説明

ハードディスクドライブのオフトラックイベント方法及び装置

【課題】新規且つ改善された、ハードディスクドライブのオフトラックイベント方法及び装置の提供。
【解決手段】第1のデータオペレーションにおいてオフトラックイベントが生じた後に、適切な第2のデータオペレーションを識別し(912)、オフトラックイベント修正前に第2のデータオペレーションを行う(913)方法及び装置が示されている。示された方法及び装置によって、ハードディスクドライブにおける効率の向上がもたらされる。オフトラックエラーを修正するための別の試行のために、読み出し/書き込みヘッドが回転するのを待って通常無駄にされる時間が、別の手近なオペレーションを完了させるために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブのオフトラックイベント方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクドライブは、情報記憶装置である。ディスクドライブは回転スピンドルに固定された1枚以上のディスクと、それぞれのディスクの表面からデータを表す情報を読み出すための、及び/又は、それぞれのディスクの表面にデータを書き込むための、少なくとも一つのヘッドを含む。ヘッドは、ボイスコイルモータ(voice coil motor)によって駆動され得るアクチュエータに連結されたサスペンションによって支持される。ディスクドライブの制御電子回路は、電気信号をボイスコイルモータに提供して、ディスク上のトラック内でのデータ読み出し及び書き込みのためにヘッドをディスク上の所望の位置に移動させ、不使用時あるいはディスクドライブの保護のために好ましい他の場合にヘッドを安全なエリアに止めさせる。
【0003】
特定の環境下において、ハードディスクドライブは、振動や突然の衝撃といったより困難な操作環境にさらされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、新規且つ改善された、ハードディスクドライブのオフトラックイベント方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を含む。
【0006】
(1)第1のデータオペレーションを、ハードディスク表面の第1のトラック上で開始することと、
前記第1のデータオペレーション中のオフトラックイベントの位置を記録することと、
隣接する第2のトラックで行われる、第2のデータオペレーションをチェックすることと、
前記第1のデータオペレーション完了のための再試行前に、前記第2のデータオペレーションを行うことと、
を備える方法。
【0007】
(2)前記第1のデータオペレーション完了のための再試行前に、前記第2のデータオペレーションを行うことは、前記オフトラックイベント直後のハードディスクの回転中に、前記第2のデータオペレーションを行うことを含む、(1)に記載の方法。
【0008】
(3)前記第1のデータオペレーションを開始することは、データ書き込みオペレーションを開始することを含む、(1)に記載の方法。
【0009】
(4)前記第1のデータオペレーションを開始することは、データ読み出しオペレーションを開始することを含む、(1)に記載の方法。
【0010】
(5)前記第1のデータオペレーションを、前記記録された位置から前記第1のデータオペレーションの終端まで完了させることを更に含む、(1)に記載の方法。
【0011】
(6)前記第1のデータオペレーションを、前記記録された位置よりも前の位置から前記第1のデータオペレーションの終端まで完了させることを更に含む、(1)に記載の方法。
【0012】
(7)前記第2のデータオペレーションの完了後、ハードディスクの次の回転で、前記第1のデータオペレーションを、前記記録された位置、又は前記記録された位置よりも前の位置から前記第1のデータオペレーションの終端まで完了させることを更に含む、(1)に記載の方法。
【0013】
(8)前記第1のデータオペレーションがどれだけ長く未完了であるかの測定基準をチェックすることと、
前記測定基準を因子として用いて、前記第1のデータオペレーションの完了に優先度を付けることと、
を更に含む、(1)に記載の方法。
【0014】
(9)前記第1のデータオペレーションを開始することは、データ書き込みオペレーションを開始することを含む、(8)に記載の方法。
【0015】
(10)前記第2のデータオペレーションを行うことは、データ書き込みオペレーションを行うことを含む、(9)に記載の方法。
【0016】
(11)前記測定基準をチェックすることは、持続時間をチェックすることを含む、(8)に記載の方法。
【0017】
(12)前記測定基準をチェックすることは、回転数をチェックすることを含む、(8)に記載の方法。
【0018】
(13)第1のデータオペレーションを、ハードディスク表面の第1のトラック上で開始することと、
前記第1のデータオペレーション中のオフトラックイベントの第1の位置を記録することと、
前記第1のデータオペレーションが前記オフトラックイベントから復帰した第2の位置を、前記第1の位置と前記第2の位置との間のエラー領域を定めるために、記録することと、
隣接する第2のトラックで行われる、第2のデータオペレーションをチェックすることと、
前記エラー領域の完了のための再試行前に、前記第2のデータオペレーションを行うことと、
を備える方法。
【0019】
(14)前記隣接する第2のトラックで行われる第2のデータオペレーションをチェックすることは、前記第2のデータオペレーションのトラック長及び位置を、適切な第2のデータオペレーションを多数の第2のデータオペレーションから選択するために、チェックすることを含む、(13)に記載の方法。
【0020】
(15)
前記第2のデータオペレーションの完了後、ハードディスクの次の回転で、前記エラー領域を、前記第1の位置、又は前記第1の位置よりも前の位置から完了させることを更に含む、(13)に記載の方法。
【0021】
(16)前記エラー領域がどれだけ長く未完了であるかの測定基準をチェックすることと、前記測定基準を因子として用いて前記エラー領域の完了に優先度を付けることを更に含む、(13)に記載の方法。
【0022】
(17)ハードディスクと、
前記ハードディスクを回転させるスピンドルモータと、
前記ハードディスク上のトラックを追跡する読み出し/書き込みヘッドと、
メディアに記憶され、ハードディスクドライブに連結されたコンピュータ読み取り可能な命令であって、
第1のデータオペレーションを、ハードディスク表面の第1のトラック上で開始することと、
前記第1のデータオペレーション中のオフトラックイベントの位置を記録することと、
隣接する第2のトラックで行われる、第2のデータオペレーションをチェックすることと、
前記第1のデータオペレーション完了のための再試行前に、前記第2のデータオペレーションを行うことと、
を含む多数の動作を、前記読み出し/書き込みヘッドに行わせる命令と、
を備えるハードディスクドライブ。
【0023】
(18)前記コンピュータ読み取り可能な命令は、前記ハードディスクドライブ内のファームウェアに記憶されている、(17)に記載のハードディスクドライブ。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、新規且つ改善された、ハードディスクドライブのオフトラックイベント方法及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、本発明の実施形態の例が、図面を参照して説明される。以下の説明では、隣接する、という語は、直接隣接する場所と、議論の対象から近い距離内にある位置とを含むものとする。
【0026】
図1は、実施形態の一例による、磁気記録再生装置(ハードディスクドライブ)の斜視図である。磁気記録再生装置は内部にシャシー(chassis)10、磁気ディスク11、読み出しヘッド及び書き込みヘッドを含んだヘッドスライダ(head slider)16、ヘッドスライダ16を支持するヘッドサスペンションアッセンブリ(head suspension assembly)(サスペンション15及びアクチュエータアーム14)、ボイスコイルモータ(VCM)17、及び回路基板を含む。
【0027】
磁気ディスク11は、スピンドルモータ(spindle motor)12に取り付けられ、スピンドルモータ12によって回転される。各種のデジタルデータは、磁気ディスク11に記録される。実施形態の一例においては、ヘッドスライダ16に内蔵された磁気ヘッドは、単極構造の書き込みヘッドと、遮蔽MR読み出し素子(GMRフィルムやTMRフィルム等)を用いる読み出しヘッドとを含む統合ヘッドである。サスペンション15はアクチュエータアーム14の一端で保持され、ヘッドスライダ16を支持して磁気ディスク11の記録面を向くようにする。アクチュエータアーム14は、ピボット(pivot)13に取り付けられる。ボイスコイルモータ(VCM)17は、アクチュエータを駆動するもので、アクチュエータアーム14の他端に備えられる。VCM17は、ヘッドサスペンションアッセンブリを駆動し、磁気ヘッドの位置を磁気ディスク11の半径方向で任意の位置に定める。回路基板は、VCMのための駆動信号と、磁気ヘッドによって行われる読み出し及び書き込み動作を制御するための制御信号とを生成するヘッドIC(head IC)を含む。
【0028】
図2は、実施形態の一例による、磁気ディスク11の概略平面図である。図2は、データゾーン(data zone)18及びサーボゾーン(servo zone)19を示す。ユーザデータは、データゾーン18の各々に記録される。本例の磁気ディスクは、同心の磁気パターンを成すトラックを有する。記録トラックの一例については、図3を参照して後述される。ヘッドの位置決めのためのサーボデータ(servo data)は、異なって磁化された物質によるパターンとして、各サーボゾーン19に形成される。図2に示す実施形態の一例においては、サーボゾーン19は、アクセス中のヘッドスライダの軌跡に対応する円弧のような形状をしている。
【0029】
図3は、実施形態の一例による、磁気ディスクメディア内のデータゾーンの一例の斜視図である。柔軟な基層(underlayer)22は、記録トラック(recording track)23を構成する磁気パターンと共に、基板(substrate)21上に形成されている。記録トラック23の半径方向の幅及びトラックピッチ(track pitch)は、それぞれTw及びTpによって示される。読み出しヘッドのGMR素子31、及び書き込みヘッドの単極(single pole)32は、ヘッドスライダ内に形成されており、記録トラック23上に配置される。
【0030】
基板21としては、平坦なガラス基板が用いられてもよい。基板21はガラス基板に限らず、アルミ基板(あるいは他の適当な基板)が用いられてもよい。磁性材料は、基板21上に配置され、選択的に磁化されて記録トラックを形成する。CoCrPtのような磁性材料が用いられてもよいが、実施形態の各例はこれに限定されない。図示されていないが、ダイアモンド状炭素(diamond-like carbon)(DLC)の保護フィルムが、メディアの表面上に形成されてもよい。一例においては、保護フィルムの表面に潤滑剤が塗布されてもよい。
【0031】
図4及び図5を参照して、サーボゾーン及びデータゾーンのパターンが説明される。図4に概略的に示されるように、サーボゾーン19はプリアンブルセクション(preamble section)41、アドレスセクション(address section)42、バーストセクション(burst section)43を偏差(deviation)の検出のために有する。
【0032】
図5に示すように、データゾーン18は記録トラック23を含む。サーボ信号(servo signal)を提供する磁化のパターンは、サーボゾーン19内のプリアンブルセクション41、アドレスセクション42、及びバーストセクション43のそれぞれにおいて形成される。これらのセクションは、以下に述べる機能を有してもよい。
【0033】
プリアンブルセクション41は、ヘッド及びメディアの相対運動によって引き起こされる偏差に関するサーボ信号読み出しのためのクロックを同期させるフェーズロックループ(phase lock loop)(PLL)処理、及び適切な信号振幅を維持するAGC処理を実行するために備えられている。
【0034】
アドレスセクション42は、例えばマンチェスター符号化方式(Manchester encoding)や他のタイプの符号化を用いて、円周方向にプリアンブルセクション41と同じピッチで形成され、サーボマーク(servo mark)、セクタデータ(sector data)、シリンダデータ(cylinder data)等と称されるサーボ信号認識コード(servo signal recognition code)を有してもよい。バーストセクション43は、シリンダアドレス(cylinder address)についてオントラック(on-track)状態に対するオフトラック量の検出に用いられる、オフトラック検出領域(off-track detection region)の一例である。バーストセクション43は、所望のトラック中心に対して、読み出し又は書き込みヘッドを配置するためのパターンを含む。図5のパターンは、バーストマーク(burst mark)(A,B,C,及びD)の4つのフィールドを含む例として示され、その半径方向のパターンは、各フィールドにおいて互いにシフトしている。他のバーストパターンもまた用いられ得る。一例としては、複数のマークが、円周方向にプリアンブルセクションと同ピッチで配置される。
【0035】
バーストセクション43に基づく位置検出の原理は、詳細には説明されない。図示されたパターンを用いる場合、オフトラック量は、A,B,C及びDバーストからの読み出し信号の平均振幅値の計算によって得られてもよい。上述のように、平均振幅に依らない他のパターンが用いられてもよい。
【0036】
図6は、実施形態の一例による、磁気記録再生装置(ハードディスクドライブ)のブロック図を示す。一例が示されてはいるが、本発明の開示を利用する当業者は、他の装置や回路構成も、本発明の範囲内で可能であることを認識するであろう。この図は、磁気ディスク11の上面の上方にのみ存在するヘッドスライダ16を示す。しかしながら、垂直磁気記録層は磁気ディスクの各々の面に形成されている。ダウンヘッド(down head)及びアップヘッド(up head)は、磁気ディスクの上面及び下面の上方及び下方にそれぞれ備えられる。ディスクドライブは、ヘッドディスクアッセンブリ(head disk assembly)(HDA)100と呼ばれる本体ユニット及びプリント基板(PCB)200を含む。
【0037】
図6に示すように、HDA100は、磁気ディスク11、磁気ディスク11を回転させるスピンドルモータ12、読み出しヘッド及び書き込みヘッドを含むヘッドスライダ16、サスペンション15及びアクチュエータアーム14、VCM17、及び図示しないヘッド増幅器(head amplifier)(HIC)を有する。ヘッドスライダ16には、図3に示す素子31、32と同様の、巨大磁気抵抗(GMR)素子といった読み出し素子を含む読み出しヘッド及び書き込みヘッドが備えられる。
【0038】
ヘッドスライダ16は、サスペンション15上に設けられたジンバルによって伸縮自在に支持されてもよい。サスペンション15はアクチュエータアーム14に取り付けられ、アクチュエータアーム14は、ピボット13に回転可能に取り付けられている。VCM17はピボット13周りにトルクを発生させ、アクチュエータアーム14が磁気ディスク11の半径方向にヘッドを動かす。HICは、アクチュエータアーム14に固定され、ヘッドへの入力信号及びヘッドからの出力信号を増幅する。HICはフレキシブルケーブル(flexible cable)120を介してPCB200に接続される。HICをアクチュエータアーム14上に備えると、ヘッド信号内のノイズが効果的に低減され得る。しかしながら、HICはHDA本体に固定されてもよい。
【0039】
上述のように、磁気記録層は磁気ディスク11の各面上に形成され、それぞれが円弧のような形状をもつサーボゾーン19は移動するヘッドの軌跡に対応するよう形成される。磁気ディスクの仕様は、特定のドライブに適した読み出し/書き込み特性、外径及び内径に応じる。サーボゾーン19によって形成される円弧の半径は、ピボットから磁気ヘッド素子への距離として与えられる。
【0040】
図示された実施形態の例では、いくつかの主要な電気的コンポーネント、いわゆるシステムLSIがPCB200上に取り付けられている。システムLSIはコントローラ210、読み出し/書き込みチャネルIC(read/write channel IC)220、及びモータドライバIC(motor driver IC)240である。コントローラ210は、ディスクコントローラ(HDC)及びMPUと、ファームウェアを含む。MPUは、駆動システムの制御ユニットであり、ROM、RAM、CPU、及び本実施形態の例に係るヘッド位置決め制御システムを実施する論理処理ユニットを含む。論理処理ユニットは、高速計算を実行するハードウェア回路から成る演算処理ユニットである。論理処理回路のためのファームウェアは、ROMあるいはディスクドライブの他の場所に保存されている。MPUは、ファームウェアに従ってドライブを制御する。
【0041】
ディスクコントローラ(HDC)は、ハードディスクドライブ内のインタフェースユニットであり、ディスクドライブとホストコンピュータ500(例えば、パーソナルコンピュータ)間のインタフェースと、MPU、読み出し/書き込みチャネルIC220、及びモータドライバIC240とを用いた情報交換によりドライブ全体を管理する。
【0042】
読み出し/書き込みチャネルIC220は、読み出し/書き込み動作に関連するヘッド信号処理ユニット(head signal processing unit)である。読み出し/書き込みチャネルIC220は、読み出し/書き込みパス(read/write path)212及びサーボ復調器(servo demodulator)204を含んで図示される。読み出し/書き込みパス212は、ユーザデータとサーボデータの読み出し及び書き込みに用いられことが可能であり、サーボ復調に有用なフロントエンド回路(front end circuitry)を含んでもよい。読み出し/書き込みパス212はまた、セルフサーボ書き込み(self-servowriting)に用いられてもよい。ディスクドライブは他のコンポーネントをも含んでいるが、実施形態の各例を説明するのに必須ではないため図示されていないことには留意すべきである。
【0043】
サーボ復調器204は、サーボフェーズロックドループ(phase locked loop)(PLL)226、サーボ自動ゲイン制御(automatic gain control)(AGC)228、サーボフィールドディテクタ(field detector)231、及びレジスタスペース(register space)232を含んで図示される。サーボPLL226は、一般に、サーボ復調器204内で、1以上のタイミングあるいはクロック回路(図6には示さず)のための周波数及び位相制御を提供するのに用いられる制御ループである。例えば、サーボPLL226は、タイミング信号を読み出し/書き込みパス212に提供することができる。サーボAGC228は、可変ゲイン増幅器(variable gain amplifier)を含み(又は駆動し)、複数のディスク11のうち1つ上のサーボゾーン19が読み出されている時の、読み出し/書き込みパス212の出力をほぼ一定レベルに保つために用いられる。サーボフィールドディテクタ231は、SAM(Servo Address Mark)、トラック番号、第1サーボバースト(first servo burst)、及び第2サーボバースト(second servo burst)を含む、サーボゾーン19の様々なサブフィールド(subfield)の検出及び/又は復調に用いられる。MPUは、様々なサーボ復調機能(例えば、決定、比較、特徴付け等)の実行に用いられ、サーボ復調器204の一部であるとも考えることができる。別の方法では、サーボ復調器204は、独自のマイクロプロセッサを持つことも可能である。
【0044】
読み出し/書き込みパス212がサーボデータを読んでいる場合は、1以上のレジスタ(例えばレジスタスペース232内)が適切なサーボAGC値(例えばゲイン値、フィルタ係数、フィルタ蓄積パス(filter accumulation path)等)の記憶に用いられ、読み出し/書き込みパス212がユーザデータを読んでいる場合には、1以上のレジスタが適切な値(例えばゲイン値、フィルタ係数、フィルタ蓄積パス等)を記憶するのに用いられ得る。制御信号は、読み出し/書き込みパス212のカレントモードに従い、適切なレジスタを選択するのに用いられ得る。記憶されたサーボAGC値は、動的な更新が可能である。例えば、読み出し/書き込みパス212がサーボデータを読んでいる時に用いるための記憶されたサーボAGC値は、更なるサーボゾーン19が読み出されるたびに更新され得る。このように、直近のサーボゾーン19の読み出しについて決定されたサーボAGC値は、次のサーボゾーン19が読み出される際には、始動サーボAGC値となり得る。
【0045】
読み出し/書き込みパス212は、磁気ディスク11への情報の書き込み及び磁気ディスク11からの情報の読み出し処理に使用される電子回路を含む。MPUは、サーボ制御アルゴリズムを実行することができ、このため、サーボコントローラと称される。あるいは、別個のマイクロプロセッサ又はデジタル信号プロセッサ(図示せず)がサーボ制御機能を実行することもできる。
【0046】
動作中、上述のようなハードディスクドライブは、機械的な外乱を受ける。機械的な外乱の例としては、乗り物内で操作すること等による振動、動作中のハードディスクドライブをぶつけること等による衝撃が含まれるが、これに限定されない。機械的な外乱は、オフトラックイベント(off track event)を引き起こすことがある。オフトラックイベント中、読み出し/書き込みヘッドは、データオペレーション(data operation)を行っているトラックのサーボができず、当該データオペレーションは、繰り返されるか、そうでなければ修正される必要がある。ドライブ動作中のオフトラックイベントの発生を受け入れるならば、1以上のオフトラックイベントが検出された際のドライブ動作を最適化することが望ましい。
【0047】
データオペレーションは、長さと位置(location)を伴うトラックあるいはトラックの複数の部分であると考えられる。位置は、半径成分及び角度成分を用いる局座標によって表現可能である。図7は、内径710及び外径712を有するディスク700を示す。動作中、ディスク700は、図に示されるように、702の方向に回転している。第1のトラック720及び第2のトラック730は、ディスク700上で互いに隣接しており、半径方向の位置が異なって示されている。
【0048】
第1のデータオペレーション722は、第1のトラック720上に示されている。第1のデータオペレーション722が完了されていれば、オペレーション722の終端は、終点(end point)724にある。一方、第1のデータオペレーションにおけるオフトラックイベントが、位置723に図示されている。読み出し/書き込みヘッド(図示せず)は、オフトラックイベント中に矢印740に沿って第1のトラック720を離れ、隣接する第2のトラック730上にまで達する。オフトラックエラー(off track error)を修正する一般的な方法としては、ディスクが全回転するのを待ち、オペレーション722が完了される、あるいは再試行が行われる。
【0049】
図7は、オフトラックイベントを引き起こす機械的な外乱を受けた場合の、ドライブの効率を向上させる別の方法を説明する図である。位置723におけるオフトラックイベントの後、位置723が記録されるが、これは位置723と終点724の間の、オペレーション722のミス部分(missed portion)を後で修正するためである。隣接する第2のトラック730において完了される予定になっている第2のデータオペレーション732は、クリテリア(criteria)の数に基づいて識別される。クリテリアには、第1のデータオペレーション722に対する第2のデータオペレーションの長さ、角位置、及び第1のトラック720に対する第2のトラック730の近さ(proximity)等が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0050】
一例において、第2のデータオペレーション732は、第1のデータオペレーション722が修正される前に行われる。一例において、第2のデータオペレーション732は、位置723からのオフトラックイベント直後のハードディスクの回転中に行われる。第2のデータオペレーション732が終点733において完了した後、読み出し/書き込みヘッドは、矢印742に沿って第1のトラック720に戻り、第1のデータオペレーション722の完了に備える。一例において、第1のデータオペレーション722の完了は、第1の位置723から終点724へのオペレーションの再試行を含む。他の例においては、第1のデータオペレーション722の完了は、第1の位置723よりある距離分だけ前から、終点724への領域の再試行を含む。他の例において、第1のデータオペレーション722の完了は、当該オペレーション722全部の再試行を含む。
【0051】
第2のデータオペレーション732一つのみが図7に示されているが、他の例では、多数の第2のデータオペレーションが、第1のデータオペレーション722完了前の、オフトラックイベント直後のハードディスクの回転中に完了される。一つの隣接するトラック730のみが図7では用いられているが、実施形態の例はこれに限定されない。一例としては、第1のデータオペレーション722の完了前に、多数の第2のデータオペレーションが複数の隣接トラック上で完了される。一例において、多数のトラック上での多数の第2のデータオペレーションは、オフトラックイベントと、第1のデータオペレーション722における次の通過との間のハードディスクの回転中に完了される。
【0052】
一例としては、第1のデータオペレーション722が妨げられてからどれだけ長く経つかを測定するための測定基準(metric)が含まれる。例えば、第1のデータオペレーション722が次の回転でも完了されず、未完了のままの時間が長すぎる場合、第1のデータオペレーション722を高い優先度で完了することが望まれてもよい。第1のデータオペレーション722が妨げられてからどれだけ長く経つかを測定するための一つの測定基準としては、実際の時間計測が含まれる。他の測定基準としては、ディスクの回転の計算がある。実施形態の一例において、図6でコントローラ210内に示されたようなファームウェアは、測定基準の評価及びデータオペレーションの優先付けに用いられる。一例において、第1のデータオペレーション722が所定長の時間中妨げられれば、ドライブは、オペレーション722が完了するまで再試行を続ける。
【0053】
図8は、別のオフトラックイベント及びオフトラックイベント後のオペレーション方法を説明する図である。ディスク800は、内径810及び外径812を有する。動作中、ディスク800は、図に示されるように、802の方向に回転している。第1のトラック820及び第2のトラック830は、ディスク800上で互いに隣接し、半径方向の位置が異なって示されている。
【0054】
図7と同様に、第1のデータオペレーション822が第1のトラック820上に示されている。第1のデータオペレーション822が完了されていれば、オペレーション822の終端は、終点827にある。一方、第1のデータオペレーションにおけるオフトラックイベントが、位置823に図示されている。図8では、しかしながら、読み出し/書き込みヘッドは、第1のトラック820を第1の位置823において見失い、第2の位置825において第1のトラック820に復帰しており、エラー領域(error region)824が第1の位置823と第2の位置825の間に残されている。第2の位置825と終点827の間の領域826は、良好であり、修正の必要はない。
【0055】
一例において、終点827の後、少なくとも一つの第2のデータオペレーション832が、図7に従って論じられたのと同様のクリテリアに基づいて識別される。クリテリアには、第1のデータオペレーション822に対する第2のデータオペレーションの長さ、角位置、及び第1のトラック820に対する第2のトラック830の近さ等が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0056】
いったん識別されると、第2のデータオペレーション832は、第1のデータオペレーション822内のエラー領域824の修正前に行われる。一例において、第2のデータオペレーション832は、終点827の直後の回転中に行われ、エラー領域824は、読み出し/書き込みヘッドの次の通過で修正される。他の例では、エラー領域824の修正前に、ハードディスクの多数の回転が通過する。先に論じられたように、一つの第2のオペレーションと、一つの隣接トラックが図に用いられているが、本発明の選択された実施形態の例においては、エラー領域824が修正される前に、多数の第2のデータオペレーション及び/又は多数の隣接トラックが用いられる。
【0057】
第2のデータオペレーション832の終点833における完了後、読み出し/書き込みヘッドは、矢印842に沿って第1のトラック820に戻り、エラー領域824の完了に備える。一例において、エラー領域824の完了は、第1の位置823から第2の位置825への領域の再試行を含む。他の例においては、エラー領域824の完了は、第1の位置823よりある距離分だけ前から、第2の位置825への領域の再試行を含む。
【0058】
図9は、本明細書中で述べられた、実施形態の各例において説明された方法の一例を示す。この方法のリストには、第1のデータオペレーションを、ハードディスク表面の第1のトラック上で開始すること910、が挙げられている。オフトラックイベントがあると、当該方法のリストには、第1のデータオペレーション中でのオフトラックイベントの位置を記録すること911、が挙げられる。当該方法のリストには更に、隣接する第2のトラックで行われる第2のデータオペレーションをチェックすること912、及び第1のデータオペレーション完了のための再試行前に、第2のデータオペレーションを行うこと913が挙げられる。図9には方法の一例が示されているが、実施形態の例はこれに限定されない。本発明の開示を利用する当業者は、他の変形された方法も、本発明の範囲内で可能であることを認識するであろう。
【0059】
適切な第2のデータオペレーションを識別し、オフトラックイベント修正前にこれらを行う方法を用いることで、ハードディスクドライブにおける効率の向上がもたらされる。オフトラックエラーを修正するための別の試行のために、読み出し/書き込みヘッドが回転するのを待って通常無駄にされる時間が、別の手近なオペレーションを完了させるために用いられる。
【0060】
上述のようなドライブ動作を演算し実行するソフトウェアは、一般的にはハードドライブ内のファームウェアに記憶されるが、実施形態の例はこれに限定されない。上述のような選択された方法を実行する、より一般的なコンピュータシステムのブロック図は、図10に示される。コンピュータ610の形式の一般的な計算装置は、プロセッシングユニット602、メモリ604、リムーバブルストレージ(removable storage)612、及びノンリムーバブルストレージ(non-removable storage)614を含んでもよい。メモリ604は、揮発性メモリ606及び不揮発性メモリ608を含んでもよい。コンピュータ610は、揮発性メモリ606と不揮発性メモリ608、リムーバブルストレージ612とノンリムーバブルストレージ614といった多様なコンピュータ読取り可能なメディアを含んでも、あるいはこれらの多様なメディアを含むコンピュータ環境へのアクセスを有してもよい。コンピュータストレージはRAM、ROM、消去可能PROM(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリや他のメモリ技術、CD−ROM、DVD、その他の光学ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージやその他の磁気ストレージ装置、あるいはその他のコンピュータ読取り可能な命令を記憶できるメディアを含む。コンピュータ610は、入力616、出力618、及び通信接続620を含むコンピュータ環境を含んでも、あるいはこのようなコンピュータ環境へのアクセスを含んでもよい。コンピュータは、1以上のリモートコンピュータ(remote computer)と接続するのに、通信接続を用いてネットワーク化された環境において動作してもよい。リモートコンピュータは、パーソナルコンピュータ(PC)、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピアデバイス(peer device)や他の一般的なネットワークノード(network node)等を含んでもよい。通信接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)や他のネットワークを含んでもよい。ディスクドライブのコントローラ210又は他の選択された回路やコンポーネントが、このようなコンピュータシステムであってもよい。
【0061】
コンピュータ読取り可能なメディアに記憶されたコンピュータ読取り可能な命令は、コンピュータ610のプロセッシングユニット602によって実行可能である。ハードドライブ、CD−ROM、及びRAMは、コンピュータ読取り可能なメディアを含む物品の例である。上述のように、コンピュータプログラムは、ディスクドライブに関連してファームウェアと称されてもよい。実施形態によっては、コンピュータプログラム625のコピーが、ディスクドライブの磁気ディスク11に記憶されることも可能である。
【0062】
上述の特定の実施形態の説明は、本発明の一般的な性質を効果的に明らかにしており、現在の知識の適用により、包括的な概念から逸脱することなく、様々な応用のために容易に修正及び/又は適合が可能である。従って、このような適合及び修正は、開示された実施形態の等価物の意義及び範囲内に包括されることが意図されている。
【0063】
本明細書において採用された語法や用語は、説明を目的とするものであり、限定のためではないということが理解される。従って本発明は、添付の請求項の精神と範囲内に含まれるこのような代替物、修正、等価物、及び変形全てを包含することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施形態の一例による、磁気記録再生装置(ハードディスクドライブ)の斜視図。
【図2】実施形態の一例による、磁気ディスクの概略平面図。
【図3】実施形態の一例による、磁気ディスクの一部の斜視図。
【図4】実施形態の一例による、磁気ディスク内のサーボゾーン及びデータゾーンを示す概略図。
【図5】実施形態の一例による、磁気ディスク内のサーボゾーン及びデータゾーンにおけるパターンを示す平面図。
【図6】実施形態の一例による、磁気記録再生装置(ハードディスクドライブ)のブロック図。
【図7】実施形態の一例による、動作中の磁気ディスクの概略平面図。
【図8】実施形態の一例による、動作中の磁気ディスクの他の概略平面図。
【図9】実施形態の一例による、方法のフロー図。
【図10】実施形態の例で説明された方法及び装置を実施するためのコンピュータシステムのブロック図の例。
【符号の説明】
【0065】
10…シャシー、11…磁気ディスク、12…スピンドルモータ、13…ピボット、14…アクチュエータアーム、15…サスペンション、16…ヘッドスライダ、17…ボイスコイルモータ、18…データゾーン、19…サーボゾーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のデータオペレーションを、ハードディスク表面の第1のトラック上で開始することと、
前記第1のデータオペレーション中のオフトラックイベントの位置を記録することと、
隣接する第2のトラックで行われる、第2のデータオペレーションをチェックすることと、
前記第1のデータオペレーション完了のための再試行前に、前記第2のデータオペレーションを行うことと、
を備える方法。
【請求項2】
前記第1のデータオペレーション完了のための再試行前に、前記第2のデータオペレーションを行うことは、前記オフトラックイベント直後のハードディスクの回転中に、前記第2のデータオペレーションを行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のデータオペレーションを開始することは、データ書き込みオペレーションを開始することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のデータオペレーションを開始することは、データ読み出しオペレーションを開始することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のデータオペレーションを、前記記録された位置から前記第1のデータオペレーションの終端まで完了させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のデータオペレーションを、前記記録された位置よりも前の位置から前記第1のデータオペレーションの終端まで完了させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のデータオペレーションの完了後、ハードディスクの次の回転で、前記第1のデータオペレーションを、前記記録された位置、又は前記記録された位置よりも前の位置から前記第1のデータオペレーションの終端まで完了させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のデータオペレーションがどれだけ長く未完了であるかの測定基準をチェックすることと、
前記測定基準を因子として用いて、前記第1のデータオペレーションの完了に優先度を付けることと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1のデータオペレーションを、ハードディスク表面の第1のトラック上で開始することと、
前記第1のデータオペレーション中のオフトラックイベントの第1の位置を記録することと、
前記第1のデータオペレーションが前記オフトラックイベントから復帰した第2の位置を、前記第1の位置と前記第2の位置との間のエラー領域を定めるために、記録することと、
隣接する第2のトラックで行われる、第2のデータオペレーションをチェックすることと、
前記エラー領域の完了のための再試行前に、前記第2のデータオペレーションを行うことと、
を備える方法。
【請求項10】
前記隣接する第2のトラックで行われる第2のデータオペレーションをチェックすることは、前記第2のデータオペレーションのトラック長及び位置を、適切な第2のデータオペレーションを多数の第2のデータオペレーションから選択するために、チェックすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のデータオペレーションの完了後、ハードディスクの次の回転で、前記エラー領域を、前記第1の位置、又は前記第1の位置よりも前の位置から完了させることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記エラー領域がどれだけ長く未完了であるかの測定基準をチェックすることと、前記測定基準を因子として用いて前記エラー領域の完了に優先度を付けることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ハードディスクと、
前記ハードディスクを回転させるスピンドルモータと、
前記ハードディスク上のトラックを追跡する読み出し/書き込みヘッドと、
メディアに記憶され、ハードディスクドライブに連結されたコンピュータ読み取り可能な命令であって、
第1のデータオペレーションを、ハードディスク表面の第1のトラック上で開始することと、
前記第1のデータオペレーション中のオフトラックイベントの位置を記録することと、
隣接する第2のトラックで行われる、第2のデータオペレーションをチェックすることと、
前記第1のデータオペレーション完了のための再試行前に、前記第2のデータオペレーションを行うことと、
を含む多数の動作を、前記読み出し/書き込みヘッドに行わせる命令と、
を備えるハードディスクドライブ。
【請求項14】
前記コンピュータ読み取り可能な命令は、前記ハードディスクドライブ内のファームウェアに記憶されている、請求項13に記載のハードディスクドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−87517(P2009−87517A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35172(P2008−35172)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】