説明

ハイブリッドコンタクトレンズを作製するための方法

本発明は、親水性ディスク(100)を提供する工程;ハードなディスク(200)を提供する工程;親水性ディスク(100)を水和する工程;ハードなディスクの表面上に接着要素(202)を付ける工程;ハードなディスクの前記表面に、親水性ディスク(100)を結合する工程;そのようにして結合された2つのディスク(100)を乾燥させる工程;およびそのようにして結合および乾燥された2つのディスク(100)を切断する工程:を含む、ハイブリッドコンタクトレンズを作製するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッドコンタクトレンズの作製方法、このような作製方法によって得られたハイブリッドコンタクトレンズに関するものである。
【0002】
コンタクトレンズの分野では、2つの大きな系統が存在する:ハードレンズ、および親水性レンズである。
【背景技術】
【0003】
ハードレンズは、酸素透過性があり、たとえば外傷または病変の後に現れる不規則な視覚障害の補償を可能にするが、不快である。
【0004】
親水性レンズは、その柔軟性および大きな直径のおかげで多大な快適性を提供するが、不規則な視覚障害、たとえば不規則な乱視などを補償する能力がない。
【0005】
不規則な視覚障害の補償と同時に、多大な快適性の感覚を生み出すことを可能にする新規の系統のコンタクトレンズが現れてきた。この新規の系統は、ハードレンズタイプのコアおよび親水性レンズタイプの周辺スカート部で構成されるハイブリッドコンタクトレンズで構成されている。
【0006】
ハイブリッドレンズを作製するための異なる方法が開発されてきたが、完全に、特に使用の容易さの面で満足のいくものはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の欠点を有さず、特に容易な使用を可能にするハイブリッドコンタクトレンズの作製方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、
・親水性ブランクを調達する工程、
・ハードブランクを調達する工程、
・親水性ブランクを水和する工程、
・ハードブランクの1つの面上に接着要素を付着する工程、
・ハードブランクの前記面に対して、水和した親水性ブランクを結合する工程、
・このようにして結合された2つのブランクを乾燥させる工程、および
・このようにして結合および乾燥された2つのブランクをトリミングする工程
:を含む、ハイブリッドコンタクトレンズを作製する方法が提案されている。
【0009】
トリミング工程は、有利には、親水性ブランクが完全に脱水すると行われる。
【0010】
作製方法は、有利には、水和工程の前に、親水性ブランクをプレ機械加工する工程を含む。
【0011】
接着要素触媒が、有利には、水または紫外光である。
【0012】
ハードブランクを調達する工程が、有利には、凸形状を有するハードブランクを調達することにある。
【0013】
本発明はまた、先行する変形例のいずれか1つに適合する作製方法を使用することによって得られた、ハードコアおよび親水性周辺スカート部を含む、ハイブリッドコンタクトレンズも提案する。
【0014】
上記およびその他の本発明の特徴は、添付図面を参照してなされる、次の1つの実施形態の説明を読んでより明確に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1つの実施形態の作製方法のさまざまな工程を示す。
【図2】本発明の1つの実施形態の作製方法のさまざまな工程を示す。
【図3】本発明の1つの実施形態の作製方法のさまざまな工程を示す。
【図4】本発明の1つの実施形態の作製方法のさまざまな工程を示す。
【図5】本発明の1つの実施形態のハイブリッドコンタクトレンズを示す。
【図6】本発明の別の実施形態の2つのブランクを乾燥させる工程を示す。
【図7】本発明の別の実施形態のハイブリッドコンタクトレンズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図5は、本発明の作製方法を使用することによって得られたハイブリッドコンタクトレンズ500を示す。ハイブリッドコンタクトレンズ500は、ハードレンズタイプのコア502、および親水性レンズタイプの周辺スカート部504を含む。
【0017】
図1〜4に示されるさまざまな工程を有する作製方法は、柔軟な親水性ブランクおよび気体透過性があるハードブランクに適用される。このようなブランクは、「ボタン」としても公知である。
【0018】
各ブランクは、従来、その軸が細い一点鎖線で表される中実の円柱形の形状をとる。
【0019】
親水性ブランクは、たとえば、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)または他の任意の適切な材料製のブランクである。使用される材料は、シリコーン−ヒドロゲルレンズおよび柔軟な親水性レンズの生産に使用されるタイプの材料である。
【0020】
ハードブランクは、たとえば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)または他の任意の適切な材料から作られるブランクである。使用される材料は、Dkが0から200のすべてのタイプの気体透過性があるハードレンズの生産に使用されるタイプの材料である。
【0021】
図1は、親水性ブランク100の水和工程を示す。親水性ブランク100は、たとえば生理的血清タイプの水溶液102に浸漬される。
【0022】
水溶液102への親水性ブランク100の浸漬は、前記親水性ブランク100の膨張(矢印104)をもたらす。
【0023】
親水性ブランク100の水和工程は、有利には、親水性ブランク100の完全水和が得られるまで、行われる。
【0024】
本発明の他の実施形態では、結合前の水和は部分的であってもよく、水和率は、親水性ブランク100を構成する材料による。たとえば、その含水率が49%であるGM Advance 49%の材料については、結合前の水和率は、好ましくは55%から60%であり、より具体的には55.4%である。つまり、結合の瞬間には、水和した親水性ブランク100は、27%の水溶液および73%の親水性ポリマーでできている。
【0025】
水和工程の持続時間は、使用される材料の含水率、および結合前に必要とされる水和率の機能に応じて、1日から数日まで多様である。
【0026】
図2は、ハードブランク200の外側面、ここでは平坦な上面上に、接着要素202を付着する工程を示す。
【0027】
接着要素202は、接着剤、またはポリマー、または眼に使用するのに適合し、2つのブランク100および200の満足のいく結合を可能にする任意の製品であってもよい。
【0028】
接着剤202は、たとえばシアノアクリレート、たとえばエチル−シアノアクリレートなどのシアノアクリレートの誘導体、または他の任意の適切な接着剤、または2つのポリマーのアセンブリを可能にする他の任意のポリマーであってもよい。
【0029】
図3は、水和した(および、そのようにして膨張した)親水性ブランク100を、接着要素202を担持するハードブランク200の面上に結合する工程を示す。
【0030】
2つのブランク100および200は、2つのブランク100および200の完全な結合のために必要な期間、接触して保持される。この結合工程の持続時間は、ブランク100および200、ならびに接着要素202に使用される材料の機能に応じて1から10秒まで多様である。
【0031】
矢印302は、ブランク100および200を結合するためにそれらを接触させて保持する力を表し、それは、任意の適切なデバイスによって作り出される。
【0032】
そして、2つのブランク100および200の外側面は、接合面300の高さで共に結合される。
【0033】
ここで説明される本発明の実施形態では、結合は、重合によって達成される。
【0034】
図4は、このようにして結合された2つのブランク100および200を乾燥させる工程を示す。
【0035】
親水性ブランク100は脱水され、そのため、その体積は減少する。
【0036】
この結合工程の持続時間は、ブランク100および200、ならびに接着要素202に使用される材料の機能に応じて1日から数日まで多様である。
【0037】
乾燥工程は、オーブンおよび/または乾燥塩(desiccation salt)の使用により促進されてもよい。
【0038】
接着要素の乾燥が終了すると、このようにして結合および乾燥されたブランク100および200は、ハイブリッドコンタクトレンズ500を生産することにあるトリミング工程にかけられる。
【0039】
トリミング工程は、有利には、親水性ブランク100が完全に脱水したときに行われる。
【0040】
切断工程は、たとえば、コンタクトレンズ作製技術の公知の規則にしたがって、まずハイブリッドコンタクトレンズ500の後面を機械加工し、そして、前面を機械加工することにある。
【0041】
ハイブリッドコンタクトレンズ500は、そのようにして、接合面300のどちらかの側に生産される。
【0042】
コア502の後面へのエリアについて、ハイブリッドコンタクトレンズ500の後面の機械加工は、親水性ブランク100の材料402を接合面300のところまで取り除くこと、続いてハードブランク200の材料404を接合面300からハイブリッドコンタクトレンズ500のコア502の後面のところまで取り除くことによって達成される。
【0043】
周辺スカート部504の後面へのエリアについて、ハイブリッドコンタクトレンズ500の後面の機械加工は、親水性ブランク100の材料402を、ハイブリッドコンタクトレンズ500の周辺スカート部504の後面のところまで取り除くことによって達成される。
【0044】
コア502の前面のエリアについて、ハイブリッドコンタクトレンズ500の前面の機械加工は、ハードブランク200の材料406を、ハイブリッドコンタクトレンズ500のコア502の前面のところまで取り除くことによって達成される。
【0045】
周辺スカート部504の前面のエリアについて、ハイブリッドコンタクトレンズ500の前面の機械加工は、ハードブランク200の材料406を接合面300のところまで取り除くこと、そして、親水性ブランク100の材料408を、接合面300からハイブリッドコンタクトレンズ500の周辺スカート部504の前面のところまで取り除くことによって達成される。
【0046】
この切断工程は、従来のツール、たとえばデジタル旋盤などの手段によって達成される。
【0047】
そのようにしてハイブリッドコンタクトレンズ500を作製する方法は、
・親水性ブランク100を調達する工程、
・ハードブランク200を調達する工程、
・親水性ブランク100を水和する工程、
・ハードブランク200の1つの面上に接着要素202を付着する工程、
・ハードブランク200の前記面に対して、水和した親水性ブランク100を結合する工程、
・このようにして結合された2つのブランク100、200を乾燥させる工程、および
・このようにして結合および乾燥された2つのブランク100、200をトリミングする工程
:を含む。
【0048】
ハイブリッドコンタクトレンズ500を作製する方法は、そのようにして、使用するのが特に簡単である。
【0049】
親水性ブランク100の予備水和および膨張、ならびにその膨張は、結合後のしわの発生、およびハイブリッドコンタクトレンズ500を毎日使用する間のその水和を防止する。作製プロセスがこのような水和工程を使用しなければ、共に結合される2つのブランク100および200の後の水和は、周辺スカート部504の膨張、およびしわの発生、および前記周辺スカート部504と前記コア502との間の結合エリアの高さでの変形をもたらし、レンズが眼に支持されないかもしれない。
【0050】
親水性ブランク100の部分水和または完全水和を容易にするために、ならびにこの完全水和のために必要な時間を減少するために、親水性ブランク100は、親水性ブランク100の一部分108を取り除くことにある、水和工程に先立つプレ機械加工工程にかけられる。一部分108は、ハイブリッドコンタクトレンズ500に使用されない。
【0051】
曲線106は、プレ機械加工の限界を示す。
【0052】
2つのブランク100および200の結合を容易にするために、その触媒が水または紫外光である接着要素202を使用することが有効である。接着要素202は、より容易およびより迅速に水和および重合されると、親水性ブランク100に含有される水と接触して反応する。シアノアクリレートおよびその誘導体は、この視点から特に有益である。
【0053】
もちろん、本発明は説明および図示される例および実施形態に限定されないが、当業者に明白であろう数多くの変形例を受け入れる余地がある。
【0054】
たとえば、本発明は、より具体的には、平坦な外側面を有する円柱形ブランクの文脈で説明されてきたが、同じ方式で、異なる形状を有し、または非平坦な外側面をブランク、あるいは予め切断されてサイズを小さくされたブランクにも適用される。
【0055】
図6は、親水性ブランク100bと凸形状を有するハードブランク200bとの間を乾燥させる工程を示す。
【0056】
親水性ブランク100bは、そのようにして、ハードブランク200bの凸形状に結合され、結合表面300bも凸形状を有する。
【0057】
図7は、図6で柔軟なブランク100bに結合されたハードブランク200bから材料を取り除くことによって得られたハイブリッドコンタクトレンズ500bを示す。
【0058】
ハイブリッドコンタクトレンズ500bは、そして、ハードコア502bおよび柔軟な周辺スカート部504bを含む。
【0059】
このように、結合表面300bは、ハードブランク200bの曲率に従う。
【0060】
図6および7に示される本発明の実施形態では、結合表面300bは、ハイブリッドコンタクトレンズ500bの外側表面と実質的に直交し、結合エリア300bの可視部分が減少することを可能にする。
【0061】
上記各工程の持続時間は、例として与えられ、他の材料で、言及された限度をこえて多様であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・親水性ブランク(100、100b)を調達する工程、
・ハードブランク(200、200b)を調達する工程、
・親水性ブランク(100、100b)を水和する工程、
・ハードブランク(200、200b)の1つの面上に接着要素(202)を付着する工程、
・ハードブランク(200、200b)の前記面に対して、水和した親水性ブランク(100、100b)を結合する工程、
・このようにして結合された2つのブランク(100、200、100b、200b)を乾燥させる工程、および
・このようにして結合および乾燥された2つのブランク(100、200、100b、200b)をトリミングする工程
:を含む、ハイブリッドコンタクトレンズ(500、500b)を作製する方法。
【請求項2】
トリミング工程は、親水性ブランク(100、100b)が完全に脱水すると行われることを特徴とする、請求項1記載の作製方法。
【請求項3】
水和工程の前に、親水性ブランク(100、100b)をプレ機械加工する工程を含むことを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項記載の作製方法。
【請求項4】
接着要素(202)の触媒が、水または紫外光であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の作製方法。
【請求項5】
ハードブランク(200b)を調達する工程が、凸形状を有するハードブランク(200b)を調達することにあることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の作製方法。
【請求項6】
先行する請求項いずれか1項記載の作製方法を使用することによって得られた、ハードコア(502、502b)および親水性周辺スカート部(504、504b)を含む、ハイブリッドコンタクトレンズ(500、500b)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−520692(P2013−520692A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554305(P2012−554305)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052414
【国際公開番号】WO2011/104181
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512221005)
【氏名又は名称原語表記】LENTILLES
【Fターム(参考)】