説明

ハイブリッド車両用駆動力伝達装置

【課題】電動機におけるロータの位置精度を向上させると共に、各種調整を容易なものとするハイブリッド車両用駆動力伝達装置を提供する。
【解決手段】クラッチK0が電動機MGとトルクコンバータ14との間の動力伝達経路に設けられたものであることから、電動機MGにおけるロータ26の軸心C方向の位置精度を向上させられると共に、トルクコンバータ14を組み付けることなく電動機MGの位置を定めることができ、更には電動機MGを取り外すことなくオイルシール36の交換が可能となる。すなわち、電動機MGにおけるロータ26の位置精度を向上させると共に、各種調整を容易なものとする伝達装置10を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両用駆動力伝達装置に関し、特に、電動機におけるロータの位置精度を向上させると共に、各種調整を容易なものとするための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと、電動機と、そのエンジンと電動機との間の動力伝達経路に設けられて係合状態に応じてその動力伝達経路における動力伝達を制御するクラッチと、前記エンジンと変速機との間の動力伝達経路に設けられて動力を伝達するトルクコンバータとを、備えたハイブリッド車両が知られている。例えば、特許文献1に記載された車両用駆動装置がそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−105450号公報
【特許文献2】特許第3221118号公報
【特許文献3】特許第3373082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の技術においては、前記電動機のロータを回転可能に支持する構成に関して、その支持に係るベアリング相互間の距離(支持スパン)が大きく、また、その間に介在する部品の点数が多いことから、前記ロータの軸心方向の位置精度を向上させるのが難しいという弊害があった。また、前記トルクコンバータを組み付けなければ電動機の位置が定まらず単体調整が困難であることに加え、オイルシールを交換するために電動機を取り外すことが必要であるため、各種調整が困難であるという不具合があった。このため、電動機におけるロータの位置精度を向上させると共に、各種調整を容易なものとするハイブリッド車両用駆動力伝達装置の開発が求められていた。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、電動機におけるロータの位置精度を向上させると共に、各種調整を容易なものとするハイブリッド車両用駆動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、エンジンと、電動機と、そのエンジンと電動機との間の動力伝達経路に設けられて係合状態に応じてその動力伝達経路における動力伝達を制御するクラッチと、前記エンジンと変速機との間の動力伝達経路に設けられて動力を伝達するトルクコンバータとを、備えたハイブリッド車両用駆動力伝達装置であって、前記クラッチは、前記電動機とトルクコンバータとの間の動力伝達経路に設けられたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、エンジンと、電動機と、そのエンジンと電動機との間の動力伝達経路に設けられて係合状態に応じてその動力伝達経路における動力伝達を制御するクラッチと、前記エンジンと変速機との間の動力伝達経路に設けられて動力を伝達するトルクコンバータとを、備えたハイブリッド車両用駆動力伝達装置において、前記クラッチは、前記電動機とトルクコンバータとの間の動力伝達経路に設けられたものであることから、前記電動機におけるロータの軸心方向の位置精度を向上させられると共に、前記トルクコンバータを組み付けることなく電動機の位置を定めることができ、更には電動機を取り外すことなくオイルシールの交換が可能となる。すなわち、電動機におけるロータの位置精度を向上させると共に、各種調整を容易なものとするハイブリッド車両用駆動力伝達装置を提供することができる。
【0008】
ここで、前記第1発明に従属する本第2発明の要旨とするところは、前記エンジンと変速機との間の動力伝達経路において、前記トルクコンバータは前記エンジン側に、前記電動機は前記変速機側にそれぞれ備えられたものであり、ハウジング内に前記トルクコンバータ及び電動機を収容する蓋部として、そのハウジングと一体的に設けられたハウジングカバーと、前記トルクコンバータと電動機との間を区画する、前記ハウジングと一体的に設けられた中間壁とを、備え、前記中間壁とハウジングカバーとにより前記電動機のロータを前記ハウジングに対して回転可能に支持するものである。このようにすれば、前記電動機とトルクコンバータとの間の動力伝達経路に実用的な態様で前記クラッチを設けることができると共に、その電動機におけるロータの軸心方向の位置精度を更に好適に向上させることができる。
【0009】
また、前記第1発明又は第2発明に従属する本第3発明の要旨とするところは、前記電動機に連結された油圧ポンプを備えたものである。このようにすれば、前記クラッチが解放された状態における前記電動機を駆動源とする走行時でも、その電動機の回転により油圧を発生させられるため、別体の電動油圧ポンプを備える必要がないという利点がある。
【0010】
また、前記第2発明に従属する本第4発明の要旨とするところは、前記ハウジングカバーにおける内周側に収容され、前記電動機のロータの回転により油圧を発生させる機械式の油圧ポンプを備えたものである。この油圧ポンプは、例えば、ベーンポンプ等の回転式油圧ポンプのギヤ乃至ロータ等が前記ハウジングカバーにおける内周側に備えられたものであり、このようにすれば、油圧ポンプを変速機側に設けることで、その油圧ポンプからの油圧を前記変速機に対して油圧ロスを低減しつつ供給することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド車両用駆動力伝達装置の一部構成を例示する骨子図である。
【図2】図1に示すハイブリッド車両用駆動力伝達装置において、ハウジングとハウジングカバーとの締結部を拡大して示す図である。
【図3】本実施例との比較のために従来のハイブリッド車両用駆動力伝達装置の一部構成を例示する骨子図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記ハウジングカバーは、好適には、例えばボルト等の締結具により前記ハウジングに締結される。換言すれば、前記変速機のケース(トランスミッションケース)に締結されるのではなく、前記ハウジングに直接締結される。斯かる構成により、前記電動機におけるロータの位置精度を更に向上させられると共に、支持剛性を向上させられる。
【0013】
前記油圧ポンプは、好適には、前記電動機の軸心方向においてその電動機のステータコイルエンド及びロータの少なくとも一方と重なる(ラップする)位置に設けられる。例えば、前記電動機に対して前記変速機側に設けられた前記ハウジングカバーの内周側端部に、その軸心方向電動機側に延伸する延伸部が設けられ、その延伸部に前記油圧ポンプのギヤ乃至ロータ等が組み込まれる。
【0014】
前記トルクコンバータは、好適には、そのステータ翼車が一方向クラッチを介して前記中間壁に接続されたものである。例えば、前記電動機に対して前記トルクコンバータ側に設けられた前記中間壁の内周側端部に、その軸心方向電動機側に延伸する延伸部が設けられ、その延伸部に前記トルクコンバータのステータ翼車が一方向クラッチを介して接続される。
【0015】
前記クラッチは、好適には、油圧により係合状態が制御される油圧式摩擦係合装置であるが、電磁気的に係合状態が制御される電磁式クラッチ或いは磁粉式クラッチ等が用いられてもよい。また、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に複数の前記クラッチが備えられ、各クラッチの係合状態に応じてその動力伝達経路における動力伝達を制御する態様のハイブリッド車両用駆動力伝達装置にも本発明は好適に適用される。
【0016】
前記変速機は、好適には、複数の油圧式摩擦係合装置を備えた有段式の自動変速機であるが、ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機等のCVTを備えたハイブリッド車両にも本発明は好適に適用される。また、複数の電動機相互間の電気パスによりそれら複数の電動機が電気的な無段変速機として機能する形式のハイブリッド車両用駆動力伝達装置に本発明が適用されても構わない。
【0017】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド車両用駆動力伝達装置10(以下、単に伝達装置10という)の一部構成を例示する骨子図であり、駆動力の伝達を太い矢印で示している。なお、この伝達装置10は、その軸心Cに対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
【0019】
本実施例の伝達装置10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、図1に示すように、エンジン12と、トルクコンバータ14と、電動機MGと、変速機16とを、共通の軸心C上に直列に備えている。すなわち、上記伝達装置10では、上記エンジン12と変速機MGとの間の動力伝達経路において、上記トルクコンバータ14は上記エンジン12側に、上記電動機MGは上記変速機16側にそれぞれ備えられている。
【0020】
前記伝達装置10において、上記エンジン12及び電動機MGの少なくとも一方により発生させられた駆動力は、上記トルクコンバータ14、変速機16、及び図示しない差動歯車装置等を介して駆動輪へ伝達されるように構成されている。斯かる構成から、前記伝達装置10は、上記エンジン12及び電動機MGの少なくとも一方を走行用の駆動源として駆動される。すなわち、前記伝達装置10においては、専ら上記エンジン12を走行用の駆動源とするエンジン走行モード、専ら上記電動機MGを走行用の駆動源とするEV走行(モータ走行)モード、及び上記エンジン12及び電動機MGを走行用の駆動源とするハイブリッド走行モードの何れかが選択的に成立させられる。
【0021】
前記エンジン12は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であり、車両走行用の駆動力源(主動力源)に相当する。このエンジン12は、前記トルクコンバータ14の入力軸18に直接或いは図示しない脈動吸収ダンパを介して直接的に連結されている。なお、図1においては、このエンジン12を破線で示している。
【0022】
前記トルクコンバータ14は、上記入力軸18に連結された入力回転部材に相当するポンプ翼車14pと、タービン軸20及びクラッチK0を介して上記電動機MGのロータ26に連結される出力回転部材に相当するタービン翼車14tと、それらポンプ翼車14p及びタービン翼車14tの間に設けられ一方向クラッチF0を介してハウジング22に固定されたステータ翼車14sとを、備えており、流体を介して動力伝達を行う流体式動力伝達装置である。また、上記ポンプ翼車14p及びタービン翼車14tの間には、その係合によりそれらポンプ翼車14p及びタービン翼車14tを一体回転させるように構成されたロックアップクラッチ(直結クラッチ)LUが設けられている。このロックアップクラッチLUは、図示しない油圧制御回路によりその係合状態が解放、スリップ係合(半係合)、乃至完全係合の間で制御されるように構成されている。
【0023】
前記電動機MGは、駆動力を発生させるモータ(発動機)及び反力を発生させるジェネレータ(発電機)としての機能を有するモータジェネレータであり、上記ハウジング22に固定されたステータ24と、そのハウジング22に対して相対回転可能に支持されたロータ26とを、備えている。このロータ26と前記トルクコンバータ14の出力軸であるタービン軸20との間の動力伝達経路には、係合状態に応じてその動力伝達経路における動力伝達を制御するクラッチK0が設けられている。すなわち、前記トルクコンバータ14の出力部材である上記タービン軸20は、斯かるクラッチK0を介して前記電動機MGのロータ26に選択的に連結されるようになっている。また、その電動機MGのロータ26は、前記変速機16の入力軸28に連結されている。
【0024】
上記クラッチK0は、例えば、油圧アクチュエータによって係合制御される多板式の油圧式摩擦係合装置であり、図示しない油圧制御回路から供給される油圧に応じてその係合状態が係合(完全係合)、スリップ係合、乃至開放(完全開放)の間で制御されるようになっている。このクラッチK0が係合されることにより、前記タービン軸20とロータ26との間の動力伝達経路における動力伝達が行われる(接続される)一方、上記クラッチK0が開放されることにより、前記タービン軸20とロータ26との間の動力伝達経路における動力伝達が遮断される。また、上記クラッチK0がスリップ係合されることにより、前記タービン軸20とロータ26との間の動力伝達経路においてそのクラッチK0の伝達トルクに応じた動力伝達が行われる。
【0025】
前記変速機16は、例えば、予め定められた複数の変速段(変速比)の何れかが選択的に成立させられる有段式の自動変速機であり、上記入力軸28から入力される回転を変速して図示しない差動歯車装置等へ出力させる。斯かる変速を行うために複数の係合要素を備えて構成されている。例えば、多板式のクラッチやブレーキ等、油圧アクチュエータによって係合制御される複数の油圧式摩擦係合装置を備えており、図示しない油圧制御回路から供給される油圧に応じてそれら複数の油圧式摩擦係合装置が選択的に係合乃至開放されることにより、それら油圧式摩擦係合装置の連結状態の組合せに応じて複数(例えば、第1速から第6速)の前進変速段(前進ギヤ段、前進走行用ギヤ段)、或いは後進変速段(後進ギヤ段、後進走行用ギヤ段)の何れかが選択的に成立させられる。なお、図1においては、この変速機16を破線で示している。
【0026】
前記ハウジング22は、車体に固定されて前記トルクコンバータ14及び電動機MG等を内部に収容する部材であり、例えば、それらトルクコンバータ14及び電動機MGと共通の軸心Cを軸心とする略円筒状の外周壁30と、前記トルクコンバータ14と電動機MGとの間を区画する中間壁32とを、備えて構成されている。また、前記ハウジング22内に前記トルクコンバータ14及び電動機MGを収容する蓋部として、そのハウジング22と一体的に設けられたハウジングカバー34を備えている。
【0027】
上記中間壁32は、例えば、前記ハウジング22の外周壁30から内周側へ向かって延伸するように形成された構造であり、好適には、そのハウジング22と同一の部材から一体に形成されたものであるが、別部材として形成されて前記ハウジング22に固設されたものであってもよい。図1に示すように、この中間壁32は、前記ハウジング22内に前記トルクコンバータ14及び電動機MGが組み付けられた状態において、それらトルクコンバータ14と電動機MGとの間に介在する隔壁として機能する。換言すれば、前記トルクコンバータ14は上記中間壁32に対して前記エンジン12側に、前記電動機MGは上記中間壁32に対して前記変速機16側にそれぞれ設けられる。
【0028】
また、図1に示すように、前記中間壁32の内周側端部には、軸心C方向電動機MG側に延伸する延伸部32aが一体に形成されており、その延伸部32aには、前記トルクコンバータ14のステータ翼車14sが一方向クラッチF0を介して接続されている。また、前記中間壁32と前記トルクコンバータ14(タービン翼車14p)との間にオイルシール36が設けられており、潤滑及び冷却等のために供給されるオイルの油密性がこの単一部位のオイルシール36により保たれている。
【0029】
前記ハウジングカバー34は、中央に前記入力軸28を挿通する穴部を有する略円板状の部材であり、前記ハウジング22に組み付けられることでそのハウジング22内に前記トルクコンバータ14及び電動機MGを収容する蓋部として機能する。図2は、図1に示す伝達装置10において、前記ハウジング22とハウジングカバー34との締結部を拡大して示す図である。この図2に示すように、上記ハウジングカバー34は、好適には、例えばボルト38等の締結具により前記ハウジング22における外周壁30の電動機MG側端部に締結されている。換言すれば、前記ハウジングカバー34は、好適には、前記変速機16のケース(トランスミッションケース)に締結(固定)されるのではなく、前記ハウジング22の一部に直接締結されたものである。
【0030】
また、好適には、前記ハウジングカバー34の内周側端部には、軸心C方向電動機MG側に延伸する第1延伸部34aと、その第1延伸部34aから更に内周側に延伸する第2延伸部34bとが一体に形成されており、それら第1延伸部34a及び第2延伸部34bとポンプカバー40との間に油圧ポンプ42が設けられている。この油圧ポンプ42は、例えば、よく知られたベーンポンプ等の回転式油圧ポンプであり、そのインナーロータ及びアウターロータ等が上記第1延伸部34a及び第2延伸部34bとポンプカバー40との間に組み込まれている。また、この油圧ポンプ42は、好適には、前記電動機MGのロータ26(出力軸28)に連結され、そのロータ26の回転に伴い油圧を発生させるように構成されたものである。
【0031】
また、上記油圧ポンプ42は、好適には、軸心C方向において前記電動機MGのステータコイルエンド24a及びロータ26の少なくとも一方と重なる(ラップする)位置に設けられたものである。換言すれば、前記オイルポンプ42の少なくとも一部が前記電動機MGのステータコイルエンド24a及びロータ26の内周側に入る(軸方向にラップする位置に搭載される)ような相対位置関係とされたものである。
【0032】
前記伝達装置10において、前記電動機MGのロータ26は、好適には、前記中間壁32とハウジングカバー34とにより前記ハウジング22に対して相対回転可能に支持されている。例えば、図1に示すように、前記中間壁32とハウジングカバー34との間であって前記延伸部32a及び第1延伸部34aの外周側にベアリング44、46を介して前記ロータ26が設けられている。斯かる構成により、前記ロータ26のハウジング22及びハウジングカバー34に対する相対回転(軸心Cまわりの自転)が許容されつつ、前記中間壁32及びハウジングカバー34の間にそのロータ26が保持される。
【0033】
図3は、本実施例との比較のために従来のハイブリッド車両用駆動力伝達装置100(以下、単に伝達装置100という)の一部構成を例示する骨子図であり、前述した本実施例の伝達装置10と共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。この図3に示すように、従来の伝達装置100では、前記電動機MGのロータ26及び前記トルクコンバータ14のポンプ翼車14pを連結する回転部材102と前記ハウジング22との間に設けられたベアリング104と、前記トルクコンバータ14のポンプ翼車14p及び前記油圧ポンプ42を連結する回転部材106と前記ハウジングカバー34との間に設けられたベアリング108とにより、前記電動機MGのロータ26が前記ハウジング26に対して相対回転可能に支持されている。また、潤滑及び冷却等のために供給されるオイルの油密性を確保するために、オイルシール110、112、114が各部に設けられている。
【0034】
上述のように構成された従来の伝達装置100では、前記電動機MGのロータ26をハウジング22に対して相対回転可能に支持する構成相互間の軸心C方向の支持スパン、すなわち上記ベアリング104、108相互間の長さ寸法が比較的長くなることに加え、それらの間に介在させられる部品点数が多いことから、前記ロータ26の軸心C方向の位置精度が低くなるという弊害がある。また、上記伝達装置100に含まれる部品点数が多い、前記トルクコンバータ14を組み付けなければ前記電動機MGの位置が定まらないため単体での調整が難しい、その電動機MGを取り外さなければ上記オイルシール112等の交換が困難である等、種々の問題が考えられる。
【0035】
一方、前述した本実施例の伝達装置10では、前記電動機MGのロータ26をハウジング22に対して相対回転可能に支持する構成相互間の軸心C方向の支持スパン、すなわち前記ベアリング44、46相互間の長さ寸法が比較的短いことから、前記従来の伝達装置100に比べて、前記ロータ26の軸心C方向の位置精度を向上させられることに加え、支持剛性をも向上させられる。また、前記ハウジング22内に電動機MGが組み付けられてハウジングカバー34が取り付けられた所謂サブアッシー(小組立部品)状態でその電動機MGに係る各種調整が可能となり、生産性を向上させることができる。また、前記電動機MGを前記中間壁32に対して前記変速機16側に搭載することでその電動機MGを油冷化でき、冷却性能を向上させることができる。更に、前記伝達装置10に含まれる部品点数が少ない、EV走行時(専ら電動機MGを駆動源とする走行時)に摺動する部品が少なく燃費が向上させられる、前記電動機MGを取り外すことなく前記オイルシール36の交換が可能となりメンテナンス性が向上させられる等、従来の伝達装置100に比して種々の利点を有する。
【0036】
このように、本実施例によれば、前記クラッチK0は、前記電動機MGとトルクコンバータ14との間の動力伝達経路に設けられたものであることから、前記電動機MGにおけるロータ26の軸心C方向の位置精度を向上させられると共に、前記トルクコンバータ14を組み付けることなく電動機MGの位置を定めることができ、更には電動機MGを取り外すことなくオイルシール36の交換が可能となる。すなわち、電動機MGにおけるロータ26の位置精度を向上させると共に、各種調整を容易なものとする伝達装置10を提供することができる。
【0037】
また、前記エンジン12と変速機16との間の動力伝達経路において、前記トルクコンバータ14は前記エンジン12側に、前記電動機MGは前記変速機16側にそれぞれ備えられたものであり、ハウジング22内に前記トルクコンバータ14及び電動機MGを収容する蓋部として、そのハウジング22と一体的に設けられたハウジングカバー34と、前記トルクコンバータ14と電動機MGとの間を区画する、前記ハウジング22と一体的に設けられた中間壁32とを、備え、前記中間壁32とハウジングカバー34とにより前記電動機MGのロータ26を前記ハウジング22に対して回転可能に支持するものであるため、前記電動機MGとトルクコンバータ14との間の動力伝達経路に実用的な態様で前記クラッチK0を設けることができると共に、その電動機MGにおけるロータ26の軸心C方向の位置精度を更に好適に向上させることができる。
【0038】
また、前記ハウジングカバー34は、ボルト38により前記ハウジング22に締結されたものであるため、前記電動機MGにおけるロータ26の位置精度を更に向上させられると共に、支持剛性を向上させられる。
【0039】
また、前記ハウジングカバー34に機械式の油圧ポンプ42が設けられたものであり、その油圧ポンプ42は、前記電動機MGのロータ26に連結されたものであるため、実用的な態様の油圧ポンプ42を前記伝達装置10に設けることができる。
【0040】
また、前記油圧ポンプ42は、前記電動機MGの軸心C方向においてその電動機MGのステータコイルエンド24a及びロータ26の少なくとも一方と重なる(ラップする)位置に設けられたものであるため、前記伝達装置10の軸心C方向の長さ寸法を短く構成することができる。
【0041】
また、前記トルクコンバータ14は、前記ステータ翼車14sが一方向クラッチF0を介して前記中間壁32に接続されたものであるため、実用的な構成により前記トルクコンバータ14を伝達装置10に組み込むことができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0043】
10:ハイブリッド車両用駆動力伝達装置、12:エンジン、14:トルクコンバータ、16:変速機、26:ロータ、32:中間壁、34:ハウジングカバー、K0:クラッチ、MG:電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、電動機と、該エンジンと電動機との間の動力伝達経路に設けられて係合状態に応じて該動力伝達経路における動力伝達を制御するクラッチと、前記エンジンと変速機との間の動力伝達経路に設けられて動力を伝達するトルクコンバータとを、備えたハイブリッド車両用駆動力伝達装置であって、
前記クラッチは、前記電動機とトルクコンバータとの間の動力伝達経路に設けられたものであることを特徴とするハイブリッド車両用駆動力伝達装置。
【請求項2】
前記エンジンと変速機との間の動力伝達経路において、前記トルクコンバータは前記エンジン側に、前記電動機は前記変速機側にそれぞれ備えられたものであり、
ハウジング内に前記トルクコンバータ及び電動機を収容する蓋部として、該ハウジングと一体的に設けられたハウジングカバーと、
前記トルクコンバータと電動機との間を区画する、前記ハウジングと一体的に設けられた中間壁と
を、備え、
前記中間壁とハウジングカバーとにより前記電動機のロータを前記ハウジングに対して回転可能に支持するものである請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動力伝達装置。
【請求項3】
前記電動機に連結された油圧ポンプを備えたものである請求項1又は2に記載のハイブリッド車両用駆動力伝達装置。
【請求項4】
前記ハウジングカバーにおける内周側に収容され、前記電動機のロータの回転により油圧を発生させる機械式の油圧ポンプを備えたものである請求項2に記載のハイブリッド車両用駆動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−240556(P2012−240556A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112624(P2011−112624)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】