説明

ハイブリッド式車両

【課題】ハイブリッド式車両において、変速機構にアクチュエータを設けた場合、アクチュエータの張り出しを抑えることができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】アクチュエータ82は、クランク軸111の延長線上での張り出し量L1が、モータ44の張り出し量L2以内に収められている。
【効果】アクチュエータ82の張り出しをモータ44の張り出しと同方向とし、且つアクチュエータの張り出し量がモータの張り出し量以内とされているので、エンジンが大きくなる心配がない。すなわち、本発明によれば、ハイブリッド式車両において、変速機構にアクチュエータを設けた場合、アクチュエータの張り出しを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンとモータとを駆動源とするハイブリッド式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃費向上の観点から、エンジン(内燃機関)にモータ(電動機)を組み合わせてなるハイブリッド式車両が提案されている(例えば、特許文献1(図3)参照。)。
【0003】
特許文献1の図3に示されるように、パワーユニット(18)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ)は、燃焼室(26a)で混合気に点火プラグ(54)で点火し爆発させる内燃機関(26)に、モータ・ジェネレータ(36)を付加してなるハイブリット型エンジンを備えている。
【0004】
内燃機関(26)の下部に変速機(42)が備えられており、変速に際しては、変速機(42)内のシフトドラム(112)が回される。このシフトドラム(112)は、運転者が操作するシフトペダル(特許文献1段落番号[0039]第1行)により、回される。
【0005】
運転者が操作するシフトペダルで、リンクを介して変速機(42)を機械的に操作する車両(特に自動二輪車)が、広く普及している。
一方、近年の自動化要求により、変速操作子と、変速機とを機械的に連結しないで、変速操作子の操作情報を電気信号に変換し、この電子信号に基づいてアクチュエータを制御し、このアクチュエータで変速機を回動するシステムが提案されている。このシステムによれば、アクチュエータが変速機を回動するため、回動に必要な力を自由に設定することができ、設計の自由度が高まる。
【0006】
一方、アクチュエータは、例えばクランクケースに取付けられるが、クランクケースの内部に余裕スペースが少ないため、アクチュエータの大部分がクランクケースから外へ張り出す。ハイブリット型エンジンではモータの張り出しに加えて、アクチュエータの張り出しにより、エンジンの大型化が予想される。そして、張り出しを少なくしようとすると設計の自由度が狭められ勝ちであり、設計自由度の低下が予想される。
【0007】
そこで、ハイブリッド式車両において、変速機構にアクチュエータを設けた場合に、好ましいレイアウトが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−080986公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、変速機構にアクチュエータを設けた場合、アクチュエータの張り出しを抑えることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、エンジンのクランク軸にモータを備え、前記クランク軸の出力が多段ギヤ変速機で変速されて車両の走行に供されるハイブリット式車両において、
前記多段ギヤ変速機を自動変速させるアクチュエータが、前記モータの近傍にて、前記エンジンのクランクケースに設けられ、
このアクチュエータは、前記クランク軸の延長線上での張り出し量が、前記モータの張り出し量以内とされ、前記クランク軸に直交する方向での幅が、前記モータの幅以内に収まるように配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、多段ギヤ変速機は、クランクケースの下方に配置され、アクチュエータは、モータの下方に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明では、多段ギヤ変速機に、多段ギヤをシフトするシフトドラムが含まれ、このシフトドラムの回転位置を検出するドラム回転検出センサが備えられ、このドラム回転検出センサと前記モータとの間に、アクチュエータが配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明では、アクチュエータは、長手軸がクランク軸の軸線と直交する姿勢で配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明では、エンジンは、クランク軸が車両の長手方向に延びるように配置され、モータ及びアクチュエータは、車両の前輪とエンジンの間に配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明では、クランクケースに、アクチュエータと共に潤滑油を濾過するオイルフィルタが隣り合うように設けられており、車体の一側方にオフセットしてアクチュエータが配置され、車体の他側方にオフセットしてオイルフィルタが配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、アクチュエータは、クランク軸の延長線上での張り出し量がモータの張り出し量以内とされ、クランク軸に直交する方向での幅がモータの幅以内に収まるように配置されている。
アクチュエータの張り出しをモータの張り出しと同方向とし、且つアクチュエータの張り出し量がモータの張り出し量以内とされているので、比較的大きなモータの設置スペースにより形成されるクランクケース外部のデッドスペースを有効利用できる。これにより、エンジンの大型化を極力抑えながらモータ及びアクチュエータを効率よく配置することができる。
【0017】
又、アクチュエータがモータよりも張り出すことがないので、モータによるアクチュエータの保護効果も期待できる。
すなわち、本発明によれば、ハイブリッド式車両において、変速機構にアクチュエータを設けた場合、アクチュエータの張り出しを抑えモータとアクチュエータの配置を効率よく行え、且つ、アクチュエータの保護が期待できる技術が提供される。
【0018】
請求項2に係る発明では、アクチュエータをモータの下方に配置した。クランク軸の端部にモータを設けた場合、モータの下方がデッドスペースになり勝ちである。
本発明によれば、モータの下方がスペースを有効活用することができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、ドラム回転検出センサとモータとの間に、アクチュエータを配置した。モータとアクチュエータとドラム回転検出センサとを整然と配置することができ、コンパクトな配置が可能となる。
【0020】
請求項4に係る発明では、アクチュエータを、クランク軸の軸線と直交する姿勢で配置する。アクチュエータの出力は外径と長さとにより決定される。外径を抑えて長くすることでも出力が維持できる。この場合に、クライン軸に直角に配置することで、クランク軸方向でのコンパクト化を図ることができる。
【0021】
請求項5に係る発明では、エンジンは、クランク軸が車両の長手方向に延びるように配置され、モータ及びアクチュエータは、車両の前輪とエンジンの間に配置されている。
前輪とエンジンの間のスペースにモータ及びアクチュエータ配置することで、前輪とエンジンの間のスペースを有効利用することができる。
【0022】
請求項6に係る発明では、アクチュエータの隣にオイルフィルタを配置する。アクチュエータとオイルフィルタは車体の一側方と他側方とに各々オフセットして配置する。
アクチュエータと補機部品であるオイルフィルタとをコンパクトに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るハイブリッド式車両の左側面図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】第2ベベルギヤからシフトドラムまでの駆動系統を説明する図である。
【図4】パワーユニットの断面図である。
【図5】モータとアクチュエータの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、ハイブリッド式車両は、ハイブリッド式自動二輪車を例に説明するが、ハイブリッド式三輪車、ハイブリッド式四輪車であってもよい。また、前後左右は、シートに座った運転者から見た向きを指す。
【0026】
図1に示すように、ハイブリッド式車両10は、車体フレーム11に、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方に延びているメインフレーム13と、このメインフレーム13の後端部に取り付けピボット軸16を有するピボットプレート17と、このピボットプレート17の後上部から斜め後上方に延びているシートレール18と、このシートレール18の後端部とピボットプレート17の中間部との間を連結しシートレール18を支持するミドルフレーム19と、このミドルフレーム19の上端部から後方に延びているサブレール21と、このサブレール21の後部とミドルフレーム19の間に掛け渡されているシートステー22と、が備えられている自動二輪車である。
メインフレーム13の後部下端部近傍に、乗員の足置きとしてのステップ23が取り付けられている。
【0027】
なお、メインフレーム13、ピボットプレート17、シートレール18、ミドルフレーム19、シートステー22及びステップ23は車両の幅方向中心に対し左右に設けられている。
【0028】
ピボットプレート17には、ピボット軸16を中心に上下にスイング可能なリヤスイングアーム25が取付けられ、このリヤスイングアーム25の後端部に、最終減速機26が一体に設けられ、この最終減速機26に、後輪車軸27が設けられ、この後輪車軸27に、後輪28が取付けられている。
【0029】
リヤスイングアーム25の中間部に、リンク機構31を介してリヤクッションユニット32が立設して取付けられ、このリヤクッションユニット32の上端部は、メインフレーム13側に取付けられている。
【0030】
ヘッドパイプ12に、操向自在にフロントフォーク35が取付けられ、このフロントフォーク35に、前輪車軸37を介して前輪38が取付けられ、フロントフォーク35の上端部に、操向ハンドル39が取付けられている。
【0031】
メインフレーム13の下方に、締結部材41a〜41cを介してパワーユニット42が懸架されている。このパワーユニット42は、水平対向型4気筒エンジン43(以下、「エンジン43」とも云う。)と、このエンジン43の前部に設けられているモータ44と、からなるハイブリッド式駆動源である。エンジン43は水冷エンジンである。エンジン43のクランク軸の軸線111Cは車両前後方向に延びており、モータ44はクランク軸の前部に設けられている。
【0032】
エンジン43の駆動力は、ドライブシャフト45に伝達され、ドライブシャフト45の後端部に設けられている最終減速機26により減速されると共に、回転軸の方向が車両長手方向から車幅方向へ変換され後輪28に伝達される。
【0033】
エンジン43の上方に、吸気系部材47が配置されている。
吸気系部材47は、外気を導くエアダクト48を含むエアクリーナ49と、このエアクリーナ49に連結されているスロットルボデイ51と、このスロットルボデイ51から延設されている吸気マニホールド52と、この吸気マニホールド52の先端部に設けられ混合気を溜めるサージタンク53と、このサージタンク53から延設され混合気をエンジン43の各気筒へ導くインテークマニホールド54、54とからなる。
【0034】
エンジン43の下方に、排気系部材57が配置されている。
排気系部材57は、エンジン43の各気筒から延びている排気管61、61と、これらの排気管61、61を集合させる集合管62と、この集合管62から後方へ延びている消音器63と、からなる。
【0035】
シートレール18に、乗員が着座する乗員シート65が設けられている。
乗員シート65は、前部シート66と、この前部シート66の後方に連なるように設けた後部シート67とを一体化させてなる。
【0036】
サブレール21に、物を収納するトランク69が取付けられ、このトランク69の前壁69aに、乗員の背中を保持する背もたれ71が取付けられている。サブレール21に、サイドバッグ72が取り付けられている。
【0037】
ヘッドパイプ12に、車両の前方を覆うフロントカウル74が取付けられ、このフロントカウル74に風よけとしてのフロントシールド75が取付けられ、フロントフォーク35に、前輪38の上方を覆う泥よけとしてのフロントフェンダ76が設けられている。
【0038】
パワーユニット42の要部を、正面から見たときの形態は図2に示される通りである。
図2に示すように、モータ44が中央に見え、このモータ44の奥にクランクケース77が見える。さらに、クランクケース77からシリンダブロック78、78(詳細後述)及びシリンダヘッド79、79が左右に延びている。
【0039】
そして、クランクケース77の下部(すなわち、モータ44の下方)に、自動変速機構80が収納されている。また、クランクケース77の下部には、潤滑油を濾過するオイルフィルタ81が隣り合うように設けられている。
好ましくは、車体の一側方にオフセット(具体的にはモータ44の中心からδ1だけオフセット)してアクチュエータ82の中心が配置され、車体の他側方にオフセット(具体的にはモータ44の中心からδ2だけオフセット)してオイルフィルタ81の中心が配置されている。このように、アクチュエータ82と補機部品であるオイルフィルタ81とをコンパクトに配置することができる。
【0040】
自動変速機構80は、駆動源であるアクチュエータ82と、このアクチュエータ82の出力を減速するギヤ83、84、85、86と、このギヤ86で回される第1ベベルギヤ87とを含む。すなわち、ギヤ86と第1ベベルギヤ87は軸89で一体的に繋がれている。
【0041】
この第1ベベルギヤ87で回される第2ベベルギヤ88以降を次図で説明する。
図3に示される第2ベベルギヤ88の軸92は、クランク軸と平行に延びている。この軸92に平行にチェンジ軸90が配置され、このチェンジ軸90に、平行に軸状のシフトドラム91が配置されている。
【0042】
第2ベベルギヤ88の軸92は、クランクケース77に軸受93、94で回転自在に支持され、駆動ギヤ95を備えている。
チェンジ軸90も、クランクケース77に軸受96、97で回転自在に支持され、駆動ギヤ95で駆動される従動セクターギヤ98を備えると共に、腕形状のチェンジアーム99を備え、挟みばね101を備え、軸端にチェンジ軸回転角度センサ102を備えている
シフトドラム91も、クランクケース77に軸受103で回転自在に支持され、軸端に軸心から径方向にオフセットした位置にピン104を備えると共にドラム回転検出センサ105を備えている。
【0043】
第2ベベルギヤ88が回されると、駆動ギヤ95が回り、この駆動ギヤ95が従動セクターギヤ98を回す。すると、チェンジアーム99が揺動され、このチェンジアーム99は、先端の長穴(又はU字切欠き)106に係合しているピン104を押出す。結果、シフトドラム91が所定角度回される。チェンジアーム99は揺動後に、挟みばね101で元に位置に戻される。なお、これらの構成要素は、リッド107を外すことで、外からのアクセスが可能となる。
【0044】
シフトドラム91以降を図4で説明する。
なお、図4は説明の都合で、図右にモータ44及びドラム回転検出センサ105が配置されている。
クランクケース77にクランク軸111が回転自在に支持され、このクランク軸111にコンロッド112を介してピストン113が連結され、このピストン113がシリンダブロック78に往復移動自在に収納され、このシリンダブロック78を塞ぐシリンダヘッド79に動弁機構114が取付けられ、この動弁機構114を囲うようにシリンダヘッド79にヘッドカバー115が被せられている。
【0045】
クランク軸111の一端に、モータ44が備えられ、他端にギヤ116が備えられ、このギヤ116に、サブギヤ117が噛み合っており、このサブギヤ117にダンパ118が結合され、このダンパ118の出力側に交流発電機(ACG)119が取り付けられている。
【0046】
そして、クランク軸111に沿って、自動変速機構の後段部分を占める多段ギヤ変速機120が配置されている。
この多段ギヤ変速機120は、シフトドラム91と、このシフトドラム91に平行に配置されている2本のシフトフォーク軸121、122と、これらに平行に配置されている第2メインシフト軸123及び第1メインシフト軸124(第1メインシフト軸124はインナー軸125とアウター軸126とからなる。)と、インナー軸125の端部に備えられているインナー側クラッチ127と、アウター軸126の端部に備えられているアウター側クラッチ128と、シフトフォーク軸121、122に軸方向へ移動自在に設けられシフトドラム91のカム溝129により軸方向へ移動される複数個のシフトフォーク131〜134と、第2メインシフト軸123に軸方向に移動可能に取付けられシフトフォーク131、132で移動されるシフタ135、136と、第2メインシフト軸123に設けられ同軸から出力を取出す出力取出しギヤ137と、第1メインシフト軸124のインナー軸125に軸方向に移動可能に取付けられシフトフォーク133で移動されるシフタ138と、第1メインシフト軸124のアウター軸126に軸方向に移動可能に取付けられシフトフォーク134で移動されるシフタ139と、第1メインシフト軸124のアウター軸126に設けられている多段ギヤを構成するギヤ141と、からなる。
【0047】
このような構造の多段ギヤ変速機120の作動の一例を述べる。
例えば、インナー側クラッチ127が結合され、シフタ138がモータ44側(図右)へ移動されて、シフタ138とギヤ141が結合されたとする。
クランク軸111の出力は、クランク軸111に一体形成されているギヤ142、このギヤ142に噛合している従動ギヤ143、この従動ギヤ143で回されるクラッチカップ144、インナー側クラッチ127、インナー軸125、シフタ138、ギヤ141、このギヤ141に噛合しているシフタ135、第2メインシフト軸123、出力取出しギヤ137の順で伝達される。
インナー/アウター側クラッチ127、128を選択し、シフタ135、136、138、139を選択することで所望の変速比を得ることができる。
【0048】
次に、多段ギヤ変速機120を駆動するアクチュエータ82のレイアウトについて詳しく説明する。
図5に示すように、クランク軸111の一端にインナーロータ145とアウターステータ146とからなるモータ44が配置されている。このモータ44はクランクケース77に一体形成されているモータカバー147と、このモータカバー147に取付けたリッド148に収納されている。
そして、モータ44の下方のスペースに、アクチュエータ82等が取付けられている。
【0049】
このアクチュエータ82は、クランク軸111の軸線111Cの延長線上での張り出し量L1(モータ44に最も近いシリンダの中心線149からの張り出し量)が、モータ44の張り出し量L2(モータ44に最も近いシリンダの中心線149からの張り出し量)以内に収められている。この張り出し量L2は、好ましくはインナーロータ145までの距離であるが、リッド148外面までの距離であっても良い。具体的には、リッド148の外面から降ろした線151より、内側(シリンダの中心線149側)にアクチュエータ82を配置する。
【0050】
すなわち、アクチュエータ82の張り出しをモータ44の張り出しと同方向とし、且つアクチュエータ82の張り出し量がモータ44の張り出し量以内とされているので、比較的大きなモータ44の設置スペースにより形成されるクランクケース77外部のデッドスペースを有効利用できる。これにより、エンジンの大型化を極力抑えながらモータ44及びアクチュエータ82を効率よく配置することができる。
【0051】
又、アクチュエータ82がモータ44よりも張り出すことがないので、モータ44がアクチュエータ82を保護する役割を果たす。すなわち、モータ44によるアクチュエータ82の保護効果も期待できる。
【0052】
また、図2に示すように、クランク軸111に直交する方向でのアクチュエータ82の幅W1が、モータ44の幅W2以内に収まるように配置されている。
図5及び図2に示すように、アクチュエータ82の張り出しをモータ44の張り出しと同方向とし、且つアクチュエータの張り出し量がモータの張り出し量以内とされているので、エンジンが大きくなる心配がない。すなわち、本発明によれば、ハイブリッド式車両において、変速機構にアクチュエータを設けた場合、アクチュエータの張り出しを抑えることができる。
【0053】
なお、図5において、アクチュエータ82等は、モータ44の下方の他、上方や左右に配置することが可能である。
しかし、図5に示すように、多段ギヤ変速機120は、クランクケース77の下方に配置され、アクチュエータ82は、モータ44の下方に配置されていることが望ましい。クランク軸111の端部にモータ44を設けた場合、モータ44の下方がデッドスペースになり勝ちである。本実施例によれば、モータ44の下方がスペースを有効活用することができるからである。
【0054】
また、ドラム回転検出センサ105を備える場合には、このドラム回転検出センサ105とモータ44との間に、アクチュエータ82を配置することが望ましい。モータ44とアクチュエータ82とドラム回転検出センサ105とを整然と配置することができ、コンパクトな配置が可能となるからである。
【0055】
また、アクチュエータ82は、長手軸がクランク軸111の軸線111Cと直交するように(図5では図面表裏方向へ延ばす)姿勢で配置することが望ましい。
アクチュエータ82の出力は外径と長さとにより決定される。外径を抑えて長くすることでも出力が維持できる。この場合に、クランク軸111に直角に配置することで、クランク軸方向でのコンパクト化を図ることができるからである。
【0056】
また、図1に示すように、エンジン43は、クランク軸(軸線111C)が車両の長手方向に延びるように配置され、モータ44及びアクチュエータ82は、車両の前輪38とエンジン43の間に配置されることが望ましい。前輪38とエンジン43の間のスペースを有効利用することができるからである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、ハイブリッド式自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0058】
10…ハイブリッド式車両、38…前輪、43…エンジン、44…モータ、77…クランクケース、81…オイルフィルタ、82…アクチュエータ、91…シフトドラム、105…ドラム回転検出センサ、111…クランク軸、111C…クランク軸の軸線、120…多段ギヤ変速機、L1…アクチュエータの張り出し量、L2…モータの張り出し量、W1…アクチュエータの幅、W2…モータの幅、δ1…アクチュエータのオフセット量、δ2…オイルフィルタのオフセット量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランク軸にモータを備え、前記クランク軸の出力が多段ギヤ変速機で変速されて車両の走行に供されるハイブリット式車両において、
前記多段ギヤ変速機を自動変速させるアクチュエータが、前記モータの近傍にて、前記エンジンのクランクケースに設けられ、
このアクチュエータは、前記クランク軸の延長線上での張り出し量が、前記モータの張り出し量以内とされ、前記クランク軸に直交する方向での幅が、前記モータの幅以内に収まるように配置されていることを特徴とするハイブリッド式車両。
【請求項2】
前記多段ギヤ変速機は、前記クランクケースの下方に配置され、前記アクチュエータは、前記モータの下方に配置されていることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド式車両。
【請求項3】
前記多段ギヤ変速機に、多段ギヤをシフトするシフトドラムが含まれ、このシフトドラムの回転位置を検出するドラム回転検出センサが備えられ、
このドラム回転検出センサと前記モータとの間に、前記アクチュエータが配置されていることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド式車両。
【請求項4】
前記アクチュエータは、長手軸が前記クランク軸の軸線と直交する姿勢で配置されていることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド式車両。
【請求項5】
前記エンジンは、前記クランク軸が車両の長手方向に延びるように配置され、前記モータ及び前記アクチュエータは、車両の前輪と前記エンジンの間に配置されていることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド式車両。
【請求項6】
前記クランクケースに、前記アクチュエータと共に潤滑油を濾過するオイルフィルタが隣り合うように設けられており、車体の一側方にオフセットして前記アクチュエータが配置され、車体の他側方にオフセットして前記オイルフィルタが配置されていることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド式車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−73620(P2011−73620A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228300(P2009−228300)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)