説明

バイオセンサカートリッジ

【課題】 測定に必要な試料の採取量を少量にして使用者の負担を軽減するとともに、試料採取口を穿刺口に近づける動作を必要とすることなく容易に穿刺口の試料を採取して測定することができるバイオセンサカートリッジを提供する。
【解決手段】 穿刺用の穿刺用器具16を基板12の外側面12aに樹脂18により被覆固定するので、後からチップ本体に穿刺用器具16を容易に取り付けることができる。また、穿刺用器具16の先端16aが基板12における試料採取口17の近傍から突出しているので、バイオセンサカートリッジ10により穿刺して、直ちに試料採取口17から試料を採取することができる。これにより、測定に必要な試料の採取量を少量にして使用者の負担を軽減するとともに、試料採取口17を穿刺口に近づける動作を必要とすることなく容易に穿刺口の試料を採取して測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばチップの中空反応部に収容した試薬を用いて化学物質の測定や分析を行うバイオセンサカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば血液中のグルコースの濃度を検出するバイオセンサが知られている(例えば特許文献1第1図参照)。
図12は特許文献1の第1図として記載されているグルコースセンサを示す分解斜視図である。図12に示すように、バイオセンサであるグルコースセンサ100は、対極101と作用極102を有している。対極101は、長さ方向に半裁された中空穿刺用器具状をしており、その先端部103は穿刺しやすいように注射穿刺用器具状に斜切されている。そして、半裁された切断面には、一般に接着剤層を兼ねた絶縁層104、104´、例えばエポキシ樹脂接着剤、シリコーン系接着剤あるいはガラスなどが塗布されており、この絶縁層104、104´を介して作用極102が取り付けられている。作用極102は、グルコースオキシダーゼ酵素(GOD)を固定化した平板状の部材であり、GODが固定化された面を内側に向けて対極101に接着されている。
従って、穿刺用器具状対極101の先端部103を被検体に穿刺して血液を採取し、採取した血液と固定化GOD105との反応を作用極102により検出して、グルコースの定量を行う。
【0003】
また、バイオセンサチップとランセットを一体化したバイオセンサが開示されている(例えば特許文献2参照)。
図13(A)は特許文献2の第1図(a)として記載されているセンサの斜視図、図13(B)は特許文献2の第1図(b)として記載されているセンサの分解斜視図である。図13に示すように、ランセット一体型のセンサ110は、チップ本体111、ランセット113、保護カバー115を有している。チップ本体111は、カバー111aと基板111bとを開閉可能に有しており、カバー111aの内面には内部空間112が形成されている。内部空間112は、ランセット113を移動可能に収納できる形状をしており、カバー111aを開けることによりランセット113が交換自在となっている。
【0004】
ランセット113の先端に設けられている穿刺用器具114は、ランセット113の移動に伴ってチップ本体111の内部空間112の前端部に形成されている開口部112aから出没可能となっている。ランセット113は、チップ本体111の両側面を指によって押圧してランセット113の突起113aを押圧することにより、チップ本体111に固定可能となっており、この固定状態で穿刺を行う。保護カバー115は穿刺用器具114を挿嵌する管部115aを有しており、穿刺用器具114の移動に伴って管部115aもチップ本体111の内部に収納可能なっている。従って、使用前の状態では、保護カバー115を穿刺用器具114に被せて、穿刺用器具114を保護するとともに誤って使用者を傷付けないようにしている。なお、基板111bには、一対の電極端子116が設けられており、測定装置(図示省略)に電気的に接続できるようになっている。
【0005】
従って、使用時には、保護カバー115を外して、ランセット113を押して穿刺用器具114をチップ本体111から突出させ、チップ本体111の両側面を指で押圧して穿刺用器具114を固定する。この状態で被検体を穿刺した後、穿刺用器具114をチップ本体111内部に収納し、チップ本体111の前端に設けられている開口部112aを穿刺口に近づけて、流出した血液を採取する。
【特許文献1】特開平2−120655号公報(図1)
【特許文献2】国際公開第02/056769号パンフレット(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のグルコースセンサ100では、穿刺用器具状対極101と作用極102とを貼り合わせて形成されるため、穿刺穿刺用器具の径がグルコースセンサ100の幅と同程度となり大きくなる。このため、採血量が多くなるとともに穿刺時の痛みが大きくなり、使用者の負担が大きくなるという問題がある。
また、特許文献2に記載のランセット一体型センサ110では、穿刺口から流出した血液を開口部112aから吸収する構造となっていないため、確実に血液を採取するためには多くの血液を流出させる必要があり、使用者の負担が大きくなるという問題がある。
また、穿刺器による穿刺後、測定器を穿刺口に近づける動作は、面倒であり、特に年齢や糖尿病等により視力が低下した利用者には大きな負担となるという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、測定に必要な試料の採取量を少量にして使用者の負担を軽減するとともに、試料採取口を穿刺口に近づける動作を必要とすることなく容易に穿刺口の試料を採取して測定することができるバイオセンサカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明にかかるバイオセンサカートリッジは、互いに対向する2枚の基板と、前記2枚の基板間に挟装されるスペーサ層と、前記2枚の基板の少なくとも1枚の基板のスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極と、前記2枚の基板及び前記スペーサ層により形成される中空反応部と、検体に穿刺用器具を穿刺して採取した試料を前記中空反応部に導入する試料採取口とを有するバイオセンサカートリッジであって、前記穿刺用器具が前記2枚の基板のうちのいずれか一方の基板の外側面に固定され、前記穿刺用器具の先端が前記一方の基板における前記試料採取口の近傍から突出していることにある。
【0009】
このように構成されたバイオセンサカートリッジにおいては、穿刺用の穿刺用器具を基板の外側面に固定するので、後からチップ本体に穿刺用器具を容易に取り付けることができるとともに、固定材料と基板の固定面積が大きくなるので、テープや接着剤を用いて裸穿刺用器具を取り付ける場合に比べて取付け強度が大きくなる。また、穿刺用器具の先端が基板における試料採取口の近傍から突出しているので、バイオセンサカートリッジにより穿刺し、直ちに試料採取口から試料を採取して中空反応部に導入することができる。これにより、測定に必要な試料の採取量を少量にして使用者の負担を軽減するとともに、試料採取口を穿刺口に近づける動作を必要とすることなく容易に穿刺口の試料を採取して測定することができるので、特に視力が低下した利用者の負担を軽減することができる。尚、本発明においては、針、ランセット針、カニューレ等を総称して穿刺用器具という。
【0010】
また、本発明にかかるバイオセンサカートリッジは、前記2枚の基板のいずれか一方の基板の外側面に穿刺用器具保持部を有し、前記穿刺用器具保持部の少なくとも一部に前記穿刺用器具の形状に対応したスリットが形成され、このスリット内に前記穿刺用器具が固定されていることが望ましい。
【0011】
このように構成されたバイオセンサカートリッジにおいては、穿刺用器具を穿刺用器具保持部に設けられているスリットに嵌合させるとともに、穿刺用器具および穿刺用器具保持部を例えば樹脂により一体化して基板の外側面に固定した場合、穿刺用器具に押す力が作用しても引っ込むのを防止することができる。これにより、穿刺用器具で確実に穿刺することができる。
【0012】
また、本発明にかかるバイオセンサカートリッジは、前記2枚の基板のいずれか一方の基板の少なくとも一部に溝が形成され、前記溝に前記穿刺用器具が備えられていることが望ましい。
【0013】
このように構成されたバイオセンサカートリッジにおいては、基板に設けられた溝に穿刺用器具を嵌合させて固定するので、穿刺用器具は試料採取口の近くに固定することができる。このため、穿刺用器具による穿刺位置と試料採取口との距離を小さくすることができ、試料採取口を穿刺位置に合わせる動作をすることなく、僅かな試料でも確実に採取することができる。
【0014】
また、本発明にかかるバイオセンサカートリッジは、前記2枚の基板の少なくとも一部に貫通孔が形成され、前記貫通孔に前記穿刺用器具が備えられていることが望ましい。
【0015】
このように構成されたバイオセンサカートリッジにおいては、貫通孔のところで穿刺用器具を確実に固定することができるので、穿刺時に穿刺用器具がぐらつくことを防止することができる。
【0016】
また、本発明にかかるバイオセンサカートリッジは、前記穿刺用器具の先端が前記中空反応部の先端に設けられている試料採取口に向かって傾斜していることが望ましい。
【0017】
このように構成されたバイオセンサカートリッジにおいては、穿刺用器具の先端が試料採取口の側に傾斜しているので、穿刺用器具による穿刺位置と試料採取口との距離をより小さくすることができ、試料採取口を穿刺位置に合わせる動作をすることなく、僅かな試料でも確実に採取することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、穿刺用の穿刺用器具を基板の外側面において試料採取口の近傍から突出して固定するので、後からカートリッジ本体に穿刺用器具を容易に取り付けることができるとともに取付け強度を大きくすることができる。また、バイオセンサカートリッジにより穿刺して、直ちに試料採取口から試料を採取することができる。このため、測定に必要な試料の採取量を少量にして使用者の負担を軽減するとともに、試料採取口を穿刺口に近づける動作を必要とすることなく容易に穿刺口の試料を採取して測定することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(A)は本発明に係るバイオセンサカートリッジの第1実施形態を正面から見た説明図、図1(B)は図1(A)中B方向から見た側面図、図1(C)は図1(A)中C方向から見た端面図である。
【0020】
図1(A)〜(C)に示すように、本発明の実施形態に係るバイオセンサカートリッジ10Aは、互いに対向する2枚の基板11、12と、この2枚の基板11、12間に挟装されるスペーサ層13と、2枚の基板11、12の少なくとも1枚の基板11のスペーサ層13側の表面に設けられた検知用電極14と、2枚の基板11、12及びスペーサ層13により形成される中空反応部15と、検体に穿刺用器具16を穿刺して採取した試料である例えば血液を中空反応部15に導入する試料採取口17とを有している。そして、穿刺用器具16が2枚の基板11、12のうちのいずれか一方の基板12の外側面12aに接触して樹脂18により被覆固定され、穿刺用器具16の先端16aが一方の基板11における試料採取口17の近傍から突出している。尚、固定方法としては、上述した樹脂による被覆固定には限定されず、樹脂被覆以外の固定方法を採用することも可能である。
【0021】
図1(A)〜(C)に示すように、基板11、12は全体矩形状をしており、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)で作成することができる。下側(図1(B)において左側)の基板11の上には、一対の検知用電極14a、14bが、例えば、カーボンを主成分とする材料により基板11上に印刷等することにより形成されている。図1(A)において破線で示すように、検知用電極14a、14bは所定の間隔をおいて平行に直線状に設けられており、両検知用電極14a、14bの上端(図1(A)中上端)では、上側の基板12およびスペーサ層13よりも下側の基板11のみが延設されており、検知用電極14a、14bの上面が露出している。また、検知用電極14c、14bの下端部は、それぞれL字状に対向して屈曲されていて、中空反応部15において所定の間隔で配置されている。
【0022】
スペーサ層13は基板11、12と同様の材質を用いて形成することができる。また、スペーサ層13は1枚であってもよいが、複数枚を積層して形成することもできる。この場合には、複数枚のスペーサ層13を接合する接着剤もスペーサ層13を形成することになる。
【0023】
中空反応部15は、上下両面を基板11、12および検知用電極14a、14bにより形成され、所定の形状に切りかかれたスペーサ層13を側壁として矩形状の空間が形成されている。このため、中空反応部15においては、検知用電極14a、14bは露出しており、中空反応部15における検知用電極14a、14bの直上あるいは近傍に試薬19が設けられている。従って、中空反応部15は、試料採取口17から導入された例えば血液等の試料Bが、試薬19と生化学反応する部分となる。例えば、血液中のグルコース量を測定するバイオセンサチップ10Aの場合は、試薬19として、グルコースオキシダーゼや、グルコースオキシダーゼ−電子受容体(メディエータ)混合物層、グルコースオキシダーゼ−アルブミン混合物層、又はグルコースオキシダーゼ−電子受容体−アルブミン混合物等が用いられる。グルコースオキシダーゼ以外の酵素、例えばグルコースデヒドロゲナーゼ等を用いる場合もあり、添加剤として緩衝剤や親水性高分子等を試薬中に含めてもよい。
【0024】
基板12の外側面12aには穿刺用器具16が接触して設けられており、穿刺用器具16の先端16aがバイオセンサカートリッジ10Aの先端から突出するようにして、樹脂18により固定されている。穿刺用器具16は、バイオセンサカートリッジ10Aの断面において、中空反応部15の先端である試料採取口17の近傍(図1(C)において上方)に位置決めされており、樹脂18によって被覆されて基板12に固定されている。このため、基板12をできるだけ薄く形成し、穿刺用器具16を試料採取口17にできるだけ近づけるのが望ましい。これにより、穿刺用器具16で穿刺した後、バイオセンサカートリッジ10Aを穿刺口に位置決めしなおすことなく、穿刺口から流出した血液を採取することができる。
【0025】
前述したバイオセンサカートリッジ10Aを製造する際には、穿刺用器具16を、樹脂18を介してバイオセンサカートリッジ10Aに後付けすることができる。この場合、予め穿刺用器具16を樹脂18により被覆するとともに、基板12の外側面12aに接する側の被覆に平面18aを形成しておき、この平面18aを接着剤等によって基板12に固定する。このため、樹脂18と基板12との接着面積を大きくすることができ、穿刺用器具16を強固に固定することができる。なお、穿刺用器具16の後方(図1(A)において上方)をしっかりと樹脂18で覆い、穿刺時に穿刺用器具16に作用する押圧力に抵抗できるようにして、穿刺時に穿刺用器具16が押し込まれて引っ込まないようにする。
【0026】
以上、説明したバイオセンサカートリッジ10Aによれば、穿刺用の穿刺用器具12を基板12の外側面12aに樹脂18により被覆して固定するので、後からバイオセンサカートリッジ10Aに穿刺用器具16を容易に取り付けることができるとともに、接着面積が大きくなるので、裸穿刺用器具をテープや接着剤等で貼り付ける場合と比較して、取付け強度が大きくなる。また、裸穿刺用器具を加圧・加熱等によって圧着する場合のように、加圧によりバイオセンサカートリッジ10Aが潰れたり、加熱により試薬19が変質したりするのを防止することができる。また、穿刺用器具16の先端16aが基板12における試料採取口17の近傍から突出しているので、バイオセンサカートリッジ10Aにより穿刺し、直ちに試料採取口17から血液を採取して中空反応部15に導入することができる。これにより、測定に必要な血液の採取量を少量にして使用者の負担を軽減するとともに、穿刺後に試料採取口17を穿刺口に近づける動作を必要とすることなく容易に穿刺後の血液を採取して測定することができるので、視力が衰えた使用者でも容易に使用することができる。
【0027】
次に、本発明の第2実施形態に係るバイオセンサカートリッジについて説明する。
図2(A)は本発明に係るバイオセンサカートリッジの第2実施形態を正面から見た説明図、図2(B)は図2(A)中B方向から見た側面図、図2(C)は図2(A)中C方向から見た端面図、図3(A)はフィルムの平面図、図3(B)はフィルムの端面図である。なお、第1実施形態において前述した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0028】
図2(A)〜(C)に示すように、本発明に係るバイオセンサカートリッジ10Bでは、基板11、12のいずれか一方の基板12の外側面12aに穿刺用器具保持部21を有し、この穿刺用器具保持部21の先端部に穿刺用器具16の形状に対応したスリット22が形成され、このスリット22内に穿刺用器具16が固定されている。図3に示すように、平板で矩形状の穿刺用器具保持部21にスリット22を設けて、全体を(逆)U字状に形成している。スリット22の幅および長さは、穿刺用器具16の大きさおよび形状に対応して形成されており、穿刺用器具16をスリット22内部に嵌合させる際には、少なくとも穿刺用器具16の後端面16bがスリット22の後壁22aに当接するようにする。
【0029】
従って、上述したバイオセンサカートリッジ10Bを製造する際には、穿刺用器具保持部21のスリット22に穿刺用器具16を嵌合させた後に、21の一方の面21aには樹脂18が付着しないように樹脂18によって穿刺用器具16と穿刺用器具保持部21とを一体化し、穿刺用器具保持部21の一方の面21aを接着剤により基板12の外側面12aに固定する。これにより、容易に穿刺用器具16をバイオセンサカートリッジ10Bに後付けすることができる。
【0030】
以上、説明したバイオセンサカートリッジ10Bによれば、前述した第1実施形態に係るバイオセンサカートリッジ10Aと同様の作用・効果を得ることができる。さらに、穿刺用器具16を固定するための穿刺用器具保持部21と基板12との接着面を大きくとることができるので、取付け強度を大きくすることができる。また、穿刺用器具16を穿刺用器具保持部21に設けられているスリット22に嵌合させて穿刺用器具16と穿刺用器具保持部21とを一体化するので、穿刺用器具16に押す力が作用しても引っ込むのを防止することができるとともに穿刺用器具16の軸心のぶれを防止することができる。これにより、穿刺用器具16で所望の穿刺位置に確実に穿刺することができる。尚、穿刺用器具保持部の材料の一例として、板状フィルムを例示することができるが、これには限定されない。
【0031】
次に、本発明の第3実施形態に係るバイオセンサカートリッジについて説明する。
図4(A)は本発明に係るバイオセンサカートリッジの第3実施形態を正面から見た説明図、図4(B)は図4(A)中B方向から見た側面図、図4(C)は図4(A)中C方向から見た端面図である。なお、第1実施形態あるいは第2実施形態において前述した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0032】
図4(A)〜(C)に示すように、本発明に係るバイオセンサカートリッジ10Cでは、基板11、12のいずれか一方の基板12の外側面12aに溝12bが形成されており、この溝12bに穿刺用器具16が樹脂18により固定されている。溝12bの断面形状としてはV字状のものが例示できるが、この他、U字状や矩形状であってもよい。また、溝12bの長さは、穿刺用器具16を収容できる長さであればよいが、加工性の観点から基板12の全長にわたって設けるようにしてもよい。本実施形態では、V字上の溝を形成しているが、この形状以外も適用可能であり、例えば、U字形状や矩形形状であってもよい。このような形状はレーザ等により加工して作製することができる。
【0033】
従って、上述したバイオセンサカートリッジ10Cを製造する際には、基板12の外側面12bの少なくとも先端部に予め溝12bを形成しておき、樹脂18により被覆された穿刺用器具18を溝12bに嵌合させた状態で樹脂18を基板12に接着する。なお、樹脂18の接着面側には平面を形成しておき、基板12との接着性を確保するのが望ましい。
【0034】
以上、説明したバイオセンサカートリッジ10Cによれば、前述した第1実施形態に係るバイオセンサカートリッジ10Aと同様の作用・効果を得ることができる。さらに、穿刺用器具16を固定するための溝12bが設けられているので、穿刺用器具16による穿刺位置と試料採取口17との間の距離を小さくすることができ、バイオセンサカートリッジ10Cにより穿刺した後、直ちに試料採取口17から血液を採取して中空反応部15に導入することができる。このため、測定に必要な血液の採取量をさらに少量にして使用者の負担を軽減するとともに、試料採取口17を穿刺口に近づける動作を必要とすることなく容易に穿刺口の血液を採取して測定することができるので、視力が衰えた使用者でも容易に使用することができる。また、穿刺用器具16は溝12bに嵌合しているので、穿刺時に軸心がぶれることなく、所望の穿刺位置に確実に穿刺することができる。
【0035】
次に、本発明の第4実施形態に係るバイオセンサカートリッジについて説明する。
図5(A)は本発明に係るバイオセンサカートリッジの第4実施形態を示す正面から見た説明図、図5(B)は図5(A)中B方向から見た側面図、図5(C)は図5(A)中C方向から見た端面図、図6(A)は本発明に係るバイオセンサカートリッジの第4実施形態の別の例を正面から見た説明図、図6(B)は図6(A)中B方向から見た側面図、図6(C)は図6(A)中C方向から見た端面図である。なお、第1〜第3実施形態において前述した部位と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0036】
図5(A)〜(B)および図6(A)〜(C)に示すように、本発明に係るバイオセンサカートリッジ10Dでは、穿刺用器具16の先端16aが中空反応部15の先端に設けられている試料採取口17に向かって傾斜している。穿刺用器具16を傾斜して固定する方法としては、図5(A)〜(C)に示すように、樹脂18の厚さの範囲内において穿刺用器具16を傾斜させることができる。あるいは、図6(A)〜(C)に示すように、基板12の外側面12aに傾斜した溝12cを設けておき、この溝12cに穿刺用器具16を嵌合させて傾斜させることもできる。
【0037】
従って、上述したバイオセンサカートリッジ10Dを製造する際には、穿刺用器具16を傾斜させた状態で樹脂18により被覆し、樹脂18を基板12の外側面12bに接着する。このとき、基板12に傾斜した溝12cを設けてある場合には、穿刺用器具16を溝12cに嵌合させて、樹脂18を基板12の外側面12aに接着する。なお、傾斜した溝12cを設ける場合には、予め基板12に溝12cを形成しておくのが望ましい。
【0038】
以上、説明したバイオセンサカートリッジ10Dによれば、前述した第1実施形態に係るバイオセンサカートリッジ10Aと同様の作用・効果を得ることができる。さらに、穿刺用器具16の先端が試料採取口17側に接近するように傾斜して固定するため、穿刺用器具16による穿刺位置と試料採取口17との間の距離は一層小さくすることができるので、測定に必要な血液の採取量をさらに少量にして使用者の負担を軽減するとともに、試料採取口17を穿刺口に近づける動作を必要とすることなく容易に穿刺口の血液を採取して測定することができる。特に、図6(A)〜(C)に示したように、基板12に傾斜した溝12cを設けた場合には、さらに一層穿刺位置と試料採取口17との間の距離を小さくすることができる。
【0039】
前述した各実施形態においては、穿刺用器具16を固定する基板12として、検知用電極14a、14bが設けられていない側の基板12を採用したが、変形例として、検知用電極14a、14bが設けられている基板11に穿刺用器具16を固定することができる。また、前述した各実施形態においては、予め穿刺用器具16を樹脂18によって被覆しておき、樹脂18を基板12に接着することにより穿刺用器具16を固定する場合について説明したが、変形例として、穿刺用器具16を基板12の外側面12aに位置決めし、樹脂18によって穿刺用器具16を固定することも可能である。この場合には、加圧や加熱を行わない樹脂を用いるのが望ましい。
【0040】
上述した実施形態では、溝を設け、この溝に穿刺用器具を備えた構成であるが、他の実施形態として貫通孔を設け、この貫通孔に穿刺用器具を備えた構成も採用することもできる。図7には、貫通孔を備えたバイオセンサカートリッジの実施形態が示されている。このバイオセンサカートリッジ10Gは上下の基板11、12間にスペーサ層13と検知用電極14が備えられ、スペーサ層13のところには、中空反応部15が設けられ、中に試薬19が収容されている。上側の基板12から下側の基板11まで貫くように2つの貫通孔50、51が形成されている。これらの貫通孔50、51に樹脂体54の脚部52、53が挿入固定されている。この樹脂体54は上側の基板12の上面では略半円形状となっている。この半円形状の樹脂体54の下側、即ち、上側の基板12の状面には、穿刺用器具16が樹脂体54に埋め込まれて固定されており、穿刺用器具16の先端が試料採取口から前方に突出している。
【0041】
図8には本発明にかかるバイオセンサカートリッジの更に別な実施形態が示されている。このバイオセンサカートリッジ10Eは、対向する2枚の基板11E、12Eの間に検知用電極14E及びスペーサ層13Eが配置されている。スペーサ層13Eのところには、中空反応部15Eが形成されており、この中空反応部15E内に試薬19Eが収容されている。2枚の基板11E、12Eのうち、上側の基板の外側面には穿刺用器具16Eが固定され、これらの全体が樹脂Jで覆われている。樹脂Jで覆われたバイオセンサカートリッジ10Eは、その断面形状が円形であり、外形形状は略円柱状となっている。このような形状のバイオセンサカートリッジであれば、樹脂で覆われているので、穿刺用器具を確実に固定することができる。更に、穿刺用器具の駆動装置にバイオセンサカートリッジを取り付けて移動させたときでも、その移動がバランス良く、スムーズにおこなうことができる。
【0042】
図9には、図8に示すバイオセンサカートリッジの変形例が示されている。このバイオセンサカートリッジ10Fは、2枚の基板11F、12F間に検知用電極14F、スペーサ層13F、中空反応部15F、試薬19Fを有し、更に、基板12Fの外側面に穿刺用器具16Fが備えられ、これらが樹脂Rにより覆われている。このバイオセンサカートリッジ10Fの先端側には、バイオセンサカートリッジ10Fの長手方向と垂直な方向に突出部30、30が形成され、突出部30、30は樹脂Rとともに一体成形されている。突出部30、30の先端形状は中央に窪み31、31を形成した波型形状であり、この窪み31、31はバイオセンサカートリッジ10Fを駆動装置に取り付ける際に作業者が指で容易に把持することができるような形状となっている。
【0043】
図10には、本発明にかかるバイオセンサカートリッジの更に別な実施形態が示されている。図10(A)には、半円状の基板35に穿刺用器具36が固定されており、この基板35は金型(図示せず)内に穿刺用器具36を配置して樹脂により一体成形して作成される。この半円状の基板35の上面には検知用電極36、37が、一例として、印刷により形成されている。そして、図10(B)に示すように、電極36、37上にスペーサ38配置して試薬39を収容した中空反応部41が形成され、更に、半円上の基板42を配置した構成が本実施形態のバイオセンサカートリッジ40である。このバイオセンサカートリッジ40は断面がほぼ円形形状であり、このようなバイオセンサカートリッジ40を駆動装置(図示せず)に取り付けてカートリッジを移動させたときに、安定して移動させることができる。また、図10(C)に示すように、上側の基板を平らな板状の基板43を用いたバイオセンサカートリッジ44であってもよい。図10(B)、(C)に示すバイオセンサチップ40、44では、金型内に穿刺用器具45を配置して樹脂により一体成形しているので、穿刺用器具を確実に固定することができる。更に、穿刺用器具45が中空反応部41の近傍にあるため、バイオセンサカートリッジ40、44を駆動機構により移動させて穿刺用器具45により穿刺後、血液等の検査試料を迅速かつ確実に中空反応部41に導入することができる。
【0044】
更に、本発明にかかるバイオセンサカートリッジの別な実施例を図11に示す。このバイオセンサカートリッジは、図1や図2に示すバイオセンサチップ等と同様のバイオセンサチップを用いて、その基板上に穿刺用器具を固定したものである。すなわち、上下の基板11、12間に検知用電極14とスペーサ層13が配置され、スペーサ層13のところに試薬19を収容した中空反応部15が形成されている。このバイオセンサチップの上側の基板12の上には樹脂で覆われた穿刺用器具51があり、樹脂50の底面と基板12の上面とが一例として接着剤で固定されている。樹脂50の形状は略半円状或いは略半楕円上であり、幅は基板12の幅と略同一である。そのため、接着材を塗布する面積を大きくとることができるので、樹脂50と基板12との固定を強力に行うことができる。従って、既存のバイオセンサチップに穿刺用器具を容易に装着したバイオセンサカートリッジを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(A)は本発明に係るバイオセンサカートリッジの第1実施形態を示す正面から見た説明図である。(B)は図1(A)中B方向から見た側面図である。(C)は図1(A)中C方向から見た端面図である。
【図2】(A)は本発明に係るバイオセンサカートリッジの第2実施形態を示す正面から見た説明図である。(B)は図2(A)中B方向から見た側面図である。(C)は図2(A)中C方向から見た端面図である。
【図3】(A)はフィルムの平面図である。(B)はフィルムの端面図である。
【図4】(A)は本発明に係るバイオセンサカートリッジの第3実施形態を示す正面から見た説明図である。(B)は図4(A)中B方向から見た側面図である。(C)は図4(A)中C方向から見た端面図である。
【図5】(A)は本発明に係るバイオセンサカートリッジの第4実施形態を示す正面から見た説明図である。(B)は図5(A)中B方向から見た側面図である。(C)は図5(A)中C方向から見た端面図である。
【図6】(A)は本発明に係るバイオセンサカートリッジの第4実施形態の別の例を示す正面から見た説明図である。(B)は図6(A)中B方向から見た側面図である。(C)は図6(A)中C方向から見た端面図である。
【図7】本発明にかかるバイオセンサカートリッジの別な実施形態を示す図である。
【図8】本発明にかかるバイオセンサカートリッジの更に別な実施形態を示す図である。
【図9】図8に示すバイオセンサカートリッジの変形例を示す図である。
【図10】本発明にかかるバイオセンサカートリッジの更に別な実施形態を示す図である。
【図11】本発明にかかるバイオセンサカートリッジの更に別な実施形態を示す図である。
【図12】従来のバイオセンサカートリッジを示す分解斜視図である。
【図13】(A)は従来のバイオセンサカートリッジを示す斜視図である。(B)は従来のバイオセンサカートリッジを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
10 バイオセンサカートリッジ
11 基板
12 基板
12a 外側面
12b 溝
13 スペーサ層
14a、14b 検知用電極
15 中空反応部
16 穿刺用器具
16a 先端
17 試料採取口
18 樹脂
21 フィルム
22 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する2枚の基板と、前記2枚の基板間に挟装されるスペーサ層と、前記2枚の基板の少なくとも1枚の基板のスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極と、前記2枚の基板及び前記スペーサ層により形成される中空反応部と、検体に穿刺用器具を穿刺して採取した試料を前記中空反応部に導入する試料採取口とを有するバイオセンサカートリッジであって、
前記穿刺用器具が前記2枚の基板のうちのいずれか一方の基板の外側面に固定され、前記穿刺用器具の先端が前記一方の基板における前記試料採取口の近傍から突出していることを特徴とするバイオセンサカートリッジ。
【請求項2】
前記2枚の基板のいずれか一方の基板の外側面に穿刺用器具保持部を有し、前記穿刺用器具保持部の少なくとも一部に前記穿刺用器具の形状に対応したスリットが形成され、このスリット内に前記穿刺用器具が固定されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサカートリッジ。
【請求項3】
前記2枚の基板のいずれか一方の基板の少なくとも一部に溝が形成され、前記溝に前記穿刺用器具が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサカートリッジ。
【請求項4】
前記2枚の基板の少なくとも一部に貫通孔が形成され、前記貫通孔に前記穿刺用器具が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサカートリッジ。
【請求項5】
前記穿刺用器具の先端が前記中空反応部の先端に設けられている試料採取口に向かって傾斜していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバイオセンサカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−167942(P2008−167942A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3909(P2007−3909)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】