説明

ハンドオーバ制御システム、MAGおよびハンドオーバ制御方法

【課題】ハンドオーバ時に、トラフィックが転送される通信経路の使用帯域が輻輳している場合、通信経路の輻輳を回避し、総体的にパケットロスを減少させる高速なハンドオーバを実現する。
【解決手段】MAG101、102と、LMA100と、PCRF(リソース制御サーバ)104と、から構成され、MN(移動ユーザ端末)103のハンドオーバを制御するハンドオーバ制御システムであって、PCRF(リソース制御サーバ)104は、移動元MAG101と移動先MAG102との間のトラフィック流量を監視し、移動元MAG101および移動先MAG102に対して、トラフィック流量が第1の閾値を超えたときに、FPMIPにおけるハンドオーバを行なう時間を制限し、トラフィック流量が第2の閾値を超えたときに、FPMIPにおけるハンドオーバからPMIPにおけるハンドオーバに切り替える指示を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のMAG(Mobile Access Gateway)と、前記各MAGを管理するLMA(Local Mobility Anchor)と、PCRF(Policy and Charging Rule Function)リソース制御サーバと、から構成され、移動元MAGと移動先MAGとの間で行なわれる移動ユーザ端末のハンドオーバを制御するハンドオーバ制御システム、MAGおよびハンドオーバ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、公衆回線交換サービスを提供する多くの固定・移動通信事業者は、次世代ネットワークとして標準化が進められているNGN(Next Generation Network)のアーキテクチャに基づく固定・移動網の統合に向けて、インターネットサービスとの融合も容易なIPベースネットワークへの移行を進めている。NGNの中核技術であるIMS(IP Multimedia Subsystem)では、QoS・ポリシー制御を実施するために、リソース制御サーバであるPCRF(Policy and Charging Rules Function)を用いる。
【0003】
現在、3GPP、3GPP2、ITU−Tでは、非特許文献3に開示されているSIP(Session Initiation Protocol)サーバなどのAF(Application Function)に相当するP−CSCF(Proxy Call Session Control Function)からPCRFに対してネットワーク資源要求などを行うポリシー制御の手順が規定されている。さらに、PCRFからトランスポートのエッジルータであるAGW(Access Gateway)に対して、ユーザからのメディアトラフィックを制御するためのポート開放・閉鎖やポリシー設定などを行う手順が規定されている。
【0004】
一方、移動ユーザ端末が移動した際、ユーザの通信を可能な限り継続させる技術として
ハンドオーバ技術がIETFを中心に標準化されている。しかし、現在、IMSのポリシー制御アーキテクチャを活用し、IPモビリティプロトコルであるFPMIPにおいて有効なリソース制御をどう実施するか具体的な方法は提案されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IETF draft-ietf-mipshop-pfmipv6-01.txt
【非特許文献2】3GPP TS 23.203 V8.4.0 “3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Policy and charging control architecture (Release 8)”
【非特許文献3】IETF RFC3261 “Session Initiation Protocol”
【非特許文献4】IETF RFC5213 “Proxy Mobile IP”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、IMSにおいては、PCRFというリソース制御サーバを用いて、ユーザがアプリケーションを利用し始める際、SIPによる発呼に基づき、そのアプリケーションのトラフィックに対して、QoSクラスを割り当てる手法が提案されている(非特許文献3)。
【0007】
一方、高速ハンドオーバ技術として、FPMIPが定義されている。図3は、FPMIPの概要を示す図である。FPMIPでは、LMA(Local Mobility Anchor)100と、PMAG(Previous Mobile Access Gateway)101と、NMAG(Next Mobile Access Gateway )102と、MN(Mobile Node)103とから構成されている。LMA100とPMAG101との間にはトンネルTが確立され、LMA100とNMAG102との間には、トンネルTが確立される。また、ハンドオーバの際、PMAG101とNMAG102との間には、トンネルTが確立される。このFPMIPは、PMIPプロトコル(非特許文献4)を拡張している。
【0008】
PMIP(Proxy MIP)では、MNは、ハンドオーバを実施するための機能をもつ必要がなく、MNが接続するMAG(Mobile Access Gateway)がMNの移動を管理する。MNは、MAGに接続すると、MAGはその情報をLMAに通知し、LMAとMAG間でトンネルを確立する。MNが他のMAGへ移動した際には、移動先のMAGがLMAに新たにMNが接続してきたことを通知し、トンネルを確立する。この後、LMAは移動元MAGとのトンネルを棄却する。
【0009】
一方、FPMIPでは、MNが移動した際、移動元のMAGから移動先のMAG間にトンネルを確立する。この際、移動先MAGがLMAにMNの移動を通知し、トンネルを確立するまで、MN宛のトラフィックを、MAG間のトンネル経由で転送する。
【0010】
図4および図5は、FPMIPにおけるハンドオーバのシーケンスを示す図である。図4では、Predictive方式のハンドオーバのシーケンスを示している。図4に示すPredictive方式のハンドオーバは、無線アクセスネットワークがMNの移動を検知できることを前提としたハンドオーバである。MNの移動先MAGにMNの移動を通知し、あらかじめMNが移動先MAGに接続する前に、移動元MAG、移動先MAG間にトンネルを確立しておく方法である。
【0011】
図5では、Reactive方式のハンドオーバのシーケンスを示している。図5に示すReactive方式のハンドオーバは、無線アクセスネットワークがMNの移動を検知することを想定とせず、MNが移動先MAGに接続してから、移動元MAGと移動先MAGでトンネルを確立する。MAG間のトンネルは、移動元MAGのほうからトンネルを棄却し、MNはその後LMAと移動先MAG間でPMIPにより形成されたトンネルを用いてトラフィックの送受信を行なうようになる。
【0012】
ハンドオーバにおいては、なるべくパケットロスが少なくなることが望ましい。FPMIPでは、移動先MAGに接続後、MAG間のトンネルからPMIPによるLMAからのトンネルを利用するようになる。FPMIPでは、移動元MAGがFPMIPのトンネルに流れているトラフィックがないことを確認してからトンネルを棄却することがパケットロスを少なくする観点では理想的であるが、現実的には、MAGが、ユーザがいつまでアプリケーションを利用しつづけているかという情報はわからないため、実現は難しい。従来技術では、MAGがいつ、FPMIPによるトンネルを棄却するか定義されていない。
【0013】
また、従来技術では、移動元MAG、移動先MAGで確立するトンネルにおけるトラフィック転送について何も保証していない。そのため、移動元MAG間、移動先MAG間のトンネルが通過するネットワーク経路で輻輳が発生していた場合、MNがシームレスなハンドオーバを実施することができない場合がある。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、総体的にパケットロスを減少させると共に、通信経路の輻輳を回避し、高速なハンドオーバを実現することができるハンドオーバ制御システム、MAGおよびハンドオーバ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のハンドオーバ制御システムは、複数のMAG(Mobile Access Gateway)と、前記各MAGを管理するLMA(Local Mobility Anchor)と、PCRF(Policy and Charging Rule Function)リソース制御サーバと、から構成され、移動元MAGと移動先MAGとの間で行なわれる移動ユーザ端末のハンドオーバを制御するハンドオーバ制御システムであって、前記PCRFリソース制御サーバは、前記移動元MAGと移動先MAGとの間のトラフィック流量を監視し、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、前記トラフィック流量に応じて異なるハンドオーバを行なう指示を与えることを特徴としている。
【0016】
このように、移動元MAGと移動先MAGとの間のトラフィック流量を監視し、移動元MAGおよび移動先MAGに対して、トラフィック流量に応じて異なるハンドオーバを行なう指示を与えるので、パケットロスの減少、通信経路の輻輳の回避を図ると共に、高速なハンドオーバを実現することが可能となる。
【0017】
(2)また、本発明のハンドオーバ制御システムにおいて、前記PCRFリソース制御サーバは、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、前記トラフィック流量に応じて、FPMIP(Fast Proxy Mobile IP Protocol)におけるハンドオーバとPMIP(Proxy Mobile IP Protocol)におけるハンドオーバとを切り替える指示を与えることを特徴としている。
【0018】
このように、移動元MAGおよび移動先MAGに対して、トラフィック流量に応じて、FPMIPにおけるハンドオーバとPMIPにおけるハンドオーバとを切り替える指示を与えるので、パケットロスの減少、通信経路の輻輳の回避を図ると共に、高速なハンドオーバを実現することが可能となる。
【0019】
(3)また、本発明のハンドオーバ制御システムにおいて、前記PCRFリソース制御サーバは、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、前記トラフィック流量が第1の閾値を超えたときに、FPMIPにおけるハンドオーバを行なう時間(MAG間で確立されたトンネルでトラフィック転送を続ける時間)を制限することを特徴としている。
【0020】
このように、移動元MAGおよび移動先MAGに対して、トラフィック流量が第1の閾値を超えたときに、FPMIPにおけるハンドオーバを行なう時間(MAG間で確立されたトンネルでトラフィック転送を続ける時間)を制限するので、FPMIPによるハンドオーバを行なう場合と比べて、多少のパケットロスを発生させてしまうものの、PMIPのみでハンドオーバを行なう場合よりもパケットロスを減少させることが可能となる。また、MAG間の通信経路を早く棄却することによって、MAG間に流れるトラフィックが長時間流れることを防止することができるので、MAG間の通信経路がそれ以上輻輳することを回避することができる。その結果、MAG間のネットワークのリソースが十分でない場合であっても、多くの移動ユーザ端末に対して、FPMIPによる高速なハンドオーバを行なう機会を提供することが可能となる。
【0021】
(4)また、本発明のハンドオーバ制御システムにおいて、前記PCRFリソース制御サーバは、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、前記トラフィック流量が第2の閾値を超えたときに、FPMIPにおけるハンドオーバからPMIPにおけるハンドオーバに切り替える指示を与えることを特徴としている。
【0022】
このように、移動元MAGおよび移動先MAGに対して、トラフィック流量が第2の閾値を超えたときに、FPMIPにおけるハンドオーバからPMIPにおけるハンドオーバに切り替える指示を与えるので、MAG間の通信経路の輻輳を回避することが可能となる。
【0023】
(5)また、本発明のMAGは、複数のMAG(Mobile Access Gateway)と、前記各MAGを管理するLMA(Local Mobility Anchor)と、PCRF(Policy and Charging Rule Function)リソース制御サーバと、から構成され、移動元MAGと移動先MAGとの間で行なわれる移動ユーザ端末のハンドオーバを制御するハンドオーバ制御システムに適用されるMAGであって、前記PCRFリソース制御サーバからの指示に応じて、FPMIP(Fast Proxy Mobile IP Protocol)におけるハンドオーバとPMIP(Proxy Mobile IP Protocol)におけるハンドオーバとを切り替えることを特徴としている。
【0024】
このように、PCRFリソース制御サーバからの指示に応じて、FPMIPにおけるハンドオーバとPMIPにおけるハンドオーバとを切り替えるので、パケットロスの減少、通信経路の輻輳の回避を図ると共に、高速なハンドオーバを実現することが可能となる。
【0025】
(6)また、本発明のMAGは、前記PCRFリソース制御サーバからの指示に応じて、FPMIPにおけるハンドオーバを行なう時間(MAG間で確立されたトンネルでトラフィック転送を続ける時間)を限定することを特徴としている。
【0026】
このように、PCRFリソース制御サーバからの指示に応じて、FPMIPにおけるハンドオーバを行なう時間(MAG間で確立されたトンネルでトラフィック転送を続ける時間)を限定するので、FPMIPによるハンドオーバを行なう場合と比べて、多少のパケットロスを発生させてしまうものの、PMIPのみでハンドオーバを行なう場合よりもパケットロスを減少させることが可能となる。また、MAG間の通信経路を早く棄却することによって、MAG間に流れるトラフィックが長時間流れることを防止することができるので、MAG間の通信経路がそれ以上輻輳することを回避することができる。その結果、MAG間のネットワークのリソースが十分でない場合であっても、多くの移動ユーザ端末に対して、FPMIPによる高速なハンドオーバを行なう機会を提供することが可能となる。
【0027】
(7)また、本発明のハンドオーバ制御システムの制御方法は、複数のMAG(Mobile Access Gateway)と、前記各MAGを管理するLMA(Local Mobility Anchor)と、PCRF(Policy and Charging Rule Function)リソース制御サーバと、から構成され、移動元MAGと移動先MAGとの間で行なわれる移動ユーザ端末のハンドオーバを制御するハンドオーバ制御システムのハンドオーバ制御方法であって、前記PCRFリソース制御サーバにおいて、前記移動元MAGと移動先MAGとの間のトラフィック流量を監視するステップと、前記トラフィック流量が、第1の閾値または第2の閾値を超えたかどうかを判断するステップと、前記判断の結果、前記トラフィック流量が第1の閾値を超えたときに、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、FPMIP(Fast Proxy Mobile IP Protocol)におけるハンドオーバを行なう時間(MAG間で確立されたトンネルでトラフィック転送を続ける時間)を制限する指示を与えるステップと、前記判断の結果、前記トラフィック流量が第2の閾値を超えたときに、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、FPMIPにおけるハンドオーバからPMIP(Proxy Mobile IP Protocol)におけるハンドオーバに切り替える指示を与えるステップと、前記移動元MAGおよび移動先MAGにおいて、前記PCRFリソース制御サーバからの指示に応じて、FPMIPにおけるハンドオーバを、PMIPにおけるハンドオーバに切り替えるステップと、前記PCRFリソース制御サーバからの指示に応じて、FPMIPにおけるハンドオーバを行なう時間(MAG間で確立されたトンネルでトラフィック転送を続ける時間)を限定するステップと、を少なくとも含むことを特徴としている。
【0028】
このように、移動元MAGおよび移動先MAGに対して、トラフィック流量が第1の閾値を超えたときに、FPMIPにおけるハンドオーバを行なう時間(MAG間で確立されたトンネルでトラフィック転送を続ける時間)を制限するので、FPMIPによるハンドオーバを行なう場合と比べて、多少のパケットロスを発生させてしまうものの、PMIPのみでハンドオーバを行なう場合よりもパケットロスを減少させることが可能となる。また、MAG間の通信経路を早く棄却することによって、MAG間に流れるトラフィックが長時間流れることを防止することができるので、MAG間の通信経路がそれ以上輻輳することを回避することができる。その結果、MAG間のネットワークのリソースが十分でない場合であっても、多くの移動ユーザ端末に対して、FPMIPによる高速なハンドオーバを行なう機会を提供することが可能となる。また、移動元MAGおよび移動先MAGに対して、トラフィック流量が第2の閾値を超えたときに、FPMIPにおけるハンドオーバからPMIPにおけるハンドオーバに切り替える指示を与えるので、MAG間の通信経路の輻輳を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、移動元MAGと移動先MAGとの間のトラフィック流量を監視し、移動元MAGおよび移動先MAGに対して、トラフィック流量に応じて異なるハンドオーバを行なう指示を与えるので、パケットロスの減少、通信経路の輻輳の回避を図ると共に、高速なハンドオーバを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態において想定するネットワーク構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るハンドオーバ制御システムの概略構成を示す図である。
【図3】FPMIPの概要を示す図である。
【図4】FPMIPにおけるハンドオーバのシーケンスを示す図である。
【図5】FPMIPにおけるハンドオーバのシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[用語の定義]
MN(Mobile Node)は、移動ユーザ端末を意味する。
MN−ID(MN Identifier)は、MNを一意に示すIDである。
MN−IID(MN Interface Identifier)は、MNのIFを示すIDである。
CN(Corresponding Node)は、移動ユーザ端末の通信相手である。
MAG(Mobile Access Gateway)は、アクセスルータである。
PMAG/NMAG(Previous MAG/Next MAG)は、移動元MAGおよび移動先MAGである。
LMA(Local Mobility Anchor)は、移動管理のアンカーである。
PCRF(Policy and Changing Rule Function)は、ポリシー制御サーバである。
AN/AP(Access Network/Access Point)は、ユーザがアタッチするアクセスネットワークおよびアクセスポイントである。
P−AN/N−AN(Previous AN/Next AN)は、移動元アクセスネットワークおよび移動先アクセスネットワークである。
【0032】
3GPPでは、移動ユーザ端末(Mobile Node:以下、「MN」と呼称する。)の通信にリソース制御を実施し、QoSを提供する手続きが標準化されている(非特許文献1)。一方、IP Mobilityを高速に実現するプロトコルとして、Fast Proxy Mobile IPプロトコル(以下、「FPMIP」と呼称する。)が検討されている(非特許文献2)。
【0033】
本実施形態では、MNが通信に利用する通信経路上のネットワークにリソースが十分にない場合、3GPPのリソース制御の手順を活用し、FPMIPを制御することで、IP Mobilityを多くの移動ユーザ端末に提供する。
【0034】
図1は、本実施形態において想定するネットワーク構成を示す図である。LMA100は、MAG101a〜101eとの間でIPトンネル(通信経路)Ta〜Teを確立している。MN103は、あるMAGの配下の無線アクセスネットワークに移動しても、アドレスは変わらないものとする(IPモビリティ)。
【0035】
図2は、本実施形態に係るハンドオーバ制御システムの概略構成を示す図である。このハンドオーバ制御システムは、LMA(Local Mobility Anchor)100と、PMAG(Previous Mobile Access Gateway)101と、NMAG(Next Mobile Access Gateway )102と、MN(Mobile Node)103と、PCRF(リソース制御サーバ)104と、から構成されている。LMA100とPMAG101との間にはトンネルTが確立され、LMA100とNMAG102との間には、トンネルTが確立される。また、ハンドオーバの際、PMAG101とNMAG102との間には、トンネルTが確立される。
【0036】
このハンドオーバ制御システムは、FPMIPにより、MN103がハンドオーバする際、IMSのポリシー制御・受付け制御サーバであるPCRF104が、移動先MAG101と移動元MAG102間の通信経路の状況に応じて、リソース制御を実施する。これにより、通信キャリアのように、インターネット、移動体サービスなど様々なトラフィックを収容するネットワークで、MN103の高速ハンドオーバの実現を支援する。
【0037】
PCRF104は、ネットワーク上に隣接するMAG101、102間のトラフィックを監視する。そして、各MAG間の通信経路に関して2つの閾値を保持し、MN103のハンドオーバの際、受付け制御を実施する。第1の閾値では、MAG101、102間の通信経路のトラフィック流量が、物理帯域を超過するほどではないが、物理帯域を圧迫しつつある状況の際、PCRF104が、MN103のハンドオーバを受け付けた時に、PFMIPのハンドオーバを受け付けるが、MAG101、102間のトンネルTを利用する時間を短くするように通知する。
【0038】
第2の閾値では、MAG間のネットワークに流れているトラフィックがMAG間の通信経路の物理経路を圧迫している状況なので、PFMIPのハンドオーバを受け付けられず、PCRF104は、MAG101、102に対して、PMIPでのハンドオーバを実施するように通知する。
【0039】
図4は、本実施形態に係るハンドオーバ制御システムの動作を示すシーケンスチャートである。図4では、Predictive方式のハンドオーバを示している。MNはP−ANに対して、Reportとして「MN ID,New AP ID」を送信する。P−ANはPMAGに対してHO Initiateとして、「MN ID,New AP ID」を送信する。すなわち、L2(無線アクセスネットワーク)機能によるMNのハンドオーバを通知する。PMAGはNMAGに対して、「MN ID,MN-HoA,MN IID,LMA Address」を送信する。NMAGはPCRFに対して、「MN ID,PMAG, NMAG」を送信する。PCRFは、NMAGに対して、「Accept(Reject)」を送信する。このとき、「Handover change」の判定、FPMIPの移動の可否、MAG間のトンネル棄却(HIを投げるタイミング)を制御することとなる。
【0040】
次に、NMAGはPMAGに対して、「Hack, MN ID」を送信する。PMAGはNMAGに対し、「HI(F or U flag)」を送信し、NMAGはPMAGに対して、「HAck」を送信する。そして、PMAGとNMAGとの間でデータのやり取りが行われる。次に、MNが、PMAGからdetach、NMAGにattachとなる。そして、NMAGからMNにDLデータが送信され、MNからNMAGにULデータが送信される。このULデータは、NMAGからPMAGを介してLMAに送信される。次に、PMAGがNMAGに対して、「HI」を送信してトラフィックの転送が完了したことを通知し、NMAGがPMAGに対して、「HAck」を送信する。次に、NMAGがLMAとの間でトンネルを確立して、PMIPへの切り替えが行なわれる。
【0041】
図5は、本実施形態に係るハンドオーバ制御システムの動作を示すシーケンスチャートである。図5では、Reactive方式のハンドオーバを示している。MNがPMAGからdetach、NMAGにattachとなると、NMAGはPCRFに対して、「MN ID,PMAG, NMAG」を送信する。PCRFは、NMAGに対して、「Accept(Reject)」を送信する。このとき、「Handover change」の判定、FPMIPの移動の可否、MAG間のトンネル棄却(HIを投げるタイミング)を制御することとなる。
【0042】
次に、NMAGはPMAGに対して、「HI,MN ID」を送信する。PMAGはNMAGに対し、「MN ID, MN-HoA, MN IID, LMA」を送信する。そして、PMAGとNMAGとの間でデータのやり取りが行われる。PMAGからのDLデータは、NMAGを介してMNに送信される。また、MNからのULデータは、NMAGを介してPMAGに送信され、PMAGからLMAに送信される。次に、PMAGからNMAGに対して、「HI」を送信し、NMAGがPMAGに対して、「HAck」を送信する。次に、NMAGがLMAとの間でトンネルを確立して、PMIPへの切り替えが行なわれる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、PCRF104は、トラフィック流量が、第1の閾値を超えた際に、MAGに対してFPMIPにより確立されたトンネルを短い時間で棄却するように通知する。これにより、FPMIPによるハンドオーバ時に対して、多少のパケットロスを発生させてしまうが、PMIPだけでハンドオーバを実施するよりハンドオーバのパケットロスを生じさせないハンドオーバを実施することが可能となる。また、MAG間のトンネルを早く棄却することで、MAG間に流れるトラフィックが長時間流れないようにするため、MAG間の通信経路がこれ以上輻輳することを防ぐことができる。これにより、FPMIPでMAG間にトンネルを確立する際のリソース制御に、単純にAccept/Rejectというリソース制御より、2段階(多段階)の閾値を設定することで、MAG間のネットワークのリソースが十分でない場合でも、多くのMNに対してFPMIPによる高速なハンドオーバを提供できる。
【符号の説明】
【0044】
100 LMA
101 PMAG
101a〜101e MAG
102 NMAG
103 MN
104 PCRF(リソース制御サーバ)
Ta〜Te トンネル(通信経路)
〜T トンネル(通信経路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のMAG(Mobile Access Gateway)と、前記各MAGを管理するLMA(Local Mobility Anchor)と、PCRF(Policy and Charging Rule Function)リソース制御サーバと、から構成され、移動元MAGと移動先MAGとの間で行なわれる移動ユーザ端末のハンドオーバを制御するハンドオーバ制御システムであって、
前記PCRFリソース制御サーバは、前記移動元MAGと移動先MAGとの間の通信経路のトラフィック流量を監視し、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、前記トラフィック流量に応じて異なるハンドオーバを行なう指示を与えることを特徴とするハンドオーバ制御システム。
【請求項2】
前記PCRFリソース制御サーバは、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、前記トラフィック流量に応じて、FPMIP(Fast Proxy Mobile IP Protocol)におけるハンドオーバとPMIP(Proxy Mobile IP Protocol)におけるハンドオーバとを切り替える指示を与えることを特徴とする請求項1記載のハンドオーバ制御システム。
【請求項3】
前記PCRFリソース制御サーバは、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、前記トラフィック流量が第1の閾値を超えたときに、MAG間で確立されたトンネルでトラフィック転送を続ける時間を制限することを特徴とする請求項2記載のハンドオーバ制御システム。
【請求項4】
前記PCRFリソース制御サーバは、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、前記トラフィック流量が第2の閾値を超えたときに、FPMIPにおけるハンドオーバからPMIPにおけるハンドオーバに切り替える指示を与えることを特徴とする請求項2記載のハンドオーバ制御システム。
【請求項5】
複数のMAG(Mobile Access Gateway)と、前記各MAGを管理するLMA(Local Mobility Anchor)と、PCRF(Policy and Charging Rule Function)リソース制御サーバと、から構成され、移動元MAGと移動先MAGとの間で行なわれる移動ユーザ端末のハンドオーバを制御するハンドオーバ制御システムに適用されるMAGであって、
前記PCRFリソース制御サーバからの指示に応じて、FPMIP(Fast Proxy Mobile IP Protocol)によるハンドオーバの実施とPMIP(Proxy Mobile IP Protocol)によるハンドオーバの実施を切り替えることを特徴とするMAG。
【請求項6】
前記PCRFリソース制御サーバからの指示に応じて、MAG間で確立されたトンネルでトラフィック転送を続ける時間を限定することを特徴とする請求項5記載のMAG。
【請求項7】
複数のMAG(Mobile Access Gateway)と、前記各MAGを管理するLMA(Local Mobility Anchor)と、PCRF(Policy and Charging Rule Function)リソース制御サーバと、から構成され、移動元MAGと移動先MAGとの間で行なわれる移動ユーザ端末のハンドオーバを制御するハンドオーバ制御システムのハンドオーバ制御方法であって、
前記PCRFリソース制御サーバにおいて、
前記移動元MAGと移動先MAGとの間のトラフィック流量を監視するステップと、
前記トラフィック流量が、第1の閾値または第2の閾値を超えたかどうかを判断するステップと、
前記判断の結果、前記トラフィック流量が第1の閾値を超えたときに、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、MAG間で確立されたトンネルでトラフィック転送を続ける時間を制限する指示を与えるステップと、
前記判断の結果、前記トラフィック流量が第2の閾値を超えたときに、前記移動元MAGおよび移動先MAGに対して、FPMIPにおけるハンドオーバからPMIP(Proxy Mobile IP Protocol)におけるハンドオーバに切り替える指示を与えるステップと、
前記移動元MAGおよび移動先MAGにおいて、
前記PCRFリソース制御サーバからの指示に応じて、FPMIPにおけるハンドオーバを、PMIPにおけるハンドオーバに切り替えるステップと、
前記PCRFリソース制御サーバからの指示に応じて、FPMIPにおけるハンドオーバを行なう時間を限定するステップと、を少なくとも含むことを特徴とするハンドオーバ制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−226470(P2010−226470A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72138(P2009−72138)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】