説明

ハングリー成形装置

【課題】ハングリー成形の本来の高い成形品質を確実に得ることを可能とする。
【解決手段】フィードシリンダー203の供給開口部203cから落下する原料の量を規制する原料供給規制手段を設けて、そのフィードシリンダー203の供給開口部203cから供給筒201の内部に落下する原料の量を適宜の量となるように調整し、原料の過多状態の発生のおそれを防止して供給筒201内における原料のカサ密度を好適状態に維持するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱原料の射出、押出又は中空成形を行う可塑化シリンダー内の加熱原料から発生するガス成分を分離する空隙を形成する構成を備えたハングリー成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出または押出、中空成形等を行う各種成形機には、例えば図7に示されているように、原料の可塑化部を構成する可塑化シリンダーDSが略水平に延在するように設けられている。この可塑化シリンダーDSの後端部分にはホッパHが上方に突出するように連結されており、そのホッパHの内部に蓄えられた、ペレット状や錠剤状または顆粒状等の各種形状に形成された流動性熱可塑性の固形原料Rが、前記ホッパHの下端に設けられた原料供給口Haから可塑化シリンダーDS内のフィードゾーンFAに対して、自重による自然落下により供給される構成になされている。この自重による自然落下によりフィードゾーンFAに供給された原料Rは、上記可塑化シリンダーDS内に配置されたメインスクリューMSの回転搬送作用によって、フィードゾーンFAからコンプレッションゾーンCAおよびメータリングゾーンMAに順次押し込まれていく(下記の非特許文献1参照)。
【0003】
このような一般の成形装置においては、上述した可塑化シリンダーDS内のスクリュー基端側のフィードゾーンFAからスクリュー先端側のメータリングゾーンMAに至るまでの全領域において原料Rが過密状態にて供給されるのが常識になっている。特に、可塑化シリンダーDSにベント口を有しない、いわゆるノンベント型の成形装置においては、可塑化シリンダーDSの内部が原料Rにより常時充填された状態、つまり「過食状態」となっている。このような「過食状態」では、原料Rが過密な状態となっていることから、当該原料Rに対する圧縮・加熱作用により発生したガス成分や水分が逃げ場を失った状態となってしまい、溶融能力以上に原料Rが過剰に強制供給されることとなる。そして、そのような強制供給の下で発生するストレス温度(剪断熱)が高くなるとともに、原料Rの抵抗によってモータトルクも上昇することになって必要な電力量が増大してしまう。
【0004】
この点をより具体的に説明すると、通常、樹脂の乾燥度合いは吸水率0.2WT%以下で「乾燥した」とされているが、これは1tonの樹脂で換算すると200mlの水分が含まれていることになる。すなわち、上述したように「過食状態」では残留水分やガスは高温高圧となって逃げ場がなくなってしまい、それらの残留水分やガスは、原料と一緒に金型に押出または射出されざるを得なくなる。その結果、モールドデポジットやボイド、ヒケ、シンクマークといった様々な成形不良を引き起こすこととなり、実際に生じている成形不良の大半は、上述したような「過食状態」に基づく水分やガスの混入に起因するものと考えられる。さらに、スクリューとシリンダーとの摩耗、特にシリンダーホッパ口に生じる異常摩耗は、溶融能力以上に材料が供給される「過食状態」という過酷な状況によって大きなダーメージを伴いつつ進行することも判明している。
【0005】
そこで、本願発明者は、上述したような過食状態の成形による悪影響を確実に解消し、良好な品質を有する成形品を容易かつ安定的に製造することができるようにしたハングリー成形方法及びハングリー成形装置を、例えば特許文献2において開示している。ハングリー成形装置では、例えば図8に示されているように、成形機1の可塑化シリンダー1aの原料供給口に接続された原料フィーダー機構2の供給筒2aの内部に、当該原料フィーダー機構2のフィードシリンダー2bに配置されたフィードスクリュー2cの移送作用によりカサ密度が粗の状態で原料を落下させることによって、前記可塑化シリンダー1aの内部に原料を堆積させることなく供給し、加熱原料から発生するガス成分を分離するためのガス分離空隙を前記可塑化シリンダーの内部に形成する構成になされている。
【0006】
このような構成を有するハングリー成形装置を用いて成形を行えば、射出等を行う際に成形機の可塑化シリンダー1aの内部で加熱された原料から発生するガス成分が、上述したように可塑化シリンダー1aの原料供給部分に形成されるガス分離空隙に向かって抜け出すことが可能となる。そして、そのガス分離空隙まで抜け出したガス成分は、当該可塑化シリンダー1の原料供給口1aと原料フィーダー機構2の供給筒2aとの接続部分に形成される内部空間を通って原料フィーダー機構2の供給筒2a内を上昇していき、その原料フィーダー機構2の供給筒2aに接続されたガス吸引管(図示省略)の内部に流入した後、当該ガス吸引管に設けられた適宜の吸引装置によって機外雰囲気中に排出されるようになっている。このようにしてガス成分を機外に排出させることによって、従来のような成形不良は画期的に改善されることとなり、安価で且つ高品質の成形品が容易に製造される。
【0007】
しかしながら、上述した原料フィーダー機構2のフィードシリンダー2bに接続されたホッパー2dの内部には、多量の原料が堆積状態で貯留される場合がある。その場合には、多量の原料の自重によりフィードシリンダー2b内の原料が押されてフィードスクリュー2cが回転していないときにもフィードシリンダー2bの供給開口部2eから供給筒2aに向かって原料が落下してしまうことがあり、供給筒2aに対する原料の供給量が過多となって当該供給筒2aの内部のカサ密度を適宜の祖の状態に維持することができなくなることがある。また、フィードシリンダー2bの内部が原料で充満状態となった際には、フィードスクリュー2cに対する負荷が過剰になって回転停止状態となることがある。このような場合においても、良好な品質を有する成形品が得られなくなるおそれがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「プラスチックス」2002.2月号、pp30、図2
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平07−140763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、原料フィーダー機構のフィードシリンダーから供給筒の内部に向かって落下される原料のカサ密度を好適な祖の状態に容易に維持することができ、良好な品質を有する成形品を容易かつ安定的に製造することができるようにしたハングリー成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明では、加熱原料の射出、押出又は中空成形を行う可塑化シリンダーの原料供給口に原料フィーダー機構の供給筒が接続され、その原料フィーダー機構に設けられたフィードシリンダーの供給開口部から前記供給筒の内部に向かって原料をカサ密度が粗の状態で落下させることにより前記可塑化シリンダーの内部に前記原料を堆積させることなく供給し、前記可塑化シリンダーの内部の加熱原料から発生するガス成分を分離する空隙を形成するように構成されたハングリー成形装置において、前記フィードシリンダーには、当該フィードシリンダーの供給開口部から落下する原料の量を規制する原料供給規制手段が設けられた構成が採用されている。
【0012】
このような構成を有する本発明によれば、フィードシリンダーの供給開口部から供給筒の内部に落下する原料の量が、原料供給規制手段によって適宜の量となるように調整され、従来のような供給原料の過多状態が防止されて供給筒内における原料のカサ密度が好適状態に維持される。その結果、ハングリー成形の本来の高い成形品質を得ることが可能となって水分やガスによる成形品質によるボイド、焼け、ヒケ、シンクマーク、曇り、シルバーなどの悪影響が解消され、極めて高品質な成形が実現される。
【0013】
また、本発明のハングリー成形装置における原料供給規制手段は、前記フィードシリンダーの供給開口部を前記供給筒の内壁面から突出するように設けられたスリーブ状部材から形成したり、前記フィードシリンダーの供給開口部の近傍部分における内部空間を拡張するように設けられた原料逃げ部により形成することが可能である。
【0014】
このような構成を有する本発明によれば、原料供給規制手段を簡易な構成で容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように本発明にかかるハングリー成形装置は、フィードシリンダーの供給開口部から落下する原料の量を規制する原料供給規制手段を設けて、そのフィードシリンダーの供給開口部から供給筒の内部に落下する原料の量を適宜の量となるように調整し、原料供給の過多状態の発生を防止して供給筒内における原料のカサ密度を好適状態に維持するように構成したものであるから、ハングリー成形の本来の高い成形品質を得ることを可能とすることによって水分やガスによる成形品質によるボイド、焼け、ヒケ、シンクマーク、曇り、シルバーなどの悪影響が解消して極めて高品質な成形を実現することができ、成形装置を用いた成形品の品質を飛躍的かつ確実に向上させて成形装置の信頼性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるハングリー成形装置を構成する射出成形装置の可塑化部、及びその可塑化部に付設された定量フィーダー機構の概略構造を示した縦断面説明図である。
【図2】図1に示された可塑化シリンダーと定量フィーダー機構との接続部分を拡大して表した縦断面説明図である。
【図3】図1に示された可塑化シリンダーと定量フィーダー機構との接続部分に介在されたスペーサを拡大して表した平面説明図である。
【図4】図1に示されたハングリー成形装置を構成する射出成形装置の全体構成を表した側面説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態にかかる可塑化シリンダーと定量フィーダー機構との接続部分を拡大して表した縦断面説明図である。
【図6】図5に表された定量フィーダー機構のフィードシリンダーを供給開口部側から見たときの正面説明図である。
【図7】従来の飽食的成形装置における可塑化部の概略構造を示した縦断面説明図である。
【図8】本願発明者が提案したハングリー成形装置における可塑化シリンダーに接続された定量フィーダー機構の概略構造を拡大して表した縦断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、図4に示されている本発明の一実施形態にかかるハングリー成形装置として構成された射出成形機は、流動性熱可塑性を有する固形の原料(以下、単に原料という。)をメインスクリューの回転により移送して射出を行う可塑化部10に可塑化シリンダー101を備えているとともに、その可塑化部10の可塑化シリンダー101には、ペレット状、錠剤、顆粒のいずれかの形態からなる原料を供給する定量フィーダー機構20が連結されている。そして、その定量フィーダー機構20から可塑化部10の可塑化シリンダー101の内部に向かって原料が定量ずつ供給されることによって、可塑化部10に装着された金型装置30に対して溶融原料の射出が行われるようになっている。
【0018】
すなわち、上述した可塑化部10は、図1及び図2に示されているように、略水平に細長状に延在するように配置された略中空円筒状の可塑化シリンダー101を有している。この可塑化シリンダー101の基端側部分(図1の右端側部分)には、上方に開口するように設けられた原料供給口101aが設けられており、その原料供給口101aに対して、定量フィーダー機構20の供給筒201が、スペーサ202を介して接続されている。
【0019】
一方、上述した定量フィーダー機構20の供給筒201の直上部分には、フィードシリンダー203が略水平状態となるように一体的に連結された状態で配置されているとともに、そのフィードシリンダー203の上部側部分には、原料が蓄えられたハングリーフィーダーホッパー204が連結されている。そして、そのハングリーフィーダーホッパー204からフィードシリンダー203の内部に落下された原料は、当該フィードシリンダー203内に、フィードシリンダースリーブ203aを介して配置されたフィードスクリュー205が動力駆動源(駆動モーター)206により回転駆動されることによって前方(図1の右方側)に向かって略水平に移送されていき、前記フィードシリンダー203の前端部分(図1の右端部分)に設けられたフィード口203bcから、上述した供給筒201を通して、前記可塑化シリンダー101のフィードゾーンFAに対して、ほぼ閉鎖的に原料が供給可能となるように構成されている。そして、1回の射出(1ショット)に必要な量の原料が上述した可塑化シリンダー101の前端部分に蓄積された時点で、前記塑化部10における原料移送動作、及び前記定量フィーダー機構20による原料供給動作が一旦停止されるようになっている。
【0020】
このとき、上述した定量フィーダー機構20は、可塑化部10の可塑化シリンダー101内にガス抜き用の空隙を形成しつつ射出を行う、いわゆる「ハングリー成形」(詳細は後述)を実現させる一つの手段として原料を定量的に供給する構成になされていて、1回の射出に必要とする量(1ショット量)に対応した定量の原料を間欠的に供給するように構成されている。
【0021】
この点を具体的に説明すると、図1及び図2に示されている定量フィーダー機構20において、中空状のケーシング部材からなるフィードシリンダー203の内壁には、上述したように薄厚状のフィードシリンダースリーブ203aが装着されている。また、そのフィードシリンダー203の上方側に配置されたハングリーフィーダーホッパー204の下部には原料投下口204aが設けられており、その原料投下口204aが、上述したフィードシリンダー203及びフィードシリンダースリーブ203aを貫通するように形成された原料供給口203bに連通するように接続されている。
【0022】
フィードシリンダー203の全体は、上述した可塑化部10の可塑化シリンダー101と同様に略水平に延在するように配置されたスリーブ状部材から形成されていて、前記原料供給口203bが設けられた位置から、当該フィードシリンダー203の原料移送方向前端側(図2の右端側)に設けられたフィード口203cに向かって略水平に延在するように配置されている。フィード口203cは、前記フィードシリンダー203の供給開口部を形成するものであって、その供給開口部としてのフィード口203cをなすように形成された略円形状の端縁部から、原料が下方に向かって落下する構成になされている。
【0023】
そして、上述した供給開口部としてのフィード口203cは、原料の落下量を規制する原料供給規制手段を構成するように設けられている。すなわち、上述したようにフィードシリンダー203の一端部分(図示左端部分)に供給開口部として設けられたフィード口203cは、略鉛直に方向に延在する供給筒201の上端部分に連結されており、その連結部分が、前記供給筒201の内部空間に向かって略水平に突出するように配置されている。
【0024】
このようにフィード口203cは、フィードシリンダー203の一端部分(図示左端部分)を供給筒201の内部に向かって延長させたスリーブ状部材から形成されていて、その供給筒201に対する当該フィード口203cの内方側突出部分は、前記供給筒201の内部空間の中心位置近傍まで達するように延在している。そして、このフィード口203cにおける内方側突出部分に、上述したフィードスクリュー205により送られて来た原料が一旦蓄えられ、その後に当該フィード口203cの開口縁から原料が落下する構成になされており、それによって前記供給筒201の内部空間に落下していく原料の過多状態が防止されるようになっている。
【0025】
上述した供給筒201の供給筒201の下端側開口部分は、略水平に延在する可塑化部10の可塑化シリンダー101におけるフィードゾーンFAの上部側に貫通形成された原料供給口101aに対して、スペーサ202を介して連通状態に連結されている。
【0026】
一方、上記フィードシリンダー203のフィード口203cと反対側の後端部分には、可変速可能の減速機構付きの動力駆動源(駆動モーター)206が取り付けられているとともに、その動力駆動源206に対して片持ち状に連結されたフィードスクリュー205が、上記フィードシリンダースリーブ203aの内部空間の中心軸にほぼ沿って延在するようにして配置されている。そして、上述したハングリーフィーダーホッパー204からフィードシリンダー203の内部に落下された原料は、前記フィードスクリュー205が動力駆動源206により回転操作されることによって略水平に方向に移送されていき、上述したフィード口203cから供給筒201を通して可塑化部10のフィードゾーンFAに対して、ほぼ閉鎖的に原料が供給可能となるように構成されており、1回の射出(1ショット)に必要な量の原料が上述した可塑化シリンダー101の前端部分に蓄積された時点で、前記塑化部10における原料移送動作、および前記定量フィーダー機構20による原料供給動作が停止されるようになっている。
【0027】
このときの当該定量フィーダー機構20による原料供給、より具体的には前記可塑化部10の可塑化シリンダー101におけるフィードゾーンFAに対する原料供給は、操作盤ボックス207に設けられた各種スイッチ類207aの操作によって微調整可能となっており、前記可塑化部10における1回の射出(1ショット)にて成形される成形品に対応した定量の原料を間欠的に供給することによって、次に述べるようないわゆる「ハングリー成形」が実現されるように構成されている。
【0028】
ここで、本願発明でいう「ハングリー成形」とは、前記可塑化部10の可塑化シリンダー101におけるフィードゾーンFAに適宜のガス抜き空隙GSを常時形成するように維持しつつ射出を行うことをいう。すなわち、前述した可塑化シリンダー101は、内部原材料の乾燥を防止するためのベント口を備えていない、いわゆるノンベント型に構成されたものであり、特にこのようなノンベント型に構成された可塑化シリンダー101では、従来技術の欄でも記載したように原料Rにより常時充填された状態、つまり「過食状態」となっているのが通常であり、その「過食状態」が種々の不具合が発生する原因となっている。そこで本実施形態では、当該可塑化シリンダー101のフィードゾーンFAに対し原料供給を行うにあたって、1回の射出に必要とする量(1ショット量)に対応した定量の原料を間欠的に供給することにより、上述したガス抜き空隙GSが形成された「ハングリー状態」を実現し、加熱された原料から可塑化シリンダー101内に発生した水分やガスを、前記ガス抜き空隙GSから原料供給口101aを通して機外に排出して「ハングリー成形」を行うようにしている。そして、そのときの原料供給状態が、後述するカメラ監視手段(画像認識手段)により確認されることによって「ハングリー状態」が維持されるようになっている。
【0029】
前記フィードシリンダースリーブ203aの内径と、上述したフィードスクリュー205にリード加工により略螺旋状をなすように巻装されているフィードスクリューブレード205aにおけるリード(フライト)山部の外径との間の隙間は、原料フィード構造の一部または全区間に亘って形成されていて、その隙間を形成している片側隙間が、原料がペレット状であっても、錠剤や顆粒の形態であっても、それら原料の内の一番大きな形態の大きさより充分大きくなるように設定されている。
【0030】
このように本実施形態は、可塑化シリンダー101の内部に原料を堆積させることなく供給を行うことにより、前記可塑化シリンダー101内の加熱原料から発生するガス成分を分離する空隙を形成する構成になされたハングリー射出成形装置に関するものであって、上述したように加熱原料の射出を行う可塑化シリンダー101の原料供給口101aに、定量フィーダー機構20の供給筒201が接続され、その原料フィーダー機構20が、前記供給筒201の内部にカサ密度が粗の状態で原料を落下させる構成になされたものである。
【0031】
このとき、上述したように前記可塑化シリンダー101の原料供給口101aと定量フィーダー機構20の供給筒201との接続部分にはスペーサ202が介在されている。このスペーサ202は、両者の接続を円滑に行うためのものであって、定量フィーダー機構20の供給筒201の下端部分に設けられた接続フランジ部201aとほぼ同一の外径及び内径を有する円盤状部材から形成されている。そして、定量フィーダー機構20側の供給筒201の接続フランジ部201aの下面側接合面に対して前記スペーサ202の上面側接合面が密着した状態で取り付けられ、その後に、当該スペーサ202の下端側接合面が、前記可塑化シリンダー101の原料供給口101aの上面側接合面に密着するようにして接続されている。
【0032】
このとき、一般に、可塑化シリンダー101の原料供給口101aの内径は、定量フィーダー機構20の供給筒201の内径、つまりスペーサ202の内径よりも大きくなっていて、前記可塑化シリンダー101の原料供給口101a側に設けられた大きな開口に対して、スペーサ202の小さな開口が接続された状態となっている。そのため、可塑化シリンダー101の原料供給口101aの上面側接合面と、スペーサ202の下面側接合面との間には、通常、上述した内径差に基づく段差部Sを生じている。
【0033】
また、上述した定量フィーダー機構20の供給筒201の下端部分に設けられた接続フランジ部201aには、ガス排出穴201bが略水平に貫通するように設けられている。このガス排出穴201bは、前記供給筒201の内部空間に開口しているとともに、その内部側の開口部から半径方向外方に向かって延出しており、当該ガス排出穴201bの外方側開口部に、図示を省略した吸引装置から延出するガス抜き管(図示省略)が連結されている。
【0034】
一方、上述した可塑化シリンダー101の原料供給口101aと定量フィーダー機構20の供給筒201との接続部分には、当該接続部分の内部空間Xを形成する内壁面に開口する外気取入れ連通路202aが設けられている。この外気取入れ連通路202aは、前記接続部分の内壁面に形成された開口しているとともに、その接続部分の内壁面の開口から半径方向外方に延出して機外雰囲気Yに開口しており、当該外気取入れ連通路202aを介して前記内部空間Xが機外雰囲気Yに連通される構成になされている。本実施形態にかかる外気取入れ連通路202aは、上述した定量フィーダー機構20の供給筒201と可塑化シリンダー101の原料供給口101aとの接続部分に介在されたスペーサ202の接合面に形成された開口溝により構成されている。
【0035】
すなわち、上述したようにスペーサ202は、定量フィーダー機構20の供給筒201に接続される上面側接合面と、前記可塑化シリンダー101の原料供給口101aに接続される下面側接合面とを有しているが、そのスペーサ202が有する上下の両接合面のうちの少なくとも一方に、外気取入れ連通路202aを構成する開口溝が設けられている。本実施形態における外気取入れ連通路202aを構成する開口溝は、可塑化シリンダー101の原料供給口101aに接続されたスペーサ202の下面側接合面に凹設されており、当該スペーサ202の下面側接合面における内周側縁部と外周側縁部との間を半径方向に延在するように形成されているが、当該外気取入れ連通路202aを構成する開口溝は、スペーサ202の上面側接合面に形成することも可能である。
【0036】
このような外気取入れ連通路202aが設けられていることによって、上述したように両者の接続部分における内部空間Xと機外雰囲気Yとの間が連通されており、前記接続部分の内部空間Xにおけるガス成分の流れに沿って機外雰囲気Y中の空気が内部空間Xまで導き入れられるように構成されている。より具体的には、上述した可塑化シリンダー101の内部側から、当該接続部分の内部空間Xを構成している接続部分の段差部Sにガス成分が至ると、そのガス成分の流れに沿うようにして機外雰囲気Y中の空気が、外気取入れ連通路202aを通して上述した接続部分の内部空間Xに引き込まれていき、その外気取入れ連通路202a内に引き込まれた空気が、接続部分の内部空間Xに導き入れられるように構成されている。そして、その機外雰囲気Y中の空気の流入によって、接続部分の段差部Sによるガス成分の貯留状態が回避されることとなり、ガス成分の流動性が改善されるようになっている。
【0037】
このような構成を有する本実施形態によれば、定量フィーダー機構20のフィードシリンダー203aのフィード口(供給開口部)203cから供給筒201の内部に落下する原料の量が、原料供給規制手段として設けられた前記フィード口203cの内方側突出部分によって適宜の量となるように調整されることとなり、従来のような過多状態が防止され、供給筒201内における原料のカサ密度が好適状態に維持される。その結果、ハングリー成形の本来の高い成形品質を得ることが可能となって水分やガスによる成形品質によるボイド、焼け、ヒケ、シンクマーク、曇り、シルバーなどの悪影響が解消され、極めて高品質な成形が実現される。
【0038】
また、本実施形態における原料供給規制手段は、フィードシリンダー203aのフィード口(供給開口部)203cを、供給筒201の内壁面から突出するように設けられたスリーブ状部材から形成されていることから、原料供給規制手段が簡易な構成で容易に製造される。
【0039】
一方、本実施形態では、前述した定量フィーダー機構20に、可塑化部10のフィードゾーンFAに形成されるべきガス抜き空隙を確認するための画像認識手段を構成するカメラ監視手段208が設けられている。このカメラ監視手段208は、前記可塑化部10の可塑化シリンダー101内における前記フィードゾーンFAに臨むように配置されたCCDカメラ部208aを備えているが、そのCCDカメラ部208aは、中空長尺状部材からなる保持パイプフレーム部208bの下端部分に取り付けられている。
【0040】
上記保持パイプフレーム部208bは、前述した供給筒201の頂部に固定されていて、その供給筒201の外部側(上部側)から当該供給筒201の内部空間に向かって貫通した後に略鉛直下方に延出するように配置されている。この保持パイプフレーム部208bの下方側延出端には、図4にも示されているようにCCDカメラ部208aが取り付けられていて、当該CCDカメラ部208aが、前記可塑化部10の可塑化シリンダー101における上述したフィードゾーンFAに対して直上位置から対面するように配置されている。そして、そのCCDカメラ部208aの側部には、上記フィードゾーンFAを照らす照明ライトが配置されている。
【0041】
また、上記CCDカメラ部208aから延出する画像信号線208cは、上述した保持パイプフレーム部208bの内部空間を通って上方に向かって延在しており、保持パイプフレーム部208bの上端部から引き出された後にディスプレイモニタ208d側に接続されている。このディスプレイモニタ208dは、上述した操作盤ボックス207の上面に取り付けられており、その操作盤ボックス207の上面から立ち上がるように設けられた支持脚206fの途中部分が、ピボット機構206gを介して所望の方向に折れ曲がるように構成されていることによって、当該ディスプレイモニタ208dの表示方向が任意に調整可能になされている。
【0042】
このような構成を有するカメラ監視手段208を設けておけば、可塑化シリンダー101内におけるガス抜き空隙GSの形成状況、つまり「ハングリー成形」状態を維持するために、原料の供給状態が画像として取り込まれ、それが機外から容易に確認されるようになっており、特に本実施形態では、カメラ監視手段208が、可塑化部10の可塑化シリンダー101内におけるフィードゾーンFAに臨むように配置されたCCDカメラ部208aからの画像を、画像信号線208cを介して機外の適宜の位置に取り付けられたディスプレイモニタ208dに転送しているとともに、そのディスプレイモニタ208dの表示方向が任意に調整可能に設けられていることから、可塑化部10の可塑化シリンダー101内における原料供給状態、すなわちガス抜き空隙の形成状態のディスプレイモニタ208dによる視認が、当該ディスプレイモニタ208dの設置位置や設置角度にかかわらず良好に行われる。
【0043】
このような本発明にかかるハングリー成形装置により、例えば加水分解を生じやすいPC/PETを原料として成形トライを試みたところ、次の表1のように、生地外観(バリ)、シルバー、重量バラツキ、色目、等の成形品の品質が大幅に改善されるとともに、成形時間が短縮化されることも確認された。
【表1】

【0044】
なお、上述した表1における成形トライは、概略下記の条件下において行われたものである。
成形機:住友重機械(株)18トンクラス機
真空圧:0.5Kg/cm〜0.8Kg/cm
金 型:日本油機社製ダーンベル型
成形材料:カネカ社製PC/PET(JP1010)
成形条件:一定(冷却時間ダーけを計量時間に対応して変更)
部得方法:トライ1ではパージを5回、20ショットを部得
トライ2では10分間シリンダー内で樹脂を滞留させ、1パージ後10ショット部取得
【0045】
さらに、本発明にかかるハングリー成形装置によれば、金型に対するガス成分等の影響が低減され、例えば次の表2のように各部品に対応して金型のメンテナンス周期が大幅に延長されることとなり、その結果、生産効率が向上されることが判明した。
【表2】

【0046】
さらにまた、本発明にかかるハングリー成形装置によれば、例えば次の表3のように、多種多様な成形品において同表に記載されているような改善効果を確認することができた。
【表3】

【0047】
一方、上述した実施形態と同一の構成部材に対して同一の符号を付した図5及び図6にかかる本発明の他の実施形態においては、フィードシリンダー203の一端部分(図示左端部分)に設けられたフィード口203cが、従来のものと同様に供給筒201の内壁面と略一致するように連結されているものであるが、原料供給規制手段が他の部位に設けられている。すなわち、本実施形態における定量フィーダー機構20に設けられた原料供給規制手段は、フィードシリンダー203aのフィード口(供給開口部)203cの近傍部分における内部空間を拡張するようにして設けられた原料逃げ部203dにより構成されている。
【0048】
この原料供給規制手段としての原料逃げ部203dは、前述したフィードシリンダー203における上側壁部分、及びそれに対応するハウジング203eの一部を長手方向(図5の左右方向)の細長状に切り欠いた開口溝から形成されている。すなわち、この原料逃げ部203dを構成している開口溝状部分は、円周方向に細幅を有する状態で上述したフィードスクリュー205の軸方向に延在しているとともに、当該開口溝状部分の上端開口部には、それに相当する安全蓋203fが着脱自在に装着されている。この安全蓋203fは、上述した原料逃げ部203dを上方側から覆うことによって、当該原料逃げ部203dの内部が直接露出することのないようにするとともに、万一、原料逃げ部203dの内部が原料で満杯状態となったときに、原料が原料逃げ部203dから溢れ出ることのないようにするために設けられている。
【0049】
このように原料逃げ部203dは、フィードシリンダー203の一端部分(図示左端部分)を切り欠いた開口溝として形成されているが、その開口溝として形成された原料逃げ部203dに、上述したフィードスクリュー205により送られて来た原料が一旦蓄えられ、その後に当該フィード口203cを形成している円形状端縁部から原料が落下する構成になされている。これによって、前記供給筒201の内部空間に落下していく原料の過多状態が防止され、その結果、上述した実施形態と同様に、ハングリー成形の本来の高い成形品質を得ることが可能となって水分やガスによる成形品質によるボイド、焼け、ヒケ、シンクマーク、曇り、シルバーなどの悪影響が解消され、極めて高品質な成形が実現される。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0051】
すなわち、フィードシリンダーに設けた原料供給規制手段は、上述した各実施形態の構成に限定されるものではなく、フィードシリンダーの供給開口部から落下する原料の量を規制する構成を有するものであれば、多種多様な構成とすることが可能である。
【0052】
また、上述した実施形態は、射出成形を行う装置に本発明を適用したものであるが、押出又は中空成形を行う装置に対しても本発明は同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 可塑化部
101 可塑化シリンダー
101a 原料供給口
102 メインスクリュー
FA フィードゾーン
GS ガス抜き空隙
20 定量フィーダー機構
201 供給筒
201a 接続フランジ部
201b ガス排出穴
202 スペーサ
202a 外気取入れ連通路
202b 案内傾斜面
S 段差部
203 フィードシリンダー
203a フィードシリンダースリーブ
203b 原料供給口
203c フィード口(供給開口部;原料供給規制手段)
203d 原料逃げ部(原料供給規制手段)
203e ハウジング
203f 安全蓋
204 ハングリーフィーダーホッパー
204a 原料投下口
205 フィードスクリュー
205a フィードスクリューブレード
206 動力駆動源(駆動モーター)
X 内部空間
Y 機外雰囲気
207 操作盤ボックス
208 カメラ監視手段(画像認識手段)
208a CCDカメラ部
208b 保持パイプフレーム部
208c 画像信号線
208d ディスプレイモニタ
30 金型装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱原料の射出、押出又は中空成形を行う可塑化シリンダーの原料供給口に原料フィーダー機構の供給筒が接続され、その原料フィーダー機構に設けられたフィードシリンダーの供給開口部から前記供給筒の内部に向かって原料をカサ密度が粗の状態で落下させることにより前記可塑化シリンダーの内部に前記原料を堆積させることなく供給し、前記可塑化シリンダーの内部の加熱原料から発生するガス成分を分離する空隙を形成するように構成されたハングリー成形装置において、
前記フィードシリンダーには、当該フィードシリンダーの供給開口部から落下する原料の量を規制する原料供給規制手段が設けられていることを特徴とするハングリー成形装置。
【請求項2】
前記原料供給規制手段は、前記フィードシリンダーの供給開口部を前記供給筒の内壁面から突出するように設けられたスリーブ状部材から形成されていることを特徴とする請求項1記載のハングリー成形装置。
【請求項3】
前記原料供給規制手段は、前記フィードシリンダーの供給開口部の近傍部分における内部空間を拡張するように設けられた原料逃げ部により形成されていることを特徴とする請求項1記載のハングリー成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−88332(P2011−88332A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242751(P2009−242751)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(509292076)株式会社 日本油機 (2)
【Fターム(参考)】