説明

ネットワーク中継装置及びQoS制御方法

【課題】 出側回線の状態変化に追随するQoS制御を行う。
【解決手段】 入側回線からのデータの受信から出側回線からのデータの送信に関連するQoS制御に関するパラメータ情報を管理するQoS制御手段と、出側回線の状態変化を監視し、監視している出側回線の状態が予め定めた規定条件に合致した場合に、その規定条件情報をQoS制御手段に通知する出側回線監視手段を備える。QoS制御部は、出側回線監視手段から出側回線における規定条件情報を取得すると、その規定条件情報が示す規定条件に対応して予め定められているQoS制御に関するパラメータ情報を取得してフロー制御手段と帯域制御手段に転送する。フロー制御手段と帯域制御手段は、転送されたQoS制御に関するパラメータ情報に基づいて、フロー制御の実施の制御と帯域制御をそれぞれ実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク中継装置及びQoS(Quality of Service、サービス品質)制御方法に関し、特に、出側回線の伝送速度の変動に追随してQoS制御を最適に実施するネットワーク中継装置及びQoS制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
QoS制御は、さまざまな種類のトラフィックが流れるネットワークにおいて、重要な通信の品質を確保するための技術の一つである。換言すれば、QoS制御は、ネットワーク上の通信で運ばれるデータに対して、その種別に応じてその扱いに差をつけることである。
【0003】
ルータなどのネットワーク中継装置におけるQoS制御として、優先制御、帯域制御及びフロー制御が行われる。
【0004】
優先制御は、ネットワーク中継装置が前位装置から入力するパケットの優先度に応じて後位装置に出力するパケットの転送順序を変える制御である。つまり、優先制御により、高い優先度を付与されたパケットは優先的に後位装置に転送される。
【0005】
帯域制御は、ネットワーク中継装置を通過するパケットの種類を分けて、それぞれに対して割り当てる帯域を制御する。ネットワーク中継装置の入側回線に対しては、パケットの種類ごとに予め設定された帯域を超えてトラフィックが流入していないかどうかを監視し、それを超えたものを破棄する流入帯域制限を行う。また、ネットワーク中継装置の出側回線に対しては、パケットの種類ごとに使用可能な帯域を、出側回線の有効な帯域幅内に確保したり制限したりする制御を行う。つまり、ネットワーク中継装置の入側回線/出側回線の帯域を分配したり、絞り込んだりする制御を行う。
【0006】
フロー制御は、ネットワーク中継装置の内部のバッファの滞留状態を監視し、バッファの滞留状態が予め定めた閾値を超えた場合に、前位装置に対してパケットの送出を抑制するように指示する制御である。つまり、前位装置から入力するパケット量が増大したような場合に、バッファがオーバーフロー状態になってパケット廃棄が発生することを回避するために実行される。
【0007】
パケットの優先度を決める一つの方法は、そのパケットに付与された送信元や送信先のアドレス情報、使用プロトコルで決める方法がある。例えば、アドレス情報であればIP(Internet Protocol)アドレスやMAC(Media Access Control)アドレスが参照される。また、プロトコルであれば、TCP(Transmission Control Protocol)とUDP(User Datagram Protocol)が区別して用いられる。
【0008】
また、別の方法として、パケット内のフィールドに優先度を明示的に指定する方法がある。この場合には、IPヘッダーの中のTOS(Type of Service)やDSCP(Differentiated services code point)といった転送優先順位を指定する専用フィールドを用いる。レイヤ2レベルであればVLANタグのTCI(Tag Control Information)フィールドが用いられる。
【0009】
ネットワーク中継装置は、前位装置から入力するパケットの優先度を上述した方法により識別する。そして、優先度が識別されたパケットは、各優先度に対応して設置されている出力バッファ(又は待ちキュー)に振り分けられて、後位装置に転送されるのを待つ。各出力バッファに振り分けて積み込まれたパケットは、高い優先度に対応する出力バッファのパケットから読み出しが行われて、後位装置に転送される。
【0010】
この出力バッファの読み出し制御においてもさまざまな方法がある。
【0011】
最も高い優先度に対応する出力バッファのパケットから読み出しを行い、その出力バッファのパケットがなくなったら次の優先度に対応する出力バッファのパケットを読み出す方法がある。また、たとえ高い優先度に対応する出力バッファにパケットが残っていても、低い優先度に対応する出力バッファから一定の割合で読み出す重み付け制御による方法もある。後者の方法は、各出力バッファから取り出すデータ量を調整することができる。
【0012】
特に、出側回線の帯域制御を行う場合には、パケットの種類毎の送信量を保証することができるCBQ(Class-Based Queuing)による読み出し手法が用いられる。CBQは、通信のクラス毎に時間内にどのくらいの量を流したいかを決めておき、通信のクラス毎に準備されている出力バッファのパケット送信量を設定しておく。パケットの読み出し時には、それぞれの出力バッファに設定された分だけ取り出すようにすることにより、各クラスのパケット転送量の保証がされる。
【0013】
また、出側回線の帯域制御では、出力バッファ毎に読み出すペースを制限して、設定した値より多くの帯域を消費しないよう、また、ネットワーク中継装置の出側回線での有効帯域幅内に収まるようなシェーピングを行う。
【0014】
フロー制御において、前位装置に対してパケットの送出を抑制するように指示する制御には、レイヤ2でのPAUSE(ポーズ)フレームを用いる方法と、レイヤ3でのACK(Acknowledgement)パケットを用いる方法とがある。
【0015】
IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3が規定するイーサネット(登録商標)におけるフロー制御は、フレームの送信を停止する時間情報を含むPAUSEフレームを用いる。前位装置は、フレームの送信を停止する時間を指示するPAUSEフレームを受信すると、当該PAUSEフレームの受信時から指示された時間が経過するまでの間のデータ送信を停止する。
【0016】
また、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)におけるフロー制御は、ACKパケットを用いる。データの送信元装置に対してパケットの送出を抑制するように指示する場合、ネットワーク中継装置は、受信可能なデータ量を示すウインドウサイズをACKパケットに書き込んで送信元装置に通知する。ACKパケットを受信した送信元装置は、ウインドウサイズに指定されたデータ量を最大許容値として次のデータを送信する。従って、輻輳状態が発生したネットワーク中継装置は、ウインドウサイズに「0」を設定したACKパケットを返送することにより、パケットの送信を中断するように送信元装置に対して指示する。
【0017】
このようなネットワーク中継装置のQoS制御により、ネットワーク中継装置内での輻輳を回避し、サービス(又はアプリケーション)に応じためりはりのあるデータ転送が実現されている。つまり、IP電話や動画配信のようにパケットの遅延や廃棄で利用者に不快感を与えるようなリアルタイム性を重視するサービスには高優先度が与えられた制御により、その通信品質が確保される。そして、パケットの遅延や廃棄の影響が少ない電子メールやWeb(ウェブ)アクセスにおいては中優先度、低優先度がそれぞれ付与され、混雑したネットワーク上を流れるデータ転送に一定の秩序を与えている。
【0018】
特許文献1は、レイヤ2ネットワークによって接続される中継装置における、複数のキューに割当てられている優先度クラス毎のフロー制御に関する技術を開示する。特許文献1において、データフレームの受信側の中継装置は、異なる優先度クラスが割当てられた複数のキューに蓄積されたデータ量を監視し、予め定めた停止閾値を超えているか否かを判定する。データ量が停止閾値を超えていると判定した場合には、データ量が停止閾値を超えたキューに割当てられている優先度クラスの情報と停止時間情報を含むフロー制御メッセージを送信する。データフレームの送信側の中継装置は、優先度クラス情報と停止時間情報を含むフロー制御メッセージを受信すると、指定された優先度クラスの送信を指定された停止時間の間停止する。特許文献1が開示する技術は、フロー制御メッセージとしてPAUSEフレームを用い、当該PAUSEフレームの未使用領域に指定する優先度クラスを設定している。
【0019】
特許文献2は、送信元及び受信側だけではなく、それらを繋げるネットワークで輻輳が生じることなく、データ転送が行える技術を開示する。特許文献2が開示するフロー制御装置は、終端装置との間でデータの転送を行う転送部、ネットワークとの間でデータの転送を行う網インタフェース部、監視部及び制御部とを備える。監視部は、転送部と網インタフェース部との間で転送されるデータ量に基づいて、当該フロー制御装置が輻輳状態にあるか否かの監視を行い、特に、データの優先度を示すキューの値毎にデータ量を監視する。制御部は、監視部の監視結果に基づいて、データの送信元である終端装置又はネットワーク機器に対して、転送するデータ量を制限する旨の通知を行う。このとき、制御部は、TCP/IPのACKパケットのウインドウサイズの値を変更し、ウインドウサイズを送信元に通知する。
なお、特許文献3及び特許文献4は、ATM(Asynchronous Transfer Mode、非同期転送モード)交換システムにおいて、ATMセルを対象とした動的レート制御スケジューラやパケットフロー制御に関する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2007-096910号公報
【特許文献2】特開2009-267642号公報
【特許文献3】特開平11-098155号公報
【特許文献4】特表2000-503176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従来、ネットワーク中継装置のQoS制御に係るパラメータは、ネットワークを設計する際にそのネットワーク中継装置の出力伝送速度および優先度別の帯域を想定して決定している。このパラメータとしては、帯域制御で用いる優先度別の帯域幅、保証すべき帯域、有効帯域幅に対する割合とか、フロー制御で用いる送信を抑制するように指示する情報やその指示基準などがある。
【0022】
しかし、ネットワーク中継装置の出側回線が無線回線で構成されている場合、その出側回線の伝送速度は容易に変動する。
【0023】
例えば、適応変調と称される適応型符号化/変調を採用する無線システムでは、電波の伝播環境の変化、例えば、ビットエラー率の変動に応じて変調方式を変える技術が用いられている。適応変調は、伝播環境の劣化時には低速の変調を行うことで誤り率の増加を抑え、通信品質の劣化を避けることができ、伝播環境の良好時には高速の変調を行うことで伝送レートを高速にすることができる。
【0024】
変調方式としては、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等がある。各変調方式における1シンボル当たりに伝送可能なビット数は、BPSKは1ビット、QPSKは2ビット、16QAMは、4ビットであり、ビット誤り率特性は、BPSK、QPSK、16QAMの順で劣化する。
【0025】
そして、電波の伝播環境が悪いときには誤り耐性の強い変調方式であるBPSKやQPSKを用い、伝播環境が良いときには誤り耐性よりも伝送レートを優先させて、例えば、QPSKの2倍の伝送レートを示す16QAMを変調方式に用いる。
【0026】
従って、ネットワーク中継装置の出側回線が適応変調に対応した無線システムの場合には、電波の伝播環境の変化に応じて伝送速度が容易に変動する。
【0027】
そのため、ネットワーク中継装置の出側回線の伝送速度が変動した場合に、ネットワーク設計者が意図したQoS制御が行われなくなるという課題がある。つまり、ネットワーク設計者は最初に設計したネットワーク中継装置間の伝送速度に応じてQoS制御に係るパラメータの設定を行うが、その想定した伝送速度が変化した場合には、それらの設定値が変動した伝送速度に対して適切な値ではなくなっている。
【0028】
例えば、出側回線の伝送速度が遅くなって有効帯域幅が減少したような場合、設定されている優先制御により優先度の高いストリームが優先的に処理されることにより、優先度の低いストリームの処理が停滞してくる。その結果、優先度の低いストリームに対応する出力バッファのパケット滞留数が輻輳を判断する閾値を超えて、当該ネットワーク中継装置に入力するデータフローを抑制するフロー制御が掛かる。
【0029】
つまり、優先度が低いクラスのストリーム停滞に起因してフロー制御が掛かり、その結果として当該ネットワーク中継装置に入力する全てのフローが抑制され、高優先度クラスのストリームまでも抑えられてしまい、最適なQoS制御が提供できなくなってしまう。
【0030】
なお、上記のような場合、特許文献1が開示するような優先度クラス毎のフロー制御を行わせることで対応できるかもしれない。しかし、優先度クラス毎のフロー制御を行わせるためには、特許文献1が開示するようにPAUSEフレームの未使用領域に優先度クラスを設定するなどして、個別にクラス毎のフロー制御情報を装置間でやり取りする必要がある。そのため、フロー制御のための標準プロトコルをそのまま用いる機器には適用することができない。
【0031】
本発明の目的は、上記の課題を解決して、フロー制御のための標準プロトコルを変更することなく、出側回線の伝送速度の変動に追随してQoS制御を最適に実施することができるネットワーク中継装置及びQoS制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記の目的を実現するために、本発明におけるネットワーク中継装置は、入側回線を介して受信するデータフローの流入を抑制するフロー制御を実施するフロー制御手段と、入側回線を介して受信し、出側回線を介して送信するデータフローの帯域を制御する帯域制御を実施する帯域制御手段と、入側回線からのデータの受信から出側回線からのデータの送信に関連するQoS制御に関するパラメータ情報を管理するQoS制御手段と、出側回線の状態変化を監視し、監視している出側回線の状態が予め定めた規定条件に合致した場合に、当該規定条件情報をQoS制御手段に通知する出側回線監視手段とを備える。QoS制御手段は、出側回線監視手段から出側回線における規定条件情報を取得すると、当該規定条件情報が示す規定条件に対応して予め定められているQoS制御に関するパラメータ情報を取得し、当該取得したQoS制御に関するパラメータ情報をフロー制御手段及び帯域制御手段に転送する。フロー制御手段は、QoS制御手段から転送されたQoS制御に関するパラメータ情報に基づいて、フロー制御の実施を制御し、帯域制御手段は、QoS制御手段から転送されたQoS制御に関するパラメータ情報に基づいて、当該パラメータ情報が規定する帯域制御を実行する。
【0033】
また、本発明のQoS制御方法は、入側回線を介してデータを受信して、当該受信したデータを出側回線を介して送信するネットワーク中継装置のQoS制御方法におけるものであり、出側回線の状態変化を監視し、監視している出側回線の状態が予め定めた規定条件に合致した場合に、当該規定条件情報を取得し、当該規定条件情報が示す規定条件に対応して予め定められているQoS制御に関するパラメータ情報を取得し、取得したQoS制御に関するパラメータ情報に基づいて、当該パラメータ情報が規定する条件で、入側回線を介して受信するデータフローの流入を抑制するフロー制御の実施及び入側回線を介して受信し、出側回線を介して送信するデータフローの帯域を制御する帯域制御、のいずれかの制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、ネットワーク中継装置の出側回線の伝送速度が変動した場合であっても、その出側回線の伝送速度の変動に追随してネットワーク設計者が意図したQoS制御を最適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るネットワーク中継装置が適用されるシステムの一例を示すシステム構成図である。
【図2】本発明に係るネットワーク中継装置の第一の実施形態を示すブロック構成図である。
【図3】第一の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoSパラメータの設定更新の動作を説明するフローチャートである。
【図4】本発明に係るネットワーク中継装置の第二の実施形態を示すブロック構成図である。
【図5】第二の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoS情報テーブルの設定例を示す図である。
【図6】第二の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoSパラメータの設定更新の動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明に係るネットワーク中継装置の第三の実施形態を示すブロック構成図である。
【図8】第三の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoSパラメータの設定更新の動作を説明するフローチャートである。
【図9】第三の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoS情報テーブルの設定例を示す図である。
【図10】第三の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoS情報テーブルの他の設定例を示す図である。
【図11】第三の実施形態のネットワーク中継装置におけるフロー制御実施の動作を説明するフローチャートである。
【図12】第三の実施形態のネットワーク中継装置における他のフロー制御実施の動作を説明するフローチャートである。
【図13】第三の実施形態のネットワーク中継装置における更に他のフロー制御実施の動作を説明するフローチャートである。
【図14】本発明に係るネットワーク中継装置の第四の実施形態を示すブロック構成図である。
【図15】第四の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoSパラメータの設定更新の動作を説明するフローチャートである。
【図16】第四の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoS情報テーブルの設定例を示す図である。
【図17】第四の実施形態のネットワーク中継装置の変形例におけるQoS情報テーブルの設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に係るネットワーク中継装置を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0037】
図1は、本発明に係るネットワーク中継装置が適用されるシステムの一例を示すシステム構成図である。
【0038】
ネットワーク中継装置10は、入側回線と出側回線を備え、それぞれ前位装置と後位装置と接続する。図1は、ネットワーク中継装置10が、前位装置の端末20と端末回線を介して接続され、後位装置としてネットワーク30の図示しない他のネットワーク中継装置と装置間回線を介して接続される例を示す。ネットワーク中継装置10は、端末回線を介して端末20から受信したデータを、装置間回線を介してネットワーク30に送信する。また、ネットワーク中継装置10は、装置間回線を介してネットワーク30から受信したデータを、端末回線を介して端末20に送信する逆方向のデータの中継も行う。本発明は、入側回線を介して受信したデータを出側回線を介して送信するネットワーク中継装置のQoS制御に関する。
【0039】
また、当該システム構成において、装置間回線の伝送速度は常に一定ではなく、外部環境の影響によりまたは計画的に変動する。
【0040】
外部環境の影響で伝送速度が変化する例としては、この装置間回線が無線システムで構築されている場合がある。特に、その無線システムが適応変調方式を採用している場合には外部環境の影響に基づく伝送速度の変化は顕著である。
【0041】
また、計画的に装置間回線の伝送速度が変化する例としては、ネットワーク計画に基づいて、時間帯に応じて計画的に装置間回線の伝送速度を変化させる場合がある。例えば、日勤帯、夕方から夜間帯、深夜から早朝帯に分けて、それぞれの時間帯での伝送速度や帯域制御の割合を変更する運用が適用される。
【0042】
このようなシステムにおいて適用される本発明に係るネットワーク中継装置の実施形態について以下に説明する。
【0043】
図2は、本発明に係るネットワーク中継装置の第一の実施形態を示すブロック構成図である。図2を参照して第一の実施形態のネットワーク中継装置100の構成を説明する。
【0044】
図2に示すように、第一の実施形態のネットワーク中継装置100は、フロー制御手段110、帯域制御手段120、QoS制御手段130及び出側回線監視手段140を備える。
【0045】
フロー制御手段110は、入側回線を介して受信するデータフローの流入を抑制するフロー制御を実施する。帯域制御手段120は、入側回線を介して受信し、出側回線を介して送信するデータフローの帯域を制御する帯域制御を実施する。QoS制御手段130は、入側回線からのデータの受信から出側回線からのデータの送信に関連するQoS制御に関するパラメータ情報を管理する。そして、出側回線監視手段140は、出側回線の状態変化を監視し、監視している出側回線の状態が予め定めた規定条件に合致した場合に、当該規定条件情報をQoS制御手段130に通知する。
【0046】
QoS制御手段130は、出側回線監視手段140から出側回線における規定条件情報を取得すると、当該規定条件情報が示す規定条件に対応して予め定められているQoS制御に関するパラメータ情報を取得する。そして、その取得したQoS制御に関するパラメータ情報をフロー制御手段110及び帯域制御手段120に転送する。
【0047】
フロー制御手段110は、QoS制御手段130から転送されたQoS制御に関するパラメータ情報に基づいて、フロー制御の実施を制御する。
【0048】
帯域制御手段120は、QoS制御手段130から転送されたQoS制御に関するパラメータ情報に基づいて、当該パラメータ情報が規定する帯域制御を実行する。
【0049】
図3は、第一の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoSパラメータの設定更新の動作を説明するフローチャートである。図3を参照して第一の実施形態のネットワーク中継装置100の動作を説明する。
【0050】
出側回線監視手段140は、出側回線の状態を監視している(S301)。そして、出側回線監視手段140は、監視している出側回線の状態が予め定めた規定条件に合致した場合、その規定条件情報をQoS制御手段130に通知する(S302、YES)。
【0051】
QoS制御手段130は、出側回線における規定条件情報を取得すると、その規定条件情報が示す規定条件に対応して予め定められているQoS制御に関するパラメータ情報を取得する(S303)。そのQoS制御に関するパラメータ情報は帯域制御手段120及びフロー制御手段110にそれぞれ更新通知される(S304)。
【0052】
帯域制御手段120及びフロー制御手段110は、QoS制御手段130から更新通知されたQoS制御に関するパラメータ情報に基づいて、自身が保持しているパラメータ情報を更新する(図3のS304)。そして、帯域制御手段120及びフロー制御手段110は、更新後のQoS制御に関するパラメータ情報に基づいてそれぞれのQoS制御を実施する(S305)。
【0053】
上記のように構成された第一の実施形態のネットワーク中継装置は、出側回線の状態の変化に追随して、その変化後の状態に対応した、予め決めておいたQoS制御に関するパラメータ情報に基づくQoS制御を実施することができる。そのため、出側回線の予想される状態変化に対応してQoS制御に関するパラメータ情報を予め設定しておくことにより、ネットワーク設計者が意図したQoS制御を最適に実施することができる。
【0054】
次に、図4を参照して第二の実施形態のネットワーク中継装置を説明する。
【0055】
図4は、本発明に係るネットワーク中継装置の第二の実施形態を示すブロック構成図である。
【0056】
第二の実施形態のネットワーク中継装置200において、QoS制御に関するパラメータ情報は、QoS制御部230が管理する。そして、QoS制御部230は、QoS制御に関するパラメータ情報を設定するQoS情報テーブル231を備える。第二の実施形態のネットワーク中継装置200において、入側回線は図示しない前位装置と接続されている端末回線、出側回線は図示しない後位装置と接続され無線回線で構成される装置間回線として説明する。
【0057】
QoS情報テーブル231は、無線回線である装置間回線の伝送速度に応じて設定すべきQoS制御のパラメータ値を予め設定するテーブルである。また、第二の実施形態のネットワーク中継装置200は、装置間回線の伝送速度を監視して、その伝送速度が変化したときに、その変化した伝送速度情報を出力する装置間回線終端部240を備える。第二の実施形態のネットワーク中継装置200は、受信制御部210及び送信制御部220をさらに備える。
【0058】
受信制御部210は、パケット解析部211及び流入帯域制限制御部212を含む。
【0059】
パケット解析部211は、端末回線を介して図示しない前位装置から受信したパケットを解析してその優先度クラスを識別する。また、パケット解析部211は、端末回線の収容ポート種別から優先度クラスを識別してもよい。
【0060】
流入帯域制限部212は、当該ネットワーク中継装置に端末回線から流入するデータフローを優先度クラス別に監視し、予め定められた帯域を超えて流入するデータフローを廃棄する流入帯域制限を行う。そして、流入帯域制限制御部212は、優先度クラス別にデータフローの流入帯域制限情報をパラメータ情報として保持している。
【0061】
送信制御部220は、パケット格納部221及び格納監視部222を含む。
【0062】
パケット格納部221は、出力を待機するパケットを受信制御部210のパケット解析部211で識別された優先度クラス別に格納する。パケット格納部221は、いわゆる出力バッファであり、優先度クラス別にFIFO(First In First Out)キューで構成されている。
【0063】
格納監視部222は、パケット格納部221のパケットの滞留状態を監視し、パケット格納部221の滞留状態が予め定めた閾値に達すると、パケット格納部221が輻輳状態にある旨の輻輳情報を出力する。また、その輻輳状態が解消したときは輻輳解消情報を出力する。
【0064】
以上のように構成された第二の実施形態のネットワーク中継装置200において、装置間回線終端部240が出力する装置間回線の伝送速度情報は、QoS制御部230で受信される。装置間回線の伝送速度情報を受信したQoS制御部230は、QoS情報テーブル231を参照する。そして、QoS制御部230は、装置間回線の伝送速度情報から識別した伝送速度に対応して予め設定されているQoS制御のパラメータ情報を読み出す。
【0065】
第二の実施形態では、QoS制御のパラメータ情報として優先度クラス別データフローの流入帯域制限情報が読み出される。QoS制御部230がQoS情報テーブル231から読み出した優先度クラス別データフローの流入帯域制限情報は、流入帯域制限制御部212に転送される。
【0066】
流入帯域制限制御部212は、QoS制御部230から転送された優先度クラス別データフローの流入帯域制限情報でパラメータ情報を更新し、当該更新したパラメータ情報に基づいて、優先度クラス別にデータフローの流入帯域制限を制御する。
【0067】
このように構成することで、第二の実施形態のネットワーク中継装置は、装置間回線の伝送速度が変動したとしても、その変動した伝送速度に最適に設定された優先度クラス別のデータフローに対する流入帯域制限の制御を実現することができる。
【0068】
図5は、第二の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoS情報テーブルの設定例を示す図である。
【0069】
図5は、装置間回線の伝送速度(有効帯域幅)が変動し、それぞれ100Mbps、60Mbps及び30Mbpsになった場合のQoSパラメータ情報を設定した例である。
【0070】
図5(a)は、QoSパラメータ情報として優先度クラス別データフローの流入帯域制限情報の設定例を示す。また、図5(b)は、上記のように設定したパラメータで流入帯域制限を実行した場合の流入帯域の優先度クラス別の帯域の専有状況を模式的に示した図である。
【0071】
装置間回線の伝送速度が100Mbpsの場合には、高優先度クラスのフローに対しては30Mbps、中優先度クラスのフローに対しては40Mbps、そして、低優先度クラスのフローに対しては30Mbpsの流入を許容するように制御している。装置間回線の伝送速度が60Mbpsに変化した場合には、上記の許容容量では容易に内部で輻輳が発生してしまう。そこで、その場合は、高優先度クラスのフローに対しては30Mbps、中優先度クラスのフローに対しては20Mbps、そして、低優先度クラスのフローに対しては10Mbpsの流入容量に変更する。同様に、装置間回線の伝送速度が30Mbpsに変化した場合には、高優先度クラスのフローに対しては15Mbps、中優先度クラスのフローに対しては10Mbps、そして、低優先度クラスのフローに対しては5Mbpsにそれぞれ変更する。
【0072】
図6は、第二の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoSパラメータの設定更新の動作を説明するフローチャートである。
【0073】
装置間回線終端部240は、装置間回線の伝送速度を監視している(S601)。装置間回線の伝送速度が予め定めた伝送速度より低下した場合に、装置間回線終端部240は、QoS制御部230にその変動した伝送速度情報を通知する(S602、YES)。または、装置間回線の伝送速度の情報を装置間回線終端部240がQoS制御部230に常時通知し、装置間回線の伝送速度が予め定めた伝送速度より低下したことをQoS制御部230において判断するようにしてもよい。
【0074】
QoS制御部230は、QoS情報テーブル231を参照する(S603)。QoS制御部230は、QoS情報テーブル231に設定されている変化後の伝送速度に対応して設定されている流入帯域制限情報を取得する(S604)。取得した流入帯域制限情報は、流入帯域制限制御部212に転送されてその流入帯域制限情報が更新される(S605)。流入帯域制限制御部212は、更新後の流入帯域制限情報に基づいて、当該ネットワーク中継装置200に流入するデータフローに対して優先度クラス別に流入帯域の制限制御を行う(S606)。
【0075】
上記のように構成された第二の実施形態のネットワーク中継装置は、装置間回線の伝送速度の変化に追随して、その変化後の状態に対応した、予め決めておいた流入帯域制限情報に基づくQoS制御を実施することができる。そのため、装置間回線の予想される状態変化に対応して流入帯域制限情報を予め設定しておくことにより、ネットワーク設計者が意図したQoS制御を最適に実施することができる。
【0076】
次に、第三の実施形態のネットワーク中継装置を説明する。第三の実施形態のネットワーク中継装置は、QoS制御のパラメータ情報として出側回線の帯域制御に関する情報とフロー制御の実行に関する情報を含む。
【0077】
図7は、本発明に係るネットワーク中継装置の第三の実施形態を示すブロック構成図である。
【0078】
第三の実施形態のネットワーク中継装置300は、第二の実施形態のネットワーク中継装置200と同様にQoS情報テーブル331をQoS制御部330に備える。QoS情報テーブル331は、無線回線である装置間回線の伝送速度に応じて設定すべきQoS制御のパラメータ値を予め設定するテーブルである。
【0079】
なお、第三の実施形態においても、入側回線は図示しない前位装置と接続されている端末回線、出側回線は図示しない後位装置と接続され無線回線で構成される装置間回線として説明する。また、第三の実施形態のネットワーク中継装置300は、装置間回線終端部340、受信制御部310及び送信制御部320を備える点においても第二の実施形態のネットワーク中継装置200と同様である。
【0080】
装置間回線終端部340は、装置間回線の伝送速度を監視して、その伝送速度が変化したときに、その変化した伝送速度情報を出力する。
【0081】
受信制御部310は、パケット解析部311とフロー制御部312を含む。パケット解析部311は、端末回線を介して受信したパケットを解析してその優先度クラスを識別する。また、パケット解析部311は、端末回線の収容ポート種別から優先度クラスを識別してもよい。
【0082】
フロー制御部312は、当該ネットワーク中継装置300に端末回線から流入するデータフローを抑制するフロー制御を実行する。フロー制御は、前述したように、前位装置に対してPAUSEフレームを用いて送信停止時間を通知するものであっても、ACKパケットを用いてウインドウサイズを通知するものであってもかまわない。
【0083】
送信制御部320は、パケット格納部321、格納監視部322及び出側帯域制御部323を含む。
【0084】
パケット格納部321は、第二の実施形態におけるパケット格納部221と同様の構成、機能を有し、出力を待機するパケットを優先度クラス別に格納する。
【0085】
格納監視部322は、パケット格納部321のパケットの滞留状態を監視し、後述するフロー制御フラグの状態に応じてフロー制御の実施の要否を判断する機能を有する。
【0086】
つまり、格納監視部322は、監視している優先度クラス別のキューの滞留状態が予め定めた閾値に達すると、対応する優先度クラスのフロー制御フラグがONに設定されている場合に、パケット格納部321が輻輳状態にある旨の輻輳情報を出力する。また、その輻輳状態が解消したときは輻輳解消情報を出力する。しかし、格納監視部322は、監視している優先度クラス別のキューの滞留状態が予め定めた閾値に達しても、対応する優先度クラスのフロー制御フラグがOFFに設定されている場合には、輻輳情報を出力しない。従って、格納監視部322は、優先度クラス別にフロー制御フラグをパラメータ情報として保持している。
【0087】
なお、受信制御部310のフロー制御部312は、格納監視部322が出力する輻輳情報に基づいてフロー制御を実行する。
【0088】
出側帯域制御部323は、出側帯域制御情報に基づいてパケット格納部321から装置間回線終端部340にパケットを出力し、装置間回線における優先度クラス別の帯域を制御する。つまり、出側帯域制御部323は、ネットワーク中継装置300から送信するデータフローの優先度クラス別の帯域を、装置間回線の有効帯域幅内で制御する。
【0089】
図8を参照してQoSパラメータの設定更新の動作を説明する。
【0090】
図8は、第三の実施形態のネットワーク中継装置300におけるQoSパラメータの設定更新の動作を説明するフローチャートである。
【0091】
装置間回線終端部340は、装置間回線の伝送速度を監視している(S801)。装置間回線の伝送速度が予め定めた伝送速度より低下した場合に、装置間回線終端部340は、QoS制御部330にその変動した伝送速度情報を通知する(S802、YES)。または、装置間回線の伝送速度の情報を装置間回線終端部340がQoS制御部330に常時通知し、装置間回線の伝送速度が予め定めた伝送速度より低下したことをQoS制御部330において判断するようにしてもよい。
【0092】
QoS制御部330は、QoS情報テーブル331を参照する(S803)。QoS制御部330は、QoS情報テーブル331に設定されている変化後の伝送速度に対応して設定されているQoSパラメータ情報を取得する。第三の実施形態で設定されるQoSパラメータ情報は、出側帯域制御情報とフロー制御フラグである(S804)。取得した出側帯域制御情報は、出側帯域制御部323に転送されてそのQoSパラメータ情報が更新される(S805)。また、取得したフロー制御フラグは、格納監視部322に転送されてそのQoSパラメータ情報が更新される(S805)。
【0093】
出側帯域制御部323は、QoS制御部330から転送された出側帯域制御情報でパラメータ情報を更新し、当該更新したパラメータ情報に基づいて装置間回線の帯域制御を実行する(S806)。
【0094】
また、格納監視部322は、QoS制御部330から転送された優先度クラス別フロー制御フラグでパラメータ情報を更新し、当該更新したパラメータ情報に基づいて輻輳情報の出力を制御する(S806)。フロー制御部312は、格納監視部322が出力する輻輳情報に基づいてフロー制御を実行する。
【0095】
続いて、QoS情報テーブル331の具体例を参照しながら第三の実施形態のネットワーク中継装置300の動作を説明する。
【0096】
図9は、第三の実施形態のネットワーク中継装置300におけるQoS情報テーブル331の設定例を示す図である。また、図10は、QoS情報テーブル331の他の設定例を示す図である。
【0097】
図9及び図10は、装置間回線の伝送速度(有効帯域幅)が変動し、それぞれ100Mbps、60Mbps及び30Mbpsになった場合のQoSパラメータ情報を設定した例である。図9は個別に帯域を確保して運用することを前提とした帯域制御を行う場合の例、図10は通信全体をシェーピングして運用することを前提とした帯域制御を行う場合の例である。
【0098】
図5を参照して説明した第二の実施形態のQoS情報テーブル231は、入側回線の流入帯域を制御する帯域制御のパラメータを設定したが、第三の実施形態のQoS情報テーブル331は出側回線の帯域制御パラメータを設定する。
【0099】
図9(a)に示すように、この例の場合は、装置間回線の伝送速度が100Mbpsにおいては、高優先度クラスのフローと中優先度クラスのフローがそれぞれ30Mbpsと40Mbpsの帯域が確保されて運用される。
【0100】
装置間回線終端部340が通知する装置間回線の伝送速度が60Mbpsになった場合、QoS制御部330はQoS情報テーブル331から対応する伝送速度でのQoSパラメータ情報を取得する。このときのQoSパラメータ情報によると、高優先度クラスのフローに対しては30Mbpsの帯域が確保され、中優先度クラスと低優先度クラスのフローは残りの帯域をそれぞれ80%、20%の割合で使用する。これらの帯域制御に関するパラメータ情報は出側帯域制御部323に転送され、出側帯域制御部323が保持するパラメータ情報が更新される。その結果、60Mbpsの有効帯域幅に対して30Mbpsの帯域が高優先度クラスのフローに確保され、残りの30Mbpsを中優先度クラスと低優先度クラスのフローがそれぞれ80%、20%の割合で使用する帯域制御に変更される。
【0101】
また、装置間回線終端部340が通知する装置間回線の伝送速度が30Mbpsになった場合には、30Mbpsに対応して設定されているQoSパラメータ情報が取得され、出側帯域制御部323にはその帯域制御に関するパラメータ情報が転送される。その結果、高優先度クラス、中優先度クラス及び低優先度クラスのフローのそれぞれが70%、15%、15%の割合で30Mbpsの有効帯域幅を使用する帯域制御が装置間回線に対して実施される。
【0102】
図9(b)は、上記のように設定したパラメータで帯域制御した場合の装置間回線の優先度クラス別の帯域の専有状況を模式的に示した図である。
【0103】
一方、図10(a)に示す例では、伝送速度が100Mbps、60Mbps及び30Mbpsのいずれの場合においても、高優先度クラス、中優先度クラス及び低優先度クラスの各フローは全ての帯域をそれぞれ一定の割合で使用する帯域制御が行われる。そして、図10(b)は、上記のように設定したパラメータで帯域制御した場合の装置間回線の優先度別の帯域の専有状況を模式的に示した図である。
【0104】
つまり、装置間回線終端部340が通知する伝送速度が100Mbpsの場合には、高優先度クラス、中優先度クラス及び低優先度クラスのフローのそれぞれが30%、40%、30%の割合で100Mbpsの有効帯域幅を使用する帯域制御が実施される。装置間回線終端部340が通知する伝送速度が60Mbpsの場合には、高優先度クラス、中優先度クラス及び低優先度クラスのフローのそれぞれが50%、40%、10%の割合で60Mbpsの有効帯域幅を使用する帯域制御が実施される。そして、装置間回線終端部340が通知する伝送速度が30Mbpsの場合には、高優先度クラス、中優先度クラス及び低優先度クラスのフローのそれぞれが70%、15%、15%の割合で30Mbpsの有効帯域幅を使用する帯域制御が実施される。
【0105】
このように、図10のようにQoS情報テーブル331を設定した場合であっても、装置間回線終端部340が通知する伝送速度に対応して設定されているQoSパラメータ情報に従って制御が実施される。
【0106】
次に、「フロー制御フラグ」について説明する。
【0107】
フロー制御フラグは、前述したように、パケット格納部321で輻輳状態になった場合に、フロー制御を実施するか実施しないかを指示するフラグである。フロー制御フラグの「OFF」は、フロー制御を実施しないことを示すフラグで、「ON」はフロー制御を実施することを示すフラグである。そして、優先度クラス別に設けるフロー制御フラグと、優先度クラスに関わりなくフロー制御を実施するか実施しないかを指示するフロー制御一括フラグの二種類がある。つまり、優先度クラス別フロー制御フラグは、優先度クラスごとにフロー制御の実施可否を指示するためのフラグで、フロー制御一括フラグは、優先度クラスに関わりなくフロー制御の実施可否を指示するためのフラグである。
【0108】
図9は優先度クラス別フロー制御フラグを設定した例を示し、図10はフロー制御一括フラグを設定した例を示す。
【0109】
優先度クラス別フロー制御フラグの使用例を説明する。
【0110】
図9に示す例では、装置間回線の伝送速度が100Mbpsの場合には中優先度クラス及び高優先度クラスに対して、そして、60Mbpsの場合には高優先度クラスに対して個別に確保された帯域が存在する。
【0111】
このような帯域制御を行う場合、例えば、低優先度クラスのパケット格納部321で輻輳状態になったときにフロー制御を掛けると、個別に確保している帯域が有効に使用されなくなって、全体としてQoSが低下する。つまり、本発明においては標準のプロトコルを使用することを前提とするので、前位装置からのフローを優先度クラス別に抑制するようなフロー制御を掛けることができない。そのため、一旦フロー制御を掛けてしまうと、本来であれば抑制する必要がない優先度クラスも含めて全ての優先度クラスのフローが抑制の対象となってしまうからである。
【0112】
従って、このような場合、低優先度クラスに対応するフロー制御フラグをOFFに設定し、低優先度クラスのパケット格納部321で輻輳状態になったとしてもフロー制御を実施させないようにしている。
【0113】
また、装置間回線の伝送速度が60Mbpsの場合には中優先度クラス及び低優先度クラスのいずれに対してもフロー制御フラグをOFFに設定している。この場合は、個別に確保された高優先度クラスの帯域に影響を与えないようにしている。
【0114】
一方、優先度クラスに対応するフロー制御フラグがONに設定されている場合には、その優先度クラスのパケット格納部321が輻輳状態になったときにフロー制御を実施して、パケットの廃棄が発生しないようにしている。従って、装置間回線の伝送速度が100Mbpsの場合の中優先度クラス及び高優先度クラスに対して、そして、60Mbpsの場合の高優先度クラスに対して、それぞれフロー制御フラグがONに設定されている。伝送速度が30Mbpsの場合には、フロー制御を実施しても影響を与える帯域が存在しないので、全ての優先度クラスに対応するフロー制御フラグがONに設定されている。
【0115】
一方、フロー制御一括フラグは、優先度クラス別にフロー制御の実施を制御する必要が無いように帯域制御情報が設定されているQoS情報テーブル331において使用される。例えば、図10に示す設定例においては、どの伝送速度においても、フロー制御の実施が影響を与える帯域が他に存在しないので、全ての優先度クラスに対応するフロー制御フラグをONに設定する代わりに、ONに設定したフロー制御一括フラグを用いている。
【0116】
次に、図11、12及び13を参照して、第三の実施形態のネットワーク中継装置におけるフロー制御の実施の制御に関する動作を説明する。
【0117】
図11は、第三の実施形態のネットワーク中継装置におけるフロー制御実施の動作を説明するフローチャートである。
【0118】
格納監視部322は、優先度クラス別のパケット格納部321が輻輳状態になったことを検出すると(S1101、YES)、対応する優先度クラス別フロー制御フラグの設定を確認する(S1102)。対応する優先度クラス別フロー制御フラグの設定がOFFの場合には、格納監視部322は輻輳情報を出力せずにパケット格納部321の監視に戻る(S1102、OFF)。一方、対応する優先度クラス別フロー制御フラグの設定がONの場合には、格納監視部322は輻輳情報をフロー制御部312に出力する(S1102、ON)。輻輳情報を受信したフロー制御部312は、フロー制御を実施する(S1103)。
【0119】
なお、上記において、フロー制御フラグがフロー制御一括フラグであった場合には、格納監視部322は、優先度クラスに関わりなく当該フロー制御一括フラグの設定に従って輻輳情報のフロー制御部312への出力の要否を判断する。
【0120】
図12は、第三の実施形態のネットワーク中継装置における他のフロー制御実施の動作を説明するフローチャートである。この例は、フロー制御部312がフロー制御フラグを保持する場合の動作である。
【0121】
前述した第三の実施形態のネットワーク中継装置の構成の説明においては、格納監視部322がフロー制御フラグの状態に応じてフロー制御の実施の要否を判断する機能を有するものとして説明した。しかし、フロー制御部312がフロー制御フラグの状態に応じてフロー制御の実施の要否を判断する機能を有するものであってもよい。この場合、QoS制御部330は、QoS情報テーブル331から読み出したフロー制御フラグをフロー制御部312に転送し、フロー制御部312がフロー制御フラグをパラメータ情報として保持する。そして、格納監視部322は、監視している優先度クラス別のキューの滞留状態が予め定めた閾値に達すると、そのパケット格納部321が輻輳状態にある旨の輻輳情報をフロー制御部312に出力する。このとき、格納監視部322が通知する輻輳情報には、対応する優先度クラスを特定することができる情報を含む。
【0122】
上記の構成を前提とした図12の動作を説明する。
【0123】
格納監視部322は、優先度クラス別のパケット格納部321が輻輳状態になったことを検出すると(S1201、YES)、パケット格納部321の優先度クラスを特定する情報とともに輻輳情報をフロー制御部312に出力する(S1202)。フロー制御部312は、優先度クラス別の輻輳情報を受信すると、その優先度クラスに対応するフロー制御フラグの設定を確認する(S1203)。対応する優先度クラス別フロー制御フラグの設定がOFFの場合には、フロー制御部312はフロー制御を実施しない(S1203、OFF)。一方、対応する優先度クラス別フロー制御フラグの設定がONの場合(S1203、ON)には、フロー制御部312はフロー制御を実施する(S1204)。
【0124】
図13は、第三の実施形態のネットワーク中継装置における更に他のフロー制御実施の動作を説明するフローチャートである。この例は、図12で説明した構成と同様に、フロー制御部312がフロー制御フラグを保持する場合の動作である。また、この場合のフロー制御フラグはフロー制御一括フラグである。
【0125】
格納監視部322は、いずれかのパケット格納部321が輻輳状態になったことを検出すると(S1301、YES)、輻輳情報をフロー制御部312に出力する(S1302)。フロー制御部312は、輻輳情報を受信すると、フロー制御一括フラグの設定を確認する(S1303)。フロー制御一括フラグの設定がOFFの場合には、フロー制御部312はフロー制御を実施しない(S1303、OFF)。一方、フロー制御一括フラグの設定がONの場合(S1303、ON)には、フロー制御部312はフロー制御を実施する(S1304)。
【0126】
第三の実施形態のネットワーク中継装置は、装置間回線の伝送速度の変化に追随して、その変化後の状態に対応した、予め決めておいた出側回線の帯域制御情報とフロー制御フラグに基づくQoS制御を実施することができる。そのため、装置間回線の予想される状態変化に対応して出側回線の帯域制御情報とフロー制御フラグを予め設定しておくことにより、ネットワーク設計者が意図したQoS制御を最適に実施することができる。また、第三の実施形態のネットワーク中継装置は、優先度クラス別にフロー制御の実施可否を指示することができるフロー制御フラグを備え、個別に確保された帯域に影響を与えることなくフロー制御の実施を制御することができる。
【0127】
次に、第四の実施形態のネットワーク中継装置を説明する。
【0128】
なお、第四の実施形態においても、入側回線は図示しない前位装置と接続されている端末回線、出側回線は図示しない後位装置と接続される装置間回線として説明する。
【0129】
第四の実施形態のネットワーク中継装置は、予め定めた計画にもとづいて装置間回線の伝送速度が変化する運用形態に使用される。つまり、第四の実施形態のネットワーク中継装置は、ネットワーク計画に基づいて、時間帯に応じて計画的に装置間回線の伝送速度を変化させる運用が行われる形態に使用される。運用例としては、1日の時間帯を日勤帯、夕方から夜間帯、深夜から翌日早朝帯に分け、それぞれの時間帯での伝送速度や帯域制御の割合を変更する運用がある。
【0130】
図14は、本発明に係るネットワーク中継装置の第四の実施形態を示すブロック構成図である。
【0131】
第四の実施形態のネットワーク中継装置400において、装置間回線の伝送速度は予め定めた時間帯で予め定めた値に変化する。そして、その予め定めた伝送速度の値に応じて設定するQoS制御のパラメータ値を予め設定したQoS情報テーブル431をQoS制御部430に備える。また、QoS制御部430は、現在時刻を計時しているタイマー432を含む。
【0132】
第四の実施形態のネットワーク中継装置400は、その他の構成要素として受信制御部310、送信制御部320及び装置間回線終端部440をさらに備える。受信制御部310及び送信制御部320は、第三の実施形態のネットワーク中継装置300が備える受信制御部310及び送信制御部320と同一の構成、機能を備えている。そのため、これらの構成要素の参照符号は、第三の実施形態のネットワーク中継装置300で用いた参照符号と同一の符号を用いる。
【0133】
受信制御部310は、パケット解析部311とフロー制御部312を含む。パケット解析部311は、端末回線を介して受信したパケットを解析してその優先度クラスを識別する。フロー制御部312は、当該ネットワーク中継装置300に流入するデータフローを抑制するフロー制御を実行する。
【0134】
送信制御部320は、パケット格納部321、格納監視部322及び出側帯域制御部323を含む。パケット格納部321は、優先度クラス別に出力を待機するパケットを格納する。格納監視部322は、パケット格納部321のパケットの滞留状態を監視し、フロー制御の実行の要否を判断する機能を有する。
【0135】
なお、フロー制御部312は、格納監視部322が出力する輻輳情報に基づいてフロー制御を実行する。
【0136】
出側帯域制御部323は、出側帯域制御情報に基づいてパケット格納部321から装置間回線終端部440にパケットを出力し、装置間回線における優先度クラス別の帯域を制御する。
【0137】
装置間回線終端部440は、第三の実施形態のネットワーク中継装置300が備える装置間回線終端部340のように、装置間回線の伝送速度を監視してその伝送速度が変化したときに変動情報を出力する構成を備えていてもよい。また、装置間回線終端部440は、装置間回線の伝送速度を監視しない構成であってもよい。
【0138】
図15を参照して、第四の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoSパラメータの設定更新の動作を説明する。
【0139】
図15は、第四の実施形態のネットワーク中継装置におけるQoSパラメータの設定更新の動作を説明するフローチャートである。
【0140】
QoS制御部430のタイマー432は現在時刻を計時している(S1501)。予め定めた設定時刻になると(S1502、YES)、QoS制御部430は、QoS情報テーブル431を参照する(S1503)。
【0141】
QoS制御部430は、QoS情報テーブル431に設定されている当該時刻に対応して設定されているQoSパラメータ情報を取得する(S1504)。第四の実施形態で設定されるQoSパラメータ情報は、第三の実施形態と同じで、出側帯域制御情報とフロー制御フラグである(S1504)。
【0142】
取得した出側帯域制御情報は、出側帯域制御部323に転送されてそのQoSパラメータ情報が更新される(S1505)。また、取得したフロー制御フラグは、格納監視部322に転送されてそのQoSパラメータ情報が更新される(S1505)。
【0143】
出側帯域制御部323は、QoS制御部430から転送された出側帯域制御情報でパラメータ情報を更新し、当該更新したパラメータ情報に基づいて装置間回線の帯域制御を実行する(S1506)。
【0144】
また、格納監視部322は、QoS制御部430から転送された優先度クラス別フロー制御フラグでパラメータ情報を更新し、当該更新したパラメータ情報に基づいて輻輳情報の出力を制御する(S1506)。フロー制御部312は、格納監視部322が出力する輻輳情報に基づいてフロー制御を実行する。
【0145】
続いて、QoS情報テーブル431の具体例を説明する。
【0146】
図16は、第四の実施形態のネットワーク中継装置400におけるQoS情報テーブル431のパラメータの設定例を示す図である。QoS情報テーブル431に設定されるQoSパラメータ情報は、出側帯域制御情報とフロー制御フラグである。
【0147】
図16(a)は、時間帯別の装置間回線の伝送速度(有効帯域幅)と、それぞれの時間帯の伝送速度に対応して設定したQoSパラメータ情報の例を示す。装置間回線の伝送速度は、9時00分から15時00分の時間帯の伝送速度が100Mbps、15時00分から20時00分の時間帯の伝送速度が60Mbps、20時00分から翌日9時00分の時間帯の伝送速度が30Mbpsに設定されている。
【0148】
そして、設定されているQoSパラメータ情報は、各時間帯における装置間回線の優先度クラス別の帯域制御が下記のような設定のもとに運用される状況を示している。
【0149】
9時00分から15時00分の時間帯(100Mbps)においては、高優先度クラスのフローと中優先度クラスのフローのそれぞれが30Mbpsと40Mbpsの帯域が確保されて運用される。15時00分から20時00分の時間帯(60Mbps)においては、高優先度クラスのフローは30Mbpsの帯域が確保されて運用され、中優先度クラスと低優先度クラスのフローは残りの帯域をそれぞれ80%、20%の割合で使用する。そして、20時00分から翌日9時00分の時間帯(30Mbps)においては、高優先度クラス、中優先度クラス及び低優先度クラスのフローは全ての帯域をそれぞれ70%、15%、15%の割合で使用する。
【0150】
つまり、時刻9時00分になると、QoS情報テーブル431から「09:00〜15:00」の時間帯に対応するQoSパラメータ情報が読み出される。この場合は、装置間回線の伝送速度が100Mbpsで、高優先度クラスのフローと中優先度クラスのフローがそれぞれ30Mbpsと40Mbpsの帯域が確保され、低優先度クラスのフローが残り帯域を使用する帯域制御が実施される。時刻15時00分になると、QoS情報テーブル431から「15:00〜20:00」の時間帯に対応するQoSパラメータ情報が読み出される。この場合は、装置間回線の伝送速度が60Mbpsで、高優先度クラスのフローに対しては30Mbpsの帯域が確保され、中優先度クラスと低優先度クラスのフローは残りの帯域をそれぞれ80%、20%の割合で使用する帯域制御が実施される。そして、時刻20時00分になると、QoS情報テーブル431から「20:00〜09:00」の時間帯に対応するQoSパラメータ情報が読み出される。この場合は、装置間回線の伝送速度が30Mbpsで、高優先度クラス、中優先度クラス及び低優先度クラスのフローのそれぞれが70%、15%、15%の割合で30Mbpsの有効帯域幅を使用する帯域制御が実施される。
【0151】
なお、図16(b)は、上記のように設定したパラメータで帯域制御した場合の装置間回線の優先度別の帯域の専有状況を模式的に示した図である。
【0152】
また、図16(a)に示されている「ON/OFF」は、第三の実施形態で説明した優先度クラス別フロー制御フラグの設定値である。優先度クラス別フロー制御フラグ及びそれを用いた構成、動作については、第三の実施形態で説明した構成、動作と同じなので、ここでの説明は割愛する。
【0153】
なお、第四の実施形態のネットワーク中継装置においても、第三の実施形態のネットワーク中継装置において図10を参照して説明したと同様な運用形態の帯域制御を行う設定も可能であることは言うまでもない。
【0154】
以上に説明したように、第四の実施形態のネットワーク中継装置は、装置間回線の伝送速度が時間帯に応じて計画的に変化する運用形態において使用される。そして、予め定めた時刻になると、その時間帯に対応するQoS制御のパラメータ情報を、QoS情報テーブル431から読み出し、そのパラメータ情報に対応する帯域制御やフロー制御を実施する。そのため、各時間帯のデータフローに合わせて装置間回線を効率的に運用し、かつ、それに追随した最適なQoS制御を実施することができる。また、第四の実施形態のネットワーク中継装置は、優先度クラス別にフロー制御の実施可否を指示することができるフロー制御フラグを備え、個別に確保された帯域に影響を与えることなくフロー制御の実施を制御することができる。
【0155】
第四の実施形態のネットワーク中継装置の変形例を説明する。
【0156】
上記の説明において、予め定めた設定時刻を計時するためにタイマー432をQoS制御部430に設けたが、このタイマー432をQoS制御部430に設けなくてもよい。
【0157】
その場合、図示しない伝送装置と連携して装置間回線終端部440で時間情報を管理し、伝送装置側で設定された伝送速度の変更時刻と連動した時刻情報を装置間回線終端部440からQoS制御部430に通知してもよい。つまり、ある設定時刻になって伝送装置における伝送速度が変化したとき、装置間回線終端部440はその変化した伝送速度を識別してQoS制御部430にそのときの時間情報を通知する。この時間情報は、そのときの時刻そのものでもかまわないし、その時刻を対応する時間帯に変換した時間帯情報であってもかまわない。
【0158】
装置間回線終端部440からの通知を受けた場合であっても、QoS制御部430は図15に示したS1503及びS1504の処理動作を行い、S1505の処理動作で出側帯域制御部323及び格納監視部322においてQoSパラメータ情報が更新される。
【0159】
このような第四の実施形態のネットワーク中継装置の変形例においては、タイマー432をQoS制御部430に設備する必要が無い。また、装置間回線終端部440から通知される時間情報は、伝送装置側で設定された伝送速度の変更時刻と連動した時刻や対応する時間帯に変換した時間帯情報が通知される。そのため、伝送速度の実際の変化に追随した正確な制御を行うことができる。
【0160】
また、他の変形例として、当該設定時刻になって伝送装置における伝送速度が変化したとき、装置間回線終端部440がその時間情報とともに変化した伝送速度も識別してQoS制御部430に通知するようにしてもよい。つまり、装置間回線終端部440は識別した時間情報とともに伝送速度情報もQoS制御部430に通知する。
【0161】
このような構成にした場合、QoS制御部430はQoS情報テーブル431に設定されている当該時間情報に対応して設定されているQoSパラメータ情報としての伝送速度の照合確認を行うことができる。つまり、何らかの障害で、装置間回線の伝送速度が想定している伝送速度に変わっていないような場合には、QoSパラメータ情報の更新を行うことなくエラー処理を行わせることができる。図17は、そのような場合を考慮したQoS情報テーブルの設定動作を説明するフローチャートである。
【0162】
図17において、QoS制御部430は装置間回線終端部440から時間情報とともに伝送速度情報の通知を受ける(S1701)。QoS制御部430はQoS情報テーブル431を参照する(S1702)。このとき、QoS制御部430はQoS情報テーブル431に設定されている当該時間帯に対応して設定されている伝送速度情報を読み出す。そして、その読み出した伝送速度情報と装置間回線終端部440から通知を受けた伝送速度情報との照合確認を行う(S1703)。
【0163】
両者が一致する場合(S1703、YES)には、QoS制御部430は、QoS情報テーブル431に設定されている当該時刻に対応して設定されているQoSパラメータ情報を取得する(S1704)。そして、取得したQoSパラメータ情報を出側帯域制御部323及び格納監視部322に転送してQoSパラメータ情報の更新を行う(S1705)。
【0164】
S1703の照合確認の結果、両者が一致しない場合(S1703、NO)には、QoS制御部430はエラー処理(S1706)を行って動作を終了する。つまり、QoS情報テーブル431に設定されている伝送速度情報と装置間回線終端部440から通知を受けた伝送速度情報とが一致しないということは、伝送装置での障害やQoS情報テーブル431の設定誤りが考えられる。そのため、保守者等に異常状態を通知するエラー処理が行われる。
【0165】
このような第四の実施形態のネットワーク中継装置の他の変形例においては、装置間回線の伝送速度が予め想定している伝送速度に変化しているかを確認してからQoSパラメータ情報を更新するようにしている。そのため、伝送装置での障害やQoS情報テーブルの設定誤り等に起因する不適切なQoSパラメータ情報の更新を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0166】
10 ネットワーク中継装置
20 端末
30 ネットワーク
100、200、300、400 ネットワーク中継装置
110 フロー制御手段
120 帯域制御手段
130 QoS制御手段
140 出側回線監視手段
210、310 受信制御部
220、320 送信制御部
230、330、430 QoS制御部
240、340、440 装置間回線終端部
211、311 パケット解析部
212 流入帯域制限制御部
312 フロー制御部
221、321 パケット格納部
222、322 格納監視部
323 出側帯域制御部
231、331、431 QoS情報テーブル
432 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入側回線を介して受信するデータフローの流入を抑制するフロー制御を実施するフロー制御手段と、
入側回線を介して受信し、出側回線を介して送信するデータフローの帯域を制御する帯域制御を実施する帯域制御手段と、
前記入側回線からのデータの受信から前記出側回線からのデータの送信に関連するQoS(Quality of Service、サービス品質)制御に関するパラメータ情報を管理するQoS制御手段と、
前記出側回線の状態変化を監視し、監視している前記出側回線の状態が予め定めた規定条件に合致した場合に、当該規定条件情報を前記QoS制御手段に通知する出側回線監視手段と
を備え、
前記QoS制御手段は、前記出側回線監視手段から前記出側回線における規定条件情報を取得すると、当該規定条件情報が示す規定条件に対応して予め定められているQoS制御に関するパラメータ情報を取得し、当該取得したQoS制御に関するパラメータ情報を前記フロー制御手段及び前記帯域制御手段に転送し、
前記フロー制御手段は、前記QoS制御手段から転送された前記QoS制御に関するパラメータ情報に基づいて、前記フロー制御の実施を制御し、
前記帯域制御手段は、前記QoS制御手段から転送された前記QoS制御に関するパラメータ情報に基づいて、当該パラメータ情報が規定する帯域制御を実行する、
ことを特徴とするネットワーク中継装置。
【請求項2】
前記出側回線監視手段は、外部環境に応じて伝送速度が変動する無線回線で構成される装置間回線の伝送速度を監視し、当該装置間回線の伝送速度が予め定めた値に変化したときに、当該変化した伝送速度情報を前記QoS制御手段に通知する装置間回線終端部であって、
前記QoS制御手段は、前記装置間回線の予め定めた伝送速度に対応して予め定められている前記QoS制御に関するパラメータ情報を設定するQoS情報テーブルを備え、前記装置間回線終端部から前記装置間回線の前記変化した伝送速度情報の通知を受けると、当該伝送速度情報が示す伝送速度に対応する予め定められている前記QoS制御に関するパラメータ情報を、前記QoS情報テーブルから読み出す
ことを特徴とする請求項1に記載のネットワーク中継装置。
【請求項3】
前記出側回線監視手段は、外部環境に応じて伝送速度が変動する無線回線で構成される装置間回線の伝送速度を監視し、当該装置間回線の伝送速度情報を前記QoS制御手段に通知する装置間回線終端部であって、
前記QoS制御手段は、前記装置間回線の予め定めた伝送速度に対応して予め定められている前記QoS制御に関するパラメータ情報を設定するQoS情報テーブルを備え、前記装置間回線終端部から通知された前記伝送速度情報が前記予め定めた伝送速度に変化したことを検出すると、当該変化した伝送速度に対応する予め定められている前記QoS制御に関するパラメータ情報を、前記QoS情報テーブルから読み出す
ことを特徴とする請求項1に記載のネットワーク中継装置。
【請求項4】
前記QoS制御手段は、予め定めた時間帯毎に変化する前記装置間回線の伝送速度に対応して予め定められている前記QoS制御に関するパラメータ情報を設定するQoS情報テーブルを含み、
前記QoS制御手段は、前記時間帯に対応する時刻を検出すると、前記QoS情報テーブルを参照し、当該検出した時間帯の前記装置間回線の伝送速度に対応して予め定められている前記QoS制御に関するパラメータ情報を読み出す
ことを特徴とする請求項1に記載のネットワーク中継装置。
【請求項5】
前記出側回線監視手段は、予め定めた時間帯毎に伝送速度が変化する前記装置間回線を監視し、時刻が前記時間帯に対応する時刻になると、当該時刻に係る時間情報を前記QoS制御手段に通知する装置間回線終端部であって、
前記QoS制御手段は、前記時間帯毎の前記装置間回線の伝送速度に対応して予め定められている前記QoS制御に関するパラメータ情報を設定するQoS情報テーブルを含み、
前記QoS制御手段は、前記装置間回線終端部から前記時間情報の通知を受けると、前記QoS情報テーブルを参照し、前記時間情報が示す時間帯の前記装置間回線の伝送速度に対応して予め定められている前記QoS制御に関するパラメータ情報を読み出すこと
を特徴とする請求項1に記載のネットワーク中継装置。
【請求項6】
前記装置間回線終端部は、前記時間情報に加えて前記時刻における前記装置間回線の伝送速度を示す伝送速度情報を前記QoS制御手段に通知し、
前記QoS制御手段は、前記装置間回線終端部から前記時間情報と前記伝送速度情報の通知を受けると、前記QoS情報テーブルを参照し、前記時間情報が示す時間帯の前記装置間回線の伝送速度を読み出し、前記装置間回線終端部から通知を受けた前記伝送速度情報が示す伝送速度と一致しない場合にはエラー処理を実行することを特徴とする請求項5に記載のネットワーク中継装置。
【請求項7】
前記帯域制御手段は、送信するデータフローの優先度クラス別の帯域を前記出側回線の有効帯域幅内で制御する出側帯域制御部であって、
前記フロー制御手段は、前記フロー制御を実施するフロー制御部と、優先度クラス別のパケット格納部の輻輳状態を優先度クラス別に監視する格納監視部とを含み、
前記QoS制御手段が管理する前記QoS制御に関するパラメータ情報は、前記出側回線の伝送速度に対応して定めた、前記優先度クラス別に定められたデータフローの送信帯域を規定する出側帯域制御情報と、前記出側回線の伝送速度に対応して定めた、前記優先度クラス別に定められた前記フロー制御の実施の許容または非許容を規定するフロー制御フラグであって、
前記格納監視部が前記優先度クラス別パケット格納部の輻輳状態を検出しても、対応する優先度クラスの前記フロー制御フラグが前記フロー制御の実施の非許容を示す場合は、前記フロー制御部が前記フロー制御を実施しないこと
を特徴とする請求項1乃至6のいずれかの請求項に記載のネットワーク中継装置。
【請求項8】
入側回線を介してデータを受信して、当該受信したデータを出側回線を介して送信するネットワーク中継装置のQoS制御方法において、
前記出側回線の状態変化を監視し、監視している前記出側回線の状態が予め定めた規定条件に合致した場合に、当該規定条件情報を取得し、
当該規定条件情報が示す規定条件に対応して予め定められているQoS制御に関するパラメータ情報を取得し、
取得した前記QoS制御に関するパラメータ情報に基づいて、当該パラメータ情報が規定する条件で、前記入側回線を介して受信するデータフローの流入を抑制するフロー制御の実施及び入側回線を介して受信し、出側回線を介して送信するデータフローの帯域を制御する帯域制御、のいずれかの制御を行う
ことを特徴とするQoS制御方法。
【請求項9】
前記規定条件情報を取得するステップは、外部環境に応じて伝送速度が変動する無線回線で構成される装置間回線の伝送速度を監視し、当該装置間回線の伝送速度が予め定めた値に変化したときに、当該変化した伝送速度情報を出力するステップを含み、
前記QoS制御に関するパラメータ情報は、前記変化した伝送速度情報が示す伝送速度に対応して予め定められている
ことを特徴とする請求項8に記載のQoS制御方法。
【請求項10】
前記QoS制御に関するパラメータ情報は、前記出側回線の伝送速度に対応して定めた、優先度クラス別に定められた前記出側回線のデータフローの送信帯域を規定する出側帯域制御情報と、前記出側回線の伝送速度に対応して定めた、前記優先度クラス別に定められた前記フロー制御の実施の許容または非許容を規定するフロー制御フラグであって、
前記帯域制御は、送信するデータフローの前記優先度クラス別の帯域を前記出側回線の有効帯域幅内で制御し、
前記フロー制御は、前記優先度クラス別のパケット格納部の輻輳状態を前記優先度クラス別に監視し、前記優先度クラス別パケット格納部の輻輳状態を検出しても、対応する優先度クラスの前記フロー制御フラグが前記フロー制御の実施の非許容を示す場合は、前記フロー制御を実施しない
ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のQoS制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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