説明

バイオセンサ、その製造方法、その使用方法

【課題】試料中に含まれる基質濃度によって検量範囲を所望の範囲に設計することができ、かつ、所望の範囲で精度よく基質濃度を測定する。
【解決手段】バイオセンサ1は、絶縁性基板10と、作用極102と、作用極102とは異なる作用極202と、を含む電極系50と、絶縁性基板10に設けられ、試料が導入される濃度測定領域と、を有する。濃度測定領域は、相対的に低い基質濃度を測定する反応セル21と、相対的に高い基質濃度を測定する反応セル11と、からなる。反応セル21には、反応層203が作用極202に接するように設けられている。反応セル11には、反応層103とは異なる反応層103が作用極102に接するように設けられている。反応層203は、第一電子受容体と酸化還元酵素とを含んでいる。反応層103は、第一電子受容体とは異なる第二電子受容体と、反応層203に含まれる酸化還元酵素と同一の酸化還元酵素と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の基質と酸化還元酵素との反応を電気化学的に検知して基質濃度を測定するバイオセンサ、その製造方法、その使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバイオセンサとしては、例えば特許文献1〜4に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1では、グルコースを含有する試料をグルコースオキシダーゼ(GOD)及びヘキサシアノ鉄(III)カリウムと接触させる電流滴定バイオセンサーシステムを開示している。
【0004】
特許文献2には、電極上にフェロセン化合物を含有する光硬化性樹脂膜と順次作用する作用極を備えたグルコースセンサが開示されている。
【0005】
特許文献3には、電極上にフェロセン化合物を蒸着させた層と、蒸着層上にGODを固定化した層とを有する作用極を備えたグルコースセンサが開示されている。
【0006】
特許文献4には、作用極上にGODとフェロセン化合物とを担持した識別層と作用極付近の温度を所定温度に維持する温度維持手段とを備えたグルコースセンサが開示されている。
【0007】
特許文献1乃至4に記載のグルコースセンサによってグルコースを測定するメカニズムは以下のとおりである。
【0008】
すなわち、グルコース1分子がGODによって酸化されるのに、2電子の作用極への移動がおこなわれる。そこで、これを電流値として検出する。この際、ヘキサシアノ鉄(III)カリウムやフェロセン化合物が電子受容体として機能する。
【特許文献1】国際公開第86/07632号パンフレット
【特許文献2】特開平02−240555号公報
【特許文献3】特開平02−99851号公報
【特許文献4】特開平05−256812号公報
【特許文献5】特開平09−210948号公報
【特許文献6】特開平09−159645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、広範囲の基質濃度を精度よく測定することが難しかった。
【0010】
たとえば、酸化還元酵素としてGODを用いるグルコースセンサの場合、特許文献5に開示されているように、グルコースがGODの作用により酵素の存在下で酸化されてグルコノラクトンを生成させ、そのとき発生する過酸化水素を作用極上で酸化し、その際の酸化電流値を測定する。こうすることにより、グルコース濃度を間接的に求めることができる。しかしながら、測定液が水で希釈されない原液サンプルの場合には、酸化反応が溶存酸素濃度に律速される。そのため、グルコース濃度が約100mg/dl程度迄しか直線検量範囲を示さないという問題があった。
【0011】
そこで、特許文献5では、溶液中濃度が有限である酸素の代わりに、フェロシアン化カリウムやパラベンゾキノン等の電子受容体をGOD等と共に用いることで、検量範囲を1000mg/dLまで拡大させている。しかしながら、電子受容体の測定電位が+0.6Vと高いため、干渉物質の影響を受けやすいという問題がある。
【0012】
また、特許文献6では、GODを光架橋樹脂膜に包括固定化させるという構成をとることによって、検量範囲を2000mg/dLまで拡大させている。しかしながら、特許文献6では、電子受容体を用いていないため、上記説明したように、溶存酸素量に依存してしまうという問題がある。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、試料中に含まれる基質濃度の検量範囲を広範囲に設計することができ、かつ、精度よく基質濃度を測定することを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、試料中の基質と酸化還元酵素との反応を電気化学的に検知して基質濃度を測定するバイオセンサであって、
基板と、
第一作用極と、前記第一作用極とは異なる第二作用極と、を含む電極系と、
前記基板に設けられ、前記試料が導入される濃度測定領域と、
を有し、
前記濃度測定領域は、
相対的に低い基質濃度を測定する第一測定領域と、
相対的に高い基質濃度を測定する第二測定領域と、
を含み、
前記第一測定領域には、第一反応層が前記第一作用極に接するように設けられており、
前記第二測定領域には、第二反応層が前記第二作用極と接するように設けられており、
前記第一反応層は、第一電子受容体と酸化還元酵素とを含み、
前記第二反応層は、前記第一電子受容体とは異なる第二電子受容体と、前記第一反応層に含まれる前記酸化還元酵素と同一の酸化還元酵素と、を含むことを特徴とするバイオセンサ
が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、試料中の基質と酸化還元酵素との反応を電気化学的に検知して基質濃度を測定するバイオセンサの製造方法であって、
基板を用意する工程と、
第一作用極と、前記第一作用極とは異なる第二作用極と、を含む電極系を形成する工程と、
前記基板に、前記試料が導入される濃度測定領域を設ける工程と、
を有し、
前記濃度測定領域を設ける工程は、
相対的に低い基質濃度を測定する第一測定領域を形成する工程と、
相対的に高い基質濃度を測定する第二測定領域を形成する工程と、
を含み、
前記第一測定領域には、第一反応層を前記第一作用極に接するように形成し、
前記第二測定領域には、第二反応層を前記第二作用極と接するように形成し、
前記第一反応層に、第一電子受容体と酸化還元酵素とを含ませ、
前記第二反応層は、前記第一電子受容体とは異なる第二電子受容体と、前記第一反応層に含まれる前記酸化還元酵素と同一の酸化還元酵素と、を含ませることを特徴とするバイオセンサの製造方法
が提供される。
【0016】
さらに本発明によれば、上記のバイオセンサの使用方法であって、
前記第一反応層および前記第二反応層にそれぞれ試料を添加するステップと、
添加された前記試料中の基質と酸化還元酵素とを反応させるステップと、
前記第二反応層で反応した前記酸化還元酵素と前記第二反応層の電子受容体とを反応させるステップと、
前記第一反応層が設けられた第一測定領域で発生する電流と前記第二反応層が設けられた第二測定領域で発生する電流とをそれぞれ測定するステップと、
を含むバイオセンサの使用方法
が提供される。
【0017】
この発明によれば、第一反応層と第二反応層とが互いに同一の酸化還元酵素を含み、互いに異なる電子受容体を含んでいる。これにより、試料中の同一の基質と反応した酸化還元酵素が特性の異なる電子受容体と反応することができる。したがって、酸化還元酵素に対する電子受容体の反応速度の違いによって、第一測定領域では相対的に低濃度範囲の基質濃度を定量し、第二測定領域では相対的に高濃度範囲の基質濃度を定量することができる。よって、所望の検量範囲を有する電子受容体を適宜選択することで、バイオセンサの検量範囲を使用目的に併せて任意に設計することができ、検量範囲を拡大して精度よく基質濃度を測定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、試料中に含まれる基質濃度の範囲によって所望の検量範囲を設計することができ、検量範囲を拡大して精度よく基質濃度を測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態のバイオセンサ1を示す図である。図1(a)はバイオセンサ1の平面図である。図1(b)は図1(a)のA−A'断面図である。図1(c)は図1(a)のB−B'断面図である。バイオセンサ1は、試料中の基質と酸化還元酵素との反応を電気化学的に検知して基質濃度を測定する。
【0021】
図1で示すように、バイオセンサ1は、絶縁性基板10と、作用極102(第二作用極)と、作用極102とは異なる作用極202(第一作用極)と、を含む電極系50と、絶縁性基板10に設けられ、試料が導入される濃度測定領域と、を有する。濃度測定領域は、相対的に低い基質濃度を測定する反応セル(第一測定領域)21と、相対的に高い基質濃度を測定する反応セル(第二測定領域)11と、からなる。反応セル21には、反応層(第一反応層)203が作用極202に接するように設けられている。反応セル11には、反応層103(第二反応層)が作用極102に接するように設けられている。反応層203は、第一電子受容体と酸化還元酵素とを含んでいる。反応層103は、第一電子受容体とは異なる第二電子受容体と、反応層203に含まれる酸化還元酵素と同一の酸化還元酵素と、を含んでいる。
【0022】
絶縁性基板10には、セラミック、プラスチック、シリコン、アルミナガラス板または高分子材料を使用することができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルクロライド及びポリカーボネードなどの合成樹脂板を用いることができる。
【0023】
絶縁性基板10には対極301および参照極302が設けられている。このような三極式を採用することにより、安定した応答電流が得られ、測定精度を安定化させることができる。作用極102、202、対極301および参照極302は、導電性材料を用いて形成させることができる。導電性材料とは、炭素、またはパラジウム、銀、白金、金、銅、ニッケル、これらの合金等の金属材料である。作用極102、202、対極301および参照極302は、1種の導電性材料により形成させてもよいし、2種以上の導電性材料により形成させてもよい。これにより、安定した応答電流が得られ、精度がさらに安定化する。作用極102、202、対極301および参照極302は、スクリーン印刷、スパッタ法、または蒸着法により絶縁性基板10に塗布することにより形成させることができる。
【0024】
反応セル21において、反応層203は、対極301および参照極302のそれぞれに接している。一方、反応セル11において、反応層103は対極301および参照極302のそれぞれに接している。
【0025】
バイオセンサ1は、電極系50を覆う絶縁膜30と、反応層203が露出している第一開口部と、反応層103が露出している第二開口部と、をさらに有している。第一開口部は反応セル21に設けられ、第二開口部は反応セル11に設けられている。図1(b)で示すように、反応層103は絶縁膜30で覆われていない。また、図1(c)で示すように、反応層203は絶縁膜30に覆われていない。図1(a)で示すように、絶縁膜30を介して第一開口部と第二開口部とが分離されている。
【0026】
反応層103、203は、少なくとも1種の酸化還元酵素を含有する。
【0027】
酸化還元酵素は、測定対象となる様々な基質と反応して酸化または還元される。酸化された酵素が再び還元され、または、還元された酵素が再び酸化されるとき、生じる電流の変化を検出することで基質濃度を測定することができる。
【0028】
たとえば、酸化還元酵素には、グルコースオキシダーゼ(GOD)、グルコースデヒドロゲナーゼを用いることができる。また、乳酸オキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、コレステロールオキシダーゼ(ChOD)、およびこれらの組合せを用いることができる。
【0029】
バイオセンサ1をグルコースセンサとする場合、酸化還元酵素として、GODまたはグルコースデヒドロゲナーゼを用いることができる。
【0030】
(反応式1)
グルコース + GOD(酸化体) → グルコン酸 + GOD(還元体)
【0031】
反応式1で示すように、測定試料中のグルコースは、GODの触媒反応によりGODを還元させることで、グルコースがグルコン酸に酸化される。そして反応セル21では、作用極202に電圧が印加されることで、GOD(還元体)からGOD(酸化体)に酸化させる。
【0032】
反応層103、203中の酸化還元酵素の含有量は、特に限定されず、必要に応じて適切な量を選択することができる。たとえば、GODを用いる場合、その含有量は、0.1〜40ユニット/μLが好ましい。ここで、「1ユニット」とは、1μmolの基質を1分間で酸化させるために必要な、酸化還元酵素の量をいう。
【0033】
ところで、反応式1による電流の変化を検出することで試料中のグルコース量を測定することができる。また、試料中に溶存する酸素によって生成された過酸化水素を電極上で酸化し、その際の酸化電流値を測定することによりグルコース濃度を求めることもできる。しかしながら、酸化還元酵素の酸化還元反応による電流の変化を直接検出する方法では、溶存酸素に依存したり、干渉物質の影響を受けたりしてしまう。干渉物質はフィルター構造を設けることで除去できるが、バイオセンサの構造が複雑になる。そこで、電子受容体を添加することで、シンプルな構造で基質量を精度よく測定することができる。
【0034】
反応層103は、少なくとも1種以上の電子受容体を含んでいる。反応層103に含ませる電子受容体は、酸化還元電位の低いものを選択する。具体的には、電子受容体として酸化還元電位が−0.3〜+0.3Vであるものを選択する。こうすることにで、反応層103における酵素と電子受容体との反応が試料中の干渉物質による影響を受けにくくなる。したがって、精度よく試料中の基質濃度を測定することができる。
【0035】
より具体的には、反応層103に含ませる電子受容体は、テトラチアフルバレン(TTF)化合物、フェロセニルトリメチルアンモニウム、テトラシアノキノジメタンからなる群から選択することができる。TTF化合物として、テトラチアフルバレン、4−エトキシカルボニル−4,5,5'−トリメチルテトラチアフルバレン、8−メルカプトオクチルテトラチアフルバレンカルボキシレートなどを例示することができる。TTF化合物は、酸化還元電位が0〜+0.3Vであり、特に好ましい。
【0036】
反応層103中の電子受容体は作用極102に電位が印加されることで、酸化型へと変化する。そして、酸化型の電子受容体がGODと反応し、還元される。酸化還元酵素としてGOD、電子受容体としてTTFを用いたときの反応層103における反応メカニズムを反応式2に示す。
【0037】
(反応式2)
グルコース + GOD(酸化体) → グルコン酸 + GOD(還元体)
GOD(還元体) + 酸化型TTF → GOD(酸化体)+TTF
【0038】
酵素反応により酸化型TTFから生成されたTTFに電位を印加し、再酸化して酸化型TTFを生成する。この際の応答電流を検出することで、グルコース濃度を測定することができる。
【0039】
一方、反応層203は、反応層103の電子受容体とは異なる電子受容体を少なくとも1種以上含んでいる。反応層203の電子受容体として、酵素との反応効率が、反応層103の電子受容体よりも相対的に低いものを選択する。また、反応層203の電子受容体として、酸化還元電位が−0.3〜+0.3Vであるものを選択する。こうすることにで、反応層203における酵素と電子受容体との反応が試料中の干渉物質によって影響されにくくなる。したがって、精度よく試料中の基質濃度を測定することができる。
【0040】
具体的には、反応層203に含ませる電子受容体には、フェロセン誘導体、ヒドロキシエトキシテトラシアノキノジメタン、および、1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルスルフェート(1−メトキシ−PMS)からなる群から選択することができる。フェロセン誘導体として、1,1'−ジメチルフェロセン(以下単にジメチルフェロセンという)、フェロセンの他にフェロセンカルボン酸、1,1'−フェロセンジカルボン酸、フェロセンメタノール、1,1'−フェロセンジメタノール、フェロセンエタノール、メチルフェロセン、フェロセン酢酸を例示することができる。
【0041】
反応層203の電子受容体もまた作用極202によって印加された電位により、酸化型へと変化する。酸化還元酵素としてGOD、電子受容体としてジメチルフェロセンを用いたときの反応層203における反応メカニズムを反応式3に示す。
【0042】
(反応式3)
グルコース + GOD(酸化体) → グルコン酸 + GOD(還元体)
GOD(還元体) + 酸化型ジメチルフェロセン → GOD(酸化体)+ジメチルフェロセン
【0043】
酵素反応により酸化型ジメチルフェロセンから生成されたジメチルフェロセンに電位を印加し、再酸化して酸化型ジメチルフェロセンを生成する。この際の応答電流を検出することで、グルコース濃度を測定することができる。
【0044】
測定試料として、血液、尿、唾液、汗、涙等の体液等や、果汁等の食品を例示することができる。尿は、0〜5g/dlの広範囲のグルコースを含有し、かつ、干渉物質を多く含む。しかしながら、バイオセンサ1を用いることで尿糖を精度よく測定することができる。
【0045】
たとえば、電子受容体として、TTF化合物やフェロセニルトリメチルアンモニウムを用いることで、0.2〜5g/dLの検量範囲でグルコース量を測定することができる。また、ジメチルフェロセンや1−メトキシ−PMSを用いることで0〜0.2g/dLの検量範囲でグルコース濃度を測定することができる。したがって、反応層103中の電子受容体をTTF化合物とし、反応層203中の電子受容体をジメチルフェロセンとすることで、生体試料中に含まれる0〜5g/dlの範囲のグルコース濃度を高い精度で測定することができる。
【0046】
反応層103、203は、シクロデキストリンを含んでいてもよい。これにより親水性が向上するため、作用極102、202に塗布しやすくなる。
【0047】
シクロデキストリンとしては、特に制限されないが、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンやγ−シクロデキストリン等を使用することができる。また、化学修飾されたシクロデキストリンであってもよく、例えば、ヒドロキシシクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(hp−β−CD)、ジメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン等の化学修飾体があげられ、中でも、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが好ましい。これらは一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0048】
電子受容体は1モルあたり、例えば、0〜40重量%のシクロデキストリンによって包接されていることが好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%であり、特に好ましくは1〜10重量%である。多すぎると粘性が高くなるという点で問題があり、少なすぎると可溶化が難しくなるという点で問題がある。
【0049】
電子受容体は、シクロデキストリンを用いた公知の包接方法により包接することができる。例えば、シクロデキストリンを水性溶媒に溶解したシクロデキストリン溶液と、電子受容体を懸濁した懸濁液と、を準備し、両者を混合させることで当該電子受容体を包接させることができる。
【0050】
シクロデキストリン溶液に対する電子受容体の割合は、電子受容体を溶解することができれば特に制限されないが、たとえば、0〜40重量%のシクロデキストリンの溶液に当該電子受容体を5mMとなるように溶解させることができる。シクロデキストリンの溶液は、1〜10mMであるとより好ましい。
【0051】
水性溶媒としては、たとえば、水、緩衝液等が使用できる。緩衝液としては、TES(N−Tris(hydroxymethyl)methyl−2−aminoethanesulfonic acid)緩衝液、HEPES(2−[4−(2−Hydroxyethyl)−1−piperazinyl]ethanesulfonic acid)緩衝液などを用いることができる。緩衝液は、塩化ナトリウムを含んでいてもよい。
【0052】
溶媒のpHは4〜8とすると好ましい。pHが大きすぎたり小さすぎたりすると酵素が失活してしまうため好ましくない。
【0053】
また、反応層103、203は、安定化剤を含んでいてもよい。安定化剤として、トレハロース、スクロース、ラフィノース、アルギニン、および、グルコサミンからなる群から選択することができる。
【0054】
また、反応層103、203は、界面活性剤を含むことができる。
【0055】
電子受容体は、水に対する溶解度が低い。そのため、測定試料中に含まれる水によって電子受容体が反応層上に析出することがある。そこで、反応層に界面活性剤を含ませることにより、水に対する溶解性を向上させることができる。
【0056】
界面活性剤としては、たとえば、レシチン、オクチルチオグルコシド、コール酸ナトリウム、ドデシル−β−マルトシド、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、トライトン−X100(登録商標)、Lubrol PX(登録商標)、DK−エステル(登録商標)、BIGCHAP(登録商標)、DeoxCHAP(登録商標)、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate、SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルスルホン酸、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリアクリル酸およびTween20(登録商標、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)を用いることができる。トライトン−X(登録商標)、SDS、およびTween20を用いると特に好ましい。
【0057】
つづいて、バイオセンサ1の製造方法の一例について説明する。
【0058】
まず、基板を準備し、試料がそれぞれ投入される反応セル21および反応セル11を設ける。反応セル21には、作用極202を形成し、反応セル11には、作用極102を形成する。また、作用極102、202に並列するように、対極301および参照極302を設ける。作用極102、202、対極301、および参照極302は、スクリーン印刷、スパッタ法、または蒸着法等、公知の方法により形成させることができる。ついで、基板上に絶縁性ペーストをスクリーン印刷して絶縁膜30を形成し、絶縁性基板10を得る。絶縁膜30は作用極102、202の外周を覆うように形成させる。ただし、反応セル11、21の各領域には絶縁膜30は形成しない。これにより、反応セル11には第二開口部が設けられ、反応セル21には第一開口部が設けられる。
【0059】
その後、反応セル21に反応層203を形成し、反応セル11に反応層103を形成する。
【0060】
具体的には、反応層103および反応層203は以下のように形成する。反応セル11の作用極102、対極301および参照極302のそれぞれに酸化還元酵素およびTTFなどの電子受容体を含む溶液を塗布する。また、反応セル21の作用極202、対極301および参照極302のそれぞれに酸化還元酵素およびジメチルフェロセンなどの電子受容体を含む溶液を塗布する。このとき、反応セル11および反応セル21において、それぞれ塗布した溶液がコンタミネーションしないように留意する。コンタミネーションすると、バイオセンサ1の測定精度が低下するため好ましくない。ピペッターやディスペンサーを用いることで反応セル11および反応セル21のそれぞれの電極系50に選択的に溶液を塗布することができる。こうすることで、反応層103、203を形成する。
【0061】
なお、電子受容体、シクロデキストリン、界面活性剤及び酸化還元酵素を水性溶媒に混合調整し、反応セル11、21の電極系50のそれぞれの表面に塗布することで反応層103、203を形成させてもよい。
【0062】
以上のように、反応層103、203を形成した後、乾燥させてバイオセンサ1を完成させる。乾燥は、酸化還元酵素が失活しない温度であり、かつ、至適温度以下で行うと好ましい。
【0063】
つづいて、バイオセンサ1を用いて試料中に含まれる基質濃度を測定する方法について説明する。
【0064】
まず、反応層103および反応層203に試料をそれぞれ添加し、所定時間放置する。こうすることで、添加された試料中の基質と酸化還元酵素とが反応し、ついで、酸化還元酵素と反応層103、203中のそれぞれの電子受容体とが反応する。その後、電極系50に電圧を印加し、反応セル11および反応セル21から発生する応答電流をそれぞれ公知の方法で測定する。そして、あらかじめ既知の濃度の基質を用いて作成した基質濃度と応答電流値との検量線を用いて、得られた応答電流値から基質濃度を求める。
【0065】
なお、測定試料の添加により、反応層103、203は溶解する。しかしながら、反応層103と反応層203とが混合すると測定精度が低下するため好ましくない。これを避けるため、バイオセンサ1では、図1(a)で示すように、反応セル11と反応セル21とを並列させない構成となっている。
【0066】
また、反応層103と反応層203との混合をより確実に防止するため、取り外し可能な蓋部材を絶縁性基板10に取り付けてもよい。
【0067】
図2には、蓋部材60とバイオセンサ1とを模式的に示している。図2(a)は、バイオセンサ1の斜視図である。図2(b)は、蓋部材を取り付けたバイオセンサ1の平面図である。図2(c)は、蓋部材を取り付けたバイオセンサ1のC−C'断面図である。図2(d)は、蓋部材を取り付けたバイオセンサ1の側面図である。
【0068】
図示するように、蓋部材60は、反応セル11、21にわたって取り付けられる。蓋部材60は、試料を導入する試料導入口61と、導入された試料を反応セル11および反応セル21に導く流路63と、流路63に設けられる少なくとも二つの空気孔64と、を形成する。空気孔64は、反応セル21側と反応セル11側にそれぞれ形成されるが、図2(d)では、反応セル11側の空気孔64を示している。
【0069】
絶縁膜30が流路63の一部を構成することで試料導入口61から導入された試料は二分割される。空気孔64が反応セル21側と反応セル11側にそれぞれ形成されているため、毛細管現象によって反応セル21および反応セル11に分割された試料がそれぞれ導かれる。
【0070】
なお、蓋部材60は試料と接する面に親水性のコーティング膜を覆うことができる。コーティング膜は、コーティング剤の塗布、表面重合やプラズマ重合、プラズマ処理等で形成させることができる。蓋部材60の表面をコーティング膜で覆うことで、各測定領域における気泡の付着を防止することができ、測定精度の低下を防止することが可能となる。
【0071】
つづいて、バイオセンサ1の作用及び効果について図1を用いつつ説明する。
【0072】
バイオセンサ1によれば、反応層203と反応層103とが互いに同一の酸化還元酵素を含み、互いに異なる電子受容体を含んでいる。これにより、試料中の同一の基質と反応した酸化還元酵素が特性の異なる電子受容体と反応することができる。したがって、酸化還元酵素に対する電子受容体の反応速度の違いによって、反応セル21では相対的に低濃度範囲の基質濃度を定量し、反応セル11では相対的に高濃度範囲の基質濃度を定量することができる。よって、所望の検量範囲を有する電子受容体を適宜選択することで、バイオセンサの検量範囲を使用目的に併せて任意に設計することができ、検量範囲を所望の範囲に拡大して精度よく基質濃度を測定することができる。
【0073】
また、第一電子受容体および第二電子受容体はそれぞれ酸化還元電位が低いものを選択することができる。これにより、干渉物質の影響を受けにくくし、精度よく広範囲の基質濃度を測定することができる。
【0074】
従来、0〜1000mg/dl程度の広範囲のグルコース濃度を測定可能なバイオセンサは開発されていた(たとえば、特許文献5、6)。しかしながら、従来のバイオセンサでは、試料中の干渉物質の存在が考慮されていなかった。干渉物質はバイオセンサの測定精度に影響を与えるため、検量範囲を著しく低下させる要因ともなっていた。
【0075】
たとえば、生体試料には、尿酸、ビリルビン、アスコルビン酸、アセトアミノフェンなどの干渉物質が含まれる。特に尿はこれら干渉物質を多く含んでいる。そこで、干渉物質を取り除くためのフィルターを反応層に設ける構成を採用することも考えられる。
【0076】
しかしながら、反応層にフィルターを設ける構成は、バイオセンサの構造を複雑にする。そのため、ディスポーザブル式のバイオセンサにかかる構成を採用することはコストの面や携帯性の観点から好ましくない。
【0077】
そこで、バイオセンサ1では、酸化還元電位が−0.3〜+0.3Vの電子受容体を用いる構成を採用することができる。これにより、干渉物質の影響を受けにくくし、基質濃度を精度よく測定することができる。したがって、フィルターを不要とし、バイオセンサの構造をシンプルにすることができる。よって、バイオセンサ1をディスポーザブル式のバイオセンサとして好適に用いることができる。
【0078】
また、高濃度の基質量を精度よく測定できる電子受容体を反応層103に担持し、低濃度の基質量を精度よく測定できる電子受容体を反応層203に担持することで、所望の検量範囲のバイオセンサ1を設計することができる。たとえば、酸化還元酵素としてグルコースオキシダーゼを採用し、反応層103にTTF化合物、反応層203にフェロセン化合物を採用することで、生体試料に含まれる0〜5g/dLのグルコース濃度を定量することができる。このバイオセンサは、干渉物質の影響も受けにくく、かつ、広範囲のグルコース濃度を測定でき、構造をシンプルにすることができる。そのため、ディスポーザブル式の尿糖バイオセンサとして好適に用いることができる。
【0079】
ところで、バイオセンサ1では、反応セル11と反応セル21とで異なる反応層が設けられている。そのため、両領域の反応層のコンタミネーションにより測定精度が低下してしまうという問題も考えられる。
【0080】
そこで、バイオセンサ1では、反応セル11と反応セル21とを並列させない構成を採用する。また、反応セル11と反応セル21とを絶縁膜30で分離する。これにより、反応層203および反応層103の混合を防止することができる。
【0081】
さらに、バイオセンサ1では、図2で示す蓋部材を基板に設ける構成を採用することができる。これにより、反応セル11および反応セル21にそれぞれ均等に試料を導くことができ、かつ、反応層203および反応層103の混合を確実に防止することができる。
【0082】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0083】
たとえば、図3には、本実施の形態の第一の変形例であるバイオセンサ2を示している。図3(a)はバイオセンサ2の平面図である。図3(b)は図3(a)のA−A'断面図である。図3(c)は図3(a)のB−B'断面図である。
【0084】
バイオサンサ2は、電極系50が、対極204(第一対極)と、対極204とは異なる対極104(第二対極)と、参照極302と、を有している。バイオセンサ2では、対極301のかわりに、対極が2つ(対極104、204)設けられている。また、反応セル21において、反応層203が対極204および参照極302のそれぞれに接している。そして、反応セル11において、反応層103が対極104および参照極302のそれぞれに接している。
【0085】
このように、2つの電極系を採用し、参照極を共通にすることで、電流の出力を安定にすることができる。したがって、精度良く基質濃度を測定することができる。
【0086】
また、図4には、本実施の形態の第二の変形例であるバイオセンサ3を示している。図4(a)はバイオセンサ3の平面図である。図4(b)は図4(a)のA−A'断面図である。
【0087】
バイオセンサ3では、反応セル21と反応セル11とが並列している構成を採用している。バイオセンサ1とは異なり、対極301および参照極302はいずれも反応層203に接しておらず、かつ、反応層103にも接していない。この構成では、反応層203中に担持される第二電子受容体を作用極202に固定化し、反応層103中に担持される第一電子受容体を作用極102に固定化する。これにより、反応層103と反応層203とのコンタミネーションを防止できる。
【0088】
具体的には、電子受容体を作用極102、202にそれぞれ固定化させることができる。固定化は、電子受容体を高分子化合物に混ぜ込んで作用極102、202に塗布することにより行うことができる。高分子化合物として、たとえばナフィオン(登録商標)、スルホイソフタル酸コポリエステル、ポリエチレンオキサイド(PEO)、シリコンオイルなどを例示することができる。スルホイソフタル酸コポリエステルは、たとえば、Eastman Chemical社から"Eastman AQ−55D"の名で市販されているものを用いることができる。また、電子受容体として機能する官能基を組み込んだポリマーを調製し、これをそれぞれの作用極に固定化させてもよい。
【0089】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【実施例】
【0090】
(バイオセンサの作製方法)
本実施例では、図1で示すバイオセンサ1の構成を有するグルコースセンサを用いた。以下、本実施例のグルコースセンサの作製方法について説明する。まず、ポリエチレンテレフタレート基板上に銀/塩化銀をスクリーン印刷し、参照極302を形成させた。その後、伝導性炭素ペーストを利用してスクリーン印刷して作用極102,202および対極301を形成後、絶縁高分子ペーストを使用して絶縁膜30を形成した。ついで、4mM TTF水溶液、5%hp−β−CD、1%triton X−100、10U/μLGODを150mM塩化ナトリウムを含む0.1M TES緩衝液(pH7.5)に混合調製し、得られた溶液(5μL)を反応セル11の作用極102、参照極302および対極301に塗布して反応層103を形成した。また、4mMジメチルフェロセン、5%hp−β−CD、1%tritonX−100、10 U/μL GODを150mMNaClを含む0.1M TES緩衝液(pH7.5)で混合調整し、反応セル21の作用極202、参照極302および対極301に塗布して反応層203を形成した。その後、24時間以上冷蔵庫にて乾燥させた。
【0091】
(電気化学測定)
標準サンプルとして、150mM NaClを含む0.1M TES緩衝液(pH 7.5)で調製したグルコース溶液を用意した。また、ボランティアによって採取されたヒト尿、およびこのヒト尿にグルコースを添加したものを尿サンプルとして用意した。サンプル5μLを反応層103、203にそれぞれ添加し、サンプル添加後10秒後に、対極301に対して作用極102、202にアノード方向に電圧(+0.3V/vs)を印加し、応答電流の測定を開始した。開始後1分の電流値を測定値とした。測定に用いたグルコースセンサは測定ごとに交換した。
【0092】
図5に結果を示す。図5(a)は標準サンプルの結果を示す図である。図5(b)は図5(a)の拡大図である。図5(c)は尿サンプルの結果を示す図である。図5(d)は図5(c)の拡大図である。図5(a)、(b)で示すように、ジメチルフェロセンを備える反応セル21では、検量範囲が0〜0.2g/dLであった。一方、TTFを備える反応セル11では、検量範囲が0.2〜2g/dLであった。図5(c)、(d)で示すように、尿サンプルでは標準サンプルと比べて検量範囲が狭くなったが、反応セル11の検量範囲は、0.2〜1g/dLであり、反応セル21の検量範囲は0.04〜0.1g/dLであるという結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施の形態に係るバイオセンサを示す図である。図1(a)は、実施の形態に係るバイオセンサの平面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A'断面図である。図1(c)は、図1(a)のB−B'断面図である。
【図2】蓋部材を取り付けたバイオセンサを模式的に示す図である。
【図3】実施の形態に係るバイオセンサの変形例を示す図である。図3(a)は、実施の形態に係るバイオセンサの平面図である。図3(b)は、図3(a)のA−A'断面図である。図3(c)は、図3(a)のB−B'断面図である。
【図4】実施の形態に係るバイオセンサの変形例を示す図である。図4(a)は、実施の形態に係るバイオセンサの平面図である。図4(b)は、図4(a)のA−A'断面図である。
【図5】実施例の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1 バイオセンサ
2 バイオセンサ
3 バイオセンサ
10 絶縁性基板
11 反応セル
21 反応セル
30 絶縁膜
50 電極系
60 蓋部材
61 試料導入口
63 流路
64 空気孔
102 作用極
103 反応層
104 対極
202 作用極
203 反応層
204 対極
301 対極
302 参照極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の基質と酸化還元酵素との反応を電気化学的に検知して基質濃度を測定するバイオセンサであって、
基板と、
第一作用極と、前記第一作用極とは異なる第二作用極と、を含む電極系と、
前記基板に設けられ、前記試料が導入される濃度測定領域と、
を有し、
前記濃度測定領域は、
相対的に低い基質濃度を測定する第一測定領域と、
相対的に高い基質濃度を測定する第二測定領域と、
を含み、
前記第一測定領域には、第一反応層が前記第一作用極に接するように設けられており、
前記第二測定領域には、第二反応層が前記第二作用極と接するように設けられており、
前記第一反応層は、第一電子受容体と酸化還元酵素とを含み、
前記第二反応層は、前記第一電子受容体とは異なる第二電子受容体と、前記第一反応層に含まれる前記酸化還元酵素と同一の酸化還元酵素と、を含むことを特徴とするバイオセンサ。
【請求項2】
前記第一または/および前記第二電子受容体の酸化還元電位が−0.3〜+0.3Vであることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項3】
前記第一電子受容体は、1,1'−ジメチルフェロセン、フェロセン酢酸、ヒドロキシエトキシテトラシアノキノジメタン、および、1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルスルフェート(1−メトキシ−PMS)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載のバイオセンサ。
【請求項4】
前記第二電子受容体は、テトラチオフルバレン、フェロセニルトリメチルアンモニウム、および、テトラシアノキノジメタンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のバイオセンサ。
【請求項5】
前記電極系は、対極と参照極とをさらに有し、
前記第一測定領域において、前記第一反応層が前記対極および前記参照極のそれぞれに接しており、
前記第二測定領域において、前記第二反応層が前記対極および前記参照極のそれぞれに接していることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のバイオセンサ。
【請求項6】
前記電極系は、
第一対極と、
前記第一対極とは異なる第二対極と、
参照極と、
をさらに有し、
前記第一測定領域において、前記第一反応層が前記第一対極および前記参照極のそれぞれに接しており、
前記第二測定領域において、前記第二反応層が前記第二対極および前記参照極のそれぞれに接していることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のバイオセンサ。
【請求項7】
前記電極系は、対極と参照極とをさらに有し、
前記対極および前記参照極はいずれも前記第一反応層に接しておらず、かつ、前記対極および前記参照極はいずれも前記第二反応層に接していないことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のバイオセンサ。
【請求項8】
前記電極系を覆う絶縁膜と、
前記第一反応層が露出している第一開口部と、
前記第二反応層が露出している第二開口部と、
をさらに有し、
前記絶縁膜を介して前記第一開口部と前記第二開口部とが分離されていることを特徴とする請求項5または6に記載のバイオセンサ。
【請求項9】
前記第一測定領域および前記第二測定領域にわたって取り付けられている取り外し可能な蓋部材を前記基板にさらに有し、
前記蓋部材は、
前記試料を導入する試料導入口と、
前記第一測定領域および前記第二測定領域のそれぞれに前記試料を導く流路と、
前記流路に設けられる少なくとも二つの空気孔と、
を形成し、
前記空気孔は、前記第一測定領域側と前記第二測定領域側にそれぞれ形成されることを特徴とする請求項8に記載のバイオセンサ。
【請求項10】
前記第一電子受容体が前記第二測定領域の前記電極に固定化されていることを特徴する請求項7に記載のバイオセンサ。
【請求項11】
前記第一および/または前記第二反応層が、シクロデキストリンを含むことを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載のバイオセンサ。
【請求項12】
前記第一および/または前記第二反応層が、トレハロース、スクロース、ラフィノース、アルギニン、および、グルコサミンからなる群から選択される安定化剤を含むことを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載のバイオセンサ。
【請求項13】
前記第一および/または第二反応層に界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1乃至12いずれかに記載のバイオセンサ。
【請求項14】
前記界面活性剤は、トライトンX−100(登録商標)、tween−20(登録商標)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルスルホン酸、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、および、ポリアクリル酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載のバイオセンサ。
【請求項15】
前記酸化還元酵素は、グルコース酸化酵素またはグルコース還元酵素であることを特徴とする請求項1乃至14いずれかに記載のバイオセンサ。
【請求項16】
前記試料が尿であることを特徴する請求項1乃至15いずれかに記載のバイオセンサ。
【請求項17】
試料中の基質と酸化還元酵素との反応を電気化学的に検知して基質濃度を測定するバイオセンサの製造方法であって、
基板を用意する工程と、
第一作用極と、前記第一作用極とは異なる第二作用極と、を含む電極系を形成する工程と、
前記基板に、前記試料が導入される濃度測定領域を設ける工程と、
を有し、
前記濃度測定領域を設ける工程は、
相対的に低い基質濃度を測定する第一測定領域を形成する工程と、
相対的に高い基質濃度を測定する第二測定領域を形成する工程と、
を含み、
前記第一測定領域には、第一反応層を前記第一作用極に接するように形成し、
前記第二測定領域には、第二反応層を前記第二作用極と接するように形成し、
前記第一反応層に、第一電子受容体と酸化還元酵素とを含ませ、
前記第二反応層は、前記第一電子受容体とは異なる第二電子受容体と、前記第一反応層に含まれる前記酸化還元酵素と同一の酸化還元酵素と、を含ませることを特徴とするバイオセンサの製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至16いずれかに記載のバイオセンサの使用方法であって、
前記第一反応層および前記第二反応層にそれぞれ試料を添加するステップと、
添加された前記試料中の基質と酸化還元酵素とを反応させるステップと、
前記第二反応層で反応した前記酸化還元酵素と前記第二反応層の電子受容体とを反応させるステップと、
前記第一反応層が設けられた第一測定領域で発生する電流と前記第二反応層が設けられた第二測定領域で発生する電流とをそれぞれ測定するステップと、
を含むバイオセンサの使用方法。
【請求項19】
0〜5g/dlの範囲の基質濃度を定量することを特徴とする請求項18に記載のバイオセンサの使用方法。
【請求項20】
前記第二測定領域において、0.2〜5g/dlの基質濃度を定量することを特徴とする請求項18または19に記載のバイオセンサの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−54379(P2010−54379A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220418(P2008−220418)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】