説明

ハニカム構造体

【課題】外周壁部におけるクラックの発生を抑制することができ、例え外周壁部にクラックが発生しても外観変形や触媒漏れといった不具合を防止することができるハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】ハニカム構造体1は、筒状の外周壁部3と、外周壁部3内においてハニカム状に設けられた隔壁21と隔壁21により区画された多数のセル22とを有するハニカム部2とを備えている。外周壁部3は、ハニカム構造体1の径方向に積層された2層以上の筒状の外周壁層31からなると共に、隣接する外周壁層31同士間の境界部32であって、複数の空隙部33を設けた空隙境界部321を有する。空隙部33は、外周壁部3における厚み方向の中間位置Pよりも内側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の内燃機関における排ガス浄化用触媒の触媒担体として用いられるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の内燃機関における排ガス浄化用触媒の触媒担体として、筒状の外周壁部と、その外周壁部内においてハニカム状に設けられた隔壁とその隔壁により区画された多数のセルとを有するハニカム部とを備えたハニカム構造体が知られている。
ハニカム構造体は、例えば、ハニカム状に設けられた隔壁の表面に触媒を担持して用いられるが、以下のような問題があった。
【0003】
すなわち、ハニカム構造体を排ガスの浄化に用いる場合には、ハニカム構造体を排ガスの熱等を利用して昇温させ、担持した触媒を活性化する必要がある。このとき、ハニカム構造体は、中心部のほうが外周部よりも温度が高くなる傾向にあるため、内側のハニカム部と外側の外周壁部との間に温度差(熱膨張差)が生じる。そして、両者の温度差(熱膨張差)に起因して応力が発生し、外周壁部にクラックが発生することがある。
【0004】
そこで、特許文献1には、外周壁部と隔壁との間に空隙を形成したハニカム構造体が開示されている。
このハニカム構造体によれば、外周壁部と隔壁との間に形成した空隙により、ハニカム部と外周壁部との間の温度差(熱膨張差)に起因する外周壁部のクラックの発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−87805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたハニカム構造体は、外周壁部にクラックが発生してしまった場合には、外周壁部から隔壁へのクラックの進行を抑制することができるにとどまる。そのため、発生したクラックが外周壁部の外側に進行して外周面にまで至ると、外周壁部が変形してしまうという問題が生じる。また、発生したクラックが外周壁部の内部を貫通すると、ハニカム部に担持した触媒が外部に漏れてしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、外周壁部におけるクラックの発生を抑制することができ、例え外周壁部にクラックが発生しても外観変形や触媒漏れといった不具合を防止することができるハニカム構造体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、筒状の外周壁部と、該外周壁部内においてハニカム状に設けられた隔壁と該隔壁により区画された多数のセルとを有するハニカム部とを備えたハニカム構造体において、
上記外周壁部は、上記ハニカム構造体の径方向に積層された2層以上の外周壁層からなると共に、隣接する上記外周壁層同士間の境界部であって、複数の空隙部を設けた空隙境界部を有し、
上記空隙部は、上記外周壁部における厚み方向の中間位置よりも内側に設けられていることを特徴とするハニカム構造体にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記ハニカム構造体において、上記外周壁部は、2層以上の外周壁層を積層して構成されている。また、上記外周壁部は、隣接する外周壁層同士間の境界部であって、複数の空隙部を設けた空隙境界部を有する。そのため、例えば、ハニカム構造体を昇温させ、ハニカム部の隔壁に担持した触媒を活性化させる場合に、内側のハニカム部と外側の外周壁部との間の温度差(熱膨張差)に起因して発生する応力を、外周壁部の空隙境界部に設けた空隙部によって緩和することができる。これにより、外周壁部におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0010】
また、上記空隙部は、外周壁部における厚み方向の中間位置よりも内側に設けられている。すなわち、空隙部から外周壁部の内周面までの距離を空隙部から外周壁部の外周面までの距離よりも短くしている。そのため、例え外周壁部にクラックが発生しても、そのクラックが強度の弱い空隙部を起点として内側(外周壁部の内周面側)に進行し易くすることができる。言い換えると、クラックが空隙部を起点として外側(外周壁部の外周面側)に進行することを抑制することができる。これにより、クラックが外周壁部の外周面にまで至り、外周壁部が変形するといったことや、クラックが外周壁部の内部を貫通し、ハニカム部の隔壁に担持した触媒が外部に漏れるといったことを防止することができる。
【0011】
このように、本発明によれば、外周壁部におけるクラックの発生を抑制することができ、例え外周壁部にクラックが発生しても外観変形や触媒漏れといった不具合を防止することができるハニカム構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例における、ハニカム構造体を示す説明図。
【図2】実施例における、ハニカム構造体の外周部分を拡大して示す説明図。
【図3】実施例における、外周壁部を示すSEM写真。
【図4】実施例における、空隙部を取り囲む結晶粒子を示すSEM写真。
【図5】実施例における、(a)ハニカム構造体成形用金型を示す平面図、(b)供給穴とスリット溝との位置関係を示す説明図。
【図6】図5(a)のA−A線矢視断面の一部を示す説明図。
【図7】実施例における、ハニカム構造体を押出成形する様子を示す説明図。
【図8】実施例における、外周壁部にクラックが発生した状態を示す説明図。
【図9】実施例における、別例のハニカム構造体の外周部分を拡大して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記ハニカム構造体において、上記外周壁部は、ハニカム構造体の径方向に積層された2層以上の外周壁層からなる。
ここで、ハニカム構造体の径方向とは、該ハニカム構造体の軸方向に直交する方向のことをいう。
【0014】
また、上記外周壁部は、隣接する外周壁層同士間の境界部であって、複数の空隙部を設けた空隙境界部を有する。
例えば、外周壁部を構成する外周壁層が2層の場合には、その外周壁層同士間にある境界部が空隙境界部となる。また、外周壁層が3層以上の場合には、それらの外周壁層同士間にある複数の境界部のうち、いずれかの境界部が空隙境界部となる。
【0015】
また、上記空隙境界部には、複数の空隙部が設けられている。
空隙部は、空隙境界部において、外周壁部の周方向に様々なパターンで設けることができる。例えば、断続的に設けることができる。また、空隙部は、空隙境界部において、ハニカム構造体の軸方向に様々なパターンで設けることができる。例えば、断続的に設けたり、連続的に設けたりすることができる。
【0016】
また、上記外周壁部における各外周壁層は、SEM(走査型電子顕微鏡)等を用いて外周壁部の断面を観察することにより区別することができる。
また、隣接する外周壁層同士間の境界部や空隙部についても、同様の方法により確認することができる。
【0017】
また、上記外周壁部は、上記ハニカム構造体の径方向に積層された3層以上の筒状の上記外周壁層からなると共に、上記空隙境界部よりも外側に2層以上の上記外周壁層を有することが好ましい(請求項2)。
この場合には、外周壁部にクラックが発生したときに、そのクラックが空隙部を起点として外側に進行することをより一層抑制することができる。
【0018】
また、上記空隙境界部の上記空隙部は、上記ハニカム構造体の径方向の断面形状が楕円であると共に、その楕円の長軸が上記外周壁部の周方向を向くように形成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、内側のハニカム部と外側の外周壁部との間の温度差(熱膨張差)に起因して発生する応力を空隙部によってより一層緩和することができる。
【0019】
また、上記構成の場合、楕円形状の空隙部の短径は、空隙部の内側に隣接する外周壁層の厚みの1/2以下であることが好ましい。また、長径は、外周壁部に存在する粗大細孔の細孔径の2倍以上であることが好ましい。
この場合には、セルから外周壁部に伝達される熱を空隙部によって緩和することができる。
なお、粗大細孔とは、例えば、ハニカム構造体がコージェライトからなる場合には、コージェライトを構成する主成分である溶融シリカ、水酸化アルミニウム、タルク等が焼成され、コージェライト結晶化されたときに形成される孔のことである。
【0020】
また、上記空隙部は、上記隔壁を上記ハニカム部よりも外側(外周壁部)に延長して設けたと仮定した場合に、その延長した上記隔壁同士が交差する位置に設けられていることが好ましい。現実的に、すべての空隙部をこのような位置に設けることは困難であるが、一部の空隙部でもこのような位置に設けることが好ましい。
この場合には、セルから外周壁部に伝達される熱を空隙部によって緩和することができる。
【0021】
また、上記空隙部の周囲には、該空隙部を取り囲むように上記外周壁層を構成する結晶粒子が配置されていることが好ましい。
この場合には、セルから外周壁部に伝達される熱を空隙部によって緩和するという効果を十分に得ることができる。
なお、空隙部を取り囲む結晶粒子とは、例えば、ハニカム構造体がコージェライトからなる場合には、コージェライトを構成する主成分である溶融シリカ、水酸化アルミニウム、タルク等である。
【0022】
また、上記外周壁部の上記外周壁層の厚みをa、上記ハニカム部の上記隔壁の厚みをbとした場合に、a/b=0.9〜1.1であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、外周壁部を構成する外周壁層とハニカム部を構成する隔壁とを同じような厚みとすることにより、ハニカム構造体全体の製造を容易とすることができる。
【0023】
また、上記ハニカム構造体の形状としては、様々な形状を採用することができるが、例えば、円筒形状等とすることができる。
また、上記セルの断面形状としては、様々な形状を採用することができるが、例えば、三角形、四角形、六角形等とすることができる。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるハニカム構造体について、図を用いて説明する。
本例のハニカム構造体1は、図1、図2に示すごとく、筒状の外周壁部3と、外周壁部3内においてハニカム状に設けられた隔壁21と隔壁21により区画された多数のセル22とを有するハニカム部2とを備えている。
外周壁部3は、ハニカム構造体1の径方向に積層された2層以上の筒状の外周壁層31からなると共に、隣接する外周壁層31同士間の境界部32であって、複数の空隙部33を設けた空隙境界部321を有する。空隙部33は、外周壁部3における厚み方向の中間位置Pよりも内側に設けられている。
以下、これを詳説する。
【0025】
図1に示すごとく、ハニカム構造体1は、ハニカム部2と、そのハニカム部2の外周を覆うように設けられた筒状の外周壁部3とにより構成されている。また、ハニカム構造体1は、コージェライトセラミックスからなる。
ハニカム部2は、四角形格子状に設けられた隔壁21と、その隔壁21に囲まれて形成された四角形状のセル22とにより構成されている。隔壁21の厚みb(図2)は、90μmである。
【0026】
図2に示すごとく、外周壁部3は、ハニカム構造体1の軸方向X(図1)に直交する径方向に、筒状の外周壁層31を4層積層して構成されている。
各外周壁層31の厚みaは、90μmであり、外周壁部3全体の厚みAは360μmである。また、外周壁層31の厚みaと隔壁21の厚みbとは、a/b=0.9〜1.1の関係を満たしている。
【0027】
また、外周壁部3は、各外周壁層31同士間にある3つの境界部32を有する。この3つの境界部32のうち、最も内側の境界部32には、複数の空隙33が設けられている。すなわち、最も内側の境界部32は、複数の空隙部33を設けた空隙境界部321である。よって、外周壁部3は、空隙境界部321よりも内側に1層の外周壁層31を有し、空隙境界部321よりも外側に3層の外周壁層31を有する。
【0028】
同図に示すごとく、空隙境界部321に設けられた空隙部33は、外周壁部3の外周面302までの距離よりも内周面301までの距離のほうが短い。すなわち、空隙部33は、外周壁部3の厚み方向(ハニカム構造体1の径方向)における中間位置Pよりも内側に設けられている。
また、空隙部33は、ハニカム構造体1の径方向の断面形状が楕円である。また、空隙部33は、その楕円の長軸が外周壁部3の周方向を向くように形成されている。
【0029】
また、空隙部33は、隔壁21をハニカム部2よりも外側(外周壁部3)に延長して設けたと仮定した場合に、その延長した隔壁21同士が交差する位置(交点部219)に設けられている。
なお、図2では、すべての空隙部33がこのような位置に設けられているが、実際には、複数の空隙部33のうちの一部がこのような位置に設けられている。
【0030】
また、図3は、外周壁部3の断面を示すSEM写真である。同図からわかるように、外周壁部3が4層の外周壁層31を積層して構成されている。また、各外周壁層31同士間の3つの境界部32のうち、最も内側の境界部32(空隙境界部321)に、空隙部33が形成されている。
【0031】
また、図4は、焼成前のハニカム構造体1(後述するハニカム成形体の乾燥後焼成前の状態)における空隙部33の周囲を示すSEM写真である。同図からわかるように、空隙部33の周囲には、その空隙部33を取り囲むように、外周壁部3(外周壁層31)を構成する結晶粒子39が配置されている。この状態は、焼成後のハニカム構造体1においても維持される。
なお、結晶粒子39は、コージェライトを構成する主成分である溶融シリカ、水酸化アルミニウム、タルク等である。
【0032】
次に、ハニカム構造体1の製造方法について説明する。
本例のハニカム構造体1を製造するに当たっては、まず、溶融シリカ、水酸化アルミニウム、タルク等を含有し、最終的にコージェライトを主成分とする化学組成となるように調整したコージェライト化原料粉末に、水、バインダ等を加えて混練し、スラリー状の成形用材料10(図7)を得る。
次いで、図7に示すごとく、押出成形用金型5(図5、図6)を用いて、スラリー状の成形用材料10を押出成形し、ハニカム成形体100を得る。
【0033】
ここで、押出成形に用いる押出成形用金型5について説明する。
図5(a)に示すごとく、押出成形用金型5は、金型本体51とガイドリング54とを備えている。
図6に示すごとく、金型本体51は、成形用材料10を供給する供給穴521を設けた供給穴部52と、供給穴521に連通して成形用材料10をハニカム状に成形する四角形格子状のスリット溝531を設けたスリット溝部53とを有する。
【0034】
図5(a)、(b)に示すごとく、スリット溝部53は、溝形成面530に四角形格子状のスリット溝531が形成されている。
図5(a)、図6に示すごとく、溝形成面530は、成形用材料10の押出方向に突出した段付部532における中央溝形成面530aと、段付部532の周囲の部分における外周溝形成面530bとを有する。
【0035】
図5(b)、図6に示すごとく、供給穴部52は、穴形成面520に供給穴521が形成されている。供給穴521は、四角形格子状のスリット溝531の格子点のうち、縦横方向1つおきの格子点に対応する場所に設けられている。
また、外周溝形成面530bのスリット溝531に連通する供給穴521の一部には、成形用材料10が供給されないように、その供給穴521を塞ぐ供給防止部材522が配設されている。
【0036】
図6に示すごとく、ガイドリング54は、金型本体51の基準面510から成形用材料10の押出方向へ延びるよう構成されたリング状の立設部541と、立設部541から内方へ向かって突出していると共にスリット溝部53との間に間隙50を設けたガイド部542とを有する。
【0037】
次に、押出成形用金型5を用いた押出成形について説明する。
まず、図7に示すごとく、スクリュー式の押出成形装置(図示略)の先端に取り付けられた押出成形用金型5の供給穴部52の供給穴521に、スラリー状の材料10を供給する。
【0038】
同図に示すごとく、供給穴521に供給された成形用材料10のうち、中央溝形成面530aのスリット溝531から押し出された成形用材料10は、四角形格子状の隔壁21となる。また、外周溝形成面530bのスリット溝531から押し出された成形用材料10は、間隙50を通過し、複数の外周壁層31からなる外周壁部3となる。これにより、隔壁21及び外周壁部3を同時かつ一体的に成形し、これらを有するハニカム成形体100を成形する。
【0039】
このとき、同図に示すごとく、外周溝形成面530bのスリット溝531に連通する供給穴521の一部(供給穴521a)には、供給防止部材522が配設されているため、成形用材料10が供給されない。そのため、外周溝形成面530bの一部のスリット溝531(スリット溝531a)からは成形用材料10が断続的に押し出される。なお、図7では、スリット溝531aから成形用材料10が押し出されていない状態を示している。
このように、成形用材料10の供給を制御することにより、最も内側の外周壁層31を構成する成形用材料10とその外側の外周壁層31を構成する成形用材料10との間に、空隙部33が形成される。
【0040】
このような成形用材料10の制御によって空隙部33が形成される理由としては、供給穴521の一部(供給穴521a)を供給防止部材522によって塞ぐことにより、その供給穴521aに成形用材料10が完全に充填されないため、周囲からの成形用材料10、押出圧力の不均一等により、その供給穴521aに連通する周囲のスリット溝531(スリット溝531a等)から成形用材料10が断続的に押し出されるということが考えられる。
【0041】
次いで、押出成形用金型5を用いて押出成形されたハニカム成形体100を所望の長さに切断し、マイクロ波、高周波、熱風等で乾燥させる。その後、ハニカム成形体100を所定の温度で焼成する。
これにより、コージェライトセラミックスからなるハニカム構造体1(図1、図2)を得る。
【0042】
次に、本例のハニカム構造体1の作用効果を説明する。
本例のハニカム構造体1において、外周壁部3は、2層以上の外周壁層31を積層して構成されている。また、外周壁部3は、隣接する外周壁層31同士間の境界部32であって、複数の空隙部33を設けた空隙境界部321を有する。そのため、例えば、ハニカム構造体1を昇温させ、ハニカム部2に担持した触媒を活性化させる場合に、内側のハニカム部2と外側の外周壁部3との間の温度差(熱膨張差)に起因して発生する応力を、外周壁部3に設けた空隙部33によって緩和することができる。これにより、外周壁部3におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0043】
また、空隙部33は、外周壁部3における厚み方向の中間位置Pよりも内側に設けられている。すなわち、空隙部33から外周壁部3の内周面301までの距離を空隙部33から外周壁部3の外周面302までの距離よりも短くしている。
そのため、図8に示すごとく、例え外周壁部3にクラック(C)が発生しても、そのクラック(C)が強度の弱い空隙部33を起点として内側(外周壁部3の内周面301側)に進行し易くすることができる。言い換えると、クラック(C)が空隙部33を起点として外側(外周壁部3の外周面302側)に進行することを抑制することができる。
これにより、クラックが外周壁部3の外周面302にまで至り、外周壁部3が変形するといったことや、クラックが外周壁部3の内部を貫通し、ハニカム部2の隔壁21に担持した触媒が外部に漏れるといったことを防止することができる。
【0044】
また、本例では、外周壁部3は、ハニカム構造体1の径方向に積層された3層以上の筒状の外周壁層31からなると共に、空隙境界部321よりも外側に2層以上の外周壁層31を有する。そのため、外周壁部3にクラックが発生したときに、そのクラックが空隙部33を起点として外側に進行することをより一層抑制することができる。
【0045】
また、空隙境界部321の空隙部33は、ハニカム構造体1の径方向の断面形状が楕円であると共に、その楕円の長軸が外周壁部3の周方向を向くように形成されている。そのため、内側のハニカム部2と外側の外周壁部3との間の温度差(熱膨張差)に起因して発生する応力を空隙部33によってより一層緩和することができる。
【0046】
また、一部の空隙部33は、隔壁21をハニカム部2の外側(外周壁部3)にまで延長して設けたと仮定した場合に、その延長した隔壁21同士が交差する位置(交点部219)に設けられている。そのため、セル22から外周壁部3に伝達される熱を空隙部33によって緩和することができる。
【0047】
また、空隙部33の周囲には、空隙部33を取り囲むように外周壁部3(外周壁層31)を構成する結晶粒子39(本例の場合には、コージェライトを構成する主成分である溶融シリカ、水酸化アルミニウム、タルク等)が配置されている。そのため、セル22から外周壁部3に伝達される熱を空隙部33によって緩和するという効果を十分に得ることができる。
【0048】
また、外周壁部3の外周壁層31の厚みをa、ハニカム部2の隔壁21の厚みをbとした場合に、a/b=0.9〜1.1である。すなわち、外周壁部3を構成する外周壁層31とハニカム部2を構成する隔壁21とを同じような厚みとすることにより、ハニカム構造体1全体の製造を容易とすることができる。
【0049】
このように、本例によれば、外周壁部3におけるクラックの発生を抑制することができ、例え外周壁部3にクラックが発生しても外観変形や触媒漏れといった不具合を防止することができるハニカム構造体1を提供することができる。
【0050】
(実施例2)
本例は、図9に示すごとく、外周壁部3の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、外周壁部3は、ハニカム構造体1の径方向に、筒状の外周壁層31を2層積層して構成されている。内側の外周壁層31の厚みcは、90μmであり、外側の外周壁層31の厚みdは、270μmである。
【0051】
同図に示すごとく、隣接する外周壁層31同士間の境界部32には、複数の空隙部33が設けられている。本例では、この境界部32が複数の空隙部33を設けた空隙境界部321となる。
空隙境界部321に設けられた空隙部33は、外周壁部3の外周面302までの距離よりも内周面302までの距離のほうが短い。すなわち、空隙部33は、外周壁部3における厚み方向(ハニカム構造体1の径方向)の中間位置Pよりも内側に設けられている。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0052】
本例の場合にも、実施例1と同様に、外周壁部3におけるクラックの発生を抑制することができ、例え外周壁部3にクラックが発生しても外観変形や触媒漏れといった不具合を防止することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 ハニカム構造体
2 ハニカム部
21 隔壁
22 セル
3 外周壁部
31 外周壁層
32 境界部
321 空隙境界部
33 空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の外周壁部と、該外周壁部内においてハニカム状に設けられた隔壁と該隔壁により区画された多数のセルとを有するハニカム部とを備えたハニカム構造体において、
上記外周壁部は、上記ハニカム構造体の径方向に積層された2層以上の外周壁層からなると共に、隣接する上記外周壁層同士間の境界部であって、複数の空隙部を設けた空隙境界部を有し、
上記空隙部は、上記外周壁部における厚み方向の中間位置よりも内側に設けられていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のハニカム構造体において、上記外周壁部は、上記ハニカム構造体の径方向に積層された3層以上の筒状の上記外周壁層からなると共に、上記空隙境界部よりも外側に2層以上の上記外周壁層を有することを特徴とするハニカム構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハニカム構造体において、上記空隙境界部の上記空隙部は、上記ハニカム構造体の径方向の断面形状が楕円であると共に、その楕円の長軸が上記外周壁部の周方向を向くように形成されていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体において、上記外周壁部の上記外周壁層の厚みをa、上記ハニカム部の上記隔壁の厚みをbとした場合に、a/b=0.9〜1.1であることを特徴とするハニカム構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−170935(P2012−170935A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37878(P2011−37878)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】