説明

ハイブリッドシステム

【課題】 内燃機関から燃料電池への廃熱の伝達を必要に応じて行い、廃熱の伝達を最適にするハイブリッドシステムを提供する。
【解決手段】 内燃機関1と、燃料電池2と、内燃機関1の廃熱を燃料電池2に伝達する熱伝達手段6、7と、この熱伝達手段による前記廃熱の伝達を燃料電池2の運転状態に応じて制御する伝達制御手段4、11とを備える。燃料電池2の暖機完了後も内燃機関1の廃熱が伝達されることに起因する不必要な燃料電池2の暖機を抑制できるので、燃料電池2の過熱を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と燃料電池とのハイブリットシステムに関し、特に燃料電池の作動温度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般的には水素及び酸素を燃料として電気エネルギーを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れかつ高いエネルギー効率が実現できることから、今後のエネルギー供給システムとして広く開発が進められてきている。一般に、燃料電池は、使用される電解質に基づき、固体高分子形、アルカリ形、リン酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形の5つの種類に大別され、それぞれ作動温度が異なる。
【0003】
近年、このような燃料電池に内燃機関を熱的に連結する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、周辺環境へと放出される内燃機関の廃熱を燃料電池の作動温度を維持するために使用することができ、高い熱効率が得られる。
【特許文献1】特開2003−129836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記燃料電池に内燃機関を熱的に連結する手段においては、常時内燃機関の廃熱が燃料電池に伝達する構成となっている。そのため、燃料電池が過熱し、発電効率が低下することになる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、内燃機関の廃熱により燃料電池が過熱し、発電効率が低下することを防止し、廃熱の伝達を最適に制御できるハイブリッドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内燃機関と、燃料電池と、前記内燃機関の廃熱を前記燃料電池に伝達する熱伝達手段と、前記熱伝達手段による前記廃熱の伝達を前記燃料電池の運転状態に応じて制御する伝達制御手段と、を備えることを特徴とするハイブリットシステムである。燃料電池の運転状態におうじて廃熱の伝達を制御するので、内燃機関から燃料電池への廃熱の伝達を最適にすることができる。
【0007】
前記伝達制御手段は、前記燃料電池の暖機が要求された場合に前記熱伝達手段による前記廃熱の伝達を実行させるとともに、前記燃料電池の暖機が完了した場合に前記熱伝達手段による前記廃熱の伝達を停止させる構成とすることができる。この構成により、燃料電池の暖機完了後も内燃機関の廃熱が伝達されることに起因する不必要な燃料電池の暖機を抑制できるので、燃料電池の過熱を抑制することができる。
【0008】
また前記伝達制御手段は、前記内燃機関及び前記燃料電池が共に運転中の状態から前記燃料電池のみが運転を停止される場合に、前記熱伝達手段による前記廃熱の伝達を実行させる構成とすることができる。この構成により、燃料電池の作動が停止している場合に内燃機関の廃熱が伝熱されるので、燃料電池の作動停止に伴う燃料電池の温度低下を抑制でき、その結果、燃料電池の再始動性を向上させることができる。
【0009】
前記熱伝達手段は、前記内燃機関の排気ガスの通路である排気ガス通路と、前記排気ガス通路から分岐するとともに、前記燃料電池におけるガス通路と前記燃料電池の周囲に形成された燃料電池ケースとの少なくとも一方に連通する排気ガス供給通路とを有するとともに、前記伝達制御手段は、前記排気ガス供給通路への前記排気ガスの流入を遮断する遮断手段と、前記遮断手段の作動を前記燃料電池の運転状態に応じて制御する遮断制御手段とを有する構成とすることができる。
【0010】
また、前記排気ガス通路における前記排気ガス供給通路への分岐部よりも上流側に前記排気ガスを浄化する排気浄化手段を備えるとともに、前記ガス通路が前記燃料電池のアノードガス通路及びカソードガス通路のいずれかである構成とすることができる。この構成により、HC、CO含有量が低下された排気ガスがアノードガス通路またはカソードガス通路に供給されるので、内燃機関の排気ガスをアノードガス通路またはカソードガス通路に流入させて燃料電池を暖機する場合に、内燃機関の排気ガス中に含まれるHC、COによるアノードまたはカソードにおける貴金属触媒の被毒を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内燃機関の廃熱により燃料電池が過熱し、発電効率が低下することを防止し、さらには内燃機関から燃料電池への廃熱の伝達を必要に応じて行うことで、廃熱の伝達を最適化することができる。また排気ガスがアノードガス通路またはカソードガス通路に供給された場合でも、貴金属触媒の被毒を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、燃料電池と内燃機関を共に有するハイブリットシステムの構成を示す模式図である。図1に示すように、ハイブリットシステム100は、内燃機関1、燃料電池2、排気浄化触媒3、流路切替弁4、改質器5、排気ガス通路6、排気ガス供給通路7、ガス通路8、燃料電池ケース9、制御部11、センサ12、外部排気管13を含む。改質器5、ガス通路8及び燃料電池2は燃料電池システム10を構成する。燃料電池システム10は、必要に応じて、改質器5と燃料電池2の間に、図示を省略する熱交換器、シフト反応部、選択的CO酸化部、水素分離膜等の機器を含む構成であってもよい。また、ハイブリッドシステム中に、図示しない二次バッテリを含めてもよい。
【0014】
内燃機関1は例えばガソリンエンジンであって、燃焼用原料と空気との混合気を燃焼させる。排気浄化触媒3は、内燃機関1が排出する排気ガスを浄化する。浄化された排気ガスは、排気ガス通路6に設けられた流路切替弁4を介して選択的に外部に排出されるか、又は排気ガス供給通路7に排気される。流路切替弁4は、制御部11により後述するように制御される。
【0015】
改質器5は改質用原料を改質し、ガス通路8を介して燃料電池2に水素を供給する。燃料電池2は、アノード、カソード及び電解質を有し、アノードに供給された改質ガス中の水素とカソードに供給された空気(酸素)とから水を生成するとともに電力を発生する。燃料電池2が排出するアノードオフガスは、必要に応じて浄化され、外部に排出される。また、燃料電池2が排出するカソードオフガスは、改質用原料として改質器5に供給される。
【0016】
なお、燃料電池システム10は、必要に応じて、改質器5と燃料電池2の間に、図示を省略する熱交換器、シフト反応部、選択的CO酸化部、水素分離膜等の機器を含む構成であってもよい。熱交換器は、改質ガスの温度を燃料電池2の作動温度に変換する。シフト反応部は、改質ガス中の一酸化炭素を水と反応させて、水素と二酸化炭素を生成する。選択的CO酸化部は、一酸化炭素と水素とを反応させて、二酸化炭素を生成する。また、水素分離膜は改質ガスから水素ガスを分離する。また、ハイブリッドシステム中に、図示しない二次バッテリを含めてもよい。
【0017】
このような構成のハイブリッドシステムの走行状況においては、内燃機関1と燃料電池システム10は同時に、または一方だけが動く。内燃機関1だけが動き、燃料電池システム10が停止している状態が続くと、燃料電池2は放熱により温度が低下していく。また、ハイブリッドシステムの起動時では、燃料電池2の温度は低い状態にある。そこで、本発明は、燃料電池2の運転状態に応じて、内燃機関1から燃料電池2への廃熱の伝達を制御する構成を備え、燃料電池2の温度低下を防止するとともに、燃料電池2の暖機完了後も内燃機関の廃熱が伝達されることに起因する不必要な燃料電池の暖機を抑制して、燃料電池2が過熱により発電効率が低下することを防止する。
【0018】
具体的には、図1に示すハイブリッドシステムは、内燃機関1の廃熱を燃料電池2に伝達する熱伝達手段と、この熱伝達手段による廃熱の伝達を燃料電池2の運転状態に応じて制御する伝達制御手段とを有する。
【0019】
熱伝達手段は、排気ガス通路6と、この排気ガス通路6から分岐するとともに、燃料電池2におけるガス通路8と燃料電池2の周囲に形成された燃料電池ケース9との少なくとも一方に連通する排気ガス供給通路7とを有する。図1では、ガス通路8と燃料電池ケース9の両方に排気ガスが供給される構成となっているが(矢印で示した部分)、いずれか一方であってもよい。燃料電池2側の具体的な排気ガス導入通路は、アノードガス通路、カソードガス通路、冷媒流路(但し空冷式燃料電池の場合であって、ここでは図示しない)、あるいは複数のセルを積み重ねて構成される燃料電池2の周囲に形成された燃料電池ケース9の内部等、燃料電池2に熱伝達が可能な流路であればよい。この場合、燃料電池2のアノードガス通路、カソードガス通路に排気ガスを流した場合でも、排気浄化触媒3の後流の排気ガスを導入しているので、燃料電池2の触媒の被毒を防止することができる。
【0020】
また、上記伝達制御手段は、排気ガス供給通路7への排気ガスの流入を遮断する遮断手段として機能する流路切替弁4と、この作動を燃料電池2の運転状態に応じて制御する遮断制御手段として機能する制御部11とを有する。制御部11は例えば、燃料電池2の暖機が要求された場合に流路切替弁4を制御して内燃機関1の廃熱の伝達を実行させるとともに、燃料電池2の暖機が完了した場合に流路切替弁4を制御して廃熱の伝達を停止させる。この構成により、燃料電池2の暖機完了後も内燃機関1の廃熱が伝達されることに起因する不必要な燃料電池2の暖機を抑制できるので、燃料電池2の過熱を抑制することができる。
また、制御部11は例えば、内燃機関1及び燃料電池2が共に運転中の状態から燃料電池2のみが運転を停止される場合に、流路切替弁4を制御して廃熱の伝達を実行させる。この構成により、燃料電池2の作動が停止している場合に内燃機関1の廃熱が伝熱されるので、燃料電池2の作動停止に伴う燃料電池2の温度低下を抑制でき、その結果、燃料電池2の再始動性を向上させることができる。
【0021】
このように、必要に応じて、つまり燃料電池2の運転状態に応じて、内燃機関1の排気ガスを燃料電池2に導入することにより、新たに投入するエネルギーを必要とせずに燃料電池2の温度維持を可能とし、結果として高効率かつ高レスポンスのシステムを実現することができる。
【0022】
次に内燃機関1を動作させる場合において、燃料電池2の温度維持を可能とするために制御部11が行う制御について説明する。図2は、制御部11が行う制御についてのフローチャートを示す図である。
【0023】
図2に示すように、制御部11は燃料電池2の温度を検知するセンサ12の出力信号から、温度が設定以下であるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1において、センサ12の温度が設定以下である(燃料電池2の暖気が要求されている)と判定された場合には、制御部11は流路切替弁4の切替状態を判定する(ステップS2)。ステップS2において、燃料電池2側への流路である排気ガス供給通路7が遮断されていると判定された場合には、制御部11は、流路切替弁4を制御し、外部排気管13への流路を遮断し、排気ガス供給通路7を介してガス通路8及び/又は燃料電池ケース9へ排気ガスを流入させる(ステップS3)。この際、空冷式燃料電池では冷媒通路に排気ガスを供給してもよい。以下、制御部11は、ステップS1からの動作を繰り返す。
【0024】
他方、ステップS1において、センサ12の温度が設定以下でない(燃料電池2の暖気が完了している)と判定された場合には、制御部11は流路切替弁4の切替状態を判定する(ステップS4)。ステップS4において、外部排気管13への流路が遮断されていると判定された場合には、制御部11は、流路切替弁4を制御し、外部排気管13へ排気ガスを流入させ、ガス通路8または燃料電池ケース9への流路を遮断する(ステップS5)。以下、制御部11は、ステップS1からの動作を繰り返す。ステップS2において、燃料電池2側への流路が遮断されていないと判定された場合には、ステップS1からの動作を繰り返す。ステップS4において、外部排気管への流路が遮断されていないと判定された場合には、ステップS1からの動作を繰り返す。
【0025】
以上のように、燃料電池2が作動温度に達していない場合には、流路切替弁4により排気ガスを燃料電池2側へ流入させ、作動温度に達すると燃料電池2側への排気ガスの供給を遮断することから、燃料電池2の温度を常に維持することができ、高効率かつ高レスポンスのハイブリッドシステムを実現することができる。
【0026】
なお、一般に、ハイブリッドシステムの起動時における燃料電池2の温度は、燃料電池2の休止時の温度よりも低い。従って、ハイブリッドシステムの起動時には、できるだけ効率良く燃料電池2を暖気するために、ガス通路8と燃料電池ケース9の両方(更に、空冷式燃料電池では冷媒通路)に内燃機関1の排気ガスを供給し、燃料電池2の休止時にはどちらか一方に供給するようにしてもよい。この場合には、排気ガス供給通路7と燃料電池ケース9との間に弁を設け、制御部11で制御する。なお、内燃機関1の排気ガスは燃料電池2のアノードガス通路及びカソードガス通路のどちらに供給してもよいが、燃料電池2の休止時にはカソード通路に供給することが好ましい。これは、アノードガス通路に供給した場合には、改質器5から供給される水素が排気ガス中の酸素と反応してしまうからである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例に係るハイブリットシステムの構成を示す図である。
【図2】図2に示す制御部の動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
1 内燃機関
2 燃料電池
3 排気浄化触媒
4 流路切替弁
5 改質器
6 排気ガス通路
7 排気ガス供給通路
8 ガス通路
9 燃料電池ケース
10 燃料電池システム
11 制御部
12 センサ
13 外部排気管
100 ハイブリットシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
燃料電池と、
前記内燃機関の廃熱を前記燃料電池に伝達する熱伝達手段と、
前記熱伝達手段による前記廃熱の伝達を前記燃料電池の運転状態に応じて制御する伝達制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリットシステム。
【請求項2】
前記伝達制御手段は、前記燃料電池の暖機が要求された場合に前記熱伝達手段による前記廃熱の伝達を実行させるとともに、前記燃料電池の暖機が完了した場合に前記熱伝達手段による前記廃熱の伝達を停止させることを特徴とする請求項1に記載のハイブリットシステム。
【請求項3】
前記伝達制御手段は、前記内燃機関及び前記燃料電池が共に運転中の状態から前記燃料電池のみが運転を停止される場合に、前記熱伝達手段による前記廃熱の伝達を実行させることを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリットシステム。
【請求項4】
前記伝達手段は、前記内燃機関の排気ガスの通路である排気ガス通路と、前記排気ガス通路から分岐するとともに、前記燃料電池におけるガス通路と前記燃料電池の周囲に形成された燃料電池ケースとの少なくとも一方に連通する排気ガス供給通路とを有するとともに、
前記伝達制御手段は、前記排気ガス供給通路への前記排気ガスの流入を遮断する遮断手段と、前記遮断手段の作動を前記燃料電池の運転状態に応じて制御する遮断制御手段とを有することを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載の内燃機関と燃料電池とのハイブリットシステム。
【請求項5】
前記排気ガス通路における前記排気ガス供給通路への分岐部よりも上流側に前記排気ガスを浄化する排気浄化手段を備えるとともに、前記ガス通路が前記燃料電池のアノードガス通路及びカソードガス通路のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関と燃料電池とのハイブリットシステム。

【図1】
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【図2】
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