説明

バイオセンサを用いた基質の測定方法

【課題】 不純物による測定誤差のない測定方法を提供する。
【解決手段】 絶縁性基板上に少なくも作用極と対極とを有する電極系が形成され、前記電極系上および/または電極系の近傍に酸化還元酵素と電子受容体とを含む反応層が形成され、かつ前記電子受容体は、銀/塩化銀電極に対する式量電位が100mV以下であるバイオセンサを用いる前記酸化還元酵素の基質の測定方法であって、
前記反応層に、前記酸化還元酵素の基質を添加し、作用極に対極に対して200mV以下の電位を印加し、前記酸化還元酵素と前記基質との反応で生成する電子によって電子受容体を還元し、電子受容体の還元量を前記電極系で電気化学的に検知することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサを用いて特定成分の濃度を測定する測定方法に関し、より詳細には、特定の電子受容体を含む反応層を使用し、特定電位を印加することで試料に含まれる夾雑物による測定誤差をなくした基質の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料に含まれる特定成分の測定を行う際に、試料液の希釈や攪拌などを行うことなく簡易に定量する方式としてバイオセンサが提案されている。バイオセンサの一例として、絶縁性の基板上にスクリーン印刷等の方法で作用極、対極および参照極からなる電極系を形成し、この電極系上に、電極系に接して親水性高分子と酸化還元酵素と電子受容体を含む酵素反応層を形成したものがある(特許文献1)。このようにして作製されたバイオセンサの酵素反応層上に、基質を含む試料液を滴下すると、酵素が試料液に溶解して酵素と基質とが反応し、これに伴って電子受容体が還元される。酵素反応終了後に、還元された電子受容体を電気化学的に酸化し、このとき得られる酸化電流値から試料液中の基質濃度を定量することができる。
【0003】
上記のようなバイオセンサは、測定対象物質を基質とする酵素を選択することで、様々な物質に対する測定が原理的には可能であり、例えば、グルコースオキシダーゼを酸化還元酵素に用いれば、グルコースを定量することができる。これを応用して、個人的に血糖値をチェックするための、操作が簡単で高い測定精度の血糖用バイオセンサが開発されている。このようなバイオセンサは、一般に微量な血液を希釈したり、試料の前処理操作を行うことなく短時間で測定できるためランニングコストも安くできる。
【0004】
しかしながら、上記したバイオセンサを用いた測定では、試料の前処理などを行わないため、血液や果汁等を試料として用いた場合、アスコルビン酸や尿酸等の易酸化物質が含まれる場合には、これらも還元型電子受容体と同時に作用極上で酸化され、測定誤差の原因となる。実際に市販されている血糖センサにおいても、アスコルビン酸等による測定結果に対する影響が指摘されている(非特許文献1)。
【0005】
このような妨害物質の影響に対応するため、これら夾雑物を酸化する酵素、例えばアスコルビン酸オキシダーゼ等を配合し、還元性の夾雑物の電極上での酸化を抑制し、測定誤差を低減するバイオセンサが開示されている(特許文献2)。
【0006】
また、作用極と対極のほかに第3の電極を設けたバイオセンサを用いる基質の定量方法が記載されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平2−062952号公報
【特許文献2】特開平5−87768号公報
【特許文献3】特開平11−344462号公報
【非特許文献1】糖尿病 42(5)367−372、1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2記載のセンサおよび基質の定量方法は、妨害物質による影響を小さくすることができるが、センサの構造や測定器が複雑になる。
【0008】
また、特許文献3記載の方法では、対極と第3極に電位を印加して対極と第3極間の電流値を測定しこれを夾雑物であるアスコルビン酸等に由来する電流とし、ついで対極を基準にして作用極に所定の電圧を印加して対極と作用極間の所定時間後の電流値を測定してこれをグルコースとアルコルビン酸等に由来する電流とし、これらの測定値からアスコルビン酸等の影響を除去するものであり、測定が煩雑である。
【0009】
そこで本発明は、試料液中の妨害物質の影響を受けずに試料に含まれる特定成分の濃度を正確かつ迅速に測定する測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、酸化還元酵素を使用するバイオセンサについて詳細に検討した結果、200mV以下の電位を印加しても、アスコルビン酸や尿酸などの易酸化物質はほとんど酸化されないためアスコルビン酸に由来する電流の発生を回避して測定誤差を回避できること、および印加電位が200mV以下でも正確な定量を行うためにはその印加電位で十分な酸化電流を与え得る電子受容体を用いる必要があるが、式量電位が100mV以下の電子受容体を用いると、極めて基質の定量性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0011】
本発明の基質の測定方法によれば、簡便な装置を使用し、測定誤差を生じるような夾雑物の除去などを行うことなく、特定成分の濃度を正確かつ迅速に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第一は、絶縁性基板上に少なくとも作用極と対極とを有する電極系が形成され、前記電極系上および/または電極系の近傍に酸化還元酵素と電子受容体とを含む反応層が形成され、かつ前記電子受容体は、銀/塩化銀電極に対する式量電位が100mV以下であるバイオセンサを用いる前記酸化還元酵素の基質の測定方法であって、
前記反応層に、前記酸化還元酵素の基質を添加し、作用極に対極に対して200mV以下の電位を印加し、前記酸化還元酵素と前記基質との反応で生成する電子によって電子受容体を還元し、電子受容体の還元量を前記電極系で電気化学的に検知することを特徴とする、基質の測定方法である。
【0013】
従来から、反応層に電子受容体を含ませることは公知であったが、本発明では、銀/塩化銀電極に対する式量電位が100mV以下である電子受容体を使用することで、測定誤差を低減することができる。まず、本発明の原理について説明する。
【0014】
一般的なバイオセンサは、反応層に酸化還元酵素と電子受容体とを含み、反応層に試料を供給して該試料に含まれる基質と前記酸化還元酵素とを反応させて電子を発生させ、この電子によって反応層に含まれる電子受容体を還元し、還元された電子受容体を電気化学的に酸化し、このとき得られる酸化電流量から前記試料中の特定成分の濃度を測定するものである。したがって、試料に易酸化物質が含まれると、目的物と同様に反応するため発生する電子量に影響を与え、測定誤差となる。
【0015】
一般に、血液や尿などの生体試料には、アルコルビン酸や尿酸などの易酸化物質が含まれる。これらは比較的低電位で酸化される物質であるから、200mV以上の電位を印加すると、測定対象物質由来の電流と上記易酸化物質由来の電流との双方が合計された電流が流れ、測定対象物質に由来する電流値のみを測定することができない。しかしながら、200mV以下の電位では、上記易酸化物質はほとんど酸化されず、したがって、200mV以下の電位を印加すれば、易酸化物質に由来する電流の発生を防止することができる。一方、印加電位を200mV以下にして測定対象物質を正確に定量するには、その印加電位でも十分に酸化電流を与える電子受容体を用いる必要がある。また、酸化還元物質は、電位が高くなるにつれ酸化電流値が増加するなど、印加電位に従属して電流値が変動する。このため、印加電位の相違による測定誤差を排除する必要がある。銀/塩化銀電極に対する式量電位より100mV以上高い電位では、酸化還元物質に印加する電位量のいかんにかかわらず、電位酸化電流が一定となるが、式量電位は電子受容体の種類によって定まるため、該式量電位を100mV以下にし得る電子受容体を使用すれば、生体材料に含まれる易酸化物質の含有量にかかわらずこれらの酸化を回避し、かつ測定対象物質から発生する電流のみを計測することができ、目的物の定量を正確に行うことができる。なお、血液や尿などの生体試料に含まれるアルコルビン酸や尿酸などの易酸化物質の含有量は食事や体調などによって変動するが、本発明によれば、作用極に対極に対して200mV以下の電位を印加することで易酸化物質による電流の発生を抑制でき、易酸化物質の含有量が変動する試料でも正確に目的物を定量することができる。
【0016】
本発明で使用できる電子受容体は、銀/塩化銀電極に対する式量電位が100mV以下、より好ましくは−400〜100mV、特に好ましくは−200〜100mVである。このような電子受容体としては、p−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン誘導体、フェナジンメトサルフェート、フェナジンメトサルフェート誘導体、メチレンブルー、チオニン、インジゴカーミン、ガロシアニン、α−ナフトキノン、α−ナフトキノン誘導体、およびサフラニンなどがある。ここに、p−ベンゾキノン誘導体、フェナジンメトサルフェート誘導体、α−ナフトキノン誘導体としては、p−ベンゾキノン、フェナジンメトサルフェート、α−ナフトキノンに炭素数1または2のアルキル基が結合したもの、炭素数1または2のアルコキシが結合したもの、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子が結合したものなどがある。
【0017】
これら電子受容体の反応層中の濃度は、使用する酸化還元酵素や対象とする生体試料などによって適宜選択することができるが、一般には、0.5〜10μlの試料を添加する場合には、1センサあたり0.01〜1000μg、好ましくは0.1〜100μg、特に好ましくは1〜50μgである。
【0018】
反応層に含まれる酸化還元酵素としては、上記趣旨より、酸化還元反応を触媒し、電子を生成させうるものを広く使用することができる。したがって、グリセロールオキシダーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、サルコシンオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、フルクトースオキシダーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼなどを好ましく使用することができる。
【0019】
反応層におけるこのような酵素の含有量も、生体試料やその添加量などによって適宜選択することができる。一般には、0.001〜100活性単位、より好ましくは0.01〜10活性単位、特に好ましくは0.01〜5活性単位である。
【0020】
さらに反応層には、上記酵素類や電子受容体のほかに、親水性高分子を含有させてもよい。反応層中に親水性高分子を添加することにより、電極系表面からの反応層剥離を防ぐことができる。さらに、親水性高分子は、反応層表面の割れを防ぐ効果も有しており、バイオセンサの信頼性を高めるのに効果的である。このような親水性高分子としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリリジンなどのポリアミノ酸、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチンおよびその誘導体、アクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩、スターチおよびその誘導体、無水マレイン酸およびその塩、アガロースゲルおよびその誘導体が好適に用いられる。このような親水性高分子の配合量は、一般には1センサあたり0.1〜1000μg、好ましくは1〜500μg、特に好ましくは5〜100μgである。
【0021】
本発明で使用するバイオセンサは、反応層に含まれる電子受容体が、銀/塩化銀電極に対する式量電位が100mV以下である点に特徴があり、その他の点では公知のものを使用することができる。このようなバイオセンサとしては、例えば特開平2−062952号公報、特開平5−87768号公報、特開平11−201932号公報などに記載のものを好適に使用することができる。一般には、絶縁性基板上に作用極と対極とを有する電極系が形成され、前記電極系上に電極系に接して酸化還元酵素と電子受容体とを含む反応層が形成されるものである。このような絶縁性基板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、紙、ガラス、セラミックなどがある。また、絶縁性基板上に形成する電極系は、銀、金、白金、カーボンなど主体とする材料からなる作用極、対極およびリード部、コネクタ部を含む。なお、上記反応層は、このような、前記電極系上および/または前記電極系の近傍に形成される。
【0022】
本発明の測定方法で使用するバイオセンサでは、反応層は、電極系の作用極と対極のいずれか一方に設ければよいが、作用極と対極の双方に設けてもよい。また、電極に直接接触させず、その近傍に反応層を形成してもよい。なお、「近傍」とは電極上に空間やフィルタを介して、あるいは試料供給口と作用極の間に位置することを意味する。
【0023】
このような二電極式のバイオセンサを使用して、試料に含まれる特定成分を定量するには、前記反応層上に試料を供給し、反応層に含まれる酸化還元酵素と試料中に含まれる基質とを反応させる。試料添加後0〜5分、より好ましくは0〜1分後に作用極に、対極を基準にして200mV以下の電位を印加する。還元された電子受容体を電気化学的に酸化し、このとき得られる酸化電流値を測定する。これによってアスコルビン酸や尿酸などの易酸化性物質の酸化を防止し、かつ測定対象物質を酸化して電子受容体を還元させ、電子受容体が酸化される電位を電極系に与えることで、電子受容体の酸化電流を得て、この電子受容体の酸化電流値あるいは電荷量から基質の濃度を定量し、測定対象物質の濃度に換算することができる。
【0024】
本発明の方法において、電流値の測定と測定対象物の濃度への換算としては、電位を印加してから一定時間後の電流値を測定するクロノアンペロメトリーであってもよく、クロノアンペロメトリーの電流応答を時間で積分して得られる電荷量を測定するクロノクーロメトリーであってもよい。装置系が簡単なものでよい点で、クロノアンペロメトリーで行うことが好ましい。
【0025】
また、本発明では、電極系が、作用極と対極とに加えてさらに参照極を加えた三電極式であってもよい。このようなバイオセンサは、反応層に含まれる電子受容体が、銀/塩化銀電極に対する式量電位が100mV以下である点を除き、公知のものを使用することができる。上記のように、本発明では、二電極式でも三電極式でもよいが、三極の方が電位制御が精度良く行われるため、より正確な測定が可能である。
【0026】
本発明の基質の測定方法で定量できる基質としては、使用する酸化還元酵素を適宜選択することで、グルコースなどの糖類、グリセロール、ソルビトール、アラビトールなどの多価アルコール、中性脂肪、コレステロールなどの脂質、グルタミン酸や乳酸などの有機酸類、クレアチン、クレアチニンを測定することができる。このような基質を含む試料として、血液、尿、唾液などの生体試料、果物、野菜、加工食品原料などの食品などがある。特にアスコルビン酸や尿酸などの易酸化性物質を夾雑物として含有する試料において、本発明は優れた定量性を発揮できる。
【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0028】
(酵素活性)
PQQ依存性PDHの酵素活性は、50μM DCIP、0.2mM PMS、400mM グリセロールを含んだ0.2%トライトンX−100を含む10mMリン酸緩衝液pH 7.0中に、酵素溶液を加え、酵素と基質の反応をDCIPの600nmの吸光度変化によって追跡し、その吸光度の減少速度を酵素の反応速度とした。1分間に1μmolのDCIPが還元される酵素活性を1単位(U)とした。なお、DCIPのpH7.0におけるモル吸光係数は16.3mM1とした。
【0029】
(参考例1)
ソルビトール2質量%、酵母エキス0.3質量%、肉エキス0.3質量%、コーン・スティープ・リカー0.3質量%、ポリペプトン1質量%、尿素0.1質量%、KHPO0.1質量%、MgSO・7HO 0.02質量%、CaCl0.1質量%、pH7.0よりなる培地400mlを500ml容坂口フラスコに一本あたり100mlずつ移し、121℃、20分間でオートクレーブを行った。
【0030】
種菌として、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)NBRC3291株を一白金耳植菌し、30℃で24時間培養し、種培養液とした。
【0031】
次に上記と同じ組成で調製した培地6.6Lを10L容ジャーファーメンターに移し、121℃で20分間オートクレーブを行い、放冷後、種培養液400mlを移した。これを、750rpm、通気量7L/分、30℃で24時間培養した。
【0032】
培養液を遠心分離して集菌し、蒸留水で懸濁後、フレンチプレスにより菌体を破砕した。破砕液を遠心分離し、得られた上清を超遠心分離して、膜画分を沈殿物として得た。この膜画分を10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁後、終濃度が1%となるようにトライトンX−100を加え、4℃で2時間撹拌した。超遠心分離し、上清を0.2質量%トライトンX−100を含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で一晩透析し、これを可溶化膜画分とした。この可溶化膜画分をFPLCにてResourceQ6mlで分画し、得られた活性画分を0.2質量%トライトンX−100を含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で一晩透析後、凍結乾燥することにより、比活性3U/mg蛋白の酵素標品を得た。これをグルコノバクター・オキシダンス由来GDH(以下、単にGlyDHと略す)と称する。
【0033】
(実施例1)
BVT社製センサ電極(AC1、W5、R1)の電極系の上に、参考例1で得たGlyDH(20U/ml)および電子受容体として1−メトキシ−5−フェナジニウムメチルサルフェイト(以下、m−PMSと略す)(10mmol/l)を混合したリン酸緩衝生理食塩水を10μl滴下し、室温で乾燥させて反応層を形成した。
【0034】
この反応層上に、リン酸緩衝生理食塩水にグリセロール1mM、アスコルビン酸0.1mM含有を溶解させた試料液10μ1滴下した。試料に含まれるグリセロールがGlyDHにより酸化され、同時に反応層中の電子受容体が還元された。
【0035】
試料を滴下してから5分後に、参照極に対して+150mVの電位を作用極に印加して、電子受容体の酸化電流値を測定した。測定には電気化学測定システムHZ−5000北斗電工製、HAG1512m/BP)を使用した。この電流値(応答電流)は電子受容体の還元体の濃度、すなわち試料中の基質濃度に比例する。
【0036】
同様にして、試料にアスコルビン酸に代えて尿酸を0.5mM含ませたほかは上記と同様にして応答電流を測定した。結果を図1に示す。
【0037】
(実施例2)
試料に含まれるグリセロール量を0mM、および2mMに代えた以外は、実施例1と同様にして応答電流を測定した。結果を図1に示す。
【0038】
(比較例1)
上記m−PMSに代えてフェリシアン化カリウムを使用し、参照極に対して450mVの電位を作用極に印加する以外は、実施例1と同様に操作して、応答電流を測定した。結果を図1に示す。
【0039】
(比較例2)
上記m−PMSに代えてフェリシアン化カリウムを使用し、参照極に対して450mVの電位を作用極に印加する以外は、実施例2と同様に操作して、応答電流を測定した。結果を図1に示す。
【0040】
(結果)
図1に示すように、銀/塩化銀電極に対する式量電位が100mV以下である電子受容体を使用し、印加電位を200mV以下で行った場合には、アスコルビン酸や尿酸などの易酸化性物質が共存する場合でもこれらに起因する電流が発生せず、測定誤差を回避することができる。一方、電子受容体がフェリシアン化カリウムなどの、銀/塩化銀電極に対する式量電位が100mVを超えるものを使用し、印加電位が200mVを越える場合には、共存物質の影響により応答電流値が変動し、測定誤差となった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、迅速かつ正確に夾雑物の影響を排除して基質を測定することができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1,2、比較例1,2の結果を示す図であり、異なる夾雑物を異なる濃度で含有し、かつ各種の濃度のグリセロールを含む試料について、バイオセンサで測定した場合の応答電流とグリセロール濃度との関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板上に少なくとも作用極と対極とを有する電極系が形成され、前記電極系上および/または電極系の近傍に酸化還元酵素と電子受容体とを含む反応層が形成され、かつ前記電子受容体は、銀/塩化銀電極に対する式量電位が100mV以下であるバイオセンサを用いる前記酸化還元酵素の基質の測定方法であって、
前記反応層に、前記酸化還元酵素の基質を添加し、作用極に対極に対して200mV以下の電位を印加し、前記酸化還元酵素と前記基質との反応で生成する電子によって電子受容体を還元し、電子受容体の還元量を前記電極系で電気化学的に検知することを特徴とする、基質の測定方法。
【請求項2】
前記バイオセンサの電極系が、さらに参照極を含み、前記作用極に前記参照極に対して200mV以下の電位を印加することを特徴とする、請求項1記載の基質の測定方法。
【請求項3】
前記酸化還元酵素が、グリセロールオキシダーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、サルコシンオキシダーゼよりなる群から選ばれる1種である、請求項1または2記載の基質の測定方法。
【請求項4】
前記電子受容体が、p−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン誘導体、フェナジンメトサルフェート、フェナジンメトサルフェート誘導体、メチレンブルー、チオニン、インジゴカーミン、ガロシアニン、α−ナフトキノン、α−ナフトキノン誘導体、およびサフラニンよりなる群から選ばれる1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の基質の測定方法。
【請求項5】
前記反応層への基質の添加は、反応層へ生体試料を添加することによって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の基質の測定方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−275759(P2006−275759A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95166(P2005−95166)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【出願人】(503195850)有限会社アルティザイム・インターナショナル (31)
【Fターム(参考)】