説明

ハロゲン含有ビニルポリマーのための熱安定剤組成物

【課題】ハロゲン含有ビニルポリマーのための安定剤組成物、特に、加工または長期使用の間に、ハロゲン含有ビニルポリマーを分解および退色から保護する際に有効である安定剤組成物を提供する。
【解決手段】ハロゲン含有ビニルポリマーおよび安定剤組成物を含む安定化されたポリマー組成物であって、該安定剤組成物が、ヒドロタルサイト;および亜鉛メルカプチド、メルカプタン含有有機化合物とカルボン酸亜鉛の混合物、または前記安定剤の1以上を含む混合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン含有ビニルポリマーのための安定剤組成物、安定化されたハロゲン含有ビニルポリマー組成物、およびこれから形成される物品、およびハロゲン含有ビニルポリマーを安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン含有ビニルポリマー、例えば、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、およびポリ(塩化ビニリデン)は、一般に様々な物品、例えば、パイプ、窓枠、サイディング(siding)、ビン、壁装材、および包装用フィルムを製造するために用いられている。ポリマー樹脂中に起こり得る色変化、特に、加工の最初の1〜10分間の間に起こるこれらの色変化および/または長期間の使用の間に起こる色変化を改善するために、ハロゲン含有ビニルポリマーに安定剤を添加するための多数の試みがなされてきた。亜鉛塩は、例えば加工の早期段階でのハロゲン含有ビニルポリマーにおいて観察される色の変化を著しく軽減できる有用な安定剤である。例えば、米国特許第3067166号におけるように、加工の後期段階での安定化を向上させるために、メルカプタン含有有機化合物などの他の化合物が補助安定剤として亜鉛化合物と共に添加されてきた。米国特許第4973619号に開示されているように、ブロックされたメルカプタンが亜鉛の脂肪酸塩と組み合わせられてきた。これらの組み合わせはその意図される目的に関して好適であるが、ハロゲン含有ビニルポリマーのための他の安定剤組み合わせがなお必要とされている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第3067166号明細書
【特許文献2】米国特許第4973619号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題は、従ってハロゲン含有ビニルポリマーのための安定剤組成物、特に、加工または長期使用の間に、ハロゲン含有ビニルポリマーを分解および退色から保護する際に有効である安定剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の態様において、ハロゲン含有ビニルポリマー、および安定剤組成物を含む安定化されたポリマー組成物が提供され、
該安定剤組成物は、ヒドロタルサイト;および亜鉛メルカプチド、メルカプタン含有有機化合物とカルボン酸亜鉛の混合物、または前記安定剤の1以上を含む混合物;を含み、
ここにおいて、亜鉛メルカプチドは
式2の亜鉛メルカプトエステル:
【化1】

(式中、各Rは独立して、ヒドロカルビル基であり、bは1または2である);
式3の亜鉛メルカプトエステル:
【化2】

(式中、c=0または1であり、d=1または2であり、各R’は独立して、メチルまたは−C(=O)OR”であり、各R”は独立して−[(CH{C(R)(R2*)}CHO)3*](式中、各Rは独立して、−H、C1−18アルキルまたはC1−18ヒドロキシ置換アルキルであり、各R2*は−OH、C1−18ヒドロキシ置換アルキル、または−OC(=O)R4*であり、各R3*は−HまたはC1−18アルキルであり、各R4*はアルキルまたはアルケニルであり、e=0または1であり、f=1〜4である。ただし、fが1より大きい場合、e=0であるとする)である);または
式4の亜鉛メルカプトアルキルカルボン酸エステル:
【化3】

(式中、R5*はC1−18アルキル、C1−18アルケニル、またはC6−12アリール基であり、g=1〜6である)、または
前記亜鉛メルカプチドの1以上を含む混合物である。
【0006】
第二の態様において、ヒドロタルサイト;および亜鉛メルカプチド、メルカプタン含有有機化合物とカルボン酸亜鉛との混合物、または前記安定剤の1以上を含む混合物を含む安定剤組成物が提供される。
【0007】
第三の態様において、前記安定剤組成物をポリマーに添加することを含む、ハロゲン含有ビニルポリマーを安定化させる方法が提供される。
【0008】
第四の態様において、前記の安定化されたポリマー組成物を含む物品が提供される。
【0009】
開示された安定剤組成物は、驚くべきことに、ヒドロタルサイトを含まない類似した組成物と比べて改善された安定化を示す。安定剤組成物は、好適な短期ならびに長期色彩安定性をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書において用いられる「a」および「an」なる用語は、量の制限を示すのではなく、少なくとも1つの言及された物が存在することを示す。
【0011】
本明細書において用いられる場合、ヒドロカルビル基は、飽和または不飽和炭化水素、すなわち、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アルアルキル、アルアルカリール、アルアシクロアルキル、アルアルケニル、アルカリール、シクロアルカリール、およびアルケニルアリール基、ならびに前記基の混合物を包含する基である。この用語は、天然源、例えばタール油などから誘導される炭化水素の混合物を包含することを意図する。さらに、アルキル基および前記基のアルキル部分は、他に特に記載しない限り直鎖または分岐鎖であってよい。オキシアルキレニルなる用語は、ポリアルキレンエーテル分子の二価基を意味する。接頭語「ハロ」は1以上のフッ素、塩素、臭素、および/またはヨウ素基の存在を示す。また本明細書において用いられる場合、アシルオキシアルキル基は、アルコールのカルボン酸エステルから得られ、従って式−ROC(=O)Rを有し(例えば、メルカプトプロパノールのステアリン酸エステルはステアロイルオキシプロピル基を有する);アルコキシカルボニルアルキル基は式−RC(=O)ORを有する(例えば、ラウリル3−メルカプトプロピオネートはドデシルオキシカルボニルエチル基を有する)。「phr」なる略語は、ハロゲン含有ビニルポリマー100重量部あたりの特定の成分の重量部を意味する。
【0012】
本明細書において用いられる場合、「アルキル」とは、特定の数の炭素原子を有する分岐鎖および直鎖飽和脂肪族炭化水素基の両方を包含することを意図される。従って、本明細書において用いられるC1−6アルキルなる用語は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を包含する。例えば(フェニル)C0−4アルキルなど、C0−nアルキルが本明細書において別の基と組み合わせらて用いられる場合、表示される基(この場合フェニル)は、一つの共有結合により直接結合するか(C)、または特定の数の炭素原子(この場合1〜約4個の炭素原子)を有するアルキル鎖により結合するかのいずれかである。アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、およびsec−ペンチルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0013】
本明細書において用いられる「アルケニル」とは、鎖に沿った任意の安定な点にある1以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖いずれかの構造の炭化水素鎖を示す。アルケニル基の例としては、エテニルおよびプロペニルが挙げられる。
【0014】
「アルコキシ」とは、酸素ブリッジを介して結合した、表示された数の炭素原子を有する前記定義のアルキル基を表す。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、2−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、n−ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、および3−メチルペントキシが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0015】
本明細書において用いられる場合、「アリール」なる用語は、芳香環(単数または複数)において炭素のみを含有する芳香族基を意味する。典型的なアリール基は1〜3の独立環、縮合環、またはペンダント環および6〜18の環原子を含有し、環構成要素として複素原子を含まない。必要ならば、かかるアリール基は炭素または非炭素原子または基でさらに置換することができる。このような置換は、N、O、およびSから独立して選択される1または2個の複素原子を任意に含有してもよい5〜7員飽和環状基に対する縮合を包含し、例えば、3,4−メチレンジオキシ−フェニル基が形成される。アリール基は、例えば、フェニル、1−ナフチルおよび2−ナフチルをはじめとするナフチル、ならびにビフェニルを包含する。
【0016】
エステルアルキルなる用語は、エステル結合を介して結合した前記定義のようなアルキル基、すなわち式 −O(C=O)アルキルの基を示す。
【0017】
「アルコキシカルボニル」とは、カルボニル基に隣接したアルコキシ基、すなわち式 アルキル−O(C=O)−の基を意味する。
【0018】
ハロゲン含有ビニルポリマーのための安定剤は、ヒドロタルサイト;および亜鉛−メルカプチド、カルボン酸亜鉛とメルカプトエステルの混合物、または前記安定剤の1以上を含む混合物を含む。
【0019】
安定剤組成物は、ヒドロタルサイトを含む。好適なヒドロタルサイトは一般式1:
【化4】

(式中、sは0〜0.5であり、AはCOまたはSOであり、tは分子中のHOの数である)を有する。使用できるヒドロタルサイトは、前記式において記載されるような様々な天然に存在する鉱物ヒドロタルサイトおよび合成ヒドロタルサイトを包含する。かかるヒドロタルサイトは、その高級脂肪酸アルカリ金属塩または有機スルホン酸アルカリ金属塩の形態において使用することができる。好適なヒドロタルサイトは、sが0.1〜0.4であり、AがCOであり、tが0.4〜0.7であるもの、例えば、sが0.33であり、AがCOであり、tが0.5であるものを包含する。1種の好適なヒドロタルサイトは、Kyowa ChemicalからAlcamizer(登録商標)4として商業的に入手可能である。
【0020】
一般に、ヒドロタルサイトの適当な量は、0.05phr〜5phr、または0.1phr〜2.5phrである。
【0021】
本発明の安定剤組成物における使用に好適な多くの亜鉛メルカプチドが公知であり、例えば、亜鉛メルカプトエステルおよび亜鉛メルカプトアルキルカルボン酸エステルが挙げられる。亜鉛メルカプトエステルの一例は、式2:
【化5】

(式中、各Rは独立して、ヒドロカルビル基であり、bは1または2である)を有するものである。式2の適当な亜鉛メルカプトエステルとしては、例えば、亜鉛ビス(2−エチルヘキシルチオグリコレート)、亜鉛ビス(オクチルメルカプトプロピオネート)、亜鉛ビス(オクタデシルチオグリコレート)、亜鉛ビス(オクタデシルメルカプトプロピオネート)、亜鉛ビス(エチルチオグリコレート)、および前記亜鉛メルカプトエステルの1以上を含む混合物が挙げられる。
【0022】
別の好適な亜鉛メルカプトエステルは、式3:
【化6】

(式中、c=0または1であり、d=1または2であり、各R’は独立して、メチルまたは−C(=O)OR”であり、各R”は独立して−[(CH{C(R)(R2*)}CHO)3*](式中、各Rは独立して、−H、C1−18アルキルまたはC1−18ヒドロキシ置換アルキルであり、各R2*は−OH、C1−18ヒドロキシ置換アルキル、または−OC(=O)R4*であり、各R3*は−H、C1−18アルキル、−C(O)R4*であり、各R4*はヒドロカルビル基、好ましくは、C1−36アルキルまたはアルケニルであり、e=0または1であり、f=1〜4である。ただし、fが1より大きい場合、e=0であるとする)である)を有するものである。
【0023】
式3の好適な亜鉛メルカプトエステルとしては、例えば、亜鉛ビス(チオグリコレート);亜鉛ビス(メルカプトプロピオネート);またはエチレングリコール、グリセロール、テトラエチレングリコール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、グリコールエーテル、例えばテトラエチレングリコールモノブチルエーテル、およびジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリコールモノカルボキシレート、例えばジエチレングリコールモノカプレートおよびエチレングリコールモノカプレート、グリセロールカルボキシレート、例えばグリセロールモノカプレートにより例示される少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する多価アルコールまたはエーテル、カルボキシレート、またはエーテルカルボキシレートの亜鉛メルカプトサクシネート;および前記亜鉛メルカプトエステルの1以上を含む混合物が挙げられる。
【0024】
もう一つ別の好適な亜鉛メルカプトアルキルカルボン酸エステルは、式4:
【化7】

(式中、R5*はC1−18アルキル、C1−18アルケニル、またはC6−12アリール基であり、g=1〜6である)を有するものである。式2および/または式3および/または式4の前記亜鉛メルカプチドの1以上を含む混合物も使用できる。好ましくは、g=1または2であり、R5*はC7−17アルキル基またはフェニル基である。
【0025】
式4の亜鉛メルカプトアルキルカルボン酸エステルは、メルカプト酸とアルコールの代わりにメルカプトアルキルアルコールとカルボン酸の反応の生成物であるので、いわゆる「逆エステル(reverse ester)」である。好適な逆亜鉛エステルとしては、例えば、亜鉛ビス(2−メルカプトエチルステアレート)、亜鉛(2−メルカプトエチルカプロエート)、亜鉛ビス(2−メルカプトエチルタレート)、亜鉛ビス(2−メルカプトカプリレート)、および前記逆エステルの1以上を含む混合物が挙げられる。
【0026】
式2、3および4の亜鉛メルカプチドは、対応するメルカプトエステルまたはメルカプトアルキルカルボン酸エステルと塩化亜鉛の、適当な塩化水素スカベンジャー、例えばアンモニア、水酸化アンモニウム、またはアルカリ金属水酸化物またはその炭酸塩の存在下での反応により調製することができる。あるいは、対応するメルカプトエステルまたはメルカプトアルキルカルボン酸エステルと酸化亜鉛の縮合は、100〜140℃で、水を除去するために減圧下で、または高沸点ナフサ、キシレン、およびパラフィンワックスなどの有機媒体中で行うことがでる。亜鉛化合物とメルカプト化合物との比は、反応を行うのに十分なものであって、好ましくは化学量論比である。大気圧もしばしば好適であるが、反応は減圧下、50〜80℃で十分に進行する。最高反応温度は典型的には140〜150℃である。
【0027】
メルカプトエステルおよび/またはメルカプトアルキルカルボン酸エステルのいくつかは商業的に入手可能であるか、またはメルカプト酸およびヒドロキシル基を有する化合物が適当な触媒、例えばメタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸および共沸有機溶媒、例えばトルエンまたはヘプタンの存在下で加熱される方法により調製することができる。別法として、減圧下で溶媒なしでエステル化反応を行うことができる。反応は、酸価が15以下に減少するまで行われる。
【0028】
好適な亜鉛メルカプチドとしては、例えば、亜鉛ビス(2−エチルヘキシルチオグリコレート)、亜鉛ビス(オクチルメルカプトプロピオネート)、亜鉛ビス(オクタデシルチオグリコレート)、亜鉛ビス(オクタデシルメルカプトプロピオネート)、亜鉛ビス(エチルチオグリコレート)、亜鉛ビス(2−メルカプトエチルステアレート)、亜鉛(2−メルカプトエチルカプロエート)、亜鉛ビス(2−メルカプトエチルタレート)、亜鉛ビス(2−メルカプトカプリレート)、または前記亜鉛メルカプチドの1以上を含む混合物が挙げられる。一具体例において、亜鉛メルカプチドは、順(forward)メルカプトエステル、例えば亜鉛ビス(2−エチルヘキシルチオグリコレート)、亜鉛ビス(オクチルメルカプトプロピオネート)、亜鉛ビス(オクタデシルチオグリコレート)、亜鉛ビス(オクタデシルメルカプトプロピオネート)、亜鉛ビス(エチルチオグリコレート)、または前記亜鉛メルカプチドの1以上を含む混合物を含む。
【0029】
安定剤組成物は、カルボン酸亜鉛を含むことができる。好適なカルボン酸亜鉛は、2〜30個の炭素原子を有する置換または非置換カルボン酸の亜鉛塩である。カルボン酸亜鉛は、式5:
【化8】

(式中、lは0または1であり、各Rは同一または異なり、1〜30個の炭素原子、好ましくは1〜17個の炭素原子を有する飽和または不飽和直鎖または分岐鎖アルキル基である)
により表される亜鉛塩であってもよい。亜鉛塩を形成するための好適なカルボン酸としては、例えば、モノカルボン酸、例えば、酢酸、酪酸、オクタン酸、ネオデカン酸、2−エチルヘキサン酸、ウンデカン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、3,6,9−トリオキサデカン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、またはグリコール酸;および二価カルボン酸およびそのモノエステル、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、オクタン−1,8−ジカルボン酸、3,6,9−トリオキサデカン−1,10−ジカルボン酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、ポリグリコールジカルボン酸(n=10〜12)、フタル酸、テレフタル酸、およびヒドロキシフタル酸;およびヘミメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、クエン酸、および前記酸の任意の1以上を含む混合物などの3または4価カルボン酸のジ−またはトリエステルが挙げられる。
【0030】
亜鉛エノレートは、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、アセト酢酸エステル、ベンゾイル酢酸エステル、またはデヒドロ酢酸のエノレート、および前記エノレートの任意の1以上を含む混合物を含む。好適なカルボン酸亜鉛は、オクタン酸亜鉛である。
【0031】
カルボン酸亜鉛、亜鉛メルカプチド、またはその混合物により提供される亜鉛の量は0.01phrより多い。亜鉛の具体的な量は用途に応じて変わり、ハロゲン含有ビニルポリマー処方、処理方法、意図される用途などの検討材料に応じて当業者により容易に決定される。一般に、カルボン酸亜鉛、亜鉛メルカプチド、またはその混合物により提供される亜鉛の好適な量は、0.01phr〜0.2phr、または0.015phr〜0.1phrである。
【0032】
安定剤組成物は、メルカプタン含有有機化合物、例えば、メルカプトエステルまたは逆メルカプトエステルを含むことができる。本明細書において用いられる場合、メルカプトエステルは、スルフヒドリル基と結合した少なくとも1つのアルコキシカルボニルアルキル基、すなわち、式HS−X−C(=O)O−(式中、Xは少なくとも2の価数を有する置換または非置換ヒドロカルビル基である)を有する部分を含む。逆メルカプトエステルは、スルフヒドリル基と結合した少なくとも1つのアシルオキシアルキル基、すなわち式HS−X−OC(=O)−(式中、Xは少なくとも2の価数を有する置換または非置換ヒドロカルビル基である)を有する部分を有する。1〜400個の炭素原子および1〜4個のメルカプト基を有する他のメルカプタン含有化合物、例えばアルキルメルカプタン、メルカプトアルコール、メルカプト酸なども存在することができる。
【0033】
好適なメルカプトエステルおよび逆メルカプトエステルは、3〜400個の炭素原子および1〜4のメルカプトエステルまたは逆メルカプトエステル基を有することができる。メルカプトエステルおよび逆メルカプトエステルの例は、次の式により表される構造を有する:
【化9】

(式中、
i=0〜6であり;j=0〜3であり;m=1〜2であり;n=2〜3である;ただし、m+n=4であるとする;
は−H、C1−18アルキル、またはC6−36アリールである;
およびR10は、それぞれ独立して、−H、−OH、−SH、C1−18アルキル、アリール、R16C(=O)O−、またはR16OC(=O)−基である。ただし、RおよびR10の少なくとも一方はR16C(=O)O−またはR16OC(=O)−基であるが、両方ともR16C(=O)O−およびR16OC(=O)−基ではないとする;
11はシクロアルキル、シクロアルケニルまたはフェニルである;
12はR16C(=O)O−またはR16OC(=O)−基である;
13は−Hまたは、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプトまたはアルキル置換基を含有することができ、かつR11がフェニルである場合、フェニルと結合してナフタレン環を形成する二価基である;
14は二価であり、かつ−OC(=O)R17C(=O)O−、−OC(=O)CH=CHC(=O)O−、または−C(=O)OR17OC(=O)−であり;
15はC1−12アルキルであり、好ましくは−CH、−CHCH;C1−12ヒドロキシアルキルであり、好ましくはヒドロキシメチル;または
【化10】

である;
16は−H、C1−24アルキル、C1−24アルケニル、C6−36アリール、C7−36アルアルキル、C7−36アルカリール、C1−16シクロアルキル、またはC1−36シクロアルケニルである;および
17はC6−36アリーレン、C1−8アルキレニル、−(CHCHO)CHCH−(式中、b=1〜6である)、または
【化11】

(式中、f=1または2である)である)。
【0034】
一具体例において、メルカプトエステルおよび逆メルカプトエステルは、式MC1(式中、Rは−Hであり;Rは−Hであり;R10はR16C(=O)O−またはR16OC(=O)−であり;i=1である)の化合物;式MC2(式中、R11はフェニルであり;Rは−Hであり;R12はR16C(=O)O−またはR16OC(=O)−であり;R13は−Hであり;j=1であり、i=1である)の化合物;式MC3(式中、Rは−Hであり;R14は−OC(=O)CH=CHC(=O)O−であり;i=1である)の化合物;式MC4(式中、Rは−Hであり;i=1である)の化合物;および式MC5(式中、R15は−Cであるかまたは:
【化12】

であり;Rは−Hであり;i=1である)の化合物;および式MC6(式中、Rは−Hであり;i=1である)の化合物である。
【0035】
式MC1の範囲内のメルカプトエステルおよび逆メルカプトエステルは、例えば、表1に示される化合物を包含する:
【表1】

【0036】
式MC3の範囲内のメルカプトエステルおよび逆メルカプトエステルは、例えば、表2に示される化合物を包含する:
【表2】

【0037】
式MC4の範囲内の逆メルカプトエステルは、例えば、次の化合物を包含する:
【化13】

【0038】
式MC5の範囲内のメルカプトエステルは、例えば、次の化合物を包含する:
【化14】

【0039】
式MC6の範囲内のメルカプトエステルは、例えば次の化合物を包含する:
【化15】

【0040】
適当な逆エステルとしては、例えば、2−メルカプトエチルステアレート、2−メルカプトエチルカプロエート、2−メルカプトエチルタレート、2−メルカプトエチルオクタノエート、および1以上の前記逆メルカプトエステルを含む混合物が挙げられる。好適なメルカプトエステルとしては、例えば、ステアリルチオグリコレート、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジエチレングリコールビス(チオグリコレート)、および前記メルカプトエステルの1以上を含む混合物が挙げられる。
【0041】
メルカプタン含有有機化合物の量は、用途によって変わり、ハロゲン含有ビニルポリマー処方、処理方法、意図される用途等の検討材料に応じて当業者により容易に決定される。一般に、メルカプタン含有有機化合物、潜在メルカプタン、またはその混合物の好適な量は、安定化されたポリマー組成物の合計重量基準で0.1phr〜5phr、または0.1phr〜2phrである。
【0042】
任意に、安定剤は、他の補助安定剤、例えばエポキシ化合物、金属安定剤、ホスファイト、立体障害ターシャリーアミンをはじめとする窒素含有安定剤、他の非金属安定剤、ポリオール、ゼオライト、ドーソナイト、および前記補助安定剤の1以上を含む混合物を包含する。
【0043】
好適なエポキシ化合物としては、例えば、エポキシ化油、例えば大豆油、ラード油、オリーブ油、アマニ油、ピーナッツ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、キリ油、綿実油、および前記エポキシ化合物の1以上を含む混合物が挙げられる。他の好適なエポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリン/ビスフェノールA樹脂、ブトキシプロピレンオキシド、グリシジルエポキシステアレート、エポキシ化α−オレフィン、エポキシ化グリシジルソイエート、エポキシ化ブチルトルエート、グリシドール、ビニルシクロヘキセンジオキシド;レゾルシノールのグリシジルエーテル、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、グリセリン、ペンタエリスリトール、およびソルビトール;アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、シクロヘキサンオキシド、4−(2,3−エポキシプロポキシ)アセトフェノン、メシチルオキシドエポキシド、2−エチル−3−プロピルグリシドアミン、および前記エポキシ化合物の1以上を含む混合物が挙げられる。エポキシは30phrまでの量で存在することができる。
【0044】
適当なホスファイトとしては、例えば、トリオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリ(テトラデシル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、またはトリオレイルホスファイトなどのトリアルキルホスファイト;トリフェニルホスファイト、トリクレシルホスファイト、またはトリス−p−ノニルフェニルホスファイトなどのトリアリールホスファイト;フェニルジデシルホスファイトまたは(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ジドデシルホスファイトなどのアルキルジアリールホスファイト;ジアルキルアリールホスファイト;トリチオヘキシルホスファイト、トリチオオクチルホスファイト、トリチオラウリルホスファイト、またはトリチオベンジルホスファイトなどのチオホスファイト;または前記ホスファイトの任意の1以上を含む混合物が挙げられる。ホスファイトは、例えば0.01〜10phr、または0.05〜5phr、または0.1〜3phrの量で使用できる。
【0045】
金属安定剤は、亜鉛塩以外の金属塩および有機金属塩であり、例えば、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、スズ、マグネシウム、コバルト、ニッケル、チタン、アンチモン、またはアルミニウムの酸化物、水酸化物、硫化物、硫酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩、フェナート、過塩素酸塩、カルボン酸塩、および金属の炭酸塩を包含する。好ましい金属安定剤としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、オクタン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ジ(ノニルフェノール酸)バリウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ヒドロタルサイト、および前記金属塩の1以上を含む混合物が挙げられる。金属ベースの安定剤は、ハロゲン含有ポリマーの合計重量基準で2重量%まで、または0.1重量%〜1重量%の量で存在することができる。
【0046】
好ましい有機金属安定剤としては、有機スズカルボン酸塩およびメルカプチドが挙げられる。好適な有機金属安定剤としては、例えば、ブチルスズトリスドデシルメルカプチド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジドデシルメルカプチド、ジアンヒドリドトリスジブチルスタンナンジオール、カルボキシメルカプタールのジヒドロカルボンスズ塩、および前記有機金属安定剤の1以上を含む混合物が挙げられる。メルカプトアルキルカルボキシレートおよび/またはアルキルチオグリコレートの有機スズメルカプチドのモノスルフィドおよび/またはポリスルフィド、および前記の1以上を含む混合物も有機金属安定剤として好適である。
【0047】
好適な窒素含有安定剤としては、例えば、ジシアンジアミド、ヒンダードアミン、メラミン、尿素、ジメチルヒダントイン、グアニジン、チオ尿素、2−フェニルインドール、アミノクロトネート、N−アルキルおよびN−フェニル置換マレイミド、1,3−ジアルキル−6−アミノ−ウラシル誘導体、ピロロジアジンジオン、および前記窒素ベースの安定剤の1以上を含む混合物が挙げられる。窒素ベースの安定剤は、10phrまでの量で存在することができる。有用な立体障害アミンとしては、例えば、モノマー、オリゴマー、またはポリマー系2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物が挙げられる。ピペリジン部分の窒素は、例えば、水素、C1−12アルキル、C3−8アルケニル、またはC7−12アルアルキルで置換されていてもよい。ピペリジン部分のC−4炭素は、例えば、水素または酸素または窒素含有基で置換されていてもよい。適当な2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−ベータ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)サクシネート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルアセテート、トリメリット酸トリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステルなどが挙げられる。ピペリジンは、例えば0.01〜1phrの量で使用できる。
【0048】
他の好適な非金属安定剤としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオプロピオネート、ジベンジル−3,3’−チオジプロピオネート、ジシクロヘキシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジオレイル−3,3’−チオジプロピオネート、ジデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジエチル−3,3’−チオジプロピオネート、3−メルカプトプロピオン酸のラウリルエステル、3−ラウリルメルカプトプロピオン酸のラウリルエステル、3−オクチルメルカプトプロピオン酸のフェニルエステル、および前記非金属安定剤の1以上を含む混合物が挙げられる。後者の非金属安定剤は、0.75phrまで、または0.01phr〜0.75phrの量で存在することができる。
【0049】
適当なポリオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ビストリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、イノサイト、ポリビニルアルコール、ソルビトール、マンニトール、ラクトース、テトラメチロールシクロヘキサノール、テトラメチロールシクロピラノール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、または前記の少なくとも1つを含む混合物が挙げられる。好ましいポリオールとしては、例えば、ソルビトールおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。ポリオールは、例えば0.01〜20phr、または0.1〜10phrの量で使用できる。
【0050】
本明細書で使用される場合、ハロゲン含有ビニルポリマーなる用語は、ハロゲンが炭素原子に直接結合しているハロゲン含有ポリマーを意味する。ハロゲン含有ポリマーとしては、例えば、14〜75重量%、例えば、27重量%の塩素を有する塩素化ポリエチレン、塩素化天然および合成ゴム、塩酸ゴム、塩素化ポリスチレン、塩素化ポリ(塩化ビニリデン)、塩素化ポリ(塩化ビニル)、ポリ(臭化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、他の塩化ビニルポリマー、ならびに上記のポリマーの1以上を含む混合物が挙げられる。ポリ塩化ビニル(PVC)として知られている塩化ビニルポリマーは、塩化ビニルモノマー単独または好ましくは全モノマー重量基準で少なくとも70重量%の塩化ビニルを含むモノマー反応物の混合物から製造される。適切なコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、塩化ビニリデン、トリクロロエチレン、1−フルオロ−2−クロロエチレン、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アルファ−クロロアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、スチレン、ビニルケトン、例えばビニルメチルケトンおよびビニルフェニルケトン、アクリロニトリル、クロロアクリロニトリル、二酢酸アリリデン、二酢酸クロロアリリデン、ならびにビニルエーテル、例えばビニルエチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、1モルのアクロレインと1モルのエチレングリコールジビニルエーテルとの反応によって調製されるビニルエーテル、ならびに上記のコモノマーの1以上を含む混合物が挙げられる。適切なハロゲン含有ビニルコポリマーとしては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル(87:13)、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸(86:13:1)、塩化ビニル−塩化ビニリデン(95:5);塩化ビニル−フマル酸ジエチル(95:5)、塩化ビニル−アクリル酸2−エチルヘキシル(80:20)、および上記のコポリマーの1以上を含む混合物が挙げられる。
【0051】
硬質ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、可塑剤を含有しないものである。半硬質ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、ハロゲン含有ビニルポリマー100重量部あたり、1〜25重量部の可塑剤を含有する。軟質ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、ハロゲン含有ビニルポリマー100重量部あたり、25〜100重量部の可塑剤を含有する。適切な可塑剤としては、例えば、その中に8〜12個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基が存在するポリ酸のアルキルエステルが挙げられる。アルキルエステルの適切なアルキル基としては、例えば、n−オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、および上記のアルキル基の1以上を含む混合物が挙げられる。アルキルエステルのための適切なポリ酸としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ホスフェートなどが挙げられる。ポリマー性可塑剤も適している。
【0052】
任意に、ハロゲン含有ポリマー組成物は、他の従来の添加剤、例えば、酸化防止剤、潤滑剤、充填剤、顔料、耐衝撃性改良剤、発泡剤、加工助剤、染料、紫外線吸収剤、圧縮剤(densifying agents)、殺生物剤、および上記の添加剤の1以上を含む混合物を含んでいてもよい。上記の添加剤の適切な量は、組成物の所望の最終特性および最終用途に応じて、当業者により容易に決定される。一般的に、それぞれの添加剤は、0.01〜10phr、特に0.1〜5phrの量で存在する。
【0053】
適切な酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、p−アミノフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス[o−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]スルフィド、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、3−ヒドロキシ−4−(フェニルカルボニル)フェノキシ酢酸のn−ドデシルエステル、t−ブチルフェノール、および上記の酸化防止剤の1以上を含む混合物が挙げられる。
【0054】
適切な潤滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、脂肪酸の塩、低分子量ポリエチレン(即ち、ポリエチレンワックス)、脂肪酸アミド(即ち、ラウリミドおよびステアルアミド)、ビスアミド(即ち、デカメチレン、ビスアミド)、脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸グリセリル、アマニ油、ヤシ油、オレイン酸デシル、トウモロコシ油、綿実油など)、および上記の潤滑剤の1以上を含む混合物が挙げられる。適切な充填剤としては、例えば、焼成クレー、炭酸カルシウム、タルク、および上記の充填剤の1以上を含む混合物が挙げられる。適切な顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、および上記の顔料の1以上を含む混合物が挙げられる。
【0055】
一般的に、上記した熱安定剤組成物は、1以上のヒドロタルサイト;および1以上の亜鉛メルカプチド、1以上のメルカプタン含有有機化合物および1以上のカルボン酸亜鉛の混合物、または1以上の前記安定剤を含む混合物を提供するように配合された一成分系(one−part)混合物として提供される。他の任意の添加剤も、この一成分系混合物中に存在し得るので、それぞれの成分の特定量は、一成分系混合物の全重量基準で、0.1〜99.9重量パーセント、好ましくは1.0〜99.0重量パーセントで変えることができる。熱安定性における相乗的な改善をもたらすために有効な特定量は、当業者によって容易に決定される。
【0056】
ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、低剪断または高剪断下でブレンドすることによって調製することができる。同様に、熱安定剤組成物は、適切なミルまたはミキサー内で、その成分およびポリマーを混合することにより、またはポリマー全体への安定剤の均一な分布をもたらす他の方法によりハロゲン含有ビニルポリマー組成物中に組み入れることができる。相溶性および物理的状態(即ち、液体または固体)に応じて、所望の性能特性を有する均一な安定化されたポリマー組成物を形成するために、ブレンドの成分は加熱を必要とする場合がある。
【0057】
安定化されたハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、物品を造形するための種々の技術、例えば、成形、押出、および射出成形を用いて、種々の硬質物品、例えば、家のサイディング、窓枠およびパイプを成形するために使用することができる。
【0058】
一具体例において、ヒドロタルサイトおよび亜鉛メルカプチドを含む相乗組み合わせは向上された長期色彩安定性を、好ましくは改善された初期色彩とともに提供することができる。もう一つ別の具体例において、ヒドロタルサイト、メルカプタン含有有機化合物、およびカルボン酸亜鉛を含む相乗組み合わせは長期色彩安定性を、好ましくは改善された初期色彩と共に提供することができる。
【0059】
前記のような1以上のヒドロタルサイト;および1以上の亜鉛メルカプチドを含む安定剤組成物は、加工中または長期使用中の劣化および変色からハロゲン含有ビニルポリマーを保護するために相乗的に作用する。別の具体例において、前記のような1以上のヒドロタルサイト、1以上のメルカプタン含有有機化合物、および1以上のカルボン酸亜鉛を含む安定剤組成物は、加工中または長期使用中の劣化および変色からハロゲン含有ビニルポリマーを保護するために相乗的に作用する。本発明をさらに以下の非制限的実施例により説明する。
【実施例】
【0060】
本発明をさらに、次の実施例により説明する。ここにおいて、熱安定性試験のためのPVC組成物を、高剪断下で、100重量部のPVC樹脂、顔料(0.2phr)、離型剤(0.5〜2phr)、補助安定剤(1〜10phrのエポキシ化大豆油)、および潤滑剤(0.2〜2.0phr)を、表に示す安定剤組成物と一緒に混合することによって調製した。次いで、混合された組成物を、ツーロールミル内で390°F(199℃)で加熱し、表示した時間間隔でサンプルを取り出し、チップに形成した。それぞれのチップの色変化(dEによって反映される)および黄色度(YI)を、Hunter Labs(L,a,b)比色計を使用して測定した。
【0061】
実施例1〜4は、ヒドロタルサイトと亜鉛メルカプチドの組み合わせを使用して得られる相乗効果を示す。
【表3】

【0062】
表1に示すように、潜在メルカプタンおよび塩化亜鉛の組み合わせと比較した場合に、亜鉛メルカプタンとヒドロタルサイトの組み合わせは、向上された色彩、特に初期色彩を示す。加えて、初期色彩は、亜鉛メルカプチドの量を一定に保ちつつヒドロタルサイトの量を増大させることにより向上される。
【0063】
実施例5〜8は、ヒドロタルサイト、メルカプトエステルおよびカルボン酸亜鉛の組み合わせを用いて得られる相乗効果を示す。
【表4】

【0064】
表2に示すように、メルカプトエステル、カルボン酸亜鉛、およびヒドロタルサイトの組み合わせは、潜在メルカプタンと塩化亜鉛の組み合わせと比較した場合に、向上された色彩、特に初期色彩を示す。加えて、初期色彩は、メルカプトエステルおよびカルボン酸亜鉛の量を一定に保ちつつ、ヒドロタルサイトの量を増大させることにより向上される。
【0065】
本明細書において開示される全ての範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン含有ビニルポリマーおよび安定剤組成物を含む安定化されたポリマー組成物であって、
該安定剤組成物が、
ヒドロタルサイト;および
亜鉛メルカプチド、メルカプタン含有有機化合物とカルボン酸亜鉛の混合物、または前記安定剤の1以上を含む混合物;
を含み、
ここにおいて、亜鉛メルカプチドは、
式2の亜鉛メルカプトエステル
【化1】

(式中、各Rは独立して、ヒドロカルビル基であり、bは1または2である);
式3の亜鉛メルカプトエステル
【化2】

(式中、c=0または1であり、d=1または2であり、各R’は独立して、メチルまたは−C(=O)OR”であり、各R”は独立して−[(CH{C(R)(R2*)}CHO)3*](式中、各Rは独立して、−H、C1−18アルキルまたはC1−18ヒドロキシ置換アルキルであり、各R2*は−OH、C1−18ヒドロキシ置換アルキル、または−OC(=O)R4*であり、各R3*は−HまたはC1−18アルキルであり、各R4*はアルキルまたはアルケニルであり、e=0または1であり、f=1〜4である。ただし、fが1より大きい場合、e=0であるとする)である);または
式4の亜鉛メルカプトアルキルカルボン酸エステル
【化3】

(式中、R5*はC1−18アルキル、C1−18アルケニル、またはC6−12アリール基であり、g=1〜6である);または
前記亜鉛メルカプチドの1以上を含む混合物である、
安定化されたポリマー組成物。
【請求項2】
メルカプタン含有有機化合物が、式2:
【化4】

(式中、各Rは独立してヒドロカルビル基であり、bは1または2である)の亜鉛メルカプトエステルを含む請求項1記載の安定化されたポリマー組成物。
【請求項3】
亜鉛メルカプチドが、亜鉛ビス(2−エチルヘキシルチオグリコレート)、亜鉛ビス(オクチルメルカプトプロピオネート)、亜鉛ビス(オクタデシルチオグリコレート)、亜鉛ビス(オクタデシルメルカプトプロピオネート)、亜鉛ビス(エチルチオグリコレート)、亜鉛ビス(2−メルカプトエチルステアレート)、亜鉛(2−メルカプトエチルカプロエート)、亜鉛ビス(2−メルカプトエチルタレート)、亜鉛ビス(2−メルカプトカプリレート)、または前記亜鉛メルカプチドの1以上を含む混合物である請求項1記載の安定剤組成物。
【請求項4】
ポリオールをさらに含む請求項1記載の安定剤組成物。
【請求項5】
組成物が0.05〜5重量部のヒドロタルサイト、0.1〜5重量部のメルカプタン含有有機化合物;および0.01〜0.2重量部のカルボン酸亜鉛の形態の亜鉛(すべて、ハロゲン含有ビニルポリマー100部に基づく)を含む請求項1記載の安定化されたポリマー組成物。
【請求項6】
組成物が0.05〜5重量部のヒドロタルサイト、および0.01〜0.2重量部の亜鉛メルカプチドの形態の亜鉛(全て、ハロゲン含有ビニルポリマー100部に基づく)を含む請求項1記載の安定化されたポリマー組成物。
【請求項7】
ヒドロタルサイト;および
亜鉛メルカプチド、メルカプタン含有有機化合物とカルボン酸亜鉛の混合物、または前記安定剤の1以上を含む混合物;
を含む安定剤組成物
(ここにおいて、亜鉛メルカプチドは
式2の亜鉛メルカプトエステル
【化5】

(式中、各Rは独立して、ヒドロカルビル基であり、bは1または2である);
式3の亜鉛メルカプトエステル
【化6】

(式中、c=0または1であり、d=1または2であり、各R’は独立して、メチルまたは−C(=O)OR”であり、各R”は独立して−[(CH{C(R)(R2*)}CHO)3*](式中、各Rは独立して、−H、C1−18アルキルまたはC1−18ヒドロキシ置換アルキルであり、各R2*は−OH、C1−18ヒドロキシ置換アルキル、または−OC(=O)R4*であり、各R3*は−HまたはC1−18アルキルであり、各R4*はアルキルまたはアルケニルであり、e=0または1であり、f=1〜4である。ただし、fが1より大きい場合、e=0であるとする)である);または
式4の亜鉛メルカプトアルキルカルボン酸エステル
【化7】

(式中、R5*はC1−18アルキル、C1−18アルケニル、またはC6−12アリール基であり、g=1〜6である);または
前記亜鉛メルカプチドの1以上を含む混合物である)。
【請求項8】
ハロゲン含有ビニルポリマーを安定化させる方法であって、ハロゲン含有ビニルポリマーに請求項7記載の安定剤組成物を添加することを含む方法。
【請求項9】
請求項7記載の組成物および/または請求項7記載の組成物の分解生成物を含む物品。
【請求項10】
物品が、パイプ、窓枠、サイディング、ビン、壁装材または包装フィルムである請求項9記載の物品。

【公開番号】特開2006−104477(P2006−104477A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−294491(P2005−294491)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】