説明

ノズルクリーナ

【課題】簡便に構成できて、かつ、溶接ノズルとカッタとの芯合せも容易なノズルクリーナを提供すること。
【解決手段】本発明のノズルクリーナは、溶接ノズル2を移動させて、カッタ61を溶接ノズル2の内周面側に挿入させて回転させることによりスパッタを剥離する。溶接ノズル2をカッタ61に対して芯合せさせる案内機構43が、挿入側ローラ部44とカッタ側ローラ部52とを備える。挿入側ローラ部44とカッタ側ローラ部52とが一対の案内ローラ45,53を備える。各案内ローラ45,53相互が、小径部46,54間の隙間SI,SCを溶接ノズル2の外径寸法と略等しくするとともに、拡径部47,54相互を、溶接ノズル2を小径部46,54の中央付近にガイド可能としている。カッタ側ローラ部52と挿入側ローラ部44とが、対向する案内ローラ45,53相互の配設方向を、相互に直交させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスアーク溶接に使用する円筒状の溶接ノズルに付着したスパッタを除去するノズルクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスアーク溶接に使用する円筒状の溶接ノズルに付着したスパッタを除去するノズルクリーナとしては、保持部材により保持させた状態の溶接ノズルの内周面側に、カッタの刃部を挿入させ、回転させることにより、カッタの刃部によって溶接ノズル内周面側のスパッタを剥離させて、除去するものがあった(例えば、特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開2003−326366公報
【特許文献2】特表2006−524576公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらの従来のノズルクリーナでは、溶接ノズルを保持する保持部材は、カッタを回転駆動させる駆動源とは別体の駆動源により、駆動させる構成であった。また、従来のノズルクリーナでは、保持部材により保持させた溶接ノズルに対して、カッタを、上昇装置を利用して上昇させて、刃部を溶接ノズルの内周面側に挿入させる構成であることから、カッタ上昇用の上昇装置を駆動させるためのさらなる別体の駆動源が必要となると同時に、カッタを、溶接ノズルに対して厳密に芯合せしつつ移動させる点に課題が生じていた。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便に構成できて、かつ、溶接ノズルとカッタとの芯合せも容易なノズルクリーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るノズルクリーナは、ガスアーク溶接用の円筒状の溶接ノズルの少なくとも内周面に付着したスパッタを除去するためのものであって、
先端側に刃部を配置させて構成されるとともに、スパッタ除去位置までの溶接ノズルの軸方向に沿う溶接ノズル先端側方向への移動によって、刃部を溶接ノズルの内周面側に挿入させ、かつ、回転させることにより、刃部によって溶接ノズル内周面側のスパッタを剥離可能とするカッタと、
カッタを、回転駆動可能に保持する駆動機構と、
を備える構成のノズルクリーナにおいて、
スパッタ除去位置までの溶接ノズルの移動時に、カッタの刃部をノズルの内周面側に挿入可能に、溶接ノズルをカッタの回転中心軸に対して芯合せさせる案内機構を、備える構成とされて、
案内機構が、カッタの回転中心軸に沿って隣接して配設されるとともに、溶接ノズルを挿入させる挿入側ローラ部と、溶接ノズルの挿入方向の先端側となるカッタ側に位置するカッタ側ローラ部と、を備えて構成され、
挿入側ローラ部とカッタ側ローラ部とが、それぞれ、軸方向をカッタの回転中心軸と直交する方向に沿わせて、カッタの回転中心軸を中心として対向するとともに、それぞれ回動自在に配置される一対の案内ローラから、構成され、
各案内ローラが、それぞれ、略円柱状の小径部と、小径部の軸方向の両端側から拡径される2つの拡径部と、を、有した略鼓形状とされ、
挿入側ローラ部とカッタ側ローラ部との各々の対向した案内ローラ相互が、小径部間の隙間を溶接ノズルの外径寸法と略等しくして配設されるとともに、小径部から拡径する拡径部相互を、隙間への溶接ノズルの挿入時に、小径部における案内ローラの軸方向に沿った中央付近にガイド可能に、小径部から拡径させるように、構成され、
カッタ側ローラ部と挿入側ローラ部とが、対向する案内ローラ相互の配設方向を、相互に直交させて、配設されていることを特徴とする。
【0006】
本発明のノズルクリーナでは、溶接ノズルを、先端側を挿入側ローラ部における案内ローラの小径部間の隙間から挿入させるようにして、溶接ノズル軸方向に沿って溶接ノズル先端側方向へ移動させれば、溶接ノズルが、挿入側ローラ部とカッタ側ローラ部との回動自在な各案内ローラに案内されて、カッタに対して芯合せされた状態で、スパッタ除去位置まで移動し、カッタの刃部が、溶接ノズルの内周面側に挿入されることとなる。具体的には、本発明のノズルクリーナでは、挿入側ローラ部を構成する案内ローラと、カッタ側ローラ部を構成する案内ローラと、は、それぞれ、略円柱状の小径部と、小径部の軸方向の両端側から拡径される2つの拡径部と、を備える構成であり、溶接ノズルを挿入させる各小径部間の隙間は、それぞれ、溶接ノズルの外径寸法と略等しく設定されている。
【0007】
そのため、まず、溶接ノズルが、先端を、挿入側ローラ部における案内ローラの小径部間の隙間(以下「挿入側隙間」とする)に挿入させるように移動する際に、中心(軸心)をカッタの回転中心軸に対して傾けた状態で挿入しようとしても、案内ローラの軸方向と交差(直交)する方向側では、小径部の外周面により挿入方向を規制され、案内ローラの軸方向に沿った方向側では、拡径部によって、小径部の軸方向に沿った中央付近にガイドされることから、溶接ノズルは、挿入側隙間において、中心(軸心)を、カッタの回転中心軸に一致させるようにして、配置されることとなる。
【0008】
その後、溶接ノズルは、先端を、カッタ側ローラ部における各案内ローラの小径部間の隙間(以下「カッタ側隙間」とする)に挿入されるように移動することとなるが、このとき、溶接ノズルが、先端を、中心(軸心)をカッタの回転中心軸に対して傾けた状態で挿入しようとしても、案内ローラの軸方向と交差(直交)する方向側では、小径部の外周面により挿入方向を規制され、案内ローラの軸方向に沿った方向側では、拡径部によって、小径部の軸方向に沿った中央付近にガイドされることから、溶接ノズルは、カッタ側隙間においても、中心(軸心)を、カッタの回転中心軸に一致させるようにして、配置されることとなる。そして、カッタ側ローラ部における案内ローラの小径部の間のカッタ側隙間に、溶接ノズルの先端が挿入されれば、溶接ノズルは、カッタの回転中心軸に沿った方向側で離れた2箇所に形成される挿入側隙間とカッタ側隙間とにおいて、中心(軸心)を、カッタの回転中心軸に一致させた状態で挿通されることから、溶接ノズルの中心(軸心)を、カッタの回転中心軸と同軸上で、かつ、カッタの回転中心軸と平行に配置させることとなって、カッタの回転中心軸と芯合せさせることができる。換言すれば、カッタの回転中心軸で沿った方向で離れた2箇所の挿通孔(拡径部間を含めた小径部間の隙間)に、溶接ノズルを挿入させて、2つの挿通孔の軸心に溶接ノズルを芯合せさせ、そして、カッタの回転中心軸に芯合せさせることとなる。勿論、この挿入時、挿通孔の周縁となる挿入側ローラ部とカッタ側ローラ部を構成する各案内ローラは、回動自在に配置されていることから、溶接ノズルを案内する際の溶接ノズルに対する抵抗が小さく、各案内ローラによって、溶接ノズルの変形を抑えて、円滑にカッタ側に案内させることができる。
【0009】
そして特に、本発明のノズルクリーナでは、相互に対向して配置される一対の案内ローラにおける小径部間の隙間に、溶接ノズルを挿通させることにより、溶接ノズルの中心(軸心)がカッタの回転中心軸に対してぶれることを防止しているが、本発明では、対向する案内ローラ相互の配設方向を相互に直交させて配置させた挿入側ローラ部とカッタ側ローラ部とが、カッタの回転中心軸に沿って隣接されていることから、この挿入側ローラ部とカッタ側ローラ部との2段だけの簡便な構成としても、溶接ノズルの中心(軸心)のぶれ(中心から放射状にずれるぶれ)を的確に抑えて、溶接ノズルの中心(軸心)とカッタの回転中心軸との芯合せさせた状態を維持しつつ、溶接ノズルのスパッタ除去位置までの移動時、溶接ノズル内にカッタの刃部を円滑に挿入させることができる。
【0010】
その結果、本発明のノズルクリーナでは、溶接ノズルを挿入側ローラ部における案内ローラの小径部間の挿入側隙間に挿入させ、さらに、深く差し込むように、移動させるだけで、溶接ノズルの中心(軸心)を、カッタの回転中心軸に対して精度よく芯合せさせた状態で、内周面側にカッタの刃部を挿入させつつ、スパッタ除去位置に配置させることができ、そして、カッタを回転させることにより、溶接ノズル内周面側のスパッタを剥離させることができる。
【0011】
したがって、本発明のノズルクリーナでは、簡便に構成できて、かつ、溶接ノズルとカッタとの芯合せも容易にすることができる。
【0012】
また、本発明のノズルクリーナにおいて、少なくともカッタ側ローラ部における一方の案内ローラを可動ローラとし、他方の案内ローラを固定ローラとして、
可動ローラを、固定ローラに対して、カッタの回転中心軸と略直交する方向に沿って離隔可能として、かつ、溶接ノズルの外周面を固定ローラの小径部側に接触させるように、付勢手段により押圧させて、配設させる構成とすることが好ましい。
【0013】
上記構成のノズルクリーナでは、溶接ノズルの先端が、カッタ側ローラ部における案内ローラの小径部間のカッタ側隙間に挿入される際に、溶接ノズルの移動方向が、カッタの回転中心軸に対して多少ずれていても、可動ローラが、一旦固定ローラに対して離隔するように移動され、その後、外周面を固定ローラの小径部側に接触させるように、溶接ノズルを固定ローラ側に向かって押圧することから、固定ローラを基準として、溶接ノズルのカッタに対する芯合せの精度が一層良好となる。
【0014】
さらに、上記構成のノズルクリーナにおいて、カッタを回転駆動させる駆動機構が、カッタの回転を始動させる始動スイッチを備える構成とされ、
始動スイッチが、溶接ノズルをカッタ側ローラ部における小径部間の隙間に挿入させて、可動ローラを付勢手段に抗して固定ローラから離隔させた際に、可動ローラに押されてオン動作するように、オン動作させる作動片を、可動ローラの離隔時の移動エリアに配設させた構成とされることが好ましい。
【0015】
ノズルクリーナを上記構成とすれば、始動スイッチの作動片が可動ローラに接触した際に、オン動作されて、カッタの回転が始動されることから、非接触タイプのスイッチを使用する場合と比較して、スイッチを、簡便で、かつ、耐久性よく正確に作動させることができる。
【0016】
さらにまた、上記構成のノズルクリーナにおいて、カッタにおける刃部の先端を、カッタ側ローラ部における案内ローラの小径部の最も相互に接近した位置に略一致させるように、配設させる構成とすれば、カッタの回転中心軸に対しての溶接ノズルの中心(軸心)の芯合せが完了すれば、直ちに、溶接ノズルの内周面側にカッタの刃部を挿入させることができて、溶接ノズルの移動距離も短く設定することができ、また、カッタ側ローラ部とカッタとをコンパクトに(カッタの回転中心軸に沿うスペースをコンパクトに)配置することもできて、好ましい。
【0017】
さらに、上記構成のノズルクリーナにおいて、刃部を、
溶接ノズルの内周面側に付着したスパッタを除去可能に、溶接ノズルの内周面側に挿入され、かつ、カッタの回転中心軸の軸方向に沿って形成される内周側切刃と、
内周側切刃の溶接ノズルへの挿入完了時の配置位置における溶接ノズル先端面に当接して、溶接ノズル先端面に付着したスパッタを除去可能に、カッタの元部側に形成される元部側切刃と、
を、備える構成とすることが好ましい。
【0018】
ノズルクリーナを上記構成とすれば、元部側切刃が、溶接ノズルの挿入方向側への移動を規制するストッパとして構成されることから、溶接ノズルの挿入方向側へのさらなる移動を規制できて、溶接ノズルをスパッタ除去位置に的確に配置させることができる。また、上記構成のノズルクリーナでは、内周側切刃によって溶接ノズルの内周面側に付着したスパッタを除去すると同時に、元部側切刃によって、溶接ノズルの先端面に付着したスパッタも除去することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のノズルクリーナ10は、図1〜3に示すように、クリーナ本体部11と、クリーナ本体部11を支持する支持フレーム13と、を備える構成とされるもので、クリーナ本体部11は、外周縁の複数箇所(実施形態の場合、3箇所)に配設されるダンパ12を介して、水平方向の位置ずれを吸収可能(水平方向に移動可能)に、支持フレーム13に対して連結されている(図1,2参照)。実施形態の場合、支持フレーム13は、モータハウジングとして、駆動機構15を覆う部位である。また、実施形態の場合、ダンパ12は、クリーナ本体部11の後述する取付基部20と支持フレーム13との間に介在されている。
【0020】
クリーナ本体部11は、図1〜5に示すように、カッタ61と、カッタ61を回転駆動可能に保持する駆動機構15と、溶接ノズル2をカッタ61に芯合せさせるように案内する案内機構43と、を備えて構成されている。なお、実施形態の場合、溶接ノズル2は上下方向に沿って移動するものであり、実施形態では、溶接ノズル2の先端側方向を下方として、説明をする。さらに、実施形態の場合、後述する支持部31の開き方向の元部側を後方として、前後方向を規定し、支持部31の開き方向と直交する方向を左右方向として、説明をする。
【0021】
溶接ノズル2は、溶接ロボットの所定のアームに保持された溶接トーチ1の先端に配設されて、図1に示すように、外周側のガスノズル3と内周側のワイヤノズル4とを備えた二重管構造としている。
【0022】
カッタ61は、図4,6に示すように、下端側に、後述するエアモータ16の駆動軸に連結させる略円筒状の連結部62を有するとともに、連結部62の上方であって元部側に配置される略円錐台状の拡径部63と、拡径部63から上方に延びるように先端側に配置される略平板状の2つの平板部67,67と、を備えて構成されている。カッタ61は、実施形態の場合、回転中心軸C1を上下方向に沿わせるようにして、配設されている。平板部67,67は、カッタ61の回転中心軸C1を中心として点対称となる位置に形成されるもので、それぞれ、相互に離れた外周面67aを略半円弧状として、相互に対向する内側面67bを上下方向に沿った平面状として、構成されている。そして、平板部67,67は、ガスノズル3の内部に挿入させてガスノズル3の内周面3aに付着したスパッタSを後述する内周側切刃70aにより剥離可能なように、外周面67a側における外径寸法D1(図7参照)を、ガスノズル3の内径寸法d1(図12参照)と略同一として、かつ、拡径部63の上面63aの外径寸法D2(図4参照)よりも小さくするように、構成されている。平板部67の上端67c付近は、先細り状とするように外周面側を傾斜させて構成されている。また、平板部67,67の上端67c付近には、平板部67,67相互を連結して、各平板部67が上端67c側を離隔させて口開きするような変形を防止するための連結補強部68,68が、配設されている。実施形態の場合、連結補強部68,68の部位は、外周面を平板部67の外周面67aから連ならせるような円弧状として、構成されている。
【0023】
拡径部63は、内部に平板部67を挿入させるように移動してくるガスノズル3の先端面3bを当接可能とするもので、実施形態の場合、上面63aの外径寸法D2を、ガスノズル3の外径寸法D3(図12参照)と略同一として、構成されている。すなわち、実施形態の場合、ガスノズル3の先端面3bが拡径部63の上面63aと当接すれば、溶接ノズル2が、スパッタ除去位置Pに配設されることとなる。また、拡径部63には、各平板部67の内側面67bから延びて上面側を略半円弧状に切り欠くような切欠凹部64が、カッタ61の回転中心軸C1と直交する方向側で貫通されるように、形成されている。さらに拡径部63には、連結部62に連通されるように、貫通孔65が上下に貫通して、形成されている(図4参照)。すなわち、実施形態では、ガスノズル3の先端面3bが拡径部63の上面63aと当接した状態で、貫通孔65に連通された切欠凹部64が、断面略半円状に開口していることとなる。実施形態では、後述するごとく、エアモータ16を駆動させたエアA2を、カッタ61側に流す構成であり、カッタ61の回転駆動時に、このエアA2が、連結部62と貫通孔65を経て、ガスノズル3内に充満されることとなる。そして、カッタ61の回転駆動時に、ガスノズル3の内周面3a側と先端面3b側とから除去されたスパッタSが、エアA2とともに、切欠凹部64から外部に噴出されることとなる(図13参照)。
【0024】
実施形態のカッタ61では、拡径部63における各切欠凹部64の端縁と各平板部67,67とが、刃部70を構成することとなる。刃部70は、ガスノズル3の内周面3a側に付着したスパッタSを除去する内周側切刃70aと、ガスノズル3の先端面3bに付着したスパッタSを除去する元部側切刃70bと、を備えている。実施形態の場合、先端側に配設される各平板部67における周方向の一方の縁であって、カッタ61の回転方向先端側の縁であり、かつ、連結補強部68より下方となる上下方向に沿って配設される縁67dが、内周側切刃70aを構成することとなる。そして、元部側に配置される拡径部63の上面63aにおける切欠凹部64におけるカッタ61回転方向先端側の端縁64a(角部)が、元部側切刃70bを構成することとなる。
【0025】
そして、実施形態のノズルクリーナ10では、カッタ61は、カッタ側ローラ部52を構成する後述する各案内ローラ53の小径部54,54間のカッタ側隙間SC付近の下方に配置されるもので、さらに詳細には、カッタ61は、刃部70の先端(上端)を、案内ローラ53における小径部54,54の最も相互に接近した位置に略一致させるように、配設されている。具体的には、実施形態の場合、カッタ61は、刃部70の先端(上端)となる平板部67の上端67c付近における外周側の傾斜面67eの元部67f(下端)を、小径部54,54の中心相互を結んだ線CL上に位置させるように、構成されている(図7参照)。
【0026】
駆動機構15は、図1,2に示すように、駆動モータとしてのエアモータ16と、エアモータ16の駆動を制御するエアオペレータバルブ21と、を備えている。エアモータ16は、実施形態の場合、下部側を、モータハウジングとしての支持フレーム13内に収納させるようにして、支持フレーム13の上方に配置される略平板状の取付基部20に、取り付けられている。また、エアモータ16は、カッタ61を回転駆動可能に、駆動軸(図符号省略)にカッタ61を連結させている構成である。また、エアモータ16付近には、後述するエア流路18を介して流れてくる駆動後のエアA2を、カッタ61側に流す図示しないエア流路が、形成されている。さらに、支持フレーム13内には、エアモータ16の下部側部位とともに、エアオペレータバルブ21とエアモータ16とを連結し、エアモータ駆動用のエアA1をエアモータ16側に流すエア流路17と、エアモータ16の下端側から延びて、エアモータ16を駆動させたエアA2を、カッタ61側に流すエア流路18と、が、配設されている。
【0027】
エアオペレータバルブ21は、図1に示すように、カッタ61の後方であって、後述する連結壁29の前側に隣接して配設されている。具体的には、実施形態の場合、エアオペレータバルブ21は、マイクロメカニカルバルブ22をトリガーとして、エアモータ16の駆動を制御している。すなわち、マイクロメカニカルバルブ22は、エアモータ16の始動スイッチを構成するもので、案内機構43におけるカッタ側ローラ部52の後述する可動ローラ53Mの後方に配置されている。マイクロメカニカルバルブ22は、上端側を軸支された状態で、下端23a側を可動ローラ53M側に向けるように上下方向に対して傾斜して配置される作動片23を有する構成とされている。この作動片23は、可動ローラ53Mの離隔時の移動エリアとなる位置に、配置されるもので、溶接ノズル2の挿入時において、可動ローラ53Mが後述する付勢手段としてのコイルばね58に抗して固定ローラ53Rから離隔された際に、後方移動する可動ローラ53Mと接触して、下端23a側を後方に向けるように移動することとなり、この可動ローラ53Mとの接触時に、オン動作されることとなる。マイクロメカニカルバルブ22とエアオペレータバルブ21とは図示しないエア供給ホースで接続されており、マイクロメカニカルバルブ22の作動片23がオン動作されれば、エアオペレータバルブ21にエアが放出されて、エアオペレータバルブ21の図示しないバルブが開き、エア流路17を経て、エアモータ16にエアA1が供給されて、エアモータ16がカッタ61を回転駆動させることとなる。
【0028】
また、エアオペレータバルブ21付近には、図1に示すように、上面から上方に突出して、後述する支持部31のローラ支持板36の下面側と接触させるように構成されるメカニカルバルブ24が、配設されている。このメカニカルバルブ24は、後述するごとく、支持部31を、案内機構43とともに、連結壁29に対して上方へ回動させて、ローラ支持板36との接触を解除させた際に、バルブを閉じるように作動する構成であり、メカニカルバルブ24の作動時には、エアオペレータバルブ21へのエアの供給が停止されて、エアモータ16の誤作動が防止されることとなる。
【0029】
取付基部20の上面側には、図1,4に示すように、カッタ61の周囲を覆う円筒状のカバー部材27が、配設されている。このカバー部材27は、カッタ61を目視可能なように、透明なポリカーボネートやアクリル樹脂等から形成されるもので、取付基部20と支持部31の後述する蓋体32との間の隙間を塞ぐように、構成されている。実施形態の場合、取付基部20の上面側には、カバー部材27の外形形状に対応して上面側を凹ませて構成される略円形の凹部20aが形成されており、カバー部材27は、この凹部20aの部位に載置されている。
【0030】
また、取付基部20の上方には、図1,2,4に示すように、前端側における左右両端付近に配設される2本の支持ロッド28,28と、後端側において上下方向に沿うように配設される連結壁29と、を利用して、案内機構43を支持させた支持部31が、配設されている。支持部31は、実施形態の場合、案内機構43の下方において水平方向に沿って配置される略円板状の蓋体32と、蓋体32の上面側から上方に突出するとともに左右方向で並設される2つのローラ支持板36,36と、から構成されている。各ローラ支持板36は、案内機構43を構成する後述する各案内ローラ45,53を支持するもので、それぞれ、前後方向に沿って配設されるとともに、後端側を、蓋体32より後方に突出させるように、構成されている。そして、実施形態の場合、支持部31は、蓋体32の下面側における前端付近を、支持ロッド28,28の上端に支持させ、各ローラ支持板36の後下端側を、連結壁29の上端側に、連結軸39を利用して回動可能に連結させて、配置されている。支持ロッド28,28の部位では、蓋体32は、取付ねじ34を利用して、支持ロッド28に連結されている。そして、実施形態の場合、この取付ねじ34を外して蓋体32と支持ロッド28,28との連結を解除すれば、支持部31は、案内機構43とともに、前端側を上方に向けるように、連結壁29に対して、連結軸39回りで回動させて、開き可能に構成されている。
【0031】
蓋体32の下面側には、カバー部材27に対応して、カバー部材27の内部に入り込むように僅かに下面側に突出する略円形の凸部32aが、形成されている。なお、取付基部20の凹部20aと、蓋体32の凸部32aと、は、カバー部材27の位置決めのためと、カバー部材27の上下の端面と取付基部20の上面及び蓋体32の下面との間に隙間が生ずるのを極力防止するために、配設されている。また、蓋体32の中央付近には、カッタ61を挿通可能な貫通孔33が、形成されている。また、ローラ支持板36,36は、相互の離隔距離を、間にカッタ側ローラ部52の各案内ローラ53,53を配置可能な距離に、設定されている。
【0032】
案内機構43は、図6に示すように、カッタ61の回転中心軸C1(実施形態の場合、上下方向)に沿って隣接して配設されるとともに、溶接ノズル2を挿入させる元部側(実施形態の場合、上部側)の挿入側ローラ部44と、溶接ノズル2の挿入方向の先端側(実施形態の場合、下部側)となるカッタ61側に位置するカッタ側ローラ部52と、を備えて構成されている。
【0033】
挿入側ローラ部44は、実施形態の場合、軸方向をカッタ61の回転中心軸C1と直交する方向である前後方向に沿わせて、カッタ61の回転中心軸C1を中心として左右で対向するとともに、それぞれ回動自在に配置される一対の案内ローラ45,45から、構成されるもので、実施形態の場合、各案内ローラ45は、それぞれ、ローラ支持板36を上端側から略矩形状に切り欠いて構成される収納凹部37内において、前後方向に沿い、かつ、ブッシュ(図符号省略)を介在させて配置される支持軸49を利用して、回動自在に軸支されている。各案内ローラ45は、円柱状の小径部46と、小径部46の軸方向の両端側(前後両端側)から拡径される2つの拡径部47,47と、を、有した略鼓形状とされるもので、小径部46,46間の挿入側隙間SIに、上方側から溶接ノズル2を挿入させて、溶接ノズル2をカッタ61側に案内する構成である。詳細には、各案内ローラ45は、カッタ61の回転中心軸C1を中心として点対称となるように配設されるとともに、小径部46の軸方向に沿う中央を相互に結んだ線がカッタ61の回転中心軸C1を通るように、配設されている。
【0034】
各案内ローラ45は、実施形態の場合、小径部46,46間の挿入側隙間SIの開口幅寸法L1(図4参照)を、溶接ノズル2におけるガスノズル3の外径寸法D3(図12参照)と略等しくするように、配設されている。具体的には、各案内ローラ45における小径部46,46間の挿入側隙間SIは、溶接ノズル2を円滑に挿入可能に、開口幅寸法L1を、ガスノズル3の外径寸法D3より若干大きく(実施形態の場合、0.2mm程度大きく)するように、設定されている。実施形態の場合、各案内ローラ45は、中心軸(支持軸49の中心)を、各ローラ支持板36における厚さ方向の中央より内側にずらすようにして、収納凹部37内に収納されている(図4参照)。また、各案内ローラ45における拡径部47,47は、小径部46,46間の挿入側隙間SIへの溶接ノズル2の挿入時に、溶接ノズル2を、小径部46における案内ローラ45の軸方向に沿った中央付近(前後方向の中央付近)にガイド可能に、小径部46から拡径させるように、構成されている。具体的には、実施形態の場合、拡径部47は、ガスノズル3の外周面3cに略沿うように、軸方向に対する傾斜角度α(図8参照)を、45°程度として、カッタ61の回転中心軸C1方向側(上下方向側)から見た際の小径部46の端面からの左右方向側への突出量を、小径部46,46間の挿入側隙間SIの開口幅寸法L1の1/3程度とするように構成されている。実施形態では、各拡径部47は、先端を、上下方向側から見た際に、カッタ側ローラ部52の後述する各案内ローラ53における小径部54の軸方向の端部と略一致させるように、構成されている(図8参照)。
【0035】
カッタ側ローラ部52は、挿入側ローラ部44と蓋体32との間において、挿入側ローラ部44の下方で隣接して配置されるもので、軸方向をカッタ61の回転中心軸C1と直交する左右方向に沿わせて、カッタ61の回転中心軸C1を中心として前後で対向するとともに、それぞれ回動自在に配置される一対の案内ローラ53,53から、構成されている。各案内ローラ53は、それぞれ、ローラ支持板36,36を跨ぐように左右方向に沿い、かつ、ブッシュ(図符号省略)を介在させて配置される支持軸57を利用して、ローラ支持板36,36に対して回動自在に軸支されている。すなわち、実施形態の場合、カッタ側ローラ部52と挿入側ローラ部44とは、対向する案内ローラ53,45相互の配設方向を、相互に直交させて、配設されている。
【0036】
カッタ側ローラ部52を構成する各案内ローラ53も、円柱状の小径部54と、小径部54の軸方向の両端側(前後両端側)から拡径される2つの拡径部55,55と、を、有した略鼓形状とされるもので、小径部54,54間のカッタ側隙間SCに、上方側から溶接ノズル2を挿入させて、溶接ノズル2をカッタ61側に案内する構成である。各案内ローラ53は、小径部54の軸方向に沿った中央を相互に結んだ線がカッタ61の回転中心軸C1を通るように、配設されている。実施形態の場合、カッタ側ローラ部52を構成する案内ローラ53は、小径部54の外径寸法を、挿入側ローラ部44における案内ローラ45の小径部46の外径寸法より大きくするように、構成されている。また、実施形態では、既述したごとく、カッタ側ローラ部52を構成する各案内ローラ53の小径部54,54間のカッタ側隙間SCには、カッタ61が配置され、カッタ61は、刃部70の先端(上端)を、小径部54,54の最も相互に接近した位置に略一致させるように、配設されている(図7参照)。
【0037】
実施形態のカッタ側ローラ部52では、前側に配置される案内ローラ53が固定ローラ53Rとされ、後側に配置される案内ローラ53が可動ローラ53Mとされている。可動ローラ53Mは、固定ローラ53Rに対して、カッタ61の回転中心軸C1と直交する前後方向に沿って離隔可能とされ、かつ、溶接ノズル2を小径部54R,54M間のカッタ側隙間SCに挿入させた際に、ガスノズル3の外周面3cを固定ローラ53Rの小径部54R側に接触させるように、付勢手段により押圧されて、配設されている。具体的には、可動ローラ53Mを軸支する支持軸57Mは、図5,7に示すように、各ローラ支持板36に、前後方向に沿った長円状として形成される挿通孔36aに挿通されるもので、この挿通孔36a内を前後に移動可能とされている。そして、この支持軸57Mと、固定ローラ53Rを軸支している支持軸57Rと、の両端相互を、それぞれ、前後方向に沿って配設される付勢手段としてのコイルばね58,58によって連結させることにより(図5参照)、可動ローラ53Mは、固定ローラ53Rに対して離隔可能で、かつ、離隔後に、コイルばね58,58の付勢力を利用して、固定ローラ53R側に戻り可能(前方移動可能)なように、配設されている。
【0038】
なお、実施形態の場合、可動ローラ53Mを軸支する支持軸57Mが、挿通孔36aの前端面(固定ローラ53R側の面)に当接している状態では、カッタ61の回転中心軸C1と可動ローラ53Mの小径部54Mの外周面との離隔距離L2は、カッタ61における平板部67,67の外周面67aの半径寸法r1よりも、小さく設定されている(図7参照)。そのため、実施形態では、カッタ61を固定ローラ53R及び可動ローラ53Mの小径部54R,54M間のカッタ側隙間SCに挿入させた状態においては、可動ローラ53Mを軸支する支持軸57Mは、挿通孔36aにおける前後方向の略中央となる位置に配置されることとなり、可動ローラ53Mの小径部54Mは、コイルばね58,58の付勢力を受けて、常時、カッタ61における平板部67の外周面67a側に接触して、配置されることとなる。また、実施形態では、カッタ61の回転中心軸C1と固定ローラ53Rの小径部54Rの外周面との離隔距離は、カッタ61における平板部67,67の外周面67aの半径寸法r1と略同一として、構成されている。
【0039】
また、実施形態の場合、可動ローラ53Mを最も固定ローラ53Rから離隔させた状態、すなわち、可動ローラ53Mを軸支する支持軸57Mを挿通孔36aの後端面に当接させた状態での固定ローラ53Rと可動ローラ53Mとの小径部54R,54M間のカッタ側隙間SCの開口幅寸法L3(図7参照)が、溶接ノズル2におけるガスノズル3の外径寸法D3より若干大きくするように、設定されている。具体的には、可動ローラ53Mを軸支する支持軸57Mを挿通孔36aの後端面に当接させた状態での固定ローラ53Rと可動ローラ53Mとの小径部54R,54M間のカッタ側隙間SCは、溶接ノズル2を円滑に挿入可能に、開口幅寸法L3を、挿入側ローラ部44における小径部46,46間の挿入側隙間SIの開口幅寸法L1と略同一として、ガスノズル3の外径寸法D3より若干大きく(実施形態の場合、0.2mm程度大きく)するように、設定されている。
【0040】
また、カッタ側ローラ部52においても、各案内ローラ53(固定ローラ53R,可動ローラ53M)における拡径部55,55は、小径部54,54間のカッタ側隙間SCへの溶接ノズル2の挿入時に、溶接ノズル2を、小径部54における案内ローラ53の軸方向に沿った中央付近(前後方向の中央付近)にガイド可能に、小径部54から拡径させるように、構成されている。具体的には、拡径部55は、挿入側ローラ部44における案内ローラ45の拡径部47と同様に、ガスノズル3の外周面3cに略沿うように、軸方向に対する傾斜角度β(図8参照)を、45°程度として、カッタ61の回転中心軸C1方向側(上下方向側)から見た際の小径部54の端面からの前後方向側への突出量を、ガスノズル3を挿入されて離隔された状態の小径部54,54間のカッタ側隙間SCの開口幅寸法L3の1/3程度とするように構成されている。実施形態では、各拡径部55は、先端を、上下方向側から見た際に、挿入側ローラ部44の各案内ローラ45における小径部46の軸方向の端部の近傍に位置させるように、構成されている。
【0041】
すなわち、実施形態の案内機構43では、各挿入側ローラ部44,カッタ側ローラ部52における各案内ローラ45,53の拡径部47,55は、カッタ61の回転中心軸C1に沿った方向側である上下方向側から見て、重なる領域に、形成されている(図8参照)。そのため、実施形態の案内機構43では、カッタ側ローラ部52における案内ローラ53の小径部54,54のカッタ側隙間SCに挿入された状態の溶接ノズル2(ガスノズル3)は、カッタ61の回転中心軸C1に沿った方向側から見た状態で、周囲を、軸回り方向に沿った全域にわたって、各挿入側ローラ部44,カッタ側ローラ部52における案内ローラ45,53の小径部46,54と拡径部47,55とによって、略八角形状の内周面によって囲まれることとなる。
【0042】
この実施形態のノズルクリーナ10の作動時には、溶接ロボットが所定時間若しくは所定工程のガスアーク溶接を行なった後、溶接トーチ1の先端の溶接ノズル2を、その軸方向を上下方向に配置させた状態で、案内機構43の上方に配置させ、その後、スパッタ除去位置Pまで、下降させることとなる。そして、溶接ノズル2が案内機構43に案内されてカッタ61に対して芯合せされた状態で、下降移動し、スパッタ除去位置Pに配置されれば、カッタ61が回転駆動して、ガスノズル3の内周面3a側と先端面3b側とに付着したスパッタSを除去することとなり、スパッタSは、カッタ61に設けられた切欠凹部64から、エアA2とともに、カッタ61の周囲となる取付基部20とカバー部材27と蓋体32とに囲まれた空間内に排出されることとなる(図13参照)。
【0043】
そして、実施形態のノズルクリーナ10では、作動時に、溶接ノズル2を、先端2a側を挿入側ローラ部44における案内ローラ45,45の小径部46,46間の挿入側隙間SIから挿入させるようにして、溶接ノズル2の軸方向に沿ってノズル先端側方向(実施形態の場合、下方)へ移動させれば、溶接ノズル2が、挿入側ローラ部44とカッタ側ローラ部52との各案内ローラ45,53に案内されて、カッタ61に対して芯合せされた状態で、スパッタ除去位置Pまで移動し、カッタ61の刃部70が、溶接ノズル2(ガスノズル3)の内周面3a側に挿入されることとなる。具体的には、実施形態のノズルクリーナ10では、挿入側ローラ部44を構成する案内ローラ45と、カッタ側ローラ部52を構成する案内ローラ53と、は、それぞれ、円柱状の小径部46,54と、小径部46,54の軸方向の両端側から拡径される2つの拡径部47,55と、を備える構成であり、溶接ノズル2を挿入させる各小径部46,46,54,54間の隙間(挿入側隙間SI,カッタ側隙間SC)は、それぞれ、溶接ノズル2(ガスノズル3)の外径寸法D3と略等しく設定されている。
【0044】
そのため、まず、溶接ノズル2が、先端2aを、挿入側ローラ部44における案内ローラ45,45の小径部46,46間の挿入側隙間SIに挿入させるように移動する際に、図9のA及び図10のAに示すごとく、中心(軸心)C2をカッタ61の回転中心軸C1に対して傾けた状態で挿入しようとしても、案内ローラ45の軸方向と交差(直交)する左右方向側では、各小径部46の外周面46aにより挿入方向を規制され、案内ローラ45の軸方向に沿った前後方向側では、拡径部47によって、小径部46の軸方向に沿った前後の中央付近にガイドされることから、溶接ノズル2は、挿入側隙間SIにおいて、中心(軸心)C2を、カッタ61の回転中心軸C1に一致させるようにして、配置されることとなる。
【0045】
その後、溶接ノズル2は、先端2aを、カッタ側ローラ部52における各案内ローラ53の小径部54,54間のカッタ側隙間SCに挿入されるように移動することとなるが、このとき、溶接ノズル2が、先端2aを、図9のB及び図10のBに示すように、中心(軸心)C2をカッタ61の回転中心軸C1に対して傾けた状態で挿入しようとしても、案内ローラ53の軸方向と交差(直交)する前後方向側では、各小径部54の外周面54aにより挿入方向を規制され、案内ローラ53の軸方向に沿った左右方向側では、拡径部55によって、小径部54の軸方向に沿った左右の中央付近にガイドされることから、溶接ノズル2は、カッタ側隙間SCにおいても、中心(軸心)C2を、カッタ61の回転中心軸C1に一致させるようにして、配置されることとなる。そして、カッタ側ローラ部52における案内ローラ53,53の小径部54,54の間のカッタ側隙間SCに、溶接ノズル2の先端2aが挿入されれば、溶接ノズル2は、カッタ61の回転中心軸C1に沿った方向側(上下方向側)で離れた2箇所に形成される挿入側隙間SIとカッタ側隙間SCとにおいて、中心(軸心)C2を、カッタ61の回転中心軸C1に一致させた状態で挿通されることから、溶接ノズル2の中心(軸心)C2を、カッタ61の回転中心軸C1と同軸上で、かつ、カッタ61の回転中心軸C1と平行に配置させることとなって、カッタ61の回転中心軸C1と芯合せさせることができる。
【0046】
換言すれば、実施形態のノズルクリーナ10では、カッタ61の回転中心軸C1で沿った方向(上下方向)で離れた2箇所の挿通孔(拡径部47,55間を含めた小径部46,54間の隙間)に、溶接ノズル2を挿入させて、2つの挿通孔の軸心に溶接ノズル2を芯合せさせ、そして、カッタ61の回転中心軸C1に芯合せさせることとなる。勿論、この挿入時、挿通孔の周縁となる挿入側ローラ部44とカッタ側ローラ部52とを構成する各案内ローラ45,53は、回動自在に配置されていることから、溶接ノズル2を案内する際の溶接ノズル2に対する抵抗が小さく、各案内ローラ45,53によって、溶接ノズル2の変形を抑えて、円滑にカッタ61側に案内させることができる。
【0047】
そして特に、実施形態のノズルクリーナ10では、相互に対向して配置される一対の案内ローラ45,53における小径部46,54間の隙間に、溶接ノズル2を挿通させることにより、溶接ノズル2の中心(軸心)C2がカッタ61の回転中心軸C1に対してぶれることを防止しているが、実施形態では、図8に示すごとく、対向する案内ローラ45,53相互の配設方向を相互に直交させて配置させた挿入側ローラ部44とカッタ側ローラ部52とが、カッタ61の回転中心軸C1に沿って隣接されていることから、この挿入側ローラ部44とカッタ側ローラ部52との2段だけの簡便な構成としても、溶接ノズル2の中心(軸心)C2のぶれ(中心(軸心)C2から放射状にずれるぶれ)を的確に抑えて、溶接ノズル2の中心(軸心)C2とカッタ61の回転中心軸C1との芯合せさせた状態を維持しつつ、溶接ノズル2のスパッタ除去位置Pまでの移動時、溶接ノズル2内にカッタ61の刃部70を挿入させることができる。特に、実施形態のノズルクリーナ10では、溶接ノズル2(ガスノズル3)は、カッタ61の回転中心軸C1に沿った方向側から見た状態で、周囲を、軸回り方向に沿った全域にわたって、各挿入側ローラ部44,カッタ側ローラ部52における案内ローラ45,53の小径部46,54と拡径部47,55とによって、略八角形状の内周面側で囲まれることから、芯合せ後の溶接ノズル2の中心(軸心)C2のぶれを、一層的確に抑えることができる。
【0048】
その結果、実施形態のノズルクリーナ10では、溶接ノズル2を挿入側ローラ部44における案内ローラ45,45の小径部46,46間の挿入側隙間SIに挿入させ、さらに、深く差し込むように、下降移動させるだけで、溶接ノズル2の中心(軸心)C2を、カッタ61の回転中心軸C1に対して精度よく芯合せさせた状態で、内周面3a側にカッタ61の刃部70を挿入させつつ、スパッタ除去位置Pに配置させることができ(図9のC及び図10のC参照)、そして、カッタ61を回転させることにより、溶接ノズル2の内周面3a側のスパッタSを剥離させることができる(図12,13参照)。
【0049】
したがって、実施形態のノズルクリーナ10では、簡便に構成できて、かつ、溶接ノズル2とカッタ61との芯合せも容易にすることができる。
【0050】
なお、実施形態のノズルクリーナ10では、溶接ノズル2の案内機構43への挿入当初に、挿入側隙間SIに挿入可能な範囲内で、溶接ロボットが水平方向にずれた状態で溶接ノズル2を下降移動させた場合でも、この水平方向のずれは、クリーナ本体部11と支持フレーム13との間に配設されるダンパ12により吸収されて、溶接ノズル2に付着したスパッタSを円滑に除去することができる。
【0051】
また、実施形態のノズルクリーナ10では、カッタ側ローラ部52における一方の案内ローラ53を可動ローラ53Mとし、他方の案内ローラ53を固定ローラ53Rとしており、可動ローラ53Mは、固定ローラ53Rに対して、カッタ61の回転中心軸C1と略直交する前後方向に沿って離隔可能として、かつ、溶接ノズル2を小径部54,54間のカッタ側隙間SCに挿入させた際に、溶接ノズル2(ガスノズル3)の外周面3cを固定ローラ53Rの小径部54R側に接触させるように、付勢手段としてのコイルばね58により押圧させて、配設されている。そのため、溶接ノズル2の先端2aが、カッタ側ローラ部52における案内ローラ53,53の小径部54,54間のカッタ側隙間SCに挿入される際に、溶接ノズル2の移動方向が、カッタ61の回転中心軸C1に対して多少ずれていても、可動ローラ53Mが、図11に示すように、一旦、固定ローラ53Rに対して離隔するように後方移動され、その後、外周面3cを固定ローラ53Rの小径部54Rの外周面54aに接触させるように、溶接ノズル2を固定ローラ53R側に向かって押圧することから、固定ローラ53Rを基準として、溶接ノズル2のカッタ61に対する芯合せの精度が一層良好となる。
【0052】
勿論、このような点を考慮しなければ、カッタ側ローラ部を構成する案内ローラを、両方とも固定ローラとしてもよい。なお、実施形態の場合、可動ローラは、カッタ側ローラ部のみに配設されているが、カッタ側ローラ部に加えて、挿入側ローラ部を構成する案内ローラの一方を可動ローラとするように、構成してもよい。
【0053】
さらに、実施形態のノズルクリーナ10では、カッタ61を回転駆動させる駆動機構としてのエアモータ16が、カッタ61の回転を始動させる始動スイッチとしてのマイクロメカニカルバルブ22を備える構成とされて、このマイクロメカニカルバルブ22が、可動ローラ53Mの後方に配設されて、オン動作させる作動片23を、可動ローラ53Mの離隔後の移動エリアに配設させた構成とされていることから、溶接ノズル2をカッタ側ローラ部52における小径部54R,54M間のカッタ側隙間SCに挿入させて、可動ローラ53Mをコイルばね58に抗して固定ローラ53Rから離隔させた際に、作動片23が、可動ローラ53Mに押されて、オン動作されることとなる。すなわち、実施形態のノズルクリーナ10では、始動スイッチとしてのマイクロメカニカルバルブ22の作動片23が可動ローラ53Mに接触した際に、オン動作されて、カッタ61の回転が始動されることから、非接触タイプのスイッチを使用する場合と比較して、除去したスパッタの影響を受けることなく、スイッチを、簡便で、かつ、耐久性よく正確に作動させることができる。
【0054】
勿論、このような点を考慮しなければ、駆動機構の始動スイッチを、可動ローラの移動に連動させない構成としてもよく、さらには、非接触タイプのスイッチを使用してもよい。また、始動スイッチとしては、マイクロメカニカルバルブに限られるものではなく、通常使用されるリミットスイッチ等を使用してもよい。
【0055】
さらにまた、実施形態のノズルクリーナ10では、カッタ61における刃部70の先端(上端)を、カッタ側ローラ部52における案内ローラ53の小径部54の最も相互に接近した位置に略一致させるように、カッタ61をカッタ側ローラ部52の小径部54,54間に配設させている。そのため、カッタ61の回転中心軸C1に対しての溶接ノズル2の中心(軸心)C2の芯合せが完了すれば、直ちに、溶接ノズル2(ガスノズル3)の内周面3a側にカッタ61の刃部70を挿入させることができて、溶接ノズル2の移動距離も短く設定することができ、また、カッタ側ローラ部52とカッタ61とをコンパクトに(カッタ61の回転中心軸C1に沿うスペースをコンパクトに)配置することもできる。このような点を考慮しなければ、カッタを、カッタ側ローラ部における本体部間の隙間に配設させなくともよく、カッタ側ローラ部から離隔した位置(実施形態のような構成の場合にはカッタ側ローラ部の下方)に配設させる構成としてもよい。
【0056】
さらにまた、実施形態のノズルクリーナ10では、カッタ61の刃部70が、溶接ノズル2(ガスノズル3)の内周面3a側に付着したスパッタを除去するための内周側切刃70aと、溶接ノズル2(ガスノズル3)の先端面3bに付着したスパッタを除去するための元部側切刃70bと、を備え、元部側切刃70bは、溶接ノズル2への挿入完了位置におけるガスノズル3の先端面3bに当接する構成とされている。すなわち、実施形態のノズルクリーナ10では、カッタ61の刃部70における元部側切刃70bが、溶接ノズル2の挿入方向側への移動を規制するストッパとして構成されることから、溶接ノズル2の挿入方向側へのさらなる移動を規制できて、溶接ノズル2をスパッタ除去位置Pに的確に配置させることができる。また、実施形態のノズルクリーナ10では、内周側切刃70aによってガスノズル3の内周面3a側に付着したスパッタを除去すると同時に、元部側切刃70bによって、ガスノズル3の先端面3bに付着したスパッタも除去することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、カッタとして、元部側刃部を備えない構成のものを使用してもよい。なお、実施形態では、2つの平板部67を有した2枚刃状のカッタ61を使用しているが、カッタの形状はこれに限られるものではなく、1つの平板部を有した1枚刃状のカッタも、勿論使用可能である。
【0057】
なお、実施形態のノズルクリーナ10では、各案内ローラ45,53として、外径寸法を一定とした円柱状の小径部46,54と、小径部の軸方向の両端から拡径される2つの拡径部47,55と、を備える形状のものを使用しているが、例えば、案内ローラとして、小径部における軸方向側の中央を最も小径とするように、拡径部から小径部の中央にかけてなだらかに縮径されて、軸直交方側から見た投影状態の外形線が半円弧状とされるような形状のものを使用してもよい。しかしながら、実施形態のごとく、外径寸法を一定とした円柱状の小径部と、小径部の軸方向の両端から円錐台形状に拡径される2つの拡径部と、を備える案内ローラが、容易に製造することができて、好ましい。また、実施形態のノズルクリーナ10では、案内機構43が、挿入側ローラ部44とカッタ側ローラ部52との2段のローラ部を備える構成であるが、勿論、案内機構として、ローラ部を3段等に増やして配置させた構成としてもよい。
【0058】
また、実施形態のノズルクリーナ10では、カッタ61によって除去されたスパッタSは、カッタ61に設けられた切欠凹部64からエアA2とともに外部に排出される構成であるが、カッタ61の周囲は透明のカバー部材27により覆われていることから、スパッタSが大きく飛び散ることを防止できる。また、実施形態のノズルクリーナ10では、支持部31が、案内機構43とともに開き可能とされているが、エアモータ16を作動させるエアオペレータバルブ21が、支持部31の開き時にバルブを閉じるメカニカルバルブ24を備えていることから、支持部31の開き時に、仮に、可動ローラ53Mが移動してマイクロメカニカルバルブ22の作動片23を押しても、作動片23がオン動作されない。そのため、エアモータ16にエアA1が供給されず、エアモータ16の誤作動を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態であるノズルクリーナの側面図である。
【図2】実施形態のノズルクリーナの正面図である。
【図3】実施形態のノズルクリーナの平面図である。
【図4】実施形態のノズルクリーナの概略縦断面図であり、図3のIV−IV部位に対応する。
【図5】実施形態のノズルクリーナの概略横断面図であり、図1のV−V部位に対応する。
【図6】実施形態のノズルクリーナにおける案内機構及びカッタと、溶接ノズルと、を示す概略分解斜視図である。
【図7】実施形態のノズルクリーナにおけるカッタ側ローラ部の部位を示す部分拡大断面図である。
【図8】実施形態のノズルクリーナにおける案内機構を構成する各案内ローラの配置状態を示す概略図である。
【図9】実施形態のノズルクリーナにおける芯合せの状態を順に示す左右方向に沿った部分縦断面図である。
【図10】実施形態のノズルクリーナにおける芯合せの状態を順に示す前後方向に沿った部分縦断面図である。
【図11】実施形態のノズルクリーナにおいて、溶接ノズルを案内機構におけるカッタ側ローラ部における本体部間の隙間に挿入させる状態を順に示す前後方向に沿った概略部分拡大縦断面図である。
【図12】実施形態のノズルクリーナにおけるスパッタ除去作業中の部分拡大横断面図であり、図10のXII−XII部位に対応する。
【図13】実施形態のノズルクリーナにおけるスパッタ除去作業中の部分拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0060】
2…溶接ノズル、
3…ガスノズル、
3a…内周面、
3b…先端面、
10…ノズルクリーナ、
15…駆動機構、
43…案内機構、
44…挿入側ローラ部、
45…案内ローラ、
46…小径部、
47…拡径部、
52…カッタ側ローラ部、
53…案内ローラ、
53M…可動ローラ、
53R…固定ローラ、
54…小径部、
55…拡径部、
58…コイルばね(付勢手段)、
61…カッタ、
70…刃部、
70a…内周側切刃、
70b…元部側切刃、
S…スパッタ、
SC…カッタ側隙間、
SI…挿入側隙間。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスアーク溶接用の円筒状の溶接ノズルの少なくとも内周面に付着したスパッタを除去するためのものであって、
先端側に刃部を配置させて構成されるとともに、スパッタ除去位置までの前記溶接ノズルの軸方向に沿う前記溶接ノズル先端側方向への移動によって、前記刃部を前記溶接ノズルの内周面側に挿入させ、かつ、回転させることにより、前記刃部によって前記溶接ノズル内周面側の前記スパッタを剥離可能とするカッタと、
該カッタを、回転駆動可能に保持する駆動機構と、
を備える構成のノズルクリーナにおいて、
スパッタ除去位置までの前記溶接ノズルの移動時に、前記カッタの刃部を前記溶接ノズルの内周面側に挿入可能に、前記溶接ノズルを前記カッタの回転中心軸に対して芯合せさせる案内機構を、備える構成とされて、
該案内機構が、前記カッタの回転中心軸に沿って隣接して配設されるとともに、前記溶接ノズルを挿入させる挿入側ローラ部と、前記溶接ノズルの挿入方向の先端側となる前記カッタ側に位置するカッタ側ローラ部と、を備えて構成され、
前記挿入側ローラ部と前記カッタ側ローラ部とが、それぞれ、軸方向を前記カッタの回転中心軸と直交する方向に沿わせて、前記カッタの回転中心軸を中心として対向するとともに、それぞれ回動自在に配置される一対の案内ローラから、構成され、
前記各案内ローラが、それぞれ、略円柱状の小径部と、該小径部の軸方向の両端側から拡径される2つの拡径部と、を、有した略鼓形状とされ、
前記挿入側ローラ部と前記カッタ側ローラ部との各々の対向した前記案内ローラ相互が、前記小径部間の隙間を前記溶接ノズルの外径寸法と略等しくして配設されるとともに、前記小径部から拡径する前記拡径部相互を、前記隙間への前記溶接ノズルの挿入時に、前記小径部における前記案内ローラの軸方向に沿った中央付近にガイド可能に、前記小径部から拡径させるように、構成され、
前記カッタ側ローラ部と前記挿入側ローラ部とが、対向する前記案内ローラ相互の配設方向を、相互に直交させて、配設されていることを特徴とするノズルクリーナ。
【請求項2】
少なくとも前記カッタ側ローラ部における一方の前記案内ローラが可動ローラとし、他方の前記案内ローラが固定ローラとされて、
前記可動ローラが、前記固定ローラに対して、前記カッタの回転中心軸と略直交する方向に沿って離隔可能とされ、かつ、前記溶接ノズルの外周面を前記固定ローラの小径部側に接触させるように、付勢手段により押圧されて、配設されていることを特徴とする請求項1に記載のノズルクリーナ。
【請求項3】
前記カッタを回転駆動させる駆動機構が、前記カッタの回転を始動させる始動スイッチを備え、
該始動スイッチが、前記溶接ノズルを前記カッタ側ローラ部における小径部間の隙間に挿入させて、前記可動ローラを前記付勢手段に抗して前記固定ローラから離隔させた際に、前記可動ローラに押されてオン動作するように、オン動作させる作動片を、前記可動ローラの離隔時の移動エリアに配設させていることを特徴とする請求項2に記載のノズルクリーナ。
【請求項4】
前記カッタが、前記刃部の先端を、前記カッタ側ローラ部における前記案内ローラの前記小径部の最も相互に接近した位置に略一致させるように、配設されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のノズルクリーナ。
【請求項5】
前記刃部が、
前記溶接ノズルの内周面側に付着したスパッタを除去可能に、前記溶接ノズルの内周面側に挿入され、かつ、前記カッタの回転中心軸の軸方向に沿って形成される内周側切刃と、
前記内周側切刃の前記溶接ノズルへの挿入完了時の配置位置における前記溶接ノズル先端面に当接して、前記溶接ノズル先端面に付着したスパッタを除去可能に、前記カッタの元部側に形成される元部側切刃と、
を、備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のノズルクリーナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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