説明

ハロゲン化亜鉛開始剤を用いる重合方法

【課題】亜鉛ベース開始剤を用いたイソオレフィンの重合方法を改良すること。
【解決手段】ハロゲン化亜鉛開始剤を用いたイソオレフィンのカチオン重合法。該開始剤をイソオレフィンの適当な溶剤、好ましくはハロカーボン溶剤溶液に加える。重合反応は、通常、開始剤を溶液に溶解するのに十分高い温度で行う。ハロゲン化アルキル活性化剤が任意に使用でき、好ましくは開始剤の添加前に溶液に加える。溶液にはマルチオレフィンが任意に存在してよい。本方法はイソオレフィンの均質重合体及びイソオレフィンとマルチオレフィンとの共重合体、例えばブチルゴムの形成に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ハロゲン化亜鉛開始剤を用いるイソオレフィン及び任意にマルチオレフィンのカチオン重合方法に関する。更に特に本発明は、ハロゲン化亜鉛開始剤及び任意にハロゲン化アルキル補助(co−)開始剤を用いたイソブテン及びイソプレンのカチオン重合によるブチルゴム重合体の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリ(イソブチレン−コ(co)−イソプレン)又はIIRは、1940年代からイソブチレンと少量(1〜2モル%)のイソプレンとのランダムカチオン重合により製造されている、一般にブチルゴムとして公知の合成エラストマーである。IIRは、その分子構造のため、優れた空気不透過性、高い損失弾性率、酸化安定性及び長い耐疲労性を有する。
ブチルゴムは、イソオレフィンと、コモノマーとして1種以上の、好ましくは共役した、マルチオレフィンとの共重合体である。市販のブチルは、多量のイソオレフィンと、2.5モル%以下の少量の共役マルチオレフィンとを含有する。
【0003】
ブチルゴム又はブチル重合体は、一般に塩化メチルのような好適な重合溶剤、及び重合開始剤としてAlCl3のようなフリーデル−クラフト触媒を用いるスラリー法で製造される。塩化メチルを用いると、比較的安価なフリーデル−クラフト触媒であるAlCl3は、イソブチレンコモノマー及びイソプレンコモノマーと同様、塩化メチルに溶解するという利点がある。更に、ブチルゴム重合体は、塩化メチルに不溶で、溶液から微粒子として沈澱する。重合は、一般に約−90〜−100℃の温度で行われる。USP 2,356,128及びUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry,A23巻,1993年,288〜295頁参照。このように低い重合温度は、ゴムを利用する際、十分な高分子量を得るために使用される。
【0004】
イソオレフィンの重合用触媒として活性であることが判明した他の化合物としては、有機金属化合物と、カチオン発生剤、例えばC5Me5TiMe3/B(C6F5)3(WO−00/04061−A1)、Cp2AlMe/ B(C6F5)3(US−5,703,182)との組合わせ、並びにジルコノセン及び関連錯体とB(C6F5)3又はCPh[B(C6F5)4]との組合わせ(WO−95/29940−A1、DE−A1−198 36663)、Song,X.;Thomton−Pett,M.Organometallics 1988,17,1004,Carr,A.G.;Dawson,D.M.;Bochmann,M.Macromol.Rapid Commun.1988,19,205が挙げられる。
【0005】
Nuykenは、M.Bohnenpollと共同で(Chem.Eur.J.2004,10,6323)、室温で活性の非配位ボレートアニオンの[Mn(NCMe)]2+塩を公表した。
【化1】


この系は、IB/CH2Cl2中、+30℃で操作したが、0℃以下では活性を示さなかった。一般に重合は遅く(IBの均質重合では55〜110時間)、機構について若干の疑問があった。IBの均質重合体及び共重合体の分子量Mnは、8,000〜10、000であった。高IP供給では転化は急激に低下した。
【0006】
普通、亜鉛化合物はイソアルカンの重合用触媒として使用されていない。実際、ハロゲン化アルキル活性化剤の存在下又は不存在下、純イソブテン中又はイソブテン/塩化メチル混合物中で使用されるZnCl2は、不活性であることが明らかで、重合体は得られない。しかし、最近Bochmann及び協力者は、IBの均質重合及びIB/IPの共重合にZn(C6F5)2/t-BuCl系を使用する特許を出願した(2003年9月16日出願のカナダ特許出願2,441,079)。以前はカチオン重合に亜鉛は使用されなかった。この特許によれば、前記システムは、特に良好な共重合特性を示し、純IB溶液(溶剤なし)中でIB/IP共重合体を形成できると教示している。重合体は、IPを15モル%以下含有し、殆どゲルを含まない。しかし、Zn(C6F5)2と塩化tert−ブチル(t-BuCl)との反応をモニターすると、常に不溶性沈殿と共に、かなりの量のC6F5Hが見られた。更にZn(C6F5)2は、工業的規模の方法で使用するには高価であり、したがって、低価格の代替法が探究されている。
【特許文献1】USP 2,356,128
【特許文献2】WO−00/04061−A1
【特許文献3】US−5,703,182
【特許文献4】WO−00/04061−A1
【特許文献5】US−5,703,182
【特許文献6】WO−95/29940−A1
【特許文献7】DE−A1−198 36663
【特許文献8】カナダ特許出願2,441,079
【非特許文献1】Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry,A23巻,1993年,288〜295頁
【非特許文献2】Song,X.;Thomton−Pett,M.Organometallics 1988,17,1004,
【非特許文献3】Carr,A.G.;Dawson,D.M.;Bochmann,M.Macromol.Rapid Commun.1988,19,205
【非特許文献4】Chem.Eur.J.2004,10,6323
【非特許文献5】Maurice Mortonによる“Rubber Technology”(第3版),第10章(Van Nostrand Reinhold Company版権1987),297〜300頁
【非特許文献6】Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第4巻,S.66以下(配合)及び第17巻,S.666以下(加硫)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、亜鉛ベース開始剤を用いた改良重合方法に対する要求が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、イソオレフィンモノマーのハロカーボン溶剤溶液を供給する工程、該溶液に、ハロゲン化アルキル2価亜鉛又はハロゲン化アリール2価亜鉛を含む亜鉛ベース開始剤を添加する工程、及び該亜鉛ベース開始剤含有溶液を反応させて、イソオレフィン含有重合体を形成する工程を含む、亜鉛ベース開始剤を用いたイソオレフィンモノマーのカチオン重合方法を提供する。
【0009】
重合反応は、溶液中にハロゲン化亜鉛開始剤を溶解させるのに十分高い温度で行ってよい。任意にハロゲン化アルキル活性化剤が使用でき、活性化剤は、ハロゲン化亜鉛開始剤の添加前の溶液に添加することが好ましい。イソオレフィンと一緒に、任意にマルチオレフィンが溶剤中に存在して、イソオレフィンと共重合体を形成するために反応中に沈殿してもよい。イソオレフィンは、イソブテンを含有してよく、マルチオレフィンは、イソプレンを含有してよく、また重合体はブチルゴムを含有してよい。
【0010】
本発明で使用されるハロゲン化亜鉛開始剤は、溶剤に対する溶解性が良く、かつ安価である点で有利である。
本発明の別の特徴及び好ましい実施態様を更に十分に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
詳細な説明
本発明は、イソオレフィンの均質重合体、及びイソオレフィンとマルチオレフィンと任意に他の共重合性モノマーとの共重合体に関する。好ましい実施態様では、共重合体はブチルゴム重合体である。明細書中で用語“ブチル重合体”、“ブチルゴム”及び“ブチルゴム重合体”は、交換可能に使用され、主要部分のイソオレフィンモノマーと小部分のマルチオレフィンモノマーとの反応により製造される重合体を意味することを意図する。
【0012】
本方法は特定のイソオレフィンに限定されない。しかし、炭素原子数4〜16、好ましくは4〜8の範囲のイソオレフィン、例えばイソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、4−メチル−1−ペンテン及びそれらの混合物が好ましい。最も好ましくはイソブテンである。
反応混合物中にマルチオレフィンが存在する場合、本方法は特定のマルチオレフィンに限定されない。イソオレフィンと共重合可能な、当業者に公知のいずれのマルチオレフィンも使用できる。炭素原子数4〜14の範囲のマルチオレフィンが好ましい。好ましいC〜C14マルチオレフィンは、C〜C10共役ジオレフィンを含有する。好適なマルチオレフィンの特定の非限定的例としては、イソプレン、ブタジエン、2−メチルブタジエン、2,4−ジメチルブタジエン、ピペリリン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、2−ネオペンチルブタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2−メチル−1,6−ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1−ビニルシクロヘキサジエン及びそれらの混合物、好ましくは共役ジエンが使用される。イソプレンが特に好ましく使用される。
【0013】
重合体は、イソオレフィンモノマーだけを含む混合物から誘導してよい。重合体は、C〜Cイソオレフィンモノマー約70〜99.5重量部とC〜C14マルチオレフィンモノマー約30〜約0.5重量部との混合物から誘導してもよい。更に好ましくは重合体は、C〜Cイソオレフィンモノマー約80〜約99.5重量部とC〜C14マルチオレフィンモノマー約20〜約0.5重量部との混合物から誘導される。本発明で最も好ましい重合体は、イソブチレン約97〜99.5重量部とイソプレン約3〜約0.5重量部との混合物から誘導される。
【0014】
当業者ならば、ブチルターポリマーの製造に任意の第三モノマーを含有できることは認識されよう。例えばモノマー混合物中にスチレン系モノマーを、モノマー混合物に対し好ましくは約15重量%以下の量で含有できる。好ましいスチレン系モノマーは、 p−メチルスチレン、スチレン、α−メチルスチレン、 p−クロロスチレン、p−メトキシスチレン、シクロペンタジエン及びメチルシクロペンタジエンインデン、印伝誘導体及びそれらの混合物よりなる群から選んでよい。最も好ましいスチレン系モノマーは、スチレン、p−メチルスチレン及びそれらの混合物から選んでよい。他の好適な共重合可能のターモノマーは、当業者ならば明らかであろう。
【0015】
イソオレフィン含有重合体、特にブチルゴム重合体の製造に好適な重合方法は、当業者に公知であり、更にUSP 2,356,128に記載されている。一般にこの方法は、好適な溶剤に溶解したモノマー混合物を供給する工程を含む。溶剤は一般に有機流体である。工業的ブチルゴム重合に使用するのに好適な有機流体は、不活性なC〜Cハロゲン化炭化水素及びそれらの混合物、C〜C脂肪族炭化水素、C〜C環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素の1種以上と脂肪族炭化水素の1種以上との混合物、及びハロゲン化炭化水素の1種以上と環式炭化水素の1種以上との混合物が挙げられる。好ましい不活性有機流体又は溶剤の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びそれらの互いの混合物、又は塩化メチル及び/又はジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素との混合物が挙げられる。最も好ましくは有機流体は、塩化メチル、ジクロロメタン及びそれらの混合物よりなる群から選ばれたハロゲン化炭化水素である。
【0016】
本発明による亜鉛ベース開始剤は、好ましくは純IB、又はIBと好適な有機溶剤との混合物のいずれかに可溶のハロゲン化2価亜鉛ルイス酸を含有する。塩化亜鉛(ZnCl2)は、開始剤として使用するのに好適な簡単なハロゲン化亜鉛であるが、純IB又はIB/溶剤混合物に溶解しない。したがって、好ましいハロゲン化亜鉛は、可溶性の有機ハロゲン化亜鉛、更に好ましくはハロゲン化アルキル亜鉛又はハロゲン化アリール亜鉛、なお更に好ましくはハロゲン化短鎖アルキル亜鉛を含有する。亜鉛は2価なので、ハロゲン化物基の他にはアルキル基又はアリール基しか存在しない。ハロゲン化亜鉛は、好ましくはアルコキシドを含有しない。好ましいハロゲンは塩素であるが、臭素も使用できる。好ましいハロゲン化亜鉛の例としては、式
R−Zn−X (1)
(但し、Rはメチル、エチル、プロピル又はブチルであり、XはCl、Br又はIである)
の化合物が挙げられる。
【0017】
モノマー混合物には更に活性化剤又は補助開始剤を添加すると有利かもしれない。補助開始剤が重合反応に悪影響を与えない限り、本発明はいかなる特定の補助開始剤/活性化剤にも限定されない。一般式HX、RX、R3CX又はRCOXの活性化剤が好ましい。式中、各Rは独立にC1〜C50炭化水素残基であって、直鎖、分岐鎖又は環式であってもよく、かつ炭素鎖、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、クミル、3−メチルフェニル、2,4,4−トリメチルフェニル及び3,5,5−トリメチルヘキシル中に1種以上の非炭素原子を含有してもよく、各Xはハロゲン、好ましくは塩素、臭素又は沃素である。
好ましい補助開始剤は、Me3CCl、 t−BuCl、塩化クミル、TMP−2−クロリド、MeCOCl及びMe3CBrである。最も好ましくはt−BuCl及び塩化クミルである。
【0018】
亜鉛化合物と補助開始剤との好ましいモル比は、1:0.1〜1:10の範囲で、最も好ましいモル比は1:1〜1:3の範囲である。
塩化エチル亜鉛(EtZnCl)は、特に好ましい亜鉛ベース開始剤で、IBとハロカーボン溶剤ジクロロメタン(CH2Cl2)との混合物中で良好な溶解性を示すが、純IB中では限定された溶解性を示す。EtZnClは、Clブリッジの四量体である。この固体は、室温で有機溶剤に溶解する。EtZnCl/t−BuCl系は、IBの重合及びIB/IPの共重合に良好な活性を示す。この系でさえ、現場で発生したZnCl2は−78℃ではIB/CH2Cl2混合物に溶解しないので、−35℃以上の温度では最良の活性を示す。しかし、EtZnCl/塩化クミル系は、低温溶解性が向上し、−78℃以下から−90℃又はそれ以下の温度で良好な重合活性を示す。したがって、モノマーは、好ましくは−100〜40℃、更に好ましくは−90〜35℃、なお更に好ましくは−80〜35℃、なお更に好ましくは−70〜35℃、なお更に好ましくは−60〜35℃、なお更に好ましくは−50〜35℃、なお更に好ましくは−35〜35℃の範囲の温度及び0.1〜4バールの範囲の圧力で重合される。
【0019】
バッチ式反応器とは反対に連続式反応器を用いると、本方法に良好な影響を与える可能性がある。本方法は、容量が好ましくは0.1〜100m、更に好ましくは1〜10mの少なくとも1つの連続式反応器中で行われる。
【0020】
重合を連続的に行う場合、本方法は次の原料流:
i)溶剤/希釈剤(好ましくはジクロロメタン)+イソオレフィン(好ましくはイソブテン)+マルチオレフィン(存在すれは、好ましくはイソプレンのようなジエン);及び
ii)ハロゲン化亜鉛化合物(好ましくは塩化エチル亜鉛)
で行うことが好ましい。
ハロゲン化アルキル活性化剤(存在すれば)は、モノマーの添加と共同で、又は添加に続いて、溶剤に予め溶解するか或いは溶剤に加えることができる。ハロゲン化アルキル活性化剤は、ハロゲン化亜鉛開始剤の添加前に供給することが好ましい。
【0021】
ハロゲン化亜鉛開始剤系は、IBの均質重合体又はIBとジエンモノマーとの共重合体の製造に使用してよい。ジエンモノマーがイソプレンの場合、IBとIPとの共重合体はブチルゴムである。IB均質重合体の分子量(M)は25,000〜500,000の範囲であり、またIB/IP共重合体の分子量は15,000〜500,000の範囲である。
【0022】
本発明方法で得られる残存二重結合を有する重合体は、ハロブチル重合体の製造用出発原料であってよい。臭素化又は塩素化は、Maurice Mortonによる“Rubber Technology”(第3版),第10章(Van Nostrand Reinhold Company版権1987),297〜300頁及びそこで引用された文献に記載の方法に従って実施できる。
【0023】
本発明で提供される共重合体は、あらゆる種類の成形品、特にタイヤ部材及び工業用ゴム物品、例えば栓、防振素子、形材、フィルム、塗料の製造に申し分なく好適である。重合体は、このような目的に純粋な形態で或いは他のゴム、例えばNR、BR、HNBR、NBR、SBR、EPDM又は弗素ゴムとの混合物として使用される。これらコンパウンドの製造法は、当業者に公知である。殆どの場合、充填剤としてカーボンブラックが添加され、硫黄ベースの硬化系が使用される。特に重合体がマルチオレフィンモノマーから誘導された繰返し単位を4モル%以上含有する場合は、過酸化物ベースの硬化系も使用できる。配合及び加硫については、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第4巻,S.66以下(配合)及び第17巻,S.666以下(加硫)参照。コンパウンドの加硫は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜180℃の範囲の温度(任意に10〜200バールの範囲の圧力)で行われる。
本発明を説明するため、以下の実施例を提供する。
【実施例】
【0024】
実施例1:IBの均質重合用EtZnCl系
IB(9ml)を−78℃の目盛容器中に凝縮させた。予め冷却したジクロロメタンを合計反応容量が22mlになるまで注入した。t−BuCl原料のジクロロメタン溶液(100μモル/mlCH2Cl2)を−78℃で製造した。この反応器に適当量のt−BuClのアリコートを添加した後、固体EtZnClを添加した。この温度では白色固体は変化しなかった。しかし、混合物を−35℃(内部熱電対でチェック)に暖めると、固体は完全に溶解した。EtZnClは過剰に用い、またt−BuClは重合速度を制御するための制限用試剤として使用した。反応をメタノール中で急冷させ、一定重量になるまで60℃で乾燥した。結果を第1〜4表に示す。
【0025】
系を密封し、表記の設定温度まで暖めた。20℃での反応では、内部圧は2バールと算出された。溶液は、1分後(混合物にとって、反応が始まる臨界温度−35℃に達するのに要する時間)非常に曇ってきた。再び−78℃に冷却すると、ほんの痕跡量の重合体が得られた(実験637)。この事から、重合時に含まれる亜鉛種は−78℃で不溶であることが判る。しかし、IBの蒸発を避けるため、系を密封すると、室温で非常に高い転化率に達した(実験639)。こうして製造された重合体は25〜47×10のM値を示した。高濃度のt−BuCl(実験654、655)を用いると、30分反応後、ほぼ定量の転化率となった。温度が低下すると、重合体の分子量が増大する。数平均分子量M=52×10g/モルまでの分子量に達した。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

【0030】
実施例2:t-BuClによるIB−IPの共重合用EtZnCl系
EtZnCl/t-BuCl系によるIBとIPとの共重合開始能力を20℃で例証した。実験方法は、IBモノマーをIBとIPとのモノマー混合物に代えた他は実施例1の方法と同様である。使用したIPモノマーの容量を第5表に示す。IBモノマーの容量は、合計容量9mlの構成に要する残量である。
【0031】
【表5】

【0032】
分子量M約16〜22,000の共重合体にIPを3.8モル%以下導入した。転化率は、IP濃度の増大と共に低下する。
【0033】
実施例3:塩化クミルによるIB−IP共重合用EtZnCl系
実験方法は、活性化剤としてt-BuClを塩化クミルと代えると共に、重合を−78℃で行った他は、実施例2と同様な方法に従った。結果を第6表に示す。
【0034】
【表6】

【0035】
分子量M約122,000〜149,000の共重合体にIPを5.7モル%以下導入した。転化率は、IP濃度の増大と共に低下する。異なる実験条件で共重合体へのIPの多量の導入が可能なことは確かである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)イソオレフィンモノマーのハロカーボン溶剤溶液を供給する工程、
b)該溶液に、ハロゲン化アルキル2価亜鉛又はハロゲン化アリール2価亜鉛を含む亜鉛ベース開始剤を添加する工程、及び
c)該亜鉛ベース開始剤含有溶液を反応させて、イソオレフィン含有重合体を形成する工程、
を含む、亜鉛ベース開始剤を用いたイソオレフィンモノマーのカチオン重合方法。
【請求項2】
亜鉛ベース開始剤を添加する前の溶液にハロゲン化アルキル活性化剤を添加する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合体がイソオレフィン均質重合体である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
溶液が、更にマルチオレフィンモノマーを、溶液中の全モノマーに対し1〜15モル%の量で含有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
重合体が、イソオレフィンモノマーとマルチオレフィンモノマーとの共重合体である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法で製造された重合体。
【請求項7】
請求項4に記載の方法で製造された重合体。

【公開番号】特開2007−246902(P2007−246902A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47122(P2007−47122)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(506183100)ランクセス・インク. (13)
【Fターム(参考)】