説明

ハイドロダイナミック滑り軸受

【解決手段】 ハイドロダイナミック滑り軸受は、軸方向に複数の支持セグメント12の上に軸受けされる、回転軸を中心に回転可能な走行リングを含み、この場合、走行リングと支持セグメント12との間で、軸受隙間に潤滑油フィルムが形成される。このような滑り軸受では、潤滑油の循環は、回路内で潤滑油をポンプ移送するための内蔵ポンプ装置15が滑り軸受に装備されることによって簡単に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水力発電機などの回転する機械の軸受の分野に関する。
本発明は、請求項1の上位概念によるハイドロダイナミック滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水力発電機などの大型機械のロータは、通常、例えば特許文献1に記載されているようにハイドロダイナミック滑り軸受によって支持される。これらの軸受では、軸方向及び半径方向の案内は、異なる構造の分離された軸受によって行われる。特許文献1の図1では、このために、案内軸受セグメント(4)によって半径方向に、また支持軸受セグメント(3)によって軸方向に軸受けされる走行リング(2)が設けられている。特許文献1の図2によれば、案内軸受セグメント(4)には、ポンプポケット(Pumptasche)即ちポンプ隙間(13)が設けられる。潤滑剤は、ポンプ隙間(13)に集まり、そこから潤滑剤排出路(14)を通して流出孔(15)内に圧送され、そこから潤滑剤回路内に達する。
【0003】
通常、アキシャル及びラジアル軸受は同一の場所で必要とされる(特許文献1参照)。しかし、時々、アキシャル支持軸受のみが使用される。この場合、オイル又は潤滑剤ポンプとして、外部ポンプ又はラジアル案内機能なしの純粋なポンプセグメントを使用しなければならない。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0135730号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、外部ポンプ装置なしに潤滑剤回路を維持するアキシャル支持軸受の形態のハイドロダイナミック滑り軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、請求項1の全体の特徴によって解決される。本発明は、回路内で潤滑油をポンプ移送するための内蔵ポンプ装置が滑り軸受に装備されることを特徴とする。
【0006】
本発明の形態によれば、ポンプ装置が支持セグメントに側方に配置され、この場合、特に、ポンプ装置が回転方向に支持要素の前面に配置される。
【0007】
好ましくは、ポンプ装置は、支持要素と別個に形成され、支持セグメントに取り外し可能に固定される。
【0008】
本発明の他の形態は、ポンプ装置が回転軸に対し直角に走行リングに隣接して、上側と走行リングとの間の境界にポンプ隙間を形成することと、ポンプ隙間に集まりかつ圧力下にある潤滑油をポンプ装置から側方に排出するための手段が設けられることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、潤滑油を排出するための手段は、回転方向にポンプ隙間の端部に配置された、半径方向に、特にポンプ隙間の幅にわたって延びる排出路を含み、この排出路は、ポンプ装置の内部に配置された収集室と結合しており、この場合、収集室から半径方向に、排出管はポンプ装置から外側に案内される。
【0010】
構造及び組立に特に有利なのは、ポンプ装置が、支持セグメントに固定可能な本体を含み、この本体の上側に、走行リングに隣接するカバープレートが取り付けられ、このカバープレートの上側に、ポンプ隙間を形成するために、凹部が組み込まれる場合である。カバープレートは、本体に取り外し可能に結合され、特にねじ止めされることが好ましい。
【0011】
ポンプ装置全体は、個別のねじ込み部分なしに、支持セグメントの固定構成部材であることもできる。通路は、セグメント体で切削することができる。
【0012】
本発明の発展形態によれば、本体で、支持セグメントに隣接する端部に、カバープレートによって覆った後に収集室を形成する第1の切欠きが設けられ、支持セグメントに隣接するカバープレートの端部に、排出路を形成する第2の切欠きが設けられる。
【0013】
次に、図面に関連して実施例を参照して本発明について詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、図1に非常に単純に示されている支持軸受装置を出発点としている。図1の滑り軸受10は、回転軸13を中心に回転可能な走行リング11を含み、走行リングは複数のリングセグメント形状の支持セグメント12の上に軸方向に位置し、図1には、その内の一部のみが示されている。走行リング11の下側と支持セグメント12の上側との間に、潤滑剤フィルムが充填される軸受隙間14がある。走行リング11の想定される回転方向は、図1に示したに回転矢印によって表示される。
【0015】
軸方向の滑り軸受10のために、簡単な方法で、スペースを節約する自律的な潤滑剤用のポンプシステムを設置するために、別の駆動装置なしに末端回路(extremen Kreislauf)のためにも循環を保証するために、図3と図4によれば、支持セグメント12の回転方向に前方の端部に、側方にポンプ装置15が取り付けられ、このポンプ装置は、走行リング11と相互作用し、走行リング11の回転の際に、冒頭に述べた特許文献1に案内軸受セグメントについて同様に記載されているように、ポンプ作用が展開する。
【0016】
ポンプ装置15は、支持セグメント12に固定可能な直方体状の本体16を含み、本体の上側に、走行リング11に隣接するカバープレート17が取り付けられる。カバープレート17の上側に、回転方向に延びる側方に境界付けられた凹部が組み込まれ、この凹部は、カバープレート17が走行リング11の下側に隣接するときに、所望のポンプ隙間18を形成する。カバープレート17は、本体16に取り外し可能に結合され、特に固定ボルト22によってねじ止めされる。
【0017】
本体16で、支持セグメント12に隣接する端部に、カバープレート17によって覆った後に収集室19を形成する第1の切欠きが設けられ、この収集室は、片側で支持セグメント12によって境界付けられる。支持セグメント12に隣接するカバープレート17の端部に、片側で支持セグメント12によって境界付けられる排出路20を形成する第2の切欠きが設けられる。本体16、したがってポンプ装置15全体は、2つの固定ボルト23によって支持セグメント12にねじ固定される。
【0018】
走行リング11の回転の際に、潤滑油はポンプ隙間18に集まり、ポンプ隙間18の端部に配置された排出路20を通して連続的に、ポンプ装置15の内部に位置する収集室19に排出される。収集室19内に、半径方向に本体16を通して外側に向かって案内される排出管21が突出する。排出管21を通して、圧送された潤滑油を冷却部及び/又は濾過部に供給し、次に、閉じた回路を形成しつつ軸受領域に供給して戻すことができる。
【0019】
支持セグメント12と、支持セグメントにフランジ接続されたポンプ装置15との組み合わせにより、外部ポンプを節約するか又は特別なポンプセグメントを省略することができる。ポンプ装置15は、既存の支持セグメントに簡単に事後取付けすることができる。ポンプ装置15を本体16とカバープレート17とに区分することによって、製造が単純化される。全体的に、次の利点が得られる。
−小さな構造、
−全体的により少ない軸受部品、
−外部ポンプが不要、
−より高い運転安全性。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による解決方法を実施するために適切であるハイドロダイナミック滑り軸受の基本装置の斜視図である。
【図2】図3の面G−Gの本発明の好ましい実施例によるポンプ装置の側面図である。
【図3】図2によるねじ止めされたポンプ装置を有する支持セグメントの平面図である。
【図4】面E−Eの図3の装置の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 滑り軸受(ハイドロダイナミック)
11 走行リング
12 支持セグメント
13 回転軸
14 軸受隙間
15 ポンプ装置
16 本体
17 カバープレート
18 ポンプ隙間
19 収集室
20 排出路
21 排出管
22、23 固定ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に複数の支持セグメント(12)の上に軸受けされる、回転軸(13)を中心に回転可能な走行リング(11)を含み、前記走行リング(11)と前記支持セグメント(12)との間で、軸受隙間(14)に潤滑油フィルムが形成されるハイドロダイナミック滑り軸受(10)において、
前記滑り軸受(10)に、回路内で前記潤滑油をポンプ移送するための内蔵ポンプ装置(15)が装備されることを特徴とする滑り軸受。
【請求項2】
前記ポンプ装置(15)が、前記支持セグメント(12)に側方に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の滑り軸受。
【請求項3】
前記ポンプ装置(15)が、回転方向に前記支持要素(12)の前面に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の滑り軸受。
【請求項4】
前記ポンプ装置(15)が前記支持要素(12)と別個に形成され、前記支持セグメント(12)に取り外し可能に固定されることを特徴とする、請求項3に記載の滑り軸受。
【請求項5】
前記ポンプ装置(15)が、上側によって前記走行リング(11)に隣接して、上側と前記走行リング(11)との間の境界にポンプ隙間(18)を形成することと、前記ポンプ隙間(18)に集まりかつ圧力下にある潤滑油を前記ポンプ装置(15)から側方に排出するための手段(19、20、21)が設けられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の滑り軸受。
【請求項6】
前記潤滑油を排出するための前記手段が、回転方向に前記ポンプ隙間(18)の端部に配置された、半径方向に、特に前記ポンプ隙間(18)の幅にわたって延びる排出路(20)を含み、前記排出路が、前記ポンプ装置(15)の内部に配置された収集室(19)と結合していることと、前記収集室(19)から半径方向に、排出管が前記ポンプ装置(15)から外側に案内されることを特徴とする、請求項5に記載の滑り軸受。
【請求項7】
前記ポンプ装置(15)が、前記支持セグメント(12)に固定可能な本体(16)を含み、前記本体の上側に、前記走行リング(11)に隣接するカバープレート(17)が取り付けられ、前記カバープレートの上側に、前記ポンプ隙間(18)を形成するために、凹部が組み込まれることを特徴とする、請求項6に記載の滑り軸受。
【請求項8】
前記カバープレート(17)が、前記本体(16)に取り外し可能に結合され、特にねじ止めされることを特徴とする、請求項7に記載の滑り軸受。
【請求項9】
前記本体(16)で、前記支持セグメント(12)に隣接する端部に、前記カバープレート(17)によって覆った後に前記収集室(19)を形成する第1の切欠き(19)が設けられることと、前記支持セグメント(12)に隣接する前記カバープレート(17)の端部に、前記排出路(20)を形成する第2の切欠き(20)が設けられることを特徴とする、請求項7又は8に記載の滑り軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−531621(P2009−531621A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501989(P2009−501989)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051741
【国際公開番号】WO2007/110287
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】