説明

ネットワークの経路切替えシステム

迂回経路を持つネットワークにおいて、ネットワークを構成するシステム/回線の障害発生時に、ユーザデータの転送経路が迂回経路へ切り替わるまでの時間を大幅に短縮する経路切替えシステムを提供可能である。前記経路切替えシステムは、スイッチ装置と、前記スイッチ装置に理移設する複数の中継装置により経路が設定されるイーサネットを使用したポイント−マルチポイント形態のIPネットワークにおける経路切替えシステムであって、前記スイッチ装置は、隣接する中継装置の障害もしくは、隣接する中継装置間の回線障害検出を契機に、該当の中継装置を特定出来る情報を、他の複数の中継装置に通知する通知処理部を有し、前記中継装置は前記中継装置の通知処理部より通知された情報から、障害と見なされた中継装置を経由する経路情報を無効とする経路変更処理部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ネットワークの経路切替えシステムに関し、特に障害発生時のユーザデータの転送経路を動的に切替えるネットワークにおける経路切替えシステムに関する。
発明の背景
複数の中継装置(ルータ装置)から構成されるIP(Internet Protocol)ネットワークにおいては、経路管理機能(経路の自動認識・構成変更時の経路自動認識)及び、経路障害検出機能としてダイナミックルーティングプロトコル(RIP:Routing information protocol,OSPF:Open Shortest Path First)が用いられる。
この方式では、中継装置(ルータ装置)間で経路障害/装置障害検出を各プロトコルで規定されたパケットを用いて行い、経路の信頼性を動的に確認している。回線障害/装置障害を検出すると、経路情報(プロトコル規定のアルゴリズムで最短ルートを格納したテーブル)を更新し、迂回路への動的な切替えを実現している。
また、近年ではIP(Internet Protocol)ネットワーク上でVPN(Virtual Private Network)を構築する場面が多く見うけられる。VPN(Virtual Private Network)技術として、リンク・ステート・パケット(LSP:Link State Packet)によるトンネル作成を行う MPLS−VPN(Multi−Protocol Label Service−Virtual Private Network)が広く利用されているが、このLSP接続プロトコルに代表されるLDP/RSVP−TE(Link Disconnect Protocol/Resource Reservation Protocol)においても各中継装置間で経路障害を検出する手法を備えている。
しかしながら、IPネットワークにおいて代表的な回線種別である、イーサネット(Ethernet)においてはスイッチ(SW)装置を介して中継装置間を接続する場合が一般的であり、この接続形態においては、スイッチ装置を介して接続される一方の中継装置とSW装置間の回線障害を検出する手段(ATM回線で具備されるOAM:Operation,Administration and Maintenance相当の手段)が、他方の中継装置においては用意されていない。
したがって、ダイナミックルーティングプロトコルで規定されているタイマの経過を待って経路情報の更新もしくはLSPの切替えが実施されていた。
また、スイッチ装置を介して中継装置を接続する形態においては、ポイント−マルチポイントの形態が殆どであることから、任意の中継装置障害を複数の中継装置に通知する必要がある。逆に通知を受ける中継装置においては、対向となる複数の中継装置の中から障害となった中継装置を特定する必要があった。
上記に説明した通り、従来技術では、スイッチ装置を介して中継装置間を接続した場合に、任意のスイッチ装置と中継装置間の回線障害及び装置障害を、他の中継装置に通知する機能を有していない。
特にポイント−マルチポイント接続の形態となる為に、障害となった中継装置を特定できる通知機能を有しないことが問題であった。
このためダイナミックルーティングプロトコルで規定されているタイマが満了するまでの時間、経路情報の更新もしくはLSPの切替えが実施されずユーザ間の通信は不通となっていた。
また、ダイナミックルーティングプロトコルで規定されているタイマを短く設定することで、経路情報の更新もしくはLSPの切替えを速やかにすることは可能であるが、ネットワークの負荷及びネットワークを構成する中継装置(ルータ装置)の負荷を定常的に高くすることになり、効率的なネットワーク構築が出来なかった。
この様に、IPネットワークにおいて代表的な回線種別である、イーサネット(Ethernet)を使用したポイント−マルチポイント形態のネットワークにおいては、信頼性・高速性に問題があった。
ネットワークにおける経路切替えの際の通信中断時間を軽減する従来技術が提案されている(特許文献1)。かかる文献に記載の方法は、障害ネットワークに中継されたIPパケットに対し、出力先ネットワークを決定した後、再度経路選択を行うことを特徴とするものである。
障害時の経路切り替えに関する他の技術が知られている(特許文献2,3)。かかる技術では、ルータとスイッチ装置の関係については触れられていない。
【特許文献1】特開2002−374288号公報
【特許文献2】特開2002−281068号公報
【特許文献3】特開平11−284633号公報
発明の概要
したがって、本発明の目的は、イーサネットを使用したポイント−マルチポイント形態のIPネットワークを構成するネットワークにおいて、システム/回線の障害発生時に、ユーザデータの転送経路が迂回経路へ切り替わるまでの時間を大幅に短縮することを目的とする。
かかる発明の目的を達成するネットワークの経路切替えシステムは、第1の態様として、スイッチ装置と、前記スイッチ装置に理移設する複数の中継装置により経路が設定されるイーサネットを使用したポイント−マルチポイント形態のIPネットワークにおける経路切替えシステムであって、前記スイッチ装置は、隣接する中継装置の障害もしくは、隣接する中継装置間の回線障害検出を契機に、該当の中継装置を特定出来る情報を、他の複数の中継装置に通知する通知処理部を有し、前記中継装置は前記中継装置の通知処理部より通知された情報から、障害と見なされた中継装置を経由する経路情報を無効とする経路変更処理部を有することを特徴とする。
さらに、上記発明の目的を達成するネットワークの経路切替えシステムは、第2の態様として、第1の態様において、前記スイッチ装置の通知処理部は、隣接する複数の中継装置に同報パケットにより障害を通知することを特徴とする。
また、本発明の目的を達成するネットワークの経路切替えシステムは、第3の態様として第1に態様において、前記中継装置の経路変更処理部は、ダイナミックルーティングプロトコルにより、動的に認識/取得した複数の経路情報から、前記スイッチ装置の通知処理部から通知された特定の中継装置を経由する経路情報のみを無効とすることを特徴とする。
さらに、本発明の目的を達成するネットワークの経路切替えシステムは、第4の態様として第1に態様において、前記スイッチ装置は、隣接する中継装置の障害もしくは、隣接する中継装置との間の回線障害検出を契機に、該当の中継装置を特定する情報として中継装置のMACアドレスを使用し、前記中継装置の経路変更処理部は、前記MACアドレスからMACアドレスとIPアドレスの対応を示すテーブルを検索して、該当中継装置のIPアドレスを認識することを特徴とする。
さらにまた、本発明の目的を達成するネットワークの経路切替えシステムは、第5の態様として第1の態様において、前記中継装置は、更にラベルスイッチングパス検出部及びルーティング検出部を有し、前記中継装置の経路変更処理部は、ダイナミックルーティングプロトコルにより動的に認識/取得した複数の経路情報から、前記スイッチ装置の通知処理部から通知された特定の中継装置を経由する経路情報のみを無効とする際に、前記ラベルスイッチングパス検出部及びルーティング検出部に通知し、前記ラベルスイッチングパス検出部及びルーティング検出部によりそれぞれマッピングされたラベルスイッチングパス情報及びルーティングテーブルから隣接する複数の中継装置に経路情報を無効とすることを特徴とする。
本発明の特徴は、以下に図面に従い説明される実施の形態例から、更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
図1は、イーサネット回線によるポイント−マルチポイント接続形態を有し、且つ迂回経路を備えたネットワークの一構成例を示す図である。
図2は、図1において障害Xの発生を説明する図である。
図3は、図1において、迂回路形成を説明する図である。
図4は、図2に対応する構成において、本発明に従うネットワークの経路切替え方法を説明する概念図である。
図5は、本発明のネットワークの経路切替え方法を実現すルータ装置めのスイッチ装置10とルータ装置20の構成を示す図である。
図6は、図5に示すスイッチ装置10とルータ装置20の関係を、図4のネットワーク構成におけるルータ装置Dとスイッチ装置SW1との接続に対応して示す図である。
図7は、スイッチ装置10の回線障害検出部120による動作フローである。
図8は、回線状態監視部130の動作フローである。
図9は、スイッチ装置10の通知処理部140の動作フローである。
図10は、ルータ装置20の経路変更処理部200の動作フローである。
図11は、ARPプロトコルのフォーマットの例を説明する図である。
図12は、図11におけるオペレーションコードを説明する図である。
図13は、第2の実施例を説明する図である。
図14は、LSPパステーブル240の内容を説明する図である。
図15は、従来の経路切替動作(図15A)と本発明による経路切替動作(図15B)を比較して示す図である。
好ましい発明の実施の形態
以下に図面に従い本発明の実施の形態例を説明するが、これに先立って、本発明の理解のために従来構成における問題を更に説明しておく。
図1は、先に説明したイーサネット(Ethernet)回線によるポイント−マルチポイント接続形態を有し、且つ迂回経路を備えたネットワークの一構成例である。
複数の中継装置(ルータ装置)A〜Eと複数のSW装置1,2が混在するネットワークでは、ルータ装置D配下のネットワークNW#Dとルータ装置E配下のネットワークNW#E間の通信を行う場合、NW#D→ルータ装置D→SW1→ルータ装置A→SW2→ルータ装置E→NW#Eの経路と、NW#D→ルータ装置D→SW1→ルータ装置B→ルータ装置C→SW2→ルータ装置E→NW#Eの経路と2つの経路が選択できる経路の冗長性が取られる構成が考えられる。
ここでは、図1に示す様にメトリックの関係上、ルータ装置Aを介した経路が優先的に選択されることとする。
図1において、特にポイント−マルチポイント構成(図1の第1のスイッチ装置SW1を介して接続されるルータ装置A,B,D又は、第2のスイッチ装置SW2を介して接続されるルータ装置A,C,E)の各ポイントの障害検出と、障害通知を行う構成を想定する。
かかる構成において、図2に示すように発側ネットワークNW#Dに接続される端末(発側端末)から着側ネットワークNW#Eに接続される端末(着側端末)にルータ装置Aを経由してデータ送信する場合にあって、X点に障害が生じると、ルータ装置Aで障害を検知する。この場合、ルータ装置Aは、障害検知により第2のスイッチ装置SW2を通してルータ装置Eとルータ装置Cにルート変更要求を送る(ステップSI)。
ここで、第1のスイッチ装置SW1においても障害発生を知ることができるが、この障害を知って更に通知する機能は従来システムにおいては有していない。したがって、かかる場合、図3に示す様にルータ装置Dにおいてタイマ監視を行っており、タイマ満了を待ってルーティングテーブルを更新し、ルート変更が可能になる(ステップSII)。しかし、このタイマ満了までは、数10秒から数分の単位の時間が必要であった。
このように、従来のネットワークの経路切替え方法では、切替えの高速化ができないという不都合が存在していた。したがって、本発明はかかる不都合を解消するネットワークの経路切替え方法及び装置を提供するものである。
図4は、図2に対応する構成において、本発明に従うネットワークの経路切替え方法を説明する概念図である。
本発明の特徴として、スイッチ装置SW1に障害通知機能を持たせている。すなわち、スイッチ装置SW1の障害通知機能により、障害発生をスイッチ装置SW1において検知すると、その障害をスイッチ装置SW1の活性回線に接続するポートを通して通知する。
ルータ装置Dにもスイッチ装置SW1から障害が通知される。これによりルータ装置Dは、タイマ満了を待つことなくルーティングテーブルの経路情報を更新して、即時にルート変更を要求することができる(ステップSIII)。
図5は、本発明のネットワークの経路切替え方法を実現すルータ装置めのスイッチ装置10とルータ装置20の構成を示している。さらに、図6は、図5に示すスイッチ装置10とルータ装置20の関係を、図4のネットワーク構成におけるルータ装置Dとスイッチ装置SW1との接続に対応して示している。
図1において説明したように、図4においても、ルータ装置D配下のネットワークNW#Dとルータ装置E配下のネットワークNW#E間の通信を行う際に、NW#D→ルータ装置D→SW1→ルータ装置A→SW2→ルータ装置E→NW#Eの経路とNW#D→ルータ装置D→SW1→ルータ装置B→ルータ装置C→SW2→ルータ装置E→NW#Eの経路の2つの経路で冗長性が取られている。
ここで、本発明に従い、ルータ装置20(図4においてルータ装置D)は、図6の表1に示すような宛先ネットワークaと、経路となるルータ装置b及び経由段数cの関係を示すルーティング(経路)テーブル220を有している。さらに、各ルータ装置のMACアドレスdと対応するIPアドレスeを示す図6の表2に例示するARP(Address Resolution Protocol)テーブル210を有している。
一方、スイッチ装置10(図4においてSW1)は、図6の表3に例示するポート番号fと対応するMACアドレスgを示すMACテーブル110を有している。
かかる図5に示す構成のスイッチ装置10とルータ装置20による本発明に従うネットワークの経路切替え方法を図7乃至図10の動作フローに基づいて説明する。
図7は、スイッチ装置10の回線障害検出部120による動作フローである。回線障害検出部120は、常時信号レベルを検知し、物理レイヤでの障害となったポート番号を検出する(処理工程P1)。
例えば、図4において、ルータ装置20とスイッチ装置10との間の回線が障害Xになった場合、もしくは、ルータ装置Aに装置障害が発生した場合、スイッチ装置SW1の回線障害検出部120で、ルータ装置Aと接続されている回線(ポート)の物理レイヤでの障害を検出する。
回線障害検出部120により検出された障害となったポート番号は、回線状態監視部130に通知される(処理工程P2)。図4の例では、スイッチ装置SW1の回線障害検出部120は、ルータ装置Aと接続されている回線の番号(ポート番号)を回線状態監視部130に通知する。
図8は、回線状態監視部130の動作フローであり、回線状態監視部130は、スイッチ装置10が有する全回線の状態を管理している。すなわち、回線状態監視部130における処理種別が回線状態変更でなく(処理工程P6、No)、回線出し状態であれば(処理工程P7、Yes)、全回線状態の読み出しを行う(処理工程P9)。
一方、回線障害検出部120からルータ装置20と接続されている回線の障害を通知された場合は、処理種別が回線状態変更であると判断し(処理工程P6、Yes)、該当するポート番号の状態を、活性状態から障害状態に変更する(処理工程P9)。
図7の回線障害検出部120の動作フローに戻ると、スイッチ装置10の回線障害検出部120は、ルータ装置20と接続されている回線の番号(ポート番号)を検索条件として、スイッチ装置10内のMACテーブル110を検索し(処理工程P3)、スイッチ装置10とルータ装置20間で学習しているMACアドレスを取得する(処理工程P4、Yes)。これにより、障害となったポート番号に対応するMACアドレスが得られる。
ここで、スイッチ装置10は、本来の機能として、スイッチ装置10に接続されている装置(ルータ装置等)、及び端末が送信したフレームをスイッチ装置10で中継するために、スイッチ装置10内のMAC検出部100が送信元のMACアドレスを覚えておく(学習)機能を有している。
この為に、図6で説明したように接続されているポート番号対応にフレーム送信元のMACアドレスをMACテーブル110上に管理する機能を有している(図6の表3参照)。
したがって、ルータ装置20とスイッチ装置10との間の回線/装置障害発生時、スイッチ装置10の回線障害検出部120がポート番号を検索条件にしてMACテーブル110から取得するMACアドレスは、図4の実施例においてルータ装置AのMACアドレスである。
このように検索されるMACアドレスがある場合(処理工程P4、Yes)は、取得したルータ装置AのMACアドレス情報が、本発明の実現のために付加された、スイッチ装置10の通知処理部140に送られる(処理工程P5)。
スイッチ装置10の通知処理部140は、図9の動作フローに従い、図11に示すようなARPプロトコルのフォーマットによりARPパケットを生成する(処理工程P10)。
この際、送信元ステーションのハードウェアアドレス位置(A1、A2)に、回線障害検出部120から通知されたルータ装置AのMACアドレスを格納し、また、宛先ステーションのハードウェアアドレス位置(B1、B2)には、ブロードキャストフレームを示すオール‘F’のアドレスを格納する。
さらに、図12に示すように、オペレーションコード(C)の未使用ビット‘3’を本発明で必要となる障害通知の為の値として利用し、スイッチ装置10の通知処理部140により上記値を設定する。
この様に、通知処理部140でARPパケットを生成する(処理工程P10)と、スイッチ装置10の回線状態監視部130に問い合わせを行い、活性状態である回線のポート番号を取得する(処理工程P11)。
通知処理部140は、回線状態監視部130への問い合わせ結果から得られた活性状態のポート番号の全てに対して、障害通知を行うARPパケットを送出する(処理工程P12)。
これにより、図4のネットワークでは、ルータ装置AのMACアドレスを格納した障害通知用ARPパケットが、ルータ装置B、ルータ装置Dに通知されることになる。
図10は、ルータ装置20(図4のネットワークの例では、ルータ装置B、ルータ装置Dに共通)の経路変更処理部200の動作フローである。以下、必要な時のみ該当ルータ装置を特定して示す。
ルータ装置20は、経路変更処理部200において、スイッチ装置10(SW1)から受信された図11のARPパケットを分析する(処理工程P13)。この分析において、オペレーションコード(図11:OPC)が障害通知(図12参照)である場合(処理工程P14、Yes)には、通知されたARPパケット内の送信元MACアドレスを検索条件として、ルータ装置20内のARPテーブル210(図6:表2)を検索する(処理工程P15)。
この検索において、該当MACアドレスに対応したIPアドレスを取得する(処理工程P16、Yes)。
ルータ装置20では、本来的に有する機能としてルータ装置等の装置及び端末である、ルータ装置20との接続先にIPパケットを中継する際、IPパケットにおける接続先情報にMACアドレスも付与する必要がある。
このため、ルータ装置20は、経路変更処理部200によって接続先のIPアドレスとMACアドレスを対応付けてARPテーブル210上に管理する機能を持っている(図6の表2参照)。
したがって、ルータ装置20(B,D)において、障害通知用のARPパケット内の送信元MACアドレス(ハードウエアアドレスA1,A2)に基づき取得したIPアドレスにより、次いでルーティング(経路)テーブル220を検索する(処理工程P17)。これにより、取得したIPアドレスがルータ装置AのIPアドレスであることを認識する。
この時点で、ルータ装置20(B,D)において、ルータ装置A向けの回線に障害が発生していることが認識できる。
ルータ装置20(B,D)の経路変更処理部200でルータ装置20(A)向けの回線が障害であることを認識した後に、ルーティング検出部250により、ルータ装置20(A)のIPアドレスを検索条件として、ルーティングテーブル220(図6、表1)のNextHop(隣接)ルータ装置(b)を検索する(処理工程P18)。
該当する経路情報があれば(処理工程P18、Yes)、ルーティングテーブル220上から削除する(処理工程P19)。
ルータ装置20におけるルーティング検出部250は、従来から有している本来の機能として、IPパケットを宛先となるネットワークNWに向けて中継する際に、ルーティングテーブル220を参照して宛先ネットワークNWに対するNextHopルータ装置(図6、表1b)を取得する。次いで、取得した隣接ルータ装置に向けてIPパケットを送出する。
したがって、ルータ装置20(B、D)において、隣接ルータ装置がルータ装置20(A)である経路情報を削除する(処理工程P19)と、その時点から、ルータ装置20(A)を経由して通信していたIPパケットは、全て迂回経路(ルータ装置B、ルータ装置Cを介する経路)を経由して即座に通信を実施することができる。
さらに、ルータ装置20(B、D)の経路変更処理部200においてルータ装置20(A)向けの回線が障害であることを認識した後に、LSPパステーブル240にLSPパスが設定されている場合(処理工程P21、Yes)、ルータ装置20(A)のIPアドレスを検索条件として、ラベルスイッチングパス検出部230により、LSPパステーブル240の隣接ルータ装置を検索し(処理工程P22)、該当するパス情報があれば(処理工程P22、Yes)、これを削除する(処理工程P23)。
したがって、ルータ装置20(B、D)において、隣接ルータ装置がルータ装置AであるLSPパス情報を削除し、その時点から、ルータ装置Aを経由して通信していたパケットは、全て迂回経路(ルータ装置20(B、C)を介する経路)を経由して即座に通信を実施することができる。
ここで、ルータ装置20は、ラベルスイッチルータ装置として機能するときは、IPアドレスより下位レイヤの情報(ラベル)を使用し、上記LSPパステーブル240のマッピングデータに従って、スイッチ動作が行われる。
このLSPパステーブル240の内容を、図14に示される例で説明する。図14において、(A)は、ルータ装置Dにおいて、LSPパステーブル240にマッピングされたLSPマッピングデータである。
データ発行元ルータ装置、ラベル値、NextHop(隣接ルータ装置)及び宛先ルータ装置のラベルが登録されている。
ここまで説明した例では、図4において、スイッチ装置SW1が一段のルータ装置20(D)を介してネットワークNW#Dに接続される例であった。これに対し、別の実施例形態として、図13に示す実施例は、ルータ装置20(D)に隣接する別のルータ装置20(F)を通してネットワークNW#Fに接続される例である。
先に説明したように障害Xの情報が、ルータ装置20(D)に通知されると、本来備わっている機能により、ルータ装置20(D)から隣接ルータ装置20(F)の経路変更処理部200に対し、経路変更要求が出される(ステップSIV)。
したがって、ルータ装置20(F)において、先に説明したと同様の処理が行われる。すなわち、図10において、再度説明すると、ルータ装置20(F)の経路変更処理部200において、ルータ装置20(A)向けの回線が障害であることを認識した後には、ルータ装置20(A)のIPアドレスを検索条件として、ルータ装置20(F)内のルーティングテーブル220のNextHopを検索し(処理工程P18)、該当するルーティング情報をルーティングテーブル220上から削除する(処理工程P19)。
ここで、ルータ装置20におけるMPLS(Multi−Protocol Label Switch)のラベルスイッチングパス(LSP)検出部230は、本来の機能として、パケットを宛先となるネットワークNWに向けて中継する際に、LSPパステーブル240を参照して宛先ネットワークNWに対する隣接ルータ装置および付与すべきラベル情報を取得して、隣接ルータ装置に的確なラベルを付与してパケットを送出する。
この時ルータ装置Fの経路変更処理部200のルーティング検出処理部250へも該当するルーティング情報を通知し、本来の機能によって隣接ルータ装置F内でも、ルーティングテーブル220のNextHopを検索し、該当ルーティング情報をルーティングテーブル上から削除する。
これにより、ルータ装置Fは、ルータ装置Aを経由して通信していたIPパケットを全て迂回経路(ルータ装置B、ルータ装置Cを介する経路)を経由して即座に通信を実施することができる。
また、ルータ装置Fの経路変更処理部200により、ルータ装置A向けの回線が障害であることを認識した後には、ルータ装置AのIPアドレスを検索条件として、ルータ装置F内のLSPパステーブル240のNextHopを検索する(図10:処理工程P20)。
該当するパス情報があれば(処理工程P21、Yes)、LSPパステーブル240上から削除する(処理工程P22)。
この時ルータ装置Fの経路変更処理部200は、LSP検出部230へも該当するラベル情報を通知し、本来の機能によって、LSPパス情報テーブル240(図14(A)参照)のNextHopを検索し、該当するパス情報(ルータ装置D)をLSPパス情報テーブル上から削除する。
したがって、ルータ装置Fはルータ装置Aを経由して通信していたIPパケットは、全て迂回経路(ルータ装置B、ルータ装置Cを介する経路)を経由して即座に通信を実施することができる。
図15は、従来の経路切替動作(図15A)と本発明による経路切替動作(図15B)を比較して示す図である。
図15Aにおいて、スイッチ装置SW1を通して、ルータ装置Aとルータ装置Bとの間で通信が行われているとき(S1)、障害Xが発生した場合、ルータ装置Aでは、ルーティングアップデートタイマを監視する(S2)。タイマがカウント終了した時点(S3)でルータ装置Aにおいて障害Xの発生を知ることができる。
その後、迂回ルートの選択処理が行われ(S4)、他のルータ装置Gを経由する経路により通常の通信状態に移行する(S5)。
これに対し、図5Bに示す本発明に従う方法では、スイッチ装置SW1を通して、ルータ装置Aとルータ装置Bとの間で通信が行われているとき(S1)、障害Xが発生した場合、スイッチ装置SW1によりルータ装置Aに対し、障害通知が行われる(S1−1)。
したがって、ルータ装置Aにおいて障害Xの発生を直ちに知ることができ、次いで迂回ルートの選択処理が行われ(S4)、他のルータ装置Gを経由する経路により通常の通信状態に移行する(S5)。これにより、タイマがカウント終了まで、待つことなく経路切り替えを完了することが可能である。
なお、上述の実施形態においてIPネットワーク上のプロトコルは例えばIPv4とすることができるが、発明の要旨に反しない限りIPv6またはそれ以降のバージョンのものであっても良いことは明らかである。
【産業上の利用可能性】
以上図面に従い説明したように、迂回経路を持つネットワークにおいて、ネットワークを構成するシステム/回線の障害発生時に、ユーザデータの転送経路が迂回経路へ切り替わるまでの時間を大幅に短縮するネットワークにおける経路切替えシステムを提供可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ装置と、前記スイッチ装置に隣接する複数の中継装置により経路が設定されるイーサネットを使用したポイント−マルチポイント形態のIPネットワークにおける経路切替えシステムであって、
前記スイッチ装置は、隣接する中継装置の障害もしくは、隣接する中継装置間の回線障害検出を契機に、該当の中継装置を特定出来る情報を、他の複数の中継装置に通知する通知処理部を有し、
前記中継装置は前記中継装置の通知処理部より通知された情報から、障害と見なされた中継装置を経由する経路情報を無効とする経路変更処理部を有することを特徴とする経路切替えシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記スイッチ装置の通知処理部は、隣接する複数の中継装置に同報パケットにより障害を通知することを特徴とする経路切替えシステム。
【請求項3】
請求項1において、
前記中継装置の経路変更処理部は、ダイナミックルーティングプロトコルにより、動的に認識/取得した複数の経路情報から、前記スイッチ装置の通知処理部から通知された特定の中継装置を経由する経路情報のみを無効とすることを特徴とする経路切替えシステム。
【請求項4】
請求項1において、
前記スイッチ装置は、隣接する中継装置の障害もしくは、隣接する中継装置との間の回線障害検出を契機に、該当の中継装置を特定する情報として中継装置のMACアドレスを使用し、
前記中継装置の経路変更処理部は、前記MACアドレスからMACアドレスとIPアドレスの対応を示すテーブルを検索して、該当中継装置のIPアドレスを認識することを特徴とする経路切替えシステム。
【請求項5】
請求項1において、
前記中継装置は、更にラベルスイッチングパス検出部及びルーティング検出部を有し、
前記中継装置の経路変更処理部は、ダイナミックルーティングプロトコルにより動的に認識/取得した複数の経路情報から、前記スイッチ装置の通知処理部から通知された特定の中継装置を経由する経路情報のみを無効とする際に、前記ラベルスイッチングパス検出部及びルーティング検出部に通知し、前記ラベルスイッチングパス検出部及びルーティング検出部によりそれぞれマッピングされたラベルスイッチングパス情報及びルーティングテーブルから隣接する複数の中継装置に経路情報を無効とすることを特徴とする経路切替えシステム。

【国際公開番号】WO2005/057864
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511686(P2005−511686)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016006
【国際出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
2.ETHERNET
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】