説明

ネットワークストレージ・システムとその管理方法及び制御プログラム

【課題】ネットワークストレージ・システムにおけるストレージ装置のコピー量の削減とストレージ効率の向上及びアクセス速度の向上をはかり、快適性、利便性、経済性の向上したストレージ・システムとストレージ管理方法および制御プログラムを提供する。
【解決手段】複数のクライアント端末とストレージ装置をネットワークを介して直接接続したネットワークストレージ・システムにおいて、前記ストレージ装置には、前記クライアント端末が共用できる読出し専用の共用データを記憶するMV論理ディスクと、前記クライアント端末毎の固有のデータを読み書きできるBV論理ディスクと、読み出し書き込みを制御する制御部には、アクセス管理テーブルに併設して、前記書き込みデータ以外のデータ読み出しにはMV論理ディスクの参照を指示する参照論理ディスク番号欄とを具備するLDK管理テーブルを備えた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージ・システム及びその管理方法に関し、特にネットワークストレージ・システムとストレージ装置管理方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人情報の漏洩防止などセキュリティ強化への重要性が高まり、クライアントのPC内にはハードディスクなどの記憶装置を搭載せずに、サーバ上で全ての情報を管理・運用し、クライアントPCのブート(起動)もサーバ上の情報から行なうネットワークブート・システムが提案されている。このようなシステムの一例を図6に示す。クライアント10はネットワーク20を介してサーバ90と接続され、サーバ90はストレージ40内に記憶されているブートイメージと各クライアントの固有情報TempAなどから、サーバ上でクライアントのPCのブートイメージを作成し送信しクライアントのPCをブート(起動)することができるようになっている。
【0003】
ところで、最近、サーバを介在させずにクライアントのPCとストレージとを直接ネットワークで接続することが可能なiSCSI(Internet Small Computer System Interface)プロトコルが登場している。iSCSIプロトコルは、SCSIコマンドやデータをTCP/IPパケットに乗せることで、インターネットで接続された遠隔のストレージを論理的にはSCSIプロトコルを使ったローカルストレージと同じように見せることが可能である。このiSCSIプロトコルを用いると、前述のサーバをなくすことができ、システムの構成を簡素化することができる。
【0004】
図7は、iSCSIプロトコルを用いてサーバをなくし、クライアント10とストレージ40とをネットワーク20で直結した構成を示している。ストレージ40は、クライアント10からの読出し書込みの処理を行なうホストインタフェース50と、論理ディスク70のデータを一時的に記憶するキャッシュメモリ60と、1台以上の物理ディスク上に論理的に構成される論理ディスク(LDK)70と、これらを制御する制御部80とを備えている。このようなクライアント10とストレージ40を直結した構成では、クライアント10毎に論理ディスク(LDK)70を割り当てることとなり、制御部80にあるアクセス管理テーブル81により、それぞれのLDK70を各クライアントに見せる必要がある。ここで、アクセス管理テーブル81によりクライアント毎にLDKを見せる方法は特許文献1などで知られている。図7ではクライアントAにLDK1を、クライアントBにLDK2を、クライアントCにLDK3とを割り当てている例を示している。
【特許文献1】特開2000−181636号公報(NEC)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来技術の構成には、次のような課題があった。
第一の課題は、ブート用のLDKを準備するのに時間がかかるという点である。ストレージ40内のLDK70はクライアント10毎に作成する必要があり、その手順は次のようになる。まず、マスターとなるLDKを作成し、そのLDKにブート用のイメージを格納する(図7ではLDK0をマスターとしている)。次にクライアント用のLDKを作成し、マスターLDK0の内容をすべてクライアント用のLDKにコピーする。このコピー作業はクライアントの台数だけ実行する必要がある(図7では3台のクライアント用にLDK1〜LDK3を作成し、LDK0から各LDKへコピーを行う)。そして、各クライアントからアクセスできるようにアクセス管理テーブルを設定する。ここで、クライアント用のLDKへコピーが必要となる理由としては、ブート時にクライアントから設定変更やログの書き込みがあった場合に対応するためであり、変更差分は各LDK内に保存される(図7ではTempA、TempB、TempCが該当する)。
【0006】
第二の課題は、ストレージ全体の容量効率が悪いことである。クライアント用のLDKはマスターLDKからのコピーであり、保存内容としては変更差分を除けば同じものとなる。通常はブート用のイメージに比べて変更差分は微少であり、ほぼ同じ内容のものがストレージ内に複数存在することとなる。しかも、これは接続クライアント数に比例して増加するものである。
【0007】
第三の課題は、ストレージ内のキャッシュメモリの利用効率が悪いことである。複数のクライアントから読み出し要求があった場合、LDK毎にキャッシュメモリを使用することとなるが、これも第二の課題と同様に同じ内容のものが殆どであり無駄が多い。
【0008】
なお、上記の三つの課題は、ネットワークブート・システムに限らず、例えば、書籍の閲覧システム(マスターLDKから書籍データをクライアントに送り、その書籍データに対してクライアントは個別に栞(しおり)を付ける機能を有する)など、直接クライアントとストレージを接続して情報をやりとりし、その情報を各クライアントで共有するようなネットワークストレージ・システムにおいて共通に存在する。
そこで、本明細書では、以下ネットワークブート・システムも含んだより広い概念としてネットワークストレージ・システムという用語を用いる。
(発明の目的)
本発明は、上述した三つの課題に鑑み、ネットワークストレージ・システムにおけるコピー量の削減とストレージ効率の向上及びアクセス速度の向上をはかり、快適性、利便性、経済性の向上したネットワークストレージ・システムおよびストレージ管理方法および制御プログラムの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るネットワークストレージ・システムは、複数のクライアント端末とこれらクライアント端末が読み書きするデータを格納するストレージ装置をネットワークを介して直接接続し、前記ストレージ装置は、前記クライアント端末が共用できる読出し専用の共用データを記憶するMV論理ディスク(MV:マスターボリューム)と、前記クライアント端末毎に対応付けられている固有のデータを読出し書込みできるBV論理ディスク(BV:ブートボリューム)と、前記論理ディスクと前記クライアント端末間の読み出し書き込みを制御する制御部とを備え、前記制御部は、クライアントからの読み出し指令データが前記対応付けられたBV論理ディスクに存在するか否かを判定する機能と、前記読み出し指令データが前記BV論理ディスクに存在しない場合には前記MV論理ディスクから前記読み出し指令データを読み出す機能と、前記読み出したデータをクライアントに送る仮想メモリ的制御を行なうことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
これにより、量的に膨大であるが読み出し専用の共有データとクライアント毎に異なる固有のデータとの二種類のデータが一体になっているブートイメージを、MV論理ディスクとBV論理ディスクに分離して記憶・管理すると共に、これら二種類のデータを必要に応じて結合する機能を備えた制御部を設けることによって、論理ディスク間での運用開始前の無駄なコピー作業の削減による準備時間の短縮及びディスク利用効率の向上を可能にしている。
【0011】
また、本発明は、前記制御部に、前記各クライアントと前記BV論理ディスクとを対応付けるアクセス管理テーブルを設け、このアクセス管理テーブルに併設して、前記読み出し指令データが前記BV論理ディスクに存在しない場合にはMV論理ディスクの参照を指示するLDK管理テーブルを設け、前記制御部は、前記アクセス管理テーブルと前記LDK管理テーブルを参照して前記読み出し指令データを読み出す機能を備えたことを特徴とする(請求項2)。
【0012】
これらアクセス管理テーブル及びLDK管理テーブルによって、二種類に分けて管理するMVとBVのデータの制御を制御部が容易に行なうことができ、従来問題であった大量のMVデータをクライアントの数だけコピーし保存しておくという無駄な作業とディスク容量の使用を抑えることによって効率性と経済性が向上したシステムを提供できる。
【0013】
さらに、本発明は、前記LDK管理テーブルに、前記MV論理ディスク参照を指示する参照論理ディスク番号欄に加えて、論理ディスクの属性を管理する欄と書込みデータのアドレスマッピングを管理する変換マップ欄とを備えたことを特徴とする(請求項3)
これにより、制御部のデータ管理の効率化等がはかられている。
【0014】
また、本発明は、前記論理ディスクからの読出し書込みデータを一時記憶しておくキャッシュメモリを前記制御部に併設し、前記キャッシュメモリのデータ保持機能を利用して、クライアントからの読み出し指令に対して、先ず前記キャッシュメモリ上に前記読み出し指令のデータが存在するか否かを判定する機能を備えたことを特徴とする(請求項4)。
【0015】
これにより、二種類のデータに分離することによって読出し時のキャッシュメモリのヒット率の向上を実現し、ブート動作の高速化をも可能にし、前記効率性、経済性に加えさらに利便性、快適性が向上したシステムの提供を可能にしている。
【0016】
さらに、前記ネットワークは、iSCSIプロトコルを用いたインターネット若しくはLAN、又はファイバチャネルプロトコルを用いるSANであることを特徴とする(請求項5)。
【0017】
上記課題を解決するため、本発明に係るストレージ管理方法は、複数のクライアント端末とストレージ装置をネットワークを介して直接接続し、前記ストレージ装置は読出し専用の共用データを記憶するMV論理ディスク(MV:マスターボリューム)と、前記各クライアント毎に固有のデータを読出し又は書込みできるBV論理ディスク(BV:ブートボリューム)とを備えて成るネットワークストレージ・システムにおけるストレージ管理方法であって、前記クライアント端末装置に前記ストレージ装置の論理ディスクを利用させる場合に、アクセス管理テーブルへのアクセスによって前記クライアントに関係付けられたBV論理ディスクのLDK管理テーブルを参照する参照工程と、論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在するか否かを判定する判定工程と、前記論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在する場合には、前記変換マップから物理アドレスを取得して読み出しを行なう読み出し工程、又は書き込みを行なう書き込み工程と、前記論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在しない場合には、前記LDK管理テーブルの参照論理ディスク番号欄からからMV番号を取得してMV論理ディスクから読み出すMV読出し工程、又は前記変換マップ欄を更新し物理アドレスに書込みを行なう新規書込み工程とを備えたことを特徴とする(請求項6)。
【0018】
これにより、量的に膨大であるが読み出し専用のデータとクライアント毎に異なる固有のデータとの二種類のデータが一体になっているブートイメージを、分離して記憶・管理すると共に、これら二種類のデータを必要に応じて結合する機能としてアクセス管理テーブル及びLDK管理テーブルを設けることによって、二種類に分けて管理するMVとBVのデータの制御を制御部が容易に行なうことができ、従来問題であった大量のMVデータをクライアントの数だけコピーし保存しておくという無駄な作業とディスク容量の使用を抑えることによって効率性と経済性が向上したストレージ管理方法を提供できる。
【0019】
また、前記ストレージ装置はMV論理ディスクからの読出しデータを一時記憶しておくキャッシュメモリを備え、前記参照ディスク番号からMV番号を取得して読み出す工程において、前記キャッシュメモリを先ず参照し、MVが存在しなければMV論理ディスクより読み出す工程を備えたことを特徴とする(請求項7)。
【0020】
これにより、二種類のデータに分離することによって読出し時のキャッシュメモリのヒット率の向上を実現し、ブート動作の高速化をも可能にし、前記効率性、経済性に加えさらに利便性、快適性が向上したストレージ管理方法の提供を可能にしている。
【0021】
上記課題を解決するため、本発明に係るストレージ制御プログラムは、複数のクライアント端末とストレージ装置をネットワークを介して直接接続し、前記ストレージ装置は読出し専用の共用データを記憶するMV論理ディスク(MV:マスターボリューム)と、前記各クライアント毎に固有のデータを読出し又は書込みできるBV論理ディスク(BV:ブートボリューム)とを備えて成るネットワークストレージ・システムにおいて、前記クライアント端末装置に前記ストレージ装置の論理ディスクを利用させる場合に、アクセス管理テーブルへのアクセスによって前記クライアントに関係付けられたBV論理ディスクのLDK管理テーブルを参照する参照処理と、論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在するか否かを判定する判定処理と、前記論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在する場合には、前記変換マップから物理アドレスを取得して読み出しを行なう読み出し処理、又は書き込みを行なう書き込み処理と、論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在しない場合には、前記LDK管理テーブルの参照論理ディスク番号欄からからMV番号を取得してMV論理ディスクから読み出すMV読出し処理、又は前記変換マップ欄を更新し物理アドレスに書込みを行なう新規書込み処理と、を制御部のプロセッサに実行させるよう構成したことを特徴とする(請求項8)。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、クライアント用LDKからすぐにMVのLDKが使用できるようになり、クライアント用LDKを運用開始前にMVからコピーしておくといった作業が不要となり、準備時間の短縮とストレージ利用効率が向上し、システムの効率性、経済性、快適性が向上する。
【0023】
また、BVでは、クライアントからの書き込みデータを変換マップにより管理し、それ以外のデータを読み出す場合には、MVにあるデータを参照してクライアントに応答する。このとき、BVを構成する物理ディスクを仮想RAIDとして構築しておけば、実際に記憶するデータを削減でき、ストレージ全体の容量効率を高めることができる。
【0024】
さらに、クライアントがMVから読み出したデータはキャッシュメモリに一時的に格納され、その後に別のクライアントから同じ論理アドレスに対して読み出しが行われた場合には、キャッシュメモリ上のデータをクライアントに返すことが期待できる。これにより、2台目以降のクライアントのブート時間の短縮化の効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の一実施形態であるネットワークストレージ・システムについて図面に基づいて説明する。
図1は、クライアント端末としてのクライアント1(説明の便宜のため、クライアントA、クライアントB、クライアントCの3台とするが、一般にn(整数)台でよい)は、ネットワーク2を介してストレージ装置4に直接接続されおり、クライアント1とストレージ装置4は、iSCSIプロトコルを用い直接にデータの読み書きが可能になっている。
【0026】
ストレージ装置4は、クライアント1からの読み出し及び書き込み要求の処理を行うインタフェース制御LSIで実現されるホストインタフェース5と、論理ディスク7のデータを一時的に記憶する高速アクセス可能なキャッシュメモリ6と、1台以上の物理ディスク上に論理的に構成される論理ディスク(LDK)7と、これらを制御する制御部8とを備えて構成されている。
【0027】
ここで、詳細な説明に入る前に発明の重要なポイントについて述べる。
本実施形態に係るネットワークストレージ・システムは、複数のクライアント端末1とこれらクライアント端末1が読み書きするデータを格納するストレージ装置4をネットワーク2を介して直接接続している。
ストレージ装置4は、クライアント端末1が共用できる読出し専用の共用データを記憶するMV論理ディスク(MV:マスターボリューム)と、前記クライアント端末1毎に対応付けられている固有のデータを読出し書込みできるBV論理ディスク(BV:ブートボリューム)と、これら論理ディスク7とクライアント端末1間の読み出し書き込みを制御する制御部8とを備え構成される。
【0028】
制御部8は、クライアント1からの読み出し指令データが、そのクライアント1に対応付けられたBV論理ディスク7に存在するか否かを判定する機能と、前記読み出し指令データが前記BV論理ディスク7に存在しない場合にはMV論理ディスク7から前記読み出し指令データを読み出す機能と、前記読み出したデータをクライアントに送る仮想メモリ的制御を行なうことを特徴とする。
【0029】
これにより、量的に膨大であるが読み出し専用の共有データとクライアント毎に異なる固有のデータとの二種類のデータが一体になっているデータを、MV論理ディスク7とBV論理ディスク7に分離して記憶・管理すると共に、これら二種類のデータを必要に応じて読み書きする機能を備えた制御部8を設けることによって、論理ディスク7間での運用開始前の無駄なコピー作業の削減による準備時間の短縮及びディスク利用効率の向上を可能にしている。
【0030】
また、本実施形態では、制御部8に、各クライアント1とBV論理ディスク7とを対応付けるアクセス管理テーブル81を設け、また、このアクセス管理テーブル81に併設して、読み出し指令データがBV論理ディスク7に存在しない場合にはMV論理ディスク7の参照を指示するLDK管理テーブル82を設け、制御部8は、アクセス管理テーブル81とLDK管理テーブル82を参照して前記読み出し指令データを読み出す機能を備えている。
【0031】
これらアクセス管理テーブル81及びLDK管理テーブル82によって、二種類に分けて管理するMVとBVのデータの制御を制御部8が容易に行なうことができ、従来問題であった大量のMVデータをクライアント1の数だけコピーし保存しておくという無駄な作業とディスク容量の使用を抑えることによって効率性と経済性が向上したシステムを提供できる。
【0032】
さらに、LDK管理テーブル82に、前記MV論理ディスク参照を指示するための参照論理ディスク番号欄に加えて、論理ディスクの属性を管理する欄と書込みデータのアドレスマッピングを管理する変換マップ欄とを備えている。
【0033】
また、論理ディスク7からの読出し書込みデータを一時記憶しておくキャッシュメモリ6を制御部8に併設し、キャッシュメモリ6のデータ保持機能を利用して、クライアント1からの読み出し指令に対して、制御部8は、先ずキャッシュメモリ6上に読み出し指令のデータが存在するか否かを判定する機能を備えている。
【0034】
上述したように二種類のデータに分離して論理ディスク7に格納することによって、共用データを読み出す際のキャッシュメモリのヒット率の向上が期待でき、ブート動作の高速化をも可能にし、前記効率性、経済性に加えさらに利便性、快適性が向上したシステムの提供を可能にしている。
【0035】
また、ネットワーク2には、iSCSIプロトコルを用いたインターネット若しくはLAN、又はファイバチャネルプロトコルを用いるSAN等を使用できる。
【0036】
続いてストレージ装置の構成と動作について詳しく説明する。
ストレージ装置4は、クライアント1からの読み出し及び書き込み要求の処理を行うインタフェース制御LSIで実現されるホストインタフェース5と、論理ディスク7のデータを一時的に記憶する高速アクセス可能なキャッシュメモリ6と、1台以上の物理ディスク上に論理的に構成される論理ディスク(LDK)7と、これらを制御する制御部8とを備えて構成されている。
【0037】
制御部8は、図示しないMPUと、RAMやROMといった半導体メモリで実現されるローカルメモリを備え、ローカルメモリ上に記憶されているファームウェアによって動作する。さらに、ローカルメモリ上には、クライアント1に対してどの論理ディスク(LDK)7を対応付けるかを管理するアクセス管理テーブル81、および論理ディスク(LDK)7のボリューム属性を管理するLDK管理テーブル82が配置されている。
【0038】
アクセス管理テーブル81は、図2に示すように、個々のクライアントを識別するためにクライアントごとに異なる値をもつクライアント識別子と、そのクライアントに割り当てる論理ディスク(LDK)番号とにより構成される。本実施形態では、クライアント識別子として、iSCSIプロトコルにおいてInitiator 毎にユニークな値をもつInitiator Nameを設定している。ここでは、クライアントAのInitiator NameをInitiatorA、クライアントBのInitiator NameをInitiatorB、クライアントCのInitiator NameをInitiatorCとしている。
【0039】
LDK管理テーブル82は、図3に示すように、論理ディスク(LDK)番号と、ボリューム属性、参照論理ディスク番号、変換マップとで構成される。ボリューム属性は、論理ディスク番号で示されるLDKの属性を示し、クライアント用のLDKとなるものをブートボリューム(BV)、マスターのLDKとなるものをマスターボリューム(MV)、それ以外のものは通常のボリューム(NV)として管理する。
【0040】
参照論理ディスク番号と変換マップは、ボリューム属性がBVのときにのみ有効となり、参照論理ディスク番号は該当BVをどのMVと関連づけるかを示し、変換マップはクライアント1から指示された論理アドレスを物理アドレスに変換するテーブルで、クライアント1からBVへの書き込み要求があった場合に更新される。
【0041】
なお、アクセス管理テーブル81、LDK管理テーブル82、LDKの作成作業などはストレージ装置4に接続されている保守端末3から実施することができる。
(動作の説明)
次に、本実施形態に係るネットワークストレージ・システムの動作を図面に基づいて説明する。
図4は、クライアント1からストレージ装置4にデータの読み出し要求があったときの流れ図である。
【0042】
ストレージ装置4の制御部8は、クライアント1からの読み出し要求を受信すると、クライアント1のクライアント識別子(InitiatorName)をもとにアクセス管理テーブル81から論理ディスク番号を調べる(ステップS601、参照工程、参照処理)。そして、その論理ディスク番号をもとにLDK管理テーブル82からボリュームの属性を調べる(ステップS602)。ここで、ボリューム属性がBV以外であるときには、通常の読み出し処理を行う(ステップS611)。
【0043】
もし、ボリューム属性がBVであるときには、クライアント1からの読み出し要求の論理アドレスがLDK管理テーブル82の変換マップに登録されているかどうかを調べる(ステップS604、判定工程、判定処理)。論理アドレスが変換マップ内に登録されている場合には、変換マップから該当する物理アドレスを取り出す(ステップS605、)。そして、物理アドレスで示されるデータをBVから読み出して、クライアント1に送信する(ステップS606、読出し工程、読出し処理)。
【0044】
論理アドレスが変換マップに登録されていないときは、LDK管理テーブル82の参照論理ディスク番号からMVを調べる(ステップS608)。そして、該当データがキャッシュメモリ6に存在するかを調べる(ステップS609)。もし、キャッシュメモリ6にデータが存在すれば、そのデータをクライアント1に送信する(ステップS607)。データが存在しなければ、MVよりデータをキャッシュメモリ6に読み出して(ステップS610、MV読出し工程、MV読出し処理)から、クライアント1に送信する(ステップS607)。
【0045】
上記動作により、クライアントがブートするときにストレージに対して読み出し要求があった場合には、BVを介してMVからデータを読み出してクライアントに応答することができる。また、上記の読み出し動作で一度MVから読み出したデータはキャッシュメモリ6上に展開されるため、別のクライアントから読み出し要求があった場合、MVからデータを読み出すよりも高速にクライアントに応答できることが期待できる。これにより、キャッシュメモリの利用効率が改善され、さらにクライアントのブート時間を高速化することが可能となる。
【0046】
図7は、クライアント1からストレージ装置4にデータの書き込み要求があったときの流れ図である。クライアント1から書き込み要求を受信すると、クライアント1のInitiatorNameをもとにアクセス管理テーブル81から論理ディスク番号を調べ(ステップS701)。そして、その論理ディスク番号をもとにLDK管理テーブル82からボリュームの属性を調べる(ステップS702、参照工程、参照処理)。ここで、ボリューム属性がBV以外であるときには、通常の書き込み処理を行う(ステップS708)。
【0047】
もし、ボリューム属性がBVであるときには、クライアント1からの書き込み要求の論理アドレスがLDK管理テーブル82の変換マップに登録されているかどうかを調べる(ステップS704、判定工程、判定処理)。論理アドレスが変換マップに登録されている場合には、変換マップから物理アドレスを取り出して(ステップS705)、物理アドレスで示されるアドレスにデータを書き込む(ステップS706、書き込み工程、書き込み処理)。
【0048】
論理アドレスが変換マップに登録されていないときには、未使用の物理アドレスを計算して変換マップを更新する(ステップS707)。そして、計算した物理アドレスにクライアント1からのデータを書き込む(ステップS706、新規書き込み工程、新規書き込み処理)。
【0049】
このように、ブート後に書き込み要求があった場合には、書き込みデータを変換マップに登録してBV内に保存することができる。これにより、BV内のデータ量を削減することができ、ストレージ全体の容量効率を上げることが出来る。
【0050】
なお、上述の各種処理については、プロセッサに実行させるプログラムとして構成してもよい。
【0051】
以上説明したような構成と動作によって、本実施形態は以下のような効果を発揮する。
クライアント用のBV論理ディスクから、すぐにMVの論理ディスクが使用できるようになり、BV論理ディスクに運用開始前にMV論理ディスクからデータをコピーしておくといった作業が不要となり、準備時間の短縮とストレージ利用効率が向上し、システムの効率性、経済性、快適性が向上する。
【0052】
また、BV論理ディスクでは、クライアントからの書き込みデータを変換マップにより管理し、それ以外のデータを読み出す場合には、MV論理ディスクにあるデータを参照してクライアントに応答する。このとき、BV論理ディスクを構成する物理ディスクを仮想RAIDとして構築しておけば、実際に記憶するデータを削減でき、ストレージ全体の容量効率を高めることができる。
【0053】
さらに、クライアントがMV論理ディスクから読み出したデータはキャッシュメモリに一時的に格納され、その後に別のクライアントから読み出しが行われた場合には、キャッシュメモリ上のデータをクライアントに返すことが期待できる。これにより、クライアントのブート時間等の短縮化効果も期待できる。
【0054】
なお、本発明は、iSCSIプロトコルに限らず、ファイバチャネルプロトコルなどクライアント1とストレージ装置4とをサーバを介さず直接接続することが可能なストレージシステムでも同様に実施できる。そのときファイバチャネルプロトコルでは、イニシエータ識別子としてInitiatorNameの代わりに、Node Nameなどを用いて実現することができる。
【0055】
また、本発明はネットワークブート・システムに限らず、クライアント間でMVのデータを共有し、個々のクライアントでデータの一部を更新するようなシステム、例えば「書籍の閲覧システム」においても実施可能である。この「書籍の閲覧システム」では、クライアントはストレージ装置から直接書籍データをダウンロードして閲覧することができ、その書籍データに対して個々に栞(しおり)を設定できる。この場合、MVに書籍データを登録しておき、クライアント用LDKをBVとして設定することで、読み出し時はMVから書籍データをクライアントに応答し、栞(しおり)のデータ書き込み時は変換マップによりBV内に保存することによって、ストレージを効率的に利用でき高速な応答性でシステム全体の利便性、快適性、経済性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係るネットワークストレージ・システムの構成ブロック図である。
【図2】本実施形態に係るアクセス管理テーブルの構成図である。
【図3】本実施形態に係るLDK管理テーブルの構成図である。
【図4】クライアントからの読み出し要求に対するストレージ装置の動作の流れ図である。
【図5】クライアントからの書き込み要求に対するストレージ装置の動作の流れ図である。
【図6】従来技術でのサーバを介したネットワークブート・システムのブロック図である。
【図7】従来技術でのサーバを取り除いたネットワークブート・システムのブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1 クライアント(クライアント端末)
2 ネットワーク
3 保守端末
4 ストレージ装置
5 ホストインタフェース
6 キャッシュメモリ
7 論理ディスク(LDK)
8 制御部
81 アクセス管理テーブル
82 LDK管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクライアント端末とこれらクライアント端末が読み書きするデータを格納するストレージ装置をネットワークを介して直接接続したネットワークストレージ・システムにおいて、
前記ストレージ装置は、前記クライアント端末が共用できる読出し専用の共用データを記憶するMV論理ディスク(MV:マスターボリューム)と、前記クライアント端末毎に対応付けられている固有のデータを読出し書込みできるBV論理ディスク(BV:ブートボリューム)と、前記論理ディスクと前記クライアント端末間の読み出し書き込みを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、クライアントからの読み出し指令データが前記対応付けられたBV論理ディスクに存在するか否かを判定する機能と、前記読み出し指令データが前記BV論理ディスクに存在しない場合には前記MV論理ディスクから前記読み出し指令データを読み出す機能と、前記読み出したデータをクライアントに送る仮想メモリ的制御を行なうことを特徴としたネットワークストレージ・システム。
【請求項2】
前記制御部には、前記各クライアントと前記BV論理ディスクとを対応付けるアクセス管理テーブルを設け、このアクセス管理テーブルに併設して、前記読み出し指令データが前記BV論理ディスクに存在しない場合にはMV論理ディスクの参照を指示するLDK管理テーブルを設け、前記制御部は、前記アクセス管理テーブルと前記LDK管理テーブルを参照して前記読み出し指令データを読み出す機能を備えたことを特徴とする請求項1に記載のネットワークストレージ・システム。
【請求項3】
前記LDK管理テーブルは、前記MV論理ディスク参照を指示する参照論理ディスク番号欄に加えて、論理ディスクの属性を管理する欄と書込みデータのアドレスマッピングを管理する変換マップ欄とを備えたことを特徴とする請求項2に記載のネットワークストレージ・システム。
【請求項4】
前記論理ディスクからの読出し書込みデータを一時記憶しておくキャッシュメモリを前記制御部に併設し、前記キャッシュメモリのデータ保持機能を利用して、クライアントからの読み出し指令に対して、先ず前記キャッシュメモリ上に前記読み出し指令のデータが存在するか否かを判定する機能を備えたことを特徴とする請求項1に記載のネットワークストレージ・システム。
【請求項5】
前記ネットワークは、iSCSIプロトコルを用いたインターネット若しくはLAN、又はファイバチャネルプロトコルを用いるSANであることを特徴とする請求項1乃至4に記載のネットワークストレージ・システム。
【請求項6】
複数のクライアント端末とストレージ装置をネットワークを介して直接接続し、前記ストレージ装置は読出し専用の共用データを記憶するMV論理ディスク(MV:マスターボリューム)と、前記各クライアント毎に固有のデータを読出し又は書込みできるBV論理ディスク(BV:ブートボリューム)とを備えて成るネットワークストレージ・システムにおけるストレージ管理方法であって、
前記クライアント端末装置に前記ストレージ装置の論理ディスクを利用させる場合に、アクセス管理テーブルへのアクセスによって前記クライアントに関係付けられたBV論理ディスクのLDK管理テーブルを参照する参照工程と、
論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在するか否かを判定する判定工程と、
前記論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在する場合には、前記変換マップから物理アドレスを取得して読み出しを行なう読み出し工程、又は書き込みを行なう書き込み工程と、
前記論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在しない場合には、前記LDK管理テーブルの参照論理ディスク番号欄からからMV番号を取得してMV論理ディスクから読み出すMV読出し工程、又は前記変換マップ欄を更新し物理アドレスに書込みを行なう新規書込み工程と、
を備えたことを特徴とするストレージ管理方法。
【請求項7】
前記ストレージ装置はMV論理ディスクからの読出しデータを一時記憶しておくキャッシュメモリを備え、
前記参照ディスク番号からMV番号を取得して読み出す工程において、前記キャッシュメモリを先ず参照し、MVが存在しなければMV論理ディスクより読み出す工程を備えたことを特徴とする請求項6に記載のストレージ管理方法。
【請求項8】
複数のクライアント端末とストレージ装置をネットワークを介して直接接続し、前記ストレージ装置は読出し専用の共用データを記憶するMV論理ディスク(MV:マスターボリューム)と、前記各クライアント毎に固有のデータを読出し又は書込みできるBV論理ディスク(BV:ブートボリューム)とを備えて成るネットワークストレージ・システムにおけるストレージ制御プログラムであって、
前記クライアント端末装置に前記ストレージ装置の論理ディスクを利用させる場合に、アクセス管理テーブルへのアクセスによって前記クライアントに関係付けられたBV論理ディスクのLDK管理テーブルを参照する参照処理と、
論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在するか否かを判定する判定処理と、
前記論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在する場合には、前記変換マップから物理アドレスを取得して読み出しを行なう読み出し処理、又は書き込みを行なう書き込み処理と、
論理アドレスが前記LDK管理テーブルの変換マップ欄に存在しない場合には、前記LDK管理テーブルの参照論理ディスク番号欄からからMV番号を取得してMV論理ディスクから読み出すMV読出し処理、又は前記変換マップ欄を更新し物理アドレスに書込みを行なう新規書込み処理と、
を制御部のプロセッサに実行させるよう構成したことを特徴とするストレージ制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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