ハニカム構造体の強度検査方法及び強度検査装置
【課題】ハニカム構造体が保証強度を満たしているかどうかを簡易的かつ適切に検査することができるハニカム構造体の強度検査方法及び強度検査装置を提供すること。
【解決手段】流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体の強度検査方法は、ハニカム構造体のスキン層の外表面に対して、加圧された流体を介して検査圧力を負荷する圧力負荷工程と、ハニカム構造体の状態を確認し、ハニカム構造体が保証圧力P0に耐え得る保証強度を満たしているか否かを判定する判定工程とを有する。圧力負荷工程では、ハニカム構造体のスキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布Xのピークsが2つ以上となり、かつ、ピークs間の谷部t2における検査圧力が保証圧力P0以上となるように、ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷する。
【解決手段】流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体の強度検査方法は、ハニカム構造体のスキン層の外表面に対して、加圧された流体を介して検査圧力を負荷する圧力負荷工程と、ハニカム構造体の状態を確認し、ハニカム構造体が保証圧力P0に耐え得る保証強度を満たしているか否かを判定する判定工程とを有する。圧力負荷工程では、ハニカム構造体のスキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布Xのピークsが2つ以上となり、かつ、ピークs間の谷部t2における検査圧力が保証圧力P0以上となるように、ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の内燃機関から排出される排ガスを浄化するためのハニカム構造体の強度検査方法及び強度検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等において、ガソリンエンジンの排ガス浄化装置における触媒担体やディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートを捕集するフィルタ等として用いられるハニカム構造体が知られている。このハニカム構造体は、流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とにより構成されたものがある。
【0003】
上記ハニカム構造体は、金型等を用いてセラミックス等の原料粉末を含有する材料を所望の形状に押出成形し、乾燥、焼成することによって製造される。このような製造工程において、ハニカム構造体の内部には、後工程にて必要となるキャニング強度を低下させるような欠陥が発生する場合がある。そのような欠陥は、通常では端面の観察チェックにより確認することが可能であるが、近年におけるセル壁の薄肉化によって強度の余裕度が減少している。そのため、ハニカム構造体の強度低下による不具合を招かないためにも、実際に自動車等に取り付けて使用する前に、実使用上必要となる強度(保証強度)が保証されているか否かを確認する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1では、ハニカム構造体に衝撃荷重を加え、クラックが生じた部分から落下した粉状物を検知することによってクラックを検出するハニカム構造体のクラック検出方法が開示されている。
しかしながら、このような方法では、発生したクラックを検出することはできても、保証強度を満たしているか否かを確認することはできない。
【0005】
また、自動車技術会の規格JASO M505−87によれば、ハニカム構造体に対して静水圧を加え、ハニカム構造体が破壊したときの強度を測定するアイソスタティック破壊強度試験がある。
この試験を用いれば、予め実使用上必要となるアイソスタティック強度を保証強度として設定し、その強度に応じた圧力を加えた際に破壊するか否かを確認することにより、保証強度を満たしているか否かを検査することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−45276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の試験方法は、下準備のためにハニカム構造体を厳重に梱包する必要がある。また、破壊の有無に関しても、一旦静水圧をかけた後で圧力を抜き、ハニカム構造体を密封容器から取り出し、さらに梱包を剥がして確認する必要がある。そのため、相当な手間がかかり、多数のハニカム構造体を効率良く検査することができない。また、本来は、破壊強度を調べるために用いられることから精度は高いが、ハンドリング等の要因による欠け等も起こし易い。
このようなことから、保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査する方法が望まれているが、未だそのような方法は見出されていない。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査することができるハニカム構造体の強度検査方法及び強度検査装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体の強度を検査する方法であって、
上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に対して、加圧された流体を介して検査圧力を負荷する圧力負荷工程と、
該圧力負荷工程後の上記ハニカム構造体の状態を確認し、該ハニカム構造体が保証圧力に耐え得る保証強度を満たしているか否かを判定する判定工程とを有し、
上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となり、かつ、ピーク間の谷部における検査圧力が上記保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法にある(請求項1)。
【0010】
本発明のハニカム構造体の強度検査方法において、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に対して、該外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となるように検査圧力を負荷する。そのため、簡易な方法で検査圧力を負荷することができると共に、検査圧力分布の曲線をなだらかにすることができる。これにより、上記ハニカム構造体に対して負荷される検査圧力のばらつきを小さくすることができる(後述する実施例1の図5参照)。また、これによって、例えば、検査圧力分布のピークが1つとなる場合のように(後述する比較例の図13参照)、一部に偏った検査圧力が負荷され、検査圧力に大きなばらつきが生じる等の不具合も発生しない。
【0011】
また、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピーク間の谷部における検査圧力が上記保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷する(後述する実施例1の図5参照)。そのため、上記ハニカム構造体の検査すべき領域に対して少なくとも上記保証圧力と同等以上の検査圧力を負荷することができる。
【0012】
これらのことから、本発明では、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に対して、実使用上必要となる強度である上記保証強度に応じた上記保証圧力と同じ又はそれに近い検査圧力をばらつきが小さい状態で負荷することが可能となる。これにより、上記ハニカム構造体に対して、上記保証圧力に比べて過大な検査応力が負荷されないようにすることができる。
【0013】
よって、本発明の強度検査方法に基づいて強度検査を行うことにより、ハニカム構造体が保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査することができる。
そして、本発明の強度検査方法における保証強度をアイソスタティック強度と関連付けて設定することにより、煩雑な作業を必要とするアイソスタティック破壊強度試験を、本発明の方法に置き換えることも可能となる。
【0014】
第2の発明は、流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体の強度を検査する強度検査装置であって、
上記ハニカム構造体の上記スキン層の外周に配置され、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷するための筒状の圧力負荷部材を有しており、
上記圧力負荷部材を加圧された流体を介して上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となり、かつ、ピーク間の谷部における検査圧力が補強強度に応じた保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することができるよう構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置にある(請求項9)。
【0015】
本発明のハニカム構造体の強度検査装置は、上記圧力負荷部材を上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することができるよう構成されている。そのため、簡易な方法で検査圧力を負荷することができると共に、検査圧力分布の曲線をなだらかにすることができる。これにより、上記ハニカム構造体に対して負荷される検査圧力のばらつきを小さくすることができる(後述する実施例1の図5参照)。また、これによって、例えば、検査圧力分布のピークが1つとなる場合のように(後述する比較例の図13参照)、一部に偏った検査圧力が負荷され、検査圧力に大きなばらつきが生じる等の不具合も発生しない。
【0016】
また、上記強度検査装置は、上記圧力負荷部材を上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピーク間の谷部における検査圧力が上記保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することができるよう構成されている(後述する実施例1の図5参照)。そのため、上記ハニカム構造体の検査すべき領域に対して少なくとも上記保証圧力と同等以上の検査圧力を負荷することができる。
【0017】
これらのことから、本発明の強度検査装置は、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に対して、実使用上必要となる強度である上記保証強度に応じた上記保証圧力と同じ又はそれに近い検査圧力をばらつきが小さい状態で負荷することが可能である。これにより、上記ハニカム構造体に対して、上記保証圧力に比べて過大な検査応力が負荷されないようにすることができる。
【0018】
よって、本発明の強度検査装置を用いて強度検査を行うことにより、ハニカム構造体が保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査することができる。
そして、本発明における保証強度をアイソスタティック強度と関連付けて設定することにより、煩雑な作業を必要とするアイソスタティック破壊強度試験を、本発明の強度検査装置を用いた強度検査に置き換えることも可能となる。
【0019】
第3の発明は、セラミックス原料を押出成形し、流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体を成形する成形工程と、
上記ハニカム構造体を乾燥させる乾燥工程と、
上記ハニカム構造体を焼成する焼成工程と、
上記乾燥工程及び/又は上記焼成工程の後に、上記第1の発明のハニカム構造体の強度検査方法を用いて、上記ハニカム構造体の強度を検査する検査工程とを有することを特徴とするハニカム構造体の製造方法にある(請求項14)。
【0020】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、上記乾燥工程及び/又は上記焼成工程の後に、上記第1の発明のハニカム構造体の強度検査方法を用いて、上記ハニカム構造体が保証強度を満たしているか否かを検査する検査工程を行う。そのため、上記検査工程を上記乾燥工程後に実施した場合には、強度が不十分なものを製造工程中において予め排除することができ、生産効率の向上を図ることができる。また、上記検査工程を上記焼成工程後に実施した場合には、製品として使用することができないものを排除することができる。
【0021】
このように、本発明の製造方法によれば、製造工程中において、ハニカム構造体が保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査し、保証強度を満たしたハニカム構造体を確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
上記第1の発明において、検査対象となる上記ハニカム構造体は、一般的に、金型等を用いてセラミックス等の原料粉末を含有する材料を所望の形状に押出成形し、乾燥、焼成することによって製造されるが、検査を行うのは乾燥後のものでもよいし、焼成後のものでもよい。ただし、負荷する圧力はそれぞれの場合において設定する必要がある。
【0023】
また、検査圧力分布における2つ以上のピークは、そのピークを形成する検査圧力分布の曲線が同様な形状で、そのピークにおける検査圧力が同様な値となるようにすることが好ましい。例えば、ピークを形成する検査圧力分布の曲線の形状やピークにおける検査圧力の値が大きく異なれば、上記ハニカム構造体に負荷される検査圧力に偏りが生じ、ばらつきが大きくなる。その場合には、上記ハニカム構造体が保証強度を満たしているか否かを適切に検査することができず、強度的に支障のないものまで破壊してしまうおそれがある。
【0024】
上記圧力負荷工程では、上記保証圧力に比べて過大な検査応力が負荷されないようにすることが重要である。したがって、上記圧力負荷工程では、検査圧力分布のピークにおける検査圧力が上記保証圧力の120%以下であることが好ましい(請求項2)。このとき、上記ハニカム構造体の一方の端面に樹脂製の板等の当て物をし、端部方向からの力がかからないようにすることが好ましい。
この場合には、上記保証圧力に近い検査圧力を上記ハニカム構造体全体に負荷させることができる。これにより、上記ハニカム構造体の強度検査をより適切に行うことができる。
【0025】
また、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷するための筒状の圧力負荷部材を上記ハニカム構造体の上記スキン層の外周に配置し、上記圧力負荷部材を上記基準圧力に加圧された流体を介して上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷する構成とすることができる(請求項3)。
この場合には、上記圧力負荷部材を上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧するだけで、検査圧力を負荷することができる。そのため、上記ハニカム構造体の強度検査を簡易的に行うことができる。
【0026】
また、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層における軸方向の少なくとも一方の端面から内方へ2〜10mmまでの範囲には、上記圧力負荷部材を接触させず、検査圧力を負荷しないことが好ましい(請求項4)。
すなわち、上記ハニカム構造体の端部は、他の部分に比べて強度が低く、割れ・欠け等が生じ易い。よって、端部に検査圧力を負荷させないようにすることにより、上記ハニカム構造体の端部の割れ・欠け等を防止することができる。
また、上記ハニカム構造体の端部が上記圧力負荷部材によって覆われていると、上記ハニカム構造体と上記圧力負荷部材との間に異物等が存在し、正確な圧力がかかっていない場合に、上記ハニカム構造体を軸方向から観察してもそれが判らない場合がある。よって、端部に上記圧力負荷部材を接触させないようにすることにより、上記ハニカム構造体を軸方向から観察して、上記不具合が生じていないかどうかを判断することが容易となる。
【0027】
上記第1及び第2の発明において、上記圧力負荷部材は、袋状の弾性体よりなり、内部に流体を導入して膨張すると共に内部から流体を排出して収縮するよう構成されていることが好ましい(請求項5、10)。
この場合には、上記圧力負荷部材を膨張及び収縮させることにより、上記ハニカム構造体に負荷する検査圧力の調整を容易に行うことができる。また、減圧後は、検査した上記ハニカム構造体を容易に取り出し、移送することができる。そのため、上記ハニカム構造体の強度検査をより簡易に行うことができる。
【0028】
上記圧力負荷部材は、軸方向において分割された複数の分割圧力負荷部材により構成することができる(請求項6、11)。
この場合には、上記複数の分割圧力負荷部材が上記ハニカム構造体に対してそれぞれ検査圧力を負荷することになる。そのため、検査圧力分布のピークを2つ以上とすることが可能となる。
【0029】
また、上記圧力負荷部材は、内部が軸方向において複数の部分に分割されている構成とすることができる(請求項7、12)。
この場合には、上記圧力負荷部材の内部において複数に分割された部分が上記ハニカム構造体に対してそれぞれ検査圧力を負荷することになる。そのため、検査圧力分布のピークを2つ以上とすることが可能となる。
【0030】
また、上記圧力負荷部材は、一般部よりも厚みが大きい圧力緩和部が軸方向において1又は複数設けられている構成とすることができる(請求項8、13)。
この場合には、上記ハニカム構造体に負荷される検査圧力が上記圧力緩和部において緩和され、その両側よりも小さくなる。すなわち、上記圧力緩和部において検査圧力分布の谷部分が形成される。そのため、検査圧力分布の山部分を2つ以上として、ピークを2つ以上とすることが可能となる。
なお、上記圧力緩和部は、例えば、上記圧力負荷部材の周方向において全周に渡って設けることもできるし、部分的に設けることもできる。また、上記ハニカム構造体に接触する部分だけに設けてもよい。
【0031】
上記第3の発明においては、上記検査工程の後、上記ハニカム構造体が上記検査工程を行ったものであることがわかるように、上記検査工程の直前又は直後に、上記ハニカム構造体にマーキングを行うことが好ましい(請求項15)。
この場合には、上記検査工程の後、上記ハニカム構造体に対して上記検査工程を行ったことが一目見て明らかになる。つまり、上記検査工程を行った上記ハニカム構造体には、必ずマーキングがされているようにすることができる。これにより、上記ハニカム構造体の検査漏れを防止することができる。そして、例えば、上記ハニカム構造体にマーキングがされているのに検査が行われていない等の不手際を防止することができる。
【実施例】
【0032】
(実施例)
本発明の実施例にかかるハニカム構造体の強度検査方法について説明する。
本例のハニカム構造体の強度検査方法は、図1に示すごとく、四角形格子状のセル壁11と、セル壁11に囲まれた多数のセル12と、外周側面を覆う円筒状のスキン層13とを有するハニカム構造体1が保証強度を満たしているか否かを検査する方法である。
【0033】
強度検査方法は、図2〜図5に示すごとく、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131に対して、加圧した流体を介して検査圧力を負荷する圧力負荷工程と、圧力負荷工程後のハニカム構造体1の状態を確認し、ハニカム構造体1が保証圧力P0に耐え得る保証強度を満たしているか否かを判定する判定工程とを有する。
そして、圧力負荷工程では、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131上での軸方向における検査圧力分布Xのピークsが2つ以上となり、かつ、ピークs間の谷部t2における検査圧力が保証圧力P0以上となるように、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷する。
以下、これを詳説する。
【0034】
検査対象となるハニカム構造体1を製造するに当たっては、まず、ハニカム構造体1の原料となるセラミックス原料を準備した。セラミックス原料の原料粉末としては、カオリン、溶融シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、タルク等を含有し、化学組成が最終的にコーディエライトを主成分とする組成となるように調整したものを用いた。この原料粉末に水、バインダ等を所定量添加して混練することにより、セラミックス原料を得た。
【0035】
次いで、セル壁の配設形状に対応するスリット溝を設けた押出成形用金型を用いて上記セラミックス原料を押出成形し、所望の長さに切断することにより、図1に示すごとく、セル壁11とセル12とスキン層13とを有するハニカム構造体1を成形した。そして、成形後のハニカム構造体1を所定温度で乾燥させ、所定温度で焼成した。これにより、検査対象となるハニカム構造体1を製造した。
【0036】
次いで、ハニカム構造体1の強度検査を行った。
本例では、図2、図3に示す強度検査装置2を用いて強度検査を行った。そして、ハニカム構造体1が実使用上必要となる保証強度を2MPaに設定し、その設定した保証強度に応じた保証圧力を負荷した際に破壊するか否か(欠け、割れ、クラック等が生じるか否か)を確認することにより、保証強度を満たしているか否かを検査した。もちろん、保証強度が1MPa、0.5MPa等のように異なる場合には、それに応じた保証圧力を設定して負荷すればよい。
【0037】
図2に示すごとく、強度検査装置2は、検査対象となるハニカム構造体1のスキン層13の外周に配置され、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷するための円筒状の圧力負荷部材3と、圧力負荷部材3の外側に設けられ、圧力負荷部材3の外側の位置を規制する円筒状の規制部材41と、圧力負荷部材3に接続され、圧力負荷部材3の内部に流体を供給して加圧すると共に流体を吸引して減圧するための流体供給管42と、流体供給管42の開閉を制御するバルブ43とを備えている。
【0038】
また、図3に示すごとく、圧力負荷部材3は、弾性体であるウレタンゴムよりなり、流体5を供給する供給部31が設けられた袋状に構成されている。そして、圧力負荷部材3は、供給部31に流体5を供給することで膨張し、供給部31から流体5を吸引することで収縮するよう構成されている。
【0039】
また、同図に示すごとく、圧力負荷部材3には、他の部分よりも厚みが大きい圧力緩和部32が設けられている。圧力緩和部32は、供給部31の内周面310から内方に突出して厚みを大きくしている。また、圧力緩和部32は、供給部31の内周面310の周方向において全周に渡って設けられている。
なお、図3では、圧力負荷部材93の内部の構造がわかるように、圧力負荷部材93を断面で示してある。
【0040】
具体的に、強度検査装置2を用いてハニカム構造体1の強度検査を行うに当たっては、まず、強度検査装置2内に異物、汚れ等が無いか確認した。
そして、図2(a)に示すごとく、検査対象となるハニカム構造体1を圧力負荷部材3の内側に配置し、固定した。このとき、ハニカム構造体1のスキン層13における軸方向の両端部から内方へ2mmまでの範囲には、圧力負荷部材3を対向させないようにした。この部分には、圧力負荷部材3から直接圧力を負荷させないようにするためである。また、それ以外の検査すべき領域に対しては、圧力負荷部材3を対向させるようにした。
【0041】
また、このとき、圧力負荷部材3の供給部31内に油は供給されておらず、加圧されていない状態である(図4の状態a)。
なお、図4は、圧力負荷部材3の供給部31の流体圧力の変化を示したものである。この圧力は、圧力負荷部材3に取り付けた圧力計44(図2(a)〜(d)参照)により計測した。
【0042】
次いで、図2(b)に示すごとく、流体供給管42のバルブ43を開状態とし、圧力負荷部材3の供給部31内に流体(油)を供給し、加圧した。このとき、図3に示すごとく、圧力負荷部材3を供給部31内に供給された流体(油)5で膨張させ、その供給部31内の流体圧力(油圧)によってハニカム構造体1のスキン層13の外表面131を押圧した。これにより、ハニカム構造体1に圧力(検査圧力)を負荷した。実際には、検査圧力は、供給部31内の流体圧力から圧力負荷部材3からの戻り圧力を差し引いた圧力である。
【0043】
そして、本例では、供給部31内の流体圧力が最終的に加圧する圧力の50〜90%となるまで加圧速度を制御しながら加圧した(図4の状態b1)。
さらに、そこからは、供給部31内の流体圧力が保証圧力P0よりも少し大きい2.3MPaとなるまで圧力を制御しながら加圧し(図4の状態b2)、その後一定時間保持した(図4の状態b3)。
【0044】
ここで、図5は、供給部31内の圧力を一定時間保持している状態(図4の状態b3)において、ハニカム構造体1に負荷される検査圧力を測定し、その測定した検査圧力の分布曲線を簡略化して示した検査圧力分布Xである。縦軸は検査圧力(MPa)、横軸は圧力負荷部材3の軸方向における測定箇所である。
本例では、圧力負荷部材3の軸方向において、16箇所で検査圧力の測定を行った。図5には、圧力負荷部材3の両端部付近である測定箇所1、16、及びハニカム構造体1の全長Aが示してある。また、検査圧力の測定は、圧力センサによって測定した。
【0045】
同図に示すごとく、この検査圧力分布Xには、ピークsが2つ存在する。また、ピークsは、検査圧力分布Xの山部t1に存在し、山部t1と山部t1との間には谷部bが存在する。谷部t2が存在する位置は、ハニカム構造体1に対して圧力負荷部材3の圧力緩和部32周辺が接触していた位置に当たる。また、検査圧力分布Xのピークsにおける検査圧力は、保証圧力P0の約107%である。また、谷部t2における検査圧力は、保証圧力P0よりも大きい。
【0046】
次いで、図2(c)に示すごとく、バルブ43を切り替え、圧力負荷部材3の供給部31の油圧を開放した。そして、圧力負荷部材3を収縮させ、供給部31内の圧力を所定速度で減圧した(図4の状態c)。
次いで、図2(d)に示すごとく、ハニカム構造体1を圧力負荷部材3の内側から取り出した(図4の状態d)。
【0047】
次いで、圧力を負荷した後のハニカム構造体1の状態を確認した。本例では、ハニカム構造体1の欠け、割れ、クラック等の存在を確認した。そして、破損が発生していないものは保証強度を満たしているものとし、破損が発生したものは保証強度を満たしていないものと判定した。
以上により、ハニカム構造体1の強度検査を終了した。
【0048】
次に、本例のハニカム構造体の強度検査方法における作用効果について説明する。
本例のハニカム構造体の強度検査方法において、圧力負荷工程では、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131に対して、外表面131上での軸方向における検査圧力分布Xのピークsが2つ以上となるように検査圧力を負荷する。そのため、簡易な方法で検査圧力を負荷することができると共に、検査圧力分布の曲線をなだらかにすることができる。これにより、ハニカム構造体1に対して負荷される検査圧力のばらつきを小さくすることができる(図5参照)。また、これによって、例えば、後述する比較例に示すごとく、検査圧力分布のピークが1つとなる場合のように(図13参照)、一部に偏った検査圧力が負荷され、検査圧力に大きなばらつきが生じる等の不具合も発生しない。
【0049】
また、圧力負荷工程では、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131上での軸方向における検査圧力分布Xのピークs間の谷部t2における検査圧力が保証圧力P0以上となるように、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷する(図5参照)。そのため、ハニカム構造体1の検査すべき領域に対して少なくとも保証圧力P0と同等以上の検査圧力を負荷することができる。
【0050】
これらのことから、本例では、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131に対して、実使用上必要となる強度である保証強度に応じた保証圧力P0と同じ又はそれに近い検査圧力をばらつきが小さい状態で負荷することが可能となる。これにより、ハニカム構造体1に対して、保証圧力P0に比べて過大な検査応力が負荷されないようにすることができる。
【0051】
また、本例において、圧力負荷工程では、図5に示すごとく、検査圧力分布Xのピークsにおける検査圧力が保証圧力P0の約107%である。そのため、保証圧力P0に近い検査圧力をハニカム構造体1全体に負荷させることができる。これにより、ハニカム構造体1の強度検査をより適切に行うことができる。
【0052】
また、圧力負荷工程では、図2、図3に示すごとく、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷するための円筒状の圧力負荷部材3をハニカム構造体1のスキン層13の外周に配置し、圧力負荷部材3を加圧された流体5を介してハニカム構造体1のスキン層13の外表面131に押圧することにより、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷する。すなわち、圧力負荷部材3をハニカム構造体1のスキン層13の外表面131に押圧するだけで、検査圧力を負荷することができる。そのため、ハニカム構造体1の強度検査を簡易的に行うことができる。
【0053】
また、圧力負荷工程では、図2、図3に示すごとく、ハニカム構造体1のスキン層13における軸方向の両端面から内方へ2mmまでの範囲には、圧力負荷部材3を接触させず、検査圧力を負荷しない。すなわち、ハニカム構造体1の端部は、他の部分に比べて強度が小さく、特に外周スキン13に対して垂直に圧力が掛からない場合には、割れ・欠け等が生じ易い。よって、端部に検査圧力を負荷させないようにすることにより、ハニカム構造体1の端部の割れ・欠け等を防止することができる。また、ハニカム構造体1の端部が圧力負荷部材3によって覆われていると、ハニカム構造体1と圧力負荷部材3との間に異物等が存在し、正確な圧力がかかっていない場合に、ハニカム構造体1を軸方向から観察してもそれが判らない場合がある。よって、端部に圧力負荷部材3を接触させないようにすることにより、ハニカム構造体1を軸方向から観察して、上記不具合が生じていないかどうかを判断することが容易となる。
【0054】
また、圧力負荷部材3は、袋状の弾性体よりなり、内部に流体5を導入して膨張すると共に内部から流体5を排出して収縮するよう構成されている。そのため、圧力負荷部材3を膨張及び収縮させることにより、ハニカム構造体1に負荷する検査圧力の調整を精度良く容易に行うことができる。これにより、ハニカム構造体1の強度検査をより簡易的かつ適切に行うことができる。
【0055】
また、圧力負荷部材3は、一般部よりも厚みが大きい圧力緩和部32が軸方向において1箇所設けられている。そのため、ハニカム構造体1に負荷される検査圧力が圧力緩和部32において緩和され、その両側よりも小さくなる。すなわち、図5に示すごとく、圧力緩和部32において検査圧力分布Xの谷部t2が形成される。そのため、検査圧力分布Xの山部t1を2つ以上として、ピークsを2つ以上とすることが可能となる。
【0056】
このように、本例の強度検査方法に基づいて強度検査を行うことにより、ハニカム構造体1が保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査することができる。
【0057】
また、本例では、図2、図3に示すごとく、ハニカム構造体1のスキン層13における軸方向の両端面から内方へ2mmまでの範囲には、圧力負荷部材3を接触させず、検査圧力を負荷しないようにしたが、例えば、図6に示すごとく、ハニカム構造体1のスキン層13における軸方向の一方の端面から内方へ2mmまでの範囲には、圧力負荷部材3を接触させず、検査圧力を負荷しないようにし、他方の端面には、樹脂製の当て板49を当てるようにし、端部方向からの力がかからないようにすることで、同様の効果が得られるようにすることもできる。
【0058】
また、図7に示すごとく、ハニカム構造体1の軸方向全長よりも長い圧力負荷部材3を用いて検査圧力を負荷することもできる。
また、このような圧力負荷部材3を用いてハニカム構造体1に負荷される検査圧力を測定した結果を示したものが図8である。縦軸は検査圧力(MPa)、横軸は圧力負荷部材3の軸方向における測定箇所(1〜16)である。この例では、圧力負荷部材3の軸方向において、16箇所で検査圧力の測定を行った。また、その16箇所それぞれにおいても、周方向の4箇所(0度、90度、180度、270度)で検査圧力を測定した。なお、図8には、圧力負荷部材3の両端部付近である測定箇所1、16、及びハニカム構造体1の全長Aが示してある。
【0059】
同図の結果から、検査圧力のピークが2つ存在し、ハニカム構造体1に対して負荷される検査圧力のばらつきが小さくなっていることがわかる。また、ピークとピークとの間の谷部における検査圧力が保証圧力P0以上となっており、ハニカム構造体1の検査すべき領域に対して少なくとも保証圧力P0と同等以上の検査圧力が負荷されていることがわかる。
【0060】
また、本例では、圧力負荷部材3に一般部よりも厚みが大きい圧力緩和部32を設けることによって、ハニカム構造体1の外周スキン13の外表面131上での軸方向における検査圧力分布Xのピークsを複数としたが、これ以外の構成によっても実現することができる。
【0061】
例えば、図9では、圧力負荷部材3は、内部が軸方向において複数の部分に分割されている、すなわち複数の供給部31により構成されている。この場合には、圧力負荷部材3の複数の供給部31にそれぞれ流体5が供給され、ハニカム構造体1に対してそれぞれが検査圧力を負荷することになる。そのため、検査圧力分布Xのピークsを2つ以上とすることが可能となる。
【0062】
また、図10では、圧力負荷部材3を軸方向において分割された複数の分割圧力負荷部材3a、3bにより構成されている。この場合には、複数の分割圧力負荷部材3a、3bにそれぞれ流体5が供給され、ハニカム構造体1に対してそれぞれが検査圧力を負荷することになる。そのため、検査圧力分布Xのピークsを2つ以上とすることが可能となる。
【0063】
(比較例)
上記実施例の効果をより明確にするために、図11〜図13に示すごとく、圧力緩和部32等を設けていない単純な袋状に構成された圧力負荷部材3(図12)を用いた強度検査を比較例として行った。
【0064】
具体的には、図11に示すごとく、実施例と基本的な構成が同じである強度検査装置2を用い、ハニカム構造体1をウレタンゴムからなる円筒状の圧力負荷部材3の内側に配置し、固定した。次いで、図11、図12に示すごとく、流体供給管42のバルブ43を開状態とし、圧力負荷部材3の供給部31内に流体(油)5を供給し、圧力負荷部材3を供給部31内に供給された流体(油)5で膨張させ、その供給部31内の流体圧力(油圧)によってハニカム構造体1のスキン層13の外表面131を押圧した。これにより、ハニカム構造体1に圧力(検査圧力)を負荷した。なお、図12では、圧力負荷部材3の供給部31の構造がわかるように、圧力負荷部材3を断面で示してある。
その他、基本的な手順等は実施例と同様である。
【0065】
その結果、ハニカム構造体1に負荷される検査圧力を測定したところ、図13に示すごとく、圧力負荷部材3の軸方向の両端部(測定箇所1、3)に予め設定した保証強度に応じた保証圧力P0と同じ検査圧力が負荷されるようにすると、中央部(測定箇所2)には保証圧力P0よりも大きな検査圧力が掛かった。つまり、中央部に検査圧力分布Xのピークsが形成され、両端部と中央部との間に大きな圧力差が生じた。そのため、上記の強度検査方法では、ハニカム構造体1が破壊したときに、それが本来必要な保証強度を満たしていないために破壊したのか、ピークにおける検査圧力が過大であるために破壊したのかが判らず、ハニカム構造体1が保証強度を満たしているか否かを適切に検査することが困難である。
【0066】
以上の結果から、実施例のように、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131上での軸方向における検査圧力分布Xのピークsが2つ以上となるように、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷することが非常に有効であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例における、ハニカム構造体を示す説明図。
【図2】実施例における、(a)〜(d)圧力負荷工程の手順を示す説明図。
【図3】実施例における、圧力負荷部材の内部に流体が供給された状態を示す説明図。
【図4】実施例における、圧力負荷部材の内部の圧力変化を示す説明図。
【図5】実施例における、検査圧力分布を示した説明図。
【図6】実施例における、強度検査装置のその他の例を示す説明図。
【図7】実施例における、強度検査装置のその他の例を示す説明図。
【図8】実施例における、検査圧力の測定結果を示す説明図。
【図9】実施例における、圧力負荷部材のその他の例を示す説明図。
【図10】実施例における、圧力負荷部材のその他の例を示す説明図。
【図11】比較例における、ハニカム構造体に圧力を負荷する様子を示す説明図。
【図12】比較例における、圧力負荷部材の内部に流体が供給された状態を示す説明図。
【図13】比較例における、検査圧力分布を示した説明図。
【符号の説明】
【0068】
X 検査圧力分布
P0 基準圧力
s ピーク
t2 谷部
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の内燃機関から排出される排ガスを浄化するためのハニカム構造体の強度検査方法及び強度検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等において、ガソリンエンジンの排ガス浄化装置における触媒担体やディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートを捕集するフィルタ等として用いられるハニカム構造体が知られている。このハニカム構造体は、流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とにより構成されたものがある。
【0003】
上記ハニカム構造体は、金型等を用いてセラミックス等の原料粉末を含有する材料を所望の形状に押出成形し、乾燥、焼成することによって製造される。このような製造工程において、ハニカム構造体の内部には、後工程にて必要となるキャニング強度を低下させるような欠陥が発生する場合がある。そのような欠陥は、通常では端面の観察チェックにより確認することが可能であるが、近年におけるセル壁の薄肉化によって強度の余裕度が減少している。そのため、ハニカム構造体の強度低下による不具合を招かないためにも、実際に自動車等に取り付けて使用する前に、実使用上必要となる強度(保証強度)が保証されているか否かを確認する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1では、ハニカム構造体に衝撃荷重を加え、クラックが生じた部分から落下した粉状物を検知することによってクラックを検出するハニカム構造体のクラック検出方法が開示されている。
しかしながら、このような方法では、発生したクラックを検出することはできても、保証強度を満たしているか否かを確認することはできない。
【0005】
また、自動車技術会の規格JASO M505−87によれば、ハニカム構造体に対して静水圧を加え、ハニカム構造体が破壊したときの強度を測定するアイソスタティック破壊強度試験がある。
この試験を用いれば、予め実使用上必要となるアイソスタティック強度を保証強度として設定し、その強度に応じた圧力を加えた際に破壊するか否かを確認することにより、保証強度を満たしているか否かを検査することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−45276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の試験方法は、下準備のためにハニカム構造体を厳重に梱包する必要がある。また、破壊の有無に関しても、一旦静水圧をかけた後で圧力を抜き、ハニカム構造体を密封容器から取り出し、さらに梱包を剥がして確認する必要がある。そのため、相当な手間がかかり、多数のハニカム構造体を効率良く検査することができない。また、本来は、破壊強度を調べるために用いられることから精度は高いが、ハンドリング等の要因による欠け等も起こし易い。
このようなことから、保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査する方法が望まれているが、未だそのような方法は見出されていない。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査することができるハニカム構造体の強度検査方法及び強度検査装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体の強度を検査する方法であって、
上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に対して、加圧された流体を介して検査圧力を負荷する圧力負荷工程と、
該圧力負荷工程後の上記ハニカム構造体の状態を確認し、該ハニカム構造体が保証圧力に耐え得る保証強度を満たしているか否かを判定する判定工程とを有し、
上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となり、かつ、ピーク間の谷部における検査圧力が上記保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法にある(請求項1)。
【0010】
本発明のハニカム構造体の強度検査方法において、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に対して、該外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となるように検査圧力を負荷する。そのため、簡易な方法で検査圧力を負荷することができると共に、検査圧力分布の曲線をなだらかにすることができる。これにより、上記ハニカム構造体に対して負荷される検査圧力のばらつきを小さくすることができる(後述する実施例1の図5参照)。また、これによって、例えば、検査圧力分布のピークが1つとなる場合のように(後述する比較例の図13参照)、一部に偏った検査圧力が負荷され、検査圧力に大きなばらつきが生じる等の不具合も発生しない。
【0011】
また、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピーク間の谷部における検査圧力が上記保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷する(後述する実施例1の図5参照)。そのため、上記ハニカム構造体の検査すべき領域に対して少なくとも上記保証圧力と同等以上の検査圧力を負荷することができる。
【0012】
これらのことから、本発明では、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に対して、実使用上必要となる強度である上記保証強度に応じた上記保証圧力と同じ又はそれに近い検査圧力をばらつきが小さい状態で負荷することが可能となる。これにより、上記ハニカム構造体に対して、上記保証圧力に比べて過大な検査応力が負荷されないようにすることができる。
【0013】
よって、本発明の強度検査方法に基づいて強度検査を行うことにより、ハニカム構造体が保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査することができる。
そして、本発明の強度検査方法における保証強度をアイソスタティック強度と関連付けて設定することにより、煩雑な作業を必要とするアイソスタティック破壊強度試験を、本発明の方法に置き換えることも可能となる。
【0014】
第2の発明は、流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体の強度を検査する強度検査装置であって、
上記ハニカム構造体の上記スキン層の外周に配置され、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷するための筒状の圧力負荷部材を有しており、
上記圧力負荷部材を加圧された流体を介して上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となり、かつ、ピーク間の谷部における検査圧力が補強強度に応じた保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することができるよう構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置にある(請求項9)。
【0015】
本発明のハニカム構造体の強度検査装置は、上記圧力負荷部材を上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することができるよう構成されている。そのため、簡易な方法で検査圧力を負荷することができると共に、検査圧力分布の曲線をなだらかにすることができる。これにより、上記ハニカム構造体に対して負荷される検査圧力のばらつきを小さくすることができる(後述する実施例1の図5参照)。また、これによって、例えば、検査圧力分布のピークが1つとなる場合のように(後述する比較例の図13参照)、一部に偏った検査圧力が負荷され、検査圧力に大きなばらつきが生じる等の不具合も発生しない。
【0016】
また、上記強度検査装置は、上記圧力負荷部材を上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピーク間の谷部における検査圧力が上記保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することができるよう構成されている(後述する実施例1の図5参照)。そのため、上記ハニカム構造体の検査すべき領域に対して少なくとも上記保証圧力と同等以上の検査圧力を負荷することができる。
【0017】
これらのことから、本発明の強度検査装置は、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に対して、実使用上必要となる強度である上記保証強度に応じた上記保証圧力と同じ又はそれに近い検査圧力をばらつきが小さい状態で負荷することが可能である。これにより、上記ハニカム構造体に対して、上記保証圧力に比べて過大な検査応力が負荷されないようにすることができる。
【0018】
よって、本発明の強度検査装置を用いて強度検査を行うことにより、ハニカム構造体が保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査することができる。
そして、本発明における保証強度をアイソスタティック強度と関連付けて設定することにより、煩雑な作業を必要とするアイソスタティック破壊強度試験を、本発明の強度検査装置を用いた強度検査に置き換えることも可能となる。
【0019】
第3の発明は、セラミックス原料を押出成形し、流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体を成形する成形工程と、
上記ハニカム構造体を乾燥させる乾燥工程と、
上記ハニカム構造体を焼成する焼成工程と、
上記乾燥工程及び/又は上記焼成工程の後に、上記第1の発明のハニカム構造体の強度検査方法を用いて、上記ハニカム構造体の強度を検査する検査工程とを有することを特徴とするハニカム構造体の製造方法にある(請求項14)。
【0020】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、上記乾燥工程及び/又は上記焼成工程の後に、上記第1の発明のハニカム構造体の強度検査方法を用いて、上記ハニカム構造体が保証強度を満たしているか否かを検査する検査工程を行う。そのため、上記検査工程を上記乾燥工程後に実施した場合には、強度が不十分なものを製造工程中において予め排除することができ、生産効率の向上を図ることができる。また、上記検査工程を上記焼成工程後に実施した場合には、製品として使用することができないものを排除することができる。
【0021】
このように、本発明の製造方法によれば、製造工程中において、ハニカム構造体が保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査し、保証強度を満たしたハニカム構造体を確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
上記第1の発明において、検査対象となる上記ハニカム構造体は、一般的に、金型等を用いてセラミックス等の原料粉末を含有する材料を所望の形状に押出成形し、乾燥、焼成することによって製造されるが、検査を行うのは乾燥後のものでもよいし、焼成後のものでもよい。ただし、負荷する圧力はそれぞれの場合において設定する必要がある。
【0023】
また、検査圧力分布における2つ以上のピークは、そのピークを形成する検査圧力分布の曲線が同様な形状で、そのピークにおける検査圧力が同様な値となるようにすることが好ましい。例えば、ピークを形成する検査圧力分布の曲線の形状やピークにおける検査圧力の値が大きく異なれば、上記ハニカム構造体に負荷される検査圧力に偏りが生じ、ばらつきが大きくなる。その場合には、上記ハニカム構造体が保証強度を満たしているか否かを適切に検査することができず、強度的に支障のないものまで破壊してしまうおそれがある。
【0024】
上記圧力負荷工程では、上記保証圧力に比べて過大な検査応力が負荷されないようにすることが重要である。したがって、上記圧力負荷工程では、検査圧力分布のピークにおける検査圧力が上記保証圧力の120%以下であることが好ましい(請求項2)。このとき、上記ハニカム構造体の一方の端面に樹脂製の板等の当て物をし、端部方向からの力がかからないようにすることが好ましい。
この場合には、上記保証圧力に近い検査圧力を上記ハニカム構造体全体に負荷させることができる。これにより、上記ハニカム構造体の強度検査をより適切に行うことができる。
【0025】
また、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷するための筒状の圧力負荷部材を上記ハニカム構造体の上記スキン層の外周に配置し、上記圧力負荷部材を上記基準圧力に加圧された流体を介して上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷する構成とすることができる(請求項3)。
この場合には、上記圧力負荷部材を上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧するだけで、検査圧力を負荷することができる。そのため、上記ハニカム構造体の強度検査を簡易的に行うことができる。
【0026】
また、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層における軸方向の少なくとも一方の端面から内方へ2〜10mmまでの範囲には、上記圧力負荷部材を接触させず、検査圧力を負荷しないことが好ましい(請求項4)。
すなわち、上記ハニカム構造体の端部は、他の部分に比べて強度が低く、割れ・欠け等が生じ易い。よって、端部に検査圧力を負荷させないようにすることにより、上記ハニカム構造体の端部の割れ・欠け等を防止することができる。
また、上記ハニカム構造体の端部が上記圧力負荷部材によって覆われていると、上記ハニカム構造体と上記圧力負荷部材との間に異物等が存在し、正確な圧力がかかっていない場合に、上記ハニカム構造体を軸方向から観察してもそれが判らない場合がある。よって、端部に上記圧力負荷部材を接触させないようにすることにより、上記ハニカム構造体を軸方向から観察して、上記不具合が生じていないかどうかを判断することが容易となる。
【0027】
上記第1及び第2の発明において、上記圧力負荷部材は、袋状の弾性体よりなり、内部に流体を導入して膨張すると共に内部から流体を排出して収縮するよう構成されていることが好ましい(請求項5、10)。
この場合には、上記圧力負荷部材を膨張及び収縮させることにより、上記ハニカム構造体に負荷する検査圧力の調整を容易に行うことができる。また、減圧後は、検査した上記ハニカム構造体を容易に取り出し、移送することができる。そのため、上記ハニカム構造体の強度検査をより簡易に行うことができる。
【0028】
上記圧力負荷部材は、軸方向において分割された複数の分割圧力負荷部材により構成することができる(請求項6、11)。
この場合には、上記複数の分割圧力負荷部材が上記ハニカム構造体に対してそれぞれ検査圧力を負荷することになる。そのため、検査圧力分布のピークを2つ以上とすることが可能となる。
【0029】
また、上記圧力負荷部材は、内部が軸方向において複数の部分に分割されている構成とすることができる(請求項7、12)。
この場合には、上記圧力負荷部材の内部において複数に分割された部分が上記ハニカム構造体に対してそれぞれ検査圧力を負荷することになる。そのため、検査圧力分布のピークを2つ以上とすることが可能となる。
【0030】
また、上記圧力負荷部材は、一般部よりも厚みが大きい圧力緩和部が軸方向において1又は複数設けられている構成とすることができる(請求項8、13)。
この場合には、上記ハニカム構造体に負荷される検査圧力が上記圧力緩和部において緩和され、その両側よりも小さくなる。すなわち、上記圧力緩和部において検査圧力分布の谷部分が形成される。そのため、検査圧力分布の山部分を2つ以上として、ピークを2つ以上とすることが可能となる。
なお、上記圧力緩和部は、例えば、上記圧力負荷部材の周方向において全周に渡って設けることもできるし、部分的に設けることもできる。また、上記ハニカム構造体に接触する部分だけに設けてもよい。
【0031】
上記第3の発明においては、上記検査工程の後、上記ハニカム構造体が上記検査工程を行ったものであることがわかるように、上記検査工程の直前又は直後に、上記ハニカム構造体にマーキングを行うことが好ましい(請求項15)。
この場合には、上記検査工程の後、上記ハニカム構造体に対して上記検査工程を行ったことが一目見て明らかになる。つまり、上記検査工程を行った上記ハニカム構造体には、必ずマーキングがされているようにすることができる。これにより、上記ハニカム構造体の検査漏れを防止することができる。そして、例えば、上記ハニカム構造体にマーキングがされているのに検査が行われていない等の不手際を防止することができる。
【実施例】
【0032】
(実施例)
本発明の実施例にかかるハニカム構造体の強度検査方法について説明する。
本例のハニカム構造体の強度検査方法は、図1に示すごとく、四角形格子状のセル壁11と、セル壁11に囲まれた多数のセル12と、外周側面を覆う円筒状のスキン層13とを有するハニカム構造体1が保証強度を満たしているか否かを検査する方法である。
【0033】
強度検査方法は、図2〜図5に示すごとく、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131に対して、加圧した流体を介して検査圧力を負荷する圧力負荷工程と、圧力負荷工程後のハニカム構造体1の状態を確認し、ハニカム構造体1が保証圧力P0に耐え得る保証強度を満たしているか否かを判定する判定工程とを有する。
そして、圧力負荷工程では、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131上での軸方向における検査圧力分布Xのピークsが2つ以上となり、かつ、ピークs間の谷部t2における検査圧力が保証圧力P0以上となるように、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷する。
以下、これを詳説する。
【0034】
検査対象となるハニカム構造体1を製造するに当たっては、まず、ハニカム構造体1の原料となるセラミックス原料を準備した。セラミックス原料の原料粉末としては、カオリン、溶融シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、タルク等を含有し、化学組成が最終的にコーディエライトを主成分とする組成となるように調整したものを用いた。この原料粉末に水、バインダ等を所定量添加して混練することにより、セラミックス原料を得た。
【0035】
次いで、セル壁の配設形状に対応するスリット溝を設けた押出成形用金型を用いて上記セラミックス原料を押出成形し、所望の長さに切断することにより、図1に示すごとく、セル壁11とセル12とスキン層13とを有するハニカム構造体1を成形した。そして、成形後のハニカム構造体1を所定温度で乾燥させ、所定温度で焼成した。これにより、検査対象となるハニカム構造体1を製造した。
【0036】
次いで、ハニカム構造体1の強度検査を行った。
本例では、図2、図3に示す強度検査装置2を用いて強度検査を行った。そして、ハニカム構造体1が実使用上必要となる保証強度を2MPaに設定し、その設定した保証強度に応じた保証圧力を負荷した際に破壊するか否か(欠け、割れ、クラック等が生じるか否か)を確認することにより、保証強度を満たしているか否かを検査した。もちろん、保証強度が1MPa、0.5MPa等のように異なる場合には、それに応じた保証圧力を設定して負荷すればよい。
【0037】
図2に示すごとく、強度検査装置2は、検査対象となるハニカム構造体1のスキン層13の外周に配置され、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷するための円筒状の圧力負荷部材3と、圧力負荷部材3の外側に設けられ、圧力負荷部材3の外側の位置を規制する円筒状の規制部材41と、圧力負荷部材3に接続され、圧力負荷部材3の内部に流体を供給して加圧すると共に流体を吸引して減圧するための流体供給管42と、流体供給管42の開閉を制御するバルブ43とを備えている。
【0038】
また、図3に示すごとく、圧力負荷部材3は、弾性体であるウレタンゴムよりなり、流体5を供給する供給部31が設けられた袋状に構成されている。そして、圧力負荷部材3は、供給部31に流体5を供給することで膨張し、供給部31から流体5を吸引することで収縮するよう構成されている。
【0039】
また、同図に示すごとく、圧力負荷部材3には、他の部分よりも厚みが大きい圧力緩和部32が設けられている。圧力緩和部32は、供給部31の内周面310から内方に突出して厚みを大きくしている。また、圧力緩和部32は、供給部31の内周面310の周方向において全周に渡って設けられている。
なお、図3では、圧力負荷部材93の内部の構造がわかるように、圧力負荷部材93を断面で示してある。
【0040】
具体的に、強度検査装置2を用いてハニカム構造体1の強度検査を行うに当たっては、まず、強度検査装置2内に異物、汚れ等が無いか確認した。
そして、図2(a)に示すごとく、検査対象となるハニカム構造体1を圧力負荷部材3の内側に配置し、固定した。このとき、ハニカム構造体1のスキン層13における軸方向の両端部から内方へ2mmまでの範囲には、圧力負荷部材3を対向させないようにした。この部分には、圧力負荷部材3から直接圧力を負荷させないようにするためである。また、それ以外の検査すべき領域に対しては、圧力負荷部材3を対向させるようにした。
【0041】
また、このとき、圧力負荷部材3の供給部31内に油は供給されておらず、加圧されていない状態である(図4の状態a)。
なお、図4は、圧力負荷部材3の供給部31の流体圧力の変化を示したものである。この圧力は、圧力負荷部材3に取り付けた圧力計44(図2(a)〜(d)参照)により計測した。
【0042】
次いで、図2(b)に示すごとく、流体供給管42のバルブ43を開状態とし、圧力負荷部材3の供給部31内に流体(油)を供給し、加圧した。このとき、図3に示すごとく、圧力負荷部材3を供給部31内に供給された流体(油)5で膨張させ、その供給部31内の流体圧力(油圧)によってハニカム構造体1のスキン層13の外表面131を押圧した。これにより、ハニカム構造体1に圧力(検査圧力)を負荷した。実際には、検査圧力は、供給部31内の流体圧力から圧力負荷部材3からの戻り圧力を差し引いた圧力である。
【0043】
そして、本例では、供給部31内の流体圧力が最終的に加圧する圧力の50〜90%となるまで加圧速度を制御しながら加圧した(図4の状態b1)。
さらに、そこからは、供給部31内の流体圧力が保証圧力P0よりも少し大きい2.3MPaとなるまで圧力を制御しながら加圧し(図4の状態b2)、その後一定時間保持した(図4の状態b3)。
【0044】
ここで、図5は、供給部31内の圧力を一定時間保持している状態(図4の状態b3)において、ハニカム構造体1に負荷される検査圧力を測定し、その測定した検査圧力の分布曲線を簡略化して示した検査圧力分布Xである。縦軸は検査圧力(MPa)、横軸は圧力負荷部材3の軸方向における測定箇所である。
本例では、圧力負荷部材3の軸方向において、16箇所で検査圧力の測定を行った。図5には、圧力負荷部材3の両端部付近である測定箇所1、16、及びハニカム構造体1の全長Aが示してある。また、検査圧力の測定は、圧力センサによって測定した。
【0045】
同図に示すごとく、この検査圧力分布Xには、ピークsが2つ存在する。また、ピークsは、検査圧力分布Xの山部t1に存在し、山部t1と山部t1との間には谷部bが存在する。谷部t2が存在する位置は、ハニカム構造体1に対して圧力負荷部材3の圧力緩和部32周辺が接触していた位置に当たる。また、検査圧力分布Xのピークsにおける検査圧力は、保証圧力P0の約107%である。また、谷部t2における検査圧力は、保証圧力P0よりも大きい。
【0046】
次いで、図2(c)に示すごとく、バルブ43を切り替え、圧力負荷部材3の供給部31の油圧を開放した。そして、圧力負荷部材3を収縮させ、供給部31内の圧力を所定速度で減圧した(図4の状態c)。
次いで、図2(d)に示すごとく、ハニカム構造体1を圧力負荷部材3の内側から取り出した(図4の状態d)。
【0047】
次いで、圧力を負荷した後のハニカム構造体1の状態を確認した。本例では、ハニカム構造体1の欠け、割れ、クラック等の存在を確認した。そして、破損が発生していないものは保証強度を満たしているものとし、破損が発生したものは保証強度を満たしていないものと判定した。
以上により、ハニカム構造体1の強度検査を終了した。
【0048】
次に、本例のハニカム構造体の強度検査方法における作用効果について説明する。
本例のハニカム構造体の強度検査方法において、圧力負荷工程では、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131に対して、外表面131上での軸方向における検査圧力分布Xのピークsが2つ以上となるように検査圧力を負荷する。そのため、簡易な方法で検査圧力を負荷することができると共に、検査圧力分布の曲線をなだらかにすることができる。これにより、ハニカム構造体1に対して負荷される検査圧力のばらつきを小さくすることができる(図5参照)。また、これによって、例えば、後述する比較例に示すごとく、検査圧力分布のピークが1つとなる場合のように(図13参照)、一部に偏った検査圧力が負荷され、検査圧力に大きなばらつきが生じる等の不具合も発生しない。
【0049】
また、圧力負荷工程では、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131上での軸方向における検査圧力分布Xのピークs間の谷部t2における検査圧力が保証圧力P0以上となるように、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷する(図5参照)。そのため、ハニカム構造体1の検査すべき領域に対して少なくとも保証圧力P0と同等以上の検査圧力を負荷することができる。
【0050】
これらのことから、本例では、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131に対して、実使用上必要となる強度である保証強度に応じた保証圧力P0と同じ又はそれに近い検査圧力をばらつきが小さい状態で負荷することが可能となる。これにより、ハニカム構造体1に対して、保証圧力P0に比べて過大な検査応力が負荷されないようにすることができる。
【0051】
また、本例において、圧力負荷工程では、図5に示すごとく、検査圧力分布Xのピークsにおける検査圧力が保証圧力P0の約107%である。そのため、保証圧力P0に近い検査圧力をハニカム構造体1全体に負荷させることができる。これにより、ハニカム構造体1の強度検査をより適切に行うことができる。
【0052】
また、圧力負荷工程では、図2、図3に示すごとく、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷するための円筒状の圧力負荷部材3をハニカム構造体1のスキン層13の外周に配置し、圧力負荷部材3を加圧された流体5を介してハニカム構造体1のスキン層13の外表面131に押圧することにより、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷する。すなわち、圧力負荷部材3をハニカム構造体1のスキン層13の外表面131に押圧するだけで、検査圧力を負荷することができる。そのため、ハニカム構造体1の強度検査を簡易的に行うことができる。
【0053】
また、圧力負荷工程では、図2、図3に示すごとく、ハニカム構造体1のスキン層13における軸方向の両端面から内方へ2mmまでの範囲には、圧力負荷部材3を接触させず、検査圧力を負荷しない。すなわち、ハニカム構造体1の端部は、他の部分に比べて強度が小さく、特に外周スキン13に対して垂直に圧力が掛からない場合には、割れ・欠け等が生じ易い。よって、端部に検査圧力を負荷させないようにすることにより、ハニカム構造体1の端部の割れ・欠け等を防止することができる。また、ハニカム構造体1の端部が圧力負荷部材3によって覆われていると、ハニカム構造体1と圧力負荷部材3との間に異物等が存在し、正確な圧力がかかっていない場合に、ハニカム構造体1を軸方向から観察してもそれが判らない場合がある。よって、端部に圧力負荷部材3を接触させないようにすることにより、ハニカム構造体1を軸方向から観察して、上記不具合が生じていないかどうかを判断することが容易となる。
【0054】
また、圧力負荷部材3は、袋状の弾性体よりなり、内部に流体5を導入して膨張すると共に内部から流体5を排出して収縮するよう構成されている。そのため、圧力負荷部材3を膨張及び収縮させることにより、ハニカム構造体1に負荷する検査圧力の調整を精度良く容易に行うことができる。これにより、ハニカム構造体1の強度検査をより簡易的かつ適切に行うことができる。
【0055】
また、圧力負荷部材3は、一般部よりも厚みが大きい圧力緩和部32が軸方向において1箇所設けられている。そのため、ハニカム構造体1に負荷される検査圧力が圧力緩和部32において緩和され、その両側よりも小さくなる。すなわち、図5に示すごとく、圧力緩和部32において検査圧力分布Xの谷部t2が形成される。そのため、検査圧力分布Xの山部t1を2つ以上として、ピークsを2つ以上とすることが可能となる。
【0056】
このように、本例の強度検査方法に基づいて強度検査を行うことにより、ハニカム構造体1が保証強度を満たしているか否かを簡易的かつ適切に検査することができる。
【0057】
また、本例では、図2、図3に示すごとく、ハニカム構造体1のスキン層13における軸方向の両端面から内方へ2mmまでの範囲には、圧力負荷部材3を接触させず、検査圧力を負荷しないようにしたが、例えば、図6に示すごとく、ハニカム構造体1のスキン層13における軸方向の一方の端面から内方へ2mmまでの範囲には、圧力負荷部材3を接触させず、検査圧力を負荷しないようにし、他方の端面には、樹脂製の当て板49を当てるようにし、端部方向からの力がかからないようにすることで、同様の効果が得られるようにすることもできる。
【0058】
また、図7に示すごとく、ハニカム構造体1の軸方向全長よりも長い圧力負荷部材3を用いて検査圧力を負荷することもできる。
また、このような圧力負荷部材3を用いてハニカム構造体1に負荷される検査圧力を測定した結果を示したものが図8である。縦軸は検査圧力(MPa)、横軸は圧力負荷部材3の軸方向における測定箇所(1〜16)である。この例では、圧力負荷部材3の軸方向において、16箇所で検査圧力の測定を行った。また、その16箇所それぞれにおいても、周方向の4箇所(0度、90度、180度、270度)で検査圧力を測定した。なお、図8には、圧力負荷部材3の両端部付近である測定箇所1、16、及びハニカム構造体1の全長Aが示してある。
【0059】
同図の結果から、検査圧力のピークが2つ存在し、ハニカム構造体1に対して負荷される検査圧力のばらつきが小さくなっていることがわかる。また、ピークとピークとの間の谷部における検査圧力が保証圧力P0以上となっており、ハニカム構造体1の検査すべき領域に対して少なくとも保証圧力P0と同等以上の検査圧力が負荷されていることがわかる。
【0060】
また、本例では、圧力負荷部材3に一般部よりも厚みが大きい圧力緩和部32を設けることによって、ハニカム構造体1の外周スキン13の外表面131上での軸方向における検査圧力分布Xのピークsを複数としたが、これ以外の構成によっても実現することができる。
【0061】
例えば、図9では、圧力負荷部材3は、内部が軸方向において複数の部分に分割されている、すなわち複数の供給部31により構成されている。この場合には、圧力負荷部材3の複数の供給部31にそれぞれ流体5が供給され、ハニカム構造体1に対してそれぞれが検査圧力を負荷することになる。そのため、検査圧力分布Xのピークsを2つ以上とすることが可能となる。
【0062】
また、図10では、圧力負荷部材3を軸方向において分割された複数の分割圧力負荷部材3a、3bにより構成されている。この場合には、複数の分割圧力負荷部材3a、3bにそれぞれ流体5が供給され、ハニカム構造体1に対してそれぞれが検査圧力を負荷することになる。そのため、検査圧力分布Xのピークsを2つ以上とすることが可能となる。
【0063】
(比較例)
上記実施例の効果をより明確にするために、図11〜図13に示すごとく、圧力緩和部32等を設けていない単純な袋状に構成された圧力負荷部材3(図12)を用いた強度検査を比較例として行った。
【0064】
具体的には、図11に示すごとく、実施例と基本的な構成が同じである強度検査装置2を用い、ハニカム構造体1をウレタンゴムからなる円筒状の圧力負荷部材3の内側に配置し、固定した。次いで、図11、図12に示すごとく、流体供給管42のバルブ43を開状態とし、圧力負荷部材3の供給部31内に流体(油)5を供給し、圧力負荷部材3を供給部31内に供給された流体(油)5で膨張させ、その供給部31内の流体圧力(油圧)によってハニカム構造体1のスキン層13の外表面131を押圧した。これにより、ハニカム構造体1に圧力(検査圧力)を負荷した。なお、図12では、圧力負荷部材3の供給部31の構造がわかるように、圧力負荷部材3を断面で示してある。
その他、基本的な手順等は実施例と同様である。
【0065】
その結果、ハニカム構造体1に負荷される検査圧力を測定したところ、図13に示すごとく、圧力負荷部材3の軸方向の両端部(測定箇所1、3)に予め設定した保証強度に応じた保証圧力P0と同じ検査圧力が負荷されるようにすると、中央部(測定箇所2)には保証圧力P0よりも大きな検査圧力が掛かった。つまり、中央部に検査圧力分布Xのピークsが形成され、両端部と中央部との間に大きな圧力差が生じた。そのため、上記の強度検査方法では、ハニカム構造体1が破壊したときに、それが本来必要な保証強度を満たしていないために破壊したのか、ピークにおける検査圧力が過大であるために破壊したのかが判らず、ハニカム構造体1が保証強度を満たしているか否かを適切に検査することが困難である。
【0066】
以上の結果から、実施例のように、ハニカム構造体1のスキン層13の外表面131上での軸方向における検査圧力分布Xのピークsが2つ以上となるように、ハニカム構造体1に対して検査圧力を負荷することが非常に有効であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例における、ハニカム構造体を示す説明図。
【図2】実施例における、(a)〜(d)圧力負荷工程の手順を示す説明図。
【図3】実施例における、圧力負荷部材の内部に流体が供給された状態を示す説明図。
【図4】実施例における、圧力負荷部材の内部の圧力変化を示す説明図。
【図5】実施例における、検査圧力分布を示した説明図。
【図6】実施例における、強度検査装置のその他の例を示す説明図。
【図7】実施例における、強度検査装置のその他の例を示す説明図。
【図8】実施例における、検査圧力の測定結果を示す説明図。
【図9】実施例における、圧力負荷部材のその他の例を示す説明図。
【図10】実施例における、圧力負荷部材のその他の例を示す説明図。
【図11】比較例における、ハニカム構造体に圧力を負荷する様子を示す説明図。
【図12】比較例における、圧力負荷部材の内部に流体が供給された状態を示す説明図。
【図13】比較例における、検査圧力分布を示した説明図。
【符号の説明】
【0068】
X 検査圧力分布
P0 基準圧力
s ピーク
t2 谷部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体の強度を検査する方法であって、
上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に対して、加圧された流体を介して検査圧力を負荷する圧力負荷工程と、
該圧力負荷工程後の上記ハニカム構造体の状態を確認し、該ハニカム構造体が保証圧力に耐え得る保証強度を満たしているか否かを判定する判定工程とを有し、
上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となり、かつ、ピーク間の谷部における検査圧力が上記保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項2】
請求項1において、上記圧力負荷工程では、検査圧力分布のピークにおける検査圧力が上記保証圧力の120%以下であることを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷するための筒状の圧力負荷部材を上記ハニカム構造体の上記スキン層の外周に配置し、上記圧力負荷部材を加圧された流体を介して上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項4】
請求項3において、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層における軸方向の少なくとも一方の端面から内方へ2〜10mmまでの範囲には、上記圧力負荷部材を接触させず、検査圧力を負荷しないことを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項5】
請求項3又は4において、上記圧力負荷部材は、袋状の弾性体よりなり、内部に流体を導入して膨張すると共に内部から流体を排出して収縮するよう構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項6】
請求項5において、上記圧力負荷部材は、軸方向において分割された複数の分割圧力負荷部材により構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項7】
請求項5において、上記圧力負荷部材は、内部が軸方向において複数の部分に分割されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項8】
請求項5において、上記圧力負荷部材は、一般部よりも厚みが大きい圧力緩和部が軸方向において1又は複数設けられていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項9】
流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体の強度を検査する強度検査装置であって、
上記ハニカム構造体の上記スキン層の外周に配置され、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷するための筒状の圧力負荷部材を有しており、
上記圧力負荷部材を加圧された流体を介して上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となり、かつ、ピーク間の谷部における検査圧力が保証強度に応じた保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することができるよう構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置。
【請求項10】
請求項9において、上記圧力負荷部材は、袋状の弾性体よりなり、内部に流体を導入して膨張すると共に内部から流体を排出して収縮するよう構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置。
【請求項11】
請求項10において、上記圧力負荷部材は、軸方向において分割された複数の分割圧力負荷部材により構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置。
【請求項12】
請求項10において、上記圧力負荷部材は、内部が軸方向において複数の部分に分割されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置。
【請求項13】
請求項10において、上記圧力負荷部材は、一般部よりも厚みが大きい圧力緩和部が軸方向において1又は複数設けられていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置。
【請求項14】
セラミックス原料を押出成形し、流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体を成形する成形工程と、
上記ハニカム構造体を乾燥させる乾燥工程と、
上記ハニカム構造体を焼成する焼成工程と、
上記乾燥工程及び/又は上記焼成工程の後に、請求項1〜8のいずれか1項に記載のハニカム構造体の強度検査方法を用いて、上記ハニカム構造体の強度を検査する検査工程とを有することを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項15】
請求項14において、上記検査工程の後、上記ハニカム構造体が上記検査工程を行ったものであることがわかるように、上記検査工程の直前又は直後に、上記ハニカム構造体にマーキングを行うことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項1】
流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体の強度を検査する方法であって、
上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に対して、加圧された流体を介して検査圧力を負荷する圧力負荷工程と、
該圧力負荷工程後の上記ハニカム構造体の状態を確認し、該ハニカム構造体が保証圧力に耐え得る保証強度を満たしているか否かを判定する判定工程とを有し、
上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となり、かつ、ピーク間の谷部における検査圧力が上記保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項2】
請求項1において、上記圧力負荷工程では、検査圧力分布のピークにおける検査圧力が上記保証圧力の120%以下であることを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷するための筒状の圧力負荷部材を上記ハニカム構造体の上記スキン層の外周に配置し、上記圧力負荷部材を加圧された流体を介して上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項4】
請求項3において、上記圧力負荷工程では、上記ハニカム構造体の上記スキン層における軸方向の少なくとも一方の端面から内方へ2〜10mmまでの範囲には、上記圧力負荷部材を接触させず、検査圧力を負荷しないことを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項5】
請求項3又は4において、上記圧力負荷部材は、袋状の弾性体よりなり、内部に流体を導入して膨張すると共に内部から流体を排出して収縮するよう構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項6】
請求項5において、上記圧力負荷部材は、軸方向において分割された複数の分割圧力負荷部材により構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項7】
請求項5において、上記圧力負荷部材は、内部が軸方向において複数の部分に分割されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項8】
請求項5において、上記圧力負荷部材は、一般部よりも厚みが大きい圧力緩和部が軸方向において1又は複数設けられていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査方法。
【請求項9】
流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体の強度を検査する強度検査装置であって、
上記ハニカム構造体の上記スキン層の外周に配置され、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷するための筒状の圧力負荷部材を有しており、
上記圧力負荷部材を加圧された流体を介して上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面に押圧することにより、上記ハニカム構造体の上記スキン層の外表面上での軸方向における検査圧力分布のピークが2つ以上となり、かつ、ピーク間の谷部における検査圧力が保証強度に応じた保証圧力以上となるように、上記ハニカム構造体に対して検査圧力を負荷することができるよう構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置。
【請求項10】
請求項9において、上記圧力負荷部材は、袋状の弾性体よりなり、内部に流体を導入して膨張すると共に内部から流体を排出して収縮するよう構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置。
【請求項11】
請求項10において、上記圧力負荷部材は、軸方向において分割された複数の分割圧力負荷部材により構成されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置。
【請求項12】
請求項10において、上記圧力負荷部材は、内部が軸方向において複数の部分に分割されていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置。
【請求項13】
請求項10において、上記圧力負荷部材は、一般部よりも厚みが大きい圧力緩和部が軸方向において1又は複数設けられていることを特徴とするハニカム構造体の強度検査装置。
【請求項14】
セラミックス原料を押出成形し、流路方向に垂直な断面が多角形のセル形状を形成するように配置された多数のセル壁に囲まれた多数のセルと、外周側面を覆う筒状のスキン層とを有するハニカム構造体を成形する成形工程と、
上記ハニカム構造体を乾燥させる乾燥工程と、
上記ハニカム構造体を焼成する焼成工程と、
上記乾燥工程及び/又は上記焼成工程の後に、請求項1〜8のいずれか1項に記載のハニカム構造体の強度検査方法を用いて、上記ハニカム構造体の強度を検査する検査工程とを有することを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項15】
請求項14において、上記検査工程の後、上記ハニカム構造体が上記検査工程を行ったものであることがわかるように、上記検査工程の直前又は直後に、上記ハニカム構造体にマーキングを行うことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−121966(P2010−121966A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293590(P2008−293590)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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