ハニカムフィルタ
【課題】高い捕集効率を実現するとともに、フィルタ使用時において連続的にフィルタの再生を行うことができ、圧力損失を低減することが可能なハニカムフィルタを提供する。
【解決手段】本発明のハニカムフィルタ1は、隔壁7を有するハニカム構造体2と目封止部とを備え、隔壁7が、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔8の内表面に酸化触媒11が担持され第一壁部7aと、バッファーとなる気孔率の高い第二壁部7bと、平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%の第三壁部7cとが、流入側の開口端部が開放され、流出側の開口端部が封止されたセル9aを区画する表面側から隔壁7の厚さ方向に積層された多孔質層によって構成されている。
【解決手段】本発明のハニカムフィルタ1は、隔壁7を有するハニカム構造体2と目封止部とを備え、隔壁7が、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔8の内表面に酸化触媒11が担持され第一壁部7aと、バッファーとなる気孔率の高い第二壁部7bと、平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%の第三壁部7cとが、流入側の開口端部が開放され、流出側の開口端部が封止されたセル9aを区画する表面側から隔壁7の厚さ方向に積層された多孔質層によって構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、高い捕集効率を実現するとともに、フィルタ使用時において連続的にフィルタの再生を行うことができ、圧力損失を低減することが可能なハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下「DPF」ということがある)に代表される集塵フィルタとして、ハニカム構造を有するセラミック製のフィルタ(ハニカムフィルタ)が使用されている。
【0003】
通常、このような目的で使用されるフィルタには、図14及び図15に示すように、多孔質の隔壁57によって、二つの端面の間を連通する、流体の流路となる複数のセル59が区画形成されたハニカム構造体52と、前記各セル59の二つの開口端部のうちの何れか一方を目封止するように、ハニカム構造体52の一方の端面側と他方の端面側とで相補的な市松模様状に配設された目封止部58とを備えた、ウォールフロー型のハニカムフィルタ51が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このハニカムフィルタ51の一方の端面53より粒子状物質(パティキュレート・マター:以下「PM」ということがある)を含む排ガスを通気させると、この排ガスは、ハニカムフィルタの一方の端面53から内部に流入し、排ガス中に含まれるPMが除去された後、他方の端面55から流出する。具体的には、まず排ガスは、このハニカムフィルタの一方の端面53において端部が封止されておらず他方の端面55において端部が封止されたセル59bに流入し、多孔質の隔壁57を通って、一方の端面53において端部が封止されるとともに他方の端面55において端部が封止されていないセル59aに移動し、このセル59aから排出される。そして、この際に隔壁57が濾過層となり、ガス中のPMが隔壁57に捕捉され隔壁57上に堆積する。
【0005】
このようなハニカムフィルタにおいては、フィルタを構成するハニカム構造体の隔壁上にPMが堆積することによって圧力損失が上昇する。このため、このようなハニカムフィルタにおいては、一定量のPMが隔壁上に堆積した場合には、ハニカムフィルタを強制的に高温にして、隔壁に堆積したPMを酸化除去することが行われている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−269585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したPMの酸化除去においては、燃料を過剰に噴射することによって燃焼させるため、燃料消費率が悪くなり、経済性が悪化するという問題があった。また、ハニカムフィルタが高温になるために、ハニカムフィルタが損傷を受けるという問題もあった。
【0008】
また、PMの堆積を少なくするために、多孔質の隔壁に対して、PMを酸化するための酸化触媒を担持させたものも提案されているが、PMの量が多い場合には、その隔壁上にPMが層状に堆積してしまい、酸化触媒とPMとの接触頻度が少なくなって十分な効果を得ることができないという問題があった。
【0009】
また、流体が隔壁を通過する際の表面側を細孔径の大きな多孔質体から構成し、且つ、隔壁の上記表面とは反対側を細孔径の小さな多孔質体から構成したハニカムフィルタも提案されているが、このようなハニカムフィルタは、PMが隔壁に堆積した場合に圧力損失が急激に上昇するという問題があった。
【0010】
また、単に圧力損失の上昇を軽減させるのであれば、例えば、細孔径の大きな多孔質体のみから隔壁を形成することも考えられるが、このようなハニカムフィルタは捕集効率が低く、上記したDPF等して用いることができないという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、高い捕集効率を実現するとともに、フィルタ使用時において連続的にフィルタの再生を行うことができ、圧力損失を低減することが可能なハニカムフィルタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ハニカムフィルタを構成するハニカム構造体の隔壁の少なくとも一部を、平均細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一つが所定の値を示す、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三層が前記隔壁の厚さ方向に積層されたものとすることによって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的には、本発明によれば、以下のハニカムフィルタが提供される。
【0013】
[1] 多孔質の隔壁を有し、前記隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体と、複数の前記セルのうち、所定のセルにおける前記流体が流出する流出側の開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける前記流体が流入する流入側の開口端部を目封止する目封止部と、を備え、前記隔壁の少なくとも一部は、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三つの壁部が、前記所定のセルを区画する表面側から前記隔壁の厚さ方向に積層されたものであり、前記第一壁部は、前記流出側の開口端部が目封止された前記所定のセルを区画する表面側に配置され、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されたものであり、前記第二壁部は、前記第一壁部の裏面に配置され、気孔率が、前記第1及び第三壁部の気孔率よりも高く、且つ気孔率の値が60%以上のものであり、前記第三壁部は、前記第二壁部の裏面に配置され、平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%のものであるハニカムフィルタ。
【0014】
[2] 前記所定のセルの水力直径が、前記残余のセルの水力直径と同等又はより大である前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0015】
[3] 前記セルの軸方向に垂直な断面における形状が三角形、四角形、又は四角形と八角形との組み合わせのいずれかの形状であり、前記流出側の開口端部が目封止された前記所定のセルと前記流入側の開口端部が目封止された前記残余のセルとが交互に配置されるように、前記目封止部が配設されている前記[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0016】
[4] 前記第二壁部は、気孔率が64%以上である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0017】
[5] 前記第一壁部は、平均細孔径が25μm以上である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0018】
[6] 前記第一壁部の細孔に占める、細孔径が10μm未満の細孔の容積割合が10%未満である前記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0019】
[7] 前記第二壁部は、前記第一壁部と前記第三壁部との間に形成された空隙により構成されたものである前記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0020】
[8] 前記第二壁部は、繊維状の多孔質材料によって構成されたものである前記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0021】
[9] 前記隔壁の少なくとも一部は、前記第三壁部の裏面に配置された第四壁部を更に有し、前記第四壁部は、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されたものである前記[1]〜[8]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0022】
本発明のハニカムフィルタは、高い捕集効率を実現するとともに、フィルタ使用時において連続的にフィルタの再生を行うことができ、圧力損失を低減することができる。
【0023】
即ち、本発明のハニカムフィルタは、粒子状物質(PM)を捕集する多孔質体としては比較的に平均細孔径の大きな細孔が形成されている第一壁部によって、排ガス中のPMの大半が捕集される。そして、この第一壁部に捕集されたPMは、第一壁部の細孔内に担持された酸化触媒によって酸化除去される。
【0024】
この際、第一壁部の酸化触媒によって、排ガスに含まれる一酸化窒素(NO)が酸化されて二酸化窒素(NO2)も生成される。このようにして生成された二酸化窒素によっても、PMの酸化が促進され、フィルタの再生(PMの酸化除去)が更に効果的に行われる。
【0025】
なお、本発明のハニカムフィルタにおいては、上記したように、第一壁部の細孔は、平均細孔径が比較的に大きなものであるため、PMの一部、例えば、粒子径の小さいPMは、第一壁部の細孔を通過してしまうことがある。このような第一壁部を通過したPMは、第一壁部よりも下流側に配置された第三壁部によって捕集され、捕集されたPMは、第一壁部にて生成された二酸化窒素によって酸化除去される。
【0026】
但し、上記した第一壁部と第三壁部とが隣接するように並べて配置した場合には、第一壁部の細孔の出口位置に対応する第三壁部に、第一壁部を通過した排ガスが局所的に集中してしまい、ハニカムフィルタの圧力損失が大きくなってしまう。
【0027】
本発明のハニカムフィルタにおいては、第一壁部を通過した排ガスが、第一壁部及び第三壁部よりも気孔率が高く、且つその気孔率が60%以上の第二壁部に一旦流入するように構成されているため、第二壁部がバッファーとなり、第三壁部表面の広い範囲に対して、より均一な圧力が掛かるように排ガスを通過させることができる。このように、第三壁部に局所的に排ガスが流入することを防止することができ、ハニカムフィルタ全体の圧力損失を良好に抑制することができる。また、第一壁部を通過したPMの一部は、この第二壁部内においても二酸化窒素によって酸化除去されるため、第三壁部によって除去すべきPMの量を少なくすることができ、圧力損失の上昇をより抑制することができる。また、流れが集中する部分へ局所的に堆積するPMの量を低減できるため、実質、排ガスがPM堆積部分を通過する通過厚さを小さくすることができ、且つPMの層を通過するガス流速も小さくなるため、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0029】
[1]ハニカムフィルタ:
図1は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示すハニカムフィルタを、セルが貫通する方向に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。また、図3は、図1に示すハニカムフィルタの隔壁を、セルを区画する表面に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【0030】
本発明のハニカムフィルタは、図1に示すように、多孔質の隔壁7を有し、この隔壁7によって流体の流路となる複数のセル9が区画形成されたハニカム構造体2と、複数の前記セル9のうち、所定のセル9aにおける流体が流出する側(以下、「流出側」というとがある)の開口端部を目封止するとともに、残余のセル9bにおける流体が流入する側(以下、「流入側」ということがある)の開口端部を目封止する目封止部8と、を備え、図2に示すように、隔壁7の少なくとも一部は、第一壁部7a、第二壁部7b、及び第三壁部7cの少なくとも三つの壁部が、所定のセル9aを区画する表面側から隔壁7の厚さ方向に積層された多孔質層によって構成されている。
【0031】
図2及び図3に示すように、第一壁部7aは、流出側の開口端部が目封止され、流入側の開口端部が開放された前記所定のセル9aを区画する表面側に位置するように配置され、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔8の内表面に酸化触媒11が担持された多孔質体である。
【0032】
また、第二壁部7bは、上記第一壁部7aの裏面、即ち、上記第一壁部7aの前記所定のセル9aを区画する面とは反対側の面に配置され、気孔率が、第一壁部7a及び第三壁部7cの気孔率よりも高く、且つ気孔率の値が60%以上のものである。
【0033】
第三壁部7cは、上記第二壁部7bの裏面、即ち、上記第二壁部7bの第一壁部7aが配置されている側とは反対側の面に配置され、平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%の多孔質体である。
【0034】
このように構成された本発明のハニカムフィルタ1は、高い捕集効率を実現するとともに、フィルタ使用時において連続的にフィルタの再生を行うことができ、圧力損失を低減することができる。
【0035】
即ち、本発明のハニカムフィルタに粒子状物質(PM)を含む排ガスを流入させると、フィルタに用いる多孔質体としては比較的に平均細孔径の大きな細孔が形成された第一壁部によってPMが捕集される。そして、この第一壁部に捕集されたPMは、細孔内に担持された触媒によって酸化除去され、フィルタの再生が行われる。
【0036】
この際、第一壁部の酸化触媒によって、排ガスに含まれる一酸化窒素(NO)も酸化されて二酸化窒素(NO2)が生成される。このようにして生成された二酸化窒素によっても、排ガス中に含まれるPMの酸化が促進され、フィルタの再生が更に効果的に行われる。
【0037】
なお、上記したように第一壁部は、比較的に平均細孔径が大きな細孔が形成されたものであるため、PMの一部、例えば、粒子径の小さいPM等は、第一壁部の細孔を通過してしまうことがある。このような第一壁部を通過したPMは、第一壁部よりも下流側に配置された第三壁部によって捕集され、捕集されたPMは、第一壁部にて生成された二酸化窒素によって酸化除去される。
【0038】
但し、上記した第一壁部を通過した排ガスが第三壁部に直接流入するような構成とした場合には、第一壁部の細孔の出口位置に対応する第三壁部に排ガスが局所的に集中してしまい、第三壁部における実質的な排ガスが流入する部位の面積が極めて小さくなり、ハニカムフィルタの圧力損失が大きく上昇してしまう。
【0039】
本発明のハニカムフィルタにおいては、第一壁部を通過した排ガスが、第一壁部及び第三壁部よりも気孔率が高く、且つ気孔率が60%以上の第二壁部に一旦流入するように構成されているため、第二壁部がバッファーとなり、第三壁部の表面の広い範囲に対して、より均一な圧力が掛かるように排ガスを流入させることができる。このため、第三壁部に局所的に排ガスが流入することを防止することができ、ハニカムフィルタ全体の圧力損失を良好に抑制することができる。また、第一壁部で生成された二酸化窒素によって、第一壁部を通過したPMの一部が、この第二壁部内においても酸化されるため、第三壁部によって除去すべきPMの量を少なくすることができ、圧力損失の上昇をより抑制することができる。
【0040】
従来、DPF等に用いられていたハニカムフィルタは、連続的に再生することができず、ハニカムフィルタを加熱して、隔壁上に堆積したPMを酸化除去しなければならない。具体的には、例えば、エンジンに燃料を過剰に供給し、ハニカムフィルタの隔壁上に堆積したPMを燃焼除去させる方法を挙げることができるが、このような方法では、燃料を過剰に消費するため、エンジンの燃焼消費率が悪くなるという問題がある。
【0041】
また、このような従来のハニカムフィルタは、一定量のPMが隔壁上に堆積した段階で定期的に再生を行うものであるため、再生を行うまでの期間においてハニカムフィルタの圧力損失は常に増大し続けており、再生を行うまではエンジン性能や燃料消費率を悪くしている。
【0042】
本発明のハニカムフィルタは、上記したように、第一壁部の細孔内に担持された酸化触媒と、一酸化窒素を酸化して生成された二酸化窒素とによって、フィルタの使用時において常にフィルタの再生を行うことができるように構成されているため、ハニカムフィルタの圧力損失を一定の水準に保つことができ、圧力損失の上昇を有効に防止することができる。即ち、定期的に特別な再生操作を必要とせず、常に、初期状態に近いフィルタ性能を発揮させることができる。
【0043】
なお、本明細書において、「平均細孔径」とは、ハニカムフィルタの断面SEM写真上で隔壁に平行な直線上の細孔空間部分にかかる線分長さ50個の平均値のことをいう。上記平均値が、その深さ(表面からの距離)の壁部の平均細孔径である。また、「気孔率」とは、ハニカムフィルタの断面SEM写真上で隔壁に平行な3mm以上の長さの線分の内、細孔空間部にかかる線分の長さの合計が全線分長さに占める割合のことをいう。上記割合が、その深さの壁部の気孔率である。
【0044】
このような本発明のハニカムフィルタは、ディーゼルエンジンから排出される排気ガスを浄化するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)として好適に用いることができる。
【0045】
なお、本発明のハニカムフィルタにおいては、特に限定されることはないが、前記所定のセル、即ち、流入側が開口したセルの水力直径が、前記残余のセル、即ち、流出側が開口したセルの水力直径と同等又はより大であることが好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタの初期の圧力損失を低減することができるとともに、捕集効率等の排ガスの処理能力を向上させることができる。
【0046】
[1−1]ハニカム構造体:
本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム構造体は、多孔質の隔壁を備え、前記隔壁によって流体の流路が区画形成されたものである。本発明のハニカムフィルタは、このハニカム構造体に形成されたセルのいずれか一方の開口端部が目封止部によって目封止されることによってフィルタを構成している。
【0047】
[1−1a]隔壁:
ハニカム構造体を構成する隔壁は、多孔質体によって構成されており、流体の流路となるセルを区画形成している。
【0048】
これまでに説明したように、本発明のハニカムフィルタにおける隔壁は、その少なくとも一部が、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三つの壁部が、前記所定のセルを区画する表面側から前記隔壁の厚さ方向に積層された多孔質層によって構成されている。
【0049】
即ち、第一壁部の細孔内にPMが捕集され、細孔の内部に担持された酸化触媒の作用によってPMが酸化除去される。更に、第一壁部の細孔を通過したPMは、緩衝層(バッファー層)として機能する第二壁部を通過した後、より平均細孔径の小さな第三壁部の細孔によって捕集され、排ガスに含まれる一酸化炭素が上記酸化触媒によって酸化された二酸化窒素によって、酸化除去される。
【0050】
なお、本発明のハニカムフィルタにおいては、上記した第一壁部、第二壁部、及び第三壁部は、明確な境界部分がなく、平均細孔径及び気孔率が徐々に変化して三層が構成されたものであってもよい。このような場合には、平均細孔径や気孔率が、上記したそれぞれの壁部の要件を満たす領域が、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部のそれぞれとなる。
【0051】
[1−1a−1]第一壁部:
第一壁部は、流入側の開口端部が解放され、且つ流出側の開口端部が目封止された所定のセルを区画する隔壁の表面側に配置されたものである。即ち、この第一壁部によって前記所定のセルが直接的に区画形成されている。
【0052】
そして、この第一壁部は、平均細孔径が20μm以上の多孔質体からなるものであり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されている。
【0053】
この第一壁部における細孔の平均細孔径の値は、一般的に用いられている従来公知のハニカムフィルタにおける隔壁の平均細孔径(例えば、10μmから20μm未満程度)と比較すると、大きなものとなっている。このため、第一壁部単独での捕集効率は落ちるものの、第一壁部の細孔が塞がれるまでPMが捕集されることはなく、隔壁の表面(即ち、第一壁部の表面)にまでPMが堆積してフィルタの圧力損失が上昇してしまう前に、細孔の内表面に担持した酸化触媒によって捕集したPMを酸化除去することができる。
【0054】
このような第一壁部は、例えば、コージェライト、炭化珪素(SiC)、アルミナタイタネート、窒化珪素、ムライト、焼結金属等を用いて形成することができる。
【0055】
また、この第一壁部は、繊維状の多孔質材料によって構成されたものであってもよい。具体的には、例えば、アルミナ、アルミナシリケート、シリカ等を主成分とする繊維からなる多孔質体や、生体溶解性繊維(生体溶解性ファイバーともいう)を含むものを挙げることができる。例えば、繊維状の多孔質材料としてアルミナシリケート繊維を用いる場合には、繊維径が4〜9μm、繊維長さが30〜500μmのものを好適に用いることができる。
【0056】
なお、生体溶解性繊維とは、生理学的液体中において非耐久性であるものをいう。また、生理学的液体とは、例えば、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム溶液)、緩衝溶液、疑似体液、血清が挙げられる。疑似体液は、人の血漿成分にほぼ等しくした水溶液である。
【0057】
第一壁部の厚さについては特に制限はないが、隔壁全体の厚さに対して、50〜90%の厚さであることが好ましく、70〜90%の厚さであることが更に好ましく、70〜80%の厚さであることが特に好ましい。
【0058】
第一壁部の厚さについては、ハニカム構造体の大きさや、セルの形状、隔壁の厚さ等によっても好ましい範囲は異なるが、例えば、150〜300μmであることが好ましく、210〜270μmであることが更に好ましく、210〜240μmであることが特に好ましい。
【0059】
また、第一壁部の平均細孔径は、20〜300μmであることが好ましく、25〜300μmであることが更に好ましく、40〜100μmであることが特に好ましい。このように構成することによって、圧力損失の上昇を良好に抑制することができる。なお、第一壁部の平均細孔径を25μm以上とすることによって、排ガスに含まれるPMによって第一壁部の細孔がより塞がり難くなり、細孔内にて捕集したPMを効率よく酸化除去することができる。一方、第一壁部の平均細孔径を300μm以下にすることによって、第一壁部の細孔径が過度に大きくなり過ぎることがなく、隔壁を破損し難いものとすることができる。なお、例えば、本発明のハニカム構造体をDPFとして用いる場合には、第一壁部の平均細孔径は20〜100μmであることが好ましい。
【0060】
また、特に限定されることはないが、第一壁部の気孔率は、45〜75%であることが好ましく、50〜65%であることが更に好ましい。このように構成することによって、この第一壁部によってより多くのPMを酸化除去することができ、高い捕集効率を実現するとともに、圧力損失の上昇を良好に抑制することができる。
【0061】
第一壁部の平均細孔径及び気孔率は、ハニカム構造体を成形するための坏土に使用する原料の粒子径や粒子径分布、原料に含まれる造孔材の粒子径や粒子径分布、坏土を成形して得られた成形体の焼成温度等によって調整することができる。
【0062】
また、特に限定されることはないが、本発明のハニカムフィルタにおいては、第一壁部の細孔に占める、細孔径が10μm未満の細孔の容積割合が10%未満であることが好ましく、5%未満であることが更に好ましい。このように構成することによって、第一壁部の細孔がPMによって塞がり難くなり、圧力損失の増加を有効に抑制することができる。また、触媒担持において、小細孔へまず、毛細現象により優先的に触媒コートスラリーが吸収されやすく、大きな細孔の表面への触媒コート量が十分でなくなり、全体として不均一に触媒が分布する形態となってしまい、触媒の性能を悪化させる要因になるため、10μm未満の細孔の容積割合を上記範囲未満にすることにより触媒性能も向上する。
【0063】
なお、上記した第一壁部の細孔に占める、細孔径が10μm未満の細孔の容積割合は、ハニカムフィルタの断面SEM写真上で隔壁に平行な直線上の細孔空間部分にかかる線分の長さが10μm未満である線分の、前記空間にかかる全線分個数に対する個数比率測定することによって求めることができる。
【0064】
また、この第一壁部の細孔の内表面に担持する触媒については、従来公知のDPF等においてPMを酸化するために用いられる酸化触媒と同様のものを好適に用いることができる。なお、特に限定されることはないが、本発明のハニカムフィルタにおいては、白金、パラジウム、及びセリアからなる群より選択される少なくとも一種を含む触媒を好適に用いることができる。
【0065】
また、第一壁部の細孔内に担持する触媒の量については特に制限はないが、ハニカムフィルタの全容積当り、0.2〜3g/リットルとすることが好ましい。
【0066】
なお、図2及び図4に示すハニカムフィルタ1においては、ハニカム構造体2を構成する隔壁7の主要部分(即ち、ハニカム構造体の骨格となる部分)が、第一壁部7aによって構成されており、この第一壁部7aの裏面側に第二壁部7bと第三壁部7cとが隔壁7の厚さ方向に積層された場合の例を示しているが、例えば、ハニカム構造体を構成する隔壁の主要部分を第三壁部によって構成し、この第三壁部の表面側に第二壁部と第一壁部とが隔壁の厚さ方向に積層されたものであってもよい。ここで、図4は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。なお、図4において、図2に示す吸収性物品の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
[1−1a−2]第二壁部:
第二壁部は、第一壁部の裏面に配置され、気孔率が、第一壁部及び第三壁部の気孔率よりも高く、且つ気孔率の値が60%以上のものである。この第二壁部は、第一壁部を通過した排ガスが第三壁部に流入する際の緩衝層(バッファー層)として機能する層である。
【0068】
第一壁部を通過した排ガスをこの第二壁部を通過させることによって、第三壁部に排ガスが流入し易くなり、ハニカムフィルタの圧力損失を低くすることができる。
【0069】
なお、本発明のハニカムフィルタにおいては、第二壁部の気孔率が64%以上であることが好ましく、80%以上であることが更に好ましい。このように構成することによって、第一壁部から第三壁部への排ガスの流れを良好に確保することができる。
【0070】
なお、このような第二壁部は、例えば、第一壁部を形成するための材料と同様のものに、得られる多孔質体の気孔率が上記値になるような量の公知の造孔材等を加えた材料を用いて形成することができる。
【0071】
また、この第二壁部は、第一壁部と同様に、繊維状の多孔質材料によって構成されたものであってもよい。具体的には、例えば、アルミナ、アルミナシリケート、シリカ等を主成分とする繊維からなる多孔質体や、生体溶解性繊維(生体溶解性ファイバーともいう)を含むものを挙げることができる。例えば、図5に示すハニカムフィルタ1は、第二壁部7bが、繊維状の多孔質材料によって構成された場合の例を示している。
【0072】
また、本発明のハニカムフィルタにおける第二壁部は、気孔率が100%の空隙、即ち、第一壁部と第三壁部との間に形成された空隙により構成されたものであってもよい。このように構成することによって、第一壁部から第三壁部への排ガスの流れを極めて良好に確保することができるとともに、第二壁部における排ガスが滞留することのできる容量が大きくなり、この第二壁部中における二酸化窒素によるPMの酸化除去が促進される。これによって、第三壁部にて処理(酸化除去)すべきPMの量を少なくすることができ、第三壁部に依存する圧力損失の上昇を低く抑えることができる。例えば、図6に示すハニカムフィルタ1は、第二壁部7bが、第一壁部7aと第三壁部7cとの間に形成された空隙により構成された場合の例を示している。
【0073】
ここで、図5及び図6は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。なお、図5及び図6において、図2に示す吸収性物品の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
また、この第二壁部の厚さについては、ハニカム構造体の大きさや、セルの形状、隔壁の厚さ等によっても好ましい範囲は異なるが、例えば、20〜300μmであることが好ましく、50〜200μmであることが更に好ましく、50〜100μmであることが特に好ましい。このように構成することによって、第一壁部から第三壁部への排ガスの流れを良好に確保することができる。
【0075】
[1−1a−3]第三壁部:
隔壁を構成する第三壁部は、第二壁部の裏面に配置され、平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%のものである。なお、第二壁部が単なる空隙によって構成されている場合には、第一壁部の裏面に、第二壁部に相当する隙間を空けた状態で第三壁部が配置される。
【0076】
この第三壁部は、第一壁部によって酸化除去しきれなかったPMを捕集し、捕集した成分を酸化除去し、排ガスを浄化するための多孔質体である。
【0077】
この第三壁部は、第一壁部より平均細孔径が小さい多孔質体から構成されており、第一壁部の細孔を通過したPMを良好に捕集することができる。なお、第三壁部によって捕集されたPMは、排ガスに含まれる一酸化窒素が酸化されて生成した二酸化窒素によって、常時連続的に酸化除去される。
【0078】
このような第三壁部は、例えば、第一壁部と同様の材料を用いて、得られる多孔質体の平均細孔径と気孔率とが上記値になるように造孔材等の量を調整することによって形成することができる。また、第三壁部は、繊維状の多孔質材料によって構成されたものであってもよい。具体的には、例えば、アルミナ、アルミナシリケート、シリカ等を主成分とする繊維からなる多孔質体や、生体溶解性繊維(生体溶解性ファイバーともいう)を含むものを挙げることができる。
【0079】
なお、上記したように繊維状の多孔質材料を用いて第三壁部を形成する場合には、繊維状の多孔質材料に、少量の繊維質間接着成分としてシリカ等の酸化物を加えたスラリーを用いて第三壁部を形成することが好ましい。
【0080】
また、本発明のハニカムフィルタの第三壁部は、平均細孔径が1〜15μmであるが、3〜8μmであることが好ましく、5〜8μmであることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタの圧力損失の上昇を抑制することができるとともに、捕集効率を向上させることができる。
【0081】
なお、平均細孔径が1μm未満であると、平均細孔径が小さくなり過ぎて、ハニカムフィルタの初期状態(PMが隔壁に堆積していない状態)での圧力損失が大きくなってしまうことがあり、また、排ガス浄化時における圧力損失が増大し易くなることがある。一方、平均細孔径が15μmを超えると、ハニカムフィルタの捕集効率が低下してしまうことがある。
【0082】
また、第三壁部の気孔率は、50〜85%であることが好ましく、50〜80%であることが更に好ましく、60〜80%であることが特に好ましい。このように構成することによって、第三壁部の流入する排ガスに含まれるPMを良好に除去することができる。
【0083】
なお、この第三壁部の厚さについては特に制限はないが、例えば、10〜200μmであることが好ましく、30〜150μmであることが更に好ましい。このように構成することによって、高い捕集効率を実現しつつ、圧力損失の上昇を効果的に抑制することができる。なお、第三壁部の厚さが薄すぎると、第一壁部を通過したPMを捕集しきれずに、捕集効率が低下してしまうことがある。一方、第三壁部が厚すぎると、ハニカムフィルタの初期の圧力損失が増大してしまうことがある。
【0084】
このような平均細孔径の多孔質体(第三壁部)は、従来のハニカムフィルタの隔壁として、単独の多孔質体として用いられることはあるが、このような細孔径の多孔質体のみから隔壁が構成されたハニカムフィルタでは、例えば、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを浄化するDPFとして用いた場合に、排ガスに含まれるPMの量が多く、また、粒子の大きさも比較的大きなものが多く含まれているため、細孔がPMによって短時間で塞がってしまい、圧力損失が急激に大きくなる。このため、このような従来のハニカムフィルタは、再生を頻繁に行わなくてはならなかった。
【0085】
本発明のハニカムフィルタにおいては、排ガス中に含まれるPMのうち、比較的に粒子径の大きなものを含め、大部分のPMを予め上記した第一壁部によって酸化除去することができるため、実際に第三壁部によって酸化除去しなければならないPMは、排ガスに含まれるPMのうちの一部であり、上記した平均細孔径及び気孔率の多孔質体であっても、PMの連続的な処理が十分に可能である。
【0086】
[1−1a−4]第四壁部:
本発明のハニカムフィルタにおいては、上記した隔壁が、第三壁部の裏面に配置された第四壁部を更に有するものであってもよい。この第四壁部は、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されたものである。
【0087】
このような第四壁部を更に有するものとすることによって、排ガス中の一酸化炭素(CO)やハイドロカーボン(HC)を無害な二酸化炭素(CO2)や水(H2O)に酸化して浄化することができる。
【0088】
例えば、図7及び図8に示すハニカムフィルタ1の隔壁7は、第一壁部7a、第二壁部7b、第三壁部7c及び第四壁部7dの四つの壁部が、流入側の開口端部が開放された所定のセル9aを区画する表面側から隔壁7の厚さ方向に積層された場合の例を示している。なお、ここで、図7は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。また、図8は、図7に示すハニカムフィルタの隔壁を、セルを区画する表面に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。なお、符号12は酸化触媒を示す。
【0089】
なお、この第四壁部は、これまでに説明した第一壁部と同様に構成された多孔質体を用いることができる。例えば、第四壁部の平均細孔径は、20〜300μmであることが好ましく、40〜100μmであることが更に好ましい。このように構成することによって、上記した一酸化炭素等のガス成分の浄化を良好に行うことができる。なお、例えば、本発明のハニカム構造体をDPFとして用いる場合には、第四壁部の平均細孔径は20〜100μmであることが好ましい。
【0090】
この第四壁部の厚さについては、ハニカム構造体の大きさや、セルの形状、隔壁の厚さ等によっても好ましい範囲は異なるが、例えば、50〜300μmであることが好ましく、100〜200μmであることが更に好ましく、150〜200μmであることが特に好ましい。また、特に限定されることはないが、第一壁部の気孔率は、45〜75%であることが好ましく、50〜65%であることが更に好ましい。これにより、圧力損失の上昇を抑制することができるとともに、一酸化炭素等のガス成分の浄化を良好に行うことができる。
【0091】
なお、第四壁部には、第一壁部と同様に酸化触媒を担持する以外に、バリウム(Ba)、カリウム(K)等を含む、NOx吸蔵還元触媒を担持することもでき、この場合、NOxの浄化も合わせて可能である。
【0092】
また、本発明のハニカムフィルタにおいては、この第四壁部と上記した第一壁部とが一体的に構成されたものであってもよい。即ち、例えば、所定の多孔質材料を用いて、第一壁部と第四壁部との相互間に、第二壁部と第三壁部とを配置することができるような隙間を設けた状態で一体的に形成されたものをハニカム構造体の骨格とし、上記第一壁部と第四壁部との隙間に、第二壁部と第三壁部とが配置されたハニカムフィルタであってもよい。
【0093】
例えば、図9に示すハニカムフィルタ1は、第一壁部7aと第四壁部7dとが一体的に形成され、第一壁部7aと第四壁部7dとの隙間における第四壁部7dの表面に膜状の第三壁部7cが配置され、第一壁部7aと第三壁部7cと間には、空隙によって第二壁部7bが構成された場合の例を示している。
【0094】
また、例えば、図10に示すハニカムフィルタ1は、第一壁部7aと第四壁部7dとが一体的に形成され、第一壁部7aと第四壁部7dとの隙間に、繊維状の多孔質材料からなる第二壁部7bと、膜上の第三壁部7cとが配置された場合の例を示している。
【0095】
ここで、図9及び図10は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。なお、図9及び図10において、図7に示す吸収性物品の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0096】
[1−1b]セル:
ハニカム構造体を構成する隔壁によって区画形成されるセルは、流体、特に、排気ガスの流路となるものである。流入側が開口したセル(所定のセル)に流入した排ガスは、セルを区画形成する隔壁を通過して、流出側が開口した隣接するセル(残余のセル)に移動する際に浄化される。
【0097】
セルの形状(セルの軸方向に垂直な断面における形状)については特に制限はないが、三角形、四角形、又は四角形と八角形との組み合わせのいずれかの形状であることが好ましい。なお、本発明のハニカムフィルタにおいては、セルの形状は、四角形であることが好ましい。このような四角形のセルは、上記した所定のセルと残余のセルとを規則的に交互に配置することができるため、例えば、流入側の開口端部が開口した所定のセルが隣接して配置されるようなことがなく、隔壁全てを、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三つの壁部が隔壁の厚さ方向に積層された構成とすることができ、フィルタの再生を効率よく行うことができる。ここで、図11は、セルの形状が四角形と八角形との組み合わせ、即ち、四角形のセルと八角形のセルとが交互に配置されたハニカムフィルタの例を示し、図12は、セルの形状が三角形のハニカムフィルタの例を示している。
【0098】
また、特に限定されることはないが、本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム構造体のセル密度は、5〜80セル/cm2であることが好ましく、14〜60セル/cm2であることが更に好ましい。
【0099】
また、セルを区画形成する隔壁の厚さは、200〜800μmであることが好ましく、200〜600μmであることが更に好ましく、300〜400μmであることが特に好ましい。
【0100】
[1−2]目封止部:
本発明のハニカムフィルタに用いられる目封止部は、従来、ハニカム構造体のセルの開口端部を目封止してフィルタとして用いる際に使用される目封止部と同様に構成されたものを用いることができる。
【0101】
この目封止部は、セルの軸方向に垂直な断面における形状が四角形である場合には、前記所定のセルと前記残余のセルとが交互に配置されるように、それぞれのセルの開口端部に配設されていることが好ましい。
【0102】
なお、この目封止部は、隔壁と同一材料から構成されたものであることが好ましいが、同一材料からなり、且つ気孔率が隔壁より高く、ヤング率が隔壁より小さいものであることが好ましい。このようにすることにより、熱膨張の差による破損を防止することができる。
【0103】
[2]ハニカムフィルタの製造方法:
次に、本発明のハニカムフィルタの製造方法について具体的に説明する。本発明のハニカムフィルタを製造する際には、まず、ハニカムフィルタを構成するハニカム構造体を製造する。
【0104】
従来のハニカム構造体は、隔壁が一種類の多孔質材料から構成されたものであるため、得られるハニカム構造体の細孔径や気孔率を考慮して成形用坏土を調製し、得られた成形用坏土を押出成形することによって製造することができるが、本発明のハニカムフィルタに用いられるハニカム構造体は、隔壁が少なくとも三つの壁部が積層した積層体であるため、まず、隔壁を構成する層のうちの一つの壁部からなるハニカム構造体の骨格(以下、「ハニカム構造前駆体」ということがある)を製造する。
【0105】
第一壁部を用いてハニカム構造前駆体を製造する場合には、上述した第一壁部を構成する多孔質材料を混合、混練して、ハニカム構造前駆体用の成形用坏土を調製する。例えば、コージェライト化原料に、水等の分散媒、及び造孔材を加え、更に、有機バインダと分散剤を加えて混練し、粘土状の坏土を形成する。コージェライト化原料(成形原料)を混練して成形用坏土を調製する手段は、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0106】
コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライトとなる原料を意味し、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料である。具体的に、タルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、及びシリカの中から選ばれた複数の無機原料を上記化学組成となるような割合で含むものが挙げられる。
【0107】
造孔材としては、焼成工程により飛散消失する性質のものであればよく、コークス等の無機物質や発泡樹脂等の高分子化合物、澱粉等の有機物質等を単独で用いるか組み合わせて用いることができる。
【0108】
有機バインダとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を使用することができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0109】
分散剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を使用することができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0110】
次に、得られた成形用坏土を、例えば、図4に示すハニカムフィルタ1における第一壁部7aに相当する隔壁を有するハニカム成形体を成形する。
【0111】
ハニカム成形体を作製する方法は、特に制限はなく、押出成形、射出成形、プレス成形等の従来公知の成形法を用いることができる。中でも、上述のように調製した成形坏土を、所望のセル形状、隔壁の厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法等を好適例として挙げることができる。
【0112】
なお、この際、第一壁部の一方の表面(裏面)側には、本発明のハニカムフィルタにおける第二壁部、及び第三壁部を少なくとも配置して隔壁を形成するため、第一壁部の裏面によって区画されるセルの水力直径を、最終製品におけるセルの水力直径よりも大きくなるようにハニカム成形体を製造する。
【0113】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥する。乾燥の方法については特に制限はないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。中でも、成形体全体を迅速且つ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法を好適例として挙げることができる。
【0114】
次に、得られたハニカム乾燥体を本焼成する前に仮焼して仮焼体を作製する。仮焼とは、ハニカム成形体中の有機物(例えば、有機バインダ、分散剤、造孔材等)を燃焼させて除去する操作を意味する。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、例えば、10〜100時間程度とすることが好ましい。
【0115】
次に、得られた仮焼体を焼成(本焼成)することによって、ハニカム構造前駆体を得る。本発明において、本焼成とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の居度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度及び時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト原料を焼成する場合には、1410〜1440℃で焼成することが好ましい。また、焼成時間としては、3〜10時間程度が適当である。
【0116】
このようにしてハニカム構造前駆体を得ることができる。なお、このハニカム構造前駆体における隔壁は、本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム構造体の第一壁部となる。このため、以下の方法によって、得られたハニカム構造前駆体の隔壁、即ち、本発明のハニカムフィルタにおける第一壁部の裏面に第二壁部と第三壁部とを形成する。
【0117】
第二壁部と第三壁部とを形成する際には、まず、ハニカム構造前駆体の端面におけるセルの開口端部を交互に塞いで市松模様状にマスクを施す。上記マスクは、第一壁部の表面側によって区画されたセルの開口端部を塞ぐように、即ち、第一壁部の裏面によって区画されたセルの開口端部が開放されるようにする。
【0118】
その後、第二壁部を形成するための成形原料を含むスラリー(以下、第二壁部用スラリーということがある)をマスクされていないセルの開口端部から流し込み、第一壁部の裏面に、上記第二壁部用スラリーからなる層を形成する。この層が隔壁を構成する第二壁部となる。第二壁部用スラリーからなる層を形成する際には、スラリー過剰分をエアーで吹き飛ばして、所定の厚さの層を形成することが好ましい。
【0119】
この第二壁部用スラリーとしては、コージェライト化原料に、有機バインダ及び造孔材を大量に含み、更に、水又はアルコールを加えて調製されたものを用いることができる。有機バインダと造孔材の量については、第一壁部を製造する際に使用した量よりも多く、且つ、この第二壁部用スラリーによって形成された層を乾燥又は焼成した際に、得られる多孔質体の気孔率が60%以上になるような量とする。
【0120】
なお、第二壁部として、繊維状の多孔質材料によって構成されたものを形成する場合には、繊維状の多孔質材料に、接着用の酸化物と、水又はアルコールとを混合したスラリーを用いることができる。
【0121】
その後、ハニカム構造体の端面に配置したマスクを剥がして、上記第二壁部用スラリーからなる層を乾燥する。乾燥条件については特に制限はないが、例えば、90〜130℃で、約1〜3時間乾燥する。これにより、上記第二壁部用スラリーからなる層が第二壁部となる。
【0122】
次に、再度、ハニカム構造前駆体の端面におけるセルの開口端部を交互に塞いで市松模様状にマスクを施す。
【0123】
その後、第三壁部を形成するための成形原料を含むスラリー(以下、第三壁部用スラリーということがある)をマスクされていないセルの開口端部から流し込み、第二壁部の裏面に、上記第三壁部用スラリーからなる層を形成する。この層が隔壁を構成する第三壁部となる。
【0124】
この第三壁部用スラリーとしては、コージェライト化原料に、有機バインダ及び造孔材を大量に含み、更に、水又はアルコールを加えて調製されたものを用いることができる。有機バインダと造孔材の量については、第三壁部用スラリーによって形成された層を乾燥又は焼成した際に、得られる多孔質体の平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%になるような量とする。
【0125】
このようにして得られた上記第三壁部用スラリーからなる層についても、上記第二壁部用スラリーからなる層と同様の方法によって乾燥する。これにより、上記第三壁部用スラリーからなる層が第三壁部となる。
【0126】
なお、例えば、図6に示すように、第二壁部7bが、第一壁部7aと第三壁部7cとの間に形成された空隙により構成された場合には、図6に示す第一壁部7aと第三壁部7cとの形状、即ち、第二壁部7bに相当する空隙が形成されるような形状に、第一壁部7aを形成する材料を用いて隔壁を形成した後、第三壁部7cに対応する部分に対して、その平均細孔径が1〜15μmで、気孔率が50〜90%となるように、小細孔形成用のスラリーを更に含浸させて、第三壁部7cを形成する。
【0127】
なお、選択的に一部の隔壁にスラリーを含浸させる方法としては、スラリーを流し込みたい部分に孔の空いたシートを貼り付けるか、又は、シートを貼り付けた後、必要部分に孔を空けて、このシートを介してスラリーを流し込むことにより可能である。
【0128】
以上のようにして、隔壁の少なくとも一部が、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三つの壁部が隔壁の厚さ方向に積層して構成されたハニカム構造体を得ることができる。
【0129】
なお、本発明のハニカムフィルタを製造する際には、第三壁部を形成した後に、必要に応じて、第三壁部の裏面に第四壁部を形成してもよい。第四壁部を形成する際にも、上記した第三壁部等と同様に、所定の成形原料を含むスラリー(以下、第四壁部用スラリーということがある)をマスクされていないセルの開口端部から流し込み、第三壁部の裏面に、上記第四壁部用スラリーからなる層を形成する。この層が隔壁を構成する第四壁部となる。
【0130】
その後、第一壁部の細孔内にベータアルミナを主成分とし、この細孔表面に白金粒子を担持した酸化触媒をコートする。ベータアルミナにジルコニア、セリア等の酸化物を付加的に混合してもよい。酸化触媒を担持する方法については特に制限はなく、従来公知のハニカムフィルタにおいて触媒を担持する方法を用いることができる。具体的には、例えば、まず、担持する酸化触媒を含有する触媒スラリーを調製する。次に、この触媒スラリーを、吸引法等の方法により、ハニカム構造体の隔壁における第一壁部の細孔内表面にコートする。その後、室温又は加熱条件下で乾燥する。
【0131】
また、アルミナ解砕粒子径を調整し、これを水或いはアルコールとの混合によりスラリー化し、第一壁部側から第三壁部側へ向かって流れるようにスラリー液を吸引することにより、第一壁部の細孔内でアルミナ粒子の大部分を捕集させることが可能であり、これを乾燥することにより、第一壁部の細孔内表面に酸化触媒をコートすることが可能である。微量の酸化触媒が第二壁部へ到達しても第二壁部の気孔率が高いので圧力損失の上昇等の問題は生じない。
【0132】
なお、第三壁部の裏面に第四壁部を形成している場合には、この第四壁部の細孔内にも上記した方法と同様の方法によって酸化触媒を担持する。
【0133】
その後、所定のセルにおける流体が流出する側(流出側)の開口端部と、残余のセルにおける流体が流入する側(流入側)の開口端部とを、目封止部によって目封止する。目封止の方法についても特に制限はなく、従来公知のハニカムフィルタにおいてハニカム構造体のセルの開口端部を目封止する方法と同様の方法を好適に用いることができる。
【0134】
例えば、目封止の方法としては、まず、ハニカム構造体の一方の端面にマスクを貼着する。マスクの貼着は、粘着シートをハニカム構造体の一方の端面に貼着し、画像処理を利用したレーザ加工により、その粘着シートの目封止すべきセルに対応する部分のみを孔開けすることによって行うことができる。次に、マスクが貼着されたハニカム構造体の一方の端面を、容器に貯めた目封止材料(セラミックスラリー)の中に浸漬し、目封止すべきセルに目封止材料を充填する。このハニカム構造体の他方の端面についても、同様にして、目封止すべきセルに目封止材料を充填する。そして、セルの開口端部に充填した目封止材料を乾燥することによって目封止することができる。
【0135】
なお、上記した酸化触媒の担持や、セルの開口端部の目封止については、必ずしもハニカム構造体を製造した後に行わなければならないものではなく、上記したハニカム構造体を製造する工程の途中で行ってもよい。
【0136】
また、本発明のハニカムフィルタの製造方法としては、上記方法とは異なり、例えば、まず、第三壁部からなる隔壁を有するハニカム構造前駆体を製造し、このハニカム構造前駆体の第三壁部の一方の表面(表面)に第二壁部と第一壁部とを順次形成してハニカム構造体を得、得られたハニカム構造体のセルの開口端部を目封止してもよい。
【0137】
なお、このように、第三壁部からなる隔壁を有するハニカム構造前駆体を製造する場合には、第一壁部を形成する段階で、第三壁部の裏面に第四壁部を同時形成してもよい。上記したように、第一壁部と第四壁部とは、同一構成の多孔質体を用いることができるため、第一壁部用スラリーを、ハニカム構造前駆体の全てのセルの開口部から流入させて、第二壁部の表面に形成された層によって第一壁部を形成し、第三壁部の裏面に形成された層によって第四壁部を形成することができる。
【実施例】
【0138】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0139】
[平均細孔径(μm)]:ハニカムフィルタの断面SEM写真上で隔壁に平行な直線上の細孔空間部分にかかる線分長さ50個の平均値を測定することによって、平均細孔径(μm)を測定した。
【0140】
[気孔率(%)]:ハニカムフィルタの断面SEM写真上で隔壁に平行な3mm以上の長さの線分の内、細孔空間部にかかる線分の長さの合計が全線分長さに占める割合を測定することによって、気孔率(%)を測定した。
【0141】
[PM堆積時間(h)]:ハニカムフィルタに、粒子状物質(PM)を含む排ガスを通気し、3g/LのPMが堆積するまでの時間(h)を測定した。なお、ハニカムフィルタに通気する排ガスは、300℃で、0.5g/hのPMが含まれている。
【0142】
[PM堆積圧力損失(kPa)]:ガス差圧計によってPM堆積圧力損失(kPa)を測定した。
【0143】
[PM捕集効率(%)]:ハニカムフィルタを排ガスの流路内に設置し、このハニカムフィルタの上流側と下流側とのそれぞれから、バルブを介した配管により排ガスを一定時間サンプリングした。サンプリングした排ガスをろ紙に通過させ、ろ紙の質量の増加を計測し、上流側と下流側との排ガス中のPM濃度を求め、得られたそれぞれのPM濃度の比を算出することによってPM捕集効率(%)を測定した。
【0144】
[CO検出量(ppm)]:ハニカムフィルタを通過した後のガスのCOの濃度(ppm)を排ガス分析計を用いて測定し、得られた測定値をCO検出量とした。
【0145】
[総合評価]:PM堆積圧力損失が7.0kPa未満で、PM捕集効率が80%以上、且つPM堆積時間が10h以上を合格「○」とし、それ以外のものは不合格「×」とした。
【0146】
(実施例1)
実施例1のハニカムフィルタとして、図13に示すような、ハニカム構造体2の骨格となる部分が第三壁部7cによって構成され、この第三壁部7cの表面側に、第二壁部7bと第一壁部7aとが隔壁7の厚さ方向に積層され、更に、第三壁部7cの裏面に第四壁部7dが配置されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。
【0147】
まず、第三壁部からなるハニカム構造前駆体を成形するための成形用坏土を調製した。成型用坏土は、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水35質量部、造孔材5質量部を加え、更に、有機バインダ6質量部と分散剤0.5質量部を加えて、ニーダーを用いて混練して調製した。コージェライト化原料としては、シリカ42〜56質量%、アルミナ30〜45質量%、マグネシア12〜16質量%の範囲に入る化学組成比率を満足する混合比率の従来公知のコージェライト化原料を用いた。
【0148】
次に、この得られた成型用坏土を、所望のセル形状、隔壁の厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を作製した。
【0149】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥し、得られたハニカム乾燥体を、800℃で、10時間仮焼して仮焼体を得、得られた仮焼体を、1430℃で、10時間焼成して、第三壁部からなるハニカム構造前駆体を作製した。
【0150】
次に、ハニカム構造前駆体の端面におけるセルの開口部を交互に塞いで市松模様状にマスクを施し、第二壁部を成形するためのスラリーと、第一壁部及び第四壁部を成形するためのスラリーとを順次流し込み、第二壁部、第一壁部、及び第四壁部を成形した。
【0151】
具体的には、まず、第二壁部を形成するための、第二壁部用スラリーを調製し、得られた第二壁部用スラリーを、ハニカム構造前駆体のマスクされていないセルの開口部から流し込み、エアーにより過剰分を吹き飛ばすことによって、第二壁部用スラリーからなる層を形成した。その後、第二壁部用スラリーを、90〜130℃で、約1〜3時間乾燥して第二壁部を形成した。
【0152】
第二壁部用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水35質量部、造孔材10質量部を加え、更に、有機バインダ10質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0153】
次に、第一壁部及び第四壁部を形成するための、第一壁部用スラリーを調製し、ハニカム構造前駆体の全てのセルの開口部から、第一壁部用スラリーを流入させて、第二壁部の表面に第一壁部を形成し、第三壁部の裏面に第四壁部を同時形成した。
【0154】
第一壁部用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水200質量部、造孔材10質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0155】
このようにして、第一壁部、第二壁部、第三壁部、及び第四壁部の四つの壁部が、隔壁の厚さ方向に積層したハニカム構造体を製造した。以下、図13に示すような、ハニカム構造体の構造を構造Aとした。
【0156】
次に、第一壁部及び第四壁部の細孔内に酸化触媒を担持し、得られたハニカム構造体の所定のセルにおける流体が流出する側(流出側)の開口端部と、残余のセルにおける流体が流入する側(流入側)の開口端部を目封止してハニカムフィルタ(実施例1)を製造した。表1に、第一壁部、第二壁部、第三壁部の平均細孔径と気孔率とを示す。また、表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
(実施例2〜7、及び比較例1〜5)
各壁部の平均細孔径と気孔率が表1に示すような値であるとともに、セルの水力直径が表2に示すような値であること以外は、実施例1のハニカムフィルタにおけるハニカム構造体の構造Aと同様の構造のハニカム構造体を備えたハニカムフィルタを製造した。なお、実施例7のハニカムフィルタにおいては、第四壁部の細孔内に酸化触媒が担持されておらず、また、比較例5のハニカムフィルタにおいては、第一壁部の細孔内に酸化触媒が担持されていない。表2に、実施例2〜7、及び比較例1〜5のPM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0160】
(実施例8)
実施例8のハニカムフィルタとして、ハニカム構造体の骨格となる部分が第三壁部によって構成され、この第三壁部の表面側に、第二壁部と第一壁部とが隔壁の厚さ方向に積層されたハニカム構造体を備えたフィルタを製造した。
【0161】
まず、第三壁部からなるハニカム構造前駆体を成形するための成形用坏土を調製した。成型用坏土は、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水36質量部、造孔材5質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて、ニーダーを用いて混練して調製した。コージェライト化原料としては、実施例1に用いたコージェライト化原料と同様に構成されたものを用いた。
【0162】
次に、この得られた成型用坏土を、所望のセル形状、隔壁の厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を作製した。
【0163】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥し、得られたハニカム乾燥体を、800℃で、10時間仮焼して仮焼体を得、得られた仮焼体を、1420℃で、10時間焼成して、第三壁部からなるハニカム構造前駆体を作製した。
【0164】
次に、ハニカム構造前駆体の端面におけるセルの開口部を交互に塞いで市松模様状にマスクを施し、第二壁部と第一壁部とを成形するためのスラリーを順次流し込み、第二壁部と第一壁部とを成形した。
【0165】
具体的には、まず、第二壁部を形成するための、第二壁部用スラリーを調製し、得られた第二壁部用スラリーを、ハニカム構造前駆体のマスクされていないセルの開口部から流し込み、エアーにより過剰分を吹き飛ばすことによって、第二壁部用スラリーからなる層を形成した。その後、第二壁部用スラリーを、90〜130℃で、約1〜3時間乾燥して第二壁部を形成した。
【0166】
第二壁部用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水200質量部、造孔材25質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0167】
次に、第一壁部を形成するための、第一壁部用スラリーを調製し、上記した方法と同様の方法によって、第一壁部を形成した。
【0168】
第一壁部用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水200質量部、造孔材15質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0169】
このようにして、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の三つの壁部が、隔壁の厚さ方向に積層したハニカム構造体を製造した。以下、ハニカム構造体の骨格となる部分が第三壁部によって構成された実施例8のハニカムフィルタの構造を、構造Bとした。
【0170】
次に、第一壁部及び第四壁部の細孔内に酸化触媒を担持し、得られたハニカム構造体の所定のセルにおける流体が流出する側(流出側)の開口端部と、残余のセルにおける流体が流入する側(流入側)の開口端部を目封止してハニカムフィルタ(実施例8)を製造した。表1に、第一壁部、第二壁部、第三壁部の平均細孔径と気孔率とを示す。また、表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0171】
(実施例9)
第一壁部用スラリーとして、アリミノシリケート繊維を含むスラリーを用い、このスラリーを霧吹きにより霧化し、エアーとともにマスクをした側から吸引して層を形成し、この層を乾燥して第一の壁部を形成したこと以外は、実施例8と同様に構成されたハニカムフィルタ(実施例9)を製造した。実施例9におけるハニカム構造体の構造を、構造Cとした。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0172】
(実施例10)
実施例10のハニカムフィルタとして、図4に示すような、ハニカム構造体2の骨格となる部分が第一壁部7aによって構成され、この第一壁部7aの裏面に、第二壁部7bと第三壁部7cとが隔壁7の厚さ方向に積層されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。
【0173】
まず、第一壁部からなるハニカム構造前駆体を成形するための成形用坏土を調製した。成型用坏土は、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水35質量部、造孔材15質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて、ニーダーを用いて混練して調製した。コージェライト化原料としては、実施例1に用いたコージェライト化原料と同様に構成されたものを用いた。
【0174】
次に、この得られた成型用坏土を、所望のセル形状、隔壁の厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を作製した。
【0175】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥し、得られたハニカム乾燥体を、800℃で、8時間仮焼して仮焼体を得、得られた仮焼体を、1430℃で、12時間焼成して、第一壁部からなるハニカム構造前駆体を作製した。
【0176】
次に、ハニカム構造前駆体の端面におけるセルの開口部を交互に塞いで市松模様状にマスクを施し、第二壁部と第三壁部とを成形するためのスラリーを順次流し込み、第二壁部と第三壁部とを成形した。
【0177】
具体的には、まず、第二壁部を形成するための、第二壁部用スラリーを調製し、得られた第二壁部用スラリーを、ハニカム構造前駆体のマスクされていないセルの開口部から流し込み、エアーにより過剰分を吹き飛ばすことによって、第二壁部用スラリーからなる層を形成した。その後、第二壁部用スラリーを、90〜130℃で、約1〜3時間乾燥して第二壁部を形成した。
【0178】
第二壁部用スラリーは、コージェライト化原料100部に、分散媒としての水200部、造孔材20質量部を加え、更に、有機バインダ8質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0179】
次に、第三壁部を形成するための、第三壁部用スラリーを調製し、上記した方法と同様の方法によって、第三壁部を形成した。
【0180】
第三壁部用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水200質量部、造孔材10質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0181】
このようにして、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の三つの壁部が、隔壁の厚さ方向に積層したハニカム構造体を製造した。以下、図4に示すような、ハニカム構造体2の骨格となる部分が第一壁部7aによって構成され構造を、構造Dとした。
【0182】
次に、第一壁部の細孔内に酸化触媒を担持し、得られたハニカム構造体の所定のセルにおける流体が流出する側(流出側)の開口端部と、残余のセルにおける流体が流入する側(流入側)の開口端部を目封止してハニカムフィルタ(実施例10)を製造した。表1に、第一壁部、第二壁部、第三壁部の平均細孔径と気孔率とを示す。また、表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0183】
(実施例11)
第三壁部用スラリーとして、アリミノシリケート繊維と、繊維質間接着成分としてのシリカを含むスラリーを用いて層を形成し、この層を乾燥して第三の壁部を形成したこと以外は、実施例10と同様に構成されたハニカムフィルタ(実施例11)を製造した。実施例11におけるハニカム構造体の構造を、構造Eとした。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0184】
(実施例12)
実施例12のハニカムフィルタとして、図6に示すような、第二壁部7bが、第一壁部7aと第三壁部7cとの間に形成された空隙により構成されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。実施例12におけるハニカム構造体の構造を、構造Fとした。
【0185】
実施例12においては、第一壁部と第三壁部とが別々の多孔質材料で構成され、その間に第二壁部の厚さに相当する空隙を有する形状のハニカム構造前駆体を得、得られたハニカム構造前駆体における第三壁部のみに、小細孔形成用のスラリーを含浸させてハニカム構造体を得、実施例1と同様の方法によって目封止を行いハニカムフィルタを製造した。第三壁部のみに選択的にスラリーを含浸させる方法としては、スラリーを流し込みたい部分に孔の空いたシートを貼り付けてマスクすることにより行うことができる。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0186】
(実施例13)
実施例13のハニカムフィルタとして、図9に示すような、第一壁部7aと第四壁部7dとが一体的に形成され、第一壁部7aと第四壁部7dとの隙間における第四壁部7dの表面に膜状の第三壁部7cが配置され、第一壁部7aと第三壁部7cと間には、空隙によって第二壁部7bが構成されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。実施例13におけるハニカム構造体の構造を、構造Gとした。
【0187】
実施例13のハニカムフィルタは、まず、実施例12における構造Fのハニカム構造体と同構造のハニカム構造体を作製し、次に、ハニカム構造体の一方の端面において、第二壁部となる空隙部分のみが開口するようにシートを貼り付けてマスクを施し、その反対側の端面においては、残余のセル9b(図9参照)の開口部のみが開放されるようにシートを貼り付けてマスクを施した。
【0188】
その後、繊維状の多孔質材料、接着成分、バインダ、及び水からなるスラリーの霧滴とエアーとを、一方の端面から第二壁部7b(図9参照)となる空隙部分に吸い込ませるようにし、反対側端面からのみエアーが流出するようして、第四壁部7d(図9参照)の表面に、上記スラリー霧滴によって形成された第三壁部7c(図9参照)を形成してハニカムフィルタを製造した。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0189】
(実施例14)
実施例14のハニカムフィルタとして、図5に示すような、第二壁部7bが、繊維状の多孔質材料によって構成されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。実施例14におけるハニカム構造体の構造を、構造Hとした。
【0190】
実施例14のハニカムフィルタは、まず、実施例12における構造Fのハニカム構造体と同構造のハニカム構造体を作製し、そのハニカム構造体の第二壁部となる空隙部分に繊維状の多孔質材料を充填し、その両端を目封止することによってハニカムフィルタを製造した。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0191】
(実施例15)
実施例15のハニカムフィルタとして、図10に示すような、第一壁部7aと第四壁部7dとが一体的に形成され、第一壁部7aと第四壁部7dとの隙間に、繊維状の多孔質材料からなる第二壁部7bと、膜上の第三壁部7cとが配置されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。実施例15におけるハニカム構造体の構造を、構造Iとした。
【0192】
実施例15のハニカムフィルタは、まず、実施例13における構造Gのハニカム構造体と同構造のハニカム構造体を作製し、そのハニカム構造体の第二壁部となる空隙部分に繊維状の多孔質材料を充填し、その両端を目封止することによってハニカムフィルタを製造した。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0193】
(結果)
本実施例のハニカムフィルタは、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、及び総合評価の全てにおいて良好な結果を得ることができた。また、第四壁部を有し、第四壁部の細孔内に酸化触媒を担持したものは、CO検出量が少なく、特に良好な結果を得ることができた。
【0194】
一方、比較例1のハニカムフィルタは、第一壁部の平均細孔径が小さすぎるため、PM堆積時間が極めて短く、フィルタ使用時において連続的な再生が不可能であった。また、比較例2のハニカムフィルタは、第三壁部の平均細孔径が大きすぎるため、PM捕集効率が低く、フィルタとして用いることは困難なものであった。
【0195】
比較例3のハニカムフィルタは、第三壁部に気孔率が低すぎ、また、比較例4のハニカムフィルタは、第二壁部に気孔率が低すぎるため、PM堆積時の圧力損失(PM堆積圧力損失)が大きく、フィルタとして用いることは困難なものであった。また、比較例5のハニカムフィルタは、第一壁部の細孔内に酸化触媒が担持されていないため、PM堆積時間が極めて短く、フィルタ使用時において連続的な再生が不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明のハニカムフィルタは、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業機械用定置エンジン等の内燃機関、その他の燃焼機器等から排出される排ガス中の粒子状物質を排ガス中から除去するためのフィルタとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示すハニカムフィルタを、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図3】図1に示すハニカムフィルタの隔壁を、セルを区画する表面に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図4】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図5】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図6】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図7】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図8】図7に示すハニカムフィルタの隔壁を、セルを区画する表面に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図9】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図10】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図11】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図12】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図13】実施例1のハニカムフィルタを、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図14】従来のハニカムフィルタを、一方の端面側から見た概略平面図である。
【図15】図14に示すハニカムフィルタの概略断面図である。
【符号の説明】
【0198】
1:ハニカムフィルタ、2:ハニカム構造体、7:隔壁、7a:第一壁部、7b:第二壁部、7c:第三壁部、7d:第四壁部、8:目封止部、9:セル、9a:セル(所定のセル)、9b:セル(残余のセル)、11,12:酸化触媒、51:ハニカムフィルタ、52:ハニカム構造体、53:一方の端面、55:他方の端面、57:隔壁、58:目封止部、59,59a,59b:セル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、高い捕集効率を実現するとともに、フィルタ使用時において連続的にフィルタの再生を行うことができ、圧力損失を低減することが可能なハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下「DPF」ということがある)に代表される集塵フィルタとして、ハニカム構造を有するセラミック製のフィルタ(ハニカムフィルタ)が使用されている。
【0003】
通常、このような目的で使用されるフィルタには、図14及び図15に示すように、多孔質の隔壁57によって、二つの端面の間を連通する、流体の流路となる複数のセル59が区画形成されたハニカム構造体52と、前記各セル59の二つの開口端部のうちの何れか一方を目封止するように、ハニカム構造体52の一方の端面側と他方の端面側とで相補的な市松模様状に配設された目封止部58とを備えた、ウォールフロー型のハニカムフィルタ51が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このハニカムフィルタ51の一方の端面53より粒子状物質(パティキュレート・マター:以下「PM」ということがある)を含む排ガスを通気させると、この排ガスは、ハニカムフィルタの一方の端面53から内部に流入し、排ガス中に含まれるPMが除去された後、他方の端面55から流出する。具体的には、まず排ガスは、このハニカムフィルタの一方の端面53において端部が封止されておらず他方の端面55において端部が封止されたセル59bに流入し、多孔質の隔壁57を通って、一方の端面53において端部が封止されるとともに他方の端面55において端部が封止されていないセル59aに移動し、このセル59aから排出される。そして、この際に隔壁57が濾過層となり、ガス中のPMが隔壁57に捕捉され隔壁57上に堆積する。
【0005】
このようなハニカムフィルタにおいては、フィルタを構成するハニカム構造体の隔壁上にPMが堆積することによって圧力損失が上昇する。このため、このようなハニカムフィルタにおいては、一定量のPMが隔壁上に堆積した場合には、ハニカムフィルタを強制的に高温にして、隔壁に堆積したPMを酸化除去することが行われている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−269585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したPMの酸化除去においては、燃料を過剰に噴射することによって燃焼させるため、燃料消費率が悪くなり、経済性が悪化するという問題があった。また、ハニカムフィルタが高温になるために、ハニカムフィルタが損傷を受けるという問題もあった。
【0008】
また、PMの堆積を少なくするために、多孔質の隔壁に対して、PMを酸化するための酸化触媒を担持させたものも提案されているが、PMの量が多い場合には、その隔壁上にPMが層状に堆積してしまい、酸化触媒とPMとの接触頻度が少なくなって十分な効果を得ることができないという問題があった。
【0009】
また、流体が隔壁を通過する際の表面側を細孔径の大きな多孔質体から構成し、且つ、隔壁の上記表面とは反対側を細孔径の小さな多孔質体から構成したハニカムフィルタも提案されているが、このようなハニカムフィルタは、PMが隔壁に堆積した場合に圧力損失が急激に上昇するという問題があった。
【0010】
また、単に圧力損失の上昇を軽減させるのであれば、例えば、細孔径の大きな多孔質体のみから隔壁を形成することも考えられるが、このようなハニカムフィルタは捕集効率が低く、上記したDPF等して用いることができないという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、高い捕集効率を実現するとともに、フィルタ使用時において連続的にフィルタの再生を行うことができ、圧力損失を低減することが可能なハニカムフィルタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ハニカムフィルタを構成するハニカム構造体の隔壁の少なくとも一部を、平均細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一つが所定の値を示す、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三層が前記隔壁の厚さ方向に積層されたものとすることによって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的には、本発明によれば、以下のハニカムフィルタが提供される。
【0013】
[1] 多孔質の隔壁を有し、前記隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体と、複数の前記セルのうち、所定のセルにおける前記流体が流出する流出側の開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける前記流体が流入する流入側の開口端部を目封止する目封止部と、を備え、前記隔壁の少なくとも一部は、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三つの壁部が、前記所定のセルを区画する表面側から前記隔壁の厚さ方向に積層されたものであり、前記第一壁部は、前記流出側の開口端部が目封止された前記所定のセルを区画する表面側に配置され、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されたものであり、前記第二壁部は、前記第一壁部の裏面に配置され、気孔率が、前記第1及び第三壁部の気孔率よりも高く、且つ気孔率の値が60%以上のものであり、前記第三壁部は、前記第二壁部の裏面に配置され、平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%のものであるハニカムフィルタ。
【0014】
[2] 前記所定のセルの水力直径が、前記残余のセルの水力直径と同等又はより大である前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0015】
[3] 前記セルの軸方向に垂直な断面における形状が三角形、四角形、又は四角形と八角形との組み合わせのいずれかの形状であり、前記流出側の開口端部が目封止された前記所定のセルと前記流入側の開口端部が目封止された前記残余のセルとが交互に配置されるように、前記目封止部が配設されている前記[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0016】
[4] 前記第二壁部は、気孔率が64%以上である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0017】
[5] 前記第一壁部は、平均細孔径が25μm以上である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0018】
[6] 前記第一壁部の細孔に占める、細孔径が10μm未満の細孔の容積割合が10%未満である前記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0019】
[7] 前記第二壁部は、前記第一壁部と前記第三壁部との間に形成された空隙により構成されたものである前記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0020】
[8] 前記第二壁部は、繊維状の多孔質材料によって構成されたものである前記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0021】
[9] 前記隔壁の少なくとも一部は、前記第三壁部の裏面に配置された第四壁部を更に有し、前記第四壁部は、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されたものである前記[1]〜[8]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0022】
本発明のハニカムフィルタは、高い捕集効率を実現するとともに、フィルタ使用時において連続的にフィルタの再生を行うことができ、圧力損失を低減することができる。
【0023】
即ち、本発明のハニカムフィルタは、粒子状物質(PM)を捕集する多孔質体としては比較的に平均細孔径の大きな細孔が形成されている第一壁部によって、排ガス中のPMの大半が捕集される。そして、この第一壁部に捕集されたPMは、第一壁部の細孔内に担持された酸化触媒によって酸化除去される。
【0024】
この際、第一壁部の酸化触媒によって、排ガスに含まれる一酸化窒素(NO)が酸化されて二酸化窒素(NO2)も生成される。このようにして生成された二酸化窒素によっても、PMの酸化が促進され、フィルタの再生(PMの酸化除去)が更に効果的に行われる。
【0025】
なお、本発明のハニカムフィルタにおいては、上記したように、第一壁部の細孔は、平均細孔径が比較的に大きなものであるため、PMの一部、例えば、粒子径の小さいPMは、第一壁部の細孔を通過してしまうことがある。このような第一壁部を通過したPMは、第一壁部よりも下流側に配置された第三壁部によって捕集され、捕集されたPMは、第一壁部にて生成された二酸化窒素によって酸化除去される。
【0026】
但し、上記した第一壁部と第三壁部とが隣接するように並べて配置した場合には、第一壁部の細孔の出口位置に対応する第三壁部に、第一壁部を通過した排ガスが局所的に集中してしまい、ハニカムフィルタの圧力損失が大きくなってしまう。
【0027】
本発明のハニカムフィルタにおいては、第一壁部を通過した排ガスが、第一壁部及び第三壁部よりも気孔率が高く、且つその気孔率が60%以上の第二壁部に一旦流入するように構成されているため、第二壁部がバッファーとなり、第三壁部表面の広い範囲に対して、より均一な圧力が掛かるように排ガスを通過させることができる。このように、第三壁部に局所的に排ガスが流入することを防止することができ、ハニカムフィルタ全体の圧力損失を良好に抑制することができる。また、第一壁部を通過したPMの一部は、この第二壁部内においても二酸化窒素によって酸化除去されるため、第三壁部によって除去すべきPMの量を少なくすることができ、圧力損失の上昇をより抑制することができる。また、流れが集中する部分へ局所的に堆積するPMの量を低減できるため、実質、排ガスがPM堆積部分を通過する通過厚さを小さくすることができ、且つPMの層を通過するガス流速も小さくなるため、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0029】
[1]ハニカムフィルタ:
図1は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示すハニカムフィルタを、セルが貫通する方向に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。また、図3は、図1に示すハニカムフィルタの隔壁を、セルを区画する表面に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【0030】
本発明のハニカムフィルタは、図1に示すように、多孔質の隔壁7を有し、この隔壁7によって流体の流路となる複数のセル9が区画形成されたハニカム構造体2と、複数の前記セル9のうち、所定のセル9aにおける流体が流出する側(以下、「流出側」というとがある)の開口端部を目封止するとともに、残余のセル9bにおける流体が流入する側(以下、「流入側」ということがある)の開口端部を目封止する目封止部8と、を備え、図2に示すように、隔壁7の少なくとも一部は、第一壁部7a、第二壁部7b、及び第三壁部7cの少なくとも三つの壁部が、所定のセル9aを区画する表面側から隔壁7の厚さ方向に積層された多孔質層によって構成されている。
【0031】
図2及び図3に示すように、第一壁部7aは、流出側の開口端部が目封止され、流入側の開口端部が開放された前記所定のセル9aを区画する表面側に位置するように配置され、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔8の内表面に酸化触媒11が担持された多孔質体である。
【0032】
また、第二壁部7bは、上記第一壁部7aの裏面、即ち、上記第一壁部7aの前記所定のセル9aを区画する面とは反対側の面に配置され、気孔率が、第一壁部7a及び第三壁部7cの気孔率よりも高く、且つ気孔率の値が60%以上のものである。
【0033】
第三壁部7cは、上記第二壁部7bの裏面、即ち、上記第二壁部7bの第一壁部7aが配置されている側とは反対側の面に配置され、平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%の多孔質体である。
【0034】
このように構成された本発明のハニカムフィルタ1は、高い捕集効率を実現するとともに、フィルタ使用時において連続的にフィルタの再生を行うことができ、圧力損失を低減することができる。
【0035】
即ち、本発明のハニカムフィルタに粒子状物質(PM)を含む排ガスを流入させると、フィルタに用いる多孔質体としては比較的に平均細孔径の大きな細孔が形成された第一壁部によってPMが捕集される。そして、この第一壁部に捕集されたPMは、細孔内に担持された触媒によって酸化除去され、フィルタの再生が行われる。
【0036】
この際、第一壁部の酸化触媒によって、排ガスに含まれる一酸化窒素(NO)も酸化されて二酸化窒素(NO2)が生成される。このようにして生成された二酸化窒素によっても、排ガス中に含まれるPMの酸化が促進され、フィルタの再生が更に効果的に行われる。
【0037】
なお、上記したように第一壁部は、比較的に平均細孔径が大きな細孔が形成されたものであるため、PMの一部、例えば、粒子径の小さいPM等は、第一壁部の細孔を通過してしまうことがある。このような第一壁部を通過したPMは、第一壁部よりも下流側に配置された第三壁部によって捕集され、捕集されたPMは、第一壁部にて生成された二酸化窒素によって酸化除去される。
【0038】
但し、上記した第一壁部を通過した排ガスが第三壁部に直接流入するような構成とした場合には、第一壁部の細孔の出口位置に対応する第三壁部に排ガスが局所的に集中してしまい、第三壁部における実質的な排ガスが流入する部位の面積が極めて小さくなり、ハニカムフィルタの圧力損失が大きく上昇してしまう。
【0039】
本発明のハニカムフィルタにおいては、第一壁部を通過した排ガスが、第一壁部及び第三壁部よりも気孔率が高く、且つ気孔率が60%以上の第二壁部に一旦流入するように構成されているため、第二壁部がバッファーとなり、第三壁部の表面の広い範囲に対して、より均一な圧力が掛かるように排ガスを流入させることができる。このため、第三壁部に局所的に排ガスが流入することを防止することができ、ハニカムフィルタ全体の圧力損失を良好に抑制することができる。また、第一壁部で生成された二酸化窒素によって、第一壁部を通過したPMの一部が、この第二壁部内においても酸化されるため、第三壁部によって除去すべきPMの量を少なくすることができ、圧力損失の上昇をより抑制することができる。
【0040】
従来、DPF等に用いられていたハニカムフィルタは、連続的に再生することができず、ハニカムフィルタを加熱して、隔壁上に堆積したPMを酸化除去しなければならない。具体的には、例えば、エンジンに燃料を過剰に供給し、ハニカムフィルタの隔壁上に堆積したPMを燃焼除去させる方法を挙げることができるが、このような方法では、燃料を過剰に消費するため、エンジンの燃焼消費率が悪くなるという問題がある。
【0041】
また、このような従来のハニカムフィルタは、一定量のPMが隔壁上に堆積した段階で定期的に再生を行うものであるため、再生を行うまでの期間においてハニカムフィルタの圧力損失は常に増大し続けており、再生を行うまではエンジン性能や燃料消費率を悪くしている。
【0042】
本発明のハニカムフィルタは、上記したように、第一壁部の細孔内に担持された酸化触媒と、一酸化窒素を酸化して生成された二酸化窒素とによって、フィルタの使用時において常にフィルタの再生を行うことができるように構成されているため、ハニカムフィルタの圧力損失を一定の水準に保つことができ、圧力損失の上昇を有効に防止することができる。即ち、定期的に特別な再生操作を必要とせず、常に、初期状態に近いフィルタ性能を発揮させることができる。
【0043】
なお、本明細書において、「平均細孔径」とは、ハニカムフィルタの断面SEM写真上で隔壁に平行な直線上の細孔空間部分にかかる線分長さ50個の平均値のことをいう。上記平均値が、その深さ(表面からの距離)の壁部の平均細孔径である。また、「気孔率」とは、ハニカムフィルタの断面SEM写真上で隔壁に平行な3mm以上の長さの線分の内、細孔空間部にかかる線分の長さの合計が全線分長さに占める割合のことをいう。上記割合が、その深さの壁部の気孔率である。
【0044】
このような本発明のハニカムフィルタは、ディーゼルエンジンから排出される排気ガスを浄化するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)として好適に用いることができる。
【0045】
なお、本発明のハニカムフィルタにおいては、特に限定されることはないが、前記所定のセル、即ち、流入側が開口したセルの水力直径が、前記残余のセル、即ち、流出側が開口したセルの水力直径と同等又はより大であることが好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタの初期の圧力損失を低減することができるとともに、捕集効率等の排ガスの処理能力を向上させることができる。
【0046】
[1−1]ハニカム構造体:
本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム構造体は、多孔質の隔壁を備え、前記隔壁によって流体の流路が区画形成されたものである。本発明のハニカムフィルタは、このハニカム構造体に形成されたセルのいずれか一方の開口端部が目封止部によって目封止されることによってフィルタを構成している。
【0047】
[1−1a]隔壁:
ハニカム構造体を構成する隔壁は、多孔質体によって構成されており、流体の流路となるセルを区画形成している。
【0048】
これまでに説明したように、本発明のハニカムフィルタにおける隔壁は、その少なくとも一部が、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三つの壁部が、前記所定のセルを区画する表面側から前記隔壁の厚さ方向に積層された多孔質層によって構成されている。
【0049】
即ち、第一壁部の細孔内にPMが捕集され、細孔の内部に担持された酸化触媒の作用によってPMが酸化除去される。更に、第一壁部の細孔を通過したPMは、緩衝層(バッファー層)として機能する第二壁部を通過した後、より平均細孔径の小さな第三壁部の細孔によって捕集され、排ガスに含まれる一酸化炭素が上記酸化触媒によって酸化された二酸化窒素によって、酸化除去される。
【0050】
なお、本発明のハニカムフィルタにおいては、上記した第一壁部、第二壁部、及び第三壁部は、明確な境界部分がなく、平均細孔径及び気孔率が徐々に変化して三層が構成されたものであってもよい。このような場合には、平均細孔径や気孔率が、上記したそれぞれの壁部の要件を満たす領域が、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部のそれぞれとなる。
【0051】
[1−1a−1]第一壁部:
第一壁部は、流入側の開口端部が解放され、且つ流出側の開口端部が目封止された所定のセルを区画する隔壁の表面側に配置されたものである。即ち、この第一壁部によって前記所定のセルが直接的に区画形成されている。
【0052】
そして、この第一壁部は、平均細孔径が20μm以上の多孔質体からなるものであり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されている。
【0053】
この第一壁部における細孔の平均細孔径の値は、一般的に用いられている従来公知のハニカムフィルタにおける隔壁の平均細孔径(例えば、10μmから20μm未満程度)と比較すると、大きなものとなっている。このため、第一壁部単独での捕集効率は落ちるものの、第一壁部の細孔が塞がれるまでPMが捕集されることはなく、隔壁の表面(即ち、第一壁部の表面)にまでPMが堆積してフィルタの圧力損失が上昇してしまう前に、細孔の内表面に担持した酸化触媒によって捕集したPMを酸化除去することができる。
【0054】
このような第一壁部は、例えば、コージェライト、炭化珪素(SiC)、アルミナタイタネート、窒化珪素、ムライト、焼結金属等を用いて形成することができる。
【0055】
また、この第一壁部は、繊維状の多孔質材料によって構成されたものであってもよい。具体的には、例えば、アルミナ、アルミナシリケート、シリカ等を主成分とする繊維からなる多孔質体や、生体溶解性繊維(生体溶解性ファイバーともいう)を含むものを挙げることができる。例えば、繊維状の多孔質材料としてアルミナシリケート繊維を用いる場合には、繊維径が4〜9μm、繊維長さが30〜500μmのものを好適に用いることができる。
【0056】
なお、生体溶解性繊維とは、生理学的液体中において非耐久性であるものをいう。また、生理学的液体とは、例えば、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム溶液)、緩衝溶液、疑似体液、血清が挙げられる。疑似体液は、人の血漿成分にほぼ等しくした水溶液である。
【0057】
第一壁部の厚さについては特に制限はないが、隔壁全体の厚さに対して、50〜90%の厚さであることが好ましく、70〜90%の厚さであることが更に好ましく、70〜80%の厚さであることが特に好ましい。
【0058】
第一壁部の厚さについては、ハニカム構造体の大きさや、セルの形状、隔壁の厚さ等によっても好ましい範囲は異なるが、例えば、150〜300μmであることが好ましく、210〜270μmであることが更に好ましく、210〜240μmであることが特に好ましい。
【0059】
また、第一壁部の平均細孔径は、20〜300μmであることが好ましく、25〜300μmであることが更に好ましく、40〜100μmであることが特に好ましい。このように構成することによって、圧力損失の上昇を良好に抑制することができる。なお、第一壁部の平均細孔径を25μm以上とすることによって、排ガスに含まれるPMによって第一壁部の細孔がより塞がり難くなり、細孔内にて捕集したPMを効率よく酸化除去することができる。一方、第一壁部の平均細孔径を300μm以下にすることによって、第一壁部の細孔径が過度に大きくなり過ぎることがなく、隔壁を破損し難いものとすることができる。なお、例えば、本発明のハニカム構造体をDPFとして用いる場合には、第一壁部の平均細孔径は20〜100μmであることが好ましい。
【0060】
また、特に限定されることはないが、第一壁部の気孔率は、45〜75%であることが好ましく、50〜65%であることが更に好ましい。このように構成することによって、この第一壁部によってより多くのPMを酸化除去することができ、高い捕集効率を実現するとともに、圧力損失の上昇を良好に抑制することができる。
【0061】
第一壁部の平均細孔径及び気孔率は、ハニカム構造体を成形するための坏土に使用する原料の粒子径や粒子径分布、原料に含まれる造孔材の粒子径や粒子径分布、坏土を成形して得られた成形体の焼成温度等によって調整することができる。
【0062】
また、特に限定されることはないが、本発明のハニカムフィルタにおいては、第一壁部の細孔に占める、細孔径が10μm未満の細孔の容積割合が10%未満であることが好ましく、5%未満であることが更に好ましい。このように構成することによって、第一壁部の細孔がPMによって塞がり難くなり、圧力損失の増加を有効に抑制することができる。また、触媒担持において、小細孔へまず、毛細現象により優先的に触媒コートスラリーが吸収されやすく、大きな細孔の表面への触媒コート量が十分でなくなり、全体として不均一に触媒が分布する形態となってしまい、触媒の性能を悪化させる要因になるため、10μm未満の細孔の容積割合を上記範囲未満にすることにより触媒性能も向上する。
【0063】
なお、上記した第一壁部の細孔に占める、細孔径が10μm未満の細孔の容積割合は、ハニカムフィルタの断面SEM写真上で隔壁に平行な直線上の細孔空間部分にかかる線分の長さが10μm未満である線分の、前記空間にかかる全線分個数に対する個数比率測定することによって求めることができる。
【0064】
また、この第一壁部の細孔の内表面に担持する触媒については、従来公知のDPF等においてPMを酸化するために用いられる酸化触媒と同様のものを好適に用いることができる。なお、特に限定されることはないが、本発明のハニカムフィルタにおいては、白金、パラジウム、及びセリアからなる群より選択される少なくとも一種を含む触媒を好適に用いることができる。
【0065】
また、第一壁部の細孔内に担持する触媒の量については特に制限はないが、ハニカムフィルタの全容積当り、0.2〜3g/リットルとすることが好ましい。
【0066】
なお、図2及び図4に示すハニカムフィルタ1においては、ハニカム構造体2を構成する隔壁7の主要部分(即ち、ハニカム構造体の骨格となる部分)が、第一壁部7aによって構成されており、この第一壁部7aの裏面側に第二壁部7bと第三壁部7cとが隔壁7の厚さ方向に積層された場合の例を示しているが、例えば、ハニカム構造体を構成する隔壁の主要部分を第三壁部によって構成し、この第三壁部の表面側に第二壁部と第一壁部とが隔壁の厚さ方向に積層されたものであってもよい。ここで、図4は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。なお、図4において、図2に示す吸収性物品の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
[1−1a−2]第二壁部:
第二壁部は、第一壁部の裏面に配置され、気孔率が、第一壁部及び第三壁部の気孔率よりも高く、且つ気孔率の値が60%以上のものである。この第二壁部は、第一壁部を通過した排ガスが第三壁部に流入する際の緩衝層(バッファー層)として機能する層である。
【0068】
第一壁部を通過した排ガスをこの第二壁部を通過させることによって、第三壁部に排ガスが流入し易くなり、ハニカムフィルタの圧力損失を低くすることができる。
【0069】
なお、本発明のハニカムフィルタにおいては、第二壁部の気孔率が64%以上であることが好ましく、80%以上であることが更に好ましい。このように構成することによって、第一壁部から第三壁部への排ガスの流れを良好に確保することができる。
【0070】
なお、このような第二壁部は、例えば、第一壁部を形成するための材料と同様のものに、得られる多孔質体の気孔率が上記値になるような量の公知の造孔材等を加えた材料を用いて形成することができる。
【0071】
また、この第二壁部は、第一壁部と同様に、繊維状の多孔質材料によって構成されたものであってもよい。具体的には、例えば、アルミナ、アルミナシリケート、シリカ等を主成分とする繊維からなる多孔質体や、生体溶解性繊維(生体溶解性ファイバーともいう)を含むものを挙げることができる。例えば、図5に示すハニカムフィルタ1は、第二壁部7bが、繊維状の多孔質材料によって構成された場合の例を示している。
【0072】
また、本発明のハニカムフィルタにおける第二壁部は、気孔率が100%の空隙、即ち、第一壁部と第三壁部との間に形成された空隙により構成されたものであってもよい。このように構成することによって、第一壁部から第三壁部への排ガスの流れを極めて良好に確保することができるとともに、第二壁部における排ガスが滞留することのできる容量が大きくなり、この第二壁部中における二酸化窒素によるPMの酸化除去が促進される。これによって、第三壁部にて処理(酸化除去)すべきPMの量を少なくすることができ、第三壁部に依存する圧力損失の上昇を低く抑えることができる。例えば、図6に示すハニカムフィルタ1は、第二壁部7bが、第一壁部7aと第三壁部7cとの間に形成された空隙により構成された場合の例を示している。
【0073】
ここで、図5及び図6は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。なお、図5及び図6において、図2に示す吸収性物品の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
また、この第二壁部の厚さについては、ハニカム構造体の大きさや、セルの形状、隔壁の厚さ等によっても好ましい範囲は異なるが、例えば、20〜300μmであることが好ましく、50〜200μmであることが更に好ましく、50〜100μmであることが特に好ましい。このように構成することによって、第一壁部から第三壁部への排ガスの流れを良好に確保することができる。
【0075】
[1−1a−3]第三壁部:
隔壁を構成する第三壁部は、第二壁部の裏面に配置され、平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%のものである。なお、第二壁部が単なる空隙によって構成されている場合には、第一壁部の裏面に、第二壁部に相当する隙間を空けた状態で第三壁部が配置される。
【0076】
この第三壁部は、第一壁部によって酸化除去しきれなかったPMを捕集し、捕集した成分を酸化除去し、排ガスを浄化するための多孔質体である。
【0077】
この第三壁部は、第一壁部より平均細孔径が小さい多孔質体から構成されており、第一壁部の細孔を通過したPMを良好に捕集することができる。なお、第三壁部によって捕集されたPMは、排ガスに含まれる一酸化窒素が酸化されて生成した二酸化窒素によって、常時連続的に酸化除去される。
【0078】
このような第三壁部は、例えば、第一壁部と同様の材料を用いて、得られる多孔質体の平均細孔径と気孔率とが上記値になるように造孔材等の量を調整することによって形成することができる。また、第三壁部は、繊維状の多孔質材料によって構成されたものであってもよい。具体的には、例えば、アルミナ、アルミナシリケート、シリカ等を主成分とする繊維からなる多孔質体や、生体溶解性繊維(生体溶解性ファイバーともいう)を含むものを挙げることができる。
【0079】
なお、上記したように繊維状の多孔質材料を用いて第三壁部を形成する場合には、繊維状の多孔質材料に、少量の繊維質間接着成分としてシリカ等の酸化物を加えたスラリーを用いて第三壁部を形成することが好ましい。
【0080】
また、本発明のハニカムフィルタの第三壁部は、平均細孔径が1〜15μmであるが、3〜8μmであることが好ましく、5〜8μmであることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタの圧力損失の上昇を抑制することができるとともに、捕集効率を向上させることができる。
【0081】
なお、平均細孔径が1μm未満であると、平均細孔径が小さくなり過ぎて、ハニカムフィルタの初期状態(PMが隔壁に堆積していない状態)での圧力損失が大きくなってしまうことがあり、また、排ガス浄化時における圧力損失が増大し易くなることがある。一方、平均細孔径が15μmを超えると、ハニカムフィルタの捕集効率が低下してしまうことがある。
【0082】
また、第三壁部の気孔率は、50〜85%であることが好ましく、50〜80%であることが更に好ましく、60〜80%であることが特に好ましい。このように構成することによって、第三壁部の流入する排ガスに含まれるPMを良好に除去することができる。
【0083】
なお、この第三壁部の厚さについては特に制限はないが、例えば、10〜200μmであることが好ましく、30〜150μmであることが更に好ましい。このように構成することによって、高い捕集効率を実現しつつ、圧力損失の上昇を効果的に抑制することができる。なお、第三壁部の厚さが薄すぎると、第一壁部を通過したPMを捕集しきれずに、捕集効率が低下してしまうことがある。一方、第三壁部が厚すぎると、ハニカムフィルタの初期の圧力損失が増大してしまうことがある。
【0084】
このような平均細孔径の多孔質体(第三壁部)は、従来のハニカムフィルタの隔壁として、単独の多孔質体として用いられることはあるが、このような細孔径の多孔質体のみから隔壁が構成されたハニカムフィルタでは、例えば、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを浄化するDPFとして用いた場合に、排ガスに含まれるPMの量が多く、また、粒子の大きさも比較的大きなものが多く含まれているため、細孔がPMによって短時間で塞がってしまい、圧力損失が急激に大きくなる。このため、このような従来のハニカムフィルタは、再生を頻繁に行わなくてはならなかった。
【0085】
本発明のハニカムフィルタにおいては、排ガス中に含まれるPMのうち、比較的に粒子径の大きなものを含め、大部分のPMを予め上記した第一壁部によって酸化除去することができるため、実際に第三壁部によって酸化除去しなければならないPMは、排ガスに含まれるPMのうちの一部であり、上記した平均細孔径及び気孔率の多孔質体であっても、PMの連続的な処理が十分に可能である。
【0086】
[1−1a−4]第四壁部:
本発明のハニカムフィルタにおいては、上記した隔壁が、第三壁部の裏面に配置された第四壁部を更に有するものであってもよい。この第四壁部は、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されたものである。
【0087】
このような第四壁部を更に有するものとすることによって、排ガス中の一酸化炭素(CO)やハイドロカーボン(HC)を無害な二酸化炭素(CO2)や水(H2O)に酸化して浄化することができる。
【0088】
例えば、図7及び図8に示すハニカムフィルタ1の隔壁7は、第一壁部7a、第二壁部7b、第三壁部7c及び第四壁部7dの四つの壁部が、流入側の開口端部が開放された所定のセル9aを区画する表面側から隔壁7の厚さ方向に積層された場合の例を示している。なお、ここで、図7は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。また、図8は、図7に示すハニカムフィルタの隔壁を、セルを区画する表面に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。なお、符号12は酸化触媒を示す。
【0089】
なお、この第四壁部は、これまでに説明した第一壁部と同様に構成された多孔質体を用いることができる。例えば、第四壁部の平均細孔径は、20〜300μmであることが好ましく、40〜100μmであることが更に好ましい。このように構成することによって、上記した一酸化炭素等のガス成分の浄化を良好に行うことができる。なお、例えば、本発明のハニカム構造体をDPFとして用いる場合には、第四壁部の平均細孔径は20〜100μmであることが好ましい。
【0090】
この第四壁部の厚さについては、ハニカム構造体の大きさや、セルの形状、隔壁の厚さ等によっても好ましい範囲は異なるが、例えば、50〜300μmであることが好ましく、100〜200μmであることが更に好ましく、150〜200μmであることが特に好ましい。また、特に限定されることはないが、第一壁部の気孔率は、45〜75%であることが好ましく、50〜65%であることが更に好ましい。これにより、圧力損失の上昇を抑制することができるとともに、一酸化炭素等のガス成分の浄化を良好に行うことができる。
【0091】
なお、第四壁部には、第一壁部と同様に酸化触媒を担持する以外に、バリウム(Ba)、カリウム(K)等を含む、NOx吸蔵還元触媒を担持することもでき、この場合、NOxの浄化も合わせて可能である。
【0092】
また、本発明のハニカムフィルタにおいては、この第四壁部と上記した第一壁部とが一体的に構成されたものであってもよい。即ち、例えば、所定の多孔質材料を用いて、第一壁部と第四壁部との相互間に、第二壁部と第三壁部とを配置することができるような隙間を設けた状態で一体的に形成されたものをハニカム構造体の骨格とし、上記第一壁部と第四壁部との隙間に、第二壁部と第三壁部とが配置されたハニカムフィルタであってもよい。
【0093】
例えば、図9に示すハニカムフィルタ1は、第一壁部7aと第四壁部7dとが一体的に形成され、第一壁部7aと第四壁部7dとの隙間における第四壁部7dの表面に膜状の第三壁部7cが配置され、第一壁部7aと第三壁部7cと間には、空隙によって第二壁部7bが構成された場合の例を示している。
【0094】
また、例えば、図10に示すハニカムフィルタ1は、第一壁部7aと第四壁部7dとが一体的に形成され、第一壁部7aと第四壁部7dとの隙間に、繊維状の多孔質材料からなる第二壁部7bと、膜上の第三壁部7cとが配置された場合の例を示している。
【0095】
ここで、図9及び図10は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。なお、図9及び図10において、図7に示す吸収性物品の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0096】
[1−1b]セル:
ハニカム構造体を構成する隔壁によって区画形成されるセルは、流体、特に、排気ガスの流路となるものである。流入側が開口したセル(所定のセル)に流入した排ガスは、セルを区画形成する隔壁を通過して、流出側が開口した隣接するセル(残余のセル)に移動する際に浄化される。
【0097】
セルの形状(セルの軸方向に垂直な断面における形状)については特に制限はないが、三角形、四角形、又は四角形と八角形との組み合わせのいずれかの形状であることが好ましい。なお、本発明のハニカムフィルタにおいては、セルの形状は、四角形であることが好ましい。このような四角形のセルは、上記した所定のセルと残余のセルとを規則的に交互に配置することができるため、例えば、流入側の開口端部が開口した所定のセルが隣接して配置されるようなことがなく、隔壁全てを、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三つの壁部が隔壁の厚さ方向に積層された構成とすることができ、フィルタの再生を効率よく行うことができる。ここで、図11は、セルの形状が四角形と八角形との組み合わせ、即ち、四角形のセルと八角形のセルとが交互に配置されたハニカムフィルタの例を示し、図12は、セルの形状が三角形のハニカムフィルタの例を示している。
【0098】
また、特に限定されることはないが、本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム構造体のセル密度は、5〜80セル/cm2であることが好ましく、14〜60セル/cm2であることが更に好ましい。
【0099】
また、セルを区画形成する隔壁の厚さは、200〜800μmであることが好ましく、200〜600μmであることが更に好ましく、300〜400μmであることが特に好ましい。
【0100】
[1−2]目封止部:
本発明のハニカムフィルタに用いられる目封止部は、従来、ハニカム構造体のセルの開口端部を目封止してフィルタとして用いる際に使用される目封止部と同様に構成されたものを用いることができる。
【0101】
この目封止部は、セルの軸方向に垂直な断面における形状が四角形である場合には、前記所定のセルと前記残余のセルとが交互に配置されるように、それぞれのセルの開口端部に配設されていることが好ましい。
【0102】
なお、この目封止部は、隔壁と同一材料から構成されたものであることが好ましいが、同一材料からなり、且つ気孔率が隔壁より高く、ヤング率が隔壁より小さいものであることが好ましい。このようにすることにより、熱膨張の差による破損を防止することができる。
【0103】
[2]ハニカムフィルタの製造方法:
次に、本発明のハニカムフィルタの製造方法について具体的に説明する。本発明のハニカムフィルタを製造する際には、まず、ハニカムフィルタを構成するハニカム構造体を製造する。
【0104】
従来のハニカム構造体は、隔壁が一種類の多孔質材料から構成されたものであるため、得られるハニカム構造体の細孔径や気孔率を考慮して成形用坏土を調製し、得られた成形用坏土を押出成形することによって製造することができるが、本発明のハニカムフィルタに用いられるハニカム構造体は、隔壁が少なくとも三つの壁部が積層した積層体であるため、まず、隔壁を構成する層のうちの一つの壁部からなるハニカム構造体の骨格(以下、「ハニカム構造前駆体」ということがある)を製造する。
【0105】
第一壁部を用いてハニカム構造前駆体を製造する場合には、上述した第一壁部を構成する多孔質材料を混合、混練して、ハニカム構造前駆体用の成形用坏土を調製する。例えば、コージェライト化原料に、水等の分散媒、及び造孔材を加え、更に、有機バインダと分散剤を加えて混練し、粘土状の坏土を形成する。コージェライト化原料(成形原料)を混練して成形用坏土を調製する手段は、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0106】
コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライトとなる原料を意味し、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料である。具体的に、タルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、及びシリカの中から選ばれた複数の無機原料を上記化学組成となるような割合で含むものが挙げられる。
【0107】
造孔材としては、焼成工程により飛散消失する性質のものであればよく、コークス等の無機物質や発泡樹脂等の高分子化合物、澱粉等の有機物質等を単独で用いるか組み合わせて用いることができる。
【0108】
有機バインダとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を使用することができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0109】
分散剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を使用することができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0110】
次に、得られた成形用坏土を、例えば、図4に示すハニカムフィルタ1における第一壁部7aに相当する隔壁を有するハニカム成形体を成形する。
【0111】
ハニカム成形体を作製する方法は、特に制限はなく、押出成形、射出成形、プレス成形等の従来公知の成形法を用いることができる。中でも、上述のように調製した成形坏土を、所望のセル形状、隔壁の厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法等を好適例として挙げることができる。
【0112】
なお、この際、第一壁部の一方の表面(裏面)側には、本発明のハニカムフィルタにおける第二壁部、及び第三壁部を少なくとも配置して隔壁を形成するため、第一壁部の裏面によって区画されるセルの水力直径を、最終製品におけるセルの水力直径よりも大きくなるようにハニカム成形体を製造する。
【0113】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥する。乾燥の方法については特に制限はないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。中でも、成形体全体を迅速且つ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法を好適例として挙げることができる。
【0114】
次に、得られたハニカム乾燥体を本焼成する前に仮焼して仮焼体を作製する。仮焼とは、ハニカム成形体中の有機物(例えば、有機バインダ、分散剤、造孔材等)を燃焼させて除去する操作を意味する。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、例えば、10〜100時間程度とすることが好ましい。
【0115】
次に、得られた仮焼体を焼成(本焼成)することによって、ハニカム構造前駆体を得る。本発明において、本焼成とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の居度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度及び時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト原料を焼成する場合には、1410〜1440℃で焼成することが好ましい。また、焼成時間としては、3〜10時間程度が適当である。
【0116】
このようにしてハニカム構造前駆体を得ることができる。なお、このハニカム構造前駆体における隔壁は、本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム構造体の第一壁部となる。このため、以下の方法によって、得られたハニカム構造前駆体の隔壁、即ち、本発明のハニカムフィルタにおける第一壁部の裏面に第二壁部と第三壁部とを形成する。
【0117】
第二壁部と第三壁部とを形成する際には、まず、ハニカム構造前駆体の端面におけるセルの開口端部を交互に塞いで市松模様状にマスクを施す。上記マスクは、第一壁部の表面側によって区画されたセルの開口端部を塞ぐように、即ち、第一壁部の裏面によって区画されたセルの開口端部が開放されるようにする。
【0118】
その後、第二壁部を形成するための成形原料を含むスラリー(以下、第二壁部用スラリーということがある)をマスクされていないセルの開口端部から流し込み、第一壁部の裏面に、上記第二壁部用スラリーからなる層を形成する。この層が隔壁を構成する第二壁部となる。第二壁部用スラリーからなる層を形成する際には、スラリー過剰分をエアーで吹き飛ばして、所定の厚さの層を形成することが好ましい。
【0119】
この第二壁部用スラリーとしては、コージェライト化原料に、有機バインダ及び造孔材を大量に含み、更に、水又はアルコールを加えて調製されたものを用いることができる。有機バインダと造孔材の量については、第一壁部を製造する際に使用した量よりも多く、且つ、この第二壁部用スラリーによって形成された層を乾燥又は焼成した際に、得られる多孔質体の気孔率が60%以上になるような量とする。
【0120】
なお、第二壁部として、繊維状の多孔質材料によって構成されたものを形成する場合には、繊維状の多孔質材料に、接着用の酸化物と、水又はアルコールとを混合したスラリーを用いることができる。
【0121】
その後、ハニカム構造体の端面に配置したマスクを剥がして、上記第二壁部用スラリーからなる層を乾燥する。乾燥条件については特に制限はないが、例えば、90〜130℃で、約1〜3時間乾燥する。これにより、上記第二壁部用スラリーからなる層が第二壁部となる。
【0122】
次に、再度、ハニカム構造前駆体の端面におけるセルの開口端部を交互に塞いで市松模様状にマスクを施す。
【0123】
その後、第三壁部を形成するための成形原料を含むスラリー(以下、第三壁部用スラリーということがある)をマスクされていないセルの開口端部から流し込み、第二壁部の裏面に、上記第三壁部用スラリーからなる層を形成する。この層が隔壁を構成する第三壁部となる。
【0124】
この第三壁部用スラリーとしては、コージェライト化原料に、有機バインダ及び造孔材を大量に含み、更に、水又はアルコールを加えて調製されたものを用いることができる。有機バインダと造孔材の量については、第三壁部用スラリーによって形成された層を乾燥又は焼成した際に、得られる多孔質体の平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%になるような量とする。
【0125】
このようにして得られた上記第三壁部用スラリーからなる層についても、上記第二壁部用スラリーからなる層と同様の方法によって乾燥する。これにより、上記第三壁部用スラリーからなる層が第三壁部となる。
【0126】
なお、例えば、図6に示すように、第二壁部7bが、第一壁部7aと第三壁部7cとの間に形成された空隙により構成された場合には、図6に示す第一壁部7aと第三壁部7cとの形状、即ち、第二壁部7bに相当する空隙が形成されるような形状に、第一壁部7aを形成する材料を用いて隔壁を形成した後、第三壁部7cに対応する部分に対して、その平均細孔径が1〜15μmで、気孔率が50〜90%となるように、小細孔形成用のスラリーを更に含浸させて、第三壁部7cを形成する。
【0127】
なお、選択的に一部の隔壁にスラリーを含浸させる方法としては、スラリーを流し込みたい部分に孔の空いたシートを貼り付けるか、又は、シートを貼り付けた後、必要部分に孔を空けて、このシートを介してスラリーを流し込むことにより可能である。
【0128】
以上のようにして、隔壁の少なくとも一部が、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三つの壁部が隔壁の厚さ方向に積層して構成されたハニカム構造体を得ることができる。
【0129】
なお、本発明のハニカムフィルタを製造する際には、第三壁部を形成した後に、必要に応じて、第三壁部の裏面に第四壁部を形成してもよい。第四壁部を形成する際にも、上記した第三壁部等と同様に、所定の成形原料を含むスラリー(以下、第四壁部用スラリーということがある)をマスクされていないセルの開口端部から流し込み、第三壁部の裏面に、上記第四壁部用スラリーからなる層を形成する。この層が隔壁を構成する第四壁部となる。
【0130】
その後、第一壁部の細孔内にベータアルミナを主成分とし、この細孔表面に白金粒子を担持した酸化触媒をコートする。ベータアルミナにジルコニア、セリア等の酸化物を付加的に混合してもよい。酸化触媒を担持する方法については特に制限はなく、従来公知のハニカムフィルタにおいて触媒を担持する方法を用いることができる。具体的には、例えば、まず、担持する酸化触媒を含有する触媒スラリーを調製する。次に、この触媒スラリーを、吸引法等の方法により、ハニカム構造体の隔壁における第一壁部の細孔内表面にコートする。その後、室温又は加熱条件下で乾燥する。
【0131】
また、アルミナ解砕粒子径を調整し、これを水或いはアルコールとの混合によりスラリー化し、第一壁部側から第三壁部側へ向かって流れるようにスラリー液を吸引することにより、第一壁部の細孔内でアルミナ粒子の大部分を捕集させることが可能であり、これを乾燥することにより、第一壁部の細孔内表面に酸化触媒をコートすることが可能である。微量の酸化触媒が第二壁部へ到達しても第二壁部の気孔率が高いので圧力損失の上昇等の問題は生じない。
【0132】
なお、第三壁部の裏面に第四壁部を形成している場合には、この第四壁部の細孔内にも上記した方法と同様の方法によって酸化触媒を担持する。
【0133】
その後、所定のセルにおける流体が流出する側(流出側)の開口端部と、残余のセルにおける流体が流入する側(流入側)の開口端部とを、目封止部によって目封止する。目封止の方法についても特に制限はなく、従来公知のハニカムフィルタにおいてハニカム構造体のセルの開口端部を目封止する方法と同様の方法を好適に用いることができる。
【0134】
例えば、目封止の方法としては、まず、ハニカム構造体の一方の端面にマスクを貼着する。マスクの貼着は、粘着シートをハニカム構造体の一方の端面に貼着し、画像処理を利用したレーザ加工により、その粘着シートの目封止すべきセルに対応する部分のみを孔開けすることによって行うことができる。次に、マスクが貼着されたハニカム構造体の一方の端面を、容器に貯めた目封止材料(セラミックスラリー)の中に浸漬し、目封止すべきセルに目封止材料を充填する。このハニカム構造体の他方の端面についても、同様にして、目封止すべきセルに目封止材料を充填する。そして、セルの開口端部に充填した目封止材料を乾燥することによって目封止することができる。
【0135】
なお、上記した酸化触媒の担持や、セルの開口端部の目封止については、必ずしもハニカム構造体を製造した後に行わなければならないものではなく、上記したハニカム構造体を製造する工程の途中で行ってもよい。
【0136】
また、本発明のハニカムフィルタの製造方法としては、上記方法とは異なり、例えば、まず、第三壁部からなる隔壁を有するハニカム構造前駆体を製造し、このハニカム構造前駆体の第三壁部の一方の表面(表面)に第二壁部と第一壁部とを順次形成してハニカム構造体を得、得られたハニカム構造体のセルの開口端部を目封止してもよい。
【0137】
なお、このように、第三壁部からなる隔壁を有するハニカム構造前駆体を製造する場合には、第一壁部を形成する段階で、第三壁部の裏面に第四壁部を同時形成してもよい。上記したように、第一壁部と第四壁部とは、同一構成の多孔質体を用いることができるため、第一壁部用スラリーを、ハニカム構造前駆体の全てのセルの開口部から流入させて、第二壁部の表面に形成された層によって第一壁部を形成し、第三壁部の裏面に形成された層によって第四壁部を形成することができる。
【実施例】
【0138】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0139】
[平均細孔径(μm)]:ハニカムフィルタの断面SEM写真上で隔壁に平行な直線上の細孔空間部分にかかる線分長さ50個の平均値を測定することによって、平均細孔径(μm)を測定した。
【0140】
[気孔率(%)]:ハニカムフィルタの断面SEM写真上で隔壁に平行な3mm以上の長さの線分の内、細孔空間部にかかる線分の長さの合計が全線分長さに占める割合を測定することによって、気孔率(%)を測定した。
【0141】
[PM堆積時間(h)]:ハニカムフィルタに、粒子状物質(PM)を含む排ガスを通気し、3g/LのPMが堆積するまでの時間(h)を測定した。なお、ハニカムフィルタに通気する排ガスは、300℃で、0.5g/hのPMが含まれている。
【0142】
[PM堆積圧力損失(kPa)]:ガス差圧計によってPM堆積圧力損失(kPa)を測定した。
【0143】
[PM捕集効率(%)]:ハニカムフィルタを排ガスの流路内に設置し、このハニカムフィルタの上流側と下流側とのそれぞれから、バルブを介した配管により排ガスを一定時間サンプリングした。サンプリングした排ガスをろ紙に通過させ、ろ紙の質量の増加を計測し、上流側と下流側との排ガス中のPM濃度を求め、得られたそれぞれのPM濃度の比を算出することによってPM捕集効率(%)を測定した。
【0144】
[CO検出量(ppm)]:ハニカムフィルタを通過した後のガスのCOの濃度(ppm)を排ガス分析計を用いて測定し、得られた測定値をCO検出量とした。
【0145】
[総合評価]:PM堆積圧力損失が7.0kPa未満で、PM捕集効率が80%以上、且つPM堆積時間が10h以上を合格「○」とし、それ以外のものは不合格「×」とした。
【0146】
(実施例1)
実施例1のハニカムフィルタとして、図13に示すような、ハニカム構造体2の骨格となる部分が第三壁部7cによって構成され、この第三壁部7cの表面側に、第二壁部7bと第一壁部7aとが隔壁7の厚さ方向に積層され、更に、第三壁部7cの裏面に第四壁部7dが配置されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。
【0147】
まず、第三壁部からなるハニカム構造前駆体を成形するための成形用坏土を調製した。成型用坏土は、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水35質量部、造孔材5質量部を加え、更に、有機バインダ6質量部と分散剤0.5質量部を加えて、ニーダーを用いて混練して調製した。コージェライト化原料としては、シリカ42〜56質量%、アルミナ30〜45質量%、マグネシア12〜16質量%の範囲に入る化学組成比率を満足する混合比率の従来公知のコージェライト化原料を用いた。
【0148】
次に、この得られた成型用坏土を、所望のセル形状、隔壁の厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を作製した。
【0149】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥し、得られたハニカム乾燥体を、800℃で、10時間仮焼して仮焼体を得、得られた仮焼体を、1430℃で、10時間焼成して、第三壁部からなるハニカム構造前駆体を作製した。
【0150】
次に、ハニカム構造前駆体の端面におけるセルの開口部を交互に塞いで市松模様状にマスクを施し、第二壁部を成形するためのスラリーと、第一壁部及び第四壁部を成形するためのスラリーとを順次流し込み、第二壁部、第一壁部、及び第四壁部を成形した。
【0151】
具体的には、まず、第二壁部を形成するための、第二壁部用スラリーを調製し、得られた第二壁部用スラリーを、ハニカム構造前駆体のマスクされていないセルの開口部から流し込み、エアーにより過剰分を吹き飛ばすことによって、第二壁部用スラリーからなる層を形成した。その後、第二壁部用スラリーを、90〜130℃で、約1〜3時間乾燥して第二壁部を形成した。
【0152】
第二壁部用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水35質量部、造孔材10質量部を加え、更に、有機バインダ10質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0153】
次に、第一壁部及び第四壁部を形成するための、第一壁部用スラリーを調製し、ハニカム構造前駆体の全てのセルの開口部から、第一壁部用スラリーを流入させて、第二壁部の表面に第一壁部を形成し、第三壁部の裏面に第四壁部を同時形成した。
【0154】
第一壁部用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水200質量部、造孔材10質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0155】
このようにして、第一壁部、第二壁部、第三壁部、及び第四壁部の四つの壁部が、隔壁の厚さ方向に積層したハニカム構造体を製造した。以下、図13に示すような、ハニカム構造体の構造を構造Aとした。
【0156】
次に、第一壁部及び第四壁部の細孔内に酸化触媒を担持し、得られたハニカム構造体の所定のセルにおける流体が流出する側(流出側)の開口端部と、残余のセルにおける流体が流入する側(流入側)の開口端部を目封止してハニカムフィルタ(実施例1)を製造した。表1に、第一壁部、第二壁部、第三壁部の平均細孔径と気孔率とを示す。また、表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
(実施例2〜7、及び比較例1〜5)
各壁部の平均細孔径と気孔率が表1に示すような値であるとともに、セルの水力直径が表2に示すような値であること以外は、実施例1のハニカムフィルタにおけるハニカム構造体の構造Aと同様の構造のハニカム構造体を備えたハニカムフィルタを製造した。なお、実施例7のハニカムフィルタにおいては、第四壁部の細孔内に酸化触媒が担持されておらず、また、比較例5のハニカムフィルタにおいては、第一壁部の細孔内に酸化触媒が担持されていない。表2に、実施例2〜7、及び比較例1〜5のPM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0160】
(実施例8)
実施例8のハニカムフィルタとして、ハニカム構造体の骨格となる部分が第三壁部によって構成され、この第三壁部の表面側に、第二壁部と第一壁部とが隔壁の厚さ方向に積層されたハニカム構造体を備えたフィルタを製造した。
【0161】
まず、第三壁部からなるハニカム構造前駆体を成形するための成形用坏土を調製した。成型用坏土は、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水36質量部、造孔材5質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて、ニーダーを用いて混練して調製した。コージェライト化原料としては、実施例1に用いたコージェライト化原料と同様に構成されたものを用いた。
【0162】
次に、この得られた成型用坏土を、所望のセル形状、隔壁の厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を作製した。
【0163】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥し、得られたハニカム乾燥体を、800℃で、10時間仮焼して仮焼体を得、得られた仮焼体を、1420℃で、10時間焼成して、第三壁部からなるハニカム構造前駆体を作製した。
【0164】
次に、ハニカム構造前駆体の端面におけるセルの開口部を交互に塞いで市松模様状にマスクを施し、第二壁部と第一壁部とを成形するためのスラリーを順次流し込み、第二壁部と第一壁部とを成形した。
【0165】
具体的には、まず、第二壁部を形成するための、第二壁部用スラリーを調製し、得られた第二壁部用スラリーを、ハニカム構造前駆体のマスクされていないセルの開口部から流し込み、エアーにより過剰分を吹き飛ばすことによって、第二壁部用スラリーからなる層を形成した。その後、第二壁部用スラリーを、90〜130℃で、約1〜3時間乾燥して第二壁部を形成した。
【0166】
第二壁部用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水200質量部、造孔材25質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0167】
次に、第一壁部を形成するための、第一壁部用スラリーを調製し、上記した方法と同様の方法によって、第一壁部を形成した。
【0168】
第一壁部用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水200質量部、造孔材15質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0169】
このようにして、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の三つの壁部が、隔壁の厚さ方向に積層したハニカム構造体を製造した。以下、ハニカム構造体の骨格となる部分が第三壁部によって構成された実施例8のハニカムフィルタの構造を、構造Bとした。
【0170】
次に、第一壁部及び第四壁部の細孔内に酸化触媒を担持し、得られたハニカム構造体の所定のセルにおける流体が流出する側(流出側)の開口端部と、残余のセルにおける流体が流入する側(流入側)の開口端部を目封止してハニカムフィルタ(実施例8)を製造した。表1に、第一壁部、第二壁部、第三壁部の平均細孔径と気孔率とを示す。また、表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0171】
(実施例9)
第一壁部用スラリーとして、アリミノシリケート繊維を含むスラリーを用い、このスラリーを霧吹きにより霧化し、エアーとともにマスクをした側から吸引して層を形成し、この層を乾燥して第一の壁部を形成したこと以外は、実施例8と同様に構成されたハニカムフィルタ(実施例9)を製造した。実施例9におけるハニカム構造体の構造を、構造Cとした。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0172】
(実施例10)
実施例10のハニカムフィルタとして、図4に示すような、ハニカム構造体2の骨格となる部分が第一壁部7aによって構成され、この第一壁部7aの裏面に、第二壁部7bと第三壁部7cとが隔壁7の厚さ方向に積層されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。
【0173】
まず、第一壁部からなるハニカム構造前駆体を成形するための成形用坏土を調製した。成型用坏土は、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水35質量部、造孔材15質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて、ニーダーを用いて混練して調製した。コージェライト化原料としては、実施例1に用いたコージェライト化原料と同様に構成されたものを用いた。
【0174】
次に、この得られた成型用坏土を、所望のセル形状、隔壁の厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を作製した。
【0175】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥し、得られたハニカム乾燥体を、800℃で、8時間仮焼して仮焼体を得、得られた仮焼体を、1430℃で、12時間焼成して、第一壁部からなるハニカム構造前駆体を作製した。
【0176】
次に、ハニカム構造前駆体の端面におけるセルの開口部を交互に塞いで市松模様状にマスクを施し、第二壁部と第三壁部とを成形するためのスラリーを順次流し込み、第二壁部と第三壁部とを成形した。
【0177】
具体的には、まず、第二壁部を形成するための、第二壁部用スラリーを調製し、得られた第二壁部用スラリーを、ハニカム構造前駆体のマスクされていないセルの開口部から流し込み、エアーにより過剰分を吹き飛ばすことによって、第二壁部用スラリーからなる層を形成した。その後、第二壁部用スラリーを、90〜130℃で、約1〜3時間乾燥して第二壁部を形成した。
【0178】
第二壁部用スラリーは、コージェライト化原料100部に、分散媒としての水200部、造孔材20質量部を加え、更に、有機バインダ8質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0179】
次に、第三壁部を形成するための、第三壁部用スラリーを調製し、上記した方法と同様の方法によって、第三壁部を形成した。
【0180】
第三壁部用スラリーは、コージェライト化原料100質量部に、分散媒としての水200質量部、造孔材10質量部を加え、更に、有機バインダ5質量部と分散剤0.5質量部を加えて調製した。
【0181】
このようにして、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の三つの壁部が、隔壁の厚さ方向に積層したハニカム構造体を製造した。以下、図4に示すような、ハニカム構造体2の骨格となる部分が第一壁部7aによって構成され構造を、構造Dとした。
【0182】
次に、第一壁部の細孔内に酸化触媒を担持し、得られたハニカム構造体の所定のセルにおける流体が流出する側(流出側)の開口端部と、残余のセルにおける流体が流入する側(流入側)の開口端部を目封止してハニカムフィルタ(実施例10)を製造した。表1に、第一壁部、第二壁部、第三壁部の平均細孔径と気孔率とを示す。また、表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0183】
(実施例11)
第三壁部用スラリーとして、アリミノシリケート繊維と、繊維質間接着成分としてのシリカを含むスラリーを用いて層を形成し、この層を乾燥して第三の壁部を形成したこと以外は、実施例10と同様に構成されたハニカムフィルタ(実施例11)を製造した。実施例11におけるハニカム構造体の構造を、構造Eとした。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0184】
(実施例12)
実施例12のハニカムフィルタとして、図6に示すような、第二壁部7bが、第一壁部7aと第三壁部7cとの間に形成された空隙により構成されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。実施例12におけるハニカム構造体の構造を、構造Fとした。
【0185】
実施例12においては、第一壁部と第三壁部とが別々の多孔質材料で構成され、その間に第二壁部の厚さに相当する空隙を有する形状のハニカム構造前駆体を得、得られたハニカム構造前駆体における第三壁部のみに、小細孔形成用のスラリーを含浸させてハニカム構造体を得、実施例1と同様の方法によって目封止を行いハニカムフィルタを製造した。第三壁部のみに選択的にスラリーを含浸させる方法としては、スラリーを流し込みたい部分に孔の空いたシートを貼り付けてマスクすることにより行うことができる。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0186】
(実施例13)
実施例13のハニカムフィルタとして、図9に示すような、第一壁部7aと第四壁部7dとが一体的に形成され、第一壁部7aと第四壁部7dとの隙間における第四壁部7dの表面に膜状の第三壁部7cが配置され、第一壁部7aと第三壁部7cと間には、空隙によって第二壁部7bが構成されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。実施例13におけるハニカム構造体の構造を、構造Gとした。
【0187】
実施例13のハニカムフィルタは、まず、実施例12における構造Fのハニカム構造体と同構造のハニカム構造体を作製し、次に、ハニカム構造体の一方の端面において、第二壁部となる空隙部分のみが開口するようにシートを貼り付けてマスクを施し、その反対側の端面においては、残余のセル9b(図9参照)の開口部のみが開放されるようにシートを貼り付けてマスクを施した。
【0188】
その後、繊維状の多孔質材料、接着成分、バインダ、及び水からなるスラリーの霧滴とエアーとを、一方の端面から第二壁部7b(図9参照)となる空隙部分に吸い込ませるようにし、反対側端面からのみエアーが流出するようして、第四壁部7d(図9参照)の表面に、上記スラリー霧滴によって形成された第三壁部7c(図9参照)を形成してハニカムフィルタを製造した。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0189】
(実施例14)
実施例14のハニカムフィルタとして、図5に示すような、第二壁部7bが、繊維状の多孔質材料によって構成されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。実施例14におけるハニカム構造体の構造を、構造Hとした。
【0190】
実施例14のハニカムフィルタは、まず、実施例12における構造Fのハニカム構造体と同構造のハニカム構造体を作製し、そのハニカム構造体の第二壁部となる空隙部分に繊維状の多孔質材料を充填し、その両端を目封止することによってハニカムフィルタを製造した。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0191】
(実施例15)
実施例15のハニカムフィルタとして、図10に示すような、第一壁部7aと第四壁部7dとが一体的に形成され、第一壁部7aと第四壁部7dとの隙間に、繊維状の多孔質材料からなる第二壁部7bと、膜上の第三壁部7cとが配置されたハニカム構造体2を備えたハニカムフィルタ1を製造した。実施例15におけるハニカム構造体の構造を、構造Iとした。
【0192】
実施例15のハニカムフィルタは、まず、実施例13における構造Gのハニカム構造体と同構造のハニカム構造体を作製し、そのハニカム構造体の第二壁部となる空隙部分に繊維状の多孔質材料を充填し、その両端を目封止することによってハニカムフィルタを製造した。表2に、セルの水力直径と、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、CO検出量、及び総合評価の評価結果を示す。
【0193】
(結果)
本実施例のハニカムフィルタは、PM堆積時間、PM堆積圧力損失、PM捕集効率、及び総合評価の全てにおいて良好な結果を得ることができた。また、第四壁部を有し、第四壁部の細孔内に酸化触媒を担持したものは、CO検出量が少なく、特に良好な結果を得ることができた。
【0194】
一方、比較例1のハニカムフィルタは、第一壁部の平均細孔径が小さすぎるため、PM堆積時間が極めて短く、フィルタ使用時において連続的な再生が不可能であった。また、比較例2のハニカムフィルタは、第三壁部の平均細孔径が大きすぎるため、PM捕集効率が低く、フィルタとして用いることは困難なものであった。
【0195】
比較例3のハニカムフィルタは、第三壁部に気孔率が低すぎ、また、比較例4のハニカムフィルタは、第二壁部に気孔率が低すぎるため、PM堆積時の圧力損失(PM堆積圧力損失)が大きく、フィルタとして用いることは困難なものであった。また、比較例5のハニカムフィルタは、第一壁部の細孔内に酸化触媒が担持されていないため、PM堆積時間が極めて短く、フィルタ使用時において連続的な再生が不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明のハニカムフィルタは、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業機械用定置エンジン等の内燃機関、その他の燃焼機器等から排出される排ガス中の粒子状物質を排ガス中から除去するためのフィルタとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示すハニカムフィルタを、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図3】図1に示すハニカムフィルタの隔壁を、セルを区画する表面に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図4】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図5】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図6】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図7】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図8】図7に示すハニカムフィルタの隔壁を、セルを区画する表面に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図9】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図10】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図11】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図12】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態を、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図13】実施例1のハニカムフィルタを、セルが貫通する方向に対して垂直に切断した断面を示す拡大断面図である。
【図14】従来のハニカムフィルタを、一方の端面側から見た概略平面図である。
【図15】図14に示すハニカムフィルタの概略断面図である。
【符号の説明】
【0198】
1:ハニカムフィルタ、2:ハニカム構造体、7:隔壁、7a:第一壁部、7b:第二壁部、7c:第三壁部、7d:第四壁部、8:目封止部、9:セル、9a:セル(所定のセル)、9b:セル(残余のセル)、11,12:酸化触媒、51:ハニカムフィルタ、52:ハニカム構造体、53:一方の端面、55:他方の端面、57:隔壁、58:目封止部、59,59a,59b:セル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁を有し、前記隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体と、
複数の前記セルのうち、所定のセルにおける前記流体が流出する流出側の開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける前記流体が流入する流入側の開口端部を目封止する目封止部と、を備え、
前記隔壁の少なくとも一部は、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三つの壁部が、前記所定のセルを区画する表面側から前記隔壁の厚さ方向に積層されたものであり、
前記第一壁部は、前記流出側の開口端部が目封止された前記所定のセルを区画する表面側に配置され、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されたものであり、
前記第二壁部は、前記第一壁部の裏面に配置され、気孔率が、前記第1及び第三壁部の気孔率よりも高く、且つ気孔率の値が60%以上のものであり、
前記第三壁部は、前記第二壁部の裏面に配置され、平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%のものであるハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記所定のセルの水力直径が、前記残余のセルの水力直径と同等又はより大である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記セルの軸方向に垂直な断面における形状が三角形、四角形、又は四角形と八角形との組み合わせのいずれかの形状であり、前記流出側の開口端部が目封止された前記所定のセルと前記流入側の開口端部が目封止された前記残余のセルとが交互に配置されるように、前記目封止部が配設されている請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記第二壁部は、気孔率が64%以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記第一壁部は、平均細孔径が25μm以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記第一壁部の細孔に占める、細孔径が10μm未満の細孔の容積割合が10%未満である請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記第二壁部は、前記第一壁部と前記第三壁部との間に形成された空隙により構成されたものである請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
前記第二壁部は、繊維状の多孔質材料によって構成されたものである請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項9】
前記隔壁の少なくとも一部は、前記第三壁部の裏面に配置された第四壁部を更に有し、
前記第四壁部は、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されたものである請求項1〜8のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項1】
多孔質の隔壁を有し、前記隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体と、
複数の前記セルのうち、所定のセルにおける前記流体が流出する流出側の開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける前記流体が流入する流入側の開口端部を目封止する目封止部と、を備え、
前記隔壁の少なくとも一部は、第一壁部、第二壁部、及び第三壁部の少なくとも三つの壁部が、前記所定のセルを区画する表面側から前記隔壁の厚さ方向に積層されたものであり、
前記第一壁部は、前記流出側の開口端部が目封止された前記所定のセルを区画する表面側に配置され、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されたものであり、
前記第二壁部は、前記第一壁部の裏面に配置され、気孔率が、前記第1及び第三壁部の気孔率よりも高く、且つ気孔率の値が60%以上のものであり、
前記第三壁部は、前記第二壁部の裏面に配置され、平均細孔径が1〜15μmであるとともに、気孔率が50〜90%のものであるハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記所定のセルの水力直径が、前記残余のセルの水力直径と同等又はより大である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記セルの軸方向に垂直な断面における形状が三角形、四角形、又は四角形と八角形との組み合わせのいずれかの形状であり、前記流出側の開口端部が目封止された前記所定のセルと前記流入側の開口端部が目封止された前記残余のセルとが交互に配置されるように、前記目封止部が配設されている請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記第二壁部は、気孔率が64%以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記第一壁部は、平均細孔径が25μm以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記第一壁部の細孔に占める、細孔径が10μm未満の細孔の容積割合が10%未満である請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記第二壁部は、前記第一壁部と前記第三壁部との間に形成された空隙により構成されたものである請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
前記第二壁部は、繊維状の多孔質材料によって構成されたものである請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項9】
前記隔壁の少なくとも一部は、前記第三壁部の裏面に配置された第四壁部を更に有し、
前記第四壁部は、平均細孔径が20μm以上であり、且つ形成された細孔の内表面に酸化触媒が担持されたものである請求項1〜8のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−296141(P2008−296141A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145239(P2007−145239)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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