説明

ハロテノイル−シクロプロパン−1−カルボン酸誘導体

式(I)(式中、Rは、ヒドロキシ、直鎖または分岐鎖のC1〜C6アルコキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、−N(R12)であり、R1は、水素、直鎖または分岐鎖のC1〜C4アルキル、ベンジル、フェニルであり、R2は、水素、または直鎖もしくは分岐鎖のC1〜C4アルキル基であるか、あるいはRは、直鎖または分岐鎖のC1〜C4アルキル基またはアシル基でアルキル化またはアシル化された1以上のヒドロキシ基を場合によっては有する、グリコシド基、またはアスコルビン酸からの第一級アルコキシ基であり、Xは、ハロゲン原子であり、nは、1または2である)の化合物は、長期持続性のキヌレニン3−モノオキシゲナーゼ(KMO)阻害剤であり、また強力なグルタミン酸(GLU)放出阻害剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期持続性キヌレニン3−モノオキシゲナーゼ(KMO)阻害剤としての、強力なグルタミン酸(GLU)放出阻害剤であるハロテノイル−シクロプロパン−1−カルボン酸誘導体に関する。
【0002】
発明の背景
トリプトファン分解のキヌレニン経路の代謝産物は、いくつかのヒト脳の病気の病理発生において重要な役割を演じることが示唆されてきた。この経路における主要代謝産物の1つ、キヌレニン(KYN)は、アミノ転移されてキヌレン酸(KYNA)を生成するか、またはヒドロキシ化されてフリーラジカル発生体3−OH−KYNとなるかのどちらかである。後者はさらに分解されて、興奮毒性を有するNMDA受容体アゴニスト、QUIN(3−ヒドロキシアントラニル酸オキシゲナーゼ)となる。3−OH−KYNとQUINは相乗的に作用する、即ち、3−OH−KYNはQUINの興奮毒性作用を有意に強化する。3−OH−KYN(キヌレニン3−モノオキシゲナーゼ、KMO;E.C.1.14.13.9)、QUIN、およびKYNA(キヌレニンアミノトランスフェラーゼ(KAT I および II))の生合成を担う哺乳動物脳中の鍵酸素が特性決定され、クローニングされている。KMOはフラビンを含む酵素であって、肝臓、胎盤、脾臓、腎臓、および脳のミトコンドリア外膜に局在する。
【0003】
幾つかの研究室からの研究が、KYN経路の代謝が3−OH−KYN/QUIN枝路から離れて、脳で神経保護剤KYNAの生成が増加すると、神経保護が起こるという証拠を提供している。
【0004】
脳内のKYNA含量が上昇することは、KMOが神経保護の分野の薬剤開発の新しい分子標的であることを明らかにするので、特に興味深い。この作用機構は、KMOの阻害が神経毒3−OH−KYNおよびQUINの合成を遮断し、代謝阻害の上流にあるKYNの蓄積を引き起こし、このKYNの代謝を神経保護剤KYNAの方向へ向け直すことである。
【0005】
KMO発現が、炎症性症状中または免疫刺激後に増大することが報告されていることは注目に値する(Saito et al.1993, J.Biol.Chem. 268, 15496-15503; Chiarugi et al. 2001, Neuroscience 102; 687-695)。その活性の生産物である3−OH−KYNは、ビタミンB−6が欠乏した新生ラットの脳で蓄積し(Guilarte and Wagner, 1987, J.Neurochem.49, 1918-1926)、またこれを一次培養したニューロン細胞に加えるか(Eastman and Guilarte, 1989, Brain Res. 495, 225-231)、脳に局所的に注入すると(Nakagami et al. 1996, Jpn. J. Pharmacol. 71, 183-186)、細胞毒性を引き起こす。最近、比較的低濃度(ナノモル濃度)の3−OH−KYNが、一次ニューロン培養のニューロンのアポプトシス細胞死を引き起こす可能性があることが報告された。構造活性研究は、実際、3−OH−KYNおよび他のo−アミノフェノールが、キノンイミンへ転換されることから始まる酸化反応を受け、このプロセスが、酸素に由来するフリーラジカルの付随的産生を伴うことになる可能性があることを示している(Hiraku et al. 1995 Carcinogenesis, 16,349-356)。このような反応性種が虚血性のニューロン死の病因に関わっていることが最近数年広く研究され、酸素に由来するフリーラジカルとグルタミン酸が媒介する神経伝達が、虚血性ニューロン死の発症に共同して働いていることが示されている(Pellegrini-Giampietro et al. 1990, J. Neurosci. 10, 1035-1041)。
【0006】
さらに最近、KMO活性が特に虹彩の毛様体で上昇し、新しく産生された3−OH−KYNが水晶体の液体中に分泌されることが示された。水晶体中の3−OH−KYNの過剰の蓄積は、白内障を発症させる可能性があり、KMO阻害剤は、この蓄積を阻止する可能性がある(Chiarugi et al. 1999; FEBS Letters 453; 197-200)。
【0007】
すでに述べたように、KMO活性は、トリプトファンの異化とキノリン酸(QUIN)の合成に必要である。QUINは、NMDA受容体のサブグループのアゴニストであって(Stone and Perkins, 1981, Eur. J. Pharmacol. 72, 411-412)、脳領域に直接注入されると、ニューロン細胞体の大部分を、アンパサン型繊維とニューロン末端を残して、破壊する(Schwarcz et al. 1983, Science, 219, 316-318)。QUINは、NR2CまたはNR2Dサブユニットを含むNMDA受容体複合体の比較的弱いアゴニストであるが、その一方で、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体複合体とは比較的高い親和性を持って相互作用する(Brown et al. 1998, J. Neurochem. 71, 1464-1470)。QUINの線条体内注入後に見出される神経毒の様相は、ハンチントン病患者の大脳基底核で見出される様相と非常によく類似している:固有の線条体ニューロンの大部分は破壊される一方で、NADH−ジアフォラーゼ染色ニューロン(これは現在一酸化窒素合成酵素を発現できると考えられている)と、神経ペプチドYを含むニューロンは、軸索末端およびアンパサン型繊維と共に生き残る(Beal et al. 1986, Nature 321,168-171)。
【0008】
生体外では、この化合物の神経毒作用は様々なモデル系で研究され、多様な結果が出されている:器官型皮質線条体培養物を、マイクロモル濃度以下のQUINに慢性的に曝すと、病理を示す組織学的兆候が引き起され(Whetsell and Schwarcz, 1989, Neurosci. Lett. 97,271-275)、同様な結果が、培養ニューロン細胞を慢性的に曝した後にも得られている(Chiarugi et al 2001, J. Neurochem. 77, 1310-1318)。
【0009】
実験的アレルギー性脳炎(Flanagan et al. 1995, J. Neurochem. 64, 1192-1196)、バクテリアおよびウイルス感染(Heyes et al. 1992, Brain 115, 1249-1273; Espey et al. 1996, AIDS, 10, 151-158)、前脳の広範な虚血または脊髄の損傷のような、炎症性の神経学的障害のモデルにおいて、脳のQUINのレベルが極度に上昇する(Heyes and Nowak, 1990 J. Cereb. Blood Flow Metab. 10, 660-667 ; Blight et al. 1995, Brain 118,735-752)。この上昇した脳のQUIN濃度は、興奮性毒の循環濃度が上昇したためか、活性化されたミクログリア内または侵潤しているマクロファージ内での新たな合成が増加するためか、のどちらかの可能性がある。レトロウイルスに感染したマカクでは、脳の増大したQUIN含量の大部分(約98%)は、局所産生によるものであると提案されている。事実、IDO、KMOおよびキヌレニナーゼの活性のロバストな増大が、脳の炎症領域で発見されている(Heyes et al. 1998; FASEB J. 12, 881-896)。
【0010】
これまでの研究は、脳のKYNA含量を増加させることのできる薬剤は、鎮静、軽度の痛覚消失、痙攣閾値の上昇、および興奮毒性または虚血による損傷に対する神経保護を引き起こすことを示している(Carpenedo et al 1994 Neuroscience 61, 237-244; Moroni et al. 1999 Eur. J. Pharmacol. 375, 87-100; Cozzi et al. 1999 ; J. Cereb. Blood Flow & Metab. 19, 771-777)。
【0011】
上に報告された証拠に加えて、最近、脳内KYNA産生を増加させることのできる多数の化合物が、脳の細胞外間隙のグルタミン酸(GLU)濃度を減少させることによって、GLUが媒介する神経伝達のロバストな減少を引き起こす可能性があることが示されている(Carpenedo et al. 2001, Eur. J. Neuroscience 13,2141-2147)。
【0012】
したがって、KMO阻害活性を持つ化合物は、多数の変性性または炎症性の症状であって、QUINと3−OH−KYNの脳内合成の増加を伴い、ニューロンの細胞損傷を引き起こす可能性がある病状の治療に用いることができる。これらの化合物は実際、3−OH−KYNとQUINの双方の合成を、KMO酵素を阻害することによって阻止し、それに伴ってKYNAの脳内増加を引き起こす。
【0013】
KMO阻害活性を持つ、2−置換ベンゾイル−シクロアルキル−1−カルボン酸誘導体が、WO 98/40344に開示されている。特に、前記化合物の一つ、2−(3,4−ジクロロベンゾイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸は、KMO阻害に対するIC50が0.18μMであるという興味深い活性を持つことが報告されたが、その効能と薬物動態学的性質は満足のいくものではなかった。
【0014】
発明の記載
今、ハロテノイル−シクロプロパン−1−カルボン酸のいくつかの誘導体が、KMOおよびGLU放出に対して、好ましい長期持続性活性を持つことが見出された。
したがって、本発明は、式(I)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rは、ヒドロキシ、直鎖または分岐鎖のC1〜C6アルコキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、−N(R12)であり、R1は、水素、直鎖または分岐鎖のC1〜C4アルキル、ベンジル、フェニルであり、R2は、水素、または直鎖もしくは分岐鎖のC1〜C4アルキルであるか、あるいはRは、直鎖または分岐鎖のC1〜C4アルキル基またはアシル基でアルキル化またはアシル化された1以上のヒドロキシ基を場合によっては有する、グリコシド残基、またはアスコルビン酸からの第一級アルコキシ残基であり;
Xは、フッ素、塩素または臭素から成る群から選ばれるハロゲン原子、好ましくは塩素であり;
nは、1または2の整数である)
の化合物、および、薬学的に許容できるその塩を提供する。
「グリコシド残基」という言葉は、単糖、二糖、またはオリゴ糖を意味する。
【0017】
Rがグリコシド残基である式(I)の化合物の中で、Rは、好ましくは、場合によってはアルキル化またはアシル化されたβ−D−グルコピラノシルオキシ残基または6−デオキシガラクトピラノシルオキシ残基である。ガラクトピラノシル残基が特に好ましい。
【0018】
好ましい式(I)の化合物は、Rが、ヒドロキシ、メトキシまたはエトキシであり、Xが塩素である化合物である。特に好ましいものは、以下の中から選ばれる式(I)の化合物である:
2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸、
メチル−2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
エチル−2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
2−(3−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸、
メチル−2−(3−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
エチル−2−(3−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
2−(2−クロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸、
メチル−2−(2−クロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
エチル−2−(2−クロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
2−(3−クロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸、
メチル−2−(3−クロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
エチル−2−(3−クロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
2−(2,3−ジクロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸、
メチル−2−(2,3−ジクロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
エチル−2−(2,3−ジクロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
2−(2,3−ジクロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸、
メチル−2−(2,3−ジクロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
エチル−2−(2,3−ジクロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート。
【0019】
Rがヒドロキシである式(I)の化合物の薬学的に許容できる塩は、無機塩基、例えばアルカリ金属塩基、特にナトリウムもしくはカリウム塩基、またはアルカリ土類金属塩基、特にカルシウムもしくはマグネシウム塩基との塩、または、薬学的に許容できる有機塩基との塩を含む。
【0020】
本発明は、その範囲に、式(I)の化合物のすべての純粋で可能な異性体およびそれらの混合物を含む。特に、好ましいものはトランス異性体、より好ましいものはS,S−異性体である。
【0021】
本発明はさらに、有効成分として式(I)の化合物を含む医薬組成物およびキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤として使用するための薬品を調製するための、化合物(I)の使用に関する。
【0022】
Rが、ヒドロキシ、メトキシ、またはエトキシである式(I)の化合物は、図式1に示す、次のステップを含む方法によって得ることができる。
a) ジメチル、またはジエチルシクロプロパンカルボキシラート(II)をモノ加水分解して、メチル、またはエチルシクロプロパンカルボキシラート(III)を得るステップ;
b) メチル、またはエチルシクロプロパンカルボキシラートを、N−メチル−N−メトキサミン塩酸塩処理により、式(IV)の化合物へ転換するステップ;
c) 化合物(IV)を、Xおよびnが上で定義した意味を持ち、X′が臭素またはヨウ素である式(V)の適切なグリニヤール化合物で処理して、Rがメトキシまたはエトキシである式(I)の化合物を得るステップ;
d) 化合物(I)をアルカリ加水分解して、Rがヒドロキシである式(I)の化合物を得るステップ。
【0023】
【化3】

【0024】
ステップa)は、化合物(II)を、メタノ−ルまたはエタノール中、還流させながら、NaOHまたはKOH、好ましくはKOHで処理することによって実施される。化合物(III)は、さらに精製することなく、次のステップに使用できる。
【0025】
ステップb)は、化合物(III)を、N−メチル−N−メトキシアミン塩酸塩、CBr4、ピリジン、PPh3、および塩化メチレン中、室温で反応させることによって実施される。反応は、化合物(IV)を55〜75%の収率で与える。
【0026】
ステップc)は、グリニヤール反応に適する溶媒、好ましくはTHF中、室温で実施することができる。より具体的には、メチル−、またはエチル−2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラートの調製の場合、ステップc)は、化合物(IV)をTHF中4−ブロモ−2−クロロ−チオフェンおよびマグネシウム粉末と反応させることによって実施される。4−ブロモ−2−クロロ−チオフェンは、Dettmeier et al, Angew Chem, Int. Ed. Engl. 1987, 26, 548 に記載された手順にしたがって、または2,3−ジブロモチオフェンを、酸性溶液、好ましくは酢酸中、還流させながらN−クロロスクシンイミドと反応させ、2,3−ジブロモ−5−クロロ−チオフェンを得て、これをブチルリチウムで処理し、加水分解する方法(図式2)によって調製される。
【0027】
【化4】

【0028】
この合成法は、カルボン酸からケトンを調製するきわめて効率的で安価な経路を代表しており、また、化合物(IV)の生成はラセミ化を起こさないので、光学活性の化合物にも適用できる。これによって、以下に実施例の中でより詳しく記載するように鏡像異性体的に純粋な化学式(I)の化合物を、無水コハク酸とl−またはd−メントールから従来の方法で得られる鏡像異性体的に純粋なジメチル、またはジエチルシクロプロパンカルボキシラートから出発して、得ることができる。
【0029】
ステップd)は、エステル加水分解に適した通常の方法を用いて実施される。本発明の好ましい形態によれば、加水分解は、ジオキサン中の水酸化カリウム水溶液中で実施される。
【0030】
Rがヒドロキシ、メトキシ、またはエトキシ以外である式(I)の化合物は、Rがヒドロキシ、メトキシ、またはエトキシである式(I)の化合物から、通常のエステルまたはアミドの調製方法によって得ることができる。
【0031】
Rがクリコシド、またはアスコルビン酸残基である式(I)の化合物は、Rがヒドロキシである式(I)の化合物と、適切に保護された糖またはアスコルビン酸の誘導体との反応を含み、場合によっては、その次に、糖またはアスコルビン酸誘導体ヒドロキシ基上に存在する保護基を取り除くことを含む方法によって調製される。
【0032】
適切な糖誘導体の例には、1,2,3,4−ジ−O−イソプロピリデン−ガラクトピラノース、1,2,3,4−ジ−O−イソプロピリデン−グルコピラノース、グルコピラノシルブロミドテトラアセタートまたはテトラベンゾアート、グルコピラノシルクロリドテトラアセタートまたはテトラベンゾアート、ガラクトピラノシルブロミドテトラアセタートまたはテトラベンゾアート、ガラクトピラノシルクロリドテトラアセタートまたはテトラベンゾアートなどが含まれる。好ましくは、Rがヒドロキシである式(I)の化合物を、無水溶媒中、不活性雰囲気、カルボニルジイミダゾールやジシクロヘキシルカルボジイミドなどのような縮合試薬の存在下、1,2,3,4−ジ−O−イソプロピリデン−ガラクトピラノースまたはグルコピラノースと反応させる。そして、得られた化合物を、ハロゲン化炭化水素、エーテル、脂肪族または芳香族炭化水素などの中で、例えばトリフルオロ酢酸またはトリクロロ酢酸のような有機酸で処理することによって、望みの化学式(I)の化合物に転換することができる。
【0033】
Rがヒドロキシである式(I)の化合物の薬学的に許容できる塩は、無機または有機塩基を用いる通常の方法によって得られる。
【0034】
式(I)の化合物は、強力なKMO阻害剤であり、経路に沿って生成される全ての神経活性化合物の生成を変性することができる。特に、これらは、QUINへと導く経路中の、3−OH−KYNおよびその代謝産物の生成を阻害する。より具体的には、本発明の化合物は、長期に持続する特に望ましい時間経過で、脳のKYNA含量を増加させ、興奮性グルタミン酸作動性神経伝達を減少させることができる。
【0035】
したがって、本発明の化合物は、多くの変性性または炎症性の症状であって、脳でのQUINや3−OH−KYNの合成の増大、またはGLU放出の増大を伴い、ニューロンの損傷を起こす可能性がある症状の処置に使用することができる。前記症状の例は以下を含む。
【0036】
パーキンソン症候群、ハンチントン舞踏病、アルツハイマー型老人性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む神経変性障害;
多発性硬化症(Chiarugi et al. Neuroscience 2001,102, 687- 695; Chiarugi et al. J. Leukoc. Biol. 2000, 68, 260-266 参照)、ギラン・バレー症候群およびその他の神経病変を含む、中枢および/または末梢神経系の炎症性障害;
マラリア、敗血症性ショックなどを含むウイルス(AIDSを含む:Heyes et al. Annals Neurol. 1991,29, 202-209 参照)、細菌、およびその他の寄生生物によって引き起こされる感染症;
免疫障害および生物学的応答を変性することを目的とした治療処置(例えばインターフェロンまたはインターロイキンの投与、Brown et al. Cancer Res. 1989, 49, 4941-4945 参照);
リンパ腫およびその他の悪性血液障害を含む腫瘍性の障害;
大発作および小発作てんかんの諸変異型および部分複雑てんかんを含む痙攣性障害(Carpenedo et al. 1994, Neuroscience 61, 237-244 参照);
卒中(局所性虚血)を含む虚血性障害;
心停止または心不全および出血性ショック(広域脳虚血)、一酸化炭素中毒、溺水(Cozzi et al. 1999, J. Cereb. Blood Flow Metab. l9, 771-777 参照);
脳と脊髄への外傷性損傷;
振せん症候群と種々の運動異常障害(ジスキネシア);
不安症、不眠症、鬱病および統合失調症を含む精神障害;
ニコチン常用癖(キヌレン酸はニコチン性受容体の拮抗剤である)。
【0037】
アルコール依存症、大麻、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸、モルヒネ、コカイン依存症を含む、他の常用癖障害(Albuquerque et al. 2001, J. Neurosci. 21, 7463-7473 参照);
白内障形成および眼の老化(Chiarugi et al. 1999; FEBS Letters 453, 197-200 参照)。
【0038】
考察した治療用途の場合、本発明の化合物は、経口投与、非経口投与、経粘膜投与、または局所的投与に適した医薬組成物の形で患者に投与されることになる。
【0039】
医薬品組成物は以下に述べる通常の方法に従って調製できる。
【0040】
例えば、固形経口の剤形は、活性化合物と共に次のものを含むことができる。それは、希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、スクロース、セルロース、コーンスターチ、ポテトスターチ;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムもしくはカルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤、例えばでんぷん、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;離解剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩、でんぷんグリコール酸ナトリウム;発泡剤;色素;甘味料;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩;ならびに一般に、医薬製剤に用いられる無毒で薬理学的に不活性な物質である。前記医薬製剤は、既知の方法で、例えば、混合、顆粒化、錠剤化、糖衣、または膜コーティングの方法によって製造することができる。
【0041】
経口投与用の液体分散剤は、例えばシロップ、乳剤、および懸濁液であることができる。
【0042】
シロップは、担体として、例えばサッカロース、またはサッカロースとグリセリンおよび/またはマニトールおよび/またはソルビトールを含むことができる。
【0043】
懸濁液および乳剤は、担体として、例えば、天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含んでもよい。
【0044】
筋肉内注射用の懸濁液または溶液は、薬学的に許容できる担体、例えば、滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、および場合によっては局所麻酔剤を含むことができる。静脈注射または輸液用の溶液は、担体として、例えば、滅菌水、等張食塩水、またはプロピレングリコ−ルを含んでもよい。
【0045】
坐薬は、薬学的に許容できる担体、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤、またはレシチンを含んでもよい。
【0046】
眼科用には、化合物は、滅菌した担体、普通は等張食塩水中の点眼薬として調製することができる。
【0047】
用量のレベルは患者の年令、体重、状態および投与経路に依存するが、それでも一般には一回当たり約10〜1000mgの投与量で、1日当たり1〜5回投与することになる。
【0048】
以下の実施例が本発明をより詳細に説明する。
【0049】
実施例
材料と方法
融点は、Buchi 535 ホットステージ装置で測定したが、修正していない。1H−NMRおよび13C−NMRスペクトルは、Brucker AC 200 スペクトロメーターで実施し、その化学シフトは、テトラメチルシランの低磁場側においてppmで表した。フラッシュクロマトグラフィーは、Merck社のシリカゲル(0.040〜0.063mm)上で実施した。トルエンはナトリウムから蒸留し;テトラヒドロフランはナトリウム/ベンゾフェノンから、次いで水素化アルミニウムリチウムから蒸留し;メタノールはマグネシウムから蒸留し;塩化メチレンは水素化アルミニウムリチウムから蒸留した。塩化オキサリルおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジンは使用前に蒸留した。イソブチルアルデヒド、ブロモクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、2,3−ジブロモチオフェンおよび2−クロロ−5−ブロモチオフェンは、Aldrich社の最上級品を購入し、精製しないで使用した。
【0050】
実施例1
(±)−trans−シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸モノメチルエステル
水酸化カリウム(814mg、14.5mmol)のメタノール溶液を、ジメチル(±)−trans−シクロプロパン−1,2−ジカルボキシラート2.09g(13.2mmol)のメタノール溶液に加えた。混合物を5時間還流してから、室温で冷まし、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。無機層を10%HClでpH2に酸性化し、再び酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、回転蒸発装置で濃縮した。粗生成物(1.32g、収率69%)を次のステップに用いた。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例2
(±)−trans−シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸モノエチルエステル
ジエチル(±)−trans−シクロプロパン−1,2−ジカルボキシラート(1.60g、8.53mmol)のエタノール(10ml)溶液に、水酸化カリウム(503mg、8.96mmol)のエタノール(5ml)溶液を一度に加え、反応混合物を5時間還流した。次に、室温に冷ました後、反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで3回抽出した。水層を10%HClで酸性化して、次にジエチルエーテルで抽出した。合わせた有機抽出液を飽和塩化ナトリウム溶液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を回転蒸発装置で除いた。粗生成物(1.10g、収率82%)を、さらに精製することなく、次の反応に用いた。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例3
メチル−(±)−trans−[2−(N−メトキシ−N−メチル)−アミノカルボニル]シクロプロパン−1−カルボキシラート
N−メトキシ−N−メチルアミン塩酸塩(0.955、9.84mmol)、ピリジン(0.88ml、9.84mmol)、四臭化炭素(3.27g、9.84mmol)およびトリフェニルホスフィンを、(±)−trans−シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸モノメチルエステル(1.29g、8.95mmol)の25mlジクロロメタン溶液に、次々と小分けにして加えた。
混合液をアルゴン雰囲気下、室温で14時間攪拌し、次に溶媒を留去した。残留物をジエチルエーテルに回収し、沈殿したホスフィンオキシドをろ別し、濾液を真空で濃縮した。粗残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーで精製し(溶離剤は、石油エーテル/酢酸エチル 7/3)、表記化合物1.03gを得た(収率61%)。
【0055】
【表3】

【0056】
実施例4
エチル(±)−trans−[2−(N−メトキシ−N−メチル)−アミノカルボニル]シクロプロパン−1−カルボキシラート
(±)−trans−シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸モノエチルエステル(1.10g、6.98mmol)の20ml塩化メチレン溶液に、N−メトキシ−N−メチルアミン塩酸塩(0.749g、7.68mmol)、ピリジン(620μl、7.68mmol)、四臭化炭素(2.547g、7.68mmol)を加え、次にトリフェニルホスフィン(2.014g、7.68mmol)を小分けにして加えた。反応混合物を、アルゴン雰囲気下で、室温で14時間攪拌し、次に真空で濃縮した。残留物をジエチルエーテルで回収し、沈殿した固体をろ過した。ろ液を真空で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーで精製し(石油エーテル/酢酸エチル=7/3)、表記化合物3.068gを得た(収率73%)。
【0057】
【表4】

【0058】
実施例5
メチル(±)−trans−2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート
2−クロロ−4−ブロモ−チオフェンから新しく調製したグリニヤール化合物の2M THF(2.5ml)溶液を、メチル−(±)−trans−[2−(N−メトキシ−N−メチル)−アミノカルボニル]シクロプロパン−1−カルボキシラート(250mg、1.34mmol)のTHF(1.5ml)溶液に0℃で加えた。混合物をアルゴン下の室温で14時間攪拌し、そのあとで、エタノール:10%HClの1:1溶液(4ml)を加えた。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を塩化ナトリウム飽和溶液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。
【0059】
溶媒を留去し、残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:石油エーテル/酢酸エチル 95/5)で精製して、表記化合物145mgを得た(収率44%)。
【0060】
【表5】

【0061】
実施例6
エチル(±)−trans−[2−(2−クロロ−4−テノイル)]−シクロプロパン−1−カルボキシラート
エチル(±)−trans−[2−(N−メトキシ−N−メチル)−アミノカルボニル]シクロプロパン−1−カルボキシラート(300mg、1.49mmol)のTHF(8ml)溶液に、0℃で、2−クロロ−4−ブロモチオフェンから新しく調製したグリニヤール試薬の2.0M THF溶液(2.1ml)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で0℃で2時間攪拌した。そのあと、エタノール:10%HClの1:1溶液8mlを加えた。2相を分離し、水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液を飽和塩化ナトリウム溶液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を回転蒸発装置で留去した。同じ量の試薬を用いて反応を2回繰り返した。集めた粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=95/5)で精製し、その結果、表記化合物0.565gを得た(収率49%)。
【0062】
【表6】

【0063】
実施例7
(±)−trans−2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸
水酸化カリウム(15mg、0.27mmol)の水溶液を、メチル(±)−trans−2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート(65mg、0.27mmol)のジオキサン溶液に加え、混合物を室温で5時間攪拌した。水(1ml)を加えた後、混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒は留去した。生成物をn−ヘキサンとで用いて細かく砕き、減圧下で濾過し、高真空ポンプで乾燥して、純粋な表記化合物37mgを得た(収率60%)。
【0064】
【表7】

【0065】
実施例8
(±)−trans−2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸
エチル(±)−trans−2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート(0.551g、2.13mmol)のジオキサン(15ml)溶液に、水酸化カリウム(1.175g、3.12mmol)の水(7ml)溶液を加えた。反応混合物を、室温で5時間攪拌した。次に、水5mlを加えて2相を分離し、水層を酢酸エチルで1回抽出した。水層を10%HClで酸性化し、次にジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機抽出物を飽和塩化ナトリウム溶液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を回転蒸発装置で除いた。粗生成物をn−ヘキサンとで細かく砕き、減圧下で濾過し、高真空ポンプで乾燥し、純粋な表記生成物0.426gを得た(収率87%)。
【0066】
【表8】

【0067】
実施例9
2,3−ジブロモ−5−クロロチオフェン
2,3−ジブロモチオフェン(25g、103mmol)の酢酸(100ml)溶液に、N−クロロスクシンイミド(14.5g、109mmol)を小分けにして加えた(小部分は室温で、またその後は還流して)。混合物を3時間還流してから、次に室温まで冷まし、水に注いだ。水層をエチルエーテルで抽出し、合わせた有機層をNaOH2Nで中性まで洗い、次に飽和塩化ナトリウム溶液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空下で留去し、約52%の2,3−ジブロモ−5−クロロチオフェンを含む残留物を真空下(10mmHg)で蒸留した。60%の表記生成物を含む画分(t=75〜85℃)を、そのまま次のステップに用いた。
【0068】
【表9】

【0069】
実施例10
4−ブロモ−2−クロロ−チオフェン
2.4Mブチルリチウムのヘキサン溶液(8.5ml)を、2,3−ジブロモ−5−クロロチオフェン(7.21g)のTHF(20ml)溶液に−78℃で加えた。添加が終わって10分後、混合物を室温まで放冷し、水10mlを加えた。水層をエチルエーテルで抽出し、次に、合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空下室温で留去した。残留物を真空下で蒸留し、表記化合物に富む画分を合わせ(2.26g)、そのまま使用した。
【0070】
【表10】

【0071】
実施例11
(−)−ジメンチルスクシナート
無水コハク酸(15.2g、0.152mol)およびl−メントール(47.5g、0.304mol)の乾燥トルエン(120ml)溶液に、電磁攪拌しながらp−トルエンスルホン酸(0.190g、1.04×10-3mol)を加えた。混合物を24時間還流して、理論量の水(2.73ml)を集めた。冷却した混合液を石油エーテル(200ml)で希釈し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、メタノールおよび水の2.5:1:2混合物(550ml)に注いだ。有機層を分離し、水層を石油エーテルで抽出した(3×100ml)。集めた有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗い(1×100ml)、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を回転蒸発装置で留去し、得られた粗生成物をメタノールから再結晶した。純粋な(−)−ジメンチルスクシナート54gが得られた(89%)。
【0072】
【表11】

【0073】
実施例12
(+)−ジメンチル(1S,2S)−シクロプロパン−1,2−ジカルボキシラート
ブチルリチウムの2.5Mヘキサン溶液(56.9ml、142.2mmol)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)180mlに加え、−20℃に冷却した。2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(24ml、142.2mmol)を10分間かけて滴下して加えた。得られたリチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド(LTMP)溶液を−78℃に冷却し、30分間攪拌した。(−)−ジメンチルスクシナート(26.75g、67.7mmol)のTHF(60ml)溶液を1時間かけて加えた。得られた黄色の溶液を1時間攪拌した。その後、ブロモクロロメタン(4.39ml、67.7mmol)を加え、反応混合物を2時間攪拌した。イソブチルアルデヒド(22.46ml、27.08mmol)を加えることによって反応を停止させた。さらに30分間攪拌した後、混合物を氷冷1N塩酸(250ml)に注ぎ、水層をジエチルエーテルで抽出した(3×150ml)。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム(250ml)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発装置を用いて濃縮した。残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=98/2)にかけた。追加のシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/ジエチルエ−テル=98/2)を実施して純粋な表記化合物を得た。
【0074】
【表12】

【0075】
実施例13
(+)−(1S,2S)−シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸
(+)−ジメンチル(1S,2S)−シクロプロパン−1,2−ジカルボキシラート(8.8g、21.62mmol)のメタノール(38ml)溶液に、水酸化カリウム(4.32g、mmol)水溶液(5ml)を加えた。混合物を60℃で4時間加熱し、その後室温に冷ました。反応混合物を水(40ml)で希釈し、ジエチルエーテルで抽出した(4×40ml)。水層は3N塩酸で酸性化し、塩化ナトリウムで飽和させ、ジエチルエーテルで抽出した(6×40ml)。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発装置を用いて濃縮した。表記化合物2.27gが昇華の後で得られた(収率80%)。
【0076】
【表13】

【0077】
実施例14
(+)−ジメチル(1S,2S)−シクロプロパン−1,2−ジカルボキシラート
(+)−(1S,2S)−シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸(2.2g、16.9mmol)の塩化オキサリル(35ml)溶液をアルゴン下で室温で4時間攪拌した。次に回転蒸発装置で塩化オキサリルを除き、油状の残留物を乾燥メタノール(100ml)に溶解した。攪拌を12時間続け、メタノールを蒸発させた。残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=85/15〜7/3)にかけ、(+)ジメチル(1S,2S)−シクロプロパン−1,2−ジカルボキシラート2.48gを得た(収率93%)。
【0078】
【表14】

【0079】
実施例15
(+)−(1S,2S)−シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸モノメチルエステル
水酸化カリウム(1.44g、25.72mmol)のメタノール溶液(13ml)を、(+)−ジメチル(1S,2S)−シクロプロパン−1,2−ジカルボキシラート(3.68g、23.25mmol)のメタノール(23ml)溶液に加えた。実施例1にしたがって反応させ、処理した後、表記化合物2.69gを得た(収率80%)。
【0080】
【表15】

【0081】
実施例16
メチル(1S,2S)−trans−[2−(N−メトキシ−N−メチル)−アミノカルボニル]−シクロプロパン−1−カルボキシラート
実施例3の手順に従い、(+)−(1S,2S)−シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸モノメチルエステルを出発物質として使用し、反応を4時間実施することにより、表記化合物を調製した。
収率:69%。
【0082】
【表16】

【0083】
実施例17
メチル(1S,2S)−trans−[2−(2−クロロ−4−テノイル)]−シクロプロパン−1−カルボキシラート
実施例5の手順に従い、実施例16の化合物(THF4ml中0.3g、1.60mmol)を、2−クロロ−4−ブロモチオフェンから新しく調製したグリニヤ−ル試薬2.4mlと反応させ、表記化合物0.124gを得た。
【0084】
【表17】

【0085】
実施例18
(1S,2S)−trans−[2−(2−クロロ−4−テノイル)]−シクロプロパン−1−カルボン酸
実施例6の手順に従い、実施例17の化合物0.065g(0.27mol)を水酸化カリウム(0.017g、0.30mmol)の水(1ml)溶液と反応させ、純粋な表記化合物0.049gを得た。
【0086】
【表18】

【0087】
実施例19
メチル(1S,2S)−trans−[2−(2−クロロ−5−テノイル)]−シクロプロパン−1−カルボキシラート
メチル(1S,2S)−trans−[2−(N−メトキシ−N−メチル)−アミノカルボニル]−シクロプロパン−1−カルボキシラート(0.150g、0.80mmol)のTHF(4ml)溶液に、0℃で、2−クロロ−4−ブロモチオフェンから新しく調製したグリニヤール試薬の1.0Mジエチルエーテル溶液(0.9ml)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下室温で1時間攪拌した。次に、1/1メタノール/10%HCl溶液6mlを加えた。2相を分離し、水層をジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機抽出物を飽和塩化ナトリウム溶液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を回転蒸発装置で除去した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=95/5)によって精製し、表記化合物0.060gを得た(収率31%)。
【0088】
【表19】

【0089】
実施例20
(1S,2S)−trans−[2−(2−クロロ−5−テノイル)]−シクロプロパン−1−カルボン酸
実施例19の化合物(0.055g、0.22mmol)のジオキサン(1ml)溶液に水酸化カリウム(0.017g、0.30mmol)の水(1ml)溶液を加えた。反応混合物を室温で4時間攪拌した。次に、水2mlを加え、2相を分離して水層を1回ジエチルエーテルで抽出した。水層を10%HClで酸性化し、その後ジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機抽出液を飽和塩化ナトリウム溶液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を回転蒸発装置で除去した。粗生成物をn−ヘキサンとで細かく砕き、減圧下でろ過し、高真空ポンプで乾燥した。純粋な表記化合物0.051gを得た(収率98%)。
【0090】
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


(式中、Rは、ヒドロキシ、直鎖または分岐鎖のC1〜C6アルコキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、−N(R12)であり、R1は、水素、直鎖または分岐鎖のC1〜C4アルキル、ベンジル、フェニルであり、R2は、水素、または直鎖もしくは分岐鎖のC1〜C4アルキルであるか、あるいはRは、直鎖または分岐鎖のC1〜C4アルキル基またはアシル基でアルキル化またはアシル化された1以上のヒドロキシを場合によっては有する、グリコシド残基、またはアスコルビン酸からの第一級アルコキシ残基であり;
Xは、フッ素、塩素、または臭素から成る群から選ばれるハロゲン原子、好ましくは塩素であり;
nは、1または2の整数である)
の化合物、および、薬学的に許容できるその塩。
【請求項2】
ハロゲン原子が塩素である、式(I)の化合物。
【請求項3】
nが1である、請求項1〜2記載の化合物。
【請求項4】
Rがヒドロキシである、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
Rがメトキシである、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
Rがエトキシである、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
Rが、場合によってはアルキル化またはアシル化されたβ−D−グルコピラノシルオキシ残基または6−デオキシガラクトピラノシルオキシ残基から選ばれるグリコシド残基である、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
Rがガラクトピラノシル残基である、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
Rがアスコルビン酸残基である、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸、
メチル−2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
エチル−2−(2−クロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
2−(2−クロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸、
メチル−2−(2−クロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
エチル−2−(2−クロロ−5−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
2−(2,3−ジクロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボン酸、
メチル−2−(2,3−ジクロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラート、
エチル−2−(2,3−ジクロロ−4−テノイル)−シクロプロパン−1−カルボキシラートから選ばれる化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項12】
KMO阻害剤として用いる医薬の調製のための、請求項1〜10のいずれか1項記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2006−509753(P2006−509753A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554463(P2004−554463)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013244
【国際公開番号】WO2004/048361
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505196819)ニューロン・ファーマシューティカルズ・ソチエタ・ペル・アチオニ (12)
【氏名又は名称原語表記】NEWRON PHARMACEUTICALS S.P.A.
【Fターム(参考)】