説明

ハードコーティング組成物、これを用いた多層シート及びその製造方法

本発明のハードコーティング組成物は、フッ素系アクリレート化合物約5〜60重量%、(メタ)アクリレートモノマー約5〜50重量%、光重合開始剤約0.1〜10重量%、およびビスフェノール系樹脂約1〜35重量%を含む。前記ハードコーティング組成物は、不良率が低く、コーティング表面の平滑度が高いため、高光沢の優れた質感を表現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコーティング組成物、これを含む多層シート及びその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、ビスフェノール系樹脂を導入することによって、不良率が低く、且つコーティング表面の平滑度が高いため、優れた高光沢質感を表現できるハードコーティング組成物及びこれを用いた高光沢曲面装飾用多層シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家電製品、家具又は建物の内外装材の表面に設置されてインテリア効果を示す装飾パネルは、図案が印刷されている装飾層と、この装飾層上に積層されている板ガラスとを含む。
【0003】
板ガラスを備える装飾パネルは、装飾パネルが設置される製品のサイズに合わせて装飾パネル用板ガラスを切断した後、切断された板ガラスの一面に装飾層を形成する方法で作製される。そして、前記装飾層を形成する方法としては、板ガラスにインクで図案を直接印刷する方法、転写紙を用いて板ガラスに図案を熱転写する方法、及び図案が印刷された装飾フィルムを板ガラスに接着する方法などがある。
【0004】
ところが、このような従来の製造方法においては、それぞれの板ガラスに装飾層を一つずつ形成するので連続的に行うことが難しく、工程が複雑で、且つ高い製造費用を要するという問題がある。
【0005】
一方、近年、冷蔵庫、洗濯機などの家電製品の外装材は、金属材料からABS樹脂などのプラスチック材料に迅速に切り替えられている。ところが、このような板ガラスを含む従来の装飾パネルは、プラスチック素材の外装材に適用しにくいという問題を有する。
【0006】
具体的には、プラスチックはガラスに比べて約10倍大きい線膨張係数を有するため、板ガラスを有する装飾パネルとプラスチック外装材との間で、温度変化による収縮率の差が大きい。したがって、板ガラスを有する装飾パネルが取り付けられたプラスチック材料の製品が高温と低温との環境に繰り返し露出された場合、装飾パネルとプラスチック外装材との間の収縮率の差によって装飾パネルが外装材から浮き上がる現象が発生する。特に、このような現象は、家電製品の耐久性評価のための熱サイクル試験で著しく発生し、これが家電製品の不良の原因となっている。
【0007】
このような問題を解決するために、装飾パネルの板ガラスをプラスチック材料に切り替えるための試みがなされた。しかしながら、プラスチック材料は、ガラスに比べて衝撃強度および耐スクラッチ性が低く、汚染され易いという短所を有するので、装飾パネルの外装材として適用されていない。
【0008】
この問題を解決するために、装飾パネルの板ガラスをプラスチックシートに変更し、前記プラスチックシート上にハードコーティング層を形成することによって、耐衝撃性、耐スクラッチ性、鉛筆硬度などの物理的特性に優れ、防汚性などに優れた新しい装飾パネルが開発された。
【0009】
しかしながら、曲面を有する成型品の場合、真空成形後にハードコーティングをするとき、ロールコーティングが不可能であるか、フローコーティング時のコーティング性が不良になる。また、曲面を有する成型品の場合、円板に予めハードコーティングをするとき、成形加工時に屈曲部位にクラックが発生するという問題がある。このような問題のために、曲面部位を含む成型品の成形時には、コーティングしていない円板の成形加工後にスプレー法又はディッピング法でハードコーティングを行っている。しかしながら、この場合、費用が高価であり、平板ハードコーティングに比べてコーティング面の平滑度が低下し、塗装の高光沢質感が低下するという問題がある。最近は、スプレー型塗料のレベリング性を改善した塗料が使用されているが、これもスプレー塗装の限界のため費用が高く、不良率が高いという短所を有する。また、インサートフィルムなどを使用する技術が知られているが、これは、例えば、一部の射出品のみに制限的に適用されており、一定の強度を得ることが難しいので耐スクラッチ性が低下し、平板用真空成形技術には適用しにくい実情にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、表面硬度及び成形作業性に優れたハードコーティング組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、不良率が少なく、高光沢質感を表現できるハードコーティング組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、付着力に優れたハードコーティング組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、光透過率と光沢度に優れたハードコーティング組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の更に他の目的は、曲面装飾パネルに適用可能なハードコーティング組成物を提供することにある。
【0015】
本発明の更に他の目的は、前記ハードコーティング組成物を使用し、表面硬度及び成形作業性に優れた多層シートを提供することにある。
【0016】
本発明の更に他の目的は、前記ハードコーティング組成物を使用して多層シートを容易に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一形態は、ハードコーティング組成物を提供する。前記ハードコーティング組成物は、フッ素系アクリレート化合物約5〜60重量%、(メタ)アクリレートモノマー約5〜50重量%、光重合開始剤約0.1〜10重量%、およびビスフェノール系樹脂を約1〜35重量%を含む。
【0018】
具体例では、前記ハードコーティング組成物は、光安定剤約0.01〜1重量%をさらに含むことができる。
【0019】
具体例では、前記ハードコーティング組成物は、粘度が25℃で約1〜約300cpsでありうる。
【0020】
前記ハードコーティング組成物は、溶媒約5〜80重量%をさらに含むことができる。
【0021】
本発明の他の形態は、前記ハードコーティング組成物を用いた多層シートを提供する。前記多層シートは、前記ハードコーティング組成物で形成されたハードコーティング層と、前記ハードコーティング層の一方の面に形成されたプラスチックシート層とを含みうる。
【0022】
具体例では、前記ハードコーティング層は、プラスチックシート層上に約1μm以上約12μm未満の厚さで形成されうる。
【0023】
好ましくは、前記ハードコーティング層は、ASTM D−2457によって測定した光沢度が約95%以上であり、伸率200%で成形するときにクラックが発生せず、表面硬度が4H以上である。
【0024】
他の具体例では、前記プラスチックシートの他方の面に装飾フィルムが形成されうる。前記多層シートは曲面が含まれた形状でありうる。
【0025】
具体例では、前記装飾フィルムは、基材フィルム上に形成された印刷層を含むことができる。
【0026】
また、前記装飾フィルムは、前記印刷層上に形成された粘着剤層をさらに含むことができる。
【0027】
具体例では、前記装飾フィルムは、第1の透明フィルムと、前記第1の透明フィルム上に形成された第1の接着剤層と、前記第1の接着剤層上に付着された基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された印刷層と、前記印刷層上に形成された第2の接着剤層と、前記第2の接着剤層上に付着された第2の透明フィルムと、前記第2の透明フィルム上に形成された粘着剤層とを含むことができる。
【0028】
具体例では、前記基材フィルム、前記印刷層、前記第2の接着剤層及び第2の透明フィルムのうち少なくとも一つにはエンボスパターンが形成されうる。
【0029】
本発明の更に他の形態は、前記多層シートの製造方法を提供する。前記方法は、a)装飾フィルムの一方の面にプラスチックシート層が形成された平板複合シートを準備し、b)前記プラスチックシート層上にハードコーティング組成物を塗布し、c)前記ハードコーティング組成物に紫外線を照射することによってプレキュアされた(pre−cured)ハードコーティング層を形成し、d)前記プレキュアされたハードコーティング層が形成された平板複合シートを曲面を含む最終形状に成形し、e)前記プレキュアされたハードコーティング層に紫外線を照射することによってハードコーティングメインキュアリング(main−curing)層を形成する段階を含むことができる。
【0030】
具体例では、前記c)段階では、紫外線を約200〜300mJ/cmで照射することができる。前記プレキュアされたハードコーティング層の表面硬度は約1B〜1Hでありうる。
【0031】
具体例では、前記e)段階では、紫外線を500mJ/cm以上で照射することができる。前記ハードコーティングメインキュアリング層の表面硬度は4H以上でありうる。
【0032】
前記ハードコーティング組成物は、プラスチックシート層上に1μm以上12μm未満の厚さで塗布されうる。
【0033】
具体例では、前記装飾フィルムは、基材フィルム上に印刷層を形成し、前記印刷層上に接着剤を塗布して第2の接着剤層を形成する段階と、前記第2の接着剤層上に第2の透明フィルムを位置させ、前記基材フィルム、前記印刷層、前記第2の接着剤層及び前記第2の透明フィルムを合紙して一つのシートを作製する段階と、エンボシング機を使用して前記シートにエンボスパターンを形成する段階と、第1の透明フィルム上に接着剤を塗布して第1の接着剤層を形成する段階と、前記基材フィルムが前記第1の接着剤層に向くように前記エンボスパターンが形成されたシートを前記第1の接着剤層上に位置させ、前記第1の透明フィルム、前記第1の接着剤層及び前記エンボスパターンが形成されたシートを合紙して予備装飾フィルムを作製する段階と、前記予備装飾フィルムの第2の透明フィルム上に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成する段階とを含む方法によって製造されうる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のハードコーティング組成物を適用した多層シートは、不良率が低く、且つコーティング表面の平滑度が高いため、優れた高光沢質感を表現できる。また、前記多層シートは、衝撃強度、耐スクラッチ性及び硬度などの物理的特性に優れ、且つ汚染防止性能に優れるため、プラスチック素材の製品に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る曲面多層シートの製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態に係る曲面多層シートの製造方法を説明する図である。
【図3】本発明に係る装飾フィルムの製造方法に対する一実施形態を示す図である。
【図4】本発明に係る装飾フィルムに対する一実施形態を示す図である。
【図5】本発明に係る装飾フィルムに対する他の実施形態を示す図である。
【図6】本発明に係る装飾フィルムに対する更に他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ハードコーティング組成物
本発明のハードコーティング組成物は、フッ素系アクリレート化合物、(メタ)アクリレートモノマー、光重合開始剤及びビスフェノール系樹脂を含む。
【0037】
具体例では、前記フッ素系アクリレート化合物は、3官能基以上のアクリレート樹脂の骨格(Backborn)にフルオロ基、フルオロアルキル基などのフッ素系化合物が置換基として導入された共重合体である。一つの具体例では、前記フッ素系アクリレート化合物は、多官能性アクリレートモノマーとフッ素系アクリレート化合物との共重合体である。他の具体例では、フッ素系アクリレートモノマー、オリゴマー又はホモポリマーも適用される。
【0038】
具体例では、前記フッ素系アクリレート化合物は下記化学式1で表されうる。
【0039】
【化1】

【0040】
式中、X、X及びXはそれぞれ水素又はフッ素であり、Yは、直鎖状又は分岐状のフルオロアルカン、環状のフルオロアルカン、直鎖状又は分岐状の水酸化フルオロアルカンであり、nは約1〜10,000の整数である。
【0041】
前記フッ素系アクリレート化合物としてはD−201MC(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)を使用できるが、必ずしもこれに制限されない。
【0042】
前記フッ素系アクリレート化合物は、組成物の全体の重量のうち約5〜約60重量%で含まれることが好ましく、より好ましくは約10〜約50重量%であり、最も好ましくは約15〜約45重量%で含まれる。前記フッ素系アクリレート化合物の含量が5重量%未満である場合、所望の防汚性が得られにくく、前記フッ素系アクリレート化合物の含量が60重量%を超える場合は、耐スクラッチ性と耐磨耗性が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0043】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、脂肪族環状構造を有さない(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。前記(メタ)アクリレートモノマーとしては、単官能基の(メタ)アクリレートモノマー、2官能基の(メタ)アクリレートモノマー、3官能基以上の多官能基の(メタ)アクリレートモノマー又はこれらの混合物を使用することができる。
【0044】
前記単官能基の(メタ)アクリレートモノマーの例としては、ブチルアクリレート、アリルメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレートなどが挙げられるが、必ずしもこれらに制限されない。
【0045】
前記2官能基の(メタ)アクリレートモノマーとしては1,6−へキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(BGDMA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)などを使用できるが、必ずしもこれらに制限されない。
【0046】
前記3官能基以上の多官能基の(メタ)アクリレートモノマーの例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)又はジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などを挙げることができるが、必ずしもこれらに制限されない。
【0047】
前記ハードコーティング組成物は、前記(メタ)アクリレートモノマーの他に、組成物の粘度を適宜調節したり防汚性を向上させるために、必要に応じてフッ素系(メタ)アクリレートモノマーやウレタン(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーなどをさらに含むこともできる。
【0048】
前記(メタ)アクリレートモノマーの含量は、全体の組成物のうち約5〜約50重量%であることが好ましく、より好ましくは約5〜約40重量%であり、最も好ましくは約7〜約35重量%である。(メタ)アクリレートモノマーの含量が約5重量%未満であるとハードコーティング層の硬度が弱くなり、(メタ)アクリレートモノマーの含量が約50重量%を超えるとハードコーティング層の硬度が過度に高くなりうるので好ましくない。
【0049】
ハードコーティング層の硬度は、最終硬化工程が行われた後の状態をいい、e)段階まで経た、すなわち、2次硬化工程であるメインキュアリングを通して形成されたメインキュアリング層の硬度をいう。
【0050】
前記光重合開始剤は、紫外線を照射されてフリーラジカルを生成し、このようなフリーラジカルの作用によって架橋反応を起こす。前記光重合開始剤としては、一般的な紫外線硬化型組成物に使用される光重合開始剤を制限なく使用することができる。例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(Irgacure 184)、α,α−ジメトキシ−α−ヒドロキシアセトフェノン(Darocure 1173)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンとベンゾフェノンとの混合物などのベンゾフェノン系物質、ならびに2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパンなどを使用できるが、必ずしもこれらに制限されない。
【0051】
前記光重合開始剤は、全体の組成物のうち約0.1〜約10重量%で使用することができる。光重合開始剤の含量が約0.1重量%未満であるとハードコーティング層の充分な硬化が行われなくなり、光重合開始剤の含量が約10重量%を超えると、不純物として残ってハードコーティング層の硬度を低下させるおそれがある。前記光重合開始剤は、好ましくは約0.5〜5重量%、より好ましくは約0.7〜3重量%で使用することができる。
【0052】
本発明のハードコーティング組成物は、鮮明度とコーティング染みの改善のためにビスフェノール系樹脂を含む。具体的には、屈折率が約1.50以上のビスフェノール系樹脂が適用される。前記ビスフェノール系樹脂の屈折率は、約1.50〜3.00であることが好ましい。前記ビスフェノール系樹脂の例としては、エチレンオキシド変性ビスフェノールAのジアクリレート樹脂が挙げられる。
【0053】
前記ビスフェノール系樹脂の含量は、全体の組成物のうち約1〜35重量%であることが好ましい。ビスフェノール系樹脂の含量が約1重量%未満である場合は、前記ビスフェノール系樹脂の使用による効果が小さい場合があり、ビスフェノール系樹脂の含量が約35重量%を超える場合は、ハードコーティング層の表面硬度が弱くなるおそれがあるので好ましくない。他の具体例では、前記ビスフェノール系樹脂は、約3〜20重量%、好ましくは約5〜15重量%で含まれうる。
【0054】
本発明では、ハードコーティング組成物のコーティング性、乾燥速度、製品の外観または生産収率などを考慮して有機溶媒をさらに含むことができる。
【0055】
前記有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸ブチル、酢酸エチル、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール又はこれらの混合物が挙げられるが、必ずしもこれらに制限されない。これらの有機溶媒は、少なくとも1種以上を使用することができ、好ましくは約3〜5種類の有機溶媒を混合して使用する。
【0056】
前記有機溶媒の含量は、全体の組成物のうち約5〜約80重量%であることが好ましい。有機溶媒の含量が約5重量%未満であると、コーティング性に問題があるため均一な膜を形成できない場合があり、有機溶媒の含量が約80重量%を超えると、コーティング膜の厚さが非常に薄くなり、防汚特性、耐スクラッチ性、耐磨耗性が低下しうるため好ましくない。具体例では、前記有機溶媒は、約10〜約70重量%含まれ、他の具体例では約30〜約60重量%で使用することができる。
【0057】
また、前記ハードコーティング組成物は光安定剤をさらに含むことができる。光安定剤は、ハードコーティング層の光安定性を向上させ、時間の経過とともにハードコーティング層の特性が変わることを予防することができる。
【0058】
前記光安定剤は、前記光重合開始剤の種類に合わせて適宜選択することができる。例えば、前記光重合開始剤がα,α−ジメトキシ−α−ヒドロキシアセトフェノン(Darocure 1173)などのベンゾフェノン系物質である場合、前記光安定剤としてはセバシン酸ビス−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)(Tinuvin 123)などを使用できるが、必ずしもこれに制限されない。前記光安定剤の含量は、全体の組成物のうち約0.01〜約1重量%であり、好ましくは約0.1〜約1重量%である。
【0059】
さらに、前記ハードコーティング組成物は、上述した各構成成分の他に、必要に応じて、他の添加剤としてレベリング剤、紫外線吸収剤又は界面活性剤などをさらに含むこともできる。
【0060】
前記ハードコーティング組成物の粘度は、25℃で約1〜300cpsであることが好ましい。前記粘度の範囲内では前記ハードコーティング組成物の流動性が良くなり、ハードコーティング層を形成するときの作業性を改善することができる。前記ハードコーティング組成物の粘度は、他の具体例では約10〜200cpsであり、更に他の具体例では約50〜150cpsである。
【0061】
本発明のハードコーティング層は、上述したハードコーティング組成物で形成されることによって、ハードコーティング層を形成するときの作業性に優れるだけでなく、汚染防止機能、耐衝撃性及び耐スクラッチ性などに優れる。
【0062】
多層シート
添付の各図面において、各装置、層、フィルム及びシートの大きさは、本発明の明確性のために誇張して示しており、各装置は、本明細書で説明していない多様な付加装置を備えることができる。本発明の各具体例において、層、フィルム又はシートが他の層、フィルム又はシート上に位置するとは、層、フィルム又はシートが他の層、フィルム又はシートの上に直接形成されてもよく、それらの間にさらなる層、フィルム又はシートが存在してもよいことを意味する。
【0063】
図1は、本発明の具体例に係る曲面多層シートの製造方法の概略を示すフローチャートである。
【0064】
本発明に係る曲面多層シートの製造方法は、a)装飾フィルムの一方の面にプラスチックシート層が形成された平板複合シートを準備し、b)前記プラスチックシート層上にフッ素系アクリレート化合物を含むハードコーティング組成物を塗布し、c)前記ハードコーティング組成物に紫外線を照射することによってプレキュアされたハードコーティング層を形成し、d)前記プレキュアされたハードコーティング層が形成された平板複合シートを曲面が含まれた最終形状に成形し、e)前記プレキュアされたハードコーティング層に紫外線を照射することによってハードコーティングメインキュアリング層を形成する段階を含む。
【0065】
以下、これらの具体的な工程を説明する。
【0066】
図2は、本発明の具体例に係る高光沢曲面多層シートの製造方法を説明するための図である。以下、図2を参照して詳細に説明する。
【0067】
a)段階は、装飾フィルム10の一方の面にプラスチックシート層20が形成された平板複合シート100を準備する段階である。
【0068】
この段階では、ラミネーティングローラー(図示せず)を用いて装飾フィルム10の一方の面にプラスチックシート層20を合紙して平板複合シート100を準備することが好ましいが、形成方法が必ずしもこれに限定されるわけではない。
【0069】
前記プラスチックシート層20は、プラスチック樹脂を押出又は射出して作製されうる。前記プラスチック樹脂は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、スチレン−アクリロニトリル(SAN)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂又はこれらの混合物でありうるが、必ずしもこれらに制限されない。これらのうち、透明度および平滑性に優れ、耐候性及び耐老化性に優れたPMMA樹脂を使用することがより好ましい。
【0070】
基材フィルム13上に印刷層14が形成されることによって装飾フィルム10が製造されるが、これについては図3を参照して説明する。
【0071】
b)段階は、前記プラスチックシート層20上にフッ素系アクリレート化合物を含むハードコーティング組成物30を塗布する段階である。
【0072】
前記プラスチックシート層20上にハードコーティング組成物30を塗布する方法としては、ディップコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング又はグラビアコーティングなどの方法を用いることができるが、必ずしもこれらに制限されない。
【0073】
具体例では、前記ハードコーティング組成物は、プラスチックシート層上に約1μm以上約12μm未満の厚さで塗布されうる。他の具体例では、前記ハードコーティング組成物は、プラスチックシート層上に約3μm〜10μmの厚さで塗布されうる。更に他の具体例では、前記ハードコーティング組成物は、プラスチックシート層上に約3.5μm〜7.5μmの厚さで塗布されうる。
【0074】
本発明の一つの具体例において、前記ハードコーティング組成物30を塗布する前にプラスチックシート層20を洗浄し、選択的に紫外線照射器で予熱することによって、残っている油分および異物などを除去する段階をさらに行うことができる。
【0075】
c)段階は、前記ハードコーティング組成物30に紫外線を照射し、プレキュアされたハードコーティング層40を形成する段階である。
【0076】
b)段階においてプラスチックシート層20上に塗布されたハードコーティング組成物30には、具体的には、c)段階で1次硬化であるプレキュアリングが行われ、後述するe)段階で2次硬化であるメインキュアリングが行われる。
【0077】
照射しようとする紫外線の波長領域によって高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの紫外線ランプを用いて硬化工程を実施する。c)段階での紫外線照射エネルギーは、約200〜300mJ/cmの光量範囲を有することが好ましい。
【0078】
前記紫外線照射エネルギーが約200mJ/cm未満である場合、プレキュアされたハードコーティング層40とプラスチックシート層20との付着力が充分でないため、2次加工時にプレキュアされたハードコーティング層40に剥離現象が発生しうるという問題がある。また、前記紫外線照射エネルギーが約300mJ/cmを超える場合、プレキュアされたハードコーティング層40の硬化が過度に進み、伸率が低下し、2次加工時にプレキュアされたハードコーティング層40にクラック現象が発生しうる。
【0079】
プレキュアリングとは、e)段階でのメインキュアリングの前に行われる1次的な仮硬化工程を意味する。1次硬化であるプレキュアリングによって形成されたプレキュアされたハードコーティング層40は、約1B〜1Hの表面硬度を有し、伸率は約300%以上になる。
【0080】
本発明の他の具体例においては、ハードコーティング組成物30をプレキュアリングする前に約40〜80℃の温度でハードコーティング組成物30が塗布されたプラスチックシート層を乾燥させる、または赤外線加熱することによってハードコーティング組成物30内に残存する有機溶媒を除去する段階をさらに行うことができる。
【0081】
具体例では、乾燥した状態のハードコーティング組成物によって生じる塗膜の厚さは約1〜10μmにすることが好ましい。前記範囲を逸脱する場合、成形作業性及び光沢度が低下するおそれがある。塗膜の厚さは、約3μm〜7.5μmの範囲であることがより好ましく、更に他の具体例では約3.5μm〜7μmの範囲である。
【0082】
d)段階は、前記プレキュアされたハードコーティング層40が形成された平板複合シート100を曲面が含まれた最終形状に成形する段階である。
【0083】
本発明の一つの具体例において、プレキュアされたハードコーティング層40が形成された平板複合シート100を曲面が含まれた最終形状に成形する方法としては、真空成形法を用いることが好ましい。真空成形法は、金型に加工された小さい穴又は細い溝を通してシートと金型面とに囲まれた空間を真空にし、シートを金型に吸着させて成形する方法である。真空成形によって得られる成型品の形状は、金型の形状によって変化する。一般に、真空成形によって得られる成型品は、平面の形状でなく、所定の立体的な屈曲形状、すなわち、曲面の形状を含むことになる。d)段階のプレキュアされたハードコーティング層40が形成された平板複合シート100の曲面形状は一つの具体例であり、本発明が目的とする形状がこれに制限されることはない。
【0084】
e)段階は、前記プレキュアされたハードコーティング層40に紫外線を照射し、ハードコーティングメインキュアリング層50を形成する段階である。
【0085】
上述したように、b)段階においてプラスチックシート層20上に塗布されたハードコーティング組成物30には、c)段階で1次硬化であるプレキュアリングが行われ、本段階であるe)段階で2次硬化であるメインキュアリングが行われる。
【0086】
照射しようとする紫外線の波長領域によって高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの紫外線ランプを用いて硬化工程を実施する。e)段階での紫外線照射エネルギーは、約500mJ/cm以上の光量範囲を有することが好ましい。具体例では、約600〜約1500mJ/cmの光量範囲で紫外線を照射する。
【0087】
前記紫外線照射エネルギーが約500mJ/cm未満である場合、照射エネルギーが充分でないため、表面硬度または付着力が低下するという問題がある。
【0088】
メインキュアリングとは、c)段階での1次硬化であるプレキュアリングの後に行われる2次的な本硬化工程を意味する。2次硬化であるメインキュアリングによって形成されたメインキュアリング層50は、4H以上の表面硬度を有するようになる。
【0089】
上記のような製造方法で製造された曲面多層シートは、既存のスプレー法またはディップコーティング法で製造された多層シートに比べて不良率が低く、コーティング表面の平滑度が高く、優れた高光沢質感を表現することが可能である。
【0090】
具体的には、コーティング表面の平滑度は、一般に光沢度の差で確認することができる。既存のスプレー法またはディップコーティング法で加工された多層シートの場合、表面の光沢が60度光沢機で測定したとき約95%を越えることはない。しかしながら、本発明の製造方法によって製造された多層シートは、光沢度が約95%を上回る高光沢質感の表現が可能である。
【0091】
図3は、本発明に係る装飾フィルム10の製造方法の一つの具体例を示す図である。
【0092】
カレンダー(calendar)法で製造された基材フィルム13上にインクを用いて各種花模様などの図案を印刷し、印刷層14を形成する。カレンダー法は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば容易に実施することができる。続いて、印刷層14上に接着剤を塗布し、第2の接着剤層15を形成する。
【0093】
続いて、第2の接着剤層15上に第2の透明フィルム16を位置させ、合紙機(図示せず)を用いて基材フィルム13、印刷層14、第2の接着剤層15及び第2の透明フィルム16を合紙し、一つのシート10aを作製する。
【0094】
本発明の一つの具体例では、基材フィルム13、印刷層14、第2の接着剤層15及び第2の透明フィルム16が完全に合紙されるように、シート10aを熟成室で約60〜80時間保管し、接着剤を充分に硬化させる熟成段階をさらに含んでもよい。
【0095】
続いて、シート10aにエンボスパターンを形成するために、シート10aに熱を加えて適当な温度で予熱し、エンボシング機500を使用して予熱されたシート10aに各種文字や図形を陽刻又は陰刻することによってエンボスパターンを形成する。
【0096】
一方、第1の透明フィルム11上に接着剤を塗布し、第1の接着剤層12を形成する。そして、基材フィルム13が第1の接着剤層12に向くようにエンボスパターンが形成されたシート10bを第1の接着剤層12上に位置させ、合紙機を用いて第1の透明フィルム11、第1の接着剤層12及びエンボスパターンが形成されたシート10bを合紙し、予備装飾フィルム10(10c)を作製する。または、第1の接着剤層12は、第1の透明フィルム11上の代わりに基材フィルム13の下面に形成されてもよい。
【0097】
本発明の他の具体例では、第1の透明フィルム11、第1の接着剤層12及びエンボスパターンが形成されたシート10bが完全に合紙されるように、予備装飾フィルム10(10c)を熟成室90で約20〜30時間保管し、接着剤を充分に硬化させる熟成段階をさらに行うことができる。
【0098】
続いて、予備装飾フィルム10の第2の透明フィルム16上に粘着剤を塗布し、粘着剤層17を形成する。このとき、粘着剤層17を保護するために、粘着剤層17上に離型フィルム18を付着することができる。
【0099】
図4〜図6は、上述した高光沢曲面多層シートの製造方法によって製造された曲面多層シートの一実施形態を表す。
【0100】
図4を参照すると、本発明の具体例に係る曲面装飾パネルは、装飾フィルム10と、装飾フィルム10上に形成されたプラスチックシート層20と、プラスチックシート層20上に形成されたハードコーティング層とを含む。
【0101】
装飾フィルム10は、基材フィルム13上にインクを用いて各種模様を印刷し、印刷層14を形成することによって製造される。
【0102】
本発明の他の具体例では、装飾フィルム10は、図5に示すように、印刷層14上に形成された粘着剤層17をさらに含むことができ、プラスチックシート層20は、粘着剤層17上に形成することもできる。粘着剤層17は、印刷層14上に粘着剤を塗布することによって形成される。
【0103】
基材フィルム13は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)などのオレフィン樹脂又はポリ塩化ビニル(PVC)から形成されることが好ましいが、必ずしもこれらに制限されない。
【0104】
印刷層14を形成する方法としては各種印刷方法を全て使用することができ、中でも、シルク印刷又はグラビア印刷は、多様な図案及び色相を効果的に表現するので好ましい。
【0105】
粘着剤層17は、(メタ)アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤を塗布することによって形成することができ、印刷層14がよく見えるように透明粘着剤を使用することが好ましい。
【0106】
装飾フィルムは多様な多層構造を有することができ、本発明には各種構造の装飾フィルムを制限なく使用することができる。
【0107】
図6を参照すると、本発明の他の具体例においては、装飾フィルムは、第1の透明フィルム11と、第1の透明フィルム11上に形成された第1の接着剤層12と、第1の接着剤層12上に付着された基材フィルム13と、基材フィルム13上に形成された印刷層14と、印刷層14上に形成された第2の接着剤層15と、第2の接着剤層15上に付着された第2の透明フィルム16と、第2の透明フィルム16上に形成された粘着剤層17とを含む。
【0108】
第1の透明フィルム11及び第2の透明フィルム16としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)などのオレフィン材質、アクリル材質、またはPVC材質などのフィルムを使用できるが、必ずしもこれらに制限されない。
【0109】
第1の接着剤層12及び第2の接着剤層15は、第1の透明フィルム11、第2の透明フィルム16および基材フィルム13を互いに堅固に接着できる接着力を有する接着剤を塗布することによって形成される。前記接着剤は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば容易に選択して使用することができる。
【0110】
基材フィルム13としては透明、半透明又は不透明フィルムをいずれも使用することができる。中でも、光を遮断して印刷層14が鮮明に見えるようにするために、黒色などで着色された不透明フィルムを使用することがより好ましい。
【0111】
印刷層14は、通常、基材フィルム13の上面に形成されるが、背面印刷によって基材フィルム13の下面にも同時に形成可能である。
【0112】
装飾フィルム10の表面照度を安定化させ、インテリア効果を高めるために、基材フィルム13、印刷層14、第2の接着剤層15及び第2の透明フィルム16にはエンボスパターンが形成されうる。
【0113】
一方、装飾フィルム10の粘着剤層17上には離型フィルム18が付着されうる。離型フィルム18は、粘着剤層17を保護する役割を担い、粘着剤層17上に弱く付着されるので容易に剥離される。装飾フィルム10が粘着剤層17と離型フィルム18とを含む場合、装飾フィルム10をプラスチックシート層20と合紙する前に離型フィルム18を剥がして除去し、装飾フィルム10の粘着剤層17上にプラスチックシート層20を付着して合紙する。
【実施例】
【0114】
本発明は、下記の実施例を通してより明確に理解することができ、下記の実施例は、本発明を例示するためのもので、添付の特許請求の範囲によって限定される保護範囲を制限するためのものではない。
【0115】
実施例
シルク印刷機を用いてポリエチレンフィルムに花模様を印刷して印刷層を形成し、印刷層上にアクリル系透明粘着剤(A&G Lab PR−910)を塗布した後、ポリエステル離型フィルムをアクリル系透明粘着剤層に付着させて装飾フィルムを作製した。作製された装飾フィルムから離型フィルムを除去してラミネーティングローラーに連続して供給し、0.3mmの厚さを有するPMMAシート(セファ精工株式会社製)と前記装飾フィルムをラミネーティングローラーに共に通過させて合紙した。前記装飾フィルムと合紙されたPMMAシート上に形成されるハードコーティング組成物のハードコーティング層は、大日本インキ化学工業株式会社製のフッ素系アクリレート化合物を約20重量%、ジペタアクリルトリトールヘキサアクリレートを約30重量%、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを約0.5重量%、エチレンオキシド変性ビスフェノールAのジアクリレート樹脂を約3重量%、およびメチルセロソルブを46.5重量%フローコーティング法で塗布し、60℃〜75℃の乾燥機を通過させて有機溶媒を除去することによって形成した。乾燥した状態で、ハードコーティング組成物によって形成された塗膜の厚さは5μmであった。高圧水銀ランプを用いて300mJ/cmの光量の紫外線を照射し、プレキュアリングを実施した。その後、真空成形器(V.F.Korea Inc.社製)を用いて曲面が含まれた成型品を製造した。前記曲面が含まれた成型品のプレキュアされたハードコーティング層に約700mJ/cm光量の紫外線を照射してメインキュアリングを実施し、最終的な曲面多層シートを設けた。
【0116】
比較例1
乾燥した状態のハードコーティング組成物によって形成された塗膜の厚さを約15μmにしたことを除いては、前記実施例と同様に最終的な曲面多層シートを製造した。
【0117】
比較例2
約100mJ/cm光量の紫外線を照射してプレキュアリングを実施したことを除いては、前記実施例と同様に最終的な曲面多層シートを製造した。
【0118】
比較例3
約700mJ/cm光量の紫外線を照射してプレキュアリングを実施したことを除いては、前記実施例と同様に最終的な曲面多層シートを製造した。
【0119】
実施例及び比較例1〜3によって製造された曲面多層シートの物性(機械的特性)を、下記表1に記載の物性評価方法及び装置を用いて試験した。
【0120】
【表1】

【0121】
実施例及び比較例1〜3によって製造された曲面多層シートの物性(機械的特性)の評価結果を、下記の表2に整理した。
【0122】
【表2】

【0123】
表2に示すように、実施例の場合、プレキュアリング後に測定された表面硬度が1Hであり、伸率200%で成形するときのクラック発生の有無を観察した結果、クラックが発生していないので、優れた成形作業性を有することが分かる。また、光沢度は約96%と測定され、既存のスプレーコーティングやディップコーティングに比べて優れた光沢度を有することが分かる。
【0124】
これに比べて、比較例1の場合、表面硬度がBと測定されたが、クラックが発生して成形作業性が低下し、光沢度も86%と測定された。これは、塗膜の厚さが12μmであり、塗膜が実施例に比べて厚く形成されたことに起因する。
【0125】
比較例2の場合、実施例と比べて付着力が低下したことが分かる。これは、プレキュアリング紫外線を約100mJ/cm光量で照射したことに起因する。
【0126】
比較例3の場合、表面硬度が2Hと測定され、クラックが発生して成形作業性が低下する結果を示した。これは、プレキュアリング紫外線を約700mJ/cm光量で照射したことに起因する。
【0127】
すなわち、比較例1及び比較例3の場合、本発明が目的とする曲面多層シートの製造において、実施例に比べて成形作業性が明らかに低下し、比較例2の場合、実施例に比べて付着力が低下することが分かる。
【0128】
本発明の単純な変形及び変更は、この分野で通常の知識を有する者によって容易に用いることができ、このような変形や変更はいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系アクリレート化合物約5〜60重量%、(メタ)アクリレートモノマー約5〜50重量%、光重合開始剤約0.1〜10重量%、およびビスフェノール系樹脂約1〜35重量%を含むことを特徴とするハードコーティング組成物。
【請求項2】
光安定剤約0.01〜1重量%をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のハードコーティング組成物。
【請求項3】
粘度が25℃で約1〜約300cpsであることを特徴とする、請求項1に記載のハードコーティング組成物。
【請求項4】
溶媒約5〜80重量%をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のハードコーティング組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハードコーティング組成物で形成されたハードコーティング層と、
前記ハードコーティング層の一方の面に形成されたプラスチックシート層と、を含むことを特徴とする多層シート。
【請求項6】
前記ハードコーティング層は、前記プラスチックシート層上に約1μm以上約12μm未満の厚さで形成されることを特徴とする、請求項5に記載の多層シート。
【請求項7】
前記ハードコーティング層は、ASTM D−2457によって測定した光沢度が約95%以上であり、伸率200%で成形するときにクラックが発生せず、表面硬度が4H以上であることを特徴とする、請求項5に記載の多層シート。
【請求項8】
前記プラスチックシートの他方の面に装飾フィルムが形成されることを特徴とする、請求項5に記載の多層シート。
【請求項9】
前記多層シートは曲面が含まれた形状であることを特徴とする、請求項8に記載の多層シート。
【請求項10】
前記装飾フィルムは、基材フィルム上に形成された印刷層を含むことを特徴とする、請求項8に記載の多層シート。
【請求項11】
前記装飾フィルムは、前記印刷層上に形成された粘着剤層をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の多層シート。
【請求項12】
前記装飾フィルムは、第1の透明フィルムと、前記第1の透明フィルム上に形成された第1の接着剤層と、前記第1の接着剤層上に付着された基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された印刷層と、前記印刷層上に形成された第2の接着剤層と、前記第2の接着剤層上に付着された第2の透明フィルムと、前記第2の透明フィルム上に形成された粘着剤層と、を含むことを特徴とする、請求項11に記載の多層シート。
【請求項13】
前記基材フィルム、前記印刷層、前記第2の接着剤層及び前記第2の透明フィルムのうち少なくとも一つにはエンボスパターンが形成されていることを特徴とする、請求項12に記載の多層シート。
【請求項14】
a)装飾フィルムの一方の面にプラスチックシート層が形成された平板複合シートを準備し、
b)前記プラスチックシート層上に請求項1〜4のいずれか1項に記載のハードコーティング組成物を塗布し、
c)前記ハードコーティング組成物に紫外線を照射することによってプレキュアされたハードコーティング層を形成し、
d)前記プレキュアされたハードコーティング層が形成された平板複合シートを曲面を含む最終形状に成形し、
e)前記プレキュアされたハードコーティング層に紫外線を照射することによってハードコーティングメインキュアリング層を形成する段階を含むことを特徴とする多層シートの製造方法。
【請求項15】
前記c)段階で、紫外線を約200〜300mJ/cmで照射することを特徴とする、請求項14に記載の多層シートの製造方法。
【請求項16】
前記プレキュアされたハードコーティング層は、表面硬度が約1B〜1Hであることを特徴とする、請求項14に記載の多層シートの製造方法。
【請求項17】
前記e)段階で、紫外線を500mJ/cm以上で照射することを特徴とする、請求項14に記載の多層シートの製造方法。
【請求項18】
前記ハードコーティングメインキュアリング層の表面硬度は4H以上であることを特徴とする、請求項14に記載の多層シートの製造方法。
【請求項19】
前記ハードコーティング組成物は、前記プラスチックシート層上に1μm以上12μm未満の厚さで塗布されることを特徴とする、請求項14に記載の多層シートの製造方法。
【請求項20】
前記装飾フィルムは、
基材フィルム上に印刷層を形成し、前記印刷層上に接着剤を塗布して第2の接着剤層を形成し;
前記第2の接着剤層上に第2の透明フィルムを位置させ、前記基材フィルム、前記印刷層、前記第2の接着剤層及び前記第2の透明フィルムを合紙して一つのシートを作製し;
エンボシング機を使用して前記シートにエンボスパターンを形成し;
第1の透明フィルム上に接着剤を塗布して第1の接着剤層を形成し;
前記基材フィルムが前記第1の接着剤層に向くように前記エンボスパターンが形成されたシートを前記第1の接着剤層上に位置させ、前記第1の透明フィルム、前記第1の接着剤層及び前記エンボスパターンが形成されたシートを合紙して予備装飾フィルムを作製し;
前記予備装飾フィルムの前記第2の透明フィルム上に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成する段階を含むことを特徴とする、請求項14に記載の多層シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−521476(P2012−521476A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501919(P2012−501919)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007836
【国際公開番号】WO2010/110528
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】