ハニカムフィルタ
【課題】流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高める。
【解決手段】ハニカムフィルタ20は、流体の流路となる複数のセル23を形成する複数の多孔質の隔壁部22と、隔壁部上に形成され流体に含まれる固体成分を捕集する捕集層24とを備えている。このハニカムフィルタ20には、電子顕微鏡による隔壁部22上の撮影画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、この各々の細孔領域に内接する最大内接円により求められる内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つ内接円直径分布でのメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たし、内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上60%以下を満たす所定の捕集領域が隔壁部上に存在する。
【解決手段】ハニカムフィルタ20は、流体の流路となる複数のセル23を形成する複数の多孔質の隔壁部22と、隔壁部上に形成され流体に含まれる固体成分を捕集する捕集層24とを備えている。このハニカムフィルタ20には、電子顕微鏡による隔壁部22上の撮影画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、この各々の細孔領域に内接する最大内接円により求められる内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つ内接円直径分布でのメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たし、内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上60%以下を満たす所定の捕集領域が隔壁部上に存在する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハニカムフィルタとしては、ハニカム状に配設されたセル壁と、セル壁内に区画された多数のセルとを有し、セル壁の表面から深さ方向に20μmの距離でのセル壁の表面に開口する開気孔の存在率が7%以上であるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このフィルタでは、担持する触媒の耐剥離性を向上することができるとしている。また、ハニカムフィルタとしては、多孔質の隔壁母材と、隔壁母材の流入側に設けられた表層と、を有する隔壁を備え、表層のピーク細孔径、気孔率、表層の厚さ、表層の濾過面積あたりの質量、隔壁母材の平均細孔径などを好適にしたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このフィルタでは、粒子状物質(PM)の捕集開始直後の急激な圧力損失の上昇が無く、PM堆積量と圧力損失との関係がヒステリシス特性を持たず、PMが堆積していない初期状態の圧力損失を低く抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−142704号公報
【特許文献2】WO2008/136232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたハニカムフィルタでは、隔壁の表面の開細孔を大きくすることで触媒が堆積した際の圧損の上昇を抑制しているが、隔壁のみでの対応ではスートが開細孔の中に入り込んでしまい、スートが堆積した際の圧損が著しく上昇してしまうという問題があった。また、特許文献2に記載されたハニカムフィルタでは、圧力損失の上昇を抑えることができるものであるが、特に高流量においてスートが細孔内に入り込んだ際の圧損上昇をより抑制するなど、更なる改良が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができるハニカムフィルタを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明のハニカムフィルタは、
流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集する捕集層と、を備え、
電子顕微鏡による前記隔壁部上の撮影画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、該各々の細孔領域に内接する最大内接円により求められる内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つ該内接円直径分布でのメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たし、前記内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上60%以下を満たす所定の捕集領域が前記隔壁部上に存在するものである。
【0007】
このハニカムフィルタでは、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができる。この理由は、以下のように推察される。例えば、電子顕微鏡による隔壁部上の撮影画像に含まれる複数の細孔領域の各々に内接する最大内接円を用いて、隔壁部上の内接円直径分布のメディアン細孔径D50,D80を求めることができる。この内接円直径分布のメディアン細孔径D50が1μm以上では、捕集層のパーミアビリティ(透過性)が大きく、圧力損失が大きく低下する。また、メディアン細孔径D50が6μm以下では、特に高流量となる高負荷時において、固体成分(PM)が捕集層の開細孔を通過しにくく、隔壁細孔への固体成分の堆積を抑制可能であり、圧力損失の上昇をより抑制することができる。また、メディアン細孔径D80が1μm以上では、捕集層のパーミアビリティが大きく、圧力損失が大きく低下する。また、メディアン細孔径D80が7μm以下では、特に高流量となる高負荷時において、固体成分が捕集層の開細孔を通過しにくく、隔壁細孔への固体成分の堆積を抑制可能であり、圧力損失の上昇をより抑制することができる。更に、内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上では、透過抵抗の上昇がより抑制され、圧損がより低下する。また、内接円気孔率が60%以下では、捕集層の捕集性能が十分に確保でき、固体成分の捕集層の通過を抑制し捕集効率をより高めることができる。このように、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができる。
【0008】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記所定の捕集領域は、更に0.1<D50/D80<1を満たすものとしてもよい。D50/D80が0.1より大きいと閉気孔の増加による圧損上昇を抑制することができる。なお、このメディアン細孔径D80に対するメディアン細孔径D50の比D50/D80は、1以下を満たす。
【0009】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部は、下流側端面から前記ハニカムフィルタの全長に対して20%の領域が少なくとも前記所定の捕集領域であり、且つ下流側端面から前記ハニカムフィルタの全長に対して50%以下の領域が前記所定の捕集領域であるものとしてもよい。即ち、下流側端面から全長の20%の部位までが所定の捕集領域として最低限存在すべき領域であり、下流側端面から全長の50%の部位までを所定の捕集領域として最大存在するものとしてもよい。ハニカムフィルタの全長に対して下流側端面から20%以上の領域が少なくともこの捕集領域であれば、固体成分の捕集層による捕捉を十分確保し、隔壁細孔への固体成分の堆積をより抑制することができ、圧損の上昇をより抑制することができる。また、下流側端面から50%以下の領域がこの捕集領域であれば、例えば、触媒を担持する際に触媒スラリーがハニカムフィルタの上流域で十分透過でき、捕集層内部、及び、捕集層と隔壁との界面部分への触媒の凝集をより抑制することができ、圧損上昇をより抑制することができる。
【0010】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記ハニカムフィルタの全長に対して上流側端面から20%以下の領域である上流領域には、前記内接円直径分布により求められる内接円気孔率が15%以上40%以下を満たす領域が存在することが好ましい。上流領域での内接円気孔率が15%以上では、透過抵抗の上昇がより抑制され、圧損がより低下する。上流領域での内接円気孔率が40%以下では、捕集層の捕集性能が十分に確保でき、固体成分の捕集層の通過を抑制し捕集効率をより高めることができる。このとき、上流領域の内接円直径分布により求められる内接円気孔率は、前記所定の捕集領域での内接円直径分布により求められる内接円気孔率よりも小さいことが好ましい。こうすれば、上流領域と所定の捕集領域との流体の流通をより好適にすることができる。
【0011】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記捕集層は、気体を搬送媒体とし該捕集層の原料である無機材料を前記セルへ供給することにより形成されているものとしてもよい。こうすれば、気体による搬送を利用して、捕集層の厚さなど、捕集層の形成状態を比較的容易に制御することができる。
【0012】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。また、前記捕集層は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、前記捕集層は、前記隔壁部と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。
【0013】
本発明のハニカムフィルタは、前記隔壁部及び前記捕集層を有する2以上のハニカムセグメントが接合層によって接合されて形成されているものとしてもよい。こうすれば、接合層で接合することによりハニカムフィルタの機械的強度をより高めることができる。あるいは、本発明のハニカムフィルタは、一体成形されているものとしてもよい。こうすれば、構成を簡素化することにより、ハニカムフィルタを作製しやすい。
【0014】
本発明のハニカムフィルタは、触媒が担持されているものとしてもよい。こうすれば、捕集した固体成分の燃焼除去などをより効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図。
【図2】捕集層24の細孔分布の測定位置の説明図。
【図3】SEM画像による捕集層の細孔分布の算出方法の説明図。
【図4】最大内接円の直径と積算面積との関係図。
【図5】一体成形されたハニカムフィルタ40の構成の概略の一例を示す説明図。
【図6】隔壁部のみの表面、上流領域及び下流領域の隔壁部表面のSEM写真。
【図7】SEM画像から内接円直径分布を求める説明図。
【図8】実験例6〜16の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布によるメディアン細孔径D50との関係図。
【図9】実験例7〜15の圧力損失及びPM捕集効率とD50/D80との関係図。
【図10】実験例17〜23の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布によるメディアン細孔径D80との関係図。
【図11】実験例24〜34の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布による下流領域での内接円気孔率との関係図。
【図12】実験例35〜45の圧力損失及びPM捕集効率と、所定の捕集領域の下流側端部からの距離割合との関係図。
【図13】実験例46〜52の圧力損失及びPM捕集効率と、上流領域の捕集層の内接円気孔率との関係図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のハニカムフィルタの一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。また、図2は、捕集層24の細孔分布の測定位置の説明図であり、図3は、SEM画像による捕集層の細孔分布の算出方法の説明図であり、図4は、最大内接円の直径と積算面積との関係図である。本実施形態のハニカムフィルタ20は、図1に示すように、隔壁部22を有する2以上のハニカムセグメント21が接合層27によって接合された形状を有し、その外周に外周保護部28が形成されている。なお、図1には、ハニカムフィルタ20の外形が円柱状に形成され、ハニカムセグメント21の外形が矩形柱状に形成され、セル23が矩形状に形成されているものを一例として示す。このハニカムフィルタ20は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止部26により目封止され、流体としての排ガスの流路となる複数のセル23を形成する多孔質の隔壁部22と、隔壁部22上に形成され流体(排ガス)に含まれる固体成分(PM)を捕集する層である捕集層24と、を備えている。このハニカムフィルタ20では、隔壁部22は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセル23と一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口したセル23とが交互に配置されるよう形成されている。また、ハニカムフィルタ20では、入口側からセル23へ入った排ガスが捕集層24及び隔壁部22を介して出口側のセル23を通過して排出され、このとき、排ガスに含まれるPMが捕集層24上に捕集される。
【0017】
隔壁部22は、その厚さである隔壁厚さが150μm以上460μm以下で形成されていることが好ましく、200μm以上400μm以下であることがより好ましく、280μm以上350μm以下であることが更に好ましい。この隔壁部22は、多孔質であり、例えば、コージェライト、Si結合SiC、再結晶SiC、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このうち、コージェライトやSi結合SiC、再結晶SiCなどが好ましい。隔壁部22は、その気孔率が30体積%以上85体積%以下であることが好ましく、35体積%以上65体積%以下であることがより好ましい。この隔壁部22は、その平均細孔径が10μm以上60μm以下の範囲であることが好ましい。この隔壁部22の気孔率や平均細孔径は、水銀圧入法により測定した結果をいうものとする。このような気孔率、平均細孔径、厚さで隔壁部22を形成すると、排ガスが通過しやすく、PMを捕集・除去しやすい。
【0018】
捕集層24は、排ガスに含まれるPMを捕集・除去する層であり、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径で構成された粒子群により隔壁部22上に形成されているものとしてもよい。この捕集層24を構成する原料粒子の平均粒径は、0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。平均粒径が0.5μm以上では、捕集層を構成する粒子の粒子間の空間のサイズを十分に確保可能であるため捕集層の透過性を維持でき急激な圧力損失の上昇を抑制することができる。平均粒径が15μm以下では、粒子同士の接触点が十分に存在するから粒子間の結合強度を十分に確保可能であり捕集層の剥離強度を確保することができる。この捕集層24は、排ガスの入口側セル及び出口側セルの隔壁部22に形成されているものとしてもよいが、図1に示すように、入口側セルの隔壁部22上に形成されており、出口側セルには形成されていないものとするのが好ましい。こうすれば、より圧力損失を低減して流体に含まれているPMをより効率よく除去することができる。また、ハニカムフィルタ20の作製が容易となる。この捕集層24は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、捕集層24は、隔壁部22と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。なお、原料粒子における平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として原料粒子を測定したメディアン径(D50)をいうものとする。また、捕集層24は、無機材料の粒子群から形成されており、隔壁部22の表面に均一な層として形成されていてもよいし、隔壁部22の表面に部分的な層として形成されていてもよい。
【0019】
このハニカムフィルタ20は、電子顕微鏡による隔壁部上の撮影画像(SEM画像)を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、この各々の細孔領域に内接する最大内接円により求められる内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つこの内接円直径分布でのメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たす所定の捕集領域が隔壁部22上に存在する。この内接円直径分布のメディアン細孔径D50が1μm以上では、捕集層24のパーミアビリティ(透過性)が大きく、圧力損失を低下することができる。また、メディアン細孔径D50が6μm以下では、特に高流量となる高負荷時において、PMが捕集層の開細孔を通過しにくく、隔壁細孔へのPMの堆積を抑制可能であり、圧力損失の上昇をより抑制することができる。また、メディアン細孔径D80が1μm以上では、捕集層のパーミアビリティが大きく、圧力損失が大きく低下する。また、メディアン細孔径D80が7μm以下では、特に高流量となる高負荷時において、PMが捕集層の開細孔を通過しにくく、隔壁細孔へのPMの堆積を抑制可能であり、圧力損失の上昇をより抑制することができる。この所定の捕集領域は、ハニカムフィルタ20の下流領域であることが好ましい。こうすれば、PMの捕集をより十分に行うことができる。
【0020】
このハニカムフィルタ20は、SEM画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、この各々の細孔領域に内接する最大内接円により求められる内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上60%以下を満たす所定の捕集領域を有する。内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上では、透過抵抗の上昇がより抑制され、圧損がより低下する。また、内接円気孔率が60%以下では、捕集層の捕集性能が十分に確保でき、PMの捕集層の通過を抑制し捕集効率をより高めることができる。このように、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができる。
【0021】
このハニカムフィルタ20は、メディアン細孔径D80に対するメディアン細孔径D50の比をD50/D80としたとき、所定の捕集領域が、更に0.1<D50/D80<1を満たすものとしてもよい。D50/D80が0.1より大きいと閉気孔の増加による圧損上昇を抑制することができる。また、0.15≦D50/D80≦0.60を満たすことがより好ましい。こうすれば、より圧力損失を低減することができる。なお、このメディアン細孔径D80に対するメディアン細孔径D50の比D50/D80は、1以下を満たす。
【0022】
ハニカムフィルタ20において、隔壁部22は、下流側端面からハニカムフィルタの全長に対して20%の領域が少なくとも所定の捕集領域であり、且つ下流側端面からハニカムフィルタの全長に対して50%以下の領域が所定の捕集領域であるものとしてもよい。即ち、下流側端面から全長の20%の部位までが所定の捕集領域として最低限存在すべき領域であり、下流側端面から全長の50%の部位までが最大存在する所定の捕集領域としてもよい。ハニカムフィルタの全長に対して下流側端面から20%以上の領域が少なくともこの捕集領域であれば、PMの捕集層による捕捉を十分確保し、隔壁細孔へのPMの堆積をより抑制することができ、圧損の上昇をより抑制することができる。また、下流側端面から50%以下の領域がこの捕集領域であれば、例えば、触媒を担持する際に触媒スラリーがハニカムフィルタの上流域で十分透過でき、捕集層内部、及び、捕集層と隔壁との界面部分への触媒の凝集をより抑制することができ、圧損上昇をより抑制することができる。このように、「所定の捕集領域」はハニカムフィルタ20の下流領域に存在することが好ましい。
【0023】
ハニカムフィルタ20において、ハニカムフィルタ20の全長に対して上流側端面から20%以下の領域である上流領域での内接円直径分布により求められる内接円気孔率が15%以上40%以下を満たすことが好ましい。上流領域での内接円気孔率が15%以上では、透過抵抗の上昇がより抑制され、圧損がより低下する。上流領域での内接円気孔率が40%以下では、捕集層の捕集性能が十分に確保でき、PMの捕集層の通過を抑制し捕集効率をより高めることができる。このとき、上流領域の内接円直径分布により求められる内接円気孔率は、所定の捕集領域での内接円直径分布により求められる内接円気孔率よりも小さいことがより好ましい。こうすれば、上流領域と所定の捕集領域との流体の流通をより好適にすることができる。
【0024】
ここで、内接円直径分布でのメディアン細孔径D50,D80及び、内接円直径分布での内接円気孔率について詳しく説明する。隔壁部22上に形成された捕集層24の細孔分布や比表面積などは、ガス吸着測定や水銀圧入法などでも求めることが困難である。ここでは、隔壁上のSEM写真を撮影し、撮影したSEM写真を解析することにより、捕集層24を主とする細孔径や気孔率を求めるものとした。まず、SEM撮影用の試料は、図2の上段に示すように、ハニカムフィルタ20の全長に対して下流側端面から所定割合の部位(上記所定の捕集領域)にてハニカムフィルタを輪切りにし、その断面における中央部分より約1cm角程度の観察試料を3つ切り出し研磨して得るものとする。下流側端面から所定割合の部位は、下流側端面から全長の20%〜50%、主として35%の領域とする。また、上流領域については、ハニカムフィルタ20の全長に対して上流側端面から20%の部位を輪切りにし、その断面における中央部分より約1cm角程度の観察試料を3つ切り出し研磨して得るものとする。試料は、図2の下段に示すように、隔壁部22と水平な面で切断するものとする。こうすれば、隔壁部22の表面に形成された捕集層24を観察しやすい。次に、各切出試料の隔壁部22の表面に対して、任意の5視野のSEM写真を撮影する(図3上段参照)。図3上段には、隔壁部粒子31上に捕集層粒子32が形成されたSEM画像30を示した。撮影時の倍率は1000倍とし、SEM画像を保存する際の画素数は1024×960とする。3つの切出試料、各5視野の計15のSEM画像を取得し、画像解析を実行してメディアン細孔径や気孔率値を計測し、その平均値を所定の捕集領域(下流領域)での値とする。ここでは、捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50(μm)、捕集層のメディアン細孔径D80(μm)、捕集層の内接円気孔率(面積%)を求めた。なお、画像解析方法については、後述する。また、上流領域に関しても、下流領域と同様の手順で観察試料を取得し、SEM観察を行い、得られたSEM画像から捕集層の内接円気孔率(面積%)を求める。このSEM撮影において、コントラスト及びブライトネスについては、走査型電子顕微鏡にて推奨されるコントラスト及びブライトネスのレンジ内とすればよい。こうすれば、後述する画像解析の2値化処理の実行において、SEM画像での影響をより低減することができる。
【0025】
電子顕微鏡による隔壁部上の撮影画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、この各々の細孔領域に内接する最大内接円により内接円直径分布を求め、この内接円直径分布から得られるメディアン細孔径D50、メディアン細孔径D80及び内接円気孔率を求める。図3中段に示すように、SEM画像30に対し、画像解析ソフトによる2値化処理を行い、材料領域33と細孔領域34とに分割する。画像解析にて材料領域33と細孔領域34とに2値化する境界を決める明るさの閾値は、8ビットにて分割した0から255までの明るさの段階における10段階目とする。SEM画像は、モノクロ画像であるので、RGB値のいずれかの値が0から255までの明るさの段階における「10」以上で材料領域と判定し、「10」未満では細孔領域であるものと判定すればよい。この閾値が「10」より小さいと粒子間細孔以外のわずかな隙間や画像のブレなどの影響を強く拾ってしまうために細孔の形態を適切に評価する事が困難である。また、「10」より大きいと特に捕集層を形成したものにおいて、細孔間の粒子が十分に識別されずに連結した一つの細孔と認識されてしまう頻度が高くなる。このため、閾値を「10」とすることが好適である。また、この2値化処理にて、取得された細孔領域に関して、50ピクセル未満のサイズのものはSEM撮影時のゴミや樹脂研磨時のわずかなクラックなどの影響を多く含んでいることから、これを排除し、50ピクセル以上のサイズのものを細孔領域と定義する。次に、図3下段に示すように、SEM画像30に含まれる複数の細孔領域34の各々に対し、その領域に内接する最大内接円36を描き、この最大内接円36の直径や個数などをカウントする。細孔領域は、様々な形状を有しているが、1つの領域に対して1つの最大内接円36を描くものとする。図4に示すように、横軸を最大内接円の直径とし、縦軸をこの最大内接円の積算面積としてプロットし、この分布より内接円直径分布によるメディアン細孔径D50、D80を算出することができる。また、観察視野全体の面積に対する最大内接円の積算面積の割合を内接円気孔率(面積%)とすることができる。
【0026】
捕集層24の形成方法は、流体を捕集層の原料の搬送媒体とし、捕集層の原料を含む気体を入口セルへ供給するものとしてもよい。こうすれば、捕集層を構成する粒子群がより粗に形成されるため、高い気孔率の捕集層を作製することができ、好ましい。搬送媒体としての流体は、例えば、空気や、窒素ガスなどの気体であることが好ましい。捕集層の原料は、例えば、無機繊維や無機粒子を用いてもよい。あるいは、無機繊維は上述したものを用いることができ、例えば平均粒径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であるものが好ましい。無機粒子としては、上述した無機材料の粒子を用いることができる。例えば、平均粒径が0.5μm以上15μm以下のSiC粒子やコージェライト粒子を用いることができる。この捕集層の原料は、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有することが好ましい。このとき、隔壁部22と捕集層24との無機材料を同じ材質とすることが好ましい。また、無機粒子を含む気体を流入させる際に、気体の出口側を吸引することが好ましい。また、捕集層24の形成において、無機繊維や無機粒子と共に結合材も供給してもよい。結合材としてはゾル材料、コロイド材料から選択でき特にコロイダルシリカを用いることが好ましい。無機粒子はシリカにより被覆されており且つ無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とがシリカにより結合されていることが好ましい。例えば、コージェライトやチタン酸アルミニウムなどの酸化物材料の場合には、無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とが焼結により結合されているのが好ましい。捕集層24は、隔壁部22上に原料の層を形成したあと、熱処理を行い結合することが好ましい。熱処理での温度としては、例えば650℃以上1350℃以下の温度とするのが好ましい。熱処理温度が650℃以上では十分な結合力を確保することができ、1350℃以下であると過度な粒子の酸化による細孔の閉塞を抑制することができる。なお、捕集層24の形成方法は、例えば、捕集層24の原料になる無機粒子を含むスラリーを用いてセル23の表面に形成するものとしてもよい。
【0027】
流体(空気)を捕集層の原料の搬送媒体として形成した捕集層24では、内接円直径分布でのメディアン細孔径D50,D80や、内接円直径分布での内接円気孔率は、捕集層原料の平均粒径や、粒度分布、捕集層原料の供給量、流体流量などの条件を適宜設定することにより、制御することができる。更に、ハニカムセグメント21の上流領域や下流領域など、所定の領域の隔壁部22に、アルコールや水、樹脂などを含ませておくことで、流体の透過抵抗を高めることにより、供給した捕集層原料粒子の堆積領域を制御することができる。例えば、捕集層原料粒子の平均粒径を2.3μm〜10μmとしたり、捕集層原料粒子の粒度分布としてのシャープネス指数Dsを0.7〜1.8としたり、流体の流量を160L/min〜720L/minとしたりすることにより、内接円直径分布の値を変更することができる。ここで、シャープネス指数Dsは、所定の平均粒径(例えば5μm)の捕集層原料の粒径分布の鋭角さを示す指標であり、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置による原料粉体のメディアン径D10,D50,D90を用い、Ds=D50/(D90−D10)により計算するものと定義した。
【0028】
接合層27は、ハニカムセグメント21を接合する層であり、無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。無機粒子は、上述した無機材料の粒子とすることができ、その平均粒径は0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。無機繊維は、例えば、アルミノシリケート、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びムライトから選択される1以上の材料を含んで形成されているものとすることができる。この無機繊維は、例えば平均粒径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であることが好ましい。結合材としてはコロイダルシリカや粘土などとすることができる。接合層27は、0.5mm以上2mm以下の範囲で形成されていることが好ましい。外周保護部28は、ハニカムフィルタ20の外周を保護する層であり、上述した無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。
【0029】
ハニカムフィルタ20において、40℃〜800℃におけるセル23の通過孔方向の熱膨張係数は、6.0×10-6/℃以下であることが好ましく、1.0×10-6/℃以下であることがより好ましく、0.8×10-6/℃以下であることが更に好ましい。この熱膨張係数が6.0×10-6/℃以下であると、高温の排気に晒された際に発生する熱応力を許容範囲内に抑えることができる。
【0030】
このハニカムフィルタ20の外形は、特に限定されないが、円柱状、四角柱状、楕円柱状、六角柱状などの形状とすることができる。ハニカムセグメント21の外形は、特に限定されないが、接合しやすい平面を有していることが好ましく、断面が多角形の角柱状(四角柱状、六角柱状など)の形状とすることができる。セルは、その断面の形状として3角形、4角形、6角形、8角形などの多角形の形状や円形、楕円形などの流線形状、及びそれらの組み合わせとすることができる。例えば、セル23は排ガスの流通方向に垂直な断面が4角形に形成されているものとしてもよい。
【0031】
ハニカムフィルタ20において、セルピッチは、1.0mm以上2.5mm以下とするのが好ましい。PM堆積時の圧力損失は、濾過面積が大きいほど小さい値を示す。一方、初期の圧力損失は、セル直径が小さいほど大きい値を示す。したがって、初期圧力損失、PM堆積時の圧力損失、PMの捕集効率のトレードオフを考慮して、セルピッチ、セル密度や隔壁部22の厚さを設定するものとすればよい。
【0032】
ハニカムフィルタ20は、触媒が担持されているものとしてもよい。この触媒は、捕集されたPMの燃焼を促進する触媒、排ガスに含まれる未燃焼ガス(HCやCOなど)を酸化する触媒及びNOxを吸蔵/吸着/分解する触媒のうち少なくとも1種以上としてもよい。こうすれば、PMを効率よく除去することや未燃焼ガスを効率よく酸化することやNOxを効率よく分解することなどができる。この触媒としては、例えば、貴金属元素、遷移金属元素を1種以上含むものとするのがより好ましい。また、ハニカムフィルタ20では、他の触媒や浄化材が担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)などを含むNOx吸蔵触媒、少なくとも1種の希土類金属、遷移金属、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が挙げられる。具体的には、貴金属としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)や、金(Au)及び銀(Ag)などが挙げられる。触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sc,Ti,V,Cr等が挙げられる。また、希土類金属としては、例えば、Sm,Gd,Nd,Y,La,Pr等が挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg,Ca,Sr,Ba等が挙げられる。このうち、白金及びパラジウムがより好ましい。また、貴金属及び遷移金属、助触媒などは、比表面積の大きな担体に担持してもよい。担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトなどを用いることができる。PMの燃焼を促進する触媒を有するものとすれば、捕集層24上に捕集されたPMをより容易に除去することができるし、未燃焼ガスを酸化する触媒やNOxを分解する触媒を有するものとすれば、排ガスをより浄化することができる。
【0033】
以上説明した実施例のハニカムフィルタ20によれば、隔壁部22上に形成された捕集層24の内接円直径分布でのメディアン細孔径D50,D80や内接円気孔率などを好適な範囲とすることによって、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができる。一般に、捕集層は、隔壁部上に形成された薄い層であることから、ガス吸着測定による細孔分布測定や、水銀圧入法による細孔分布測定では、捕集層での細孔を評価することが困難であった。ここでは、SEM画像に含まれる複数の細孔領域の各々に内接する最大内接円から捕集層における内接円直径分布のメディアン細孔径D50,D80を求めるものとした。この方法によれば、例えばガス吸着や水銀圧入法など、何らかの媒体により間接的に測定するよりもより直接的な細孔の解析が可能であると考えられる。更に、SEM画像から得られる内接円直径分布のメディアン細孔径D50,D80や内接円気孔率を好適な範囲とすることによって、従来よりも圧力損失をより抑制し捕集効率の低下を防ぐなど、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができるのである。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、ハニカムセグメント21を接合層27により接合したハニカムフィルタ20としたが、図5に示すように、一体成形されたハニカムフィルタ40としてもよい。ハニカムフィルタ40において、隔壁部42、セル43、捕集層44、目封止部46などは、ハニカムフィルタ20の隔壁部22、セル23、捕集層24、目封止部26と同様の構成とすることができる。こうしても、排ガスに含まれているPMの捕集・除去性能ををより高めることができる。
【0036】
上述した実施形態では、ハニカムフィルタ20には触媒が含まれるものとしたが、流通する流体に含まれる除去対象物質を浄化処理可能なものであれば特にこれに限定されない。あるいは、ハニカムフィルタ20は、触媒を含まないものとしてもよい。また、排ガスに含まれるPMを捕集するハニカムフィルタ20として説明したが、流体に含まれる固体成分を捕集・除去するものであれば特にこれに限定されず、建設機器の動力エンジン用のハニカムフィルタとしてもよいし、工場や発電所用のハニカムフィルタとしてもよい。
【実施例】
【0037】
以下には、ハニカムフィルタを具体的に製造した例を実験例として説明する。ここでは、複数のハニカムセグメントを接合した構造のハニカムフィルタを作製した。
【0038】
[ハニカムフィルタの作製]
SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得る。所定の金型を用いてこの坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形した。ここでは、隔壁部の厚さが305μm、セルピッチが1.47mm、断面が35mm×35mm、長さが152mmの形状に成形した。次に、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波により乾燥させ、更に熱風にて乾燥させた後、目封止をして、酸化雰囲気において550℃、3時間で仮焼きした後に、不活性雰囲気下にて1400℃、2時間の条件で本焼成を行った。目封止部の形成は、セグメント成形体の一方の端面のセル開口部に交互にマスクを施し、マスクした端面をSiC原料を含有する目封止スラリーに浸漬し、開口部と目封止部とが交互に配設されるように行った。また、他方の端面にも同様にマスクを施し、一方が開口し他方が目封止されたセルと一方が目封止され他方が開口したセルとが交互に配設されるように目封止部を形成した。得られたハニカムセグメント焼成体の排ガス流入側の開口端部より、隔壁の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有するSiC粒子を含む空気を流入させ、且つハニカムセグメントの流出側より吸引しながら、排ガス流入側の隔壁の表層に堆積させた。このとき、後述する捕集層の細孔分布調整処理を行い、ハニカムフィルタの上流領域及び下流領域での細孔分布を調整した捕集層を隔壁部に形成した。次に、大気雰囲気下にて1300℃、2時間の条件の熱処理により、隔壁の表層に堆積させたSiC粒子同士、及び堆積させたSiC粒子と隔壁を構成するSiC及びSi粒子と結合させた。このように、隔壁部上に捕集層を形成したハニカムセグメントを作製した。このようにして得られたハニカムセグメントの側面に、アルミナシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、SiC、および水を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角形状のハニカムセグメント接合体を得た。さらに、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周囲を、接合用スラリーと同等の材料からなる外周コート用スラリーで被覆し、乾燥により硬化させることにより所望の形状、セグメント形状、セル構造を有する円柱形状のハニカムフィルタを得た。ここでは、ハニカムフィルタは、断面の直径が144mm、長さが152mmの形状とし、隔壁部の厚さを300μm、セルピッチを1.47mmとした。また、後述する実験例1〜58の隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率は40体積%であり、平均細孔径は14μmである。また、後述する実験例59〜61の隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率はそれぞれ60体積%、50体積%及び50体積%であり、気孔径はそれぞれ25μm、25μm及び15μmである。なお、捕集層の気孔率及び気孔径は、詳しくは後述するが、電子顕微鏡による隔壁部上の撮影画像から求められる内接円直径分布の値をいうものとする。また、隔壁部の気孔率及び平均細孔径は水銀ポロシメータ(Micromeritics社製Auto PoreIII型式9405)を用いて測定した。また、捕集層の原料粒子の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−910)を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)である。
【0039】
[捕集層の細孔分布調整処理]
捕集層の粒子群を形成するSiC粒子を空気と共にハニカムセグメントへ供給し、SiC粒子を隔壁部上に堆積させた。このとき、SiC粒子の平均粒径や、粒度分布、SiC粒子の供給量、供給する空気流量などを適宜制御することにより、隔壁部上に形成される捕集層の気孔率や細孔径などを制御することができる。更に、ハニカムセグメントの上流領域や下流領域など、所定の領域の隔壁部に、アルコールや水、樹脂などを含ませておくことで、空気の透過抵抗を高めることにより、供給したSiC粒子の堆積領域を制御することができる。例えば、SiC粒子の平均粒径を2.3μm〜10μmとしたり、SiC粒子の粒度分布の指標を表すシャープネス指数Dsを0.7〜1.8としたり、供給空気の流量を160L/min〜720L/minとした。また、下流側領域の製膜時には、下流側領域以外の領域を吸水させた。一方、下流側領域の製膜後は、この下流側領域を樹脂埋めし、下流側領域以外を製膜した。このようにして、各領域の捕集層の気孔率や細孔径を制御した。なお、シャープネス指数Dsは、所定の平均粒径(例えば5μm)のSiC粒子の粒径分布の鋭角さを示す指標であり、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置による原料粉体のメディアン径D10,D50,D90を用い、Ds=D50/(D90−D10)により定義した。
【0040】
[触媒担持]
まず、重量比でアルミナ:白金:セリア系材料=7:0.5:2.5とし、セリア系材料を重量比でCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5とした原料を混合し、溶媒を水とした触媒のスラリーを調製した。次に、ハニカムセグメントの出口端面(排ガスが流出する側)を所定の高さまで浸漬させ、入口端面(排ガスが流入する側)より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定時間にわたって吸引し、隔壁に触媒を担持し、120℃2時間で乾燥させた後、550℃1時間で焼付けを行った。ハニカムフィルタの単位体積当たりの触媒量は、45g/Lとなるようにした。
【0041】
(SEM撮影)
作製したハニカムフィルタの断面のSEM撮影を走査型電子顕微鏡(堀場製作所製LA−910)を用いて行った。図6は、隔壁部のみの表面、上流領域及び下流領域の隔壁部表面のSEM写真であり、図7は、SEM画像を用い、隔壁部の表面及び捕集層の表面の内接円直径分布を求める説明図である。まず、SEM撮影用のサンプルは、図2に示すように、ハニカムフィルタの全長に対して下流側端面から所定割合(15%〜55%、主として35%)の部位にてハニカムフィルタを輪切りにし、その断面における中央部分より約1cm角程度の観察試料を3つ切り出して研磨した。このとき、断面が隔壁部に対して水平になるように、試料を切り出した。次に、各切出試料に対して任意の5視野のSEM写真を撮影した(図6,図7上段参照)。撮影時の倍率は1000倍とし、SEM画像を保存する際の画素数は1024×960とした。3つの切出試料、各5視野の計15のSEM画像を撮影し、下記画像解析を実行してメディアン細孔径や気孔率値を計測し、その平均値を下流領域での値とした。ここでは、捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50(μm)、捕集層のメディアン細孔径D80(μm)、捕集層の内接円気孔率(面積%)を求めた。なお、画像解析方法については、下記に説明する。また、上流側に関しても、下流と同様にハニカムフィルタの全長に対して上流側端面から20%の部位を輪切りにし、同様の手順で観察試料を取得し、SEM観察を行い、得られたSEM画像から捕集層の内接円気孔率(面積%)を求めた。このSEM撮影において、コントラスト及びブライトネスについては、走査型電子顕微鏡(堀場製作所製LA−910)にて推奨されるコントラスト及びブライトネスのレンジ内とした。こうすれば、下記画像解析の2値化処理の実行において、SEM画像での影響はほとんどなかった。
【0042】
(内接円直径分布)
電子顕微鏡による隔壁部上の撮影画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、この各々の細孔領域に内接する最大内接円により内接円直径分布を求め、この内接円直径分布から得られるメディアン細孔径D50、メディアン細孔径D80及び内接円気孔率を求めた。SEMの膜面画像に対し、画像解析ソフトによる2値化処理を行い、材料領域と細孔領域とに分けた(図6中段参照)。画像解析にて材料領域と細孔領域とに2値化する境界を決める明るさの閾値は、8ビットにて分割した0から255までの明るさの段階における10段階目とした。SEM写真は、モノクロ画像であるので、RGB値のいずれかの値が0から255までの明るさの段階における「10」以上で材料領域と判定し、「10」未満では細孔領域であるものと判定した。この閾値が「10」より小さいと粒子間細孔以外のわずかな隙間や画像のブレなどの影響を強く拾ってしまうために細孔の形態を適切に評価する事が困難であった。また、「10」より大きいと特に捕集層を形成したものにおいて、細孔間の粒子が十分に識別されずに連結した一つの細孔と認識されてしまう頻度が高くなることがあった。このため、閾値を「10」とした。また、この2値化にて取得された細孔領域に関して、50ピクセル未満のサイズのものはSEM撮影時のゴミや樹脂研磨時のわずかなクラックなどの影響を多く含んでいることから、これを排除し、50ピクセル以上のサイズのものを細孔領域と定義した。次に、SEM画像に含まれる複数の細孔領域の各々に対し、その領域に内接する最大円を描き、この最大円の直径や個数などをカウントした。細孔領域は、様々な形状を有しているが、1つの領域に対して1つの最大内接円を描くものとした(図6下段参照)。この分布より内接円直径分布によるメディアン細孔径D50、D80を算出した。また、観察視野全体の面積に対する最大内接円の積算面積の割合を内接円気孔率(面積%)とした。
【0043】
(実験例1〜5)
隔壁部の水銀ポロシメータにより求められる気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を9μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を12μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%としたハニカムフィルタを実験例1とした。なお、実験例1〜34,46〜55では、「下流領域」は、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して35%である断面とした。また、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を7μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を11μmとした以外は実験例1と同様に作製したハニカムフィルタを実験例2とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を5μmとした以外は実験例2と同様に作製したハニカムフィルタを実験例3とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を3μmとした以外は実験例2と同様に作製したハニカムフィルタを実験例4とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μmとした以外は実験例2と同様に作製したハニカムフィルタを実験例5とした。
【0044】
(実験例6〜10)
隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を8μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を9μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%としたハニカムフィルタを実験例6とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を6μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例7とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を4μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例8とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を3μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例9とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を2μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例10とした。
【0045】
このように、実験例6〜10では、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を主として調整した。この細孔分布調整処理について説明する。メディアン細孔径D50の調整は、まず、下流領域以外の部分を吸水させて下流領域以外の透過抵抗を高めた状態とする。次に、捕集層原料の平均粒径を4μm〜10μmに調整し、流量550L/minで空気を流通させ、下流領域での捕集層の形成量である製膜量を1.0g/Lとなるよう調整し、この下流領域に捕集層原料を堆積させた。その後、製膜を施した下流領域に対し樹脂をコーティングし、上流領域に捕集層原料粒子(平均粒径5μm)を流量450L/minで1.0g/Lとなるよう製膜させた。下流領域での原料平均粒径(μm)、製膜量(g/L)、供給空気流量(L/min)に加え、この条件で得られた下流領域でのメディアン細孔径D50(μm)をまとめて表1に示した。このようにして、下流領域のメディアン細孔径D50を主として種々の値に調整したハニカムフィルタを得ることができる。なお、実験例1〜5においても同様の手法により、メディアン細孔径D50を調整した。
【0046】
【表1】
【0047】
(実験例11〜16)
下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を11μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例11とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を10μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例12とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例13とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を6μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例14とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を4μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例15とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を0.5μm、メディアン細孔径D80を3μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例16とした。
【0048】
(実験例17〜23)
隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を3μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を9μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%としたハニカムフィルタを実験例17とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を3μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例18とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を3μm、メディアン細孔径D80を5μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例19とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を2μm、メディアン細孔径D80を3μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例20とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を2μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例21とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を0.5μm、メディアン細孔径D80を1μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例22とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を0.3μm、メディアン細孔径D80を0.5μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例23とした。
【0049】
このように、実験例11〜23では、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D80を主として調整した。この細孔分布調整処理について説明する。メディアン細孔径D80の調整は、捕集層を形成する原料の粒径分布のシャープネス指数Dsを変化させることで行った。まず、下流領域以外の部分を吸水させて下流領域以外の透過抵抗を高めた状態とする。次に、捕集層原料のシャープネス指数Dsを0.4〜1.8に調整し、流量600L/minで空気を流通させ、下流領域での捕集層の形成量である製膜量を1.0g/Lとなるよう調整し、この下流領域に捕集層原料を堆積させた。このとき、実験例11〜16では、下流領域には平均粒径3μmの捕集層原料粒子を用い、実験例17〜23では、下流領域には平均粒径5μmの捕集層原料粒子を用いた。その後、製膜を施した下流領域に対し樹脂をコーティングし、上流領域に平均粒径5μmの捕集層原料粒子(シャープネス指数Ds=0.2)を流量450L/minで1.0g/Lとなるよう製膜させた。下流領域でのシャープネス指数Ds、製膜量(g/L)、供給空気流量(L/mim)に加え、この条件で得られた下流領域でのメディアン細孔径D80(μm)をまとめて表2に示した。このようにして、下流領域のメディアン細孔径D80を主として種々の値に調整したハニカムフィルタを得ることができる。なお、実験例1〜10においても同様の手法により、メディアン細孔径D80を調整した。また、実験例6〜10についてもシャープネス指数Ds=0.2と同等のものを用いて作製した。
【0050】
【表2】
【0051】
(実験例24〜34)
隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を3μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を4μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を30%としたハニカムフィルタを実験例24とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を32%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例25とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を35%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例26とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を37%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例27とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を40%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例28とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を50%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例29とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を55%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例30とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を58%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例31とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を60%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例32とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を62%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例33とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を65%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例34とした。
【0052】
このように、実験例24〜34では、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を調整した。この細孔分布調整処理について説明する。内接円気孔率の調整は、捕集層を形成する原料の平均粒径を固定し、製膜時の供給空気流量を制御する事で捕集層の気孔率の調整を行った。流量が多いほど原料粒子が圧密されるため気孔率が低くなり、流量が少ないほど粒子が緩やかに堆積するため気孔率が高くなる。まず、下流領域以外の部分を吸水させて下流領域以外の透過抵抗を高めた状態とする。次に、捕集層原料粒子(平均粒径5μm)を、流量160L/min〜720L/minに調整して空気を流通させ、下流領域での捕集層の形成量である製膜量を1.0g/Lとなるよう調整し、この下流領域に捕集層原料を堆積させた。その後、製膜を施した下流領域に対し樹脂をコーティングし、上流領域に捕集層原料粒子(平均粒径5μm)を流量450L/minで1.0g/Lとなるよう製膜させた。下流領域での原料粒径(μm)、製膜量(g/L)、供給空気流量(L/min)に加え、この条件で得られた下流領域での内接円気孔率(%)をまとめて表3に示した。このようにして、下流領域の内接円気孔率だけを種々の値に調整したハニカムフィルタを得ることができる。
【0053】
【表3】
【0054】
(実験例35〜45)
隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を3μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を4μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%とした。このとき、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して15%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例35とした。なお、「所定の捕集領域」とは、内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たし、内接円気孔率が35%以上60%以下を満たす領域をいう。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して18%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例36とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して20%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例37とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して25%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例38とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して30%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例39とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して35%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例40とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して40%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例41とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して45%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例42とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して50%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例43とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して52%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例44とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して55%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例45とした。
【0055】
このように、実験例35〜45では、「所定の捕集領域」の領域範囲を調整した。この下流領域の領域範囲の調整は、上述した1度目、2度目製膜時の吸水・樹脂埋め領域の高さを調整することで制御した。即ち、まず、下流領域以外の部分を吸水させるが、下流領域を下流端面から15%の距離とするときには、これ以外の部分を吸水させる(1度目)。次に、下流領域を下流端面から15%の距離とするときには、この部分を樹脂埋めする。こうすれば、「所定の捕集領域」の領域範囲を調整することができる。
【0056】
(実験例46〜52)
隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を10%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を3μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を4μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%としたハニカムフィルタを実験例46とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を15%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例47とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を25%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例48とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を30%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例49とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を35%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例50とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例51とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を45%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例52とした。上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率の調整は、実験例24〜34と同様の手法を上流領域の捕集層の形成に適用することで行った。
【0057】
(実験例53〜55)
隔壁部の水銀ポロシメータにより求められる内接円気孔率を60%、気孔径を25μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を3μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を4μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%としたハニカムフィルタを実験例53とした。また、隔壁部の気孔率を50%、気孔径を25μmとした以外は実験例53と同様に作製したハニカムフィルタを実験例54とした。また、隔壁部の気孔率を50%、気孔径を15μmとした以外は実験例53と同様に作製したハニカムフィルタを実験例55とした。この隔壁部の気孔率及び気孔径の調整は、ハニカムセグメントの作製時の造孔材の粒径及び添加量により行うことができる。
【0058】
(圧力損失試験)
上記作製したハニカムフィルタを2.0Lディーゼルエンジンの直下位置に搭載し、エンジンをアイドル状態にて安定させたあと、瞬時に4000rpm、200Nmまで上昇させ、その際のハニカムフィルタの圧力損失挙動を計測し、計測した圧力損失の最大値を計測対象の圧損値とした。
【0059】
(捕集効率)
圧力損失試験の計測時にハニカムフィルタの前後にてスモーク値を計測し、ハニカムフィルタ入口のスモーク値に対するハニカムフィルタ通過によるスモーク捕捉率を計測対象の捕集効率とした。スモーク値計測器は、AVL製スモークメーターAVL415Sを用いた。
【0060】
(実験結果)
実験例1〜34についての測定結果等を表4に示し、実験例35〜55についての測定結果等を表5に示した。また、図8は、実験例6〜16の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布によるメディアン細孔径D50との関係図であり、また、図9は、実験例7〜15の圧力損失及びPM捕集効率とD50/D80との関係図である。また、図10は、実験例17〜23の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布によるメディアン細孔径D80との関係図である。図11は、実験例24〜34の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布による下流領域での内接円気孔率との関係図である。図12は、実験例35〜45の圧力損失及びPM捕集効率と、所定の捕集領域の下流端部からの距離割合との関係図である。図13は、実験例46〜52の圧力損失及びPM捕集効率と、上流領域の捕集層の内接円気孔率との関係図である。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
表4,5、図7〜13に示すように、内接円直径分布のメディアン細孔径D50が1μmを下回ると圧損が著しく上昇した。これは、捕集層のパーミアビリティーが著しく小さくなるためであると推察された。また、内接円直径分布のメディアン細孔径D50が6μmを超えると圧損が大きく上昇した。これは、特に高流量となる高負荷時において捕集層の開細孔よりスートが捕集層を通過し隔壁部の細孔に堆積するためであると推察された。また、内接円直径分布のメディアン細孔径D80が1μmを下回ると、圧損が著しく上昇した。これは、捕集層のパーミアビリティーが著しく小さくなるためであると推察された。また、内接円直径分布のメディアン細孔径D80が7μmを超えると、圧損が大きく上昇した。これは、特に高流量となる高負荷時において捕集層の開細孔よりスートが捕集層を通過し、隔壁部の細孔に堆積するためであると推察された。また、内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%を下回ると、圧損が大きく上昇した。これは、透過抵抗が高くなりすぎたためであると推察された。また、内接円直径分布により求められる内接円気孔率が60%を超えると、捕集効率が大きく低下した。これは、捕集層の捕集性能が十分に確保できないためであると推察された。また、メディアン細孔径D80に対するメディアン細孔径D50の比であるD50/D80が、0.1<D50/D80<1を満たすとよいことがわかった。これは、D50/D80が0.1より大きいと閉気孔の増加による圧損上昇を抑制することができるものと推察された。
【0064】
更に、上記好ましい範囲を満たす下流領域(本発明の所定の捕集領域)が下流側端面から全長の20%を下回ると、圧損が大きく上昇した。これは、スートの捕集層による捕捉が十分でなく基材細孔にスートが堆積してしまうためであると推察された。この点について、全長方向に対して特性に変化がない場合、透過抵抗と慣性抵抗とのバランスにより隔壁部での透過流速は下流領域にて最大となる。圧損性能に対しては下流領域の捕集層特性が支配因子であり、下流領域に十分な捕集層を形成していれば、圧損を抑制する事ができる。このため、下流領域が下流側端面から全長の20%を下回ると、その透過流速の高い部分を捕集層により十分に覆う事ができないため、圧損が高くなると推察される。また、下流領域が下流側端面から全長の50%を超えると、圧損が大きく上昇した。これは、触媒を担持する際に触媒スラリーのハニカムフィルタ上流域での透過が十分に行われないため、捕集層内部、及び、捕集層と基材との界面部分に触媒が凝集してしまうためではないかと推察された。この点について、触媒スラリーを吸引してコートする際、ハニカムフィルタの下流側端面を触媒スラリープールに触れさせて、上流より吸引する。この吸引の際に上流領域の透過抵抗が高くなると吸引時の流量を高くせねばならず、そのため下流領域での吸引流量も高くなり、触媒スラリーが捕集層と隔壁部との界面や捕集層内部により多く堆積し細孔を閉塞してしまうのではないかと推察された。
【0065】
以上より、電子顕微鏡による撮影画像から求めた、内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たし、内接円気孔率が35%以上60%以下を満たすものとすると、圧力損失やPM捕集効率など、排ガスに含まれるPMの捕集性能をより高めることができることが明らかとなった。また、0.1<D50/D80<1を満たすことがより好ましく、少なくとも下流側端面からハニカムフィルタの全長に対して20%の領域が「所定の捕集領域」であり、且つ下流側端面からハニカムフィルタの全長に対して50%以下の領域が「所定の捕集領域」であることが好ましいことがわかった。更に、上流側端面から20%以下の領域である上流領域には、内接円直径分布により求められる内接円気孔率が15%以上40%以下を満たす領域が存在することが好ましいことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0066】
20,40 ハニカムフィルタ、21 ハニカムセグメント、22,42 隔壁部、23,43 セル、24,44 捕集層、26,46 目封止部、27 接合層、28 外周保護部、30 SEM画像、31 隔壁部粒子、32 捕集層粒子、33 材料領域、34 細孔領域、36 最大内接円。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハニカムフィルタとしては、ハニカム状に配設されたセル壁と、セル壁内に区画された多数のセルとを有し、セル壁の表面から深さ方向に20μmの距離でのセル壁の表面に開口する開気孔の存在率が7%以上であるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このフィルタでは、担持する触媒の耐剥離性を向上することができるとしている。また、ハニカムフィルタとしては、多孔質の隔壁母材と、隔壁母材の流入側に設けられた表層と、を有する隔壁を備え、表層のピーク細孔径、気孔率、表層の厚さ、表層の濾過面積あたりの質量、隔壁母材の平均細孔径などを好適にしたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このフィルタでは、粒子状物質(PM)の捕集開始直後の急激な圧力損失の上昇が無く、PM堆積量と圧力損失との関係がヒステリシス特性を持たず、PMが堆積していない初期状態の圧力損失を低く抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−142704号公報
【特許文献2】WO2008/136232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたハニカムフィルタでは、隔壁の表面の開細孔を大きくすることで触媒が堆積した際の圧損の上昇を抑制しているが、隔壁のみでの対応ではスートが開細孔の中に入り込んでしまい、スートが堆積した際の圧損が著しく上昇してしまうという問題があった。また、特許文献2に記載されたハニカムフィルタでは、圧力損失の上昇を抑えることができるものであるが、特に高流量においてスートが細孔内に入り込んだ際の圧損上昇をより抑制するなど、更なる改良が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができるハニカムフィルタを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明のハニカムフィルタは、
流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集する捕集層と、を備え、
電子顕微鏡による前記隔壁部上の撮影画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、該各々の細孔領域に内接する最大内接円により求められる内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つ該内接円直径分布でのメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たし、前記内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上60%以下を満たす所定の捕集領域が前記隔壁部上に存在するものである。
【0007】
このハニカムフィルタでは、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができる。この理由は、以下のように推察される。例えば、電子顕微鏡による隔壁部上の撮影画像に含まれる複数の細孔領域の各々に内接する最大内接円を用いて、隔壁部上の内接円直径分布のメディアン細孔径D50,D80を求めることができる。この内接円直径分布のメディアン細孔径D50が1μm以上では、捕集層のパーミアビリティ(透過性)が大きく、圧力損失が大きく低下する。また、メディアン細孔径D50が6μm以下では、特に高流量となる高負荷時において、固体成分(PM)が捕集層の開細孔を通過しにくく、隔壁細孔への固体成分の堆積を抑制可能であり、圧力損失の上昇をより抑制することができる。また、メディアン細孔径D80が1μm以上では、捕集層のパーミアビリティが大きく、圧力損失が大きく低下する。また、メディアン細孔径D80が7μm以下では、特に高流量となる高負荷時において、固体成分が捕集層の開細孔を通過しにくく、隔壁細孔への固体成分の堆積を抑制可能であり、圧力損失の上昇をより抑制することができる。更に、内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上では、透過抵抗の上昇がより抑制され、圧損がより低下する。また、内接円気孔率が60%以下では、捕集層の捕集性能が十分に確保でき、固体成分の捕集層の通過を抑制し捕集効率をより高めることができる。このように、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができる。
【0008】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記所定の捕集領域は、更に0.1<D50/D80<1を満たすものとしてもよい。D50/D80が0.1より大きいと閉気孔の増加による圧損上昇を抑制することができる。なお、このメディアン細孔径D80に対するメディアン細孔径D50の比D50/D80は、1以下を満たす。
【0009】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部は、下流側端面から前記ハニカムフィルタの全長に対して20%の領域が少なくとも前記所定の捕集領域であり、且つ下流側端面から前記ハニカムフィルタの全長に対して50%以下の領域が前記所定の捕集領域であるものとしてもよい。即ち、下流側端面から全長の20%の部位までが所定の捕集領域として最低限存在すべき領域であり、下流側端面から全長の50%の部位までを所定の捕集領域として最大存在するものとしてもよい。ハニカムフィルタの全長に対して下流側端面から20%以上の領域が少なくともこの捕集領域であれば、固体成分の捕集層による捕捉を十分確保し、隔壁細孔への固体成分の堆積をより抑制することができ、圧損の上昇をより抑制することができる。また、下流側端面から50%以下の領域がこの捕集領域であれば、例えば、触媒を担持する際に触媒スラリーがハニカムフィルタの上流域で十分透過でき、捕集層内部、及び、捕集層と隔壁との界面部分への触媒の凝集をより抑制することができ、圧損上昇をより抑制することができる。
【0010】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記ハニカムフィルタの全長に対して上流側端面から20%以下の領域である上流領域には、前記内接円直径分布により求められる内接円気孔率が15%以上40%以下を満たす領域が存在することが好ましい。上流領域での内接円気孔率が15%以上では、透過抵抗の上昇がより抑制され、圧損がより低下する。上流領域での内接円気孔率が40%以下では、捕集層の捕集性能が十分に確保でき、固体成分の捕集層の通過を抑制し捕集効率をより高めることができる。このとき、上流領域の内接円直径分布により求められる内接円気孔率は、前記所定の捕集領域での内接円直径分布により求められる内接円気孔率よりも小さいことが好ましい。こうすれば、上流領域と所定の捕集領域との流体の流通をより好適にすることができる。
【0011】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記捕集層は、気体を搬送媒体とし該捕集層の原料である無機材料を前記セルへ供給することにより形成されているものとしてもよい。こうすれば、気体による搬送を利用して、捕集層の厚さなど、捕集層の形成状態を比較的容易に制御することができる。
【0012】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。また、前記捕集層は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、前記捕集層は、前記隔壁部と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。
【0013】
本発明のハニカムフィルタは、前記隔壁部及び前記捕集層を有する2以上のハニカムセグメントが接合層によって接合されて形成されているものとしてもよい。こうすれば、接合層で接合することによりハニカムフィルタの機械的強度をより高めることができる。あるいは、本発明のハニカムフィルタは、一体成形されているものとしてもよい。こうすれば、構成を簡素化することにより、ハニカムフィルタを作製しやすい。
【0014】
本発明のハニカムフィルタは、触媒が担持されているものとしてもよい。こうすれば、捕集した固体成分の燃焼除去などをより効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図。
【図2】捕集層24の細孔分布の測定位置の説明図。
【図3】SEM画像による捕集層の細孔分布の算出方法の説明図。
【図4】最大内接円の直径と積算面積との関係図。
【図5】一体成形されたハニカムフィルタ40の構成の概略の一例を示す説明図。
【図6】隔壁部のみの表面、上流領域及び下流領域の隔壁部表面のSEM写真。
【図7】SEM画像から内接円直径分布を求める説明図。
【図8】実験例6〜16の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布によるメディアン細孔径D50との関係図。
【図9】実験例7〜15の圧力損失及びPM捕集効率とD50/D80との関係図。
【図10】実験例17〜23の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布によるメディアン細孔径D80との関係図。
【図11】実験例24〜34の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布による下流領域での内接円気孔率との関係図。
【図12】実験例35〜45の圧力損失及びPM捕集効率と、所定の捕集領域の下流側端部からの距離割合との関係図。
【図13】実験例46〜52の圧力損失及びPM捕集効率と、上流領域の捕集層の内接円気孔率との関係図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のハニカムフィルタの一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。また、図2は、捕集層24の細孔分布の測定位置の説明図であり、図3は、SEM画像による捕集層の細孔分布の算出方法の説明図であり、図4は、最大内接円の直径と積算面積との関係図である。本実施形態のハニカムフィルタ20は、図1に示すように、隔壁部22を有する2以上のハニカムセグメント21が接合層27によって接合された形状を有し、その外周に外周保護部28が形成されている。なお、図1には、ハニカムフィルタ20の外形が円柱状に形成され、ハニカムセグメント21の外形が矩形柱状に形成され、セル23が矩形状に形成されているものを一例として示す。このハニカムフィルタ20は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止部26により目封止され、流体としての排ガスの流路となる複数のセル23を形成する多孔質の隔壁部22と、隔壁部22上に形成され流体(排ガス)に含まれる固体成分(PM)を捕集する層である捕集層24と、を備えている。このハニカムフィルタ20では、隔壁部22は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセル23と一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口したセル23とが交互に配置されるよう形成されている。また、ハニカムフィルタ20では、入口側からセル23へ入った排ガスが捕集層24及び隔壁部22を介して出口側のセル23を通過して排出され、このとき、排ガスに含まれるPMが捕集層24上に捕集される。
【0017】
隔壁部22は、その厚さである隔壁厚さが150μm以上460μm以下で形成されていることが好ましく、200μm以上400μm以下であることがより好ましく、280μm以上350μm以下であることが更に好ましい。この隔壁部22は、多孔質であり、例えば、コージェライト、Si結合SiC、再結晶SiC、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このうち、コージェライトやSi結合SiC、再結晶SiCなどが好ましい。隔壁部22は、その気孔率が30体積%以上85体積%以下であることが好ましく、35体積%以上65体積%以下であることがより好ましい。この隔壁部22は、その平均細孔径が10μm以上60μm以下の範囲であることが好ましい。この隔壁部22の気孔率や平均細孔径は、水銀圧入法により測定した結果をいうものとする。このような気孔率、平均細孔径、厚さで隔壁部22を形成すると、排ガスが通過しやすく、PMを捕集・除去しやすい。
【0018】
捕集層24は、排ガスに含まれるPMを捕集・除去する層であり、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径で構成された粒子群により隔壁部22上に形成されているものとしてもよい。この捕集層24を構成する原料粒子の平均粒径は、0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。平均粒径が0.5μm以上では、捕集層を構成する粒子の粒子間の空間のサイズを十分に確保可能であるため捕集層の透過性を維持でき急激な圧力損失の上昇を抑制することができる。平均粒径が15μm以下では、粒子同士の接触点が十分に存在するから粒子間の結合強度を十分に確保可能であり捕集層の剥離強度を確保することができる。この捕集層24は、排ガスの入口側セル及び出口側セルの隔壁部22に形成されているものとしてもよいが、図1に示すように、入口側セルの隔壁部22上に形成されており、出口側セルには形成されていないものとするのが好ましい。こうすれば、より圧力損失を低減して流体に含まれているPMをより効率よく除去することができる。また、ハニカムフィルタ20の作製が容易となる。この捕集層24は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、捕集層24は、隔壁部22と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。なお、原料粒子における平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として原料粒子を測定したメディアン径(D50)をいうものとする。また、捕集層24は、無機材料の粒子群から形成されており、隔壁部22の表面に均一な層として形成されていてもよいし、隔壁部22の表面に部分的な層として形成されていてもよい。
【0019】
このハニカムフィルタ20は、電子顕微鏡による隔壁部上の撮影画像(SEM画像)を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、この各々の細孔領域に内接する最大内接円により求められる内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つこの内接円直径分布でのメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たす所定の捕集領域が隔壁部22上に存在する。この内接円直径分布のメディアン細孔径D50が1μm以上では、捕集層24のパーミアビリティ(透過性)が大きく、圧力損失を低下することができる。また、メディアン細孔径D50が6μm以下では、特に高流量となる高負荷時において、PMが捕集層の開細孔を通過しにくく、隔壁細孔へのPMの堆積を抑制可能であり、圧力損失の上昇をより抑制することができる。また、メディアン細孔径D80が1μm以上では、捕集層のパーミアビリティが大きく、圧力損失が大きく低下する。また、メディアン細孔径D80が7μm以下では、特に高流量となる高負荷時において、PMが捕集層の開細孔を通過しにくく、隔壁細孔へのPMの堆積を抑制可能であり、圧力損失の上昇をより抑制することができる。この所定の捕集領域は、ハニカムフィルタ20の下流領域であることが好ましい。こうすれば、PMの捕集をより十分に行うことができる。
【0020】
このハニカムフィルタ20は、SEM画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、この各々の細孔領域に内接する最大内接円により求められる内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上60%以下を満たす所定の捕集領域を有する。内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上では、透過抵抗の上昇がより抑制され、圧損がより低下する。また、内接円気孔率が60%以下では、捕集層の捕集性能が十分に確保でき、PMの捕集層の通過を抑制し捕集効率をより高めることができる。このように、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができる。
【0021】
このハニカムフィルタ20は、メディアン細孔径D80に対するメディアン細孔径D50の比をD50/D80としたとき、所定の捕集領域が、更に0.1<D50/D80<1を満たすものとしてもよい。D50/D80が0.1より大きいと閉気孔の増加による圧損上昇を抑制することができる。また、0.15≦D50/D80≦0.60を満たすことがより好ましい。こうすれば、より圧力損失を低減することができる。なお、このメディアン細孔径D80に対するメディアン細孔径D50の比D50/D80は、1以下を満たす。
【0022】
ハニカムフィルタ20において、隔壁部22は、下流側端面からハニカムフィルタの全長に対して20%の領域が少なくとも所定の捕集領域であり、且つ下流側端面からハニカムフィルタの全長に対して50%以下の領域が所定の捕集領域であるものとしてもよい。即ち、下流側端面から全長の20%の部位までが所定の捕集領域として最低限存在すべき領域であり、下流側端面から全長の50%の部位までが最大存在する所定の捕集領域としてもよい。ハニカムフィルタの全長に対して下流側端面から20%以上の領域が少なくともこの捕集領域であれば、PMの捕集層による捕捉を十分確保し、隔壁細孔へのPMの堆積をより抑制することができ、圧損の上昇をより抑制することができる。また、下流側端面から50%以下の領域がこの捕集領域であれば、例えば、触媒を担持する際に触媒スラリーがハニカムフィルタの上流域で十分透過でき、捕集層内部、及び、捕集層と隔壁との界面部分への触媒の凝集をより抑制することができ、圧損上昇をより抑制することができる。このように、「所定の捕集領域」はハニカムフィルタ20の下流領域に存在することが好ましい。
【0023】
ハニカムフィルタ20において、ハニカムフィルタ20の全長に対して上流側端面から20%以下の領域である上流領域での内接円直径分布により求められる内接円気孔率が15%以上40%以下を満たすことが好ましい。上流領域での内接円気孔率が15%以上では、透過抵抗の上昇がより抑制され、圧損がより低下する。上流領域での内接円気孔率が40%以下では、捕集層の捕集性能が十分に確保でき、PMの捕集層の通過を抑制し捕集効率をより高めることができる。このとき、上流領域の内接円直径分布により求められる内接円気孔率は、所定の捕集領域での内接円直径分布により求められる内接円気孔率よりも小さいことがより好ましい。こうすれば、上流領域と所定の捕集領域との流体の流通をより好適にすることができる。
【0024】
ここで、内接円直径分布でのメディアン細孔径D50,D80及び、内接円直径分布での内接円気孔率について詳しく説明する。隔壁部22上に形成された捕集層24の細孔分布や比表面積などは、ガス吸着測定や水銀圧入法などでも求めることが困難である。ここでは、隔壁上のSEM写真を撮影し、撮影したSEM写真を解析することにより、捕集層24を主とする細孔径や気孔率を求めるものとした。まず、SEM撮影用の試料は、図2の上段に示すように、ハニカムフィルタ20の全長に対して下流側端面から所定割合の部位(上記所定の捕集領域)にてハニカムフィルタを輪切りにし、その断面における中央部分より約1cm角程度の観察試料を3つ切り出し研磨して得るものとする。下流側端面から所定割合の部位は、下流側端面から全長の20%〜50%、主として35%の領域とする。また、上流領域については、ハニカムフィルタ20の全長に対して上流側端面から20%の部位を輪切りにし、その断面における中央部分より約1cm角程度の観察試料を3つ切り出し研磨して得るものとする。試料は、図2の下段に示すように、隔壁部22と水平な面で切断するものとする。こうすれば、隔壁部22の表面に形成された捕集層24を観察しやすい。次に、各切出試料の隔壁部22の表面に対して、任意の5視野のSEM写真を撮影する(図3上段参照)。図3上段には、隔壁部粒子31上に捕集層粒子32が形成されたSEM画像30を示した。撮影時の倍率は1000倍とし、SEM画像を保存する際の画素数は1024×960とする。3つの切出試料、各5視野の計15のSEM画像を取得し、画像解析を実行してメディアン細孔径や気孔率値を計測し、その平均値を所定の捕集領域(下流領域)での値とする。ここでは、捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50(μm)、捕集層のメディアン細孔径D80(μm)、捕集層の内接円気孔率(面積%)を求めた。なお、画像解析方法については、後述する。また、上流領域に関しても、下流領域と同様の手順で観察試料を取得し、SEM観察を行い、得られたSEM画像から捕集層の内接円気孔率(面積%)を求める。このSEM撮影において、コントラスト及びブライトネスについては、走査型電子顕微鏡にて推奨されるコントラスト及びブライトネスのレンジ内とすればよい。こうすれば、後述する画像解析の2値化処理の実行において、SEM画像での影響をより低減することができる。
【0025】
電子顕微鏡による隔壁部上の撮影画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、この各々の細孔領域に内接する最大内接円により内接円直径分布を求め、この内接円直径分布から得られるメディアン細孔径D50、メディアン細孔径D80及び内接円気孔率を求める。図3中段に示すように、SEM画像30に対し、画像解析ソフトによる2値化処理を行い、材料領域33と細孔領域34とに分割する。画像解析にて材料領域33と細孔領域34とに2値化する境界を決める明るさの閾値は、8ビットにて分割した0から255までの明るさの段階における10段階目とする。SEM画像は、モノクロ画像であるので、RGB値のいずれかの値が0から255までの明るさの段階における「10」以上で材料領域と判定し、「10」未満では細孔領域であるものと判定すればよい。この閾値が「10」より小さいと粒子間細孔以外のわずかな隙間や画像のブレなどの影響を強く拾ってしまうために細孔の形態を適切に評価する事が困難である。また、「10」より大きいと特に捕集層を形成したものにおいて、細孔間の粒子が十分に識別されずに連結した一つの細孔と認識されてしまう頻度が高くなる。このため、閾値を「10」とすることが好適である。また、この2値化処理にて、取得された細孔領域に関して、50ピクセル未満のサイズのものはSEM撮影時のゴミや樹脂研磨時のわずかなクラックなどの影響を多く含んでいることから、これを排除し、50ピクセル以上のサイズのものを細孔領域と定義する。次に、図3下段に示すように、SEM画像30に含まれる複数の細孔領域34の各々に対し、その領域に内接する最大内接円36を描き、この最大内接円36の直径や個数などをカウントする。細孔領域は、様々な形状を有しているが、1つの領域に対して1つの最大内接円36を描くものとする。図4に示すように、横軸を最大内接円の直径とし、縦軸をこの最大内接円の積算面積としてプロットし、この分布より内接円直径分布によるメディアン細孔径D50、D80を算出することができる。また、観察視野全体の面積に対する最大内接円の積算面積の割合を内接円気孔率(面積%)とすることができる。
【0026】
捕集層24の形成方法は、流体を捕集層の原料の搬送媒体とし、捕集層の原料を含む気体を入口セルへ供給するものとしてもよい。こうすれば、捕集層を構成する粒子群がより粗に形成されるため、高い気孔率の捕集層を作製することができ、好ましい。搬送媒体としての流体は、例えば、空気や、窒素ガスなどの気体であることが好ましい。捕集層の原料は、例えば、無機繊維や無機粒子を用いてもよい。あるいは、無機繊維は上述したものを用いることができ、例えば平均粒径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であるものが好ましい。無機粒子としては、上述した無機材料の粒子を用いることができる。例えば、平均粒径が0.5μm以上15μm以下のSiC粒子やコージェライト粒子を用いることができる。この捕集層の原料は、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有することが好ましい。このとき、隔壁部22と捕集層24との無機材料を同じ材質とすることが好ましい。また、無機粒子を含む気体を流入させる際に、気体の出口側を吸引することが好ましい。また、捕集層24の形成において、無機繊維や無機粒子と共に結合材も供給してもよい。結合材としてはゾル材料、コロイド材料から選択でき特にコロイダルシリカを用いることが好ましい。無機粒子はシリカにより被覆されており且つ無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とがシリカにより結合されていることが好ましい。例えば、コージェライトやチタン酸アルミニウムなどの酸化物材料の場合には、無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とが焼結により結合されているのが好ましい。捕集層24は、隔壁部22上に原料の層を形成したあと、熱処理を行い結合することが好ましい。熱処理での温度としては、例えば650℃以上1350℃以下の温度とするのが好ましい。熱処理温度が650℃以上では十分な結合力を確保することができ、1350℃以下であると過度な粒子の酸化による細孔の閉塞を抑制することができる。なお、捕集層24の形成方法は、例えば、捕集層24の原料になる無機粒子を含むスラリーを用いてセル23の表面に形成するものとしてもよい。
【0027】
流体(空気)を捕集層の原料の搬送媒体として形成した捕集層24では、内接円直径分布でのメディアン細孔径D50,D80や、内接円直径分布での内接円気孔率は、捕集層原料の平均粒径や、粒度分布、捕集層原料の供給量、流体流量などの条件を適宜設定することにより、制御することができる。更に、ハニカムセグメント21の上流領域や下流領域など、所定の領域の隔壁部22に、アルコールや水、樹脂などを含ませておくことで、流体の透過抵抗を高めることにより、供給した捕集層原料粒子の堆積領域を制御することができる。例えば、捕集層原料粒子の平均粒径を2.3μm〜10μmとしたり、捕集層原料粒子の粒度分布としてのシャープネス指数Dsを0.7〜1.8としたり、流体の流量を160L/min〜720L/minとしたりすることにより、内接円直径分布の値を変更することができる。ここで、シャープネス指数Dsは、所定の平均粒径(例えば5μm)の捕集層原料の粒径分布の鋭角さを示す指標であり、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置による原料粉体のメディアン径D10,D50,D90を用い、Ds=D50/(D90−D10)により計算するものと定義した。
【0028】
接合層27は、ハニカムセグメント21を接合する層であり、無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。無機粒子は、上述した無機材料の粒子とすることができ、その平均粒径は0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。無機繊維は、例えば、アルミノシリケート、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びムライトから選択される1以上の材料を含んで形成されているものとすることができる。この無機繊維は、例えば平均粒径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であることが好ましい。結合材としてはコロイダルシリカや粘土などとすることができる。接合層27は、0.5mm以上2mm以下の範囲で形成されていることが好ましい。外周保護部28は、ハニカムフィルタ20の外周を保護する層であり、上述した無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。
【0029】
ハニカムフィルタ20において、40℃〜800℃におけるセル23の通過孔方向の熱膨張係数は、6.0×10-6/℃以下であることが好ましく、1.0×10-6/℃以下であることがより好ましく、0.8×10-6/℃以下であることが更に好ましい。この熱膨張係数が6.0×10-6/℃以下であると、高温の排気に晒された際に発生する熱応力を許容範囲内に抑えることができる。
【0030】
このハニカムフィルタ20の外形は、特に限定されないが、円柱状、四角柱状、楕円柱状、六角柱状などの形状とすることができる。ハニカムセグメント21の外形は、特に限定されないが、接合しやすい平面を有していることが好ましく、断面が多角形の角柱状(四角柱状、六角柱状など)の形状とすることができる。セルは、その断面の形状として3角形、4角形、6角形、8角形などの多角形の形状や円形、楕円形などの流線形状、及びそれらの組み合わせとすることができる。例えば、セル23は排ガスの流通方向に垂直な断面が4角形に形成されているものとしてもよい。
【0031】
ハニカムフィルタ20において、セルピッチは、1.0mm以上2.5mm以下とするのが好ましい。PM堆積時の圧力損失は、濾過面積が大きいほど小さい値を示す。一方、初期の圧力損失は、セル直径が小さいほど大きい値を示す。したがって、初期圧力損失、PM堆積時の圧力損失、PMの捕集効率のトレードオフを考慮して、セルピッチ、セル密度や隔壁部22の厚さを設定するものとすればよい。
【0032】
ハニカムフィルタ20は、触媒が担持されているものとしてもよい。この触媒は、捕集されたPMの燃焼を促進する触媒、排ガスに含まれる未燃焼ガス(HCやCOなど)を酸化する触媒及びNOxを吸蔵/吸着/分解する触媒のうち少なくとも1種以上としてもよい。こうすれば、PMを効率よく除去することや未燃焼ガスを効率よく酸化することやNOxを効率よく分解することなどができる。この触媒としては、例えば、貴金属元素、遷移金属元素を1種以上含むものとするのがより好ましい。また、ハニカムフィルタ20では、他の触媒や浄化材が担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)などを含むNOx吸蔵触媒、少なくとも1種の希土類金属、遷移金属、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が挙げられる。具体的には、貴金属としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)や、金(Au)及び銀(Ag)などが挙げられる。触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sc,Ti,V,Cr等が挙げられる。また、希土類金属としては、例えば、Sm,Gd,Nd,Y,La,Pr等が挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg,Ca,Sr,Ba等が挙げられる。このうち、白金及びパラジウムがより好ましい。また、貴金属及び遷移金属、助触媒などは、比表面積の大きな担体に担持してもよい。担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトなどを用いることができる。PMの燃焼を促進する触媒を有するものとすれば、捕集層24上に捕集されたPMをより容易に除去することができるし、未燃焼ガスを酸化する触媒やNOxを分解する触媒を有するものとすれば、排ガスをより浄化することができる。
【0033】
以上説明した実施例のハニカムフィルタ20によれば、隔壁部22上に形成された捕集層24の内接円直径分布でのメディアン細孔径D50,D80や内接円気孔率などを好適な範囲とすることによって、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができる。一般に、捕集層は、隔壁部上に形成された薄い層であることから、ガス吸着測定による細孔分布測定や、水銀圧入法による細孔分布測定では、捕集層での細孔を評価することが困難であった。ここでは、SEM画像に含まれる複数の細孔領域の各々に内接する最大内接円から捕集層における内接円直径分布のメディアン細孔径D50,D80を求めるものとした。この方法によれば、例えばガス吸着や水銀圧入法など、何らかの媒体により間接的に測定するよりもより直接的な細孔の解析が可能であると考えられる。更に、SEM画像から得られる内接円直径分布のメディアン細孔径D50,D80や内接円気孔率を好適な範囲とすることによって、従来よりも圧力損失をより抑制し捕集効率の低下を防ぐなど、流体に含まれる固体成分の捕集性能をより高めることができるのである。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、ハニカムセグメント21を接合層27により接合したハニカムフィルタ20としたが、図5に示すように、一体成形されたハニカムフィルタ40としてもよい。ハニカムフィルタ40において、隔壁部42、セル43、捕集層44、目封止部46などは、ハニカムフィルタ20の隔壁部22、セル23、捕集層24、目封止部26と同様の構成とすることができる。こうしても、排ガスに含まれているPMの捕集・除去性能ををより高めることができる。
【0036】
上述した実施形態では、ハニカムフィルタ20には触媒が含まれるものとしたが、流通する流体に含まれる除去対象物質を浄化処理可能なものであれば特にこれに限定されない。あるいは、ハニカムフィルタ20は、触媒を含まないものとしてもよい。また、排ガスに含まれるPMを捕集するハニカムフィルタ20として説明したが、流体に含まれる固体成分を捕集・除去するものであれば特にこれに限定されず、建設機器の動力エンジン用のハニカムフィルタとしてもよいし、工場や発電所用のハニカムフィルタとしてもよい。
【実施例】
【0037】
以下には、ハニカムフィルタを具体的に製造した例を実験例として説明する。ここでは、複数のハニカムセグメントを接合した構造のハニカムフィルタを作製した。
【0038】
[ハニカムフィルタの作製]
SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得る。所定の金型を用いてこの坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形した。ここでは、隔壁部の厚さが305μm、セルピッチが1.47mm、断面が35mm×35mm、長さが152mmの形状に成形した。次に、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波により乾燥させ、更に熱風にて乾燥させた後、目封止をして、酸化雰囲気において550℃、3時間で仮焼きした後に、不活性雰囲気下にて1400℃、2時間の条件で本焼成を行った。目封止部の形成は、セグメント成形体の一方の端面のセル開口部に交互にマスクを施し、マスクした端面をSiC原料を含有する目封止スラリーに浸漬し、開口部と目封止部とが交互に配設されるように行った。また、他方の端面にも同様にマスクを施し、一方が開口し他方が目封止されたセルと一方が目封止され他方が開口したセルとが交互に配設されるように目封止部を形成した。得られたハニカムセグメント焼成体の排ガス流入側の開口端部より、隔壁の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有するSiC粒子を含む空気を流入させ、且つハニカムセグメントの流出側より吸引しながら、排ガス流入側の隔壁の表層に堆積させた。このとき、後述する捕集層の細孔分布調整処理を行い、ハニカムフィルタの上流領域及び下流領域での細孔分布を調整した捕集層を隔壁部に形成した。次に、大気雰囲気下にて1300℃、2時間の条件の熱処理により、隔壁の表層に堆積させたSiC粒子同士、及び堆積させたSiC粒子と隔壁を構成するSiC及びSi粒子と結合させた。このように、隔壁部上に捕集層を形成したハニカムセグメントを作製した。このようにして得られたハニカムセグメントの側面に、アルミナシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、SiC、および水を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角形状のハニカムセグメント接合体を得た。さらに、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周囲を、接合用スラリーと同等の材料からなる外周コート用スラリーで被覆し、乾燥により硬化させることにより所望の形状、セグメント形状、セル構造を有する円柱形状のハニカムフィルタを得た。ここでは、ハニカムフィルタは、断面の直径が144mm、長さが152mmの形状とし、隔壁部の厚さを300μm、セルピッチを1.47mmとした。また、後述する実験例1〜58の隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率は40体積%であり、平均細孔径は14μmである。また、後述する実験例59〜61の隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率はそれぞれ60体積%、50体積%及び50体積%であり、気孔径はそれぞれ25μm、25μm及び15μmである。なお、捕集層の気孔率及び気孔径は、詳しくは後述するが、電子顕微鏡による隔壁部上の撮影画像から求められる内接円直径分布の値をいうものとする。また、隔壁部の気孔率及び平均細孔径は水銀ポロシメータ(Micromeritics社製Auto PoreIII型式9405)を用いて測定した。また、捕集層の原料粒子の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−910)を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)である。
【0039】
[捕集層の細孔分布調整処理]
捕集層の粒子群を形成するSiC粒子を空気と共にハニカムセグメントへ供給し、SiC粒子を隔壁部上に堆積させた。このとき、SiC粒子の平均粒径や、粒度分布、SiC粒子の供給量、供給する空気流量などを適宜制御することにより、隔壁部上に形成される捕集層の気孔率や細孔径などを制御することができる。更に、ハニカムセグメントの上流領域や下流領域など、所定の領域の隔壁部に、アルコールや水、樹脂などを含ませておくことで、空気の透過抵抗を高めることにより、供給したSiC粒子の堆積領域を制御することができる。例えば、SiC粒子の平均粒径を2.3μm〜10μmとしたり、SiC粒子の粒度分布の指標を表すシャープネス指数Dsを0.7〜1.8としたり、供給空気の流量を160L/min〜720L/minとした。また、下流側領域の製膜時には、下流側領域以外の領域を吸水させた。一方、下流側領域の製膜後は、この下流側領域を樹脂埋めし、下流側領域以外を製膜した。このようにして、各領域の捕集層の気孔率や細孔径を制御した。なお、シャープネス指数Dsは、所定の平均粒径(例えば5μm)のSiC粒子の粒径分布の鋭角さを示す指標であり、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置による原料粉体のメディアン径D10,D50,D90を用い、Ds=D50/(D90−D10)により定義した。
【0040】
[触媒担持]
まず、重量比でアルミナ:白金:セリア系材料=7:0.5:2.5とし、セリア系材料を重量比でCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5とした原料を混合し、溶媒を水とした触媒のスラリーを調製した。次に、ハニカムセグメントの出口端面(排ガスが流出する側)を所定の高さまで浸漬させ、入口端面(排ガスが流入する側)より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定時間にわたって吸引し、隔壁に触媒を担持し、120℃2時間で乾燥させた後、550℃1時間で焼付けを行った。ハニカムフィルタの単位体積当たりの触媒量は、45g/Lとなるようにした。
【0041】
(SEM撮影)
作製したハニカムフィルタの断面のSEM撮影を走査型電子顕微鏡(堀場製作所製LA−910)を用いて行った。図6は、隔壁部のみの表面、上流領域及び下流領域の隔壁部表面のSEM写真であり、図7は、SEM画像を用い、隔壁部の表面及び捕集層の表面の内接円直径分布を求める説明図である。まず、SEM撮影用のサンプルは、図2に示すように、ハニカムフィルタの全長に対して下流側端面から所定割合(15%〜55%、主として35%)の部位にてハニカムフィルタを輪切りにし、その断面における中央部分より約1cm角程度の観察試料を3つ切り出して研磨した。このとき、断面が隔壁部に対して水平になるように、試料を切り出した。次に、各切出試料に対して任意の5視野のSEM写真を撮影した(図6,図7上段参照)。撮影時の倍率は1000倍とし、SEM画像を保存する際の画素数は1024×960とした。3つの切出試料、各5視野の計15のSEM画像を撮影し、下記画像解析を実行してメディアン細孔径や気孔率値を計測し、その平均値を下流領域での値とした。ここでは、捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50(μm)、捕集層のメディアン細孔径D80(μm)、捕集層の内接円気孔率(面積%)を求めた。なお、画像解析方法については、下記に説明する。また、上流側に関しても、下流と同様にハニカムフィルタの全長に対して上流側端面から20%の部位を輪切りにし、同様の手順で観察試料を取得し、SEM観察を行い、得られたSEM画像から捕集層の内接円気孔率(面積%)を求めた。このSEM撮影において、コントラスト及びブライトネスについては、走査型電子顕微鏡(堀場製作所製LA−910)にて推奨されるコントラスト及びブライトネスのレンジ内とした。こうすれば、下記画像解析の2値化処理の実行において、SEM画像での影響はほとんどなかった。
【0042】
(内接円直径分布)
電子顕微鏡による隔壁部上の撮影画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、この各々の細孔領域に内接する最大内接円により内接円直径分布を求め、この内接円直径分布から得られるメディアン細孔径D50、メディアン細孔径D80及び内接円気孔率を求めた。SEMの膜面画像に対し、画像解析ソフトによる2値化処理を行い、材料領域と細孔領域とに分けた(図6中段参照)。画像解析にて材料領域と細孔領域とに2値化する境界を決める明るさの閾値は、8ビットにて分割した0から255までの明るさの段階における10段階目とした。SEM写真は、モノクロ画像であるので、RGB値のいずれかの値が0から255までの明るさの段階における「10」以上で材料領域と判定し、「10」未満では細孔領域であるものと判定した。この閾値が「10」より小さいと粒子間細孔以外のわずかな隙間や画像のブレなどの影響を強く拾ってしまうために細孔の形態を適切に評価する事が困難であった。また、「10」より大きいと特に捕集層を形成したものにおいて、細孔間の粒子が十分に識別されずに連結した一つの細孔と認識されてしまう頻度が高くなることがあった。このため、閾値を「10」とした。また、この2値化にて取得された細孔領域に関して、50ピクセル未満のサイズのものはSEM撮影時のゴミや樹脂研磨時のわずかなクラックなどの影響を多く含んでいることから、これを排除し、50ピクセル以上のサイズのものを細孔領域と定義した。次に、SEM画像に含まれる複数の細孔領域の各々に対し、その領域に内接する最大円を描き、この最大円の直径や個数などをカウントした。細孔領域は、様々な形状を有しているが、1つの領域に対して1つの最大内接円を描くものとした(図6下段参照)。この分布より内接円直径分布によるメディアン細孔径D50、D80を算出した。また、観察視野全体の面積に対する最大内接円の積算面積の割合を内接円気孔率(面積%)とした。
【0043】
(実験例1〜5)
隔壁部の水銀ポロシメータにより求められる気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を9μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を12μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%としたハニカムフィルタを実験例1とした。なお、実験例1〜34,46〜55では、「下流領域」は、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して35%である断面とした。また、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を7μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を11μmとした以外は実験例1と同様に作製したハニカムフィルタを実験例2とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を5μmとした以外は実験例2と同様に作製したハニカムフィルタを実験例3とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を3μmとした以外は実験例2と同様に作製したハニカムフィルタを実験例4とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μmとした以外は実験例2と同様に作製したハニカムフィルタを実験例5とした。
【0044】
(実験例6〜10)
隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を8μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を9μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%としたハニカムフィルタを実験例6とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を6μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例7とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を4μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例8とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を3μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例9とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を2μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例10とした。
【0045】
このように、実験例6〜10では、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を主として調整した。この細孔分布調整処理について説明する。メディアン細孔径D50の調整は、まず、下流領域以外の部分を吸水させて下流領域以外の透過抵抗を高めた状態とする。次に、捕集層原料の平均粒径を4μm〜10μmに調整し、流量550L/minで空気を流通させ、下流領域での捕集層の形成量である製膜量を1.0g/Lとなるよう調整し、この下流領域に捕集層原料を堆積させた。その後、製膜を施した下流領域に対し樹脂をコーティングし、上流領域に捕集層原料粒子(平均粒径5μm)を流量450L/minで1.0g/Lとなるよう製膜させた。下流領域での原料平均粒径(μm)、製膜量(g/L)、供給空気流量(L/min)に加え、この条件で得られた下流領域でのメディアン細孔径D50(μm)をまとめて表1に示した。このようにして、下流領域のメディアン細孔径D50を主として種々の値に調整したハニカムフィルタを得ることができる。なお、実験例1〜5においても同様の手法により、メディアン細孔径D50を調整した。
【0046】
【表1】
【0047】
(実験例11〜16)
下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を11μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例11とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を10μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例12とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例13とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を6μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例14とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を4μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例15とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を0.5μm、メディアン細孔径D80を3μmとした以外は実験例6と同様に作製したハニカムフィルタを実験例16とした。
【0048】
(実験例17〜23)
隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を3μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を9μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%としたハニカムフィルタを実験例17とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を3μm、メディアン細孔径D80を7μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例18とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を3μm、メディアン細孔径D80を5μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例19とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を2μm、メディアン細孔径D80を3μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例20とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を1μm、メディアン細孔径D80を2μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例21とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を0.5μm、メディアン細孔径D80を1μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例22とした。また、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D50を0.3μm、メディアン細孔径D80を0.5μmとした以外は実験例17と同様に作製したハニカムフィルタを実験例23とした。
【0049】
このように、実験例11〜23では、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D80を主として調整した。この細孔分布調整処理について説明する。メディアン細孔径D80の調整は、捕集層を形成する原料の粒径分布のシャープネス指数Dsを変化させることで行った。まず、下流領域以外の部分を吸水させて下流領域以外の透過抵抗を高めた状態とする。次に、捕集層原料のシャープネス指数Dsを0.4〜1.8に調整し、流量600L/minで空気を流通させ、下流領域での捕集層の形成量である製膜量を1.0g/Lとなるよう調整し、この下流領域に捕集層原料を堆積させた。このとき、実験例11〜16では、下流領域には平均粒径3μmの捕集層原料粒子を用い、実験例17〜23では、下流領域には平均粒径5μmの捕集層原料粒子を用いた。その後、製膜を施した下流領域に対し樹脂をコーティングし、上流領域に平均粒径5μmの捕集層原料粒子(シャープネス指数Ds=0.2)を流量450L/minで1.0g/Lとなるよう製膜させた。下流領域でのシャープネス指数Ds、製膜量(g/L)、供給空気流量(L/mim)に加え、この条件で得られた下流領域でのメディアン細孔径D80(μm)をまとめて表2に示した。このようにして、下流領域のメディアン細孔径D80を主として種々の値に調整したハニカムフィルタを得ることができる。なお、実験例1〜10においても同様の手法により、メディアン細孔径D80を調整した。また、実験例6〜10についてもシャープネス指数Ds=0.2と同等のものを用いて作製した。
【0050】
【表2】
【0051】
(実験例24〜34)
隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を3μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を4μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を30%としたハニカムフィルタを実験例24とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を32%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例25とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を35%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例26とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を37%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例27とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を40%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例28とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を50%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例29とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を55%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例30とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を58%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例31とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を60%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例32とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を62%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例33とした。また、下流領域の捕集層の内接円気孔率を65%とした以外は実験例24と同様に作製したハニカムフィルタを実験例34とした。
【0052】
このように、実験例24〜34では、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を調整した。この細孔分布調整処理について説明する。内接円気孔率の調整は、捕集層を形成する原料の平均粒径を固定し、製膜時の供給空気流量を制御する事で捕集層の気孔率の調整を行った。流量が多いほど原料粒子が圧密されるため気孔率が低くなり、流量が少ないほど粒子が緩やかに堆積するため気孔率が高くなる。まず、下流領域以外の部分を吸水させて下流領域以外の透過抵抗を高めた状態とする。次に、捕集層原料粒子(平均粒径5μm)を、流量160L/min〜720L/minに調整して空気を流通させ、下流領域での捕集層の形成量である製膜量を1.0g/Lとなるよう調整し、この下流領域に捕集層原料を堆積させた。その後、製膜を施した下流領域に対し樹脂をコーティングし、上流領域に捕集層原料粒子(平均粒径5μm)を流量450L/minで1.0g/Lとなるよう製膜させた。下流領域での原料粒径(μm)、製膜量(g/L)、供給空気流量(L/min)に加え、この条件で得られた下流領域での内接円気孔率(%)をまとめて表3に示した。このようにして、下流領域の内接円気孔率だけを種々の値に調整したハニカムフィルタを得ることができる。
【0053】
【表3】
【0054】
(実験例35〜45)
隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を3μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を4μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%とした。このとき、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して15%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例35とした。なお、「所定の捕集領域」とは、内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たし、内接円気孔率が35%以上60%以下を満たす領域をいう。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して18%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例36とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して20%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例37とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して25%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例38とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して30%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例39とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して35%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例40とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して40%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例41とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して45%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例42とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して50%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例43とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して52%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例44とした。また、ハニカムフィルタの下流側端面からの距離が全長に対して55%である断面までを「所定の捕集領域」として作製したハニカムフィルタを実験例45とした。
【0055】
このように、実験例35〜45では、「所定の捕集領域」の領域範囲を調整した。この下流領域の領域範囲の調整は、上述した1度目、2度目製膜時の吸水・樹脂埋め領域の高さを調整することで制御した。即ち、まず、下流領域以外の部分を吸水させるが、下流領域を下流端面から15%の距離とするときには、これ以外の部分を吸水させる(1度目)。次に、下流領域を下流端面から15%の距離とするときには、この部分を樹脂埋めする。こうすれば、「所定の捕集領域」の領域範囲を調整することができる。
【0056】
(実験例46〜52)
隔壁部の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%、気孔径を14μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を10%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を3μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を4μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%としたハニカムフィルタを実験例46とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を15%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例47とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を25%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例48とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を30%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例49とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を35%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例50とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を40%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例51とした。また、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を45%とした以外は実験例52と同様に作製したハニカムフィルタを実験例52とした。上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率の調整は、実験例24〜34と同様の手法を上流領域の捕集層の形成に適用することで行った。
【0057】
(実験例53〜55)
隔壁部の水銀ポロシメータにより求められる内接円気孔率を60%、気孔径を25μm、上流領域の捕集層の内接円直径分布により求められる内接円気孔率を20%、下流領域の捕集層の内接円直径分布により求められるメディアン細孔径D50を3μm、下流領域の捕集層のメディアン細孔径D80を4μm、下流領域の捕集層の内接円気孔率を38%としたハニカムフィルタを実験例53とした。また、隔壁部の気孔率を50%、気孔径を25μmとした以外は実験例53と同様に作製したハニカムフィルタを実験例54とした。また、隔壁部の気孔率を50%、気孔径を15μmとした以外は実験例53と同様に作製したハニカムフィルタを実験例55とした。この隔壁部の気孔率及び気孔径の調整は、ハニカムセグメントの作製時の造孔材の粒径及び添加量により行うことができる。
【0058】
(圧力損失試験)
上記作製したハニカムフィルタを2.0Lディーゼルエンジンの直下位置に搭載し、エンジンをアイドル状態にて安定させたあと、瞬時に4000rpm、200Nmまで上昇させ、その際のハニカムフィルタの圧力損失挙動を計測し、計測した圧力損失の最大値を計測対象の圧損値とした。
【0059】
(捕集効率)
圧力損失試験の計測時にハニカムフィルタの前後にてスモーク値を計測し、ハニカムフィルタ入口のスモーク値に対するハニカムフィルタ通過によるスモーク捕捉率を計測対象の捕集効率とした。スモーク値計測器は、AVL製スモークメーターAVL415Sを用いた。
【0060】
(実験結果)
実験例1〜34についての測定結果等を表4に示し、実験例35〜55についての測定結果等を表5に示した。また、図8は、実験例6〜16の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布によるメディアン細孔径D50との関係図であり、また、図9は、実験例7〜15の圧力損失及びPM捕集効率とD50/D80との関係図である。また、図10は、実験例17〜23の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布によるメディアン細孔径D80との関係図である。図11は、実験例24〜34の圧力損失及びPM捕集効率と内接円直径分布による下流領域での内接円気孔率との関係図である。図12は、実験例35〜45の圧力損失及びPM捕集効率と、所定の捕集領域の下流端部からの距離割合との関係図である。図13は、実験例46〜52の圧力損失及びPM捕集効率と、上流領域の捕集層の内接円気孔率との関係図である。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
表4,5、図7〜13に示すように、内接円直径分布のメディアン細孔径D50が1μmを下回ると圧損が著しく上昇した。これは、捕集層のパーミアビリティーが著しく小さくなるためであると推察された。また、内接円直径分布のメディアン細孔径D50が6μmを超えると圧損が大きく上昇した。これは、特に高流量となる高負荷時において捕集層の開細孔よりスートが捕集層を通過し隔壁部の細孔に堆積するためであると推察された。また、内接円直径分布のメディアン細孔径D80が1μmを下回ると、圧損が著しく上昇した。これは、捕集層のパーミアビリティーが著しく小さくなるためであると推察された。また、内接円直径分布のメディアン細孔径D80が7μmを超えると、圧損が大きく上昇した。これは、特に高流量となる高負荷時において捕集層の開細孔よりスートが捕集層を通過し、隔壁部の細孔に堆積するためであると推察された。また、内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%を下回ると、圧損が大きく上昇した。これは、透過抵抗が高くなりすぎたためであると推察された。また、内接円直径分布により求められる内接円気孔率が60%を超えると、捕集効率が大きく低下した。これは、捕集層の捕集性能が十分に確保できないためであると推察された。また、メディアン細孔径D80に対するメディアン細孔径D50の比であるD50/D80が、0.1<D50/D80<1を満たすとよいことがわかった。これは、D50/D80が0.1より大きいと閉気孔の増加による圧損上昇を抑制することができるものと推察された。
【0064】
更に、上記好ましい範囲を満たす下流領域(本発明の所定の捕集領域)が下流側端面から全長の20%を下回ると、圧損が大きく上昇した。これは、スートの捕集層による捕捉が十分でなく基材細孔にスートが堆積してしまうためであると推察された。この点について、全長方向に対して特性に変化がない場合、透過抵抗と慣性抵抗とのバランスにより隔壁部での透過流速は下流領域にて最大となる。圧損性能に対しては下流領域の捕集層特性が支配因子であり、下流領域に十分な捕集層を形成していれば、圧損を抑制する事ができる。このため、下流領域が下流側端面から全長の20%を下回ると、その透過流速の高い部分を捕集層により十分に覆う事ができないため、圧損が高くなると推察される。また、下流領域が下流側端面から全長の50%を超えると、圧損が大きく上昇した。これは、触媒を担持する際に触媒スラリーのハニカムフィルタ上流域での透過が十分に行われないため、捕集層内部、及び、捕集層と基材との界面部分に触媒が凝集してしまうためではないかと推察された。この点について、触媒スラリーを吸引してコートする際、ハニカムフィルタの下流側端面を触媒スラリープールに触れさせて、上流より吸引する。この吸引の際に上流領域の透過抵抗が高くなると吸引時の流量を高くせねばならず、そのため下流領域での吸引流量も高くなり、触媒スラリーが捕集層と隔壁部との界面や捕集層内部により多く堆積し細孔を閉塞してしまうのではないかと推察された。
【0065】
以上より、電子顕微鏡による撮影画像から求めた、内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たし、内接円気孔率が35%以上60%以下を満たすものとすると、圧力損失やPM捕集効率など、排ガスに含まれるPMの捕集性能をより高めることができることが明らかとなった。また、0.1<D50/D80<1を満たすことがより好ましく、少なくとも下流側端面からハニカムフィルタの全長に対して20%の領域が「所定の捕集領域」であり、且つ下流側端面からハニカムフィルタの全長に対して50%以下の領域が「所定の捕集領域」であることが好ましいことがわかった。更に、上流側端面から20%以下の領域である上流領域には、内接円直径分布により求められる内接円気孔率が15%以上40%以下を満たす領域が存在することが好ましいことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0066】
20,40 ハニカムフィルタ、21 ハニカムセグメント、22,42 隔壁部、23,43 セル、24,44 捕集層、26,46 目封止部、27 接合層、28 外周保護部、30 SEM画像、31 隔壁部粒子、32 捕集層粒子、33 材料領域、34 細孔領域、36 最大内接円。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集する捕集層と、を備え、
電子顕微鏡による前記隔壁部上の撮影画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、該各々の細孔領域に内接する最大内接円により求められる内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つ該内接円直径分布でのメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たし、前記内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上60%以下を満たす所定の捕集領域が前記隔壁部上に存在する、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記所定の捕集領域は、更に0.1<D50/D80<1を満たす、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記隔壁部は、少なくとも下流側端面から前記ハニカムフィルタの全長に対して20%の領域が前記所定の捕集領域であり、且つ下流側端面から前記ハニカムフィルタの全長に対して50%以下の領域が前記所定の捕集領域である、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記ハニカムフィルタの全長に対して上流側端面から20%以下の領域である上流領域には、前記内接円直径分布により求められる内接円気孔率が15%以上40%以下を満たす領域が存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記捕集層は、気体を搬送媒体とし該捕集層の原料である無機材料を前記セルへ供給することにより形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記隔壁部は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記ハニカムフィルタは、前記隔壁部及び前記捕集層を有する2以上のハニカムセグメントが接合層によって接合されて形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
触媒が担持されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項1】
流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集する捕集層と、を備え、
電子顕微鏡による前記隔壁部上の撮影画像を材料領域と複数の細孔領域とに分割し、該各々の細孔領域に内接する最大内接円により求められる内接円直径分布でのメディアン細孔径D50が1μm以上6μm以下、且つ該内接円直径分布でのメディアン細孔径D80が1μm以上7μm以下を満たし、前記内接円直径分布により求められる内接円気孔率が35%以上60%以下を満たす所定の捕集領域が前記隔壁部上に存在する、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記所定の捕集領域は、更に0.1<D50/D80<1を満たす、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記隔壁部は、少なくとも下流側端面から前記ハニカムフィルタの全長に対して20%の領域が前記所定の捕集領域であり、且つ下流側端面から前記ハニカムフィルタの全長に対して50%以下の領域が前記所定の捕集領域である、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記ハニカムフィルタの全長に対して上流側端面から20%以下の領域である上流領域には、前記内接円直径分布により求められる内接円気孔率が15%以上40%以下を満たす領域が存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記捕集層は、気体を搬送媒体とし該捕集層の原料である無機材料を前記セルへ供給することにより形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記隔壁部は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記ハニカムフィルタは、前記隔壁部及び前記捕集層を有する2以上のハニカムセグメントが接合層によって接合されて形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
触媒が担持されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−206079(P2012−206079A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75754(P2011−75754)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]