説明

ハードコートフィルム

【課題】本発明が解決しようとする課題は、高いハードコ−ト性能と防指紋性能を両立するハ−ドコ−ト層により、透明度の高いハードコートフィルムを提供するものである。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面にハードコート層を設けたハードコートフィルム
において、ハードコート層が電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂と、電離性放射線により重合する親水部を有する多官能高分子樹脂を含有することを特徴とするハ−ドコ−トフィルム。
さらには、前記疎水性の多官能高分子樹脂がポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トであり、前記電離性放射線により重合する親水部がポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレンプロピレングリコ−ルから選ばれたものであるウレタンアクリレ−トであることを特徴とする前記のハ−ドコ−トフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムに関する発明であって、指紋が付きにくい表面処理が施された、即ち防指紋性を付与された透明タイプのハ−ドコ−トフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示素子としての液晶表示装置である情報端末が普及している。これらの情報端末の入力装置として、液晶表示素子の上に透明タッチパネルを載せたもの、特に抵抗膜方式のタッチパネルが多く使用されており、このようなタッチパネルの表面部材としてハードコートフィルムが用いられている。また、携帯電話やスマートフォンなどのモバイル機器の最表面に、傷付防止を目的としてハードコートフィルムを粘着層を介して貼着されるケースも多く見受けられる。
このようなハ−ドコ−トフィルムは、操作者が直接手で触れる部分に使われるため、皮脂汚れ、特に指紋が付着して、画像が見難くなったり、見映えが悪くなったりすることがある。
【0003】
そこで、ハードコート層上に防汚層を設けたハードコートフィルム(特許文献1)やハードコ−ト層にマット化剤としての粒子を含有させて表面をマット化し、指紋消去性を付与したハ−ドコ−トフィルム(特許文献2)が提案されている。
【0004】
しかしながら、ハ−ドコ−ト層上に防汚層を設けたハ−ドコ−トフィルムでは、ハ−ドコ−ト層が最表面とならないために、十分な表面硬度が得られず、また、防汚層を形成するための工数が増えるなどの問題があった。
また、ハ−ドコ−ト層に粒子を含有するハ−ドコ−トフィルムでは、十分な防指紋効果を得ようとすると、粒子の量を多くする必要があり、十分な透明度が得られなかった。また非常に粒径の小さな粒子を使用すれば透明性が得られたが、粒子が凝集して表面に析出し、表面に異物として現れる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−94588
【特許文献2】WO2004/046230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高いハードコ−ト性能と防指紋性能を両立するハ−ドコ−ト層により、透明度の高いハードコートフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明は、基材の少なくとも一方の面にハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、ハードコート層が電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂と、電離性放射線により重合する親水部を有する多官能高分子樹脂を含有することを特徴とするハ−ドコ−トフィルムである。
第2発明は、前記疎水性の多官能高分子樹脂がポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トであり、前記電離性放射線により重合する親水部がポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレンプロピレングリコ−ルから選ばれたものであるウレタンアクリレ−トであることを特徴とする第1発明記載のハ−ドコ−トフィルムである。
第3発明は、前記ハードコ−ト層が前記電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂を0.5〜8重量%含有することを特徴とする第1〜2発明記載のハードコートフィルムである。
第4発明は、前記ハードコ−ト層が前記電離性放射線により重合する親水部を有する多官能高分子樹脂を0.5〜20重量%含有し、かつ前記疎水性の多官能高分子樹脂との合計含有量がハ−ドコ−ト層の1〜20重量%であることを特徴とする請求項1〜3記載のハードコートフィルムである。
【発明の効果】
【0008】
第1発明のように、ハードコート層に電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂と、電離性放射線により重合する親水部を有する多官能高分子樹脂を含有することによって、粒子を含有せずに高い防指紋効果が得られるので、透明性と防指紋効果を両立したハ−ドコ−トフィルムが得られる。
第2発明のように、前記疎水性の多官能高分子樹脂をポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トとし、前記電離性放射線により重合する親水部がポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレンプロピレングリコ−ルから選ばれたものであるウレタンアクリレ−トとすることにより、より高い防指紋効果が得られる。
第3、4発明のように、前記ハードコ−ト層が前記電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂を0.5〜8重量%含有し、電離性放射線により重合する親水部を有する多官能高分子樹脂を0.5〜20重量%含有し、これら2種の合計含有量がハ−ドコ−ト層の1〜20重量%であることにより、より高いハ−ドコ−ト効果と防指紋性を両立したハ−ドコ−トフィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で使用するハードコ−トフィルムの基材は、各種のプラスティックからなるフィルムであれば、特に限定されない。例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、セルロース系樹脂等よりなるフィルムが例示されるが、これらに限定されるものではない。取り扱性、貼着層との接着力の向上、コストの面より好ましくはポリエステルフィルムを用いるとよい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよいが、通常4〜400μmの範囲のものを用いる。
【0010】
本発明のハードコート層に用いられる主成分の化合物は電離放射線により重合する化合物から主に形成されていることが好ましく、ラジカル重合反応を形成する(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、カチオン重合反応を形成する化合物であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては分子内に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物を意味し、モノマーであっても、オリゴマーであってもよく、またその両方を含んでもよい。
【0011】
本発明では、アクリロイル基とメタアクリロイル基を総称して、(メタ)アクリロイル基という。すなわち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物とは、アクリロイル基のみを有する化合物であってもよく、メタアクリロイル基のみを有する化合物であってもよく、アクリロイル基とメタアクリロイル基との両方を有するものであってもよい。また、以下に記載する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステルについても同様である。
【0012】
本発明に係る(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、以下に記載する多官能(メタ)アクリレートや単官能(メタ)アクリレートのモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0013】
多官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、及びこれらの出発アルコール類へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、オリゴウレタン(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0014】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、4−グリシジルオキシブチルアクリレート、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0015】
これらの(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0016】
一方、カチオン重合を形成する化合物としては、エポキシ系樹脂が通常使用される。このエポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール樹脂やノボラック樹脂などの多価フェノール類にエピクロルヒドリンなどでエポキシ化した化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物などで酸化して得られた化合物などが挙げられる。
【0017】
電離放射線重合反応に用いられる光重合開始剤としては、ラジカル重合型の化合物に対しては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられる。また、カチオン重合型の化合物に対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、重合性化合物100質量部に対して、通常0.2〜10質量部の範囲で選ばれる。
【0018】
前記電離放射線硬化性化合物以外にもハードコート性を大きく損なわない範囲で熱可塑性ポリマーを添加することができる。該熱可塑性ポリマーとしては、例えばアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ブチラール系樹脂、ゼラチン、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0019】
さらに、必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、界面活性剤、有機系潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料、帯電防止剤などを含有していてもよい。また、ハードコ−トフィルム自体に透明性を要求されない場合には、有機系微粒子、無機系微粒子を含有してもよい。
【0020】
ハードコート層に用いられる電離放射線により重合する化合物の一部を、疎水性の多官能高分子樹脂と親水部を有する多官能高分子樹脂とすることにより、ハ−ドコ−ト層に防指紋性を付与することができる。これらを含有することにより、ハ−ドコ−ト層の表面に皮脂や油分が付着すると、一点に付着した皮脂や油分は表面に薄く押し広げられ、人間の視力では皮脂や油分の外周部の境界が識別できなくなり、あたかも皮脂や油分が付着していないように視認されるものである。
【0021】
また、皮脂や油分の付着量が非常に多く、厚く重なって、薄く押し広げられる効果が直ぐに現れない場合でも、付着した皮脂や油分を拭き取りその付着量を少なくすると、薄く押し広げられ付着していないように視認される。このように、皮脂や油分を拭き取ることによって見えなくするという、拭き取りによる防指紋性も付与される。
【0022】
このハ−ドコ−ト層は、粒子を含有しなくても防指紋効果が得られるので、高い透明性を両立するものとなり、特に透明性を損なう材料を含有しない限り、ハ−ドコ−トフィルムのヘイズ値は通常2%以下であり、最大でも3%を超えることはない。
【0023】
ハ−ドコ−ト層に含有される疎水性の多官能高分子樹脂の含有量は、ハ−ドコ−ト層に対して0.5〜8重量%であり、好ましくは1〜8重量%、より好ましくは1〜5重量%である。0.5重量%未満では十分な防指紋効果が得られず、8重量%を超えるとハ−ドコ−ト層に十分な硬度が得られなくなる。
【0024】
ハ−ドコ−ト層に含有される親水部を有する多官能高分子樹脂の含有量は、ハ−ドコ−ト層に対して0.5〜20重量%であり、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜8重量%である。0.5重量%未満では十分な指紋の拭き取り性が得られず、20重量%を超えるとハ−ドコ−ト層に十分な硬度が得られなくなる。
【0025】
また、ハ−ドコ−ト層に含有される疎水性の多官能高分子樹脂の含有量と、親水部を有する多官能高分子樹脂の含有量の合計は、ハ−ドコ−ト層に対して1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは2〜13重量%である。合計の含有量が1重量%より小さくなると、防指紋効果が低下し、20重量%を超えると、ハ−ドコ−ト層に十分な硬度が得られなくなる。
【0026】
疎水性の多官能高分子樹脂と親水部を有する多官能高分子樹脂は、ハ−ドコ−ト層に用いられる主成分の電離放射線により重合する化合物と同じく、ラジカル重合反応を形成する(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、カオチン重合反応を形成する化合物であることが好ましい。また、これらの疎水性及び親水部を有する化合物は、主成分の化合物と同種のものを用いることがより好ましい。同種のものを用いることにより、ハ−ドコ−ト層内での重合反応による結合を強固にでき、ハードコ−トの効果をより高めることができる。
【0027】
疎水性の多官能高分子樹脂は、アルキル基、フェニル基、ニトロ基などの親油性の官能基を有する化合物でも良いが、ブタジエン骨格を有する化合物が、防指紋性の向上のために、より好ましい。
【0028】
また、親水部を有する多官能高分子樹脂は、水酸基やスルホン基、カルボニル基、リン酸基などの親水性の官能基を有する化合物でも良いが、親水部がポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレンプロピレングリコ−ルから選ばれたもののである化合物が、防指紋性の向上のために、より好ましい。ブタジエン骨格を有する疎水性の多官能高分子樹脂と親水部が上記3種類から選ばれた多官能高分子樹脂の組合せにより、防指紋性に対して著しい効果が得られる。
【0029】
ハードコート塗膜の厚みは1μm以上20μm以下、好ましくは3μm以上15μm以下であることが好ましい。該範囲未満ではハードコート性が十分得られず、塗膜に傷がつきやすい。一方、該範囲を超えるとコストアップにつながる。また、両側にハードコートを塗工する場合、その両層の膜厚差は30%以内に抑えることが好ましい。該範囲を超えると、ハードコートフィルムのカールが大きくなり、次工程移行の取り扱い性に悪影響がでたり、タッチパネルを組んだ際に、タッチパネル機能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【実施例】
【0030】
本発明を以下の実施例に従って、さらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0031】
[疎水性多官能高分子樹脂の合成]
5リットルの4つ口フラスコにポリブタジエングリコ−ル(日本曹達製、商品名NISSO PB G−3000、数平均分子量2600〜3200)を1943重量部、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を0.2重量部、2,6−ジ−タ−シャリブチル−4−メチルフェノ−ルを0.7重量部入れ、50℃で攪拌しつつ、イソホロンジイソシアネ−ト(住友バイエル社製、商品名デスモジュ−ルI)289重量部を4時間にわたって滴下した。
【0032】
滴下終了後50℃で攪拌しながら、3時間反応を続行したのち、さらに、50℃で攪拌しつつ、ペンタエリスリト−ルトリアクリレ−ト388重量部を2時間にわたって滴下し、滴下終了後70℃で攪拌しながら、5時間反応を続行し、ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トA(疎水性多官能高分子樹脂)を得た。
【0033】
[親水部を有する多官能高分子樹脂の合成]
5リットルの4つ口フラスコにPEG(三洋化成工業製、商品名PEG−600)を402重量部、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を0.2重量部、2,6−ジ−タ−シャリブチル−4−メチルフェノ−ルを0.7重量部入れ、50℃で攪拌しつつ、イソホロンジイソシアネ−ト(住友バイエル社製、商品名デスモジュ−ルI)289重量部を4時間にわたって滴下した。
【0034】
滴下終了後50℃で攪拌しながら、3時間反応を続行したのち、さらに、50℃で攪拌しつつ、ペンタエリスリト−ルトリアクリレ−ト388重量部を2時間にわたって滴下し、滴下終了後70℃で攪拌しながら、5時間反応を続行し、親水部を有するウレタンアクリレ−トB(親水部を有する多官能高分子樹脂)を得た。
【0035】
使用するPEGを、三洋化成工業製、商品名PEG−400、268重量部に変更する以外は、上記と同じ方法で、親水部を有するウレタンアクリレ−トC(親水部を有する多官能高分子樹脂)を得た。
【0036】
使用するPEGを、三洋化成工業製、商品名PEG−300、201重量部に変更する以外は、上記と同じ方法で、親水部を有するウレタンアクリレ−トD(親水部を有する多官能高分子樹脂)を得た。
【0037】
[ハードコートフィルムの形成]
上記で合成したポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トAと親水部を有するウレタンアクリレ−トB、C、Dを用いて、表1の各ハードコート剤を調整した後、厚さ100μmの光学PETの片面に表1の各ハードコート剤をコーティングし、それぞれ積算光量500mj/cmの紫外線を照射し、塗膜を硬化させて、厚み5μmのハードコート層を形成して、実施例1〜18と比較例1〜3のハードコ−トフィルムを作成した。


















【0038】
【表1】

【0039】
表1中の各成分の材料名は、次の通りである。
主成分1:
UA−53(ウレタンアクリレートオリゴマ−、新中村化学製)
主成分2:
A−9550(ジペンタエリスト−ルヘキサアクレ−ト、新中村化学製)
疎水性の多官能高分子樹脂:
ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トA
親水部を有する多官能高分子樹脂:
実施例1〜12と比較例1〜3は、親水部を有するウレタンアクリレ−トBを用いた。実施例13〜15は、親水部を有するウレタンアクリレ−トCを、実施例16〜18は、親水部を有するウレタンアクリレ−トDを用いた。
光重合開始剤:
イルガキュア184(光開始剤、チバスペシャリティケミカル製)
溶剤: プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0040】
以上の様にして作製したハードコートフィルムについて以下の評価を行った。評価項目および評価基準は以下の通りである。
1.防指紋性評価(視認性評価)
ハードコ−ト層面上に右手人差し指の指先を押しあてて指紋をつけ、黒地にのせて目視で指紋の付着度合いを確認した。指先を押し付ける順番により指紋の濃淡差が発生することを避けるために、指先をハードコ−ト面上に押し付ける前に、必ず右手人差し指と右手の他の指先又は左手の掌を擦り合わせた。評価基準は、下記の通りである。
○:指紋が比較的目立たない。
△:指紋が若干目立つ。
×:指紋が目立つ。
【0041】
2.防指紋性評価(拭き取り性評価)
視認性評価と同様の方法で、ハ−ドコ−ト層面上に指紋をつけた。次いで、ティッシュペ−パーで拭き取りを行い、1回拭き取るごとに黒地にのせて目視で確認し、指紋が見えなくなるまでの回数を評価した。なお、10回以上拭き取っても指紋が見えるものは、×とした。
【0042】
3.全光線透過率
日本電色工業製ヘイズメ−タ−NDH2000を用い、JIS−K7361−1:1997に基き、測定した。なお、光はハ−ドコ−ト層面側から入射させて測定した。

4.ヘイズ
日本電色工業製ヘイズメ−タ−NDH2000を用い、JIS−K7105:1981に基き、測定した。なお、光はハ−ドコ−ト層面側から入射させて測定した。
【0043】
5.耐スチ−ルウ−ル硬度
スチ−ルウ−ル(#0000)に、250gf/cmの加重をかけ、ハードコ−ト層上をストロ−ク幅30mmで、14秒間に10往復させた後、ハードコ−ト層の傷を評価した。評価基準は、下記の通りである。

○:傷跡が全く見えない
△:傷跡が薄く見える
×:傷跡がはっきり見える

6.鉛筆硬度
JIS−K5600−5−4:1999に基き、ハ−ドコ−ト層の鉛筆硬度を測定した。
【0044】
測定結果および評価結果を表2にまとめた。
【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面にハードコート層を設けたハードコートフィルム
において、ハードコート層が電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂と、電離性放射線により重合する親水部を有する多官能高分子樹脂を含有することを特徴とするハ−ドコ−トフィルム。
【請求項2】
前記疎水性の多官能高分子樹脂がポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トであり、前記電離性放射線により重合する親水部がポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレンプロピレングリコ−ルから選ばれたものであるウレタンアクリレ−トであることを特徴とする請求項1記載のハ−ドコ−トフィルム。
【請求項3】
前記ハードコ−ト層が前記電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂を0.5〜8重量%含有することを特徴とする請求項1〜2記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記ハードコ−ト層が前記電離性放射線により重合する親水部を有する多官能高分子樹脂を0.5〜20重量%含有し、かつ前記疎水性の多官能高分子樹脂との合計含有量がハ−ドコ−ト層の1〜20重量%であることを特徴とする請求項1〜3記載のハードコートフィルム。

【公開番号】特開2012−116007(P2012−116007A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265393(P2010−265393)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】