説明

ハニカム構造体の製造方法

【課題】過熱水蒸気を使うことなく乾燥工程における乾燥不良を低減できる、ハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】グリーン成形体を、絶対圧力が80kPa以下である雰囲気下で乾燥する工程を備え、グリーン成形体は、無機化合物源、溶媒、及び、焼成により除去される添加剤を含有し、上記添加剤の量は無機化合物源100重量部に対し20重量部以上であり、グリーン成形体は、隔壁により区画された複数の流路を有する、ハニカム構造体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
隔壁により区画された複数の流路を有するいわゆるハニカム形状の構造体の製造において、通常、焼成前にハニカム形状のグリーン(未焼成)成形体の溶媒を除去する乾燥工程がある。この乾燥工程ではグリーン成形体の乾燥不良を低減することが必要である。例えば、特許文献1では、グリーン成形体を過熱水蒸気を使って乾燥する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2008/053647号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のように過熱水蒸気を用いる方法では、ハニカム形状のグリーン成形体の乾燥不良を十分に低減することが困難であった。
【0005】
本発明は、過熱水蒸気を使うことなく乾燥工程における乾燥不良を低減できる、ハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、グリーン成形体を、絶対圧力が80kPa以下である雰囲気下で乾燥する工程を備える。ここで、グリーン成形体は、無機化合物源、溶媒、及び、焼成により除去される添加剤を含有する。上記添加剤の量は無機化合物源100重量部に対し20重量部以上である。さらに、グリーン成形体は、隔壁により区画された複数の流路を有する。
【0007】
ここで、上記絶対圧力が50kPa以下であることが好ましく、絶対圧力が20kPa以下であることがより好ましい。
【0008】
また、乾燥する工程は、グリーン成形体を加熱する工程を含むことが好ましい。
【0009】
また、加熱は、マイクロ波加熱又は誘導加熱であることが好ましい。
【0010】
また、上記雰囲気の相対湿度が50%以上であることが好ましい。
【0011】
また、各流路の両端のうち一方の端が封止されていることが好ましい。
【0012】
また、上記添加剤は、バインダを含むことが好ましい。
【0013】
また、上記添加剤は、造孔材を含むことが好ましい。
【0014】
また、無機化合物源は、チタン源、及び、アルミニウム源を含むことが好ましい。
【0015】
また、無機化合物源は、更にマグネシウム源を含むことが好ましい。
【0016】
また、無機化合物源は、更にシリコン源を含むことが好ましい。
【0017】
さらに、乾燥する工程で得られたグリーン成形体を焼成する工程を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法では、グリーン成形体の乾燥不良(スキン部のしわや、変形、破損等)が低減され、乾燥工程における歩留まりが向上する。特に、本発明の製造方法によれば、添加物、特に有機物の含有量が多いグリーン成形体から、所望の形状のハニカム構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1の(a)はグリーン成形体の一例の斜視図であり、図1の(b)は、図1の(a)のIb−Ib面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(ハニカム構造体の製造方法)
本発明のハニカム構造体の製造方法は、以下の工程(i)を含む。
工程(i):グリーン成形体を、絶対圧力が80kPa以下である雰囲気下で乾燥する工程。
【0021】
〔グリーン成形体〕
グリーン(未焼成)成形体は、無機化合物源、溶媒、及び、焼成により除去される添加剤を含有する。
【0022】
(無機化合物源)
無機化合物源は、焼成後に無機化合物を提供する材料である。焼成後に提供される材料としては、例えば、チタン酸アルミニウム等の無機酸化物が挙げられる。
【0023】
焼成後にチタン酸アルミニウムを提供する無機化合物源は、チタン源、及びアルミニウム源を含み、必要に応じてさらに、マグネシウム源、及び/又は、シリコン源を含むことができる。無機化合物源は、チタン源とアルミニウム源の組合せが好ましく、チタン源とアルミニウム源とマグネシウム源の組合せ、チタン源、アルミニウム源、及びシリコン源の組合せがより好ましく、チタン源、アルミニウム源、マグネシウム源、及びシリコン源の組合せが更に好ましい。
【0024】
(アルミニウム源)
アルミニウム源は、チタン酸アルミニウム焼成体を構成するアルミニウム成分となる化合物である。アルミニウム源としては、たとえば、アルミナ(酸化アルミニウム)が挙げられる。アルミナの結晶型としては、γ型、δ型、θ型、α型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。なかでも、α型のアルミナが好ましく用いられる。
【0025】
アルミニウム源は、空気中で焼成することによりアルミナに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、たとえばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。
【0026】
アルミニウム塩は、無機酸との無機塩であってもよいし、有機酸との有機塩であってもよい。アルミニウム無機塩として具体的には、たとえば、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム硝酸塩;炭酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム炭酸塩などが挙げられる。アルミニウム有機塩としては、たとえば、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0027】
アルミニウムアルコキシドとして具体的には、たとえば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。
【0028】
水酸化アルミニウムの結晶型としては、たとえば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、たとえば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドなどのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物も挙げられる。
【0029】
アルミニウム源としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
なお、アルミニウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0031】
アルミニウム源は、アルミナゾルを含むことができる。アルミナゾルとは、微粒子状のアルミナを分散質とし、液体を分散媒とするコロイドである。アルミナゾルは、単独でアルミニウム源とすることもできるが、他のアルミニウム源と共に併用されることが好ましい。アルミナゾルの分散媒は、例えば、混合時や仮焼時に蒸発等により除去される。
【0032】
アルミナゾルの分散媒としては、水溶液や各種有機溶媒、例えば、塩酸水溶液、酢酸水溶液、硝酸水溶液、アルコール、キシレン、トルエン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。アルミナゾルとしては、平均粒子径が1〜100nmのコロイド状アルミナゾルが好適に用いられる。このような平均粒子径を有するアルミナゾルを用いることにより、原料混合物中の粒子同士を吸着させるといった利点がある。また、アルミナゾルの市販品としては、例えば、日産化学工業社製「アルミナゾル100」、「アルミナゾル200」、「アルミナゾル520」、シーアイ化成製「NanoTekAl23」等が挙げられる。このうち、日産化学工業社製「アルミナゾル200」を用いることが好ましい。
【0033】
アルミナゾルは、成形体(固形分)の100重量部に対して固形分で0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部用いられる。アルミナゾルは、2種以上混合して用いてもよい。
【0034】
(チタン源)
チタン源は、チタン酸アルミニウム焼成体を構成するチタン成分となる化合物であり、かかる化合物としては、たとえば酸化チタンが挙げられる。酸化チタンとしては、たとえば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)などが挙げられ、酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。酸化チタン(IV)の結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。より好ましくは、アナターゼ型、ルチル型の酸化チタン(IV)である。
【0035】
チタン源は、空気中で焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、たとえば、チタン塩、チタンアルコキシド、水酸化チタン、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属などが挙げられる。
【0036】
チタン塩として具体的には、三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)などが挙げられる。チタンアルコキシドとして具体的には、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、および、これらのキレート化物などが挙げられる。
【0037】
チタン源としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
チタン源の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.1〜25μmの範囲内であるものが用いられ、十分に低い焼成収縮率の達成のためには、D50が0.3〜20μmの範囲内であるチタン源を用いることが好ましい。チタン源は、バイモーダルな粒径分布を示すことがあるが、このようなバイモーダルな粒径分布を示すチタン源を用いる場合においては、レーザ回折法により測定される、粒径が大きい方のピークの粒径は、好ましくは20〜50μmの範囲内である。
【0039】
レーザ回折法により測定されるチタン源のモード径は、特に限定されないが、0.3〜60μmの範囲内であるものを用いることができる。
【0040】
成形体中におけるAl23(アルミナ)換算でのアルミニウム源とTiO2(チタニア)換算でのチタン源とのモル比は、30:70〜70:30の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは40:60〜60:40の範囲内である。このような範囲内で、チタン源をアルミニウム源に対して過剰に用いることにより、焼成時の収縮率を低減させることが可能となる。
【0041】
(マグネシウム源)
グリーン成形体は、マグネシウム源を含有していてもよい。グリーン成形体がマグネシウム源を含む場合、得られるチタン酸アルミニウム焼成体は、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶からなる焼成体である。マグネシウム源としては、マグネシア(酸化マグネシウム)のほか、空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物が挙げられる。後者の例としては、たとえば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムなどが挙げられる。
【0042】
マグネシウム塩として具体的には、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロりん酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0043】
マグネシウムアルコキシドとして具体的には、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。なお、マグネシウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0044】
マグネシウム源として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物を用いることもできる。このような化合物としては、たとえば、マグネシアスピネル(MgAl24)が挙げられる。なお、マグネシウム源として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物を用いる場合、アルミニウム源のAl23(アルミナ)換算量、および、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物に含まれるアルミニウム源のAl23(アルミナ)換算量の合計量と、チタン源のTiO2(チタニア)換算量とのモル比が、上記範囲内となるように調整される。
【0045】
マグネシウム源としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
マグネシウム源の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜30μmの範囲内であるものが用いられ、焼成時の収縮率低減の観点からは、D50が2〜20μmの範囲内であるマグネシウム源を用いることが好ましい。
【0047】
成形体中におけるMgO(マグネシア)換算でのマグネシウム源の含有量は、Al23(アルミナ)換算でのアルミニウム源とTiO2(チタニア)換算でのチタン源との合計量に対して、モル比で、0.03〜0.15とすることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.12である。
【0048】
(シリコン源)
グリーン成形体は、シリコン源をさらに含有していてもよい。シリコン源は、シリコン成分となってチタン酸アルミニウム焼成体に含まれる化合物であり、シリコン源の併用により、耐熱性がより向上されたチタン酸アルミニウム焼成体を得ることが可能となる。シリコン源としては、たとえば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素などの酸化ケイ素(シリカ)が挙げられる。
【0049】
シリコン源は、空気中で焼成することによりシリカに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、たとえば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、長石、ガラスフリットなどが挙げられる。なかでも、長石、ガラスフリットなどが好ましく用いられ、工業的に入手が容易であり、組成が安定している点で、ガラスフリットなどがより好ましく用いられる。なお、ガラスフリットとは、ガラスを粉砕して得られるフレークまたは粉末状のガラスをいう。シリコン源として、長石とガラスフリットとの混合物からなる粉末を用いることもできる。
【0050】
シリコン源がガラスフリットである場合、得られるチタン酸アルミニウム焼成体の耐熱分解性をより向上させるという観点から、屈伏点が700℃以上のものを用いることが好ましい。ガラスフリットの屈伏点は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analyisis)を用いて、低温からガラスフリットの膨張を測定し、膨張が止まり、次に収縮が始まる温度(℃)と定義される。
【0051】
ガラスフリットを構成するガラスには、ケイ酸〔SiO2〕を主成分(全成分中50重量%以上)とする一般的なケイ酸ガラスを用いることができる。ガラスフリットを構成するガラスは、その他の含有成分として、一般的なケイ酸ガラスと同様、アルミナ〔Al23〕、酸化ナトリウム〔Na2O〕、酸化カリウム〔K2O〕、酸化カルシウム〔CaO〕、マグネシア〔MgO〕等を含んでいてもよい。また、ガラスフリットを構成するガラスは、ガラス自体の耐熱水性を向上させるために、ZrO2を含有していてもよい。
【0052】
シリコン源としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
シリコン源の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜30μmの範囲内であるものが用いられ、原料混合物の成形体の充填率をより向上させ、機械的強度のより高い焼成体を得るためには、D50が1〜20μmの範囲内であるシリコン源を用いることが好ましい。
【0054】
シリコン源の量は、Al23(アルミナ)換算でのアルミニウム源とTiO2(チタニア)換算でのチタン源との合計量100重量部に対して、SiO2(シリカ)換算で、通常0.1重量部〜10重量部であり、好ましくは5重量部以下である。
【0055】
マグネシアスピネル(MgAl24)などの複合酸化物のように、チタン、アルミニウム、ケイ素およびマグネシウムのうち、2つ以上の金属元素を成分とする化合物を原料として用いることができる。この場合、そのような化合物は、それぞれの金属源化合物を混合した原料混合物と同じであると考えることができ、このような考えに基づき、成形体中におけるアルミニウム源、チタン源、マグネシウム源およびシリコン源の量が上記範囲内に調整される。
【0056】
成形体中の無機化合物源のうち、粒子径0.1μm以下の粒子の含有量は、通常、成形体100重量部に対して1〜5重量部が好ましい。成形体中の無機化合物源のうち、粒子径0.1μm以下の粒子の含有量を、無機化合物100重量部に対して1〜5重量部とする場合、アルミナゾルおよび/またはシリカゾルを添加して混合することが好ましい。シリカゾルとは、微粒子状のシリカを分散質とし、液体を分散媒とするコロイドである。シリカゾルは、単独でシリコン源とすることもできるが、他のシリカ源と共に併用されることが好ましい。シリカゾルの分散媒は、例えば、混合時や仮焼時に蒸発等により除去される。
【0057】
シリカゾルの分散媒としては、水溶液や各種有機溶媒、例えば、アンモニア水溶液、アルコール、キシレン、トルエン、トリグリセリドなどが挙げられる。シリカゾルとしては、平均粒子径が1〜100nmのコロイド状シリカゾルが好適に用いられる。このような平均粒子径を有するシリカゾルを用いることにより、原料混合中の粒子同士を吸着させ、焼成時に融解し結合させることができるといった利点がある。
【0058】
シリカゾルの市販品としては、例えば、日産化学工業社製「スノーテックス20、30、40、50、N、O、S、C、20L、OL、XS、XL、YL、ZL、QAS−40、LSS−35、LSS−45」、旭電化社製「アデライトAT−20、AT−30、AT−40、AT−50、AT−20N、AT−20A、AT−30A、AT−20Q、AT−300、AT−300Q」、触媒化成工業社製「CataloidS−20L、S−20H、S−30L、S−30H、SI−30、SI−40、SI−50、SI−350、SI−500、SI−45P、SI−80P、SN、SA、SC−30」、デュポン社製「ルドックスHS−40、HS−30、LS、SM−30、TM、AS、AM」等が挙げられる。このうち、中性域でコロイド状態が安定な「スノーテックスC」を用いることが好ましい。
【0059】
シリカゾルは、無機化合物源(固形分)の100重量部に対して固形分で0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部用いられる。シリカゾルは、2種以上混合して用いてもよい。
【0060】
グリーン成形体は、チタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウムを含むことができ、たとえば、成形体の構成成分としてチタン酸アルミニウムマグネシウムを使用する場合、チタン酸アルミニウムマグネシウムは、チタン源、アルミニウム源およびマグネシウム源を兼ね備えた原料に相当する。
【0061】
(焼成により除去される添加剤)
焼成により除去される添加剤は、無機化合物源とは異なり、焼成後のハニカム構造体に残らない成分であり、例えば、バインダ、造孔材、潤滑剤および可塑剤、及び、分散剤として添加されるものであり、主として有機物である。
【0062】
バインダとしては、例えば、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等の有機バインダが好ましい。グリーン成形体中のバインダの含有量は、無機化合物(固形分)100重量部に対して、通常、0.1重量部以上であり、好ましくは1〜20重量部である。
【0063】
造孔剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;グラファイト等の炭素材;氷;およびドライアイスである。造孔剤の量は、アルミニウム源、チタニウム源、マグネシウム源およびケイ素源の合計量100重量部に対して、通常、0〜40重量部であり、好ましくは1〜25重量部である。
【0064】
潤滑剤および可塑剤は、例えば、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩である。潤滑剤および可塑剤の量は、アルミニウム源、チタニウム源、マグネシウム源およびケイ素源の合計量100重量部に対して、通常、0〜10重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。
【0065】
分散剤は、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤である。分散剤の量は、アルミニウム源、チタニウム源、マグネシウム源およびケイ素源の合計量100重量部に対して、通常、0〜20重量部であり、好ましくは0〜5重量部である。
【0066】
これらの焼成により除去される添加剤の量は、無機化合物源100重量部に対して、20重量部以上である。特に、このようなグリーン成形体は、乾燥不良を起こしやすく、特に、有機物の量が、無機化合物源100重量部に対して、20重量部以上であるとこの傾向が強い。
【0067】
(溶媒)
溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;水である。特に水が好ましい。溶媒の量は、例えば、アルミニウム源、チタニウム源、マグネシウム源およびケイ素源により構成される無機化合物源の合計量100重量部に対して、通常、0〜50重量部、好ましくは0〜35重量部である。
【0068】
(グリーン成形体の形状)
グリーン成形体は、隔壁により区画された複数の流路(セル)を有する。これは、ハニカム形状あるいはセル構造と呼ばれることがある。
【0069】
例えば、グリーン成形体の一例を図1の(a)及び図1の(b)に示す。この例のグリーン成形体100は、外形形状が円柱形状をなし、軸方向に延びる多数の断面正方形の流路110を有し、多数の流路110は隔壁112によって区画されている。
【0070】
例えば、グリーン成形体100の外径は10mm〜500mm、軸方向長さは約40mm〜500mm、隔壁112の厚みは0.01mm〜0.5mm、流路110の数は100〜800CPSI(cells per square inch)とすることができる。
流路110の断面の正方形の一辺の長さは、例えば、0.5〜2.5mmとすることができる。
隔壁112における、有効気孔率は30〜60vol%、平均細孔直径は1〜20μm、細孔径分布(D50−D10)/D50は0.5未満である。ここで、D10、D50、D50は全細孔容積のうち累積細孔容積が各々10%、50%、90%になるときの細孔直径である。
【0071】
乾燥前のグリーン成形体100は、流路110の一方端が封口材114によって封じられていることができる。具体的には、例えば、一部の流路110の一方端が封口材114によって封じられ、かつ、残部の流路110の他方端が封口材114によって封じられていることができる。なお、乾燥前のグリーン成形体100には封口を行わず、乾燥後のグリーン成形体100に対して封口材114による封口を行うことも好ましい。封口されたグリーン成形体を後工程で焼成することにより得られるハニカム構造体は、図1の(b)に示す矢印のようにガスを流通させることができ、隔壁112によって粒子を捕集できる。
【0072】
封口材114の材料は、隔壁112の材料と同じであることが出来る。上記の一部の流路は、例えば、図1の(a)に示すように、互いに上下左右に隣接しない関係にある一群の流路であることが出来る。
【0073】
なお、グリーン成形体100の外形形状は、円筒に限定されず、例えば、角柱、筒、板等を挙げることができる。また、流路の断面形状や配置も特に限定されない。例えば、断面形状は、正方形以外に、例えば、円形、長方形、三角形、六角形、八角形、その他多角形とすることができ、さらに、これらの内の複数の組合せでもよい。また、流路の配置も、正方形配置以外に、例えば、3角配置、千鳥配置とすることができる。
【0074】
(グリーン成形体の製造方法)
このようなグリーン成形体は例えば以下のようにして製造することができる。
まず、無機化合物源、溶媒、及び、添加剤を用意する。
そして、これらを上述の比率で混練機等により混合して原料混合物を得、得られた原料混合物を成形することにより、所望の形状のグリーン成形体を得ることができる。ここで、成形法は特に限定されず、例えば、一軸プレス機、押出成形機、打錠機、造粒機などが挙げられる。
【0075】
(乾燥)
グリーン成形体の乾燥を、絶対圧力が80kPa以下である雰囲気下で行う。好ましくは、絶対圧力が50kPa以下、より好ましくは20kPa以下である雰囲気下で行う。乾燥は、グリーン成形体を加熱しながら行うことが好ましく、加熱方法としては、例えばマイクロ波加熱、誘導加熱、及び、通常の発熱体加熱が挙げられる。乾燥は、マイクロ波加熱、誘導加熱、及び、発熱体加熱のうち、2種類以上の方法の組合せにより行うこともできる。乾燥時の雰囲気の相対湿度は50%以上であることが好ましい。また、乾燥時に加熱する際のグリーン成形体の温度は、50〜200℃とすることが好ましい。
この乾燥工程により、グリーン成形体中の溶媒成分が除去される。
【0076】
(焼成)
本発明のハニカム構造体の製造方法は、更に、工程(ii)を含むことが好ましい。
工程(ii):工程(i)で得られたグリーン成形体を焼成する工程。
【0077】
焼成は、例えば、焼成炉にグリーン成形体を置き、加熱する方法により行うことができる。焼成温度は、通常1300℃以上、好ましくは1400℃以上である。一方、得られる焼成されたハニカム構造体を加工し易いものにするため、焼成温度は、通常1650℃以下、好ましくは1600℃以下、より好ましくは1550℃以下である。焼成温度までの昇温速度は通常は1℃/時間以上500℃/時間以下であり、より好ましくは2℃/時間以上300℃/時間以下である。
【0078】
焼成は通常、大気中で行うが、成形体の成分や成分量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また焼成雰囲気中の水蒸気分圧を低くして焼成してもよい。
【0079】
焼成は通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行われる。焼成は回分式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。また焼成は静置式で行ってもよいし、流動式で行ってもよい。
【0080】
焼成時間は、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なり、通常は10分以上72時間以下である。
【0081】
この焼成工程により、グリーン成形体からハニカム構造体が得られる。ここでは、グリーン成形体中の無機化合物源から無機化合物、例えば、チタン酸アルミニウム等が生成する。また、グリーン成形体中の添加剤は、分解、燃焼等によりグリーン成形体から除去される。
【0082】
本発明によれば、乾燥工程を所定の減圧された雰囲気下で行なうので、上述の添加剤が多いグリーン成形体であっても、乾燥不良が抑制され、歩留まりが向上する。
【実施例】
【0083】
酸化チタン(中心粒径:1μm)49重量部、αアルミナ(中心粒径:29μm)29重量部、マグネシアスピネル(中心粒径:5.5μm)19重量部、ガラスフリット(中心粒径:8.5μm)3重量部(これら無機化合物源の合計量は100質量部となる)、コーンスターチ16重量部、メチルセルース6重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2重量部、ポリオキシレンアルキルエーテル(商品名:ユニルーブ)6重量部、グリセリン1重量部、水35重量部を混合し、押出成形してグリーン成形体を得る。
得られるグリーン成形体は、直径150mm、長さ230mm、セル密度200CPSI(1平方インチあたり200セル)、隔壁の厚み0.35mmである。得られたグリーン成形体に、スキン部の変形、破損等はない。
このグリーン成形体をマイクロ波乾燥機に置き、絶対圧力31kPa(飽和水蒸気温度約70℃)、相対湿度50%以上の条件下、マイクロ波を照射する。このようにして乾燥不良のないグリーン成形体が得られ、このグリーン成形体を焼成してハニカム構造体が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーン成形体を、絶対圧力が80kPa以下である雰囲気下で乾燥する工程を備え、
前記グリーン成形体は、無機化合物源、溶媒、及び、焼成により除去される添加剤を含有し、
前記添加剤の量は前記無機化合物源100重量部に対し20重量部以上であり、
前記グリーン成形体は、隔壁により区画された複数の流路を有する、
ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記絶対圧力が50kPa以下である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記絶対圧力が20kPa以下である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥する工程は、グリーン成形体を加熱する工程を含む請求項1〜3の何れか一項に記載の一項記載の方法。
【請求項5】
前記加熱は、マイクロ波加熱又は誘導加熱である請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記雰囲気の相対湿度が50%以上である請求項1〜5のいずれか記載の方法。
【請求項7】
前記各流路の両端のうち一方の端が封止されている請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記添加剤は、バインダを含む請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記添加剤は、造孔材を含む請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記無機化合物源は、チタン源、及び、アルミニウム源を含む請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記無機化合物源は、更にマグネシウム源を含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記無機化合物源は、更にシリコン源を含む請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
さらに、前記乾燥する工程で得られたグリーン成形体を焼成する工程を備える、請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−20442(P2012−20442A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158818(P2010−158818)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】