説明

ノニジュースの製造方法

【課題】ノニの果実を収穫し、水没させた状態で所定期間放置させることにより成熟させる場合、水が腐敗しないように防腐剤を入れたのでは、ノニの果汁に防腐剤が混入するおそれがあり望ましくない。また、ノニの果汁を加熱殺菌したあとに氷点下まで急冷させると、果汁内の水分子がクラスター化して口当たりが損なわれる。
【解決手段】ノニの果実を成熟させる際に、水3にブラウンシュガー2を添加し、アルコール発酵を促進させて防腐剤を入れなくても雑菌の繁殖を抑制するようにした。また、加熱殺菌後にクラスターを破壊する改質工程を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ノニとはノネとも称され、和名:ヤエヤマアオキ、学術名:モリンダ・シトリフォリア(Morinda citrifolia)と呼ばれる植物である。本発明は、そのノニの果実からジュースを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノニの果実からノニジュースを搾り取る場合、ノニの果実を収穫し、その後熟成容器内で更に熟成させた後にノニの果実を搾ってノニジュースを得ている。
【0003】
この熟成工程は2通りあり、1つはノニの果実を所定の大きさに切り分けたものと黒糖とを熟成容器内に充填し発酵させるものである(例えば、特許文献1参照)。そして、所定期間そのまま放置して熟成させると、熟成容器内の果実を取り出し、果実内に残っている果汁を搾って、果汁のみを熟成容器内に戻し、熟成容器内の発酵熟成したものと混ぜ合わせている。
【0004】
他の熟成工程は、収穫した果実をそのまま熟成容器に入れると共に、これら果実が没するまで水を熟成容器に入れて、果実を水没させた状態で所定期間経過させることにより果実を熟成させている。この方法では、果実の熟成後、熟成容器内の水を捨て、果実のみを搾って果汁を得ている。
【0005】
また、いずれの熟成工程を採用しても得られたノニジュースをビン等に充填する前に、加熱殺菌を行う必要がある。この加熱殺菌は、加熱する温度によって高温殺菌と低温殺菌とがあるが、いずれの加熱殺菌方法も加熱したあと、−1℃程度の氷点下温度まで急速に冷却する。
【特許文献1】特開2001−0000号公報(第5−7頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
収穫した果実を水没させて熟成させる熟成方法では、所定期間として3ヶ月程度水没させたままにする。その熟成期間中、水温を低下させると熟成に悪影響が出るため、熟成容器を冷却できない。そのため、ノニの果実を水没させている水が腐敗するおそれがある。
【0007】
熟成容器内の水が腐敗すると好ましくないため、水に防腐剤を入れなければいけない場合が生じるが、最終製品であるノニジュースの食品安全性の観点から、たとえ少量であっても防腐剤を水に入れない方が望ましい。そのため、ノニジュースの食品安全性を損なうことなく、熟成工程での水の腐敗を防止する手段が求められている。
【0008】
また、加熱処理後にノニジュースを氷点下まで急冷するが、ノニジュースには多くの有機酸が含まれるため凝固点が降下し、ノニジュース自体が凍結することはない。ところが、ノニジュースに含まれる水分子は氷点下に冷却されることにより相互に結合し、水分子のクラスターが生成される。そして、ノニジュース中の水分子がクラスター化すると、ノニジュースの口当たりが損なわれる。
【0009】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、上記の不具合を解決することのできるノニジュースの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明によるノニジュースの製造方法は、収穫されたノニの果実を熟成容器に入れると共に、この熟成容器にノニの果実が没するまで水を入れ、更に糖類をこの水に添加し、所定期間経過させてノニの果実を熟成させた後に、その熟成したノニの果実から果汁を搾り取ることを特徴とする。
【0011】
ノニの果実に限らず、果実の表面には天然の酵母菌が付着している。糖類は酵母菌の餌、いわゆるイーストフードとなる。そのため、熟成容器内に水と共に糖類を添加すると、ノニの果実に付着していた酵母菌が糖類を餌としてアルコール発酵を行う。この酵母菌によるアルコール発酵により生成されるアルコールが殺菌剤として作用し、他の雑菌の繁殖を抑制することができる。なお、酵母菌によるアルコール発酵により生成されるアルコールはエチルアルコールであり、ノニの果実にたとえ残留したとしてもまったく不都合はない。なお、残留したとしてもごく微量である。
【0012】
なお、上記所定期間の初期段階で、熟成容器内を撹拌することによって、水内に空気を送り込み、より確実にアルコール発酵を開始させることが望ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために本発明によるノニジュースの製造方法は、ノニの果実から生成されたノニジュースを所定温度まで加熱殺菌したあと、氷点下まで急冷させ、その後ビンその他の容器に充填する前に、ノニジュースを改質させる改質工程を設けたことを特徴とする。
【0014】
加熱殺菌後に氷点下まで冷却すると、ノニジュースに含まれている水分子の一部がクラスター化して、ノニジュースを飲んだときの口当たりが若干ながらきつくなる。そこで、改質工程によって水のクラスターを分解して、もとの小さな水分子に戻すことにより、ノニジュースの口当たりを柔らかくする。
【0015】
上記改質工程は、ノニジュースに磁場を作用させることにより改質を行う。
【0016】
あるいは、ノニジュースに超音波領域の振動を作用させることにより改質を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明は、ノニの果実を熟成させる工程で防腐剤を用いる必要がないので、ノニジュースの食品安全性を保証することができる。また、加熱殺菌して冷却したあとに改質を行うので、ノニジュースの口当たりを損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1を参照して、ノニの果実Nを収穫し、熟成容器1内の投入する(工程1)。このとき、ノニの果実Nは軽く水洗いをし、埃などを取り除いておく。つぎに、熟成容器1内の水3と共にブラウンシュガー2を投入する(工程2)。本実施の形態では、ノニの果実Nを250kg投入し、水3を100リットルとブラウンシュガー2を20kg投入した。
【0019】
その後、最初の7日間は熟成容器1内を定期的に撹拌し(工程3)、更に約3ヶ月間そのまま放置する(工程4)。この工程3および工程4ではノニの果実Nが水没状態で放置されるのでその間にノニの果実Nは更に熟成する。また、熟成容器1内の水はブラウンシュガーの存在によってアルコール発酵が行われ、工程4が終了するまで雑菌の繁殖が抑制される。
【0020】
最終的な熟成が終了すると熟成容器1から熟成したノニの果実Nを取り出し(工程5)、ノニの果実Nからあらかじめ種子を除去したあと、搾汁機4で果実を搾り、ノニの果汁5を得る(工程6)。
【0021】
本実施の形態では、150kgのノニの果汁5を得ることができた。そこに1.5kgの蜂蜜6を添加し(工程7)、加熱殺菌することとした(工程8)。この加熱殺菌工程では、ノニの果汁5を85℃に加熱した状態で30分間保持し、その後−1℃から−2℃程度の氷点下温度まで急冷する。
【0022】
そして最後に、改質工程を経た後、ノニの果汁5をビン詰めすることとした。この改質工程は、ノニの果汁5が流れるパイプの両側に永久磁石を取り付け、強力な磁界の中を横切るようにノニの果汁を流すことにより行う。このようにノニの果汁を流すとノニの果汁に渦電流が誘導され、水分子のクラスターが破壊される。なお、永久磁石の代わりに電磁石を用いてノニの果汁に交番磁界を作用させてもよい。あるいは、超音波振動子を取り付けて、ノニの果汁に超音波振動を作用させてもよい。
【0023】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態の製造工程を示す図
【符号の説明】
【0025】
1 熟成容器
2 ブラウンシュガー
3 水
4 搾汁機
5 ノニの果汁
6 蜂蜜
N ノニの果実

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫されたノニの果実を熟成容器に入れると共に、この熟成容器にノニの果実が没するまで水を入れ、更に糖類をこの水に添加し、所定期間経過させてノニの果実を熟成させた後に、その熟成したノニの果実から果汁を搾り取ることを特徴とするノニジュースの製造方法。
【請求項2】
上記所定期間の初期段階で、熟成容器内を撹拌することを特徴とする請求項1記載のノニジュースの製造方法。
【請求項3】
ノニの果実から生成されたノニジュースを所定温度まで加熱殺菌したあと、氷点下まで急冷させ、その後ビンその他の容器に充填する前に、ノニジュースを改質させる改質工程を設けたことを特徴とするノニジュースの製造方法。
【請求項4】
上記改質工程は、ノニジュースに磁場を作用させることを特徴とする請求項3に記載のノニジュースの製造方法。
【請求項5】
上記改質工程は、ノニジュースに超音波領域の振動を作用させることを特徴とする請求項3に記載のノニジュースの製造方法。

【図1】
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