説明

ハット型ジョイナーおよび外壁材の取付け施工法

【課題】外部からの水や火や熱が内部に侵入することを良好に防止できる新規な構造のハット型ジョイナーとそれを用いた外壁材の継目部分の取付け施工法の提供。
【解決手段】翼片部11の先端12が外壁材3の内側に当接して存在しているために、シーリング材2が一部で切れて破損等した場合でも、翼片部11と先端部12と外壁裏面とで形成される空間S1に浸入した水は、垂直方向の流路としての空間S1を通り排出される。また、外部からの熱が、翼片部11と先端部12と外壁裏面とで形成される空間S1に進入するが、先端部12が存在していることにより、壁体内空間S2への熱の直接的な進入を防止することができる。従って、本発明のハット型ジョイナーを用いれば、外壁外部から、水や火や熱が、シーリング部分(外壁材の継目部分)を通って壁体内部に進入(浸入)することを効果的に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁材の継目に用いられる新規な構造を有したハット型ジョイナーと、該ハット型ジョイナーを用いた外壁材の取付け施工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の外壁を取付け施工するに際して、外壁材の継目部分の空間部(突き合わせ部の間隙部)にはシーリング材を充填して、更に、該シーリング材の内側にはハット型ジョイナーを使用して該シーリング材の、いわば、バックアップ材としての役割を該ハット型ジョイナーに負わせていた。
【0003】
図3に、従来のハット型ジョイナーの代表的な形状例をモデル的に示した概略モデル正面図であり、従来のハット型ジョイナー1は、ハット状中央凸部10とハット底部から左右に延びる翼片部11を有するものである。
【0004】
該ハット型ジョイナー1は、通常は、ガルバリウム鋼板などの鋼板から成形されてなり、鋼板厚さは0.2mm〜1mm程度であり、該ジョイナーは地面に垂直な方向下に使用されるのが通常であり、ワン・フロア分の長さで約3m〜4mの真っすぐなものが一般的なものである。形状は、翼片部11が左右になく、一方側にのみ存在するものもあり、また、翼片部11の先端部はプレーンなままであるのが通常であり、安全のために先端部が少し反るようにされていたりあるいはアール(丸み)が付けられている。
【0005】
このようなハット型ジョイナー1は、その使われ方は、図4にモデルを示したように、建築物の外壁材3、3の継目部分において、シーリング材2の背後に使用される。
【0006】
ハット型ジョイナーのハット状中央凸部の幅は、外壁材3、3の継目部分における間隙幅とほぼ等しいものである。図4において、4はC型鋼柱であり、5はいわゆるハウスラップと呼ばれる透湿防水シート等であり、図3に示したような形状のハット型ジョイナーを、図4に示したように外壁材の継目部分に使用することが提案され(特許文献1−3)、使用されてきている。
【0007】
なお、図示したC型鋼柱4の位置において、木製の柱などが用いられるケースもあり、本発明にかかるハット型ジョイナーの場合も、そのような態様で使用される場合もあるものである。
【0008】
しかし、このような外壁材の継目部分においての、外部からの水や火や熱が内部に侵入することを防止することは、いまだ改善の余地があるものであり、特に、シーリング材が施工後に永年を経ることにより、該シーリング材が脆化・劣化してシーリング材としての効果が乏しくなった場合には、図3に示したような形状のハット型ジョイナーだけでは、十分な効果を発揮することは難しかった。
【特許文献1】実公平7−18807号公報
【特許文献2】特開平7−317270号公報
【特許文献3】特開平7−180318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、図4に示したような従来からのハット型ジョイナーの使用の仕方をほぼそのまま踏襲しながら、シーリング材の使用が永年を経ることにより脆化・劣化してシーリング効果が乏しくなった場合にも、外部からの水や火や熱が内部に侵入することを良好に防止できる新規な構造のハット型ジョイナーと該ハット型ジョイナーを用いた外壁材の継目部分の取付け施工法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成する本発明のハット型ジョイナーは、以下の(1) の構成を有するものである。
(1)建築物外壁材の継目箇所の内側に用いられるハット型ジョイナーであり、ハット状中央凸部と、該ハット状中央凸部から左右に延びる翼片部とからなり、該翼片部の先端は、前記ハット状中央凸部の高さ方向に矩形に屈曲して延び、屈曲先端部は前記建築物外壁材に当接されて施工されるものであることを特徴とするハット型ジョイナー。
【0011】
また、かかる本発明のハット型ジョイナーにおいて、より具体的に好ましくは、以下の(2) の構成を有するものである。
(2)ハット状中央凸部と翼片部と建築物外壁材とで囲まれて形成される空間部のハット型ジョイナー長さ方向に直角な方向の両側空間部合計断面積が40〜12000mm2 であることを特徴とする上記(1) 記載のハット型ジョイナー。
【0012】
また、上述した目的を達成する本発明の外壁材の継目部分の取付け施工法は、以下の(3) の構成を有するものである。
(3)建築物外壁材の継目箇所の内側にハット型ジョイナーを使用して外壁材を建築物に取り付け施工するに際して、ハット状中央凸部と、該ハット状中央凸部から左右に延びる翼片部とからなり、該翼片部の先端が前記ハット状中央凸部の高さ方向に矩形に屈曲して延びる構造を有するハット型ジョイナーを用いて、該屈曲先端部を建築物外壁材に当接させて施工することを特徴とする外壁材の繋ぎ目部分の取付け施工法。
【発明の効果】
【0013】
請求項1にかかる本発明によれば、従来からのハット型ジョイナーの使用の仕方をほぼそのまま踏襲しながら、シーリング材の使用が永年を経ることにより脆化・劣化してシーリング効果が乏しくなった場合にも、外部からの水や火や熱が内部に進入(侵入)することを良好に防止できる新規な構造のハット型ジョイナーが提供されるものである。
【0014】
請求項3にかかる本発明によれば、従来からのハット型ジョイナーの使用の仕方をほぼそのまま踏襲しながら、シーリング材の使用が永年を経ることにより脆化・劣化してシーリング効果が乏しくなった場合にも外部からの水や火や熱が内部に侵入することを良好に防止できる新規なハット型ジョイナーを用いた外壁材の継目部分の取付け施工法が提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、更に詳しく本発明にかかるハット型ジョイナーについて、説明する。
図1は、本発明にかかるハット型ジョイナーの代表的な形状例をモデル的に示した概略モデル正面図であり、建築物外壁材の継目箇所の内側に用いられる本発明のハット型ジョイナー1は、ハット状中央凸部10と、該ハット状中央凸部から左右に延びる翼片部11とからなり、該翼片部11の先端12は、前記ハット状中央凸部10の高さ方向に矩形に屈曲して延び、屈曲先端部12は前記建築物外壁材に当接されて施工されるものである。
【0016】
図2(a)、(b)は、図1に示した本発明にかかるハット型ジョイナーの使い方とその機能を説明する概略モデル正面図であり、図2(a)に示したように、屈曲先端部12は建築物外壁材3の内側に当接されて取付け施工されている。
【0017】
このようにして本発明にかかるハット型ジョイナーが用いられて施工されていると、図2(a)に示したように、ハット型ジョイナー1が存在しているため、特に、翼片部11の先端12が外壁材3の内側に当接して存在しているために、シーリング材が一部で切れて破損等した場合でも、水などが外壁裏面と下地との間に存在する空間S2 まで浸入していくことを防止することができるとともに、翼片部11と先端部12と外壁裏面とで形成される空間S1 に浸入した水は、先端部12を超えて空間S2 まで浸入することができず、垂直方向の流路としての空間S1 を通り排出されることとなる。
【0018】
また、過酷な火炎に外壁が晒された場合には、外壁材が収縮し、シーリング材も燃えてなくなってしまうことが発生し、図2(b)に示したように、外部からの熱が、翼片部11と先端部12と外壁裏面とで形成される空間S1 に進入するが、先端部12が存在していることにより、壁体内空間S2 への熱の直接的な進入を防止することができることになる。従って、本発明のハット型ジョイナーを用いれば、外壁外部から、水や火や熱が、シーリング部分(外壁材の継目部分)を通って壁体内部に進入(浸入)することを効果的に防止することができる。
【0019】
本発明の効果を良好に発揮させる上で、ハット型ジョイナーの寸法を最適な範囲内にすることは重要であり、本発明者らの各種知見によれば、図5に示したように、ハット状中央凸部10の高さH1 は、一般に2〜40mmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは4〜30mmの範囲内であり、屈曲先端部12の高さH2 は、一般に1〜30mmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは2〜20mmの範囲内である。
翼片部11の長さWは、一般に15〜200mmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは50〜100mmの範囲内とすることである。
【0020】
また、ハット状中央凸部と翼片部と建築物外壁材とで囲まれて形成される空間部のハット型ジョイナー長さ方向に直角な方向の空間部断面積(図5の一点鎖線ハッチング部の面積)13は、20〜6000mm2 で(左右両側の合計ではこの2倍(40〜12000mm2 )となる)あることが、水などの排出流路を形成する上で効果的であり好ましい。
【0021】
本発明にかかるハット型ジョイナーの材質等は、従来から使用されているガルバリウム鋼板などの鋼板から成形されていれば良く、鋼板厚さは0.2mm〜1mm程度が好ましいが、本発明の効果を大きくする意味で、厚さなどをより厚くしてもよい。
【0022】
本発明にかかるハット型ジョイナーを使用して外壁材を建築物に取り付け施工するに際しては、翼片部の屈曲先端部が建築物外壁材の内面に当接させて施工することが重要である。当接せずに、隙間が存在して施工されていると、該隙間部分から水や熱が入り込み、上述した本発明の効果を得ることができないからである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明にかかるハット型ジョイナーの代表的な形状例をモデル的に示した概略モデル正面図である。
【図2】図2(a)、(b)は、図1に示した本発明にかかるハット型ジョイナーの使い方とその機能を説明する概略モデル正面図である。
【図3】図3は、従来のハット型ジョイナーの代表的な形状例をモデル的に示した概略モデル正面図である。
【図4】図4は、図3に示した従来のハット型ジョイナーの使われ方を説明する概略モデル正面図である。
【図5】図5は、図1に示した本発明にかかるハット型ジョイナーの代表的な形状例に関して、その寸法の好ましい範囲を説明するためにモデル的に示した概略モデル正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1:ハット型ジョイナー
2:シーリング材
3:外壁材
4:C型鋼柱
5:透湿防水シート
10:ハット状中央凸部
11:翼片部
12:翼片部の先端
13:ハット状中央凸部と翼片部と建築物外壁材とで囲まれて形成される空間部のハット型ジョイナー長さ方向に直角な方向の空間部断面積
1 :ハット状中央凸部10の高さ
2 :屈曲先端部12の高さ
W:翼片部の長さ
1 :翼片部11と翼片部先端部12と外壁裏面とで形成される空間
2 :外壁裏面と下地との間に存在する空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物外壁材の継目箇所の内側に用いられるハット型ジョイナーであり、ハット状中央凸部と、該ハット状中央凸部から左右に延びる翼片部とからなり、該翼片部の先端は、前記ハット状中央凸部の高さ方向に矩形に屈曲して延び、屈曲先端部は前記建築物外壁材に当接されて施工されるものであることを特徴とするハット型ジョイナー。
【請求項2】
ハット状中央凸部と翼片部と建築物外壁材とで囲まれて形成される空間部のハット型ジョイナー長さ方向に直角な方向の両側空間部合計断面積が40〜12000mm2 であることを特徴とする請求項1記載のハット型ジョイナー。
【請求項3】
建築物外壁材の継目箇所の内側にハット型ジョイナーを使用して外壁材を建築物に取り付け施工するに際して、ハット状中央凸部と、該ハット状中央凸部から左右に延びる翼片部とからなり、該翼片部の先端が前記ハット状中央凸部の高さ方向に矩形に屈曲して延びる構造を有するハット型ジョイナーを用いて、該屈曲先端部を建築物外壁材に当接させて施工することを特徴とする外壁材の継目部分の取付け施工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−70842(P2007−70842A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257288(P2005−257288)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(390031705)東レACE株式会社 (5)
【Fターム(参考)】