説明

バイオセンサ測定装置

【課題】 試料採取時の失敗を防いで穿刺および採取の成功率を向上させることができるバイオセンサ測定装置を提供する。
【解決手段】 バイオセンサ測定装置10は、被検体に穿刺される穿刺用器具と、被検体に穿刺して得られた試料を採取するバイオセンサチップ41とを一体に設けたバイオセンサカートッジ14が装填され、採取された試料中の生体物質を測定する。そして、測定装置本体13と、測定装置本体13にヒンジ連結されて開閉自在な採取機構収納部11と、採取機構収納部11に形成され、減圧機構30を収納する減圧機構収納室27と、採取機構収納部11に形成されているとともに減圧機構30に連通される減圧気密室28と、を備えている。減圧気密室28は、バイオセンサカーリッジ14を装填するとともに、バイオセンサカートリッジ14を被検体に穿刺動作させるための穿刺機構25を収納している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺用器具を有したバイオセンサカートリッジを装填して穿刺用器具を被検体に穿刺して試料を採取し、測定するバイオセンサ測定装置に関し、特に採取時の減圧状態の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサ測定装置の一例として、ランセットを有して待機位置から穿刺位置まで移動するラッセットホルダと、被検体に接触させる接触部と、ランセットホルダに吸引力を作用させるために減圧される減圧空間と、を備え、減圧空間の圧力を大気圧よりも低くすることで、ランセットホルダを後退移動し易くしようとしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示されたバイオセンサ測定装置は、ランセットホルダの係合爪を、ハウジングの膨張部の上面に係合させてから、電動ポンプを駆動させて減圧空間内の空気を減圧させ、ランセットホルダにランセットを装着し、接触部を被検体に密着させた後に、電動ポンプを駆動させて接触部内に負圧を発生させ、操作キャップを押し下げてランセットを被検体に突き刺すようにしている。
【特許文献1】国際公開第2004/082478号パンフレット(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に開示されたバイオセンサ測定装置では、減圧空間内の空気を減圧させるために電動ポンプを駆動させる動作と、接触部を被検体に密着させた後に接触部内に負圧を発生させるために電動ポンプを駆動させる動作と、計2回電動ポンプを駆動させなければならないため、減圧および負圧の発生が難しく、穿刺動作中に気体抜け等の支障を生じて試料の採取に失敗する虞があった。
【0005】
そこで本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、試料採取時の失敗を防いで穿刺および採取の成功率を向上させることができるバイオセンサ測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るバイオセンサ測定装置の第1の特徴は、
被検体に穿刺される穿刺用器具と、当該被検体に穿刺して得られた試料を採取するバイオセンサチップと、を一体に設けたバイオセンサカートリッジが装填され、採取された当該試料中の生体物質を測定するバイオセンサ測定装置であって、
測定装置本体と、採取機構収納部と、前記採取機構収納部に形成され、減圧機構を収納する減圧機構収納室と、前記採取機構収納部に形成され、前記減圧機構に連通される減圧気密室と、を備え、前記バイオセンサカートリッジを装填する収容部が前記減圧気密室内に設けられていることにある。
本発明においては、針、ランセット針及びカニューレ等を穿刺用器具と呼ぶ。
【0007】
このように構成されたバイオセンサ測定装置においては、
減圧機構が駆動されることで、この減圧機構に連通された単一の空間である減圧気密室が減圧され、減圧気密室に収納されている穿刺機構が作動されてバイオセンサカートリッジの穿刺用器具が被検体に穿刺されて、試料の採取と試料中の生体物質の測定とが行われる。これにより、減圧機構は単一回数だけ駆動されるだけなので、試料採取時の失敗を防いで穿刺および採取の成功率を向上させることができる。
【0008】
また、本発明に係るバイオセンサ測定装置の第2の特徴は、上記第1の特徴に記載のバイオセンサ測定装置であって、前記減圧気密室は、前記被検体に接触する開口部を有し、当該開口部が当該被検体に接触して前記減圧機構が駆動される第1段階と、当該減圧機構が駆動されてから前記バイオセンサカートリッジの前記穿刺用器具が前記被検体に穿刺される第2段階と、を通じて減圧状態を維持可能であることにある。
【0009】
このように構成されたバイオセンサ測定装置においては、第1段階で、開口部が被検体に接触して減圧機構が駆動された際、および第2段階で、減圧機構が駆動されてからバイオセンサカートリッジの穿刺用器具が被検体に穿刺される際に、減圧気密室の減圧状態が維持される。これにより、被検体に接触させたままの状態で、減圧機構を複数回駆動させる必要がなくなり、使用者の取り扱いを容易にすることで、試料採取時の失敗を防いで穿刺および採取の成功率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係るバイオセンサ測定装置の第3の特徴は、上記第1又は2の特徴に記載のバイオセンサ測定装置であって、前記減圧気密室を画成する前記測定装置本体と前記採取機構収納部との接触面に気密性を保つシール部材が介在されていることにある。
【0011】
このように構成されたバイオセンサ測定装置においては、測定装置本体と採取機構収納部との接触面に気密性を保つシール部材が介在するので、減圧気密室内の気密性を確実に確保することができる。
【0012】
また、本発明に係るバイオセンサ測定装置の第4の特徴は、上記第1乃至3のいずれかの特徴に記載のバイオセンサ測定装置であって、前記採取機構収納部は、ヒンジ部材を介して前記測定装置本体に開閉自在に連結されていることにある。
【0013】
このように構成されたバイオセンサ測定装置においては、前記採取機構収納部と前記測定装置本体がヒンジ部材で連結されているので、測定装置本体の開閉操作をスムーズに行うことができる。
【0014】
更に、本発明に係るバイオセンサ測定装置の第5の特徴は、上記第1乃至4のいずれかの特徴に記載のバイオセンサ測定装置であって、前記減圧気密室内には、付勢ばねを介して移動自在で、前記バイオセンサカートリッジを装填する押圧部材と、該押圧部材に対して移動自在に取り付けられた摺動ピンと、前記測定装置本体に対して該摺動ピンを回動自在に連結するシリンダ付きロッドと、穿刺釦に連結され、回動自在に支持されたロックアームと、を備えており、前記測定装置本体が開けられることで、前記シリンダ付きロッドを介して前記押圧部材が付勢ばねに抗して移動されて前記ロックアームに係止され、前記バイオセンサカートリッジの装填後、前記測定装置本体が閉められ、前記穿刺釦が押下されることで、前記押圧部材の係止状態が解除され、前記バイオセンサカートリッジと共に前記押圧部材が前記付勢ばねの反発力により穿刺位置まで移動することにある。
【0015】
このように構成されたバイオセンサ測定装置においては、測定装置本体を開けた場合、付勢ばねに抗して押圧部材が移動することで、バイオセンサカートリッジを装填する収容スペースである収容部が自動的に確保される。また、測定装置本体を閉めた場合、穿刺釦が押下するだけで、付勢ばねの反発力により押圧部材の先端に装填されたバイオセンサカートリッジが自動的に穿刺位置まで移動して、被検体への穿刺および試料採取を容易に且つ確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバイオセンサ測定装置によれば、試料採取時の失敗を防いで穿刺および採取の成功率を向上させることができるバイオセンサ測定装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0018】
図1〜図9は本発明に係るバイオセンサ測定装置の一実施形態を示すもので、図1は本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置の外観斜視図、図2は図1のバイオセンサ測定装置の底面図、図3は図1のバイオセンサ測定装置の測定装置本体を開けた状態の外観斜視図、図4は図1のバイオセンサ測定装置に用いられるバイオセンサカートリッジの要部分解斜視図、図5は図4のバイオセンサカートリッジの縦断面図である。
【0019】
また、図6は図1のバイオセンサ測定装置の測定動作を説明するバイオセンサカートリッジの装填前の減圧気密室周りの縦断面図、図7は図1のバイオセンサ測定装置の測定動作を説明するバイオセンサカートリッジの装填後の減圧気密室周りの縦断面図、図8は図1のバイオセンサ測定装置の測定動作を説明する第1段階での減圧気密室周りの縦断面図、図9は図1のバイオセンサ測定装置の測定動作を説明する第2段階での減圧気密室周りの縦断面図である。
なお、今回開示される実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
図1および図2に示すように、バイオセンサ測定装置10は、採取機構収納部11と、この採取機構収納部11にヒンジ部材12,12を介して開閉自在に連結された測定装置本体13と、を備え、採取機構収納部11にバイオセンサカートリッジ14を収納している。
【0021】
測定装置本体13は、採取機構収納部11に対する蓋部材として機能し、前面に操作釦15,16と、表示部17と、が設けられている。操作釦15,16は、測定装置本体12に内蔵されている計測回路部18および制御回路部19に電気的に接続されているため、例えば、操作釦15,16のいずれかが押下されることにより、累積記憶されている結果履歴が、順次過去のもの、或いは順次現在に近いものへと表示部17で表示されるようになっている。
【0022】
計測回路部18は、バイオセンサカートリッジ14によって得られた検出信号(電圧レベルや電流レベル)を演算処理する等して、その検出信号に基づいて採取試料の生体物質を電気信号に変換する。
【0023】
制御回路部19は、計測回路部18の測定動作や、操作釦15,16からのオン・オフ信号に応じた制御信号を計測回路部18に送給する。
【0024】
表示部17は、計測回路部18によって得られた計測結果や計測結果履歴を、制御回路部19による表示制御にて表示する。
【0025】
採取機構収納部11の下面には、L字形状に形成されており、使用者に穿刺部位を示すための穿刺補助部材20が取り付けられ、この穿刺補助部材20に開口部21が内部に向けて貫通形成されている。そして、穿刺補助部材20の被検体への接触側に、円環形状のシール部材22が装着されている。
【0026】
採取機構収納部11の上面には、ポンプ作動釦23と、穿刺釦24とが押下自在に設けられている。ポンプ作動釦23は、例えばマイクロスイッチや位置スイッチ等を通じて制御回路部19に電気的に接続されている。穿刺釦24は、穿刺機構(図6に示す)25に有するアーム26に機械的に連結されている。
【0027】
図3に示すように、採取機構収納部11には、それぞれ上方を開放した減圧機構収納室27と、減圧気密室28とが隔板29を介し独立して形成されている。
【0028】
減圧機構収納室27には、減圧機構である負圧ポンプ30が収められている。この負圧ポンプ30は、不図示の逆止弁を内蔵した負圧通路31を通じて減圧気密室28内に連通接続されている。負圧通路31は、隔板29に気密を保持されて取付けられている。
【0029】
負圧ポンプ30は、制御回路部19に電気的に接続されているため、減圧気密室28の気密保持状態でポンプ作動釦23が押下されることで駆動され、減圧気密室28内の気体を減圧させる。
【0030】
減圧気密室28には、穿刺機構25を構成する押圧部材32と、付勢ばね33と、ロックアーム(図6参照)26とが、それぞれ収められており、バイオセンサカートリッジ14が装填可能である。
【0031】
押圧部材32は、付勢ばね33を介して減圧気密室28の長さ方向に移動自在に組み込まれており、側部の長孔34に移動自在に取付けられた摺動ピン35がピン軸回りに回動自在に係合されている。摺動ピン35は、ロッド36とシリンダ37とを介して測定装置本体13の支持部38に回動自在に連結されている。このとき、ロッド36とシリンダ37とは、全長に変動がないように固定されているが、全長が変動可能になっていても良い。
【0032】
押圧部材32は、測定装置本体23が開けられることで、ロッド36と、シリンダ37と、を介して付勢ばね33を圧縮する方向である開口部21から離れる方向に移動され、移動された押圧部材32と開口部21との間に、バイオセンサカートリッジ14を装填するための収容部であるカートリッジ装填部39が形成される。
【0033】
これに対して、押圧部材32は、測定装置本体23が閉められると、摺動ピン35が長孔34内を開口部21側に移動する。摺動ピン35の長孔34内の移動量は、バイオセンサカートリッジ14の移動ストロークと同等に設定されている。
【0034】
また、押圧部材32には、開口部21側の端部にターミナルコネクタ部(図6に示す)40を有する。ターミネルコネクタ部40には、バイオセンサカートリッジ14に備えたバイオセンサチップ(図4に示す)41に有する一対の検知用ターミナル42,43にそれぞれ電気的に接続される不図示の端子が収納されており、これら端子が電線44に電気的に接続されている。電線44は、減圧気密室28内に配置されているため、隔板29に貫通組付けされているグロメット45を通じて気密を保持されて減圧機構収納室27内に引き出されてから測定装置本体23内に引き込まれて測定回路部18に電気的に接続されている。
【0035】
そして、減圧気密室28の開放側の上面には、気密保持用のシール部材46が全周に取付けられており、減圧気密室28は、測定装置本体13が採取機構収納部11に閉められることで、開口部21を除いて密閉される。
【0036】
図4および図5に示すように、バイオセンサカートリッジ14は、穿刺用器具47を一体に有する上ボディ48と、バイオセンサチップ41と、下ボディ49と、上カバー50と、下カバー51と、カートリッジ側弾性部材52とから一体に構成されている。
【0037】
バイオセンサチップ41は、第1の基板53と、第2の基板54と、スペーサ55と、からなり、第1の基板53の下面には、一対の検知用ターミナル42,43が実装されている。これらの内、一方の検知用ターミナル42は、先端の接点部56がL字形状に形成されており、他方の検知用ターミナル43は、一方の検知用ターミナル42と同様に、先端の接点部57がL字形状に形成されており、両接点部56,57は、第1の基板53の先端部で、第1の基板53の板方向に予め定められた隙間を置いて配置されている。
【0038】
そして、これら接点部56,57の間、或いは近傍に試料と反応する不図示の試薬が配置されている。試薬としては、例えば酵素とメディエータを固定化して、血液中のダルコースと反応して電流を発生するものが挙げられる。これにより、試料採取口から採取された、例えば血液等の試料が試薬と生化学反応することになる。
【0039】
第1の基板53下には、絶縁層と粘着層とからなるスペーサ55を介して第2の基板54が一体に積層されており、第1の基板53と第2の基板54との先細形状をなす先端部でスペーサ55の板方向に、後端部に向けて矩形に切除した不図示の中空反応部が形成されている。この中空反応部は、先端部が試料採取口になっており、両ターミナル42,43の接点部56,57がそれぞれ露出している。
【0040】
中空反応部の後端側には、この中空反応部に直交配置された不図示の空気導通路が形成されており、この空気導通路は、両側端部の外気開放部が外気に開放されている。空気導通路は、バイオセンサチップ41の左右を横切って貫通形成されており、中空反応部とで合わされた形状がT字状になるように配置されている。また、中空反応部は、内壁に界面活性剤が塗布されている。
【0041】
下ボディ49には、上ボディ48の穿刺用器具47の下方の一端部から他端部に向けて凹溝形状をなす連通流路58が形成されている。
【0042】
カートリッジ側弾性部材52は、可撓性を有する弾性部材を用いて、穿刺用器具47の周囲を覆う密閉空間を有する形状に形成されている。この弾性部材52の材質としては、弾性を有するものであれば特に限定されないが、シリコーン、ウレタン、アクリル、エチレン、スチレン等のポリマー単体若しくは共重合したポリマーからなるゴム若しくはスポンジ、ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシエチレンとポリフルオロエチレンの共重合体であるPFA等のフッ素樹脂などを利用できる。
【0043】
バイオセンサカートリッジ14は、バイオセンサチップ41を挟んで、上ボディ48と、下ボディ49とが、例えば接着剤等の接合材を用いて固着される。これらの外側に、上カバー50と、下カバー51とが被着されてから、カートリッジ側弾性部材52が穿刺用器具47の外側を覆って装着される。そのため、連通流路58は、穿刺用器具47の周囲のバイオセンサカートリッジ14の一端側から他端側に連通される。
【0044】
第1の基板53、第2の基板54およびスペーサ55の材質としては、絶縁性材料のフィルムが選ばれ、絶縁性材料としては、セラミックス、ガラス、紙、生分解性材料(例えば、ポリ乳酸微生物生産ポリエステル等)、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂、UV硬化樹脂等のプラスチック材料を例示することができる。このとき、機械的強度、柔軟性、及びチップの作製や加工の容易さ等から、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック材料が好ましい。代表的なPET樹脂としては、メリネックスやテトロン(以上、商品名、帝人デュポンフィルム株式会社製)、ルミラー(商品名、東レ株式会社製)等が挙げられる。
【0045】
また、試薬としては、例えばグルコースオキシダーゼ(GOD)が挙げられる。また、被検体の採血負担を考慮すると、中空反応部の容積は1μL(マイクロリットル)以下が好ましく、特に300nL(ナノリットル)以下であることが好ましい。このような微小な中空反応部であると、穿刺用器具47の直径が小さくても被検体の充分な血液量を採取可能となる。穿刺用器具47は、直径が1000μm以下であることが好ましい。
【0046】
図6に示すように、減圧気密室28に収納されているロックアーム26は、略L字形状に形成されており、中央部がピン59によって回動自在に支持され、一端に係止突起60が形成され、他端がシール部材61によって減圧気密室28に気密を保持された穿刺釦24に連結されている。なお、ロックアーム26は、不図示の戻しばねによって穿刺釦24が飛び出す方向に付勢されている。
【0047】
ロックアーム26は、測定装置本体13が開けられると、ロッド36およびシリンダ37を介して摺動ピン35が長孔34の右端部に係止されながら、付勢ばね33に抗して押圧部材32が反開口部21側に引張移動される。このとき、戻しばねに付勢されている係止突起60が押圧部材32の下面に形成されている係合孔62に係止されてカートリッジ装填位置A1にセットされる。
【0048】
この動作は、測定装置本体13を開けるだけで自動的に行われる。そして、測定装置本体13が閉められてから、戻しばねに抗して穿刺釦24が押下されると、係止突起60が係合孔62から外れ、付勢ばね33に蓄積されている弾性反発力により押圧部材32を開口部21に向けて穿刺位置(図9に示す)A2まで移動させる。
【0049】
次に、図6乃至図9を参照して、バイオセンサ測定装置10の測定手順について説明する。
【0050】
図6に示すバイオセンサカートリッジ14の装填時に、押圧部材32がカートリッジ装填位置A1にセットされたところで、バイオセンサカートリッジ14が減圧気密室28内の装填部39に装填される。このとき、バイオセンサカートリッジ14に備えたバイオセンサチップ41に有する一対の検知用ターミナル42,43が押圧部材32のターミナルコネクタ部40にそれぞれ電気的に接続される。
【0051】
図7に示すように、バイオセンサカートリッジ14が装填部39に装填されたところで、測定装置本体13が採取機構収納部11に閉められると、シール部材46に測定装置本体13が密着されることで減圧気密室28の上部開口側が閉塞される。そして、押圧部材32は、ロックアーム26の係止突起60が押圧部材32の係合孔62に係止されたままで、摺動ピン35のみが長孔34内を開口部21側に移動する。測定装置本体13が採取機構収納部11に閉じられることで、減圧気密室28が、開口部21を除いて気密状態となる。
【0052】
次に、図8に示すように、使用者が穿刺部材20の開口部21を観ながら、収納部側弾性部材22を被検体に接触させ、ポンプ作動釦23を押下させる。これにより、被検体が接触されることで開口部21が閉塞されている減圧気密室28内の気体が、負圧ポンプ30の駆動に伴って減圧される第1段階となる。この第1段階で、減圧気密室28内が減圧されることで、収納部側弾性部材22に接触している被検体がうっ血して、良好な穿刺を行えるように開口部21内に盛り上がる。
【0053】
次に、図9に示すように、使用者によって穿刺釦24が押下されることで、ロックアーム26の係止突起60が係合孔62から外れて、付勢ばね33に蓄積されている弾性反発力により押圧部材32が開口部21に向けて穿刺位置A2まで移動される第2段階となる。この第2段階は、第1段階とともに減圧気密室28の減圧状態が維持される。これにより、バイオセンサカートリッジ14は、カートリッジ側弾性部材52が被検体に衝突して変形するとともに、カートリッジ側弾性部材52に有する針孔63を通じて穿刺用器具47がうっ血している被検体に穿刺され、穿刺ロから流出した血液がカートリッジ側弾性部材52の内側からバイオセンサチップ41の中空反応部へと導入される。すなわち、減圧下のカートリッジ14内に血液を流入させることで、体内から血液が噴出する圧力とカートリッジ14内の減圧による圧力差によって、中空反応部内への血液の導入がスムーズに行われる。
【0054】
このとき、穿刺用器具47の外側を覆って装着されているカートリッジ側弾性部材52の内側から下ボディ49の他端に向けて連通流路58が形成されているために、血液が中空反応部へ効率良く導入される。これにより、中空反応部へ導入された血液が試薬と反応することで、両検知用ターミナル42,43の両接点56,57間の電圧レベル(電流レベル)の変動に基づいて、計測回路部18が血液中の成分を演算計測し、制御回路部19を通じて血糖値データを表示部17で表示する。そして、測定後、再びポンプ作動釦23を押下することで、カートリッジ14内の減圧状態が解除される。
【0055】
以上説明したように、本実施形態のバイオセンサ測定装置10によれば、負圧ポンプ30が駆動されることで、この負圧ポンプ30に連通された単一の空間である減圧気密室28が減圧される。そして、減圧気密室28に収納されている穿刺機構25の押圧部材32と付勢ばね33とロックアーム26とが作動されてバイオセンサカートリッジ14の穿刺用器具47が被検体に穿刺され、試料の採取と試料中の生体物質の測定とが行われる。これにより、負圧ポンプ30は単一回数だけ駆動されるだけなので、試料採取時の失敗を防いで穿刺および採取の成功率を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態のバイオセンサ測定装置10によれば、第1段階で、開口部21の収納部側弾性部材22が被検体に接触して負圧ポンプ30が駆動された際、および第2段階で、負圧ポンプ30が駆動されてからバイオセンサカートリッジ14の穿刺用器具47が被検体に穿刺される際、減圧気密室28の減圧状態が維持される。これにより、被検体に接触させたままの状態で、負圧ポンプ30を複数回駆動させる必要がなくなり、使用者の取り扱いを容易にすることで、試料採取時の失敗を防いで穿刺および採取の成功率を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態のバイオセンサ測定装置10によれば、開口部21を被検体に接触させる際に、開口部21で被検体の接触側に取付けられている環状の収納部側弾性部材22が被検体に弾性的に接触される。そして、バイオセンサカートリッジ14の穿刺用器具47が被検体に穿刺される際に、バイオセンサカートリッジ14のカートリッジ側弾性部材52が、収納部側弾性部材22の内周側で被検体に弾性的に接触される。これにより、収納部側弾性部材22の接触により大気と遮断されている開口部21内でカートリッジ側弾性部材52内に試料を採取することができ、試料の採取を効率良く行うことができる。
【0058】
また、本実施形態のバイオセンサ測定装置10によれば、バイオセンサカートリッジ14のカートリッジ側弾性部材52が、収納部側弾性部材22の内周側で被検体に弾性的に接触される際に、カートリッジ側弾性部材52の内側の連通流路58に負圧が発生しているため、試料がカートリッジ側弾性部材52の内側に効率よく進行させて採取の失敗を確実に回避することができる。
また、バイオセンサ測定装置10を逆さにして、被検体である指を装置上端の収納部側弾性部材22上に載置した状態で使用すれば、前述した減圧効果に加えて、重力による血球の落下によりさらに確実な導入を期待できる。
【0059】
なお、本発明に係るバイオセンサ測定装置は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るバイオセンサ測定装置の外観斜視図である。
【図2】図1のバイオセンサ測定装置の底面図である。
【図3】図1のバイオセンサ測定装置の測定装置本体を開けた状態の外観斜視図である。
【図4】図1のバイオセンサ測定装置に用いられるバイオセンサカートリッジの要部分解斜視図である。
【図5】図4のバイオセンサカートリッジの縦断面図である。
【図6】図1のバイオセンサ測定装置の測定動作を説明するバイオセンサカートリッジの装填前の減圧気密室周りの縦断面図である。
【図7】図1のバイオセンサ測定装置の測定動作を説明するバイオセンサカートリッジの装填後の減圧気密室周りの縦断面図である。
【図8】図1のバイオセンサ測定装置の測定動作を説明する第1段階での減圧気密室周りの縦断面図である。
【図9】図1のバイオセンサ測定装置の測定動作を説明する第2段階での減圧気密室周りの縦断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 バイオセンサ測定装置
11 採取機構収納部
13 測定装置本体
14 バイオセンサカートッジ
21 開口部
22 収納部側弾性部材
25 穿刺機構
27 減圧機構収納室
28 減圧気密室
30 負圧ポンプ(減圧機構)
41 バイオセンサチップ
47 穿刺用器具
52 カートリッジ側弾性部材
58 連通流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に穿刺される穿刺用器具と、当該被検体に穿刺して得られた試料を採取するバイオセンサチップと、を一体に設けたバイオセンサカートリッジが装填され、採取された当該試料中の生体物質を測定するバイオセンサ測定装置であって、
測定装置本体と、
採取機構収納部と、
前記採取機構収納部に形成され、減圧機構を収納する減圧機構収納室と、
前記採取機構収納部に形成され、前記減圧機構に連通される減圧気密室と、を備え、
前記バイオセンサカートリッジを装填する収容部が前記減圧気密室内に設けられていることを特徴とするバイオセンサ測定装置。
【請求項2】
前記減圧気密室は、前記被検体に接触する開口部を有し、当該開口部が当該被検体に接触して前記減圧機構が駆動される第1段階と、当該減圧機構が駆動されてから前記バイオセンサカートリッジの前記穿刺用器具が前記被検体に穿刺される第2段階と、を通じて減圧状態を維持可能であることを特徴とする請求項1に記載したバイオセンサ測定装置。
【請求項3】
前記減圧気密室を画成する前記測定装置本体と前記採取機構収納部との接触面に気密性を保つシール部材が介在されていることを特徴とする請求項1又は2に記載したバイオセンサ測定装置。
【請求項4】
前記採取機構収納部は、ヒンジ部材を介して前記測定装置本体に開閉自在に連結されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載したバイオセンサ測定装置。
【請求項5】
前記減圧気密室内には、付勢ばねを介して移動自在で、前記バイオセンサカートリッジを装填する押圧部材と、
該押圧部材に対して移動自在に取り付けられた摺動ピンと、
前記測定装置本体に対して該摺動ピンを回動自在に連結するシリンダ付きロッドと、
穿刺釦に連結され、回動自在に支持されたロックアームと、を備えており、
前記測定装置本体が開けられることで、前記シリンダ付きロッドを介して前記押圧部材が付勢ばねに抗して移動されて前記ロックアームに係止され、
前記バイオセンサカートリッジの装填後、前記測定装置本体が閉められ、前記穿刺釦が押下されることで、前記押圧部材の係止状態が解除され、前記バイオセンサカートリッジと共に前記押圧部材が前記付勢ばねの反発力により穿刺位置まで移動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載したバイオセンサ測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−82631(P2009−82631A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259262(P2007−259262)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】