説明

ハンドル装置

【課題】ハンドルとスプリングとの各配置の自由度を向上させて、これらを狭い空間にも配置できるようにし、ハンドルを回動させたとき、このハンドルに対するスプリングの連結が不意に解除されないようにする。
【解決手段】ハンドル装置は、ある軸心28回りに往、復回動A,B可能となるよう静止側部材26に枢支されるハンドル27と、一端部36が静止側部材26に連結される一方、他端部38がハンドル27の被連結部39に連結されるリターンスプリング30とを備える。他の軸心33回りにスプリング30が回動可能となるようこのスプリング30の中途部32を静止側部材26に枢支する。スプリング30における中途部32から他端部38に至る線材31の中途部分に曲げ形状部41を形成する。ハンドル27を往回動Aさせることにより、他の軸心33とハンドル27の被連結部39との間の離間寸法Lが増長するとき、曲げ形状部41が弾性変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体側など静止側部材に枢支されるハンドルと、このハンドルを所定の初期位置に向けて回動させるよう付勢するリターンスプリングとを備えたハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記ハンドル装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、ハンドル装置は、車両におけるシートの前端部に設定された軸心回りに往、復回動可能となるよう上記シートに枢支されるハンドルと、線材により形成され、上記軸心回りで回動可能となるようその長手方向の中途部が上記シートに枢支されるリターンスプリングとを備えている。このスプリングは、その一端部が上記シートに連結される一方、他端部が上記ハンドルの被連結部に連結されて、上記ハンドルを初期位置に復回動させるよう付勢する。
【0003】
そして、上記ハンドルが上記スプリングの付勢力により初期位置に復回動させられている状態では、上記シートは、車体のフロアパネル側に固定されたロック状態とされる。一方、上記スプリングの付勢力に対抗して、上記ハンドルをその初期位置から往回動させるよう操作すれば、このハンドルの往回動に連動して、上記車体のフロアパネル側に対するシートのロック状態が解除され、上記シートの位置調整が可能とされる。この位置調整後に上記操作を解除すれば、上記ハンドルはスプリングの付勢力により初期位置にまで復回動し、上記シートは、上記調整後の位置において再びロック状態とされる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−108750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の技術では、ハンドルとスプリングとの各回動中心は互いに同じ軸心とされており、このため、これらハンドルとスプリングとの互いの相対位置を変更することにつき、制限が与えられている。よって、例えば、これらハンドルとスプリングとを、ある限られた狭い空間に配置しようとする場合には、上記のようにこれらの相対位置の変更が制限される分、これらの配置がし難くなるおそれを生じる。
【0006】
そこで、上記ハンドルの回動中心である軸心の径方向外方に偏位する他の軸心回りに上記スプリングを回動可能とし、つまり、上記ハンドルとスプリングの各回動中心を個別に設けて、これらハンドルとスプリングとの各配置の自由度を向上させ、これらを上記した狭い空間にも容易に配置できるようにすることが考えられる。
【0007】
しかし、上記のようにした場合、ハンドルを往回動させると、前記のようにハンドルとスプリングとを同一の軸心回りで回動させるようにした場合に比べ、上記他の軸心とハンドルの被連結部との間の離間寸法が大きく増長するよう変化することがある。この場合、上記スプリングの中途部から他端部に至る部分は弾性変形し難いため、上記離間寸法の増長により、ハンドルの被連結部に対するスプリングの他端部の連結が解除され、このスプリングの機能が阻害されるおそれを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、静止側部材に枢支されるハンドルと、このハンドルを所定の初期位置に向けて回動させるよう付勢するリターンスプリングとを備えたハンドル装置において、上記ハンドルとスプリングとの各配置の自由度を向上させて、これらを狭い空間にも配置できるようにし、かつ、このようにした場合でも、上記ハンドルを回動させたとき、このハンドルに対するスプリングの連結が不意に解除されないようにして、このスプリングの機能が良好に保たれるようにすることである。
【0009】
請求項1の発明は、ある軸心28回りに往、復回動A,B可能となるよう静止側部材26に枢支されるハンドル27と、線材31により形成され、その長手方向の中途部32が上記静止側部材26に枢支され、一端部36が上記静止側部材26に連結される一方、他端部38が上記ハンドル27の被連結部39に連結されて、上記ハンドル27を初期位置に復回動Bさせるよう付勢するリターンスプリング30とを備えたハンドル装置において、
上記軸心28の径方向外方に偏位する他の軸心33回りに上記スプリング30が回動可能となるようこのスプリング30の上記中途部32を上記静止側部材26に枢支し、
上記スプリング30における上記中途部32から他端部38に至る上記線材31の中途部分に曲げ形状部41を形成し、上記ハンドル27を往回動Aさせることにより、上記他の軸心33とハンドル27の被連結部39との間の離間寸法Lが増長するとき、上記曲げ形状部41が弾性変形するようにしたことを特徴とするハンドル装置である。
【0010】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明による効果は、次の如くである。
【0012】
請求項1の発明はある軸心回りに往、復回動可能となるよう静止側部材に枢支されるハンドルと、線材により形成され、その長手方向の中途部が上記静止側部材に枢支され、一端部が上記静止側部材に連結される一方、他端部が上記ハンドルの被連結部に連結されて、上記ハンドルを初期位置に復回動させるよう付勢するリターンスプリングとを備えたハンドル装置において、
上記軸心の径方向外方に偏位する他の軸心回りに上記スプリングが回動可能となるようこのスプリングの上記中途部を上記静止側部材に枢支している。
【0013】
このため、上記ハンドルとスプリングとの各回動中心が個別に設けられていることから、これらハンドルとスプリングとの相対位置は互いに制限されることなく自由に選択できる。よって、これらハンドルとスプリングとを配置するための空間が狭いとしても、上記のように、これらの相対位置を自由に選択できる分、これらの配置を容易にすることができる。
【0014】
また、上記スプリングにおける上記中途部から他端部に至る上記線材の中途部分に曲げ形状部を形成し、上記ハンドルを往回動させることにより、上記他の軸心とハンドルの被連結部との間の離間寸法が増長するとき、上記曲げ形状部が弾性変形するようにしている。
【0015】
このため、上記ハンドルを往回動させることにより、上記離間寸法が大きく増長したときには、上記曲げ形状部が弾性変形して、上記離間寸法の増長に上記スプリングの弾性変形が追従する。よって、上記ハンドルの被連結部に対するスプリングの他端部の連結が不意に解除される、ということは防止され、ハンドルを復回動させるよう付勢するスプリングの機能が良好に保たれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のハンドル装置に関し、静止側部材に枢支されるハンドルと、このハンドルを所定の初期位置に向けて回動させるよう付勢するリターンスプリングとを備えたハンドル装置において、上記ハンドルとスプリングとの各配置の自由度を向上させて、これらを狭い空間にも配置できるようにし、かつ、このようにした場合でも、上記ハンドルを回動させたとき、このハンドルに対するスプリングの連結が不意に解除されないようにして、このスプリングの機能が良好に保たれるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0017】
即ち、ハンドル装置は、ある軸心回りに往、復回動可能となるよう静止側部材に枢支されるハンドルと、線材により形成され、その長手方向の中途部が上記静止側部材に枢支され、一端部が上記静止側部材に連結される一方、他端部が上記ハンドルの被連結部に連結されて、上記ハンドルを初期位置に復回動させるよう付勢するリターンスプリングとを備える。
【0018】
上記軸心の径方向外方に偏位する他の軸心回りに上記スプリングが回動可能となるようこのスプリングの上記中途部を上記静止側部材に枢支する。上記スプリングにおける上記中途部から他端部に至る上記線材の中途部分に曲げ形状部を形成する。上記ハンドルを往回動させることにより、上記他の軸心とハンドルの被連結部との間の離間寸法が増長するとき、上記曲げ形状部が弾性変形するようにしている。
【実施例】
【0019】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0020】
図において、符号1は自動車で例示される車両で、矢印Frはこの車両1の進行方向の前方を示している。
【0021】
上記車両1は、その内部が車室2とされる車体3を備えている。また、この車体3は、上記車室2の下面を形成するフロアパネル4と、上記車室2の側面を形成する側壁5、およびこの側壁5に形成されたドア開口6を開閉可能に閉じるスライド式のサイドドア7とを備えている。
【0022】
上記車室2にはシート装置10が設けられている。このシート装置10は、前、後シート11,12を備えている。この後シート12は、上記フロアパネル4において一段高くなるよう形成された台座部13上に載置されたシートクッション14と、このシートクッション14の後端部側から上方に突出するシートバック15と、このシートバック15の上部側が前方に向かって往、復回動可能かつ所定回動位置で固定可能となるようこのシートバック15の下端部を上記シートクッション14の後端部に枢支するリクライニング装置16と、上記シートクッション14を上記台座部13上に解除可能にロックするロック装置17とを備えている。
【0023】
図示しないが、上記リクライニング装置16への操作により上記シートバック15を往回動させてこのシートバック15をシートクッション14上に重ね合わせ、かつ、上記ロック装置17への操作により台座部13に対するシートクッション14のロックを解除してやれば、上記のように互いに重ね合わされたシートクッション14とシートバック15とを一体的に上記台座部13の前方の空間に収納させることが可能とされている。
【0024】
上記ロック装置17は、前後方向に延びる枢支軸19により上下に回動可能となるようシートクッション14に枢支され、車両1の幅方向に延びるロックレバー20と、このロックレバー20の外側端部21に取り付けられ、上記後シート12への着座者であるオペレータ22により操作可能とされるハンドル装置23と、上記ロックレバー20の外側端部21が下方回動するよう付勢する不図示のばねとを備えている。上記ハンドル装置23は、車両1の幅方向で、上記サイドドア7の内側面と後シート12の外側面との間に挟まれた狭い空間24に配置されている。
【0025】
そして、上記ばねの付勢力により、上記ロックレバー20の外側端部21が下方回動すれば(各図中実線)、上記台座部13に対しシートクッション14がロックされるようになっている。一方、上記オペレータ22が上記ハンドル装置23を操作して、上記ロックレバー20の外側端部21を上方回動させれば(図3中一点鎖線)、上記ロックが解除されるようになっている。
【0026】
上記ロックレバー20は車体3の静止側部材26とされるものである。上記ハンドル装置23は、上記ロックレバー20の外側端部21側から上方に向かって突出し、上記後シート12の外側面に沿って延びるハンドル27を備えている。このハンドル27は車両1の側面視で門形状をなしている。前後方向に延びる軸心28回りで上記ハンドル27の上部側が車両1の外側方に向かって往、復回動A,B可能となるよう、上記ハンドル27の前、後各下端部がそれぞれ枢支軸29により上記ロックレバー20の外側端部21に枢支されている。
【0027】
また、上記ハンドル装置23は、上記ハンドル27を初期位置(図1〜3中実線)に復回動Bさせるよう付勢する前後一対のリターンスプリング30を備えている。これら各スプリング30は、弾性の線材31により形成され、その長手方向の中途部32はコイル形状とされて、前後方向に延びる他の軸心33回りに回動可能となるよう他の枢支軸34により上記ロックレバー20の外側端部21に枢支されている。上記他の軸心33は、前記軸心28の径方向外方(上方)に偏位している。
【0028】
上記各スプリング30の線材31の一端部36は、上記ロックレバー20の外側端部21に形成された連結孔37に嵌入されて、この外側端部21に連結されている。また、上記各スプリング30の線材31の他端部38は上記ハンドル27に形成された連結孔である被連結部39に嵌入されて、このハンドル27に連結されている。
【0029】
上記各スプリング30における上記中途部32から他端部38に至る上記線材31の中途部分にコイル形状の曲げ形状部41が形成されている。
【0030】
上記台座部13に対するシートクッション14のロックを解除させようとするときには、オペレータ22は、上記ハンドル27の上端部に対し指の係合をし易くするため、まず、このハンドル27を往回動Aさせる(図中一点鎖線)。次に、このハンドル27の上端部に指を係合させて上方に引き上げる。すると、これに連動して上記ロックレバー20の外側端部21が上方回動させられ(図3中一点鎖線)、上記ロックが解除される。一方、上記ハンドル27の上端部に対する指の係合を解除すれば、上記ロックレバー20とハンドル27とは前記ばねやスプリング30の付勢力により元の状態に戻って、上記台座部13に対しシートクッション14がロックされる。
【0031】
図5において、上記ハンドル27を大きく往回動Aさせることにより、上記他の軸心33とハンドル27の被連結部39との間の離間寸法Lが増長するとき、上記曲げ形状部41が弾性変形することにより、上記スプリング30の他端部38側が上記他の軸心33から離れるよう回動Cして、上記離間寸法Lの増長に上記スプリング30の弾性変形が追従することとされている。
【0032】
上記構成によれば、ハンドル27の枢支用の軸心28の径方向外方に偏位する他の軸心33回りに上記スプリング30が回動可能となるようこのスプリング30の上記中途部32を上記静止側部材26に枢支している。
【0033】
このため、上記ハンドル27とスプリング30との各回動中心が個別に設けられていることから、これらハンドル27とスプリング30との相対位置は互いに制限されることなく自由に選択できる。よって、これらハンドル27とスプリング30とを配置するための空間が狭いとしても、上記のように、これらの相対位置を自由に選択できる分、これらの配置を容易にすることができる。
【0034】
また、上記スプリング30における上記中途部32から他端部38に至る上記線材31の中途部分に曲げ形状部41を形成し、上記ハンドル27を往回動Aさせることにより、上記他の軸心33とハンドル27の被連結部39との間の離間寸法Lが増長するとき、上記曲げ形状部41が弾性変形するようにしている。
【0035】
このため、上記ハンドル27を往回動Aさせることにより、上記離間寸法Lが大きく増長したときには、上記曲げ形状部41が弾性変形して、上記離間寸法Lの増長に上記スプリング30の弾性変形が追従する。よって、上記ハンドル27の被連結部39に対するスプリング30の他端部38の連結が不意に解除される、ということは防止され、ハンドル27を復回動Bさせるよう付勢するスプリング30の機能が良好に保たれる。
【0036】
なお、以上は図示の例によるが、上記ロックレバー20の外側端部21(静止側部材26)に対するスプリング30の連結とは、係合(掛合)の概念を含むものとする。また、上記曲げ形状部41は線材31の他端部38側を単にU字形状に屈曲させたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図3の部分拡大部分断面図である。
【図2】車両のシート装置の斜視図である。
【図3】後シートのロック装置の正面図である。
【図4】後シートのロック装置の斜視展開図である。
【図5】作用を説明する図で、図1に相当する図である。
【符号の説明】
【0038】
1 車両
2 車室
3 車体
17 ロック装置
20 ロックレバー
21 外側端部
22 オペレータ
23 ハンドル装置
24 空間
26 静止側部材
27 ハンドル
28 軸心
29 枢支軸
30 スプリング
31 線材
32 中途部
33 他の軸心
34 他の枢支軸
36 一端部
37 連結孔
38 他端部
39 被連結部
41 曲げ形状部
A 往回動
B 復回動
C 回動
L 離間寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある軸心回りに往、復回動可能となるよう静止側部材に枢支されるハンドルと、線材により形成され、その長手方向の中途部が上記静止側部材に枢支され、一端部が上記静止側部材に連結される一方、他端部が上記ハンドルの被連結部に連結されて、上記ハンドルを初期位置に復回動させるよう付勢するリターンスプリングとを備えたハンドル装置において、
上記軸心の径方向外方に偏位する他の軸心回りに上記スプリングが回動可能となるようこのスプリングの上記中途部を上記静止側部材に枢支し、
上記スプリングにおける上記中途部から他端部に至る上記線材の中途部分に曲げ形状部を形成し、上記ハンドルを往回動させることにより、上記他の軸心とハンドルの被連結部との間の離間寸法が増長するとき、上記曲げ形状部が弾性変形するようにしたことを特徴とするハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−46074(P2009−46074A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215955(P2007−215955)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】