説明

ネットワークシステム、ネットワークシステムの通信方法、及びネットワークシステムのノード装置

【課題】リング状の通信路に複数のノードを接続したネットワークで、トラヒックが特定のノードの特定のポートに対して集中し、1つの出力ポートスピードに対して大きなデータ信号の流入が続く場合でも、出力ポートにおいてデータが廃棄されることが防止できるようにする。
【解決手段】レート測定部118は、トリビュタリ側で出力データを一時蓄積する出力バッファ112の流入超過率情報をポート毎に測定し、この流入超過率情報を他のノードにブロードキャストする。帯域制御部119は、他のノードから流入超過率情報を受信すると、受信した流入超過率情報に基づいて、そのノードのポートに対する出力データの転送レートを設定する。出力バッファ112の流入超過率を確認しながら送信するデータの帯域制御を行うことで、廃棄されているトラヒック量を事前に抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状の通信路に複数のノードを接続したネットワークシステム、ネットワークシステムの通信方法、及びネットワークシステムのノード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リング網において様々な帯域制御プロトコルが提案、標準化されている。一例として、IEEE802.17で規定されている、Resilient Packet Ring(RPR)では、リング内の各ノードが制御情報を交換し、自律分散的に帯域制御や公平性(フェアネス)制御を行う方式である。
【0003】
RPRのようなリング網の帯域制御プロトコルでは、リング網の帯域を効率的に利用することを目的としている。そのため、あるノードのある特定のポートに向けたトラヒックが複数ノードから送信される場合、それぞれの送信ノードから送信されたトラヒック量がリング網の帯域を超えることなく、さらに各送信ノード間で送信しているトラヒック量が公平になるように制御される。その結果、送信ノード数が3であり、リング網の帯域が3Gbps使用可能である場合には、各送信ノードは1Gbsずつトラヒックを送信できるよう、帯域制御が行われる。
【0004】
しかしながら、上記のトラヒックがすべて同一の出力ポート向けのトラヒックであり、その出力ポートのポートスピードが1Gbpsであった場合、すべてのトラヒックを出力することができない。出力ポートに十分に大きい出力バッファを備え、流入超過量を一時的に格納することが可能であるが、出力ポートスピードに対して大きなデータ信号の流入が続く場合、流入超過分は、出力ポートにおいて廃棄されてしまうという問題が生じてくる。
【0005】
また、特許文献1には、リング状の並列伝送路において、並列した伝送路間の使用率のばらつきを低減しパケットの入れ替わり幅を小さくするようにしたものが記載されている。すなわち、並列伝送路では、すべての端末が同一の伝送路に接続されているわけではないため、宛先ノードで受信される前に目的とする伝送路に交換する必要がある。特許文献1は、この交換を効率よく行うためのものである。
【0006】
また、特許文献2には、リングネットワークにおいて、通信速度が異なるリンクの混在を可能にするようにしたものが記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、トークンパッシング方式のリング型LANにおいて、自ノードの受信バッファの空き容量が少なくなるとトークンのアドレスフィールドに自身のアドレスを書き込み、他ノードがデータを送信しないように制御するものが記載されている。
【0008】
また、特許文献4には、コネクションレス型のネットワークにおいて、受信バッファメモリのオーバーフローを未然に防ぐようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−248175公報
【特許文献2】特開2006−94306号公報
【特許文献3】特開平4−142836号公報
【特許文献4】特開平6−276205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、RPRのようなリング網の帯域制御プロトコルでは、トラヒックが特定のノードに対して集中し、1つの出力ポートスピードに対して大きなデータ信号の流入が続く場合に、流入超過分は、出力ポートにおいて廃棄されてしまうという問題がある。
【0011】
特許文献1は、宛先ノードの1つ上流ノードで確実に目的とするリングへ交換できるように、そのリングへの出力バッファの情報をさらに1つ上流のノードに通知をしている。しかしながら、特許文献1に示されている出力バッファとは、リング上の次のノードへ転送するためのバッファであり、トリビュタリ側から出力させるデータの出力バッファではない。
【0012】
また、特許文献2では、リングを構成するノード間を異なる通信速度のリンクで接続している場合の、制御方式を対象としており、ノードから出力されるリンクの通信速度を通知し、リング網で廃棄される事なく伝送されたデータがリング網から他の通信網に出力される際にデータが廃棄されることがないように制御を行うものである。しかしながら、特許文献2は、特定のノードの出力ポートに対して大きなデータ信号の流入が続く場合について考慮されていない。
【0013】
特許文献3では、送受信を行うためにトークンの取得が必要であるため、高速で大容量なネットワークへの適用、実施は困難であると考えられる。また、特許文献3では、トークンパッシング方式であるため、基本的に複数ノードの同時送信による競合に対する帯域制御は必要ない。
【0014】
特許文献4では、ROOMパケットによる受信側のバッファ容量の確認および帯域の予約を行って、受信側のバッファオーバフローを防ぐことができているが、同時に送信を行うことができるのは1ノードであり、高速で大規模なネットワークへの適用は困難である。
【0015】
上述の課題を鑑み、本発明は、トラヒックが特定のノードの特定のポートに対して集中し、1つの出力ポートスピードに対して大きなデータ信号の流入が続く場合でも、出力ポートにおいてデータが廃棄されることが防止できるようにしたネットワークシステムの通信方法、ネットワークシステム、及びネットワークシステムのノード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の課題を解決するために、本発明は、リング状の通信路に複数のノードを接続してなるネットワークシステムにおいて、複数のノードは、アグリゲート側のポートを介してリング状の通信路と接続され、トリビュタリ側のポートを介してクライアント網と接続されており、データを受信しているノードは、トリビュタリ側で出力データを一時蓄積する出力バッファの流入超過率情報をポート毎に測定する手段と、流入超過率情報を他のノードに送信する手段を備え、他のノードは、データを受信しているノードから送られてきた流入超過率情報を受信する手段と、受信した流入超過率情報に基づいて、データを受信しているノードに対するデータの転送レートをポート毎に設定する手段とを備えることを特徴とするネットワークシステムである。
【0017】
本発明は、リング状の通信路に複数のノードを接続してなるネットワークシステムの通信方法において、複数のノードは、アグリゲート側のポートを介してリング状の通信路と接続され、トリビュタリ側のポートを介してクライアント網と接続されており、複数のノードのうちデータを受信しているノードは、トリビュタリ側で出力データを一時蓄積する出力バッファの流入超過率情報をポート毎に測定し、流入超過率情報を他のノードに送信し、他のノードは、データを受信しているノードから送られてきた流入超過率情報を受信し、受信した流入超過率情報に基づいて、データを受信しているノードに対するデータの転送レートをポート毎に設定することを特徴とするネットワークシステムの通信方法である。
【0018】
本発明は、リング状の通信路に複数のノードを接続してなるネットワークシステムのノード装置において、トリビュタリ側で出力データを一時蓄積する出力バッファの流入超過率情報を測定し、流入超過率情報を他のノードに送信するレート測定手段と、データを受信しているノードから送られてきた流入超過率情報を受信し、受信した流入超過率情報に基づいて、データを受信しているノードに対するデータの転送レートを設定する帯域制御手段とを備えることを特徴とするネットワークシステムのノード装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、リング状の通信路に複数のノードを接続してなるネットワークシステムで、トリビュタリ側の出力バッファの流入超過率情報をポート毎に測定し、この流入超過率情報を他のノードに送信しており、他のノードは、この流入超過率情報を受信し、受信した流入超過率情報に基づいて、そのノードに対するデータの転送レートをポート毎に設定するようにしている。このため、トラヒックが特定のノードの特定のポートに対して集中しているような場合には、そのポートに対する転送レートが抑制され、出力ポートにおいてデータが廃棄されることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用できるネットワークシステムの概要の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるノードの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるネットワークシステムの動作の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるネットワークシステムの動作の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるネットワークシステムの動作の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるネットワークシステムの動作の説明図である。
【図7】本発明の第3の実施形態におけるネットワークシステムの動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明が適用できるリング網の概要を示すものである。図1において、リング網10には、4つのノード1〜4が接続されている。各ノード1〜4は、リング網10と接続しているアグリゲート側のポートと、クライアント網と接続しているトリビュタリ側のポートを備えている。
【0022】
一般的に、アグリゲート側のポートの通信帯域は高速であり、トリビュタリ側のポートの通信帯域は、アグリゲート側のポートに比べて、低速である。この例では、アグリゲート側のポートの転送レートは10Gbpsとし、トリビュタリ側のポートの転送レートは1Gbpsとしている。なお、この例では、トリビュタリ側のポートとして8つのポートが図示されているが、ポートの数は任意である。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施形態に適用できるノードの構成を示すものである。図2において、図示左側の受信機能部101は、アグリゲート側のポートを介して他のポートから送られてきたデータを受信し、トリビュタリ側の出力ポート122に送る部分である。図示右側の送信機能部102は、トリビュタリ側の入力ポート121から入力したデータを、アグリゲート側のポートを通じてリング網10に送信する部分である。
【0024】
図2に示すように、本発明の実施形態におけるノードは、アドレス学習部111と、出力バッファ112と、アドレス検索部113と、送信バッファ114と、送信制御器115と、多重器116と、アドレス学習テーブル117と、レート測定部118と、帯域制御部119とから構成される。
【0025】
アドレス学習部111は、アグリゲート側のポートから他のノードからのデータ信号を受信すると、受信したデータ信号の送信元アドレス、送信ノード番号、及び送信ポート番号を学習する。学習した送信元アドレス及び送信ポートはアドレス学習テーブル117に格納される。
【0026】
出力バッファ112は、各ポート毎に出力データを一時保存する。出力ポート122は、各ポート毎に、クライアント網にデータを出力する。
【0027】
入力ポート121は、クライアント網からのデータをポート毎に入力する。アドレス検索部113は、各ポート毎に、入力データ信号の宛先アドレスから、アドレス学習テーブル117を用いて、目的のノード番号、ポート番号を検索する。
【0028】
なお、この例では、入力ポート121として4つのポートA〜Dが設けられ、出力ポート122として4つのポートA〜Dが設けられているが、これは、論理的に区別されたもので、物理的には同一のポートから入出力を行っている。すなわち、入力ポート121のポートA〜Dと、出力ポート122のポートA〜Dとは、物理的には、それぞれ、同一である。
【0029】
送信バッファ114は、各ポート毎に、他のノードに送信するデータを一時保存する。送信制御器115は、現在送信している転送レートを各ポート毎に測定するメータと、各ポート毎に転送レートの調整を行うシェーパを有している。
【0030】
ここで、送信制御器115は、各宛先ノードの出力トリビュタリ側のポート毎に個別に備えられる。すなわち、リング内の最大ノード数が32であり、各ノードのポート数が8である場合、自ノード以外の248(31×8)個の送信バッファ114及び送信制御器115を備えることとする。
【0031】
レート測定部118は、各ポート毎に、出力バッファ112へのデータの流入量と、その出力ポートの最大出力量とから、流入超過率を算出する。この流入超過率の情報は、制御信号として、他のノードのブロードキャストされる。
【0032】
帯域制御部119は、他のノードから送られきた制御信号を受信して、流入超過率の情報の取得する。そして、この流入超過率の情報に基づいて、他のノードに送信するデータの転送レートをポート毎に設定する。
【0033】
次に、図2に示すノードの動作について説明する。図2において、実線はデータの流れを示し、波線は制御信号の流れを示している。
【0034】
先ず、リング網10を介して送られてきたデータを受信する場合について説明する。図2において、リング網10から、アグリゲート側のノードを介して、データ信号を受信すると、受信したデータ信号はアドレス学習部111に送られる。アドレス学習部111により、受信したデータの送信元アドレス、送信ノード番号、及び送信ポート番号が学習される。この学習された送信元アドレス及び送信ポートは、アドレス学習テーブル117に格納される。
【0035】
アドレス学習部111から出力されたデータ信号は、そのデータ信号の宛先となる出力ポートにそれぞれ転送され、宛先となるポートの出力バッファ112の一時保存される。そして、出力バッファ112からトリビュタリ側に出力される。
【0036】
次に、トリビュタリ側からの入力データを他のノードに送信する場合の動作について説明する。図2において、データ信号を他のノードに送信する場合には、入力ポート121の各ポートからデータ信号が入力される。トリビュタリ側の入力ポート121から入力されたデータ信号は、アドレス検索部113に転送される。
【0037】
アドレス検索部113で、アドレス学習テーブル117を用いて、データ信号の宛先アドレスから、目的のノード番号、ポート番号が検索される。アドレス検索部113により目的のノード番号、ポート番号が検索されると、データ信号は、そのポート番号に従った送信バッファ114に転送されて格納される。送信バッファ114に格納されたデータ信号は、順次、送信制御器115に読み出される。
【0038】
送信制御器115は、現在送信している転送レートを各ポート毎に測定するメータと、各ポート毎に転送レートの調整を行うシェーパを有している。送信制御器115により、データの転送レートが制御される。そして、このデータが多重器116を介して、アグリゲート側のポートから出力され、他のノードに転送される。
【0039】
本発明の第1の実施形態では、出力バッファ112に対して、レート測定部118が設けられている。他のノードからのデータを受信している場合、レート測定部118により、各ポート毎に、出力バッファ112へのデータの流入量と、その出力ポート112の最大出力量とから、流入超過率が算出される。この流入超過率の情報は、制御信号として、他の全てのノードにブロードキャストされる。
【0040】
ここで、流入超過率の計算式は、
流入超過率(%)=(出力バッファへの流入量−出力ポートの最大出力量)/出力バッファへの流入量
として求めることができる。すなわち、出力ポートの最大出力量が1Gbpsであり、出力バッファ112への流入量が3Gbpsであった場合には、流入超過率は、
(3Gbps−1Gbps)/3Gbps=67%
となる。
【0041】
一方、他ノードは、図2に示す構成と同様に構成されている。他のノードにおいては、受信した流入超過率情報は帯域制御部119に転送される。そして、帯域制御部119は、流入超過率情報に従って、宛先ノードのトリビュタリ側のポート毎に設置されているシェーパのシェーピングレートにより転送レートを設定する。
【0042】
帯域制御部119は、例えば、ノードXのポートYの流入超過率が67%であるという情報を受信した場合、ノードXのポートY向けのシェーパの設定値を現在の設定値の33%に設定する。そして、送信制御器115は、帯域制御部119は、メータにより測定した転送レートをシェーパの設定値でシェーピングして出力する制御を行うことで、転送レートを設定する。すなわち、メータにより測定した現在の送信量が1Gbpsであるとしたら、シェーピングされた転送レートは0.33Gbpsとなるように設定する(1Gbpsの33%)。このように設定することで、ノードXのポートYの出力バッファへの流入超過分であるトラヒックにより使用されていた帯域を軽減できる。
【0043】
図3〜図5は、本発明の第1の実施形態のシステムの動作を説明するものである。今、図3に示すように、ノード1のポートAに対して、複数のノード2〜4からトラヒックが送信されており、この転送レートはそれぞれ1Gbpsであるとする。これに対して、ノード1のトリビュタリ側の転送レートは、1Gbpsであるとする。この場合、ノード1では3Gbpsの転送レートのデータを受信しているが、トリビュタリ側のポートが出力できるのは1Gbpsであるため、出力バッファ112が溢れてしまい、データが廃棄されることになる。
【0044】
本発明の第1の実施形態では、このような場合には、図2に示したレート測定部118により、ポートAの流入超過率が計算される。この場合、流入超過率は、
(3Gbps−1Gbps)/3Gbps=67%
となる。
【0045】
レート測定部118により流入超過率が計算されると、図4に示すように、このポートAの流入超過率の情報は、他の全てのノード2〜4にブロードキャストされる。ノード2〜4の帯域制御部119では、ノード1から送られてきた流入超過率の情報が受信される。
【0046】
ノード2〜4は、ノード1のポートAからの流入超過率情報を含む制御情報を受信すると、図5に示すように、受信した流入超過率情報に従って、ノード1のポートAに対する送信データの転送レートの制御を実施する。上述のように、ノード1から送られてきたポートAの流入超過率情報が67%であった場合には、各ノード2〜4は、ノード1のポートAに向けたトラヒックの転送レートの設定値(shRate)を現在の設定値の33%に抑制する。
【0047】
このように、ノード1に対するデータを送信している各ノード2〜4がノード1のポートAに対するデータの転送レートを33%に抑制することで、出力バッファ112が溢れることはなくなる。その結果、統計多重を必要とするパケット通信網において中継網の帯域の有効利用が可能となる。
【0048】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図6は、本発明の第2の実施形態を示すものである。この実施形態では、図2におけるレート測定部118は、流入超過率情報と共に、バッファ使用率をブロードキャストするようにしている。そして、データを送信しているノードは、受信した流入超過率情報から流入超過が解消されたことが検出され、かつ、受信した出力バッファの使用率から出力バッファに残留量が保有されていることが検出された場合には、そのノードに向けて送信するデータの転送レートを増加させるようにしている。すなわち、流入超過率が0%であり、かつ出力バッファ使用率が100%以下なら、帯域に余裕が生じているとして、そのノードに対するデータの転送レートを上げるようにしている。
【0049】
図6では、前述の第1の実施形態と同様に、各ノード2〜4の転送レートが0.33Gbpsに帯域制御が実施された後に、ノード2からノード1のポートA宛てトラヒックの送信がなくなり、ノード1の帯域に余裕が生じた場合について示している。
【0050】
図6に示すように、ノード2からの送信がなくなると、ノード1のポートA宛てのトラヒックを送信しているのは、ノード3、ノード4となる。前述した制御によりノード3、4ではシェーパが33%に設定されているため、ノード1のポートAが受信しているトラヒックは0.66Gbpsとなり、ポートAの出力ポートスピード(1Gbps)よりも遅くなる。したがって、ノード1のポートAの出力バッファ112の滞留量は次第に減っていく。このような状態ではノード1のポートAはさらに多くのデータ信号を出力することが可能であるため、レート制御を緩和または解消することが望ましい。
【0051】
本発明の第2の実施形態では、ノード1は、ポートAの流入超過率情報をブロードキャストすると共に、バッファ使用率をブロードキャストしている。この場合、ノード1は、ノード3及びノード4に、ポートAの流入超過率が0%であり、かつ出力バッファ使用率が(使用率<100%)であることを通知することになる。
【0052】
本発明の第2の実施形態では、流入超過率が0%であり、かつ出力バッファ使用率が100%以下なら、そのノードに対するデータの転送レートを上げるようにしている。したがって、この場合、ノード1からポートAの流入超過率情報とバッファ使用率情報を受信したノード3及び4は、ノード1のポートA向けの転送レートの設定値を33%から徐々に上げていく。
【0053】
ここで、転送レートの設定値を急激に100%まで上げてしまうと、再びノード1のポートAにおいてデータ信号の流入超過が生じる可能性があるため、時間の関数を用いて徐々に上げていくこととする。しかし、転送レートの設定値を上げる方法は他にも考えられ、とくに時間の関数に限定しない。また、転送レートを上げる速さについても特に規定しない。転送レートを上げる速さを遅く設定することで、送信できるデータ信号量は減ってしまうが、再び出力側での流入超過の状態になりにくいという効果がある。
【0054】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。上述の第2の実施形態では、流入超過率が0%であり、かつ出力バッファ使用率が100%未満であった場合に、そのノードに対する送信データの転送レートを上げている。設定レートにも関係するが、送信データの転送ノードを上げると、受信側のノードへの流入量が増加する。そして、さらに流入量が出力ポートスピードを超過してしまうと、また出力バッファ112の使用率が100%に達し、データ信号が廃棄されてしまう可能性がある。このような状態になると、前述したような制御により、再び、データ転送レートが下げられる。したがって、この場合、データ転送レートを抑制する処理と、データ転送レートを高くする処理とが頻繁に繰返される可能性がある。
【0055】
そこで、この実施形態では、図7に示すように、出力バッファ112の使用率がある閾値(TH)未満になった場合に、転送レートの設定値を上げるようにしている。このように、転送レートの設定値に閾値を設けた場合には、図7に示すように、閾値を小さくすることで、送信側の転送レートを上げたことによる流入量の増加を吸収しやすくなり、流入量増加に伴う出力バッファでのデータ信号廃棄を軽減できる。
【0056】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1〜4 ノード
101 受信機能部
102 送信機能部
111 アドレス学習部
112 出力バッファ
113 アドレス検索部
114 送信バッファ
115 送信制御器
116 多重器
117 アドレス学習テーブル
118 レート測定部
119 帯域制御部
121 入力ポート
122 出力ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状の通信路に複数のノードを接続してなるネットワークシステムにおいて、
前記複数のノードは、アグリゲート側のポートを介して前記リング状の通信路と接続され、トリビュタリ側のポートを介してクライアント網と接続されており、
データを受信しているノードは、前記トリビュタリ側で出力データを一時蓄積する出力バッファの流入超過率情報をポート毎に測定する手段と、前記流入超過率情報を他のノードに送信する手段を備え、
前記他のノードは、前記データを受信しているノードから送られてきた流入超過率情報を受信する手段と、前記受信した流入超過率情報に基づいて、前記データを受信しているノードに対するデータの転送レートをポート毎に設定する手段とを備える
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
前記他のノードは、前記受信した流入超過率情報から流入超過が検出されると、前記データを受信しているノードに向けて送信するデータの転送レートを抑制させることを特徴とする請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項3】
さらに、前記データを受信しているノードは、前記出力バッファの使用率の情報を送信し、
前記他のノードは、前記受信した流入超過率情報から流入超過が解消されたことが検出され、かつ、前記受信した出力バッファの使用率から出力バッファの残留量に余裕があることが検出された場合には、前記データを受信しているノードに向けて送信するデータの転送レートを増加させることを特徴とする請求項2に記載のネットワークシステム。
【請求項4】
前記前記データを受信しているノードに向けて送信するデータの転送レートの増加は、時間の関数を用いて徐々に上昇させることを特徴とする請求項3に記載のネットワークシステム。
【請求項5】
前記出力バッファの残留量に閾値を設けることを特徴とする請求項3又は4に記載のネットワークシステム。
【請求項6】
リング状の通信路に複数のノードを接続してなるネットワークシステムの通信方法において、
前記複数のノードは、アグリゲート側のポートを介して前記リング状の通信路と接続され、トリビュタリ側のポートを介してクライアント網と接続されており、
前記複数のノードのうちデータを受信しているノードは、前記トリビュタリ側で出力データを一時蓄積する出力バッファの流入超過率情報をポート毎に測定し、前記流入超過率情報を他のノードに送信し、
前記他のノードは、前記データを受信しているノードから送られてきた流入超過率情報を受信し、前記受信した流入超過率情報に基づいて、前記データを受信しているノードに対するデータの転送レートをポート毎に設定する
ことを特徴とするネットワークシステムの通信方法。
【請求項7】
リング状の通信路に複数のノードを接続してなるネットワークシステムのノード装置において、
トリビュタリ側で出力データを一時蓄積する出力バッファの流入超過率情報を測定し、前記流入超過率情報を他のノードに送信するレート測定手段と、
データを受信しているノードから送られてきた流入超過率情報を受信し、前記受信した流入超過率情報に基づいて、前記データを受信しているノードに対するデータの転送レートを設定する帯域制御手段と
を備えることを特徴とするネットワークシステムのノード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−263300(P2010−263300A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110815(P2009−110815)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】