説明

ハーフプレキャストスラブ

【課題】 施工現場におけるコンクリート堰止め手段の取付け作業を省き、コンクリート打設前の現場作業を簡略化することができるハーフプレキャストスラブを提供すること。
【解決手段】 柱30、梁31及びスラブ32,33を強度の異なるコンクリートで形成する工法に用いるハーフプレキャスト板であって、ハーフプレキャスト板上に打設される現場打ちコンクリート20の流れを堰き止めるための堰止め手段11が、ハーフプレキャスト板上に突出するように、プレキャストコンクリート内に埋設されて形成された。また堰止め手段11は、コンクリート部11aと、コンクリート部内に埋設されて端部11b’が突出した補強筋11bとで形成することができて、かような堰止め手段は、コンクリート部の一部と補強筋の突出端とをプレキャストコンクリート12内に一体に埋設するように配置する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、柱、梁及びスラブを強度の異なるコンクリートで形成する工法に用いるハーフプレキャストスラブに関する。
【0002】
【従来の技術】
柱、梁及びスラブの各部位毎に、異なる圧縮強度のコンクリートを打設して躯体を構築することがある。例えば、鉄筋コンクリート構造で高層建築物を構築する場合には、600kgt/cm2以上のコンクリートで構造柱を形成することが要求されることがあり、この時、梁及びこの梁に付帯したスラブの一部分には概ね420kgt/cm程度以上のコンクリートを打設し、また前記梁付帯部以外のスラブには420kgt/cm2程度以下のコンクリートを打設することが要求されることが多い。
【0003】
かように異なる強度のコンクリートを部位毎に打ち分けると共に、鉄筋トラス筋が配設されたハーフプレキャスト板を用いて床スラブを構築する工法において、従来、ハーフプレキャスト板を柱や梁の型枠上に配置した後、施工現場においてハーフプレキャスト板の梁付帯スラブと床スラブとの境界にメッシュ筋あるいはパイプ束を結束し、このメッシュ筋あるいはパイプ束によって、床スラブから梁付帯スラブへ流入しようとするコンクリートを堰き止めていた。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上述したコンクリート堰止め手段では、メッシュ筋あるいはパイプ束を施工現場で結束しなければならないため、コンクリートの打設前の現場作業が煩雑になるという問題点があった。
【0005】
本考案は上記問題点を解消するためになされたものであり、その課題は、施工現場においてコンクリート堰止め手段を取り付ける必要が無く、コンクリート打設前の現場作業を簡略化することができるハーフプレキャストスラブを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案は、前記課題を解決するために、柱、梁及びスラブを強度の異なるコンクリートで形成する工法に用いるハーフプレキャスト板であって、該ハーフプレキャスト板上に打設される現場打ちコンクリートの流れを堰き止めるための堰止め手段が、該ハーフプレキャスト板上に突出するように、プレキャストコンクリート内に埋設されて形成されたハーフプレキャストスラブを提供する。
【0007】
本考案のハーフプレキャストスラブにおいて、前記堰止め手段は、コンクリート部と、該コンクリート部内に埋設されて、端部が突出した補強筋とで形成することができて、前記コンクリート部の一部と前記補強筋の突出端とを、前記プレキャストコンクリート内に一体に埋設するように配置する。
【0008】
【実施例】
以下に、本考案の一実施例を図を参照して説明する。
【0009】
図1は本考案のハーフプレキャストスラブの一部を示す部分断面図であり、図2(a)は本考案のハーフプレキャストスラブ、柱及び梁の配置関係を示すため、一部を省略して簡略に示した平面図であり、図2(b)は図2(a)において省略したトラス筋13と、ブロック11a,11b,11cとの配置関係を説明するために一部を示した部分平面図であり、図2(c)は図2(a)における一点鎖線IIc−IIcに沿った断面図であり、図3は本考案のハーフプレキャストスラブ上に現場打ちコンクリートを打設した状態を示す部分断面図である。
【0010】
図1において、本考案のハーフプレキャストスラブ10は、その型枠(図示せず)上で直交方向に交差するように下端筋14と15とを配筋し、この下端筋14,15の上にトラス筋13を配筋し、さらに、堰止め手段として予め形成したブロック11を下端筋14,15の上に配筋し、これら下端筋14,15と、トラス筋13の下端と、ブロック11の下端とを平板部12のプレキャストコンクリートに一体に埋設して形成する。
ここで、前記ブロック11は、図1に示したようにコンクリート部11aを矩形の断面形状に形成すると共に配設方向に延長するように形成し、このコンクリート部11a内に補強筋11b,11cを埋設し、この補強筋11cはブロック11の配設方向に延長するように配筋し、また補強筋11bはL字形状に形成して端部11b’がコンクリート部11aから突出するように複数を所定間隔で配筋する。また端部11b’の突出方向や補強筋11bの配筋間隔は、各端部11b’を平板部12の下端筋15に針金16で結束することができるように適宜定める。さらに前記ブロック11の高さは、その上端がトラス筋13の上端よりも若干低く位置するように定める。更にまた、図3(b)に示したように、ブロック11A,11B,11Cの長さや平面形状は、トラス筋13の配置に応じて適宜定めることができる。
【0011】
なお、前記平板部12のトラス筋13は、上弦材13aと下弦材13c,13cとをラチス材13bで連結して形成し、下弦材13c,13cとラチス材13b下端とを平板部12に埋設するように配筋する。
【0012】
次に、柱、梁及び床スラブを強度の異なるコンクリートで形成する工法に、上記ハーフプレキャストスラブ10を使用した場合の作用について、図2(a)〜(c)及び図3を参照して説明する。
例えば、鉄筋コンクリート構造で高層建築物を構築する場合、構造柱30には600kgt/cm2以上のコンクリートを打設し、梁31及び梁付帯スラブ32には420kgt/cm以上のコンクリートを打設し、また梁付帯スラブ32以外の床スラブ33には270kgt/cm2以上のコンクリートを打設することが要求されることがある。
かような躯体に、上記ハーフプレキャストスラブ10を使用する場合、図2(c)に示したように、支保工36で支持しながら梁用型枠35や柱用型枠(図示せず)を組立て、次いで、これら梁用型枠35や柱用型枠の上にハーフプレキャストスラブ10を配置し、このハーフプレキャストスラブ10のトラス筋13やブロック11の上に上端筋17,18を配筋する。そして、最初に、柱用型枠内に600kgt/cm2以上のコンクリートを打設して所定強度以上に硬化したら、次に、梁用型枠35内及び梁付帯スラブ32部分に420kgt/cm以上のコンクリートを打設する。
【0013】
この時、梁付帯スラブ32や床スラブ33部分の現場打ちコンクリートは、上端筋17,18の上に充分な被り厚さを得るため、図3に示したように、ブロック11よりも高い位置まで打設されるものの、梁用コンクリート20自体のコンシステンシーにより、そのほとんどがブロック11で堰き止められて、床スラブ33部分への流出は最低限に抑制される。
【0014】
次に、梁用コンクリート20が所定強度以上に硬化したら、床スラブ33部分へ270kgt/cm2以上のコンクリートを打設すれば、柱、梁及び床スラブ毎に異なる圧縮強度のコンクリートを打ち分けが終了する。
【0015】
【考案の効果】
本考案では、現場打ちコンクリートの流れを堰き止めるための堰止め手段が、ハーフプレキャスト板上に突出するように、プレキャストコンクリート内に予め埋設されてハーフプレキャストスラブが形成されるので、施工現場においてコンクリート堰止め手段を取り付けるといった煩雑な作業を簡略化することが可能になった。
【0016】
また本考案では、堰止め手段が、コンクリート部と、このコンクリート部内に埋設されて端部が突出した補強筋とからなり、コンクリート部の一部と補強筋の突出端とをプレキャストコンクリート内に埋設すれば、堰止め手段とプレキャストコンクリートとの一体性が良好なハーフプレキャストスラブを容易に形成することができる。これにより、施工現場における作業の簡略化のみならず、ハーフプレキャストスラブ製作時にも作業の簡略化が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案のハーフプレキャストスラブの一部を示す部分断面図である。
【図2】(a)は本考案のハーフプレキャストスラブ、柱及び梁の配置関係を示すため、一部を省略して簡略に示した平面図であり、(b)はトラス筋とブロックとの配置関係を説明するための部分平面図であり、(c)は(a)における一点鎖線IIc−IIcに沿った断面図である。
【図3】本考案のハーフプレキャストスラブ上に現場打ちコンクリートを打設した状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
10 ハーフプレキャストスラブ
11 ブロック(堰止め手段)
11a コンクリート部
11b 補強筋
11b’補強筋の端部
12 平板部(プレキャストコンクリート)
20 梁用コンクリート(現場打ちコンクリート)
30 柱
31 梁
32 梁付帯スラブ(スラブ)
33 スラブ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 柱、梁及びスラブを強度の異なるコンクリートで形成する工法に用いるハーフプレキャスト板であって、該ハーフプレキャスト板上に打設される現場打ちコンクリートの流れを堰き止めるための堰止め手段が、該ハーフプレキャスト板上に突出するように、プレキャストコンクリート内に埋設されて形成されたハーフプレキャストスラブ。
【請求項2】 前記堰止め手段は、コンクリート部と、該コンクリート部内に埋設されて、端部が突出した補強筋とからなり、前記コンクリート部の一部と、前記補強筋の突出端とが、前記プレキャストコンクリート内に埋設されて形成された請求項1記載のハーフプレキャストスラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【登録番号】第3041754号
【登録日】平成9年(1997)7月9日
【発行日】平成9年(1997)10月3日
【考案の名称】ハーフプレキャストスラブ
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−2045
【出願日】平成9年(1997)3月25日
【出願人】(000140982)株式会社間組 (11)