説明

バイオセンサ

【課題】 極めて簡単な製造工程により、バイオセンサの校正用データを自動認識させる新たな方法及びそのための識別標識の形成方法を提供する。
【解決手段】 片端部に出力用の端子112を備えたコネクタ装着部150を有するバイオセンサ100において、前記コネクタ装着部150に、予め導電性ペーストなどにより必要とされる数の光低透過性領域162を形成しておき、製造後に行う試用テストの後に不要な光低透過性領域162を切削などの方法により除去して、識別標識(ビットパターン)を構成する2種類のマーク161、光透過性のマーク161aと光低透過性のマーク161bを形成する。バイオセンサ100が測定器1に装着されると、マーク161によって構成されたビットパターンが発光素子31及び受光素子32からなる光学的手段によって検出され、その存在位置から必要な校正データが自動的に選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオセンサ、具体的には自動認識用マークを備えたバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酵素反応や抗原抗体反応を利用して血糖値などの生体内物質の測定を可能にしたバイオセンサが開発されている。かかるバイオセンサは、例えば使用する酵素のロット違いや製造ラインの違い、検出用電極の形成状態の違いあるいは酵素の塗布状態の違いなどによってセンサ感度が異なり、全ての製造ロット間においてセンサ感度が同じであるとは限らない。このセンサ感度の相違を校正するために、例えば、製造者は製造ロットごとにセンサ感度の調整を行った後、製品パッケージ毎に測定器のセンサ感度を調整するための校正用センサを同梱したり、製造ロット毎に識別番号を付与したりすることが行われている。そして、使用者は予め校正用センサを用いて測定器の校正を行ったり、識別番号の入力によって予め測定器に記憶されている校正用データを選択して測定器の校正を行ったりした後に測定を行っている。しかしながら、いずれの方法でも測定者自らが校正しなければならず、測定者に校正する手間を与えるだけでなく、校正を忘れると正確な測定値が得られないと言う問題があった。また、複数の対象項目を測定する測定器であれば、校正用センサの取り違え等によって正しく校正されないという問題もあった。
【0003】
このような問題点を解決すべく、例えば、特開2001−311711号公報(特許文献1)には、バイオセンサの出力電極に校正用の情報を識別するためのスリットを設け、このスリットの設置パターンにより校正用データを自動認識する方法が開示されている。
【0004】
特開平10−332626号公報(特許文献2)には、バイオセンサを構成する出力電極が形成された基板上に、当該出力電極とは別に校正用の電極を設け、出力電極と校正用の電極との間で形成させた閉回路の形成パターンにより選択される校正用データを自動認識する方法が開示されている。
【0005】
国際公開公報WO2003/76918号公報(特許文献3)には、バイオセンサを構成する出力電極が形成された基板の先端部に突出部を設けたり、基板の裏面に凸部を設けたりしたバイオセンサが開示されている。ここでは、これらの突出部や凸部の形成位置をセンサ装着用のコネクタに形成したコンデンサの容量変化を利用して認識した上で、この形成位置から校正用データを自動認識させたり、出力電極が形成された基板に出力電極とは別の電極を設け、この電極の形成位置を当該電極とセンサ装着用のコネクタとの間に形成したコンデンサの容量変化を利用して自動認識させている。
【0006】
さらに、特許文献3には、別な方法としてバイオセンサを構成する出力電極が形成された基板の先端部に貫通孔を形成し、この貫通孔の形成位置を、貫通孔を通過した板バネ状の位置検出電極の導通状態を利用して認識する方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−311711号公報
【特許文献2】特開平10−332626号公報
【特許文献3】国際公開公報WO2003/76918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電極にスリットを形成する方法では、スリットの形成に高度の技術が必要である。また、スリットの形成不良や電極の短絡を生じやすく、校正用データの識別不良を生じやすいということが考えられる。また、校正用の電極や容量変化のための突出部や凸部を形成する方法では、製造後に新しく電極や突出部を形成しなければならず、バイオセンサの製造工程が煩雑になるという問題がある。そして、バイオセンサの貫通孔に位置検出電極を通過させる方法では、貫通孔の位置決めに精度が要求される。
【0009】
さらに、校正用の電極を形成する方法ではコネクタ内に出力電極と校正用電極との間で閉回路を形成する対電極(コネクタピン)を、容量変化のために突出部等を形成する方法では校正用電極に対応するコンデンサ形成用の対電極を、貫通孔に位置検出電極を通過させる方法では位置検出電極を、それぞれコネクタに設ける必要がある。ところで、コネクタにこのような検出手段を設けるには技術的な制約が多く、バイオセンサのコネクタ装着部に設けることのできる対電極等の数に制約がある。このため、準備される校正用データの数が限られ、種々のバイオセンサに対応できないおそれがあるといったことが考えられた。
【0010】
本発明は上記の背景技術の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、比較的簡単な製造工程により、バイオセンサの校正用データを自動認識させる新たな方法、さらに好ましくは数多くの校正用データに対応可能な認識方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明では、光学的手段によりその存否を識別可能な1又は複数のマーク(コネクタ装着領域以外に形成された貫通孔を除く)からなる識別標識を形成することにしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、光学的手段、例えば光透過性や光反射性を利用して、その透過性の違いや反射性の違いによりその存否が識別可能なマークから識別標識を設けることにしている。そのために、塗布による光不透過膜や光反射膜の形成、あるいは、あらかじめ形成した光不透過膜や光反射膜の削除と言った至極簡単な方法により識別標識を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態であるバイオセンサの概略斜視図、図2は当該バイオセンサの分解斜視図である。なお、図2では基板110とカバー120の間にある接着剤層140等は省略して描かれている。もっとも、以下に示された実施形態は例示であって、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲及びこれと均等に含まれるすべての変更が本発明に含まれることが意図される。
【0014】
バイオセンサ100は、各図に示すように、絶縁性を有する板部材であるカバー120と光透過性を有する基板110の間で試料空間130を形成するようにカバー120と基板110が接着剤層140で貼り合わせられた構造をしている。バイオセンサ100は、その先端に試料空間130に繋がる試料導入口101を有する。また、試料空間130の後端には、試料空間130とバイオセンサ100の外部とが繋がった通気孔141がその両側に延設されている。基板110には、試料空間130に臨ませて一対の電極111が形成されている。そして、試料導入口101と反対側の基板端部には基板110が露出したコネクタ装着部150が設けられ、コネクタ装着部150には前記電極111と導体路113で電気的に接続された電圧取り出し用の端子(出力電極)112が露出して形成されている。電極111や導体路113、端子112は、導電性金属のスパッタリングや蒸着、導電性ペーストのスクリーン印刷等の方法により形成される。カバー120には、試料空間130に臨ませて試料(具体的には血液等の体液)と反応する試薬層121が設けられている。この一対の電極111と試薬層121によって測定部が構成されている。このようなバイオセンサ100としては、例えば国際公開公報WO2005/10591号公報に記載されたような板部材が折り曲げられて基板とカバーとが作製されたチップが例示される。もっとも、本発明のバイオセンサ100の構造は特許文献2に示された構造のものでなくても差し支えなく、片端部にコネクタ装着部150が設けられている構造のバイオセンサ100であれば本発明を適用できる。
【0015】
コネクタ装着部150には、2つの端子間112の間に標識形成領域160が設けられている。この標識形成領域160には、光学的手段によって検出できる1乃至2以上のマーク161、例えば図示するものでは3つの光透過性のマーク161aと1つの光低透過性のマーク161bが形成されている。これらのマーク161は、測定器1の校正に要求される校正用データを自動認識させるためのものである。そして、これらの2種類のマーク161a,161bの存在する位置、つまり、光透過性のある領域とそれと比べて光透過性が低い光低透過性の領域が2値で示される識別標識(ビットパターン)を構成し、この識別標識が校正に用いられる校正用データを決定する。
【0016】
各マーク161は光学的手段によりその存否が検出できればよい。光学的手段としては、例えば、上記のように光透過性を測定する手段のみならず、光反射性を測定する手段が例示される。光透過性を測定する場合には、(1)透過率が低い場合を「マーク有り」、透過率が高い場合を「マーク無し」と判断する方法、(2)透過率が高い場合を「マーク有り」、透過率が低い場合を「マーク無し」と判断する方法のいずれの方法でもよい。また、反射性を測定する場合には、(3)反射率が高い場合を「マーク有り」、透過率が高い場合を「マーク無し」と判断する方法、(4)反射率が低い場合を「マーク有り」、反射率が高い場合を「マーク無し」と判断する方法のいずれであってもよい。つまり、本発明では、光学特性の異なる2種類のマーク161が使用され、各マーク161における光透過率や光反射率が相対的に区別できるマーク161が使用される。
【0017】
図示したバイオセンサ100では光透過性の高い基板110が用いられており、例えば、インクやシール、金や銅、炭素などを含む導電性膜などの光低透性の低い物質、好ましくは光不透過性の物質の塗布等によって光透過性の低いマーク161bが形成されている。すなわち、光低透過性のマーク161bはこのような光透過性の低いインクなどの塗布等により形成され、光透過性のマーク161aはこれらの塗布等を行わないことにより形成される。従って、標識形成領域160に光を照射して、光が基板110を透過して光低透過性のマーク161bが存在しないと認識できれば、そこには光透過性のマーク161aが形成されていると判断できる。
【0018】
このようにして形成される2種類のマーク161からなる識別標識、すなわち光透過性のマーク161aと光低透過性のマーク161bの組み合わせからなるビットパターンはバイオセンサ100の製造ロット毎によって異なり、製造後の試用テストの後に決定される。識別標識の構成に必要とされるマーク161の最大数(光透過性のマーク161aと光低透過性のマーク161bの総和)は、予め測定器1に準備される校正用データの数によって異なる。例えば、測定器1に準備される校正用データが3種類であれば3種類のビットパターンが必要となるので、少なくとも2箇所のマーク161が必要となる。従って、この場合におけるマーク161の必要最大数は2となる。また、15の校正用データが準備される場合であれば15種類のビットパターンが必要となるので、4箇所のマーク161が最低限必要となる。従って、この場合におけるマーク161の必要最大数は4となる。
【0019】
各マーク161の大きさは、マーク161の存否を識別する光学的装置、すなわち受光素子32や発光素子31の感度、マーク161の光透過性や光反射性によって適宜決定することができる。例えば、幅0.1〜0.5mm、長さ0.3〜0.8mm程度の矩形のマーク161が例示される。また、その形状も矩形状のものだけでなく、円形や楕円形、正方形状のものなど、光学的手段によって検出可能であればその形状は問われない。
【0020】
マーク161のうち光低透過性のマーク161bは、製造後に行われる試用テストの後に、必要な位置にインクを塗布する、シールを貼付するなどの方法により形成される。また、製造時に予め必要最大数若しくはそれ以上のマーク形成用の光低透過性領域162を標識形成領域160に形成しておき、試用テストの後に不要な光低透過性領域162を除去して、光透過性のマーク161aを形成すると共に残した光低透過性領域162を光低透過性のマーク161bとする方法が好ましい。例えば、10個の校正用データが測定器1に準備される場合、10種類のビットパターンが必要となるので、最大4つの光低透過性のマーク161bがあれば十分である。従って、図3に示すように、バイオセンサ100の製造時に少なくとも4つのマーク形成用の光低透過性領域162を標識形成領域160に形成しておき(同図(a))、試用テストの結果、不要となる位置の光低透過性領域162を除去する(同図(b))。除去された後の光低透過性領域162が光透過性のマーク161a(図では破線で囲まれた領域として示される)として認識され、除去されずに残った光低透過性領域162が光低透過性のマーク161b(図では実線で囲まれた領域として示される)として認識される。
【0021】
光低透過性領域162を除去する方法として、例えば、シールからなる場合であればシールを剥がす方法が、インクからなる場合であればインクを化学的方法により消す方法や物理的な方法、例えばレーザー加工等により切削する方法や打ち抜き等による孔開け加工する方法が例示される。また、導電性膜からなる場合には、レーザー加工や打ち抜き等による孔開け加工などの物理的な方法で除去する方法が例示される。除去する方法は、インクの後塗布やシールの後貼り、電極の後形成に比べると、位置決めに高い精度が不要で、加工が非常に簡単に行えるという利点がある。そして、光透過性であると検出できる程度の比較的粗い加工精度でもよい。また、導電性膜を用いる方法は、端子112や導体路113と同一の材料を用いることができる。そして、導線性膜は導電性ペーストを印刷によって、端子112等の形成と同一の工程で形成することができるので、その製造が簡便に行えるという利点もある。さらに、光学的手段によりマーク161の存否を検出しているので、バイオセンサ100と非接触の状態で識別情報を検出できる。このため、特許文献3で指摘されているような測定回数の増加による接触不良に基づく誤認を防止できる。
【0022】
図4はこのバイオセンサ100が用いられる測定器1の構成を示すブロック図、図5はこのバイオセンサ100が用いられる測定器1を一部破断した概略構成図である。測定器1は、バイオセンサ100のコネクタ装着部150が挿入されバイオセンサ100の出力を取り出すコネクタ10と、校正用データが格納された記憶部20と、バイオセンサ100のマーク161の存否(ビットパターン)を検出する検出部30と、検出されたマーク161の存否から必要な校正用データを照合する照合部40と、照合された校正用データを利用してバイオセンサ100の出力から検査値を演算する演算部50及びその結果を表示する表示部60を備える。
【0023】
検出部30はバイオセンサ100に出力されたマーク161を検出する検出手段を備えている。この測定器1における検出手段は発光ダイオードなどの発光素子31とフォトダイオードなどの受光素子32を備える。この検出手段は、必要最小限とされるマーク161の数と同数の発光素子31を備える。つまり必要最大数が4つのマーク161が用いられる場合には、4つの発光素子31が備えられる。各発光素子31は、測定器1の筐体2内に配置された回路基板3上に、各マーク161の位置に対応して実装され、バイオセンサ100の下方からマーク161に向けて光を照射する。言い換えると、発光素子31とマーク161が1対1の関係になるように発光素子31が実装され、各発光素子31は対応する位置にある各マーク161を照射する。検出部30は、各発光素子31を順次一定の発光間隔Δtで発光させる。
【0024】
回路基板3には1つの受光素子32が受光面を上に向けて実装されている。発光素子31の上方には受光面を下方に向けた受光部33が配置されている。この受光部33と受光素子32は光ファイバーなどからなる導光路34によって光学的に接続されている。導光路34の受光素子32側には、回路基板3に圧入固定された漏光防止用のカバー35が備えられ、受光部33で受光した光が確実に受光素子32で受光される。従って、発光素子31から出射され光透過性のマーク161aを通過した光は、導光路34を通じて受光素子32に受光され、電気信号に変換される。
【0025】
バイオセンサ100がソケット10に挿入された後、検出部30は各発光素子31を発光間隔Δtで順次発光させる。受光素子32は基板110を透過した光を受光すると電気信号を生じるので、検出部30は光透過性のマーク161aが形成されているものとして電気信号ONを検出する。従って、各発光素子31が発光するタイミングと受光素子32が受光するタイミングを対応させることによってマーク161の存在位置(ビットパターン)を検出できる。
【0026】
図6はこの検出手段におけるマーク161の検出方法の一例を示す説明図である。この図はコネクタ10の挿入方向に配置した最大4つのマーク161が形成される場合を示し、同図(a)に示すように4つのマーク161のうち、位置A,位置B,位置Dの光低透過性領域162が除去され、位置A、位置B、位置Dにそれぞれ光透過性のマーク161aが形成されている。そして、位置Cには光低透過性領域162が除去されずに、光低透過性のマーク161bが形成されている。また、同図(b)に示すように、これら4つの各マーク161に対応して4つの発光素子A,B,C,Dが実装されている。
【0027】
ここにおいて、位置Aの発光素子Aが発光すると、受光素子32が受光するので検出部30は電気信号ONを検出する。そうすると検出部30は位置Aに光低透過性のマーク161bがなくて、光透過性のマーク161aがあると認識する。次に、位置Bの発光素子Bが発光すると、受光素子32が受光するので検出部30は電気信号ONを検出する。そうすると検出部30は位置Bにも光低透過性のマーク161bがなくて、光透過性のマーク161aがあると認識する。その次に、位置Cの発光素子Cが発光すると、位置Cには光不透過性のマーク161bが存在するので、検出部30は電気信号ONを検出できない。そうすると検出部30は位置Cには光低透過性のマーク161bがあって、光透過性のマーク161aがないと認識する。そして最後に位置Dの発光素子Dが発光すると、受光素子32が受光するので検出部30は電気信号ONを検出する。そうすると検出部30は位置Dに光低透過性のマーク161bがなくて、光透過性のマーク161aがあると認識する。この結果、検出部30は、Δtの時間間隔でON、ON、OFF、ONというビットパターンに対応した2値信号を検出し、この2値信号を照合部40に出力する。照合部40は記憶部20からこのビットパターンに対応した校正用データを取り出し、演算部50に出力する。演算部50は、この校正用データに基づいてバイオセンサ100から出力された出力電圧から測定値を求め、表示部60に出力する。このようにして、校正用データが自動認識され、表示部60には校正用データに基づいて校正された正確な測定値が表示される。
【0028】
同様にして、図示はしないが、2つの光透過性のマーク161aが位置Bと位置Dに形成されたバイオセンサ100では、上記と同様の考え方で、検知部30はOFF、ON、OFF、ONという2値信号を得て、この2値信号に対応した校正用データが用いられる。また、マーク161の位置は直列である必要もなく、例えば図7に示すような2×2などのマトリックス状に形成してもよい。このとき発光素子31は2×2のマトリックス状に配置される。
【0029】
上記の方法では、複数の発光素子31と1つの受光素子32を用いた場合について例示したが、各発光素子31に対して1つ1つの受光素子32を配置したり、アレイ状に受光素子32が配置され受光した位置情報を検出できる受光アレイを用いたりすることも考えられる。この場合には、発光素子31を一定の時間間隔Δtで順次発光させる必要はなく、すべての発光素子31を同時に発光させることができる。さらに、必要とされる最大数のマーク161に対応して複数の受光素子32を配置し、それらと一つの発光素子31とによってビットパターンを検出してもよい。しかしながら、光透過性のマーク161aと光低透過性のマーク161bが近接した場合に、発光素子31を同時に発光させると、光低透過性のマーク161bに対応した受光素子32が、隣接する光透過性のマーク161aを透過した光を受光して光透過性のマーク161aがあると誤認するおそれがある。そこで、受光素子32がONとして検出されるオフセット値を設定するなど、誤認識を避けるための防止手段を講ずる必要がある。この誤認防止手段として、相互に干渉する位置において、発光素子31の発光波長とそれと対応する受光素子32の受光波長を異ならせる方法も例示できる。
【0030】
図8は本発明のさらに別な実施形態であるバイオセンサ100を一部省略した平面図である。このバイオセンサ100もマーク161の光透過性を利用したものであるが、このバイオセンサ100では、標識形成領域160全体が導電性膜やインクの塗布、シールの貼付等により光低透過性領域162となっている。そして、この光低透過性領域162の所定位置(実線で示された囲み枠)が除去されて3つの光透過性のマーク161aが形成され、図の破線の枠163で囲まれた領域が除去されずに残り、光低透過性のマーク161bとなっている。このように光低透過性となるように標識形成領域160を形成した上で、必要な領域を削除して光透過性のマーク161aを形成してもよい。このとき、図示したように、予め形成した標識形成領域160に除去領域の目安を示す除去線164を設けておくとよい。
【0031】
図9は本発明のさらに別な実施形態であるバイオセンサ100の背面図である。このバイオセンサ100では、標識形成領域160は基板110裏面のコネクタ装着部150以外の領域に形成されている。このバイオセンサ100では、識別情報(ビットパターン)を構成する各マーク161は光反射性のマーク161cと光低反射性のマーク161dのいずれかであり、図に示すものでは、3つの光反射性のマーク161cと一つの光低反射性のマーク161dが形成されている。このバイオセンサ100においては、反射率が高い光反射性のマーク161cを識別標識有りとして検知できる。光反射性のマーク161cは例えば光反射性を有する物質の塗布やシールの貼付により形成され、係る物質の塗布やシールの貼付なき領域は光低反射性のマーク161dがないものとして認識される。このバイオセンサ100は、例えば図10に示すように、回路基板3上に発光素子31と受光素子32が実装された測定器1が用いられる。
【0032】
カバー120には光透過性が低い材質のものが使用されることが多く、また、カバー120と基板110の間には導通路113が形成されており高い光透過性を望むことができない。また、基板110も光透過性が低い場合もある。このように光透過性を望むことができない場合には、光反射率を利用してマーク161を認識させることもできる。特に、図9に示すように、コネクタ装着部150以外の領域にマーク161を形成する場合は、コネクタ装着部150に形成する場合に比べて広い領域を利用できる。この結果、マーク161の形成数を増やすことができ、必要とする校正データの数、その他バイオセンサ100が保有できる情報量を多くすることができる。これによって、よりきめ細かな校正用データを利用することや多数の種類のバイオセンサに対応が容易となる。また、コネクタ10外に発光素子31や受光素子32を配置できるので、これらの配置上の制約も少なくなる。光反射性を利用する場合においても、図3と同様に、製造時に予め最低限必要とされる数若しくはそれ以上の光反射性の領域を標識形成領域160に形成しておき、不要な箇所の光反射性の領域を削除して光反射性のマーク161cを設けたり、削除せずに残して光低反射性のマーク161dを設けたりすることができる。また、図11に示すように、光反射性の領域である標識形成領域160を形成しておき、不要な領域を削除して光低反射性のマーク161dを形成し、除去せずに残した領域を光反射性のマーク161cとすることもできる。もちろん、コネクタ装着部150にこのような光反射性を利用したマーク161を形成してもよい。
【0033】
また、マーク161の形成には光吸収性を利用することもできる。つまり、光吸収性物質を塗布して光低反射性のマーク161dを形成したり、予め塗布した光吸収性膜を除去して光反射性のマーク161cとすることもできる。こうして、光反射性のマーク161cと光低反射性のマーク161dとから識別標識(ビットパターン)を構成してもよい。
【0034】
本発明において、後に光低透過性のマーク161bとなる光低透過性領域162(光反射性のマーク161cとなる光反射性領域)となるの数は必要とする最大数、つまり必要とするビットパターンを構成するのに必要な数のマーク161が最小限必要であるが、それ以上の光低透過性領域162(光低透過性のマーク161b)を形成しておいても差し支えない。例えば、15のビットパターンが必要とされる場合ではマーク161の必要数は4であるが、予めそれ以上の数、例えば図12(a)に示すように6つの光低透過性のマーク161bを形成してもよい。そして、図12(b)に示すように6つの光低透過性領域162のうち右側にある4つの光低透過性領域162を使ってビットパターンを構成してもよいし、図12(c)に示すように6つの光低透過性領域162のうち左端にある2つの光低透過性領域162を削除して、残る4つの光低透過性領域162を使ってビットパターンを構成することもできる。測定器1が検出できない光低透過性領域162や光透過性の領域は、ビットパターンの認識に影響を与えないからである。
【0035】
このように、本発明においては光学的手段を用いて検出できるマーク161、すなわち、光透過性又は光反射性の相違によりその存否を検出できるマーク161を形成できればよい。従って、上記したように、マーク161の有無によりその位置や数(ビットパターン)を検出するだけでなく、光透過性や光反射性の異なる2種類のインクやシールを用いてマーク161を形成し、両者の光透過率や光反射率の相違を判断して、マーク161の位置や数、つまりマーク161の存否を検出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態であるバイオセンサの概略斜視図である。
【図2】図1のバイオセンサの分解斜視図である。
【図3】図1のバイオセンサにおける識別標識の形成方法を示す説明図であって、(a)は識別標識を形成する前の状態を示す図、(b)は形成した後の状態を示す図である。
【図4】図1のバイオセンサが用いられる測定器の構成を示すブロック図である。
【図5】図1のバイオセンサが用いられる測定器を一部破断した概略構成図である。
【図6】識別標識の形成位置の検出方法を示す説明図であって、(a)はバイオセンサの一部を省略した平面図、(b)は発光素子の発光タイミングと受光素子の受光タイミングを示す図である。
【図7】本発明の別な実施形態であるバイオセンサの一部を省略した平面図である。
【図8】本発明のさらに別な実施形態であるバイオセンサの一部を省略した平面図である。
【図9】本発明のさらに別な実施形態であるバイオセンサの背面図である。
【図10】図9のバイオセンサが用いられる測定器を一部破断した概略構成図である。
【図11】本発明のさらに別な実施形態であるバイオセンサの背面図である。
【図12】本発明のさらに別な実施形態であるバイオセンサの識別標識の形成方法を示す説明図であって、(a)は識別標識を形成する前の光低透過性領域を示す図、(b)(c)はそれぞれ試用テスト後に形成された識別標識の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 測定器
2 筐体
3 回路基板
10 コネクタ
30 検出部
31 発光素子
32 受光素子
40 照合部
50 演算部
100 バイオセンサ
110 基板
112 端子
113 導体路
120 カバー
150 コネクタ装着部
160 標識形成領域
161 識別標識を構成するマーク
161a 光透過性のマーク
161b 光低透過性のマーク
162 光低透過性領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片端部に出力電極が形成されたコネクタ装着領域と識別標識を有するバイオセンサであって、
前記識別標識は光学的手段によりその存否を識別可能な1又は複数のマーク(コネクタ装着領域以外に形成された貫通孔を除く)からなることを特徴とするバイオセンサ。
【請求項2】
前記光学的手段は光透過性又は光反射性を検出する手段からなり、マークの光透過性や光反射性の差異により識別標識の存否が認識されうることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項3】
前記識別標識は前記コネクタ装着領域に備えられたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオセンサ。
【請求項4】
前記識別標識は前記コネクタ装着領域以外に備えられたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオセンサ。
【請求項5】
前記マークは光低透過性物質又は光反射性物質の塗布や印刷、光低透過性又は光反射性シールの貼付、塗布又は印刷された光低透過性物質又は光反射性物質の除去、コネクタ装着領域の孔開けの何れかにより備えられたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のバイオセンサ。
【請求項6】
前記マークは前記コネクタ装着領域に形成された出力電極と同一の素材である導電性膜からなることを特徴とする請求項5に記載のバイオセンサ。
【請求項7】
片端部に出力電極が形成されたコネクタ装着領域を有するバイオセンサへの識別標識の形成方法であって、
バイオセンサの露出面の一部領域に光低透過領域又は光反射領域を形成する工程と、
当該光低透過領域又は光反射領域の所定領域を除去する工程とを有することを特徴とする識別標識の形成方法。
【請求項8】
片端部に出力電極が形成されたコネクタ装着領域を有するバイオセンサへの識別標識の形成方法であって、
バイオセンサの露出面に識別に必要な最大数以上のマークとなる光低透過領域又は光反射領域を形成する工程と、
当該光低透過領域又は光反射領域のうち、不要な光低透過領域又は光反射領域を除去する工程とを有することを特徴とする識別標識の形成方法。
【請求項9】
前記除去方法は、切削、孔開けの何れかによる方法であることを特徴とする請求項7又は8に記載の識別標識の形成方法。
【請求項10】
前記光低透過領域又は光反射領域を前記コネクタ装着領域に形成することを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の識別標識の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−115516(P2009−115516A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286777(P2007−286777)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】