ノイズ除去装置、重量測定装置、ノイズ除去方法、及びディジタルフィルタの設計方法
【課題】デジタルフィルタのフィルタ特性を容易に変更することが可能な技術を提供する。
【解決手段】重量測定装置のフィルタ係数演算部6は、所定の演算式を用いてフィルタ係数を求めて信号処理部5に出力する。信号処理部5はそのフィルタ係数を用いて、ディジタル信号たる計量信号Dsに対してフィルタリングを実行する。上記演算式は、フィルタリングの振幅特性においてノッチに対応する周波数を指定する第1パラメータを含みフィルタリングの振幅特性の阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき少なくとも一つの減衰帯域の減衰量を指定する第2パラメータと、当該少なくとも一つの減衰帯域の帯域位置を指定する第3パラメータと、阻止域の開始周波数を指定する第4パラメータとを含んでいる。
【解決手段】重量測定装置のフィルタ係数演算部6は、所定の演算式を用いてフィルタ係数を求めて信号処理部5に出力する。信号処理部5はそのフィルタ係数を用いて、ディジタル信号たる計量信号Dsに対してフィルタリングを実行する。上記演算式は、フィルタリングの振幅特性においてノッチに対応する周波数を指定する第1パラメータを含みフィルタリングの振幅特性の阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき少なくとも一つの減衰帯域の減衰量を指定する第2パラメータと、当該少なくとも一つの減衰帯域の帯域位置を指定する第3パラメータと、阻止域の開始周波数を指定する第4パラメータとを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルフィルタによるフィルタリング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物品重量を測定する重量測定装置では、歪みゲージ式のロードセルやフォースバランスなどの重量センサーが使用される。この重量センサーは、物品重量と風袋重量との和の重量の影響を受ける固有振動数をもつ。この固有振動数を含む帯域の外部振動が計量系に作用したとき、その外部振動はその固有振動数付近で増幅され、振動ノイズとなって、重量センサーから出力される計量信号中に出現する。以後、この振動ノイズを、「固有振動ノイズ」と呼ぶ。
【0003】
また、被計量物をコンベアで搬送しながら計量を行う重量測定装置においては、例えば、ベルトコンベヤーを駆動するモーターや搬送ローラなどの回転系振動に起因するノイズや、商用電源などに起因する電気的なノイズなどが、振動ノイズとして計量信号に重畳される。
【0004】
なお、特許文献1には重量測定装置に関する技術が記載されており、非特許文献1には最適化問題の解法について記載されている。また、ディジタルフィルタに関する出願について以下の特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−337062号公報
【特許文献2】特開2004−150883号公報
【特許文献3】特開2007−129408号公報
【特許文献4】特開2008−182367号公報
【非特許文献1】J. F. Sturm, “Using sedumi 1.02, A MATLAB toolbox for optimization over symmetric cones (Updated for Version 1.05)”, Optimiz. Methods and Syst. II, 1999, Vol.11-12, pp.625-653
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、重量センサーの固有振動数は物品重量及び風袋重量の影響を受けるため、物品重量あるいは風袋重量が変化した場合には、固有振動ノイズの周波数が変化する。また、物品重量が変化した場合は、計量部に物品が載荷されたことによる固有振動ノイズの大きさが変化する。以前は、特許文献2では、固有振動ノイズが存在する周波数範囲に対し、帯域の減推量を大きくした部分を、物品重量と風袋重量で決まる固有振動周波数に合うようにパラメータで変更することを提案している。また、固有振動数はひとつの周波数でない場合に対応し、特許文献3では、これら減推量を大きくした帯域を複数設け、それら帯域をパラメータで独立に周波数変更できるように提案している。さらに、固有振動ノイズの数に加え、物品重量等に起因する振動ノイズの大きさ変更に対応するため、特許文献4では、減衰量を大きくしたひとつ以上の帯域の周波数変更に加え、減衰量の変更もパラメータで独立に行えるようにしたことを提案している。
【0007】
また、モーターや搬送ローラなどに起因する振動ノイズの周波数や大きさは、搬送系の仕様、例えば搬送速度などによって変化する。そのため、被計量物の種類や大きさなど、または搬送系の仕様変更によって振動ノイズの周波数や大きさが変化した場合であっても、かかる振動ノイズを簡単且つ確実に除去することが可能なフィルタが必要とされる。以前は、特許文献1にディジタルフィルタの伝達関数を伝送零点(ノッチ)に対応する根を含む複数の因子の積で構成する多項式に展開し、この根の値(周波数に対応)を変更することを可能としたディジタルフィルタの提案を行っている。
【0008】
しかしながら、特許文献1の手法と特許文献2、特許文献3、特許文献4の手法を組み合わせて使用した場合、特許文献1の手法でノッチの周波数を変更すると特許文献2、3、4で実現した固有振動ノイズが存在する周波数範囲に対し、帯域の減推量を大きくした部分を含め全体の特性が所望特性から外れてしまうという問題がある。また、特許文献3,4の手法では、ディジタルフィルタの係数をパラメータを含む形で多項式表現しているため、特性を変更する数が増えてパラメータの数が増えると、係数の多項式がそれらの積で表現されているために多次元化し、設計するパソコン等のコンピュータのメモリ領域で不足となり、設計及び製品での使用ができなくなる問題がある。
【0009】
そこで、本発明は上記点に鑑みて成されたものであり、ディジタルフィルタのフィルタ特性を所望特性を保ちつつ容易に変更することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、ディジタル信号の周波数成分をノッチで減衰させるフィルタリングを、可変のフィルタ係数を用いて実行する信号処理部と、所定の演算式を用いてフィルタ係数を求めて信号処理部に出力するフィルタ係数演算部とを備え、演算式は、フィルタリングの振幅特性においてノッチに対応する周波数を指定する第1パラメータを含み、フィルタ係数演算部が、入力される第1パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、少なくとも一つのノッチに対応する周波数を、第1パラメータで指定される所望のノッチに対応する周波数へと変更可能である、ノイズ除去装置である。
【0011】
また、演算式は、フィルタリングの振幅特性の阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき少なくとも一つの減衰帯域の減衰量を指定する第2パラメータを含み、フィルタ係数演算部が、入力される第2パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、少なくとも一つの減衰帯域の減衰量を、第2パラメータで指定される所望の減衰量へと変更可能である。
【0012】
また、演算式は、少なくとも一つの減衰帯域の帯域位置を指定する第3パラメータをさらに含み、フィルタ係数演算部が、入力される第3パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、少なくとも一つの減衰帯域の帯域位置を、第3パラメータで指定される所望の帯域位置へと変更可能である。
【0013】
また、第1パラメータは、複数のノッチに対応する周波数を指定するパラメータであって、第2パラメータは、阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき複数の減衰帯域の各々の減衰量を指定するパラメータであって、第3パラメータは、複数の減衰帯域の各々の帯域位置を指定するパラメータであって、フィルタ係数演算部が、入力される第1パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、複数のノッチに対応する周波数を、第1パラメータで指定される所望の複数のノッチに対応する周波数へと独立に変更可能であり、入力される第2パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、複数の減衰帯域の各々の減衰量を、第2パラメータで指定される所望の減衰量へと独立に変更可能であり、フィルタ係数演算部が、入力される第3パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、複数の減衰帯域の各々の帯域位置を、第3パラメータで指定される所望の帯域位置へと独立に変更可能である。
【0014】
また、演算式は、阻止域の開始周波数を指定する第4パラメータをさらに含み、フィルタ係数演算部が、入力される第4パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、阻止域の開始周波数を、第4パラメータで指定される所望の周波数へと変更可能である。
【0015】
また、演算式は、阻止域の開始周波数を指定する第4パラメータをさらに含み、フィルタ係数演算部が、入力される第4パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、阻止域の開始周波数を、第4パラメータで指定される所望の周波数へと変更可能である。
【0016】
また、第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる。
【0017】
また、第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、第3パラメータは、各々の減衰帯域の帯域位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる。
【0018】
また、第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、第3パラメータは、各々の減衰帯域の帯域位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、第4パラメータは、阻止域の開始周波数の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる。
【0019】
また、ノイズ除去装置は、計量部による計量結果として得られたディジタル信号を対象としてフィルタリングを実行する、重量測定装置である。
【0020】
また、(a)所定の演算式を用いてフィルタ係数を求める工程と、(b)ディジタル信号のフィルタリングを、工程(a)で求められたフィルタ係数を用いて実行する工程とを備え、演算式は、フィルタリングのノッチに対応する周波数を指定するパラメータを含み、工程(a)は、(a−1)パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更する工程を含み、工程(a−1)を実行することによって、少なくとも一つのノッチに対応する周波数が、パラメータで指定され所望のノッチに対応する周波数へと変更される、ノイズ除去方法である。
【0021】
また、振幅特性のノッチに対応する周波数の少なくとも一つのノッチに対応する周波数が可変のディジタルフィルタの設計方法であって、(a)ディジタルフィルタの理想振幅特性に基づいて、ディジタルフィルタのフィルタ係数を、少なくとも一つのノッチに対応する周波数を指定するパラメータを含む所定の演算式で近似する工程と、(b)演算式を用いてフィルタ係数を求める工程とを備え、工程(b)は、(b−1)パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更する工程を含み、工程(b−1)を実行することによって、少なくとも一つのノッチに対応する周波数が、パラメータで指定される所望のノッチに対応する周波数へと変更される、ディジタルフィルタの設計方法である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1、請求項11及び請求項12の発明によれば、ノッチに対応する周波数を指定するパラメータを用いてフィルタ係数を変更できるため、当該ノッチに対応する周波数を容易に変更することができる。したがって、ノイズを確実に除去することができる。
【0023】
また、請求項2の発明によれば、阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき減衰帯域の減衰量を指定するパラメータを用いてフィルタ係数を変更できるため、当該減衰帯域の減衰量を容易に変更することができる。したがって、ノイズを確実に除去することができる。
【0024】
また、請求項3の発明によれば、阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき減衰帯域の帯域位置を指定するパラメータを用いてフィルタ係数を変更できるため、当該減衰帯域の帯域位置も容易に変更することができる。
【0025】
また、請求項4の発明によれば、複数のノッチに対応する周波数及び減衰帯域の減衰量及び帯域位置を指定できるため、ノイズが発生する要因が複数あり、当該要因が変化する場合であっても、ノイズを確実に除去することができる。
【0026】
また、請求項5及び請求項6の発明によれば、阻止域の開始周波数を指定するパラメータを用いてフィルタ係数を変更できるため、当該阻止域の開始周波数も容易に変更することができる。
【0027】
また、請求項7、請求項8及び請求項9の発明によれば、フィルタ係数を演算する際に複数のパラメータに関して同じように近似処理を行うことができ、結果として所望のフィルタ設計を実現できる。
【0028】
また、請求項10の発明によれば、高精度な重量測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る重量測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る重量測定装置での重量測定動作を示すフローチャートである。
【図4】理想的なフィルタ特性を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は、本発明の実施の形態に係る重量測定装置の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、本実施の形態に係る重量測定装置は、歪みゲージ式のロードセルやフォースバランスなどの重量センサー1と、アンプ2と、アナログフィルタ3と、A/D変換器(以後「ADC」と呼ぶ)4と、信号処理部5と、フィルタ係数演算部6と、データ入力部7と、係数記憶部8とを備えている。
【0031】
重量センサー1は、計量系から受けた被計量物の重量を検出して、その結果を測定信号msとしてアンプ2に出力する。アンプ2は、入力された測定信号msを増幅して増幅信号MSとしてアナログフィルタ3に出力する。アナログフィルタ3は、その増幅信号MSから不要な高域成分を除去してアナログ信号Asとして出力する。ADC4は、アナログフィルタ3から出力されるアナログ信号Asに対して所定のサンプリング周期でサンプリングし、所定の量子化ビット数で量子化したディジタル信号を計量信号Dsとして信号処理部5に出力する。
【0032】
信号処理部5は、有限インパルス応答(FIR)型のフィルタ(以後、「FIRフィルタ」と呼ぶ)を用いて、入力された計量信号Dsをフィルタリングし、その結果を信号Xsとして図示しないマイクロコンピュータに出力する。そして、マイクロコンピュータが信号Xsに基づいて被計量物の重量を計算し、図示しない表示部に表示する。
【0033】
ここで、一般に2N次のFIRフィルタの周波数応答H(ejω)は以下の式(1)で示される。
【0034】
【数1】
【0035】
ただし、hi(i=0,1,2,・・・,N)はフィルタ係数である。また、ωは正規化角周波数であって、フィルタリング時のデータのサンプリング周波数で正規化した角周波数である。本実施の形態で言えば、信号処理部5でのフィルタリング時のデータのサンプリング周波数で正規化した角周波数である。以後「正規化角周波数」と言えば、このようにサンプリング周波数で正規化した角周波数を意味するものとする。
【0036】
フィルタ係数演算部6は、上記式(1)中のフィルタ係数hiの系列{hi}を後述する所定の演算式を用いて求めて、信号処理部5へ出力する。
【0037】
図2は、信号処理部5でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。図2に示されるように、信号処理部5で用いられるFIRフィルタはローパスフィルタである。本実施の形態に係る重量測定装置は、信号処理部5で用いられるFIRフィルタの振幅特性の阻止域10において、部分的に減衰量が大きい減衰帯域9をK(≧1)個設けることが可能であり、当該減衰帯域9の帯域位置を変更できる機能を有している。つまり、減衰帯域9の位置を周波数の高い方へ移動させたり、低い方へ移動させたりできる機能を備えている。また、本実施の形態に係る重量測定装置は、減衰帯域9の減衰量を変更できる機能も備えている。そして、本実施の形態に係る重量測定装置は、K≧2の場合には、複数の減衰帯域9の各々の帯域位置を独立に変更できる機能と、複数の減衰帯域9の各々の減衰量を独立に変更できる機能とを備えている。さらに、本実施の形態に係る重量測定装置は、阻止域10の開始周波数を変更できる機能を備えている。さらに、本実施の形態に係る重量測定装置は、ノッチ部11をP(≧1)個設けることが可能であり、当該ノッチ部11のノッチ周波数位置を変更できる機能を備えている。そして、P≧2の場合には、複数のノッチ部11の各々の周波数位置を独立に変更できる機能を備えている。なお、以後単に「減衰帯域」と言えば、図2に示される減衰帯域9のように、阻止域において部分的に減衰量を大きくすべき減衰帯域を意味するものとする。
【0038】
フィルタ係数演算部6は、上記式(1)中のフィルタ係数hiの系列{hi}を以下の演算式(2)を用いて求めて、信号処理部5へ出力する。
【0039】
【数2】
【0040】
ただし、g(i,lψ,lφ1,lγ1,・・・,lφK,lγK,lθ1,・・・,lθP)は係数である。また、ψは阻止域の開始周波数を指定するパラメータであって、φ1〜φKはK個の減衰帯域の帯域位置をそれぞれ指定するパラメータであって、γ1〜γKはK個の減衰帯域の減衰量をそれぞれ指定するパラメータであって、θ1〜θPはP個のノッチ部の周波数位置をそれぞれ指定するパラメータある。式(2)に示されるように、フィルタ係数hiは、パラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPについての多項式で表現されている。なお、Lψはパラメータψの次数を表し、Lφ1〜LφKはパラメータφ1〜φKの次数をそれぞれ表し、Lγ1〜LγKはパラメータγ1〜γKの次数をそれぞれ表し、Lθ1〜LθPはパラメータθ1〜θPの次数をそれぞれ表している。以後、係数g(i,lψ,lφ1,lγ1,・・・,lφK,lγK,lθ1,・・・,lθP)を単に「係数g」と呼ぶことがある。
【0041】
係数記憶部8は、例えばROM (Read-Only Memory)であって、係数gの値を予め記憶している。そして、この係数gの値はフィルタ係数演算部6によって係数記憶部8から読み出される。
【0042】
データ入力部7は、例えばキーボードであって、ユーザーによる重量測定装置の外部からのパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの各々の値の入力を独立して受け付ける。そして、受け付けたパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの値をフィルタ係数演算部6に出力する。
【0043】
以上のように、本実施の形態では、信号処理部5、フィルタ係数演算部6、データ入力部7及び係数記憶部8が、計量信号Dsに含まれるノイズを除去するノイズ除去装置として機能する。
【0044】
次に、本実施の形態に係る重量測定装置における被計量物の重量測定動作について図3を参照して説明する。重量測定を行う際には計量信号Dsに対するフィルタリングが行われることから、図3は計量信号Dsに対するノイズ除去方法を示している。
【0045】
図3に示されるように、ステップs1において重量測定装置に電源が投入されると、ステップs2において、フィルタ係数演算部6は係数記憶部8から係数gの値を読み出す。そしてフィルタ係数演算部6は、予め内部に記憶しているパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの初期値を読み出す。
【0046】
次にステップs3において、フィルタ係数演算部6は、係数g及びパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの値を式(2)に代入してフィルタ係数hiの1つの系列{hi}を求め、信号処理部5へ出力する。これにより、信号処理部5でのフィルタ特性におけるK個の減衰帯域の帯域位置がパラメータφ1〜φKで指定される初期値にそれぞれ設定され、それらの減衰量がパラメータγ1〜γKで指定される初期値にそれぞれ設定される。また、信号処理部5でのフィルタ特性における阻止域の開始周波数がパラメータψで指定される初期値に設定される。さらに、P個のノッチ部の周波数位置がパラメータθ1〜θPで指定される初期値にそれぞれ設定される。なおこのとき、フィルタ係数hiの演算式(2)は多項式で表現されているため、迅速にフィルタ係数hiを求めることができる。v
【0047】
次にステップs4において、信号処理部5はステップs3で求められたフィルタ係数hiの系列{hi}を用いて、計量信号Dsに対してフィルタリングを実行する。そして、その結果を信号Xsとしてマイクロコンピュータに出力し、当該マイクロコンピュータが被計量物の重量をCRTなどの表示部に表示する。
【0048】
次にステップs5において、データ入力部7は、パラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPのうち少なくとも一つのパラメータの値が重量測定装置のユーザーによって入力されると、その値をフィルタ係数演算部6に出力する。上述のように、被計量物の種類や大きさなどの変更や、搬送系の仕様変更が生じると、計量信号Dsに含まれるノイズの周波数や大きさが変化するため、ユーザーは、当該ノイズを確実に除去するために、パラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPのうち少なくとも一つのパラメータの値を入力する。例えば、被計量物の種類が変更されると重量センサー1の固有振動数が変化することから、被計量物の種類ごとに重量センサー1の固有振動数の情報を予め準備しておき、被計量物の種類を変更する際に、ユーザーはこの情報を参照して、パラメータφ1〜φKの値をデータ入力部7に入力する。
【0049】
なお、本実施の形態に係る重量測定装置では、パラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの値をデータ入力するように構成しているが、これらの値を重量測定装置で自動的に決定しても良い。例えば、重量チェッカーのような計量装置では、コンベア速度が決まれば減衰させたい周波数が決定するので、自動的にパラメータφ1〜φK,θ1〜θPの値を設定できる。また、FFT等によって測定信号の振動波形の周波数解析を行い、最も振幅の大きいところを検出して自動的にパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの値を設定するという構成にしてもよい。
【0050】
次にステップs6において、フィルタ係数演算部6は、受け取ったパラメータの値を(2)に代入してフィルタ係数hiの系列{hi}を変更し、信号処理部5へ出力する。これにより、信号処理部5でのフィルタ特性における減衰帯域の帯域位置や減衰量、あるいは阻止域の開始周波数あるいはノッチ部の周波数位置が、対応するパラメータで指定される値へと変更される。そして、ステップs7において、信号処理部5はステップs6で変更されたフィルタ係数hiの系列{hi}を用いてフィルタリングを実行し、その結果を信号Xsとして出力する。
【0051】
ユーザーは、信号処理部5でのフィルタ特性を再度変更する必要がある場合には、データ入力部7にパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPのうち少なくとも一つの値を入力する。そして、ステップs6,s7が実行されて、入力されたパラメータの値に応じてフィルタ特性が変更される。
【0052】
次に、係数gの値の決定方法について説明する。まず、減衰帯域の減衰量と、その帯域位置と、阻止域の開始周波数と、ノッチ部の周波数位置が可変のFIRフィルタについて、図4に示されるような、理想的なフィルタ特性を考える。図中の横軸は正規化角周波数を、縦軸は振幅をそれぞれ示している。図中のωPは、通過域端正規化角周波数、つまり通過域の終了点での正規化角周波数を表している。ωSは、阻止域の開始点が変化すべき範囲の中心正規化角周波数を表している。φ1〜φKは、K個の減衰帯域の帯域位置が変化すべき範囲の中心正規化角周波数をそれぞれ表している。γ1〜γKは、K個の減衰帯域の帯域幅をそれぞれ表している。θ1〜θPは、P個のノッチ部の周波数位置をそれぞれ表している。
【0053】
本実施の形態では、阻止域の開始周波数を指定するパラメータψにはωSからの変位量(ずれ量)が入力される。また、減衰帯域の帯域位置を指定するパラメータφ1〜φKには、φ1〜φKからの変位量がそれぞれ入力される。そして、減衰帯域の減衰量を指定するパラメータγ1〜γKのそれぞれには、阻止域における減衰帯域以外の帯域での減衰量に対する割合が入力される。ノッチ部の周波数位置を指定するパラメータθ1〜θPのそれぞれには、θ1〜θPからの変位量が入力される。
【0054】
このように、本実施の形態では、パラメータψは、阻止域の開始周波数の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、パラメータφ1〜φKのそれぞれは、対応する減衰帯域の帯域位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えらる。また、パラメータγ1〜γKのそれぞれは、阻止域における減衰帯域以外の帯域での減衰量に対する割合として与えられ、パラメータθ1〜θPのそれぞれは、θ1〜θPからの変位量が与えられる。
【0055】
次に、図4に示される理想的なフィルタ特性に関して、以下の理想振幅特性D(ω,ψ,φ1,γ1,・・・,φK,γK,θ1,・・・,θP)と重み関数W(ω,ψ,φ1,γ1,・・・,φK,γK,θ1,・・・,θP)とを考える。
【0056】
【数3】
【0057】
【数4】
【0058】
ただし、パラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPは以下の式を満足する。
【0059】
【数5】
【0060】
ここで、周波数応答H(ejω)は上述の式(2)を使用して、以下のように表すことができる。
【0061】
【数9】
【0062】
式(9)において、各係数h(・)は,各パラメータψ,φ,γ,θの特性が変化するとその値が変化し、各パラメータの変化を、それぞれL次の多項式で近似するとh(・)は以下のように表すことができる。
【0063】
【数10】
【0064】
式(10)において,パラメータψ,φ,γ,θはそれぞれ変化の大きさが異なるため、小さなパラメータの変化が大きなパラメータの変化に埋もれてしまい、小さなパラメータの変化が係数h(・)にうまく反映されない.したがって、式(10)における各パラメータの変化が同じになるように以下のように正規化して各パラメータを与える。
【0065】
【数11】
【0066】
ただし、各パラメータは以下の式を満足する。
【0067】
【数15】
【0068】
ここで、正規化されたパラメータを用いて、式(10)は以下のように再定義できる。
【0069】
【数20】
【0070】
今,理想特性と所望の可変フィルタ特性との誤差を以下のように与える。
【0071】
【数21】
【0072】
このとき、パラメータψに対して設計時に評価する離散点をψmψ(mψ=1,・・・,Mψ)、同様にパラメータφ,γ,θについて,φmφ(mφ=1,・・・,Mφ),γmγ(mγ=1,・・・,Mγ),θmθ(mθ=1,・・・,Mθ)また近似帯域における離散周波数点ωn(n=0,・・・,M)を考え、所望の周波数帯域を離散化した阻止域減衰量の異なった帯域を有するフィルタを得るための二乗評価関数は、式(4)の重みを用いて以下のように定義する。
【0073】
【数22】
【0074】
式(22)の評価関数を最小にする解は、次式を解くことで得られる。
【0075】
【数23】
【0076】
ただし、W、U、Dはつぎのようになる。
【0077】
【数24】
【0078】
一般的に、式(22)を解くことでで得られる解は、図5に示すように等リプルにならないため、準等リプル特性を得るための方法について以下に示す。
【0079】
最小二乗法を用いて繰り返し毎に重み関数を変えることで準等リプルフィルタを設計する方法を用いて、阻止域減衰量が異なるフィルタを得るためにkを繰り返し回数として,繰り返し毎の重み関数をk=1では以下のように与える。
【0080】
【数32】
【0081】
また、k回目の繰り返しでは、以下のように与える。
【0082】
【数33】
【0083】
ただし、
【0084】
【数34】
【0085】
である。ここで用いるρは定数であり収束の速度に影響を与える。
【0086】
また,表記を簡単化するために以下のように表す。
【0087】
【数36】
【0088】
ここで、Bk(ωn)は|Ek(ωn)|の上に凸となっている極値を直線でつないだ関数である。しかしながら、阻止域減衰量が異なるフィルタを得るためには、以下で与えられる誤差を小さくする必要がある。
【0089】
【数38】
【0090】
ここでBk(ωn)は|E’k(ωn)|の上に凸となっている極値を直線でつないだ関数となる。この方法で得られるBk(ωn)を用いると|E’k(ωn)|が準等リプルとなる特性を得ることができる。この方法を用いると式(22)の二乗評価関数は以下のように再定義できる。
【0091】
【数39】
【0092】
しかしながら、異なる阻止域減衰量を持つフィルタは、すべてのリプルが同じ大きさになるとは限らない.また、|E’k(ωn)|において、極値となっていても|Ek(ωn)|においては極値となっているとは限らない。その結果、従来法のようにBk(ωn)を|E’k(ωn)|の上に凸となっている極値を直線でつないだ関数にするだけでは、計算が収束しないという重大な問題がある。そこで、Bk(ωn)を決定するとき以下に示す工夫をする。
【0093】
阻止域における|E’k(ωn)|がm番目の極値となる周波数をωmaxmとする。ωmaxm=φ+τのときには、図6に示すように、|E’k(ωmaxm)|では極値となるが、|Ek(ωmaxm)|は極値とならないので、|E’k(ωmaxm)|と|E’k(ωmaxm+1)|の値を比較し、小さな値の方はBk(ωn)を決定する際に極値として見なさないこととする。このようにして求めたBk(ωn)の例を図7に示す。
【0094】
同様に、ωmaxm=φのところで|Ek(ωmaxm)|が極値を持たない場合、|E’k(ωmaxm)|と|E’k(ωmaxm-1)|の値を比較し、小さな値の方はBk(ωn)を決定する際に極値として見なさないこととする。以上のようにBk(ωn)を決定することで、阻止域減衰量が異なる準等リプルなフィルタを設計することが可能となる。
【0095】
可変パラメータの数が増加するとそれに伴って、多項式係数の数が増大することから実用上問題となる。そこで、ここでは多項式係数の低減法を以下の示す。
【0096】
式(9)のフィルタ係数h(・)は式(20)に示すように多項式係数g(・)と可変パラメータのべき乗の積との和で構成されている。ここで、式(20)の可変パラメータは、式(16)、式(17)、式(18)、式(19)の値をとるため、各パラメータ、
【0097】
【数40】
【0098】
の値はlψ,lφ,lγ,lθが高次になったとき非常に小さくなる。加えて、式(20)からわかるように,フィルタ係数は可変パラメータの積で構成されているので、
【0099】
【数41】
【0100】
の値はさらに小さくなる。従って、可変パラメータが多数かつ高次で構成される項がフィルタ係数全体に与える影響は小さいと考えられることから、多項式係数の低減が可能となる。
【0101】
式(20)のフィルタ係数は上記のことを用いると以下のようになる。
【0102】
【数42】
【0103】
ここで、Yは以下を用いて決定する。
【0104】
【数43】
【0105】
ただし、
【0106】
【数45】
【0107】
となり、
【0108】
【数46】
【0109】
はそれぞれ、
【0110】
【数47】
【0111】
に対応する。また式(43)において、b−1=0のときΣの項は零値とする。多項式次数の総和よりも式(44)のQの値を小さくすることによって多項式係数の低減を行うことができる。多項式係数の総数は、式(20)よりも式(42)、式(43)、式(44)の提案法の方が少なくなることは明らかである。従って、多項式係数の低減を行った伝達関数を構成し、先に示した設計法を用いることで、多項式係数の低減を行った複数の要素が可変なフィルタが設計できる。
【0112】
次に、本実施の形態に係る重量測定装置でのディジタルフィルタの設計例について説明する。図8から9は、以下の表1に示される仕様1で設計した際の振幅特性を示している。図中の横軸は正規化角周波数を、縦軸は振幅をそれぞれ示している。
【0113】
【表1】
【0114】
ここで、重みをμ=0.999、式(34)の収束に影響を与えるパラメータはρ=1.3と設定した。周波数応答についての評価点は全帯域について0.1[πrad/sec]あたり、30等分とした。また、大きな阻止域減衰量を持つ帯域の重みγの評価点は、[10 22 46 100]とし、他の可変パラメータについては4等分に離散化した。収束判定は以下を用いて行った。
【0115】
【数48】
【0116】
ここで、可変パラメータの値を図8では評価点に、図9は評価点以外に設定している。これらの結果から可変パラメータを変化させても準等リプル特性が得られていることがわかる。加えて、フィルタ係数の再設計を行うことなく可変パラメータを変化させることで容易にフィルタの特性が変化できることが確認できる。
【0117】
次に、多項式係数の低減を行った場合に得られた振幅特性を図10から11に示す。ここで、多項式係数低減のための、上限値をQ=10と設定しフィルタの設計を行った。また、比較を行うために可変パラメータの値は、図10は図8と、図11は図9とそれぞれ同じ値に設定した。図10と11から、可変パラメータが変化しても準等リプル特性が得られていることがわかる。
【0118】
表2に得られたフィルタの阻止域減衰量を示す。
【0119】
【表2】
【0120】
表2から多項式係数の低減を行っていない場合と比較して、多項式係数の低減を行っても同等な阻止域減衰量が得られていることが確認できる。
【0121】
以上の説明では、ローパスフィルタの設計について述べたが、本願発明は、ローパスフィルタ以外のフィルタ(バンドパスフィルタやハイパスフィルタ等)の設計にも適用可能である。さらに、FIR型フィルタの設計について述べたが、本願発明は、IIR型フィルタの設計にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明によれば、デジタルフィルタのフィルタ特性を容易に変更することができ、重量測定装置においてノイズ除去に有効である。
【符号の説明】
【0123】
5 信号処理部
6 フィルタ係数演算部
8 係数記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルフィルタによるフィルタリング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物品重量を測定する重量測定装置では、歪みゲージ式のロードセルやフォースバランスなどの重量センサーが使用される。この重量センサーは、物品重量と風袋重量との和の重量の影響を受ける固有振動数をもつ。この固有振動数を含む帯域の外部振動が計量系に作用したとき、その外部振動はその固有振動数付近で増幅され、振動ノイズとなって、重量センサーから出力される計量信号中に出現する。以後、この振動ノイズを、「固有振動ノイズ」と呼ぶ。
【0003】
また、被計量物をコンベアで搬送しながら計量を行う重量測定装置においては、例えば、ベルトコンベヤーを駆動するモーターや搬送ローラなどの回転系振動に起因するノイズや、商用電源などに起因する電気的なノイズなどが、振動ノイズとして計量信号に重畳される。
【0004】
なお、特許文献1には重量測定装置に関する技術が記載されており、非特許文献1には最適化問題の解法について記載されている。また、ディジタルフィルタに関する出願について以下の特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−337062号公報
【特許文献2】特開2004−150883号公報
【特許文献3】特開2007−129408号公報
【特許文献4】特開2008−182367号公報
【非特許文献1】J. F. Sturm, “Using sedumi 1.02, A MATLAB toolbox for optimization over symmetric cones (Updated for Version 1.05)”, Optimiz. Methods and Syst. II, 1999, Vol.11-12, pp.625-653
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、重量センサーの固有振動数は物品重量及び風袋重量の影響を受けるため、物品重量あるいは風袋重量が変化した場合には、固有振動ノイズの周波数が変化する。また、物品重量が変化した場合は、計量部に物品が載荷されたことによる固有振動ノイズの大きさが変化する。以前は、特許文献2では、固有振動ノイズが存在する周波数範囲に対し、帯域の減推量を大きくした部分を、物品重量と風袋重量で決まる固有振動周波数に合うようにパラメータで変更することを提案している。また、固有振動数はひとつの周波数でない場合に対応し、特許文献3では、これら減推量を大きくした帯域を複数設け、それら帯域をパラメータで独立に周波数変更できるように提案している。さらに、固有振動ノイズの数に加え、物品重量等に起因する振動ノイズの大きさ変更に対応するため、特許文献4では、減衰量を大きくしたひとつ以上の帯域の周波数変更に加え、減衰量の変更もパラメータで独立に行えるようにしたことを提案している。
【0007】
また、モーターや搬送ローラなどに起因する振動ノイズの周波数や大きさは、搬送系の仕様、例えば搬送速度などによって変化する。そのため、被計量物の種類や大きさなど、または搬送系の仕様変更によって振動ノイズの周波数や大きさが変化した場合であっても、かかる振動ノイズを簡単且つ確実に除去することが可能なフィルタが必要とされる。以前は、特許文献1にディジタルフィルタの伝達関数を伝送零点(ノッチ)に対応する根を含む複数の因子の積で構成する多項式に展開し、この根の値(周波数に対応)を変更することを可能としたディジタルフィルタの提案を行っている。
【0008】
しかしながら、特許文献1の手法と特許文献2、特許文献3、特許文献4の手法を組み合わせて使用した場合、特許文献1の手法でノッチの周波数を変更すると特許文献2、3、4で実現した固有振動ノイズが存在する周波数範囲に対し、帯域の減推量を大きくした部分を含め全体の特性が所望特性から外れてしまうという問題がある。また、特許文献3,4の手法では、ディジタルフィルタの係数をパラメータを含む形で多項式表現しているため、特性を変更する数が増えてパラメータの数が増えると、係数の多項式がそれらの積で表現されているために多次元化し、設計するパソコン等のコンピュータのメモリ領域で不足となり、設計及び製品での使用ができなくなる問題がある。
【0009】
そこで、本発明は上記点に鑑みて成されたものであり、ディジタルフィルタのフィルタ特性を所望特性を保ちつつ容易に変更することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、ディジタル信号の周波数成分をノッチで減衰させるフィルタリングを、可変のフィルタ係数を用いて実行する信号処理部と、所定の演算式を用いてフィルタ係数を求めて信号処理部に出力するフィルタ係数演算部とを備え、演算式は、フィルタリングの振幅特性においてノッチに対応する周波数を指定する第1パラメータを含み、フィルタ係数演算部が、入力される第1パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、少なくとも一つのノッチに対応する周波数を、第1パラメータで指定される所望のノッチに対応する周波数へと変更可能である、ノイズ除去装置である。
【0011】
また、演算式は、フィルタリングの振幅特性の阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき少なくとも一つの減衰帯域の減衰量を指定する第2パラメータを含み、フィルタ係数演算部が、入力される第2パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、少なくとも一つの減衰帯域の減衰量を、第2パラメータで指定される所望の減衰量へと変更可能である。
【0012】
また、演算式は、少なくとも一つの減衰帯域の帯域位置を指定する第3パラメータをさらに含み、フィルタ係数演算部が、入力される第3パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、少なくとも一つの減衰帯域の帯域位置を、第3パラメータで指定される所望の帯域位置へと変更可能である。
【0013】
また、第1パラメータは、複数のノッチに対応する周波数を指定するパラメータであって、第2パラメータは、阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき複数の減衰帯域の各々の減衰量を指定するパラメータであって、第3パラメータは、複数の減衰帯域の各々の帯域位置を指定するパラメータであって、フィルタ係数演算部が、入力される第1パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、複数のノッチに対応する周波数を、第1パラメータで指定される所望の複数のノッチに対応する周波数へと独立に変更可能であり、入力される第2パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、複数の減衰帯域の各々の減衰量を、第2パラメータで指定される所望の減衰量へと独立に変更可能であり、フィルタ係数演算部が、入力される第3パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、複数の減衰帯域の各々の帯域位置を、第3パラメータで指定される所望の帯域位置へと独立に変更可能である。
【0014】
また、演算式は、阻止域の開始周波数を指定する第4パラメータをさらに含み、フィルタ係数演算部が、入力される第4パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、阻止域の開始周波数を、第4パラメータで指定される所望の周波数へと変更可能である。
【0015】
また、演算式は、阻止域の開始周波数を指定する第4パラメータをさらに含み、フィルタ係数演算部が、入力される第4パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更することによって、阻止域の開始周波数を、第4パラメータで指定される所望の周波数へと変更可能である。
【0016】
また、第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる。
【0017】
また、第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、第3パラメータは、各々の減衰帯域の帯域位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる。
【0018】
また、第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、第3パラメータは、各々の減衰帯域の帯域位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、第4パラメータは、阻止域の開始周波数の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる。
【0019】
また、ノイズ除去装置は、計量部による計量結果として得られたディジタル信号を対象としてフィルタリングを実行する、重量測定装置である。
【0020】
また、(a)所定の演算式を用いてフィルタ係数を求める工程と、(b)ディジタル信号のフィルタリングを、工程(a)で求められたフィルタ係数を用いて実行する工程とを備え、演算式は、フィルタリングのノッチに対応する周波数を指定するパラメータを含み、工程(a)は、(a−1)パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更する工程を含み、工程(a−1)を実行することによって、少なくとも一つのノッチに対応する周波数が、パラメータで指定され所望のノッチに対応する周波数へと変更される、ノイズ除去方法である。
【0021】
また、振幅特性のノッチに対応する周波数の少なくとも一つのノッチに対応する周波数が可変のディジタルフィルタの設計方法であって、(a)ディジタルフィルタの理想振幅特性に基づいて、ディジタルフィルタのフィルタ係数を、少なくとも一つのノッチに対応する周波数を指定するパラメータを含む所定の演算式で近似する工程と、(b)演算式を用いてフィルタ係数を求める工程とを備え、工程(b)は、(b−1)パラメータの値を演算式に代入してフィルタ係数を変更する工程を含み、工程(b−1)を実行することによって、少なくとも一つのノッチに対応する周波数が、パラメータで指定される所望のノッチに対応する周波数へと変更される、ディジタルフィルタの設計方法である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1、請求項11及び請求項12の発明によれば、ノッチに対応する周波数を指定するパラメータを用いてフィルタ係数を変更できるため、当該ノッチに対応する周波数を容易に変更することができる。したがって、ノイズを確実に除去することができる。
【0023】
また、請求項2の発明によれば、阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき減衰帯域の減衰量を指定するパラメータを用いてフィルタ係数を変更できるため、当該減衰帯域の減衰量を容易に変更することができる。したがって、ノイズを確実に除去することができる。
【0024】
また、請求項3の発明によれば、阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき減衰帯域の帯域位置を指定するパラメータを用いてフィルタ係数を変更できるため、当該減衰帯域の帯域位置も容易に変更することができる。
【0025】
また、請求項4の発明によれば、複数のノッチに対応する周波数及び減衰帯域の減衰量及び帯域位置を指定できるため、ノイズが発生する要因が複数あり、当該要因が変化する場合であっても、ノイズを確実に除去することができる。
【0026】
また、請求項5及び請求項6の発明によれば、阻止域の開始周波数を指定するパラメータを用いてフィルタ係数を変更できるため、当該阻止域の開始周波数も容易に変更することができる。
【0027】
また、請求項7、請求項8及び請求項9の発明によれば、フィルタ係数を演算する際に複数のパラメータに関して同じように近似処理を行うことができ、結果として所望のフィルタ設計を実現できる。
【0028】
また、請求項10の発明によれば、高精度な重量測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る重量測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る重量測定装置での重量測定動作を示すフローチャートである。
【図4】理想的なフィルタ特性を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る信号処理部でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は、本発明の実施の形態に係る重量測定装置の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、本実施の形態に係る重量測定装置は、歪みゲージ式のロードセルやフォースバランスなどの重量センサー1と、アンプ2と、アナログフィルタ3と、A/D変換器(以後「ADC」と呼ぶ)4と、信号処理部5と、フィルタ係数演算部6と、データ入力部7と、係数記憶部8とを備えている。
【0031】
重量センサー1は、計量系から受けた被計量物の重量を検出して、その結果を測定信号msとしてアンプ2に出力する。アンプ2は、入力された測定信号msを増幅して増幅信号MSとしてアナログフィルタ3に出力する。アナログフィルタ3は、その増幅信号MSから不要な高域成分を除去してアナログ信号Asとして出力する。ADC4は、アナログフィルタ3から出力されるアナログ信号Asに対して所定のサンプリング周期でサンプリングし、所定の量子化ビット数で量子化したディジタル信号を計量信号Dsとして信号処理部5に出力する。
【0032】
信号処理部5は、有限インパルス応答(FIR)型のフィルタ(以後、「FIRフィルタ」と呼ぶ)を用いて、入力された計量信号Dsをフィルタリングし、その結果を信号Xsとして図示しないマイクロコンピュータに出力する。そして、マイクロコンピュータが信号Xsに基づいて被計量物の重量を計算し、図示しない表示部に表示する。
【0033】
ここで、一般に2N次のFIRフィルタの周波数応答H(ejω)は以下の式(1)で示される。
【0034】
【数1】
【0035】
ただし、hi(i=0,1,2,・・・,N)はフィルタ係数である。また、ωは正規化角周波数であって、フィルタリング時のデータのサンプリング周波数で正規化した角周波数である。本実施の形態で言えば、信号処理部5でのフィルタリング時のデータのサンプリング周波数で正規化した角周波数である。以後「正規化角周波数」と言えば、このようにサンプリング周波数で正規化した角周波数を意味するものとする。
【0036】
フィルタ係数演算部6は、上記式(1)中のフィルタ係数hiの系列{hi}を後述する所定の演算式を用いて求めて、信号処理部5へ出力する。
【0037】
図2は、信号処理部5でのフィルタリングの振幅特性の一例を示す図である。図2に示されるように、信号処理部5で用いられるFIRフィルタはローパスフィルタである。本実施の形態に係る重量測定装置は、信号処理部5で用いられるFIRフィルタの振幅特性の阻止域10において、部分的に減衰量が大きい減衰帯域9をK(≧1)個設けることが可能であり、当該減衰帯域9の帯域位置を変更できる機能を有している。つまり、減衰帯域9の位置を周波数の高い方へ移動させたり、低い方へ移動させたりできる機能を備えている。また、本実施の形態に係る重量測定装置は、減衰帯域9の減衰量を変更できる機能も備えている。そして、本実施の形態に係る重量測定装置は、K≧2の場合には、複数の減衰帯域9の各々の帯域位置を独立に変更できる機能と、複数の減衰帯域9の各々の減衰量を独立に変更できる機能とを備えている。さらに、本実施の形態に係る重量測定装置は、阻止域10の開始周波数を変更できる機能を備えている。さらに、本実施の形態に係る重量測定装置は、ノッチ部11をP(≧1)個設けることが可能であり、当該ノッチ部11のノッチ周波数位置を変更できる機能を備えている。そして、P≧2の場合には、複数のノッチ部11の各々の周波数位置を独立に変更できる機能を備えている。なお、以後単に「減衰帯域」と言えば、図2に示される減衰帯域9のように、阻止域において部分的に減衰量を大きくすべき減衰帯域を意味するものとする。
【0038】
フィルタ係数演算部6は、上記式(1)中のフィルタ係数hiの系列{hi}を以下の演算式(2)を用いて求めて、信号処理部5へ出力する。
【0039】
【数2】
【0040】
ただし、g(i,lψ,lφ1,lγ1,・・・,lφK,lγK,lθ1,・・・,lθP)は係数である。また、ψは阻止域の開始周波数を指定するパラメータであって、φ1〜φKはK個の減衰帯域の帯域位置をそれぞれ指定するパラメータであって、γ1〜γKはK個の減衰帯域の減衰量をそれぞれ指定するパラメータであって、θ1〜θPはP個のノッチ部の周波数位置をそれぞれ指定するパラメータある。式(2)に示されるように、フィルタ係数hiは、パラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPについての多項式で表現されている。なお、Lψはパラメータψの次数を表し、Lφ1〜LφKはパラメータφ1〜φKの次数をそれぞれ表し、Lγ1〜LγKはパラメータγ1〜γKの次数をそれぞれ表し、Lθ1〜LθPはパラメータθ1〜θPの次数をそれぞれ表している。以後、係数g(i,lψ,lφ1,lγ1,・・・,lφK,lγK,lθ1,・・・,lθP)を単に「係数g」と呼ぶことがある。
【0041】
係数記憶部8は、例えばROM (Read-Only Memory)であって、係数gの値を予め記憶している。そして、この係数gの値はフィルタ係数演算部6によって係数記憶部8から読み出される。
【0042】
データ入力部7は、例えばキーボードであって、ユーザーによる重量測定装置の外部からのパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの各々の値の入力を独立して受け付ける。そして、受け付けたパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの値をフィルタ係数演算部6に出力する。
【0043】
以上のように、本実施の形態では、信号処理部5、フィルタ係数演算部6、データ入力部7及び係数記憶部8が、計量信号Dsに含まれるノイズを除去するノイズ除去装置として機能する。
【0044】
次に、本実施の形態に係る重量測定装置における被計量物の重量測定動作について図3を参照して説明する。重量測定を行う際には計量信号Dsに対するフィルタリングが行われることから、図3は計量信号Dsに対するノイズ除去方法を示している。
【0045】
図3に示されるように、ステップs1において重量測定装置に電源が投入されると、ステップs2において、フィルタ係数演算部6は係数記憶部8から係数gの値を読み出す。そしてフィルタ係数演算部6は、予め内部に記憶しているパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの初期値を読み出す。
【0046】
次にステップs3において、フィルタ係数演算部6は、係数g及びパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの値を式(2)に代入してフィルタ係数hiの1つの系列{hi}を求め、信号処理部5へ出力する。これにより、信号処理部5でのフィルタ特性におけるK個の減衰帯域の帯域位置がパラメータφ1〜φKで指定される初期値にそれぞれ設定され、それらの減衰量がパラメータγ1〜γKで指定される初期値にそれぞれ設定される。また、信号処理部5でのフィルタ特性における阻止域の開始周波数がパラメータψで指定される初期値に設定される。さらに、P個のノッチ部の周波数位置がパラメータθ1〜θPで指定される初期値にそれぞれ設定される。なおこのとき、フィルタ係数hiの演算式(2)は多項式で表現されているため、迅速にフィルタ係数hiを求めることができる。v
【0047】
次にステップs4において、信号処理部5はステップs3で求められたフィルタ係数hiの系列{hi}を用いて、計量信号Dsに対してフィルタリングを実行する。そして、その結果を信号Xsとしてマイクロコンピュータに出力し、当該マイクロコンピュータが被計量物の重量をCRTなどの表示部に表示する。
【0048】
次にステップs5において、データ入力部7は、パラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPのうち少なくとも一つのパラメータの値が重量測定装置のユーザーによって入力されると、その値をフィルタ係数演算部6に出力する。上述のように、被計量物の種類や大きさなどの変更や、搬送系の仕様変更が生じると、計量信号Dsに含まれるノイズの周波数や大きさが変化するため、ユーザーは、当該ノイズを確実に除去するために、パラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPのうち少なくとも一つのパラメータの値を入力する。例えば、被計量物の種類が変更されると重量センサー1の固有振動数が変化することから、被計量物の種類ごとに重量センサー1の固有振動数の情報を予め準備しておき、被計量物の種類を変更する際に、ユーザーはこの情報を参照して、パラメータφ1〜φKの値をデータ入力部7に入力する。
【0049】
なお、本実施の形態に係る重量測定装置では、パラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの値をデータ入力するように構成しているが、これらの値を重量測定装置で自動的に決定しても良い。例えば、重量チェッカーのような計量装置では、コンベア速度が決まれば減衰させたい周波数が決定するので、自動的にパラメータφ1〜φK,θ1〜θPの値を設定できる。また、FFT等によって測定信号の振動波形の周波数解析を行い、最も振幅の大きいところを検出して自動的にパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPの値を設定するという構成にしてもよい。
【0050】
次にステップs6において、フィルタ係数演算部6は、受け取ったパラメータの値を(2)に代入してフィルタ係数hiの系列{hi}を変更し、信号処理部5へ出力する。これにより、信号処理部5でのフィルタ特性における減衰帯域の帯域位置や減衰量、あるいは阻止域の開始周波数あるいはノッチ部の周波数位置が、対応するパラメータで指定される値へと変更される。そして、ステップs7において、信号処理部5はステップs6で変更されたフィルタ係数hiの系列{hi}を用いてフィルタリングを実行し、その結果を信号Xsとして出力する。
【0051】
ユーザーは、信号処理部5でのフィルタ特性を再度変更する必要がある場合には、データ入力部7にパラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPのうち少なくとも一つの値を入力する。そして、ステップs6,s7が実行されて、入力されたパラメータの値に応じてフィルタ特性が変更される。
【0052】
次に、係数gの値の決定方法について説明する。まず、減衰帯域の減衰量と、その帯域位置と、阻止域の開始周波数と、ノッチ部の周波数位置が可変のFIRフィルタについて、図4に示されるような、理想的なフィルタ特性を考える。図中の横軸は正規化角周波数を、縦軸は振幅をそれぞれ示している。図中のωPは、通過域端正規化角周波数、つまり通過域の終了点での正規化角周波数を表している。ωSは、阻止域の開始点が変化すべき範囲の中心正規化角周波数を表している。φ1〜φKは、K個の減衰帯域の帯域位置が変化すべき範囲の中心正規化角周波数をそれぞれ表している。γ1〜γKは、K個の減衰帯域の帯域幅をそれぞれ表している。θ1〜θPは、P個のノッチ部の周波数位置をそれぞれ表している。
【0053】
本実施の形態では、阻止域の開始周波数を指定するパラメータψにはωSからの変位量(ずれ量)が入力される。また、減衰帯域の帯域位置を指定するパラメータφ1〜φKには、φ1〜φKからの変位量がそれぞれ入力される。そして、減衰帯域の減衰量を指定するパラメータγ1〜γKのそれぞれには、阻止域における減衰帯域以外の帯域での減衰量に対する割合が入力される。ノッチ部の周波数位置を指定するパラメータθ1〜θPのそれぞれには、θ1〜θPからの変位量が入力される。
【0054】
このように、本実施の形態では、パラメータψは、阻止域の開始周波数の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、パラメータφ1〜φKのそれぞれは、対応する減衰帯域の帯域位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えらる。また、パラメータγ1〜γKのそれぞれは、阻止域における減衰帯域以外の帯域での減衰量に対する割合として与えられ、パラメータθ1〜θPのそれぞれは、θ1〜θPからの変位量が与えられる。
【0055】
次に、図4に示される理想的なフィルタ特性に関して、以下の理想振幅特性D(ω,ψ,φ1,γ1,・・・,φK,γK,θ1,・・・,θP)と重み関数W(ω,ψ,φ1,γ1,・・・,φK,γK,θ1,・・・,θP)とを考える。
【0056】
【数3】
【0057】
【数4】
【0058】
ただし、パラメータψ,φ1〜φK,γ1〜γK,θ1〜θPは以下の式を満足する。
【0059】
【数5】
【0060】
ここで、周波数応答H(ejω)は上述の式(2)を使用して、以下のように表すことができる。
【0061】
【数9】
【0062】
式(9)において、各係数h(・)は,各パラメータψ,φ,γ,θの特性が変化するとその値が変化し、各パラメータの変化を、それぞれL次の多項式で近似するとh(・)は以下のように表すことができる。
【0063】
【数10】
【0064】
式(10)において,パラメータψ,φ,γ,θはそれぞれ変化の大きさが異なるため、小さなパラメータの変化が大きなパラメータの変化に埋もれてしまい、小さなパラメータの変化が係数h(・)にうまく反映されない.したがって、式(10)における各パラメータの変化が同じになるように以下のように正規化して各パラメータを与える。
【0065】
【数11】
【0066】
ただし、各パラメータは以下の式を満足する。
【0067】
【数15】
【0068】
ここで、正規化されたパラメータを用いて、式(10)は以下のように再定義できる。
【0069】
【数20】
【0070】
今,理想特性と所望の可変フィルタ特性との誤差を以下のように与える。
【0071】
【数21】
【0072】
このとき、パラメータψに対して設計時に評価する離散点をψmψ(mψ=1,・・・,Mψ)、同様にパラメータφ,γ,θについて,φmφ(mφ=1,・・・,Mφ),γmγ(mγ=1,・・・,Mγ),θmθ(mθ=1,・・・,Mθ)また近似帯域における離散周波数点ωn(n=0,・・・,M)を考え、所望の周波数帯域を離散化した阻止域減衰量の異なった帯域を有するフィルタを得るための二乗評価関数は、式(4)の重みを用いて以下のように定義する。
【0073】
【数22】
【0074】
式(22)の評価関数を最小にする解は、次式を解くことで得られる。
【0075】
【数23】
【0076】
ただし、W、U、Dはつぎのようになる。
【0077】
【数24】
【0078】
一般的に、式(22)を解くことでで得られる解は、図5に示すように等リプルにならないため、準等リプル特性を得るための方法について以下に示す。
【0079】
最小二乗法を用いて繰り返し毎に重み関数を変えることで準等リプルフィルタを設計する方法を用いて、阻止域減衰量が異なるフィルタを得るためにkを繰り返し回数として,繰り返し毎の重み関数をk=1では以下のように与える。
【0080】
【数32】
【0081】
また、k回目の繰り返しでは、以下のように与える。
【0082】
【数33】
【0083】
ただし、
【0084】
【数34】
【0085】
である。ここで用いるρは定数であり収束の速度に影響を与える。
【0086】
また,表記を簡単化するために以下のように表す。
【0087】
【数36】
【0088】
ここで、Bk(ωn)は|Ek(ωn)|の上に凸となっている極値を直線でつないだ関数である。しかしながら、阻止域減衰量が異なるフィルタを得るためには、以下で与えられる誤差を小さくする必要がある。
【0089】
【数38】
【0090】
ここでBk(ωn)は|E’k(ωn)|の上に凸となっている極値を直線でつないだ関数となる。この方法で得られるBk(ωn)を用いると|E’k(ωn)|が準等リプルとなる特性を得ることができる。この方法を用いると式(22)の二乗評価関数は以下のように再定義できる。
【0091】
【数39】
【0092】
しかしながら、異なる阻止域減衰量を持つフィルタは、すべてのリプルが同じ大きさになるとは限らない.また、|E’k(ωn)|において、極値となっていても|Ek(ωn)|においては極値となっているとは限らない。その結果、従来法のようにBk(ωn)を|E’k(ωn)|の上に凸となっている極値を直線でつないだ関数にするだけでは、計算が収束しないという重大な問題がある。そこで、Bk(ωn)を決定するとき以下に示す工夫をする。
【0093】
阻止域における|E’k(ωn)|がm番目の極値となる周波数をωmaxmとする。ωmaxm=φ+τのときには、図6に示すように、|E’k(ωmaxm)|では極値となるが、|Ek(ωmaxm)|は極値とならないので、|E’k(ωmaxm)|と|E’k(ωmaxm+1)|の値を比較し、小さな値の方はBk(ωn)を決定する際に極値として見なさないこととする。このようにして求めたBk(ωn)の例を図7に示す。
【0094】
同様に、ωmaxm=φのところで|Ek(ωmaxm)|が極値を持たない場合、|E’k(ωmaxm)|と|E’k(ωmaxm-1)|の値を比較し、小さな値の方はBk(ωn)を決定する際に極値として見なさないこととする。以上のようにBk(ωn)を決定することで、阻止域減衰量が異なる準等リプルなフィルタを設計することが可能となる。
【0095】
可変パラメータの数が増加するとそれに伴って、多項式係数の数が増大することから実用上問題となる。そこで、ここでは多項式係数の低減法を以下の示す。
【0096】
式(9)のフィルタ係数h(・)は式(20)に示すように多項式係数g(・)と可変パラメータのべき乗の積との和で構成されている。ここで、式(20)の可変パラメータは、式(16)、式(17)、式(18)、式(19)の値をとるため、各パラメータ、
【0097】
【数40】
【0098】
の値はlψ,lφ,lγ,lθが高次になったとき非常に小さくなる。加えて、式(20)からわかるように,フィルタ係数は可変パラメータの積で構成されているので、
【0099】
【数41】
【0100】
の値はさらに小さくなる。従って、可変パラメータが多数かつ高次で構成される項がフィルタ係数全体に与える影響は小さいと考えられることから、多項式係数の低減が可能となる。
【0101】
式(20)のフィルタ係数は上記のことを用いると以下のようになる。
【0102】
【数42】
【0103】
ここで、Yは以下を用いて決定する。
【0104】
【数43】
【0105】
ただし、
【0106】
【数45】
【0107】
となり、
【0108】
【数46】
【0109】
はそれぞれ、
【0110】
【数47】
【0111】
に対応する。また式(43)において、b−1=0のときΣの項は零値とする。多項式次数の総和よりも式(44)のQの値を小さくすることによって多項式係数の低減を行うことができる。多項式係数の総数は、式(20)よりも式(42)、式(43)、式(44)の提案法の方が少なくなることは明らかである。従って、多項式係数の低減を行った伝達関数を構成し、先に示した設計法を用いることで、多項式係数の低減を行った複数の要素が可変なフィルタが設計できる。
【0112】
次に、本実施の形態に係る重量測定装置でのディジタルフィルタの設計例について説明する。図8から9は、以下の表1に示される仕様1で設計した際の振幅特性を示している。図中の横軸は正規化角周波数を、縦軸は振幅をそれぞれ示している。
【0113】
【表1】
【0114】
ここで、重みをμ=0.999、式(34)の収束に影響を与えるパラメータはρ=1.3と設定した。周波数応答についての評価点は全帯域について0.1[πrad/sec]あたり、30等分とした。また、大きな阻止域減衰量を持つ帯域の重みγの評価点は、[10 22 46 100]とし、他の可変パラメータについては4等分に離散化した。収束判定は以下を用いて行った。
【0115】
【数48】
【0116】
ここで、可変パラメータの値を図8では評価点に、図9は評価点以外に設定している。これらの結果から可変パラメータを変化させても準等リプル特性が得られていることがわかる。加えて、フィルタ係数の再設計を行うことなく可変パラメータを変化させることで容易にフィルタの特性が変化できることが確認できる。
【0117】
次に、多項式係数の低減を行った場合に得られた振幅特性を図10から11に示す。ここで、多項式係数低減のための、上限値をQ=10と設定しフィルタの設計を行った。また、比較を行うために可変パラメータの値は、図10は図8と、図11は図9とそれぞれ同じ値に設定した。図10と11から、可変パラメータが変化しても準等リプル特性が得られていることがわかる。
【0118】
表2に得られたフィルタの阻止域減衰量を示す。
【0119】
【表2】
【0120】
表2から多項式係数の低減を行っていない場合と比較して、多項式係数の低減を行っても同等な阻止域減衰量が得られていることが確認できる。
【0121】
以上の説明では、ローパスフィルタの設計について述べたが、本願発明は、ローパスフィルタ以外のフィルタ(バンドパスフィルタやハイパスフィルタ等)の設計にも適用可能である。さらに、FIR型フィルタの設計について述べたが、本願発明は、IIR型フィルタの設計にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明によれば、デジタルフィルタのフィルタ特性を容易に変更することができ、重量測定装置においてノイズ除去に有効である。
【符号の説明】
【0123】
5 信号処理部
6 フィルタ係数演算部
8 係数記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタル信号の周波数成分をノッチで減衰させるフィルタリングを、可変のフィルタ係数を用いて実行する信号処理部と、所定の演算式を用いて前記フィルタ係数を求めて前記信号処理部に出力するフィルタ係数演算部とを備え、前記演算式は、前記フィルタリングの振幅特性においてノッチに対応する周波数を指定する第1パラメータを含み、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第1パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記少なくとも一つのノッチに対応する周波数を、前記第1パラメータで指定される所望のノッチに対応する周波数へと変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載のノイズ除去装置であって、前記演算式は、前記フィルタリングの振幅特性の阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき少なくとも一つの減衰帯域の減衰量を指定する第2パラメータを含み、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第2パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記少なくとも一つの減衰帯域の減衰量を、前記第2パラメータで指定される所望の減衰量へと変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載のノイズ除去装置であって、前記演算式は、前記少なくとも一つの減衰帯域の帯域位置を指定する第3パラメータをさらに含み、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第3パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記少なくとも一つの減衰帯域の帯域位置を、前記第3パラメータで指定される所望の帯域位置へと変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項4】
請求項3に記載のノイズ除去装置であって、前記第1パラメータは、複数のノッチに対応する周波数を指定するパラメータであって、前記第2パラメータは、前記阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき複数の減衰帯域の各々の減衰量を指定するパラメータであって、前記第3パラメータは、前記複数の減衰帯域の各々の帯域位置を指定するパラメータであって、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第1パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記複数のノッチに対応する周波数を、前記第1パラメータで指定される所望の複数のノッチに対応する周波数へと独立に変更可能であり、入力される前記第2パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記複数の減衰帯域の各々の減衰量を、前記第2パラメータで指定される所望の減衰量へと独立に変更可能であり、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第3パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記複数の減衰帯域の各々の帯域位置を、前記第3パラメータで指定される所望の帯域位置へと独立に変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項5】
請求項1及び請求項2及び請求項3のいずれか一つに記載のノイズ除去装置であって、前記演算式は、前記阻止域の開始周波数を指定する第4パラメータをさらに含み、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第4パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記阻止域の開始周波数を、前記第4パラメータで指定される所望の周波数へと変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項6】
請求項4に記載のノイズ除去装置であって、前記演算式は、前記阻止域の開始周波数を指定する第4パラメータをさらに含み、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第4パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記阻止域の開始周波数を、前記第4パラメータで指定される所望の周波数へと変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項7】
請求項1及び請求項2及び請求項3のいずれか一つに記載のノイズ除去装置であって、前記第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる、ノイズ除去装置。
【請求項8】
請求項4に記載のノイズ除去装置であって、前記第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、前記第3パラメータは、各々の前記減衰帯域の帯域位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる、ノイズ除去装置。
【請求項9】
請求項6に記載のノイズ除去装置であって、前記第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、前記第3パラメータは、各々の前記減衰帯域の帯域位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、前記第4パラメータは、前記阻止域の開始周波数の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる、ノイズ除去装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一つに記載のノイズ除去装置と、被計量物の重量を検出する計量部とを備え、前記ノイズ除去装置は、前記計量部による計量結果として得られたディジタル信号を対象として前記フィルタリングを実行する、重量測定装置。
【請求項11】
(a)所定の演算式を用いてフィルタ係数を求める工程と、
(b)ディジタル信号のフィルタリングを、前記工程(a)で求められた前記フィルタ係数を用いて実行する工程と
を備え、前記演算式は、前記フィルタリングのノッチに対応する周波数を指定するパラメータを含み、
前記工程(a)は、
(a−1)前記パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更する工程を含み、
前記工程(a−1)を実行することによって、前記少なくとも一つのノッチに対応する周波数が、前記パラメータで指定される所望のノッチに対応する周波数へと変更される、ノイズ除去方法。
【請求項12】
振幅特性のノッチに対応する周波数の少なくとも一つのノッチに対応する周波数が可変のディジタルフィルタの設計方法であって、
(a)前記ディジタルフィルタの理想振幅特性に基づいて、前記ディジタルフィルタのフィルタ係数を、前記少なくとも一つのノッチに対応する周波数を指定するパラメータを含む所定の演算式で近似する工程と、
(b)前記演算式を用いて前記フィルタ係数を求める工程と
を備え、
前記工程(b)は、
(b−1)前記パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更する工程を含み、
前記工程(b−1)を実行することによって、前記少なくとも一つのノッチに対応する周波数が、前記パラメータで指定される所望のノッチに対応する周波数へと変更される、ディジタルフィルタの設計方法。
【請求項1】
ディジタル信号の周波数成分をノッチで減衰させるフィルタリングを、可変のフィルタ係数を用いて実行する信号処理部と、所定の演算式を用いて前記フィルタ係数を求めて前記信号処理部に出力するフィルタ係数演算部とを備え、前記演算式は、前記フィルタリングの振幅特性においてノッチに対応する周波数を指定する第1パラメータを含み、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第1パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記少なくとも一つのノッチに対応する周波数を、前記第1パラメータで指定される所望のノッチに対応する周波数へと変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載のノイズ除去装置であって、前記演算式は、前記フィルタリングの振幅特性の阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき少なくとも一つの減衰帯域の減衰量を指定する第2パラメータを含み、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第2パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記少なくとも一つの減衰帯域の減衰量を、前記第2パラメータで指定される所望の減衰量へと変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載のノイズ除去装置であって、前記演算式は、前記少なくとも一つの減衰帯域の帯域位置を指定する第3パラメータをさらに含み、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第3パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記少なくとも一つの減衰帯域の帯域位置を、前記第3パラメータで指定される所望の帯域位置へと変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項4】
請求項3に記載のノイズ除去装置であって、前記第1パラメータは、複数のノッチに対応する周波数を指定するパラメータであって、前記第2パラメータは、前記阻止域において減衰量を部分的に大きくすべき複数の減衰帯域の各々の減衰量を指定するパラメータであって、前記第3パラメータは、前記複数の減衰帯域の各々の帯域位置を指定するパラメータであって、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第1パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記複数のノッチに対応する周波数を、前記第1パラメータで指定される所望の複数のノッチに対応する周波数へと独立に変更可能であり、入力される前記第2パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記複数の減衰帯域の各々の減衰量を、前記第2パラメータで指定される所望の減衰量へと独立に変更可能であり、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第3パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記複数の減衰帯域の各々の帯域位置を、前記第3パラメータで指定される所望の帯域位置へと独立に変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項5】
請求項1及び請求項2及び請求項3のいずれか一つに記載のノイズ除去装置であって、前記演算式は、前記阻止域の開始周波数を指定する第4パラメータをさらに含み、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第4パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記阻止域の開始周波数を、前記第4パラメータで指定される所望の周波数へと変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項6】
請求項4に記載のノイズ除去装置であって、前記演算式は、前記阻止域の開始周波数を指定する第4パラメータをさらに含み、前記フィルタ係数演算部が、入力される前記第4パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更することによって、前記阻止域の開始周波数を、前記第4パラメータで指定される所望の周波数へと変更可能である、ノイズ除去装置。
【請求項7】
請求項1及び請求項2及び請求項3のいずれか一つに記載のノイズ除去装置であって、前記第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる、ノイズ除去装置。
【請求項8】
請求項4に記載のノイズ除去装置であって、前記第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、前記第3パラメータは、各々の前記減衰帯域の帯域位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる、ノイズ除去装置。
【請求項9】
請求項6に記載のノイズ除去装置であって、前記第1パラメータは、各々のノッチに対応する周波数位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、前記第3パラメータは、各々の前記減衰帯域の帯域位置の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられ、前記第4パラメータは、前記阻止域の開始周波数の変化すべき範囲の中心周波数からの変位量として与えられる、ノイズ除去装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一つに記載のノイズ除去装置と、被計量物の重量を検出する計量部とを備え、前記ノイズ除去装置は、前記計量部による計量結果として得られたディジタル信号を対象として前記フィルタリングを実行する、重量測定装置。
【請求項11】
(a)所定の演算式を用いてフィルタ係数を求める工程と、
(b)ディジタル信号のフィルタリングを、前記工程(a)で求められた前記フィルタ係数を用いて実行する工程と
を備え、前記演算式は、前記フィルタリングのノッチに対応する周波数を指定するパラメータを含み、
前記工程(a)は、
(a−1)前記パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更する工程を含み、
前記工程(a−1)を実行することによって、前記少なくとも一つのノッチに対応する周波数が、前記パラメータで指定される所望のノッチに対応する周波数へと変更される、ノイズ除去方法。
【請求項12】
振幅特性のノッチに対応する周波数の少なくとも一つのノッチに対応する周波数が可変のディジタルフィルタの設計方法であって、
(a)前記ディジタルフィルタの理想振幅特性に基づいて、前記ディジタルフィルタのフィルタ係数を、前記少なくとも一つのノッチに対応する周波数を指定するパラメータを含む所定の演算式で近似する工程と、
(b)前記演算式を用いて前記フィルタ係数を求める工程と
を備え、
前記工程(b)は、
(b−1)前記パラメータの値を前記演算式に代入して前記フィルタ係数を変更する工程を含み、
前記工程(b−1)を実行することによって、前記少なくとも一つのノッチに対応する周波数が、前記パラメータで指定される所望のノッチに対応する周波数へと変更される、ディジタルフィルタの設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−199692(P2012−199692A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61639(P2011−61639)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
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