説明

ノブとノブを備えた車載器およびノブの取り付け方法

【課題】 本発明の目的は、ノブとロータリエンコーダの固定力を高めつつ、良好なメンテナンス性を確保することができるノブを提供することにある。
【解決手段】
本発明に係るノブは、略円形の正面部材と、前記正面部材の裏面側に接合して外周を形成する円筒部材と、前記正面部材の裏面の、前記円筒部材よりも前記正面部材の円の中心寄りに設けられ、先端が二又に分岐する円筒形のエンコーダ接続部材と、を備え、前記エンコーダ接続部材には、ロータリエンコーダに設けられた溝に勘合するノッチが設けられている、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノブの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ノブによるエンコーダの操作子を有する装置において、ノブをエンコーダに取り付ける構造として、正面からはめ込みを行うものがある。特許文献1には、ノブをエンコーダに正面からはめ込んで取り付ける技術が記載されている。当該文献に記載の発明においては、ノブに与えられた左右方向への回転がエンコーダに伝えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−86185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような技術では、ノブとエンコーダとの固定力が弱く、振動等によりノブがエンコーダから容易に外れてしまう場合がある。反面、機器の修理等のメンテナンスの場面においては、ノブとエンコーダは容易に取り外しができることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、ノブとロータリエンコーダの固定力を高めつつ、良好なメンテナンス性を確保する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係るノブは、略円形の正面部材と、前記正面部材の裏面側に接合して外周を形成する円筒部材と、前記正面部材の裏面の、前記円筒部材よりも前記正面部材の円の中心寄りに設けられ、先端が二又に分岐する円筒形のエンコーダ接続部材と、を備え、前記エンコーダ接続部材には、ロータリエンコーダに設けられた溝に勘合するノッチが設けられている、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るノブの取り付け方法にあっては、前記ノブの外周部材よりも中心寄りに設けられ、先端が二又に分岐し、ロータリエンコーダに設けられた溝に勘合するノッチが設けられた円筒形のエンコーダ接続部材を、前記ロータリエンコーダに設けられた溝に勘合させて取り付けるステップ、を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、ノブとロータリエンコーダの固定力を高めつつ、良好なメンテナンス性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、エンコーダに取り付けられたノブをノブ側から見た斜視図である。
【図2】図2は、エンコーダに取り付けられたノブをエンコーダ側から見た斜視図である。
【図3】図3は、エンコーダからノブを取り外した状態をエンコーダ側から見た斜視図である。
【図4】図4は、エンコーダをノブ側から見た斜視図である。
【図5】図5は、ノブをエンコーダ側から見た斜視図である。
【図6】図6は、エンコーダにノブが取り付けられた状態の断面図である。
【図7A】図7Aは、通常状態のノブをエンコーダ側から見た正面図である。
【図7B】図7Bは、変形状態のノブをエンコーダ側から見た正面図である。
【図8】図8は、ノブの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の第一の実施形態を適用した操作子1について、図1〜7Bを参照して説明する。なお、図1〜7Bは、操作子1の全ての構成を示すものではなく、理解容易のため、適宜、構成の一部を省略して描いている。
【0011】
図1は、操作子1の外観の斜視図である。操作子1は、ノブ100がロータリエンコーダ10に取り付けられて構成される。ロータリエンコーダ10は、ノブ100の回転位置を検出するための装置である。ノブ100は、略円形の正面と、当該正面の周囲を囲うように設けられた曲面により構成される側面と、を備える。ノブ100は、図のX軸を中心とする回転運動が可能であり、操作者が側面等に対して与えた回転トルクを、ロータリエンコーダ10に伝える。なお、図1では、ノブ100の正面が、図上向かって左上方向に配置するように表示している。なお、以下において、「右」及び「左」は、ノブ100の正面を手前にして置いたときを基準とする。
【0012】
図2は、操作子1の外観の斜視図である。図2では、ノブ100の正面が、向かって右上奥方向に配置されている。すなわち、図2は、ノブ100の裏面側からみた斜視図である。ノブ100は、ノブ100の裏面側からロータリエンコーダ10にはめ込まれて接合されている。なお、ノブ100およびロータリエンコーダ10は、樹脂製または金属製である。望ましくは、加工容易性を考慮して、ノブ100については、所定の弾性および可塑性を備える樹脂製である。
【0013】
図3は、図2で示された操作子1の斜視図において、ノブ100とロータリエンコーダ10とが分離した状態を示す斜視図である。ロータリエンコーダ10の先端すなわちノブ10が取り付けられる側には、ノブ100に差し込むための円柱状の突出部がある。当該突出部は、ノブ100に差し込まれ、ノブ100に与えられた回転トルクをロータリエンコーダ10に伝える。当該突出部の円柱の側面の円周上には、所定の深さおよび幅(例えば、最深部0.5mm程度、幅0.5mm程度)を備える溝12が設けられている。また、当該突出部の先端には、先端が二又に分かれるように切り込まれた雌型接続部11が設けられている。
【0014】
ノブ100の側面は、筒状のノブ外周部材110により構成されている。また、ノブ100のノブ外周部材110より内側の裏面側には、外周部材の一部と相似する曲面である壁面を備えるエンコーダ接続部が設けられている。エンコーダ接続部は、二箇所の切り込み121(図5参照)により隔たれ、対向するように設けられた左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rと、を備える。左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rの内周壁面上には、ロータリエンコーダ10に設けられた溝12に対応する位置に、所定の高さ(溝12の深さよりも低い、例えば、最高部0.2mm程度)を有するノッチ125が設けられている。すなわち、ノブ100とロータリエンコーダ10とが接続されると、ロータリエンコーダ10の溝12にノブ100のノッチ125がはまり込み、両者の位置(とくに、X軸方向)の変動が制限される。なお、左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rとは、ノブ100の正面付近においては、互いに接合されている。
【0015】
エンコーダ接続部のさらに内側、すなわちノブ100の回転の中心付近には、ロータリエンコーダ10の雌型接続部11に差し込まれ、ノブ100の回転のトルクをロータリエンコーダ10に伝える雄型接続部130が設けられている。雄型接続部130は、左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rと、の間の切り込みを互いに結んだ面に直交する面を有する扁平な突起であり、ロータリエンコーダ10の雌型接続部11の切り込み幅と略同じ厚みである。なお、第一の実施形態においては、雄型接続部130には、雌型接続部11の切り込みに密着するように、ノッチ131(図5参照)が設けられている。そして、雌型接続部11の切り込みに雄型接続部130が差し込まれる際に、ノッチの一部が潰されて変形し、その塑性により雄型接続部130と雌型接続部11とがより強固に取り付けられるものである。
【0016】
図4は、ロータリエンコーダ10を、ノブ100の正面が取り付けられる側から見た斜視図である。上述するように、突出部の正面側先端には、雌型接続部11を形成する切り込みが設けられ、外周面にはノッチ125が勘合する溝12が設けられている。
【0017】
図5は、ノブ100の裏面について、詳細に示す図である。本図に示すように、左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rとの間は、切り込み121により隔たれているため、左側エンコーダ接続部120Lおよび右側エンコーダ接続部120Rが変形すると、両者の間の距離も変化する。また、左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rとは、ノブ100の裏面に密着しているため、ノブ100の裏面が変形することで、変形しうる。ノブ100の裏面は、ノブ外周部材110が外圧により変形することで変形する。例えば、図7A、図7Bに示すように、ノブ外周部材110の向かい合う所定の二箇所を外側からつまんで内側方向(図7Aの矢印方向)へ圧力をかけると、ノブ外周部材が扁平に押し潰され、ノブ100の裏面も変形する。ノブ100の裏面の変形により、左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rとが互いに離れるように変形する。これにより、左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rとに設けられたノッチ125がロータリエンコーダ10の溝12から浮き上がり、X軸方向への移動の制限が弱くなり、ノブ100をロータリエンコーダ10から引き離すことができるようになる。
【0018】
図6は、操作子1の裏面側から見た平面図および操作子1のA−A断面図、B−B断面図を示す。図7Aは、ノブ100の裏面図である。図7Bは、ノブ100に矢印方向の力が加わった状態の変形態様を示す図である。すなわち、ノブ100は、一定の方向つまり左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rと、の間の切り込みを互いに結んだ面に平行する方向の圧力を受けると、左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rとの間の切り込みが広がる。これにより、溝12とノッチ125との間の咬みあわせが緩み、ノブ100をロータリエンコーダ10から取り外しし易くなる。
【0019】
以上が、本発明に係る第一の実施形態である。第一の実施形態によれば、ロータリエンコーダ10に設けられた溝12と、ノブ100に設けられたノッチ125と、の勘合により、両者の互いの位置の相対的な変動が抑制され、その結果、両者の取り付けの強度が増す。さらに、ノブ100に対する一定の方向に加圧することにより、両者の勘合は外れやすくなるため、メンテナンスの際の取り外しが容易となる。したがって、ノブとロータリエンコーダの固定力を高めつつ、良好なメンテナンス性を確保することができるといえる。
【0020】
本発明は、上記の実施形態に制限されない。上記実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rと、の変形は、ノブ100の裏面の変形によりなされる。しかし、ノブ100の裏面の変形の度合いに比べて、左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rと、の変形量は少ない傾向にある。図8に示すように、左側エンコーダ接続部120Lと、ノブ100の裏面およびノブ外周部材110の内壁を接合する筋交い140Lと、右側エンコーダ接続部120Rおよびノブ100の裏面およびノブ外周部材110の内壁と、接合する筋交い140Rと、を設けることで、ノブ外周部材110の変形が左側エンコーダ接続部120Lと、右側エンコーダ接続部120Rと、に伝わり易くなる。すなわち、ノブ100の裏面の変形の度合いに対して、左側エンコーダ接続部120Lおよび右側エンコーダ接続部120Rの変形量を増やすことができる。これにより、上記の第一の実施形態に比べて少ない力でノブ100に加圧することで、溝12とノッチ125との勘合を外すことができるようになる。
【0021】
以上、本発明について、実施形態を中心に説明した。なお、上記の実施形態では、本発明をロータリエンコーダに取り付けるノブに適用した例について説明したが、本発明はこれに限らず、ノブを回転可能に取り付けられる操作子全般に適用することができる。また、上記実施形態に係るノブを、ナビゲーション装置、オーディオ装置等を含む車載器に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1・・・操作子、10・・・ロータリエンコーダ、11・・・雌型接続部、12・・・溝、100・・・ノブ、110・・・ノブ外周部材、120L・・・左側エンコーダ接続部、120R・・・右側エンコーダ接続部、121・・・切り込み、125・・・ノッチ、130・・・雄型接続部、131・・・ノッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円形の正面部材と、
前記正面部材の裏面側に接合して外周を形成する円筒部材と、
前記正面部材の裏面の、前記円筒部材よりも前記正面部材の円の中心寄りに設けられ、先端が二又に分岐する円筒形のエンコーダ接続部材と、を備え、
前記エンコーダ接続部材には、ロータリエンコーダに設けられた溝に勘合するノッチが設けられている、
ことを特徴とするノブ。
【請求項2】
請求項1に記載のノブであって、
前記ノッチは、前記エンコーダ接続部材の内周に設けられる、
ことを特徴とするノブ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のノブであって、
前記ノッチは、前記ロータリエンコーダとの距離が大きくなる方向への移動を制限する形状である、
ことを特徴とするノブ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のノブであって、
前記エンコーダ接続部材の二又のうちの片方または両方は、前記円筒部材の外周の一部と相似する、
ことを特徴とするノブ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のノブであって、
前記エンコーダ接続部材のさらに中心寄りには、ロータリエンコーダに回転を伝える回転伝達部材が設けられている、
ことを特徴とするノブ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のノブであって、
前記エンコーダ接続部材は、前記正面部材の裏面と、前記円筒部材と、につながる筋交いを備える、
ことを特徴とするノブ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のノブを備えた車載器。
【請求項8】
ノブの取り付け方法であって、
前記ノブの外周部材よりも中心寄りに設けられ、先端が二又に分岐し、ロータリエンコーダに設けられた溝に勘合するノッチが設けられた円筒形のエンコーダ接続部材を、前記ロータリエンコーダに設けられた溝に勘合させて取り付けるステップ、
を実施することを特徴とするノブの取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−99306(P2012−99306A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245168(P2010−245168)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】