説明

ノズルユニット

【課題】適切な吸引・吐出処理をより確実に行えるノズルユニットを提供する。
【解決手段】分注装置に装着されるノズルユニット10は、先端部90が鋭利形成されるとともに、内側から順に液路80と気路84とが同心円状に配された二重管構造の管体64を有する。液路80は、先端部90より僅かに後端寄りの位置において略90度に屈曲し、管体64の側面に吸排液口82を形成する。また、気路84は、吸排液口82より後端寄りの位置において、管体64の側面にある吸排気口86に連通する。別の見方をすれば、管体64の先端部90は開口が形成されていない、中実の錐状となっている。そして、この構成により、容器の栓体にノズルユニット10を貫通させたとしても、切り屑が発生せず、結果として、適切な吸引・吐出処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置に用いられるノズルユニットであって、容器を封する栓体に貫通して当該容器内に進入し、封をしたままの容器内で液体を吸引または吐出するノズルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム等の弾性材料からなる栓体で封をしたままの容器内において液体の吸引または吐出を行う装置が知られている(例えば、下記特許文献1,2など)。かかる装置は、通常、容器の栓体に突き刺し可能な程度に鋭利な先端部を備えたノズルユニットが設けられており、当該ノズルユニットを介して液体の吸引・吐出を行う。このように封をしたまま吸引・吐出を行うことにより、栓体取り外しの手間を省略できる、また、容器内への粉塵の侵入等も防止できる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−83938号公報
【特許文献2】特開2004−3916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした装置に設けられるノズルユニットの多くは、内部が中空のパイプ材であり、吸引口または吐出口として機能する開口は、鋭利形成された先端部に形成されることが多かった。しかしながら、先端部に開口が形成されている場合、ノズルユニットを栓体に突き刺した際に切り屑が生じる恐れがあった。かかる切り屑が、先端部の開口に詰まったり、容器内に脱落したりすると、その後の吸引・吐出処理を適切に行うことができないという問題を招く。
【0005】
そこで、本発明では、適切な吸引・吐出処理をより確実に行えるノズルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のノズルユニットは、分注装置に用いられるノズルユニットであって、容器を封する栓体に貫通して当該容器内に進入し、封をしたままの容器内で液体を吸引または吐出するノズルユニットであって、その先端部が鋭利形成されるとともに、その内部に液体が通る液路が形成された管体を有し、前記液路は、前記先端部よりも後端寄りの位置で管体側面に抜けて、当該管体側面に液体の吸排液口を形成する、ことを特徴とする。
【0007】
好適な態様では、前記管体は、大気開放用のエアが通る気路が、前記液路の外側に同心円状に形成された二重管構造であり、前記気路は、前記吸排液口よりも後端寄りの位置で管体側面に抜けて、当該管体側面にエアの吸排気口を形成する。この場合、前記気路の下端高さは、吸排気口の下端高さと等しいことが望ましい。
【0008】
他の好適な態様では、前記先端部は、略角錐形状であり、前記吸排液口は、前記先端部の上側に位置する丸棒部分の外側面のうち、当該先端部と丸棒部分との境界に形成される略V字状の稜線近傍に形成される。
【0009】
また、さらに、分注装置に設けられた配管系に着脱自在に装着されるとともに、前記管体を着脱自在に保持するハウジングであって、前記配管系と管体とを連通する連通穴が形成されたハウジングを備えることも望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体の吸排液口が先端部よりも後端寄りの位置に形成される。その結果、ノズルユニットを栓体に突き刺したとしても、切り屑の発生が防止され、適切に吸引・吐出処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である分注装置の斜視図である。周知のとおり、分注装置は、元検体容器から吸引した血液試料などの検体を子検体容器に吐出して小分け分注する装置である。本実施形態の分注装置は、先端鋭利なノズルユニットを備えており、元検体容器または子検体容器がゴム栓などで封されていたとしても、当該封したままの状態で検体の吸引・吐出ができるようになっている。以下、この分注装置について詳説する。なお、以下の説明では、元検体容器が封されている場合を例に挙げて説明する。
【0012】
本実施形態の分注装置は、先端鋭利なノズルユニット10の他、当該ノズルユニット10を移動させる可動部12、ノズルユニット10に接続された配管系(図1では図示せず)、元検体容器100等を搬送する搬送機構14、および、これらを制御する制御部(図示せず)などを備えている。
【0013】
ノズルユニット10は、後述する配管系に接続されるとともに、保持機構を介して可動部12に着脱自在に装着されている。保持機構としては、種々の構成が採用可能であるが、本実施形態では、図2に図示するようなノズルユニット10を係止保持する保持機構40を用いている。すなわち、この保持機構40は、略U字状の切り欠き46が形成されるとともに、可動部12の前面フレーム42に対して回動自在に取り付けられた保持板44を有している。この保持板44の切り欠き46の幅は、ノズルユニット10の上部に設けられた鍔部72の外径より小さく、かつ、鍔部72より下側に延びる管体64の外径より大きくなっている。この切り欠き46にノズルユニット10の鍔部72が係止することでノズルユニット10の保持が図られる。また、ノズルユニット10の保持を解除する場合には、保持板44が垂直になるように回動させ、鍔部72の係止状態を解除すればよい。なお、ここで説明した構成は一例であり、当然、他の機構、例えば、嵌合などを利用した保持機構を用いてもよい。
【0014】
再び、図1に戻り、分注装置の構成を説明すると、可動部12は、Y方向に延びるYレール18、および、Z方向に立脚するZレール16に沿って移動自在となっている。その結果、ノズルユニット10もYZ方向に移動自在となっている。なお、この可動部12の移動機構については、公知の主知技術を用いることができるため、ここでの詳説は省略する。
【0015】
搬送機構14は、Xレール20の上に搭載された複合ラック22を、当該Xレール20に沿って搬送する機構である。複合ラック22には、複数の元検体容器100や、複数の子検体容器102、および、洗浄槽24などが設置されている。元検体容器100は、被検者から採取された検体が収容される容器で、その上端には、ゴムなどの弾性材料からなる栓体が装着されている。本実施形態では、後に詳説するように、この栓体を取り外すことなく、換言すれば、元検体容器100を封したままの状態で、元検体容器100から検体を吸引する。ここで、この吸引処理の際には、先端鋭利なノズルユニット10を栓体に突き刺し、吸引処理が終われば、ノズルユニット10を上昇させて栓体から引き抜くことになる。この引き抜きの際、ノズルユニット10と栓体との間に生じる摩擦により、栓体および元検体容器100も引き上げられる場合がある。この元検体容器100の引き上げを防止するために、元検体容器100の上側には、ストッパ26が設けられている(図1、図11参照)。このストッパ26には、元検体容器100の外径より小さいノズル通過孔26aが形成されており、ノズルユニット10とともに上昇しようとする元検体容器100は、このストッパ26の下面に当接することで意図しない上昇が阻害されるようになっている。
【0016】
子検体容器102は、元検体容器100から吸引された検体が吐出される容器である。本実施形態では、子検体容器102として、上端が完全開口された容器を用いている。ただし、元検体容器100と同様に、栓体で密封された容器を子検体容器102として用いてもよい。その場合には、元検体容器100と同様に、当該子検体容器102の上側にも、持ち上がり防止のためのストッパを設けることが望ましい。
【0017】
洗浄槽24は、ノズルユニット10の洗浄に用いられる容器で、その内部は廃液部と洗浄部とに区分けされている。廃液部には、不要となった液体(廃液)が吐出、貯留される。この廃液部に貯留された廃液は、適宜、廃液タンク(図示せず)へ送出され、廃棄される。また、洗浄部には、適宜、洗浄液タンク(図示せず)から洗浄液が送出され、貯留される。この洗浄部に貯留された洗浄液にノズルユニット10の先端を浸すことで、ノズルユニット10の洗浄が図られる。
【0018】
以上のような元検体容器100、子検体容器102、および、洗浄槽24を保持した複合ラック22が、搬送機構14によりX方向に位置決めされる。また、ノズルユニット10は、可動部12によりYZ方向に位置決めされる。そして、これにより、複合ラック22に対してノズルユニット10をXYZの三方向に位置決めすることができる。なお、本実施形態では、複数種類の部材を保持する複合ラック22を用いたが、各部材ごとに専用のラックを設けて、各部材ごとに個別に位置決めするようにしてもよい。
【0019】
次に、ノズルユニット10に接続された配管系30について図3を用いて簡単に説明する。図3は、配管系30の概略構成図である。なお、図3における電磁弁は、いずれも、非通電磁の状態を図示している。本実施形態のノズルユニット10は、後に詳説するように、検体や洗浄液などの液体が通る液路80と、大気圧開放用の空気が通る気路(図3では図示省略)と、が同心円状に配された二重管構造となっている。このノズルユニット10のうち、液路80には、第一配管32aおよび第二配管32bが接続されている。第一配管32aは、二つの電磁弁V11,V12を介して第一シリンジポンプP1に接続されている。第一シリンジポンプP1は、検体の吸引吐出のために液路80の内圧を調整するポンプである。第二配管32bは、二つの電磁弁V13,V21を介して第二シリンジポンプP2に接続されている。第二シリンジポンプP2は、洗浄タンク34に貯留された洗浄液を液路80に送出するためのポンプである。本実施形態では、検体を吸引吐出する際には、予め、この第二シリンジポンプP2を駆動して、液路80に洗浄液を送出し、液路80の洗浄を図っている。また、加圧ポンプP3は、液路80の内部を乾燥させるために、エアを空気溜36に貯留しつつ、液路80に送出するためのものである。
【0020】
気路には第三配管32cが接続されている。この第三配管32cの他端は、電磁弁V14を介して、空気溜36等に接続されており、必要に応じて、気路に大気圧開放用のエアを送出できるようになっている。
【0021】
制御部は、この配管32a,32b,32cの各部に接続された圧力センサPs1,Ps2,Ps3の検出値を監視しつつ、電磁バルブV11,V12,V13,V14やポンプP1,P2,P3の駆動を制御する。また、制御部は、当該配管系30の他、既述の可動部12や搬送機構14を含む分注装置全体の駆動も制御する。
【0022】
次に、この分注装置で用いられるノズルユニット10について説明する。本実施形態では、既述したとおり、元検体容器100に装着された栓体にノズルユニット10を貫通させ、これにより、封した状態での検体吸引を実現している。そのため、本実施形態では、栓体を貫通させるのに適した特殊形態のノズルユニット10を用いている。以下、これについて詳説する。
【0023】
図4(a)は、ノズルユニット10の上面図であり、図4(b)は、ノズルユニット10の分解断面図(A−A断面図)である。また、図5は、ノズル本体60のみのA−A断面図である。
【0024】
本実施形態のノズルユニット10は、分注装置の配管系30に装着されるハウジング50と、当該ハウジング50により保持されるノズル本体60と、に大別される。また、ノズル本体60は、さらに、二重管構造の管体64と、当該管体64の上端部分に固着されたフランジ62と、に大別される。ノズル本体60は、ハウジング50に対して着脱自在、換言すれば、適宜、交換自在となっている。
【0025】
ここで、ノズル本体60を着脱自在に保持するハウジング50の構造について図6、図7を参照して説明する。図6は、図4(b)の一部拡大図である。また、図7は、図6におけるB−B断面図である。
【0026】
ハウジング50は、略円筒形の部材で、その上面には、第一〜第三配管32a,32b,32cが着脱自在に接続される第一〜第三コネクタ穴52a,52b,52cが形成されている。また、ハウジング50の下面中央には、ノズル本体60のフランジ62が嵌合挿入される保持穴54が形成されている。この保持穴54に嵌合挿入されることでノズル本体60が保持される。第一コネクタ穴52aおよび第二コネクタ穴52bは、ハウジング50の内部に形成された連通穴56を介して、保持穴54の上端に連通している。また、第三コネクタ穴52cは、他の連通穴58を介して、保持穴54の側面に連通している。
【0027】
次に、ノズル本体60の構造について説明する。既述したとおり、ノズル本体60は、二重管構造の管体64と、当該管体64の上端に固着されたフランジ62と、に大別される。フランジ62は、管体64の上端が挿し込まれる筒体であって、管体64に溶接接続されている。このフランジ62の下端には、外側に張り出した鍔部72が形成されており、当該鍔部72が保持板に係止することで、ノズルユニット10が可動部12に装着される。また、このフランジ62は、ハウジング50の保持穴に挿入される部位で、その外径は、ハウジング50の保持穴54より若干小さくなっている。このフランジ62の上端には、管体64の液路80に連通する液路用連通穴65が形成されている。また、フランジ62の側面には、管体64の気路84に連通する気路用連通穴66が形成されている。さらに、フランジ62の外側面には、Oリング70が収容される二つの収容溝68が気路用連通穴66を挟んで上下に並んで形成されている。そして、フランジ62を保持穴54に挿入した際、この収容溝68に収容されたOリング70が、保持穴54の内側面に密着し、摩擦力を発揮することで、ノズル本体60のハウジング50からの意図しない離脱が防止される。また、Oリング70が保持穴54の内側面に密着することで、液路用連通穴65の周辺および気路用連通穴66の周辺に、隔離された気密空間が形成される。そして、この気密空間を介して、液路80および気路84が、対応する配管32a,32b,32cに連通されることになる。
【0028】
ところで、これまでの説明で明らかなとおり、本実施形態では、配管系30に接続されるハウジング50と、ノズル本体60と、が分離自在となっている。換言すれば、ノズル本体60は、適宜、交換可能となっている。そのため、例えば、ノズル本体60またはハウジング50のいずれか一方のみが劣化等した場合には、当該劣化した部材のみを交換すれば足り、分注装置のランニングコストを低減できる。また、適宜、ノズル本体60を、取り扱う容器の形状に対応した種類(形状)のものに交換できるため、分注装置の汎用性をより向上できる。
【0029】
次に、管体64の構成について図5、図8を参照して説明する。図8(a)、図8(b)は、それぞれ、図5におけるC部、D部の拡大図である。管体64は、内側から順に、液路80および気路84が同心円状に配設された二重管構造となっている。この管体64は、略中間高さにおいてテーパ64aが施されており、当該テーパ64aを境として、上側の大径部64cと、下側の小径部64bと、に大別される。小径部64bの外径は、元検体容器100や子検体容器102の内径より十分に小さく、これら容器の内部に進入できるようになっている。また、管体64の先端には、略三角錐状の鋭利な先端部90が設けられている。
【0030】
管体64の後端からの軸方向に延びる液路80は、この先端部90より僅かに後端寄りの位置において、略90度に屈曲し、管体64の側面に抜け出るようになっている。そして、管体64の側面には、液路80に連通する吸排液口82が形成される。この吸排液口82の位置について図9を参照して、より詳細に説明する。図9(a)は、管体64の先端部90近傍の正面図、図9(b)は先端部90近傍の斜視図である。本実施形態の管体64は、略三角錐状の先端部90の上側に円柱状の小径部64bが接続されている。この先端部90と小径部64bとの境界には、略V字状の稜線Kが形成される。吸排液口82は、小径部64bの外側面のうち、このV字状稜線Kの近傍に設けられている。かかる位置に吸排液口82を設ける理由については後に詳説する。
【0031】
液路80の外側に配された気路84は、この吸排液口82よりも後端寄りの位置において、管体64の側面に抜け出ており、管体64の側面に吸排気口86を形成する。ここで、図8(a)から明らかなとおり、この吸排気口86の下端は、気路84の下端と同じ高さとなっている。かかる構成とすることで、何らかの理由で気路84に液体が侵入したとしても、当該液体は即座に吸排気口86から排出されるため、気路84の内部に液体が滞留することが防止される。
【0032】
ところで、これまでの説明で明らかなとおり、本実施形態において、液路80は、三角錐上の先端部90を避けるように屈曲しており、当該先端部90は、中実の三角錐形状となっている。かかる構成としたのは、次の理由による。
【0033】
図12は、従来、多用されていた管体164の構成を示す図である。従来の管体164の多くは、図12に図示するように、液路180が、管体164の先端まで延びており、管体164の先端は完全開口されていた。かかる管体164を、容器の栓体101に貫通させようとした場合、当該開口部分が栓体101を強く押圧することになる。そして、その結果、当該管体164の開口内に栓体101の一部が取り込まれてしまう。この栓体101の一部は、管体164が完全に貫通した際には、栓体101から完全に分離した切り屑110となる。この切り屑110は、管体164内に留まった場合には当該管体164の閉塞という問題を、管体164内から離脱した場合には検体の汚染という問題を、それぞれ引き起こす。また、栓体101の一部を完全に分離除去する従来の管体164の場合、当該管体164を引き抜いたあと、栓体101に切り屑分相当の穴が開くことになる。かかる栓体101の穴は、衛生上の問題を招いていた。
【0034】
一方、本実施形態の管体64の先端部は、既述したとおり、中実の三角錐形状となっている。この本実施形態の管体64を栓体101に貫通させた際の様子を図10に示す。この図10から明らかなとおり、中実の先端部90を栓体101に挿し込んだ場合、当該先端部90の進行に伴い、栓体101の裂け目が徐々に広がるとともに当該裂け目周辺が弾性変形していく。ただし、開口である吸排液口82は、管体64の側面に形成されており、栓体101の表面を押圧することはない。そのため、当該栓体101から分離除去される切り屑は発生しない。その結果、本実施形態の管体64では、従来の管体164で生じていた管体164の閉塞や切り屑落下に伴う検体の汚染という問題は発生しないことになる。また、栓体101は、裂け目が形成されるものの、その一部が分離除去されるわけではない。そのため、管体64を栓体101から引き抜いた後に、当該栓体101に穴が形成されることはない。
【0035】
つまり、本実施形態では、管体64を栓体101に貫通させる際に栓体101を押圧しない位置、すなわち、側面に吸排液口82を形成している。その結果、切り屑の発生や、管体引き抜き後における栓体101に穴を形成するなどの問題を防止することができる。
【0036】
以上の構成の管体64を元検体容器100に挿し込み、その状態で配管系30のポンプ等を駆動させることで、検体の吸引(または吐出)が行われる。図11(a)は、この吸引動作時の様子を示す図である。検体を吸引する場合は、先端部90が元検体容器100の底面近傍に位置するまで、管体64を挿し込んだ状態で、第一シリンジポンプP1を駆動し、液路80内を負圧とする。この負圧を受けて、吸排液口82から液路80内に検体が流入し、吸引される。また、検体の吸引に伴う元検体容器100の内圧低下を防止するために、吸排気口86および気路84などを通じて、元検体容器100の内部の大気圧開放が行われる。
【0037】
ここで、採取された検体の総量や、分析に必要とされる検体量などによっては、元検体容器100に収容されている検体のほぼ全てを吸引したい場合がある。別の言い方をすれば、検体の液面レベルが低くても、吸引できるようにしたいという要望がある。この要望を満たすためには、吸排液口82は、できるだけ、容器の底面近傍に位置していることが要求される。かかる要求を満たすために、本実施形態では、吸排液口82を、先端部90と小径部64bとの境界にある略V字状の稜線K近傍に設けている(図9参照)。かかる位置は、管体64を栓体101に貫通させる際に当該栓体101を押圧しない位置のうち、管体64先端から最も距離が小さい位置である。かかる位置に吸排液口82を設ければ、切り屑発生などの問題を防止しつつも、吸引可能な検体の液面レベルを低減できる。
【0038】
なお、吸排液口82を側面に設けることは、吸引の場合だけでなく、吐出の場合にも利点をもたらす。図11(b)は、吐出動作の様子を示すイメージ図である。既述したとおり、本実施形態の液路80は、末端において略90度に屈曲し、吸排液口82へと至る。そのため、当該液路80を通って吸排液口82から吐出される検体は、下方に直接落下するのではなく、容器の側面に一度衝突し、その後、当該側面に沿って下方に落下しやすくなる。この場合、落下衝撃に伴う検体の泡立ち等が防止されやすくなる。また、検体の落下に伴う、当該検体の飛散等も防止できる。つまり、吸排液口82を側面に設けることにより、より好適な吐出動作が可能となる。
【0039】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態では、管体64の先端部90を中実構造の錐状にするとともに、吸排液口82を管体64の側面に形成することにより、栓体貫通に伴う切り屑の発生を防止できる。そして、これにより、適切な吸引・吐出処理をより確実に行える。
【0040】
なお、上述した説明は一例であり、管体の先端部を中実構造にするとともに、吸排液口を管体の側面に形成するのであれば、他の構成は適宜変更されてもよい。例えば、本実施形態では、先端部90を略三角錐形状としているが、先端鋭利であるならば、他の形状、例えば、四角錐状や、円錐状、クサビ状であってもよい。ただし、既述した先端部90と小径部64bとの境界におけるV字状稜線Kを形成するためには、角錐形状であることが望ましい。また、本実施形態では、吸排液口82および吸排気口86をそれぞれ、一つずつしか設けていないが、複数設けてもよい。すなわち、液路80または気路84に連通する横孔を複数設け、複数の横孔を通じて液体または気体の吸引吐出を行うようにしてもよい。さらに、本実施形態では、ハウジング50とノズル本体60とを分離自在としているが、両者を一体形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態である分注装置の斜視図である。
【図2】保持機構周辺の斜視図である。
【図3】配管系の概略構成図である。
【図4】(a)はノズルユニットの上面図であり、(b)はノズルユニットの分解断面図である。
【図5】ノズル本体のみのA−A断面図である。
【図6】図4(b)の一部拡大図である。
【図7】図6におけるB−B断面図である。
【図8】(a)は図5におけるC部の、(b)は図5におけるD部の拡大図である。
【図9】(a)は管体の先端部近傍の正面図、(b)は先端部近傍の斜視図である。
【図10】管体を栓体に貫通させた際の様子を示す図である。
【図11】(a)は吸引動作の様子を示すイメージ図であり、(b)は吐出動作の様子を示すイメージ図である。
【図12】従来の管体を栓体に貫通させた際の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10 ノズルユニット、12 可動部、14 搬送機構、30 配管系、40 保持機構、50 ハウジング、52a,52b,52c コネクタ穴、54 保持穴、60 ノズル本体、62 フランジ、64 管体、65 液路用連通穴、66 気路用連通穴、70 Oリング、72 鍔部、80 液路、82 吸排液口、84 気路、86 吸排気口、90 先端部、100 元検体容器、101 栓体、102 子検体容器、110 切り屑、K V字状稜線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注装置に用いられるノズルユニットであって、容器を封する栓体に貫通して当該容器内に進入し、封をしたままの容器内で液体を吸引または吐出するノズルユニットであって、
その先端部が鋭利形成されるとともに、その内部に液体が通る液路が形成された管体を有し、
前記液路は、前記先端部よりも後端寄りの位置で管体側面に抜けて、当該管体側面に液体の吸排液口を形成する、
ことを特徴とするノズルユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のノズルユニットであって、
前記管体は、大気開放用のエアが通る気路が、前記液路の外側に同心円状に形成された二重管構造であり、
前記気路は、前記吸排液口よりも後端寄りの位置で管体側面に抜けて、当該管体側面にエアの吸排気口を形成する、
ことを特徴とするノズルユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のノズルユニットであって、
前記気路の下端高さは、吸排気口の下端高さと等しいことを特徴とするノズルユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のノズルユニットであって、
前記先端部は、略角錐形状であり、
前記吸排液口は、前記先端部の上側に位置する丸棒部分の外側面のうち、当該先端部と丸棒部分との境界に形成される略V字状の稜線近傍に形成される、
ことを特徴とするノズルユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のノズルユニットであって、さらに、
分注装置に設けられた配管系に着脱自在に装着されるとともに、前記管体を着脱自在に保持するハウジングであって、前記配管系と管体とを連通する連通穴が形成されたハウジングを備えることを特徴とするノズルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−25804(P2010−25804A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188717(P2008−188717)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】