説明

ハードコート組成物

【目的】 ハードコートの光干渉を抑えるという特性を高屈折レンズに対して維持したまま、紫外線に対する黒化現象を抑えることができるとともに、カラーレンズの変色、脱色(退色)を抑えることができ、長期間使用した場合も美観を損なわないハードコート組成物を提供すること。
【構成】 光学レンズ基材にハードコート膜を形成するのに使用するハードコート組成物。アルコキシシラン加水分解物と、五酸化二ニオブ(Nb25)の微粒子(酸化ニオブ微粒子)をコロイド状態で分散させたもの。酸化ニオブ微粒子の分散状態は、アニオン系界面活性剤で分散安定化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードコート組成物に関する。特に高い屈折率を有する有機ガラスで形成された光学要素に好適なものである。ここで「光学要素」とは、眼鏡用レンズ、カメラ用レンズ等の光学部品の他に照明器具用カバー、反射鏡、プリズム、フィルター、を含む概念である。
【0002】
以下、眼鏡用レンズを主として例に採り説明するがこれに限られるものではない
【背景技術】
【0003】
光学レンズとして用いられる有機ガラスは従来の無機ガラスと比較して軽量かつ耐衝撃性に優れ可染性で加工も容易であるという長所を有するため、一般に普及してきている。
【0004】
しかし、有機ガラスの状態では無機ガラスと比較して耐磨耗性が低く傷がつきやすいという欠点を有している。これに対して耐磨耗性の向上を目的として有機ガラスからなる光学基材の表面にシリコーン系のハードコート膜(硬化塗膜)を施すことが一般的に行われている。
【0005】
そして、本願出願人は、先にエポキシ基含有シラン化合物、カルボン酸、硬化剤からなる可染性の塗料組成物を提案し一部実用化している(特許文献1)。
【0006】
他方、有機ガラスからなる眼鏡用レンズは無機ガラスのそれと比較した場合、屈折率が低く光学レンズに用いた場合レンズ端面が厚くなってしまい強度の視力矯正用には適さないとされていた。
【0007】
しかし、近年、技術革新によって有機ガラスであっても屈折率1.60以上のものが市場に出回り、現在では市場規模の数量ベースにて60%を占め今後に於いても増加する傾向にある。
【0008】
このような高い屈折率を有する有機ガラスに対して、本願出願人は、高屈折の光学プラスチック成形品用塗料組成物(ハードコート組成物)を提案し一部実用化している(特許文献2)。
【0009】
また近年、眼鏡におけるファッション性がより重視され、より多種のカラーリングレンズに対応しなければならなくなってきている。他方、高屈折率の有機ガラスレンズは、レンズ自身の着色性(着色スピード)が良好でない。
【0010】
特許文献2に記載の塗料組成物は、塗膜と屈折率が1.60以下の有機ガラスとの光干渉を抑えるという特性は優れている。
【0011】
しかし、当該ハードコート組成物を適用した眼鏡用レンズを長期間使用した場合、塗膜成分として用いた酸化鉄/酸化チタン複合酸化微粒子中の酸化鉄の部分が紫外線によって黒化現象を起こし美観を損ねることを、本発明者らは知見した。
【0012】
また、同酸化鉄/酸化チタン複合酸化微粒子中の酸化チタンの光触媒作用により、紫外線に曝されると、ハードコート層が劣化したり、変色・脱色を起こしたりすることも、本発明者らは知見した。
【特許文献1】特公昭57−42665号公報(特許請求の範囲等参照)
【特許文献2】特許第2577670号公報(特許請求の範囲等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記にかんがみて、ハードコートの光干渉を抑えるという特性を高屈折レンズに対して維持したまま、紫外線に対する黒化現象を抑えることができるとともに、カラーレンズの変色、脱色(退色)を抑えることができ、長期間使用した場合も美観を損なわないハードコート組成物を提供することを目的(課題)とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題(目的)を解決するために、鋭意開発に努力をした結果、下記構成のハードコート組成物に想到した。
【0015】
アルコキシシラン加水分解物と、五酸化二ニオブ(Nb25:以下単に「酸化ニオブ」という。)の微粒子がコロイド状態で分散されていることを特徴とする。
【0016】
光触媒作用を有する酸化チタンを含有しないため、紫外線等の光の影響を受けにくく、結果的に従来例に比して、黒色化は勿論、変色、脱色の発生がない。また、酸化ニオブ微粒子は酸化チタン複合微粒子と同様、高屈折率有機ガラスへの対応も可能である。
【0017】
上記構成において、アルコキシシラン化合物の配合組成は、下記構成とすることが望ましい。
【0018】
(A)成分:
一般式
【0019】
【化1】

で示されるトリアルコキシシランの加水分解物、及び
(但しR1はH又はCH3、R2は炭素数1〜4のアルキレン基、R3は炭素数1〜4のアルキル基で表される)
(B)一般式
Si(OR1)4で示されるテトラアルコキシシランの加水分解物、
( 但しR1は炭素数1〜4のアルキル基で表される)
の混合物であって、前記(A)成分/(B)成分=7.5/2.5〜9.5/0.5の混合比率を有する。
【0020】
上記構成において、酸化ニオブコロイドが、コロイド粒子径:1〜50nmとし、且つ、アニオン系界面活性剤を分散剤とするものであることが望ましい。
【0021】
ここで、アニオン系界面活性剤100質量部に対する前記酸化ニオブの混合比率は10〜100質量部とすることが望ましい。
【0022】
また、アルコキシシラン100質量部に対する酸化ニオブの混合比率は40〜100質量部とすることが望ましい。
【0023】
上記各構成のハードコート組成物を利用した光学要素の構成は下記構成となる。
【0024】
屈折率1.60以上の有機ガラスで形成された光学基材の片面又は両面に、上記のいずれかに記載のハードコート組成物で形成されたハードコート膜を備えている光学要素。
【0025】
上記光学要素において、有機ガラスとしては、屈折率1.60〜1.67のポリチオウレタン樹脂を挙げることができる。
【0026】
上記光学要素としては、光学基材とハードコート膜との間に、更に、プライマー膜を具備するもの、さらには、ハードコート膜の表面側に、更に、光学無機薄膜を具備するものであることが望ましい。
【構成の詳細な説明】
【0027】
以下、本発明の構成について、詳細に説明する。以下の説明で、配合単位、混合比率等は、特に断らない限り、「質量」基準とする。
【0028】
本発明のハードコート組成物は、基本的には、それぞれ下記例示のトリアルコキシシランである(A)成分と、テトラアルコキシシランである(B)成分とを(A)成分/(B)成分=7.5/2.5〜9.5/0.5、望ましくは、8/2〜9/1の混合比率とするシリコーンをマトリックスとするものである。この混合比率を外れると十分な塗膜硬度と良好な外観を得難い。即ちテトラアルコキシシランが過多では有機レンズ塗膜後熱重合時にクラックによる外観不良が発生し、過小では十分な塗膜硬度が得難い。
【0029】
(A)成分:トリアルコキシシラン
基本的には、
【化2】

(但し、R1はH又はCH3、R2は炭素数1〜4のアルキレン基、R3は炭素数1〜4のアルキル基で表される。)で示されるものであり、具体的には、
グリシドキシメチルトリメトキシシラン,グリシドキシメチルトリエトキシシラン,グリシドキシメチルトリプロポキシシラン,グリシドキシメチルトリブトキシシラン,αグリシドキシエチルトリメトキシシラン,αグリシドキシエチルトリエトキシシラン,αグリシドキシエチルトリプロポキシシラン,αグリシドキシエチルトリブトキシシラン,βグリシドキシエチルトリメトキシシラン,βグリシドキシエチルトリエトキシシラン,βグリシドキシエチルトリプロポキシシラン,βグリシドキシエチルトリブトキシシラン,αグリシドキシプロピルトリメトキシシラン,αグリシドキシプロピルトリエトキシシラン,αグリシドキシプロピルトリプロポキシシラン,αグリシドキシプロピルトリブトキシシラン,βグリシドキシプロピルトリメトキシシラン,βグリシドキシプロピルトリエトキシシラン,βグリシドキシプロピルトリプロポキシシラン,βグリシドキシプロピルトリブトキシシラン,γグリシドキシプロピルトリメトキシシラン,γグリシドキシプロピルトリエトキシシラン,γグリシドキシプロピルトリプロポキシシラン,γグリシドキシプロピルトリブトキシシラン,αグリシドキシブチルトリメトキシシラン,αグリシドキシブチルトリエトキシシラン,αグリシドキシブチルトリプロポキシシラン,αグリシドキシブチルトリブトキシシラン,βグリシドキシブチルトリメトキシシラン,βグリシドキシブチルトリエトキシシラン,βグリシドキシブチルトリプロポキシシラン,βグリシドキシブチルトリブトキシシラン,γグリシドキシブチルトリメトキシシラン,γグリシドキシブチルトリエトキシシラン,γグリシドキシブチルトリプロポキシシラン,γグリシドキシブチルトリブトキシシラン,δグリシドキシブチルトリメトキシシラン,δグリシドキシブチルトリエトキシシラン,δグリシドキシブチルトリプロポキシシラン,δグリシドキシブチルトリブトキシシラン,βメチルグリシドキシメチルトリメトキシシラン,βメチルグリシドキシメチルトリエトキシシラン,βメチルグリシドキシメチルトリプロポキシシラン,βメチルグリシドキシメチルトリブトキシシラン,βメチルαグリシドキシエチルトリメトキシシラン,βメチルαグリシドキシエチルトリエトキシシラン,βメチルαグリシドキシエチルトリプロポキシシラン,βメチルαグリシドキシエチルトリブトキシシラン,βメチルβグリシドキシエチルトリメトキシシラン,βメチルβグリシドキシエチルトリエトキシシラン,βメチルβグリシドキシエチルトリプロポキシシラン,βメチルβグリシドキシエチルトリブトキシシラン,βメチルαグリシドキシプロピルトリメトキシシラン,βメチルαグリシドキシプロピルトリエトキシシラン,βメチルαグリシドキシプロピルトリプロポキシシラン,βメチルαグリシドキシプロピルトリブトキシシラン,βメチルβグリシドキシプロピルトリメトキシシラン,βメチルβグリシドキシプロピルトリエトキシシラン,βメチルβグリシドキシプロピルトリプロポキシシラン,βメチルβグリシドキシプロピルトリブトキシシラン,βメチルγグリシドキシプロピルトリメトキシシラン,βメチルγグリシドキシプロピルトリエトキシシラン,βメチルγグリシドキシプロピルトリプロポキシシラン,βメチルγグリシドキシプロピルトリブトキシシラン,βメチルαグリシドキシブチルトリメトキシシラン,βメチルαグリシドキシブチルトリエトキシシラン,βメチルαグリシドキシブチルトリプロポキシシラン,βメチルαグリシドキシブチルトリブトキシシラン,βメチルβグリシドキシブチルトリメトキシシラン,βメチルβグリシドキシブチルトリエトキシシラン,βメチルβグリシドキシブチルトリプロポキシシラン,βメチルβグリシドキシブチルトリブトキシシラン,βメチルγグリシドキシブチルトリメトキシシラン,βメチルγグリシドキシブチルトリエトキシシラン,βメチルγグリシドキシブチルトリプロポキシシラン,βメチルγグリシドキシブチルトリブトキシシラン,βメチルδグリシドキシブチルトリメトキシシラン,βメチルδグリシドキシブチルトリエトキシシラン,βメチルδグリシドキシブチルトリプロポキシシラン,βメチルδグリシドキシブチルトリブトキシシラン等。これらは単独でも又2種以上併用することも可能である。
【0030】
(B)成分:テトラアルコキシシラン
基本的には、Si(OR1)4( 但しR1は炭素数1〜4のアルキル基で表される。)で示されるものであり、具体的には、
テトラエトキシシラン,テトラメトキシシラン,テトラプロポキシシラン,テトラブトキシシラン等を挙げることができる。これらは単独でも又2種以上併用することも可能である。
【0031】
上記各シラン化合物(トリ・テトラアルコキシシラン)の加水分解物は、シラン化合物を低級アルコールの存在下で0.01〜0.1規定(N)の希酸を滴下し加水分解を行い得られる。希酸としては具体的には塩酸,硫酸,リン酸,酢酸,ギ酸,シュウ酸,スルホン酸等を挙げることができる。
【0032】
そして、本発明の最大の特徴は、上記アルコキシシラン加水分解物に(C)成分である五酸化ニニオブ(以下、単に「酸化ニオブ」という。)のコロイドを含むことにある。
【0033】
ここで、酸化ニオブコロイドとしては、アニオン系界面活性剤を用いてコロイドとした粒子径1〜50nm、望ましくは3〜10nm、さらに望ましくは4〜7nmの五酸化二ニオブ(Nb25)のものが望ましい。
【0034】
粒子径が小さすぎる(1nm未満)と耐摩耗性が期待できないとともに凝集が発生しやすく塗膜の均一性が阻害されるおそれがある。逆に、粒子径が大きすぎる(50nm超)と、塗膜が白化しやすくて外観を損なうおそれがある。
【0035】
ここで、酸化ニオブ(微粒子)100部に対するアニオン系界面活性剤の混合比率は、10〜100部が、さらには30〜70部が望ましい。
【0036】
アニオン系界面活性剤の混合比率が過少ではコロイド粒子が凝集し易くて安定したコロイドを得難い。逆に、過多ではチキソトロピーを起こし塗料として用いるのが困難になる。
【0037】
アニオン系界面活性剤としては、下記例示のものが使用可能である。
【0038】
1)脂肪酸石鹸類・・・ラウリン酸カリウム、やし脂肪酸カリウム、やし脂肪酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、混合脂肪酸ナトリウム、
特殊脂肪酸ナトリウム、等。
【0039】
2)スルホン酸塩(スルフォネート)類・・ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム類(例えば、2-エチルヘキシルスルホ酸コハク酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム類(例えば、直鎖アルキルC10〜C14ベンゼンスルホン酸ナトリウム)、
3)硫酸エステル類(スルフェート類)・・・炭素数C8〜18アルキルスルフェート(ナトリウム塩)等、
4)高分子型アニオン類・・・ポリカルボン酸型高分子アニオン、アリルエーテルコポリマー、等、
5)その他特殊アニオン類・・・アシルメチルタウリン酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、αスルホ脂肪酸エステルナトリウム塩、アミドエーテルスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテルスルホン酸ナトリウム、オレイルザルコシン酸、ラウロイルザリコシン酸ナトリウム、等
これら異種および同種による2つ乃至それ以上の混合物として用いることができる。
【0040】
そして、上記酸化ニオブ微粒子を上記アニオン系界面活性剤を用いて分散させる希釈溶媒としては、構造式Cn2n-1OH(但しn:1〜3)で示される不飽和脂肪族アルコール類と、2−メトキシエタノール,2−エトキシエタノール,1,2−ジオキシエタン,2−ブトキシエタノール,1−メトキシ2−プロパノール等のエステル類から選択される1種又は2種以上を適宜、組み合わせて使用することができる。
【0041】
そしてこのときの希釈割合は、酸化ニオブ微粒子とアニオン系界面活性剤との合計量の5〜8倍量とする。
【0042】
希釈溶媒の希釈倍率が過少では、酸化ニオブ微粒子が凝集を起こしやすく、希釈倍率が過多では、塗布に際して、十分な膜厚を得難く、耐磨耗性付与効果を余り期待できない。
【0043】
なお、酸化ニオブ微粒子の製造方法は、例えば、特開平8−143314号公報に記載の方法により製造することができる。すなわち、しゅう酸安定化酸化ニオブにクエン酸を加えた後、アンモニアの水溶液を添加することによって酸化ニオブ微粒子を得る(要約及び明細書段落0014〜0018等参照)。
【0044】
上記アルコキシシラン化合物100部に対する上記酸化ニオブ微粒子の混合比率は、通常、40〜100部の範囲で適宜設定する。
【0045】
上記酸化ニオブ微粒子が過少では、実用レベルの塗膜硬度を得難く、酸化ニオブ微粒子が過多となると、塗膜白化現象や塗膜形成後熱重合時にクラックによる外観不良が発生しやすくなる。
【0046】
さらに、本発明のハードコート組成物は塗膜性及び外観性能を改良するため必要に応じて微量の紫外線吸収剤,酸化防止剤,分散染料,帯電防止剤,界面活性剤(前記アニオン系界面活性剤を除く。)を添加することは可能である。
【0047】
具体的には紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系とベンゾフェノン系等が用いることが可能で、ヒンダードアミン系は酸化防止剤との併用が有効である。分散染料として水分散染料を用いる。
【0048】
界面活性剤としては、疎水基がジメチルシリコーンオイル、親水基がポリエーテルから構成されるノニオン型の界面活性剤は平滑性と帯電防止性を向上させる目的で使用することが望ましい。これらの特性はフッ素系界面活性剤等によっても得られるがフッ素系界面活性剤の特に高分子のものでは、本発明の特徴的成分である酸化ニオブ微粒子と組合わさって使用した場合酸化ニオブ微粒子が凝集されやすくする特性もあるため使用時は注意が必要である。また界面活性剤の使用量は、ハードコート組成物(アルコキシシラン化合物+酸化ニオブ微粒子)100部に対して0.01〜0.5部、望ましくは0.03〜0.3部とする。当該界面活性剤が過少では十分な平滑性と帯電防止性を得難く、逆に、過多では、シリコーン系界面活性剤を用いても成膜時にクモリが発生しやすくなる。
【0049】
また、低温硬化剤として金属キレートを用いる場合には、例えば、キレート化剤が配位したCr(III),Co(III),Fe(III),Zn(II),In(III),Zr(IV),Y(III),Al(III),Sn,,Ti(II),酸化バナジウム(VO(II))のいずれかから1種または2種以上選択して使用できる。なお、キレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸,ヘキサフルオロアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル等から選ばれるその中でもアセチルアセトン鉄(III),ヘキサフルオロアセチルアセトン鉄(III),アセチルアセトン錫,アセチルアセトンバナジル,アセチルアセトンインジウム(III),アセチルアセトンジルコニウム(IV),アセチルアセトン第二コバルト(III),アセ
チルアセトンチタン(II),アセチルアセトンアルミニウム(III)が望ましい。添加量は(A)+(B)加水分解物合計量(固形分)100部に対して0.1〜10部、望ましくは0.3〜5部とする。
【0050】
有機カルボン酸を用いる場合としてはトリメリット酸、無水トリメリット酸、イタコン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸が望ましい。添加量は(A)+(B)加水分解物合計量(固形分)100部に対して5〜40部、望ましくは15〜25部とする。
【0051】
窒素含有有機化合物を用いる場合としてはメチルイミダゾール、ジシアンジアミドが望ましい。
添加量は(A)+(B)加水分解物合計量(固形分)100部に対して1〜20部、望ましくは5〜10部とする。
【0052】
そして、上記ハードコート組成物を用いては、屈折率:1.60以上を有する有機ガラスで形成された眼鏡用のレンズ基材(光学基材)の片面または両面にハードコート塗膜を形成する。
【0053】
そして、有機ガラスとしては、屈折率1.60〜1.67のポリチオウレタン樹脂が望ましい。
【0054】
ここで、ポリチオウレタン樹脂とは、ポリウレタン結合(−NHCOO−)の酸素原子の少なくとも1個が硫黄原子に入れ変わった結合 (−NHCOS−、−NHCSO−又は−NHCSS−)を有するポリマー(樹脂)を意味し、ポリイソシアナート、ポリイソチオシアナート、イソシアナートチオイソシアナートより選ばれる1種または2種以上のポリイソシアナート成分とポリチオール、ポリオール、ポリオールチオールより選ばれる1種又は2種以上のポリオール成分とからなる公知のものを好適に使用できる(特開平8−208792号公報等参照)
ここでイソシアナート成分としては、脂肪族系、脂環式、芳香族系及びそれらの誘導体さらにはそれらの炭素鎖の一部に硫黄を導入したスルフィド・ポリスルフィド・チオカルバニル(チオケトン)誘導体を母体化合物とするものを挙げることができる。これらのうちで耐黄変性の見地から脂肪族系又は脂環式のものが望ましい。
【0055】
またポリオール成分としては同様に脂肪族系、脂環式、芳香族系及びそれらの誘導体さらにはそれらの炭素鎖の一部に硫黄を導入したスルフィド・ポリスルフィド・ポリチオエーテルを母体化合物とするものを挙げることができる。これらのうちで耐黄変性の見地から同様に脂肪族系又は脂環式のものが望ましい。
【0056】
具体的には下記の化学式で示されるポリチオエーテルを母体化合物とするものからなる又は主体とするものであることが望ましい。
【0057】
【化3】

(但し、R1、R4:炭素数1〜6のアルキレン R2:炭素数1〜8のアルキレン)
他のポリオール成分としては分岐炭化水素多価アルコールのωメルカプト脂肪族カルボン酸の全置換エステルを好適に使用できる。
【0058】
具体的にはトリメチロールプロパントリス(2−メルカプトグリコレート)、ペンタエリトリトールテトラキス(2−メルカプトグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等を挙げることができる。
【0059】
ハードコート組成物のレンズ基材(光学基材)への塗布方法としては刷毛塗り塗装、浸漬塗装、ローラ塗装、スプレー塗装、スピン塗装等が挙げることができる。
【0060】
また乾燥硬化条件は、例えば、80℃〜150℃で、好ましくは100〜120℃で、1〜5hとする。また、ハードコート膜の硬化膜厚は、0.5〜20μmの範囲で適宜選定する。
【0061】
なお、光学基材(被塗布物)は、通常、酸・アルカリ洗浄や溶剤による脱脂洗浄、プラズマ処理、超音波洗浄などにより前処理をしておく。
【0062】
そして、光学基材とハードコート膜との間には、プライマー膜を具備させることが望ましい。該プライマー膜は、耐衝撃性,密着性向上の作用を奏する。
【0063】
具体的なプライマー組成物としては、塗膜形成樹脂の全部または主体が熱可塑性ポリウレタン(TPU)又はエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)としたものに、前述の酸化ニオブ微粒子をコロイド状態で分散させてなるTPU系やTPEE系のプライマー組成物を挙げることができる。
【0064】
ここでTPUとは、長鎖ポリオールとポリイソシアネートからなるソフトセグメントと短鎖ポリオールとポリイソシアネートからなるハードセグメントとで構成される熱可塑性エラストマーが水性エマルションの形態で添加されるものを意味する。
【0065】
また、TPEEとは、ハードセグメントにポリエステル、ソフトセグメントにポリエーテルまたはポリエステルを使用したマルチブロック共重合体で、このハードセグメントとソフトセグメントとの重量比率は、通常、前者/後者で、30/70〜10/90とする。
【0066】
更に、ハードコート膜の表面側には、光学無機薄膜(反射防止膜、反射増加膜、干渉フィルター)を具備させることが望ましい。
【0067】
硬化塗膜上に形成することが可能な反射防止膜に関しては金属、金属酸化物、金属フッ化物等の無機粉体を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法による形成が可能で酸化物としては二酸化ケイ素、酸化チタン(IV)、酸化タンタル(V
)、酸化アンチモン(III)、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムがあり、金属フッ化物
としてはフッ化マグネシウムなどを挙げることができる。より具体的な無機物質の構成としては、下記に示す構成等で用いる。
【0068】
(α)SiO2/ZrO2:1/4λ,ZrO2:1/2λ,SiO2:1/4λ
(β)SiO2/TiO2:1/4λ,TiO2:1/2λ,SiO2:1/4λ
【実施例】
【0069】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例・比較例について説明する。なお、表5に、各ハードコート組成物の配合処方の一覧を示す。
【0070】
表5において、「γGPTS」は、「γグリシドキシプロピルトリメトキシシラン」の、「TEOS」は、「けい酸エチル」の略語を意味する。
<実施例1>
(A)各組成物・光学基材の調製
(i)ハードコート組成物調製
1)オルガノアルコキシシラン加水分解物の調製
γグリシドキシプロピルトリメトキシシラン200部、ケイ酸エチル40部、メチルアルコール50部とを加え撹拌しながら0.01規定の塩酸70部を滴下して一昼夜加水分解を行う。これによって加水分解物を得る。
【0071】
2)ハードコーテイング組成物塗料の調製
【0072】
上記1)で調製した加水分解物にエタノール分散Nbゾル(多木化学株式会社「Nd−AC25E」不揮発分25%、粒子径5nm)480部、2−エトキシエタノール100部と低温硬化触媒として無水トリメリット酸48部、ジシアンジアミド15部を加え一昼夜撹拌後、1μmフィルターで濾過し屈折率1.60のハードコーテイング組成物塗料を得る。
【0073】
(ii)プライマー組成物調製
a)TPU系プライマー組成物
不揮発分33%水分散型ポリウレタン(第一工業製薬(株)製商品名「スーパーフレックス
170」)84部、メチルアルコール300部、純水100部、混合後撹拌しつつエタノール分散Nbゾル(多木化学株式会社「Nd−AC20E」不揮発分20%粒子径5nm)150部加え2h撹拌し1μmフィルターで濾過し屈折率1.60のプライマー組成物塗料を得る。
【0074】
b)TPEE系プライマー組成物調製>
市販のエステル系TPE不揮発分27%「高松油脂株式会社製 水分散エマルション 商品名ベスレジンA−160P」100部、メチルアルコール300部、純水100部にエタノール分散Nbゾル(多木化学株式会社「Nd−AC20E」不揮発分20%粒子径5nm)200部、2h撹拌後、1μmフィルターで濾過し屈折率1.64のプライマー組成物塗料を得る。
【0075】
(iii)プラスチックレンズ(光学基材)の作製
<原料(a)>
ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート98部に硬化触媒としてジブチルチンジクロライド0.25部、内部離型剤としてアルキル燐酸エステル(アルコールC8〜C12)塩0.2部、香気性付与剤として2−ベンジル−2−プロパノール0.3部、更に高分子量紫外線吸収剤(分子量500以上)2部を添加し液温17℃、窒素ガス雰囲気下で1h充分に撹拌した。
【0076】
その後、更に4−メルカプトメチル3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール64部を添加し液温17℃、窒素ガス雰囲気下で30分間充分に撹拌した。
【0077】
そして真空ポンプを用いて液温17℃、1.33×102 Pa (1Torr)で撹拌しながら1h脱気し1μmフィルターで濾過し屈折率1.60のポリチオウレタン系レンズ原材料を調合した。
【0078】
<原料(b)>
m−キシリレンジイソシアネート50部に硬化触媒としてジブチルチンジクロライド0.01部、内部離型剤としてアルキル燐酸エステル(アルコールC8〜C12)塩0.1部、香気性付与剤として2−フェニル−2−プロパノール0.2部、m−キシリレンジイソシアネートの黄色味を少なくするために青味付け(ブルーイング)剤として青色染料0.1部、更に高分子量紫外線吸収剤(分子量500以上)1部添加し、液温10℃、窒素ガス雰囲気下で1h充分に撹拌した。
【0079】
その後、更に4−メルカプトメチル3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール50部を添加し液温10℃、窒素ガス雰囲気下で10min充分に撹拌した。
【0080】
そして真空ポンプを用いて液温10℃、1.33×102 Pa (1Torr)で撹拌しながら40min脱気後、1μmフィルターで濾過し屈折率1.67のポリチオウレタン系レンズ原材料を調合した。
【0081】
<原料(c)>
2,5−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンビス(メチルイソシアネート)100部に硬化触媒としてジブチルチンジクロライド0.1部、内部離型剤としてアルキル燐酸エステル(アルコールC8〜C12)塩0.3部、香気性付与剤としてカプロン酸エチル0.2部、更に高分子量紫外線吸収剤(分子量500以上)2部添加し、液温15℃、窒素ガス雰囲気下で1h、充分に撹拌した。
【0082】
その後、更にペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)50部と4−メルカプトメチル3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール50部を添加し、液温15℃、窒素ガス雰囲気下で1h充分に撹拌した。
【0083】
そして真空ポンプを用いて液温15℃、1.33×102 Pa (1Torr)で撹拌しながら1h脱気し1μmフィルターで濾過し屈折率1.60のポリチオウレタン系レンズ原材料を調合した。
【0084】
上記記載(a),(b),(c)の各組成液を円形ガラス製モールドに注入し下記の温度条件で加熱し硬化させる。
【0085】
<原料(a)>
40℃×7h→40℃から80℃まで5時間かけて昇温→80℃から130℃まで4hかけて昇温→130℃×2h→130℃から40℃まで4hかけて冷却
<原料(b)>
30℃×9h→30℃から60℃まで2hかけて昇温→60℃から100℃まで2hかけて昇温→100℃から120℃まで2hかけて昇温→120℃×2h→120℃から40℃まで4hかけて冷却

<原料(c)>
35℃×4h→30℃から50℃まで2hかけて昇温→50℃×h→50℃から90℃まで2hかけて昇温→90℃から120℃まで2hかけて昇温→120℃×2h→120℃から40℃まで4hかけて冷却
なお、上記で作成した各眼鏡用プラスチックレンズは、カセイソーダ水溶液に浸漬洗浄乾燥後、プラズマ処理を施す。
(C)各塗膜の形成方法
(i)プライマー塗膜の形成
上記で作成したレンズ基材を、上記で調製したプライマー塗料に浸漬後160mm/minで引き上げて塗布を行う。塗布したプラスチックレンズは100℃×20min予備乾燥後、プライマー塗膜を形成する。
【0086】
(ii)ハードコート膜の形成
上記プライマ−膜を形成したレンズ基材を、上記で調製したハードコート組成物に浸漬後160mm/minで引き上げて塗布を行う。塗布したレンズ基材を、100℃×20min予備乾燥後、120℃×2h加熱処理してハードコート膜を硬化させた。
【0087】
(iii)反射防止膜の形成
上記(ii)で得られたハードコート膜を有するレンズ基材上に、無機物質を以下に示す構成にて真空蒸着法により形成させる。
【0088】
反射防止膜の無機物質として上記(α)構成でそれぞれ実施した。
【0089】
このようにして得られた複合膜を有するプラスチックレンズは下記に示す評価方法にて判定を行う。
試験結果は表1に示す。
【0090】
(α)SiO2/ZrO2:1/4λ,ZrO2:1/2λ,SiO2:1/4λ
(D)試験(判定)方法
上記で調製した各試験片(マルチコート眼鏡レンズ)について、それぞれ、下記項目の試験を行った。
【0091】
(i)光学物性評価
オリンパス社製反射率測定機、型式USPM−RU−2を用いて測定を行いハード膜厚と屈折率を求めた。
【0092】
(ii)外観
肉眼観察により干渉縞、透明度、着色、表面状態を調査する。
【0093】
<判定基準>
干渉縞・・・◎:まったく無し良好、○:良好、△:若干目立つ、×:非常に目立つ
透明度・・・○:クリアー良好、×:若干クモリ有り(○に対して透過率が1%落ちる。)
(iii)密着性
塗膜面に1mmの基材に達するゴバン目を塗膜の上から鋼ナイフで100個入れてセロハン粘着テープ(ニチバン製)を強くはりつけ90度方向に急速にはがし、下記の基準にて評価を行う。
【0094】
<判定基準>
A:10回以上剥離無し
AB:キザミ線に添い点状もしくは線状剥離
B:キザミ線に添い面状剥離(20%以下)但し1升目の剥離面積1/2以下
C:キザミ線に添い面状剥離(20%以上)但し1升目の剥離面積1/2以下
D:キザミ線に添い面状剥離但し1升目の剥離面積全面
二次密着性に関しては80℃10分間の温水に浸漬後上記と同様の方法で判定を行う。
【0095】
(iV)擦傷性
蒸着膜加工まで行ったものに関しては#0000のスチールウールを用い600g荷重にて硬化塗膜の上を擦り、その結果を肉眼により判定評価を行う。ハード膜加工までのものにはJIS#502の砂消しゴムに200g荷重にて判定する。
【0096】
<判定基準>
3A:キズの面積が0%
2A:キズの面積が1%を超え2%未満
A:キズの面積が3%を超え10%未満
AB:キズの面積が10%を超え30%未満
B:キズの面積が30%を超え60%未満
C:キズの面積が60%以上
D:キズの面積が全面
なお、塗膜無しの状態で擦った判定はCであった。
【0097】
(v)染色性
Seiko-Brown分散染料2部、分散剤:ダイヤポンT0.5部を純水1リットルに溶かして液温92℃の条件下でハードコーテイング組成物を塗布したレンズを5分間浸漬して着色の度合いを透過率で測定を行う。
【0098】
(vi)耐候性試験
促進耐候性試験(スガ試験機株式会社製「サンシャインスーパーロングライフウェザーメーター」)で200h暴露して、上記(iii)での一次密着性試験と同様の方法にて剥離状況を判定する。
【0099】
また暴露後の透明度、着色、表面状態を調査する。
【0100】
(vii)耐光性試験
Q-PANEL社製Q-SUN/Xe-1キセノン促進耐光性試験機を用いUVA340nm温度60℃で40h連続照射する。 サンプルレンズはハードコーテイング組成物を塗布後50%着色まで染色を施し( 5)染色性試験染料と同様)後に反射防止膜を施したものを用い、紫外線照射前と照射後で透過率の測定を行う。
【0101】
(viii)耐衝撃性
16.2gの鋼球を1.27mの高さより試験サンプルの中心部に落下させ貫通するか否か判定を行う。○貫通無し,×貫通。試験レンズサンプルとして中心厚2mmコバ厚8mm球面のものを用い室温25℃湿度45%の条件下で試験を実施した。
<実施例II>
γグリシドキシプロピルトリメトキシシラン200部、ケイ酸エチル10部、メチルアルコール50部とを加え撹拌しながら0.01規定の塩酸70部を滴下して一昼夜加水分解を行う。これによって加水分解物を得る。
【0102】
上記加水分解物にエタノール分散Nbゾル(多木化学株式会社「Nd−AC25E」不揮発分25%、粒子径5nm)800部、1−メトキシ2−プロパノール50部と低温硬化触媒としてアセチルアセトンアルミニウム5部を加え一昼夜撹拌し1μmフィルターで濾過し屈折率1.64のハードコーテイング組成物塗料を得る。
【0103】
実施例中の酸化ニオブ微粒子が塗膜の膜性能に起因しているか否か見るため酸化チタンからなる複合微粒子に変更し膜性能の確認を行った。
(先願特許 塗料組成物特公昭57-42665号公報,光学プラスチック成形品用塗料組成物第25776070号 との比較)
<比較例1>
屈折率1.60(a)組成、1.67(b)組成、1.60(c)組成の眼鏡用レンズ基材を用いる。
【0104】
このプラスチックレンズをカセイソーダ水溶液に浸漬洗浄乾燥を施す。
【0105】
γグリシドキシプロピルトリメトキシシラン125部、ケイ酸エチル110部、メタノール92部、メチルエチルケトン200部、メタノール分散チタニア複合微粒子(SiO2/TiO2=0.235,Fe2O3/TiO2=0.008 不揮発分30%粒子径11nm)180部を加え撹拌しながら0.01規定の塩酸54部を滴下して一昼夜加水分解を行う。これによって加水分解物を得る。
【0106】
上記加水分解物に界面活性剤として(商品名「L7002」日本ユニカ社製)1.5部と低温硬化触媒としてイタコン酸12部、ジシアンジアミド5部を加え一昼夜撹拌し濾過してハードコーテイング組成物塗料を得る。
<比較例2>
屈折率1.60(a)組成、1.67(b)組成、1.60(c)組成の眼鏡用プラスチックレンズを用いる。
【0107】
このプラスチックレンズをカセイソーダ水溶液に浸漬洗浄乾燥を施す。
【0108】
γグリシドキシプロピルトリメトキシシラン382部、ケイ酸エチル56部、にメチルアルコール350部とを加え撹拌しながら0.02規定の塩酸111部を滴下して一昼夜加水分解を行う。これに界面活性剤としてフッ素アルキルエステル(商品名「フロラードFC430」住友3M製)0.12部と触媒としてイタコン酸を67部とジシアンジアミドを17部を加え一昼夜撹拌し濾過してハードコート組成物塗料を得る。
【0109】
プラスチックレンズに得られたハードコーテイング組成物塗料に浸漬後105mm/minで引き上げコーティングを施す。塗布したレンズ基材は110℃×20min予備乾燥後、100℃×4h加熱処理してハードコート組成物を硬化させた。
<試験結果及び考察>
上記各実施例・比較例の試験結果を表1〜5に示す。それらの結果から、下記のことが分かる。
【0110】
本発明が解決しようとする課題でハードコートの光干渉を抑えるという特性を高屈折レンズに対して維持するという点に関して:
表1(実施例1)・・・屈折率1.60(a)(c)組成ポリチオウレタン樹脂レンズに対して表4(比較例2)の屈折率1.60(a)(c)組成ポリチオウレタン樹脂レンズへの塗膜時との比較で外観、干渉縞の判定で本発明は優れた結果を得られた。
【0111】
表2(実施例2)・・・屈折率1.67(b)組成ポリチオウレタン樹脂レンズに対して表4(比較例2)の屈折率1.67(b)組成ポリチオウレタン樹脂レンズへの塗膜との比較で外観、干渉縞の判定で本発明はより優れた結果を得られた。
【0112】
これらの結果から、本発明は屈折率1.60〜1.67のポリチオウレタン樹脂レンズに対応した発明になっている。
【0113】
表3(比較例1)・・・外観、干渉縞判定において良好な結果が得られ、ハードコートの光干渉抑えるという特性は得られているが、酸化鉄/酸化チタン複合酸化微粒子中の酸化鉄が紫外線影響によって耐候性試験後黒化現象が確認され美観を損なうことが確認されている。
【0114】
なお、表1(実施例1)、表2(実施例2)で得られた全てのレンズでこれらの現象は確認されていない。
【0115】
また、表3(比較例1)は、酸化鉄/酸化チタン複合酸化微粒子中の酸化チタンが紫外線影響によって耐候性試験前の染色着色量に対して約46%の脱色現象が確認されている。これに対して、酸化チタンを用いず代用として酸化ニオブを用いた表1(実施例I)、表2(実施例2)では、同様の試験で着色量に対して脱色率は約16%に留まっている。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【0120】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシラン加水分解物中に、五酸化二ニオブ(Nb25:以下単に「酸化ニオブ」という。)微粒子がコロイド状態で分散されていることを特徴とするハードコート組成物。
【請求項2】
前記アルコキシシラン加水分解物が、
(A)成分:
一般式
【化1】

(但し、R1はH又はCH3、R2は炭素数1〜4のアルキレン基、R3は炭素数1〜4のアルキル基で表される。)
で示されるトリアルコキシシランの加水分解物、及び
(B)一般式
Si(OR1)4で示されるテトラアルコキシシランの加水分解物、
( 但しR1は炭素数1〜4のアルキル基で表される)
の混合物であって、前記(A)成分/(B)成分=7.5/2.5〜9.5/0.5の混合比率を有することを特徴とする請求項1記載のハードコート組成物。
【請求項3】
前記コロイド状態の酸化ニオブ微粒子が、粒子径:1〜50nmであり、分散剤:アニオン系界面活性剤であることを特徴とするハードコート組成物。
【請求項4】
前記酸化ニオブ微粒子100質量部に対する前記アニオン系界面活性剤の混合比率が10〜100質量部であることを特徴とする請求項3記載のハードコート組成物。
【請求項5】
前記アルコキシシラン100質量部に対する前記酸化ニオブ微粒子の混合比率が40〜100質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハードコート組成物。
【請求項6】
屈折率1.60以上の有機ガラスで形成された光学基材の片面又は両面に、請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート組成物で形成されたハードコート膜を備えてなることを特徴とする光学要素。
【請求項7】
前記有機ガラスが、屈折率1.60〜1.67のポリチオウレタン樹脂であることを特徴とする請求項6記載の光学要素。
【請求項8】
前記光学基材と前記ハードコート膜との間に、更に、プライマー膜を具備することを特徴とする請求項6又は7記載の光学要素。
【請求項9】
前記ハードコート膜の表面側に、更に、光学無機薄膜(反射防止膜、反射増加膜、干渉フィルターを含む。)を具備することを特徴とする請求項8記載の光学要素。


【公開番号】特開2006−249351(P2006−249351A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70792(P2005−70792)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(391007507)伊藤光学工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】