説明

バイオオイルの処理方法

【課題】バイオオイルの酸性を中和し、燃料として実用可能とする。
【解決手段】酸性のバイオオイルの原液を処理槽1内に流入させ投入シュート3からマグネシウム粉末を液中に投入し、マグネシウム粉末が完全に溶解するまで攪拌機7で攪拌を加えて排出管4から処理済みのオイルを取り出す。発生する水素ガスは吸引ダクト5で回収し、発生する反応熱は熱交換器6により回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーム油の搾りかす等から採取されるバイオオイルの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マレーシア、インドネシアなどに産する「パームやし」の果実からは、石鹸やグリセリン、ナパーム焼夷弾等の原料であるパーム油が得られる。パーム油はまた鋼板の製造工程における圧延油としても利用される。一方、従来捨てられていた、パーム油を絞った後のやし殻には、まだ油分が豊富に含まれている。これに着目し、ややカロリーは落ちるが新たな燃料油を得ることが試みられている。例えば、パーム油を絞った後のやし殻を粉砕し、高温に熱した砂などの粒子に接触させて油分を気化し、このガスを水冷コンデンサで凝縮して油分を得るのである。原料としてはやし殻のほか、サトウキビ、トウモロコシなどの穀類でもよい。以下本明細書では、こうして得られた低純度の油を「バイオオイル」と称する。植物などの生物をエネルギー資源とみなして「バイオマス」と呼ぶことがあるが、バイオオイルはバイオマス・オイルの意味である。
【0003】
やし殻を原料とするバイオオイルの性状をA重油、C重油、軽油と比較したものを表1に示す。
【0004】
【表1】

【0005】
発熱量はA重油、C重油がおよそ45,000kJ/kgであるのに対し、バイオオイルは、約30%相当の16,190kJ/kgである。ちなみに、表1には記載していないが、本来のパーム油の発熱量は39,000kJ/kgある。
表1からも明らかなように、重油や軽油には水分はほとんど含まれていないが、バイオオイルでは約30%もの水分が存在する。また、一般の重油は中性であるが、バイオオイルは弱い酸性で、pHは3.5である。これはバイオオイル中に約15%存在する酢酸によるものと推定される。発熱量が重油に比較してかなり低いのも、水分や酢酸に原因があるものと思われる。
【0006】
このように酸性であると、工業的に燃料として使用しようとしても配管や貯槽(タンク)などの腐食が激しいため実用にならない。といって消石灰や苛性ソーダを用いる一般的な中和処理では、カロリーがさらに低下して、燃料として使用することができなくなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、カロリーを低下させずに酸性のバイオオイルのpH値を中性近傍とすることにより燃料油として実用可能とするとともに、処理の際に発生する反応ガスと反応熱を有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バイオオイルの原液、またはその精製過程にマグネシウム、マグネシウム化合物またはマグネシウム合金を加えて十分に攪拌してpH値を所望の値に調整することを特徴とするバイオオイルの処理方法であり、より望ましくは、マグネシウム、マグネシウム化合物またはマグネシウム合金の他にさらに所定量のアルコールを加えて十分に攪拌するバイオオイルの処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸性のバイオオイルのpH値が中性近傍となり、かつ発熱量も増大して、実用的な燃料油が得られて資源が有効活用されるとともに、処理の際に発生する反応ガスや反応熱も利用できるという、すぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のバイオオイルの原液の処理方法を、図面により説明する。
図1は実施する処理を説明する処理槽の概念図で、1は処理槽、2は原液が流入する流入管、3はマグネシウム、マグネシウム化合物またはマグネシウム合金の処理剤の投入シュート、4は処理済みオイルの排出管(取り出し口)、5は発生ガスの吸引ダクト、6は熱交換器、7は攪拌機、8a、8bは安全弁である。
【0011】
流入管2から処理槽1内に流入するバイオオイルの原液中に、投入シュートから処理剤を投入し、攪拌機7で十分に攪拌する。処理剤はマグネシウム、あるいは水酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物またはアルミニウム系、亜鉛系などの実用マグネシウム合金で、これらは重量当たりの表面積を増大させ反応を促進するため粉末状とするのが好ましい。マグネシウムの投入量は、原油100mlに対して数g程度で十分である。マグネシウムは酢酸と激しく反応し、発熱すると共に水素ガスを発生する。すなわち、
酢酸 + マグネシウム → 水素 + 熱
という反応が進行する。
【0012】
主反応を化学方程式で表せば、
2CH3COOH+Mg → H2+(CH3COO)2 Mg +x・・・・(1)
となる。xは反応熱(kcal/mol)である。発生する水素ガスは補集して有効に利用できる。また反応槽1の液面内に熱交換器6を設けておけば、循環する熱媒を介して反応熱を取りだし、利用することができる。
【0013】
処理は処理剤が完全に溶解するまで十分に行うことを目処とすればよいが、pH値を監視しながら判定するのが最も望ましい。中性とするのが一応の目標であるが、残渣の反応を促進するため若干アルカリ性とする場合もある。
反応によって発生する水素ガスは吸引ダクト5から吸引するが、故障等で吸引が停止した場合、装置内の水素圧力が高まって爆発を起こすおそれがあるので、適当な箇所に安全弁8a、8bを配置しておくことが望ましい。
【0014】
排出管4からは、処理されたバイオオイルが取り出される。酸性だったバイオオイルは中和され、同時に水分も減少するので、配管や貯槽等の設備の損傷がなく、かつ発熱量の大きい燃料油が得られる。
また、原料のやし殻からバイオオイル原液を精製する過程で、粉砕したやし殻を高温の砂などの粒子に接触させる攪拌槽にマグネシウム、マグネシウム化合物またはマグネシウム合金を加えることによって、pH値を所望の値に調整することもできる。
【0015】
なお、マグネシウム、マグネシウム化合物またはマグネシウム合金の他に、さらに所定量のアルコールを加えることが好ましい。
アルコールを加えることの意義は2点ある。第1に、マグネシウムの投入によって生成される酸化物が塊状となって沈殿する場合があるが、アルコールを加えるとこれが分解されてさらさらになり、流動性が向上する。この目的のためには、アルコールの種類は何でもよく、原液に対して3%程度から効果が認められる。
【0016】
第2に、アルコールを加えた分だけ、燃料としての発熱量が増大する。この場合、発熱量はアルコールを加えれば加えるだけ増大するので、添加量は使用目的に応じて決定すればよい。表1に示したディーゼルエンジン用の軽油程度の発熱量は容易に実現できる。また、炭素数の大きいいわゆる高級アルコールが必ずしも効果的ではないので、経済性等を考慮すれば安価で入手も容易なメタノールまたはエタノールが最適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明実施例の反応槽の概念図である。
【符号の説明】
【0018】
1 処理槽
2 流入管
3 投入シュート
4 排出管
5 吸引ダクト
6 熱交換器
7 攪拌機
8a、8b 安全弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオオイルの原液、またはその精製過程にマグネシウム、マグネシウム化合物またはマグネシウム合金を加えて十分に攪拌してpH値を所望の値に調整することを特徴とするバイオオイルの処理方法。
【請求項2】
マグネシウム、マグネシウム化合物またはマグネシウム合金が粉末である請求項1に記載のバイオオイルの処理方法。
【請求項3】
マグネシウム、マグネシウム化合物またはマグネシウム合金の他にさらに所定量のアルコールを加えて十分に攪拌する請求項1または2に記載のバイオオイルの処理方法。
【請求項4】
加えるアルコールがメタノールまたはエタノールである請求項3に記載のバイオオイルの処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−274223(P2008−274223A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328495(P2007−328495)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(390027292)根本企画工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】