部が設けられていることを特徴とする。
請求項2のネットロール保持供給器は、請求項1において、
前記筺体の上部開口部に、前記ネットロールの回転を調整するための押さえ蓋を取り付けたことを特徴とする。
請求項3のネットロール保持供給器は、請求項1又は2において、
前記筺体の前記前板の高さh及び前記背板の高さHの関係が、H>hとなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前板、背板、左右側板及び底板からなりネットロールを保護被覆するための筺体と、少なくとも一方の端縁が先細に構成され、ネットロールを保持するための着脱可能なシャフトと、からなり、前記筺体の前記左右側板には、前記シャフトを回転可能に支持し、且つ前記シャフトに設けられた凹溝と嵌合可能な軸受部が設けられていることを特徴とするので、ネットロールからネットをスムーズに巻きほどくことができ、食肉塊のネット掛けを短時間で行うことができ食品安全上好適である。また、作業台にネットロールを直に置くことがなくなるので衛生的にも好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本実施形態のネットロール保持供給器は、食肉塊に装着するためのネットを巻回してなるネットロールを保持供給するための器具であって、前板、背板、左右側板及び底板からなりネットロールを保護被覆するための筺体と、少なくとも一方の端縁が先細に構成され、ネットロールを保持するための着脱可能なシャフトと、を備え、前記筺体の前記左右側板には、前記シャフトを回転可能に支持し、且つ前記シャフトに設けられた凹溝と嵌合可能な軸受部を備える。
使用時には、前記シャフトをネットロールの側面からその中心部に押し込み軸芯とし、前記筺体に配設された軸受部に、筐体上部から前記シャフトの溝部を枢着させることにより、筺体にネットロールを使用可能に装着する。ネットロール装着時には、必要とする長さだけネットロールの先端部を引きネットを巻き戻して適当な長さでネットを切断する。
【0009】
筺体は、上部を開口させた箱体であり、水平面に対し垂直に起立する左右側板、前板、及び背板と、水平面に対し平行に配置される底板からなる略直方体形状を有する。前板、背板、底板は、それぞれ略長方形状に構成されている。前板と背板の高さは、ネットロールを巻き戻してネットを切断作業をしやすいように、前板よりも背板が高いことが好ましい。
また、左右側板は、前板と背板の高さを異ならしめるためには、上辺が水平面に対し前方に対し下方斜めに構成されてなることが好ましい。すなわち、左右側板の上辺が、背板から前板に向かって下方に傾斜していることが好ましい。そして、左右側板、前板、及び背板を組み立てて形成され上面が開口された筺体は、左右側板が、背板側から前板側に向かって低くなるように傾斜し、背板側が前板側と比較して背が高い構成とされていることが好ましい。
このような構成とすることにより、ネットロールの巻き戻し作業がしやすく、かつ後述の押さえ蓋の重みでネットロールを押さえることができる。なお、前板上辺に切断刃を設けると、ネットロールから巻き戻したネットを容易に切断できる。
【0010】
左右側板の上部の略中央には、シャフトの凹溝を装着するための切落部が上方に開口して形成されている。
前記切落部は、上方を開口した略U字型あるいは略V字型の切り込みで、後述するシャフトを受けて回転可能に支持するものである。切落部においては、後述するシャフトと接触する部分は、円柱状のシャフトの回転を滑らかにするために円弧形状とされることが好ましい。
底板は、水平面と平行に配設される。底板の、筺体外側となる面には、筺体を設置するための複数の足部を設けることができる。足部は、滑り止めのために吸盤付きとしても良いし、またねじ式で筺体の高さを調節できるものとしても良い。
【0011】
筺体の材料としては、耐錆性、耐汚性があり、洗浄が容易で入手の簡単な材料であれば良い。例えば、ステンレス・スチール板やプラスチック等の材料が好ましいが、これに限られることなく、上記の条件を満たす材料であれば差し支えない。
筺体は、絞り成形法などで一体成形加工されるものであっても良いし、各面を溶接等で繋ぎ合わせて成形するものであっても良い。
なお、筺体は、ネットロールからネットを引き出す際に筺体が移動したり転倒したりすることを抑制するために、所定の重量を有するものとすることが好ましい。例えば、所定の重量を持たせるために、筺体を形成する材料の板厚を厚手としてもよいし、または底板に取り外し可能な重りを取り付けても良い。
【0012】
筺体の軸受部には、ネットロールを取り付けたシャフトが回転可能に枢着される。前記シャフトの形状は、円柱棒状に形成されている。シャフト外径は、ネットを巻き回して形成されたロールの中心部の貫通孔に挿入でき、且つネットロールを保持できる程度の強度を有する程度のものであればよい。シャフト外径が大きすぎるとネットロール中心部の貫通孔に挿入することができず、一方小さすぎるとネットロールを保持するだけの強度が不足する。
さらに、前記シャフトの少なくとも一方の端縁は、ネットロール中心部の貫通孔に挿入しやすくするために、先細となっていることが好ましい。
【0013】
シャフトはある程度の重量を有することが好ましい。ネットロールの残量が少なくなって重量が小さくなったときにも、シャフトに重量があればネットロールの回転が安定し、ネットを引き出す際の過剰な回転を抑制することができるからである。
シャフトの重量は、ネットロール保持供給器全体の大きさやシャフトの長さにもよるが、100〜800g程度であることが望ましい。
前記シャフトには、軸受部に枢着させるために、所定の深さを有する凹溝を、少なくとも左右2箇所設けてあることが好ましい。
2箇所の凹溝どうしの間隔は、筺体の前板の幅と略等しいことが必要である。
なお、それぞれの凹溝の幅は、軸受部を構成する厚み(左右側板の板厚)よりも若干大きいことが望ましい。凹溝の幅が小さすぎると軸受部と噛み合わせることができない。一方凹溝の幅が大きすぎるとネットロールを巻き戻す際にシャフトが左右にずれてしまい回転が安定せず好ましくない。
【0014】
凹溝と軸受部の枢着は、シャフトが着脱可能且つ回転可能であることが必要である。すなわち、軸受部にシャフトの凹溝を合わせて載置するだけの構造であることが、構造が簡易でありシャフトの取り外しも容易であることから好ましい。
なお、シャフトと軸受部との枢着の態様については、上述のような載置に限られず、シャフトが回転可能となるように軸受部に支持されればよい。例えば、シャフトの両端に凸部を形成し、筺体側面内側に形成した凹溝を軸受部として、シャフトの凸部を軸受部に嵌合させてシャフトを回転可能としても良い。
シャフトの材料としてはステンレススチール、プラスチック等であることが好ましいがこれらに限定されるものではなく、耐錆性及び耐汚性を有し、強度を持つものであればよい。
【0015】
前記筺体の上方開口部には、前記ネットロールの回転を調整するための押さえ蓋を設けることも可能である。押さえ蓋は、筺体背板の上辺部に、蝶番またはスプリング等で取り付けられていることができ、蝶番を支点として上下に回動可能に構成される。押さえ蓋の先端部は、自重でネットロール上部を押さえ、ネットを使い進むにつれてネットロールの直径が小さくなっていくのに合わせて押さえ蓋の先端部が下降するように構成されている。
この押さえ蓋は、ネットロール巻き戻し時において、慣性によってネットロールが過度に回転することによる絡まりを防ぐためのブレーキ装置として働く。特に、ネットロールの直径が大きいときは、ネットロールの崩れを防止する効果もある。
【実施例】
【0016】
以下に、図面を用いて本発明のネットロール保持供給器の実施例を詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
図1は、本発明のネットロール保持供給器の全体を示す斜視図である。図1に示すように、本発明のネットロール保持供給器1は筺体10、シャフト20、押さえ蓋30より構成される。上方に開口された筺体10は、前板12、左右側板14、15及び背板16,底板18を有する。背板上辺部には押さえ蓋30が蝶番31を用いて取り付けられている。押さえ蓋30は、蝶番31を支点として上下に回動可能である。左右側板14、15の上辺はそれぞれ、背板から前板に向かって下方傾斜している。すなわち、前板の高さhに比べて背板の高さHの方が高い構造(H>h)となっている。
前板の高さhと背板の高さHとの差すなわち(H−h)は、全体の筺体の大きさにもよるが70〜100mm程度であることが好ましい。
【0017】
左右側板14、15には、上辺の一部を、下方に向かってU字状或いはV字状に切り欠いた欠落部23が設けられ、その下部には軸受部21が設けられている。軸受部21のU字状或いはV字状の下部においてシャフト20と接する部分は、円弧状となっている。
シャフト20は、図2に示すように、一端に先細部22を有する円柱状であり、先端を削った鉛筆形状となっている。シャフト20の円周には2箇所の凹溝24、24’が形成されている。2箇所の凹溝24、24’間の距離x1は、前記筺体10の前板12或いは背板16の幅x2とほぼ同じである。シャフト20を前記筺体10に設置する場合には、シャフト20の凹溝24、24’と、前記左右側板14,15に形成された軸受部21とを合わせて装着させることにより、シャフト20が左右にずれることなく支持される。
シャフト20の直径はネットロールの中心部の直径によるが、好ましくは10.0〜35.0mmである。
【0018】
凹溝24、24’の深さは特に限定されるものではないが、シャフト20の左右のずれを抑制させられる程度の深さであれば良く、シャフト20の直径にもよるが、3.0〜10.0mmであることが好ましい。且つ、凹溝24の幅x3は、左右側板14,15の板厚よりもわずかに大きく、軸受部21と凹溝24がちょうど噛み合うように構成されている。
なお、底板18には、筺体外側となる面に4箇所の足部19を設けている。
【0019】
図3に示す様に、ネットロールMを本実施形態のネットロール保持供給器の中にセットした場合には、押さえ蓋30が自重によりネットロールを下方向に押さえつけて過剰な回転を抑制する。
ネットロールを引き出す場合には、ネットの一端を把持して手前方向に引き戻すとシャフトがネットロールと共に回転してネットが引き出される。ネットを所望の箇所で切断して食肉塊に装着する。
【0020】
その他、図4に示すように、左右側板14、15の高さを前板12の高さより高くして、ネットを横方向に引き出してもネットロール崩れを防止するようにすることもできる。
また、図5に示すように、前板12の一部に開口部13を設けて、当該開口部13からネットを引き出すようにしても、ネットロールの崩れを防止でき、好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のネットロール保持供給器によれば、ネットロールからネットを捩れることなくスムーズに巻きほどくことができ、食肉塊のネット掛けを短時間で行うことができ食品安全上好適である。また、作業台にネットロールを直に置くことがなくなるので衛生的にも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のネットロール保持供給器の斜視図である。
【図2】本発明のネットロール保持供給器のシャフトを示す正面図である。
【図3】本発明のネットロール保持供給器にネットロールを取り付けた場合の説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ネットロール保持供給器
10 筺体
12 前板
13 開口部
14 左側板
15 右側板
16 背板
18 底板
19 足部
20 シャフト
21 軸受部
22 先細部
23 欠落部
24 凹溝
24’ 凹溝
30 押さえ蓋
x1 凹溝24、24’間の距離
x2 筺体10の前板12或いは背板16の幅
x3 凹溝24の幅
H 筺体の背板高さ
h 筺体の前板高さ
M ネットロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉塊に装着するためのネットを巻回してなるネットロールを保持供給するためのネットロール保持供給器であって、
前板、背板、左右側板及び底板からなり上方に開口した筺体と、
少なくとも一方の端縁が先細に構成されネットロールを保持して前記筺体の軸受部に着脱可能なシャフトと、からなり、
前記筺体の前記左右側板上部には、前記シャフトを回転可能に保持し且つ前記シャフトに設けられた凹溝に装着可能な軸受部が設けられていることを特徴とするネットロール保持供給器。
【請求項2】
前記筺体の上部開口部に、前記ネットロールの回転を調整するための押さえ蓋を取り付けたことを特徴とする、請求項1に記載のネットロール保持供給器。
【請求項3】
前記筺体の前記前板の高さh及び前記背板の高さHの関係が、H>hとなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のネットロール保持供給器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−109810(P2006−109810A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303594(P2004−303594)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(504297560)株式会社ラディクス (3)
【Fターム(参考)】