説明

バイオディーゼル燃料の製造装置とバイオディーゼル燃料の製造方法

【課題】バイオマスを利用して製造されるバイオ燃料の一種であるバイオディーゼル燃料の製造装置と、バイオディーゼル燃料の製造方法に関し、所望量のバイオディーゼル燃料を得るために、ほぼ同量の容積の反応槽を必要とすることもなく、反応槽を小型化することができ、反応物とアルカリ触媒の効率的な分離を実現でき、また、反応のための処理効率を著しく向上させることができるバイオディーゼル燃料の製造方法と製造装置を提供することを課題とする
【解決手段】油脂類とアルコール類とを固体アルカリ触媒の存在下でマイクロ波を照射して反応させるための反応槽と、該反応槽で生成する反応生成物と未反応のアルコール類を分離するための分離器とを具備し、前記油脂類とアルコール類との反応槽内での反応と、前記反応槽内で生成した反応生成物と未反応のアルコール類の分離器での分離とが連続的に行われるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを利用して製造されるバイオ燃料の一種であるバイオディーゼル燃料の製造装置と、バイオディーゼル燃料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭や石油などの化石燃料の大量消費によって発生する二酸化炭素が一因とされている地球温暖化問題、当該化石燃料の枯渇化問題等の対策を目的として、当該化石燃料を代替する燃料の利用への関心が、近年高まっている。
【0003】
特に、バイオ燃料利用への関心が高まっている。バイオ燃料は、例えば植物のライフサイクルの中で、太陽エネルギーにより二酸化炭素と水から光合成された物質から得ることができる。当該バイオ燃料が燃焼して発生する二酸化炭素は、元来大気中に存在していたものを光合成によって植物体に取り入れたものであるため、それが燃焼によって大気中に放出されたとしても、地表圏上の二酸化炭素を増大させることがなく、カーボンニュートラルな燃料といわれている。
【0004】
バイオ燃料としては、具体的には、バイオマスの嫌気性分解法などによって生成することができるバイオガス(主たる成分がメタン)、バイオマスを微生物によってアルコール発酵させることによって生成することができるバイオマスエタノール、油脂類を反応させて合成するバイオディーゼル燃料(BDF)などが挙げられる。
【0005】
これらの中で、バイオディーゼル燃料(BDF)は、植物油などのバイオマスのトリグリセリドをエステル化して得られる、脂肪酸アルキルエステル組成を有する燃料である。植物油の多くは動粘度や引火点が高いために、このままでは自動車燃料として利用できない。そこで、油脂類の主成分であるトリグリセリドをアルコール等でエステル交換反応させて脂肪酸アルキルエステルとし、動粘度や引火点を低下させたものが利用できることとなる。
【0006】
特にメチルエステル化した、脂肪酸メチルエステルが一般的であり、ディーゼルエンジンの燃料として重要な軽油を代替する燃料として期待されている。
【0007】
このようなバイオディーゼル燃料の製造に関する技術として、従来では、たとえば下記特許文献1のような技術が特許出願されている。この特許文献1に係る発明は、当該特許文献1の請求項1にも記載されているように、「アルカリ触媒を使用し、原料油を低級アルコールでエステル交換反応して脂肪酸エステルを生成する工程を含むバイオディーゼル燃料の製造方法において、上記アルカリ触媒によってエステル交換反応された反応混合液に所定量の水で調節した希硫酸を加えて反応混合液を中和し、中和した反応混合液から硫酸塩結晶を濾別して、該濾液を蒸留し、比重分離操作により高比重のグリセリン成分を分離する工程を含むことを特徴とする」ものである。
【0008】
しかし、この特許文献1のようなアルカリ触媒を使用するバイオディーゼル燃料の製造技術は反応に長時間を要し、かつ、大量に使用するアルカリ触媒の分離(希硫酸水溶液によるアルカリの中和処理とその際に発生する沈殿物のろ過)と、排水の処理が必要となる等の問題点がある。具体的には、反応に1〜8時間程度の時間を要し、アルカリの中和処理や排水処理等の後処理には、2日程度の時間を要していた。
【0009】
そこで、このような問題点を解決するために、下記特許文献2のような特許出願がなされている。この特許文献2に係る発明は、当該特許文献2の請求項1にも記載されているように、「マイクロ波照射によって誘発される、植物油または動物油脂の、アルコールによるエステル交換/エステル化反応によるバイオディーゼルの生産法であって、脂肪酸モノアルキルエステルの生産が、植物油、動物油脂、または遊離脂肪酸の、アルコールによるエステル交換/エステル化によって実行され、かつ、反応は、活発に攪拌しながら、油/油脂/脂肪酸およびアルコール中における触媒の存在下に、反応腔においてマイクロ波加熱によって実行される」ことを特徴とするものである。
【0010】
この特許文献2に係る発明によって、上記特許文献1のようなアルカリ触媒を使用するバイオディーゼル燃料の製造技術に比べると、反応時間が著しく短縮化されるという効果が奏される。
【0011】
しかしながら、この特許文献2に記載された技術は、当該特許文献2の明細書の段落[0009]にも記載されているように、腔(反応槽)がバッチで使用されるものであるので、所望量のバイオディーゼル燃料を得るためには、ほぼ同量の容積の反応槽が必要とされ、反応槽の内容積が大きくなる傾向があった。さらに、[0010]にも記載されているように、未精製混合物を熱水で洗浄し、その後、50℃で真空ポンプの力を借りて、水分が完全に除去されるまで水分を完全に減圧蒸留し、乾燥するという後処理が必要となっていた。また、反応のための処理効率も決して良好なものとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−350630号公報
【特許文献2】特開2007−277374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、所望量のバイオディーゼル燃料を得るために、ほぼ同量の容積の反応槽を必要とすることもなく、反応槽を小型化することができ、反応物とアルカリ触媒の効率的な分離を実現でき、また、反応のための処理効率を著しく向上させることができるバイオディーゼル燃料の製造方法と製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、このような課題を解決するために、油脂類とアルコール類とを固体アルカリ触媒の存在下でマイクロ波を照射して反応させるための反応槽と、該反応槽で生成する反応生成物と未反応のアルコール類を分離するための分離器とを具備し、前記油脂類とアルコール類との反応槽内での反応と、前記反応槽内で生成した反応生成物と未反応のアルコール類の分離器での分離とが連続的に行われるように構成されていることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造装置を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、油脂類とアルコール類とを、固体アルカリ触媒の存在下でマイクロ波を照射して反応槽内で反応させ、次に、該反応槽で生成する反応生成物から未反応のアルコール類を分離器で分離し、前記油脂類とアルコール類との反応槽内での反応と、該反応槽内で生成した反応生成物と未反応のアルコール類の分離とを連続的に行うことを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法を提供するものである。
【0016】
分離された未反応のアルコール類を反応槽若しくはその前段側に返送する返送ラインをさらに具備させることも可能である。さらに、反応生成物と未反応のアルコール類を、反応槽から分離器へ移送すべく、該反応槽と分離器間にサンフォン管を介装することも可能である。さらに、反応槽内の固体アルカリ触媒が分離器側へ不用意に移送されるのを阻止すべく、濾過処理するためのフィルターを、反応槽と分離器間に設けることも可能である。
【0017】
さらに、分離器内における反応生成物からの未反応のアルコール類の分離を、マイクロ波照射による加熱によって行うように構成することも可能である。さらに、分離器内における反応生成物からの未反応のアルコール類の分離を、マイクロ波照射による加熱によって行うことも可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上述のように、油脂類とアルコール類とを固体アルカリ触媒存在下でマイクロ波照射処理するものであるため、油脂類とアルコール類との反応時間が著しく短縮化されるという効果がある。
また、反応の際に使用した固体アルカリ触媒は固体であるため、フィルター、ろ過膜等によるろ過処理によって液体状の反応生成物や未反応アルコール類と固体アルカリ触媒とを容易に分離することが可能となるために、別途、酸を用いた中和処理を実施する必要がない。その結果、中和時に生成する反応生成物の分離や排水など、後処理なども不要になるという効果がある。
【0019】
さらに、反応槽内で生成した反応生成物と未反応のアルコール類の分離器での分離とを連続的に行うものであるため、移送速度に応じて反応槽内における反応生成物と未反応のアルコール類の滞留量を制御することが可能となり、反応槽の容積を小型化することができるという効果を生じる。
【0020】
また、固体アルカリ触媒存在下で油脂類とアルコール類とを反応させた後、分離器内で脂肪酸アルキルエステル(バイオディーゼル燃料)とグリセリンとの混合物と、未反応アルコール類とに分離するので、油脂類とアルコール類との反応主生成物であるバイオディーゼル燃料と反応副生成物としてのグリセリンとの混合物から、未反応のアルコール類が効果的に分離されるため、後段におけるバイオディーゼル燃料の精製をより好適に行うことが可能となるという効果がある。
【0021】
さらに、分離された未反応のアルコール類を反応槽若しくはその前段側に返送して再利用する場合には、アルコール類を繰り返して使用することができる。そのため、反応槽への油脂類とアルコール類との連続的な供給と再利用がより効率的に行われるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図。
【図2】同製造装置における反応槽と分離器の部分を示す概略正面図。
【図3】他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図。
【図4】他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図。
【図5】他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図。
【図6】他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図。
【図7】他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図。
【図8】他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図。
【図9】他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
本発明のバイオディーゼル燃料の製造装置は、上述のように、油脂類とアルコール類とを固体アルカリ触媒の存在下でマイクロ波を照射して反応させるための反応槽と、該反応槽で生成する反応生成物から未反応のアルコール類を分離するための分離器とを具備し、前記油脂類とアルコール類との反応槽内での反応と、前記反応槽内で生成した反応生成物と未反応のアルコールの分離とが連続的に行われるように構成されてなるものである。
【0025】
ここで、反応槽で生成する反応生成物には、目的物たるバイオディーゼル燃料の反応主生成物と、グリセリン等の反応副生成物が含まれる。
【0026】
また本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法は、上述のように、油脂類とアルコール類とを固体アルカリ触媒の存在下でマイクロ波を照射して反応槽内で反応させ、次に、該反応槽で生成する反応生成物と未反応のアルコール類を分離器で分離し、前記油脂類とアルコール類との反応槽内での反応と、該反応槽内で生成した反応生成物と未反応のアルコール類の分離とを連続的に行うものである。
【0027】
油脂類としては、たとえばベニバナ油、桐油(シナアブラギリ,アブラギリなどの桐科植物種子から採取できる。)、ヒマワリ油、綿実油、トウモロコシ油、菜種油、大豆油、胡麻油、オリーブ油、ラッカセイ油、ヒマシ油、パーム油、カカオ油、ヤシ油、ナンヨウアブラギリ(ヤトロファ)、モリンガ等の植物油脂、或いは魚油、牛脂、豚油、鯨油等の動物油脂を使用することができる。
【0028】
油脂類のうち、ベニバナ油、桐油、ヒマワリ油、綿実油、トウモロコシ油、菜種油、大豆油、胡麻油、オリーブ油、ラッカセイ油、ヒマシ油等の植物油脂、或いは魚油などは常温で液体であり、一方、パーム油、カカオ油、ヤシ油等の植物油脂、或いは牛脂、豚油、鯨油等の動物性油脂は常温で固体である。バイオディーゼル燃料製造の際には、常温で液体のものが取扱は容易であるという利点を有している。
【0029】
さらに、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、パーム油などは、世界的にも我が国においても生産量が多く入手が容易である。さらに、食糧としての利用を制限しないという観点からは、従来から食糧としては用いられない桐油、ヒマワリ油、綿実油、ヒマシ油、モリンガ油などを利用することができる。
【0030】
これらの油脂としては、未使用のもの(バージン油)を使用できる他、使用された後に回収された使用済みの廃油を使用することも可能である。また、植物油脂については、各油の搾油原料である各種種子および果実の搾油粕から廃棄物利用として回収した油を使用することも可能である。
【0031】
この油脂類に、エステル交換用のアルコールを混合する。アルコールの種類は特に限定されず、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール等を使用することが可能であるが、マイクロ波を吸収し易いという利点を有する観点からは、メタノール、エタノール等の低級アルコールを使用することが好ましく、とりわけメタノールを使用することが好ましい。
【0032】
要は、得られた脂肪酸アルキルエステルが、動粘度、引火点、セタン価などのディーゼル燃料としての規格を満足したものであればエステル交換用のアルコールは任意に選択することができるのである。
【0033】
このような油脂類とアルコール類の混合比率も特に限定されないが、油脂1モルに対してアルコール類が6〜24モル程度であることが好ましい。
【0034】
さらに、油脂類とアルコール類とは、反応槽内で固体アルカリ触媒の存在下で反応させるが、その固体アルカリ触媒の種類も特に限定されるものではなく、たとえばカルシウムの酸化物又は水酸化物のようなものを使用することができる。また、粒状、粉状等、その性状は問うものではなく、要は固体のアルカリ触媒が用いられていればよいのである。
【0035】
また、固体アルカリ触媒は、そのまま反応槽内に添加される他、たとえば多孔質状の支持体を反応槽の上下に配置し、その上下の支持体の間に多数の粒状の固体アルカリ触媒を充填することによって、反応槽内に収容することも可能である。その場合、反応槽としては、たとえば円筒状のものを使用することができ、全体として固定床式カラムのごとく構成される。このように反応槽を筒体形状にすると、プラグフローで処理することにより反応槽の形状をよりコンパクトに設計することが可能となる。
【0036】
マイクロ波照射時間は特に限定されるものではないが、5分以下とすることが望ましい。長時間のマイクロ波照射を行った場合は、生成物が分解あるいは劣化するおそれがあるからである。また、照射するマイクロ波の強度は装置の出力によって制御することができるが、出力も特に限定されるものではない。たとえば100〜1500W程度の出力のマイクロ波を使用することができ、より好ましくは100〜300W程度の出力のマイクロ波を使用することができる。
【0037】
なお、実用的に使用できるマイクロ波の周波数は電波法で決められている(IMS周波数:933.92MHz,2.45GHz,5.8GHz,24.125GHz)。本発明ではこれらのどの周波数のマイクロ波も使用することができる。より好ましくは、当該マイクロ波発生装置のコストや汎用性の観点から、2.45GHzの周波数を利用することができる。
【0038】
さらに、油脂類とアルコール類とを反応槽へ供給して反応させて反応主生成物の脂肪酸アルキルエステル(バイオディーゼル燃料)と反応副生成物のグリセリンとの混合物とし、続いて該混合物を分離器に移送し、該混合物から未反応のアルコール類を分離し、前記反応槽若しくはその前段側に返送して再利用することも可能である。
なお、分離器で反応生成物から未反応のアルコール類を分離する手段としては、各成分の沸点の差を利用して最も沸点の低いアルコール類を分離する蒸留による手段が主として採用されるが、このような反応生成物と未反応のアルコール類を分離する手段としては、蒸留以外の手段を採用することも可能である。
さらに該蒸留を行うためのマイクロ波加熱照射処理を行うことも可能である。
【0039】
この場合、反応槽と分離器とは上下に配置することができ、たとえばサイフォン管を介して反応槽と分離器を接続することが可能である。このようなサイフォン管を介して接続することで、反応槽へ供給される油脂類とアルコール類とが、サイフォン管の頂部の高さよりも高い位置となるまでの間にマイクロ波が照射され、該油脂類とアルコール類とが反応して反応主生成物のバイオディーゼル燃料と、反応副生成物のグリセリンとになる。次に、油脂類とアルコール類との混合物がさらに供給されて反応槽内部の液体の全容量がサンフォン管の頂部を超えたときに、該反応槽内の混合液が前記サイフォン管を経て分離器へ移送されることとなる。
【0040】
以下、本発明のより具体的な実施形態について、図面に従って説明する。
【0041】
(実施形態1)
図1は、一実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図を示す。本実施形態のバイオディーゼル燃料の製造装置は、原液としての油脂類貯留槽1と、アルコール類貯留槽2と、ミキサー3と、反応槽4と、分離器5と、回収槽6とを具備して構成されている。
【0042】
油脂類貯留槽1は、バイオディーゼル燃料の製造原料となる原液である油脂類を貯留するための槽である。この油脂類としては、たとえば、家庭や施設等で使用済みとなった菜種油(サラダオイル)のような廃油が用いられる。
【0043】
アルコール類貯留槽2は、前記油脂類と反応させるためのアルコール類を貯留するための槽である。このアルコール類としては、たとえばメタノールのようなものが用いられる。
【0044】
ミキサー3は、前記油脂類貯留槽1から供給される油脂類と、前記アルコール類貯留槽2から供給されるアルコール類とを混合するためのものである。このミキサー3としては、たとえばラインミキサーのような簡易な構成のものが用いられる。
【0045】
反応槽4は、油脂類とアルコール類とのエステル交換反応を行うための槽である。この反応槽4へは、前記ミキサー3で混合された油脂類とアルコール類との混合液が供給されることとなる。予めミキサー3で混合された混合液が反応槽4へ供給されるので、反応槽4内には、攪拌機等の攪拌手段を特に設ける必要はない。なお、図1では図示していないが、反応槽4には、固体アルカリ触媒が収容されている。固体アルカリ触媒としては、たとえば、粒状あるいは粉末状の水酸化カルシウムのようなものが用いられる。
【0046】
このような粒状あるいは粉末状の固体アルカリ触媒は、そのまま反応槽内に添加して収容されるが、これに限らず、たとえば多孔質状の支持体を反応槽の上下に配置し、その上下の支持体の間に多数の粒状の固体アルカリ触媒を充填することによって反応槽内に収容させることも可能である。
【0047】
分離器5は、反応槽4へ供給された油脂類とアルコール類との反応によって生成した反応主生成物である脂肪酸アルキルエステル(バイオディーゼル燃料)と反応副生成物のグリセリンとの混合物から、未反応のアルコールを蒸留して分離するためのものである。図1においては、反応槽4と分離器5は前段及び後段に配置されて図示されているが、実際には、図2に示すような上下の位置関係に配置されている。すなわち、反応槽4が上側に配置され、分離器5が下側に配置されている。
【0048】
そして、この反応槽4と分離器5とは、図1に示すようにケーシング7内に収納され、該ケーシング7にマイクロ波発振器8が設けられることで、マイクロ波が反応槽4及び分離器5内に照射されるように構成されている。なお、ケーシング7は、図1の矢印線で示すように、マイクロ波の反射率の高い素材である金属製のものが好ましく、反応槽4や分離器5は、該反応槽4及び分離器5内を通過する混合液にマイクロ波を到達させるために、マイクロ波の透過率の高い素材であるガラス製であることが好ましい。なお、ケーシング7、反応槽4、分離器5等のそれぞれの材質は前記マイクロ波の吸収特性を満たすことが条件であって、材質や形状を問うものではない。
【0049】
分離器5で分離された未反応のアルコール類は、該分離器5から返送ライン9を介して反応槽4の上流側に配置されたミキサー3へ返送されるように構成されている。返送ライン9の途中部分においては、コンデンサー10が設けられ、返送されるアルコール類は、該コンデンサー10で凝縮されて液状化された状態でミキサー3へ返送される。
【0050】
反応槽4と分離器5とは、図2に示すように筒部11を介して接続されている。また反応槽4の底部4aには、連結部分としてのサイフォン管12が接続されている。より具体的には、サイフォン管12の入口部12aが反応槽4の底部4aに接続され、該サイフォン管12の出口部12bが、前記筒部11を経て分離器5内に臨出するように設けられている。また反応槽4の底部4aとサイフォン管12の入口部12aとの境界部分にはフィルター16が設けられている。
サイフォン管12の頂部12cの高さは、反応槽4の高さの範囲内に収まるように設定されており、該反応槽4へ供給される油脂類とアルコール類との混合液が、サイフォン管12の頂部12cの高さよりも高い位置となるような深さに反応槽4内で貯留されたときに、該反応槽4内の混合液が、前記フィルター16を介して前記サイフォン管12の入口部12a及び頂部12cを経て出口部12bから分離器5へ供給されるように構成されている。
【0051】
さらに、反応槽4には、前記油脂類とアルコール類との混合液の入口部分となる接続管13が設けられている。また、分離器5には、返送ライン9への出口部分となる接続管14と、回収槽6への出口部分となる接続管15が設けられている。
【0052】
回収槽6は、製造された反応主生成物であるバイオディーゼル燃料と反応副生成物であるグリセリンとの混合物を回収するための槽である。図1では図示はしていないが、当該バイオディーゼル燃料とグリセリンとは沈殿分離等の一般的な技術によって容易に分離することによってバイオディーゼル燃料を精製することができる。
【0053】
次に、上記のような装置を用いて、バイオディーゼル燃料を製造する方法の実施形態について説明する。
【0054】
先ず、油脂類貯留槽1から、バイオディーゼル燃料の製造原料となる原液である油脂類をミキサー3へ供給するとともに、アルコール類貯留槽2からアルコール類をミキサー3へ供給する。これらの油脂類やアルコール類の供給は、図1では図示しないが、たとえば、ポンプによって連続的に行われる。
【0055】
そして、ミキサー3で油脂類とアルコール類が混合される。混合された油脂類とアルコール類との混合液は反応槽4へ供給され、反応槽4内で貯留される。このように混合液が反応槽4内で貯留される過程において、ケーシング7に設けられたマイクロ波発振器8を作動させ、マイクロ波による照射処理を行う。このようにマイクロ波発振器8を作動させることによって、混合液が反応槽4内で固体アルカリ触媒と接触して存在する時間内に、該混合液に対してマイクロ波が照射されることとなる。
【0056】
このようにマイクロ波による照射処理が行われた状態で、反応槽4へ供給された油脂類とアルコール類は、該反応槽4内で反応し、油脂のアルコールエステルが得られる。本実施形態では、油脂として植物油である菜種油を用い、アルコールとしてメタノールを用いている。従って、菜種油の脂肪酸メチルエステルが生成されることとなる。
【0057】
この場合において、マイクロ波による照射処理がなされているので、反応槽4内の菜種油とメタノールは、きわめて短時間に反応し、菜種油の主成分であるトリグリセリド(脂肪酸)のメチルエステルがすみやかに生成されることとなる。
【0058】
そして、混合液が反応槽4内で所定の深さまで貯留されると、すなわち、サイフォン管12の頂部12cの高さよりも高い位置となるような深さまで混合液が反応槽4内で貯留されると、該反応槽4内の混合液は、フィルター16を介してサイフォン管12の入口部12a及び頂部12cを経て出口部12bから分離器5へ供給されることとなる。この場合において、反応槽4の底部4aとサイフォン管12の入口部12aとの境界部分にはフィルター16が設けられているため、反応槽4内に存在する固体アルカリ触媒は混合液に随伴してサイフォン管に不用意に移行することがない。なお、移行した混合液は、上記のように菜種油とメタノールとの反応によって得られた反応主生成物であるトリグリセリド(脂肪酸)のメチルエステルと、未反応のメタノールと、反応副生成物のグリセリンとからなる。
【0059】
このようにして混合液は、上記のように分離器5へ供給され、未反応のメタノールが蒸留されて、脂肪酸メチルエステルと分離されることとなる。この場合、分離器5に対しては、マイクロ波による照射処理がなされる。この処理を行うことでメタノールがマイクロ波を吸収して急速に発熱し、メタノールの蒸留、及びメタノールと脂肪酸メチルエステルとの分離がきわめて短時間に行われることとなる。
【0060】
この場合、分離器5と反応槽4の双方がケーシング7内に収容されており、そのケーシング7にマイクロ波発振器8が設けられているため、上記のように油脂類とアルコール類との混合液が反応槽4内に貯留されている間は、マイクロ波発振器8の作動により照射されるマイクロ波のエネルギーは、その反応槽4内での油脂類とアルコール類との反応の促進に利用され、上記のように混合液が反応槽4内で所定の深さまで貯留され、反応槽4内の混合液が、サイフォン管12の入口部12a及び頂部12cを経て出口部12bから分離器5へ供給された後は、マイクロ波のエネルギーは、分離器5内でのアルコール類の蒸留に利用されることとなる。
【0061】
すなわち、ケーシング7に設けられたマイクロ波発振器8の作動により照射されるマイクロ波のエネルギーが、反応槽4内での油脂類とアルコール類との反応と、分離器5内でのアルコール類の蒸留との双方にその工程に応じて効果的に利用されるので、マイクロ波による処理が有効に活用されることとなるのである。
【0062】
蒸留により分離されたメタノールは、分離器5から返送ライン9を介して反応槽4の上流側であるミキサー3へ返送される。この場合、返送ライン9の途中部分においては、上記のようにコンデンサー10が設けられているので、返送されるアルコール類は、該コンデンサー10で凝縮された状態で効率的にミキサー3へ返送されることとなる。これによって、返送されたメタノールは、油脂類貯留槽1から供給される原料としての植物油と混合し、再利用されることとなる。
【0063】
一方、分離器5でメタノールと分離された生成物である脂肪酸メチルエステルは、回収槽6へ供給され、バイオディーゼル燃料として利用されることとなる。
【0064】
本実施形態では、上述のように、バイオディーゼル燃料の製造原料となる原液である植物油とメタノールを、原液槽1からポンプによって連続的に反応槽4へ供給し、反応槽4においては、マイクロ波発振器8を作動させてマイクロ波による照射処理を行うことで、きわめて短時間に植物油中の脂肪酸とメタノールとを反応させて脂肪酸メチルエステルを生成させ、その反応主生成物である脂肪酸メチルエステルと反応副生成物であるグリセリンとの混合物と未反応のメタノールを分離器5へ供給し、該分離器5で蒸留を行って未反応のメタノールを分離し、続いて、分離された未反応のメタノールを反応槽4の前段側へ返送して再利用し、分離器5で分離された脂肪酸メチルエステルとグリセリンを回収槽6へ供給して精製した後、バイオディーゼル燃料に供するので、メタノールの連続的な再生が可能になるとともに、バイオディーゼル燃料の連続的な製造が可能となった。
【0065】
また、以上のような連続的なバイオディーゼル燃料の製造が可能となることで、従来のバッチ式の反応槽を具備するバイオディーゼル燃料の製造装置のように、反応槽が大型化することがなく、小型の装置を提供することが可能となる。
【0066】
(実施形態2)
図3は、他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図を示す。本実施形態のバイオディーゼル燃料の製造装置は、ミキサー3が具備されておらず、この点でミキサー3が具備されていた前記実施形態1と相違している。
【0067】
本実施形態においては、ミキサー3が具備されていないので、油脂類貯留槽1から油脂類が直接反応槽4へ供給され、またアルコール類貯留槽2からアルコール類が直接反応槽4へ供給されることとなる。
【0068】
また、本実施形態ではミキサー3が具備されていないので、反応槽4内で油脂類とアルコール類とが攪拌されつつ混合されることになる。その攪拌の手段としては、たとえばマグネチックスターラーや攪拌機等の任意の攪拌手段を採用することができる。
【0069】
さらに、ミキサー3が具備されていないので、分離器5で蒸留されて、生成物である脂肪酸メチルエステルから分離された未反応のメタノールは、反応槽4へ返送して再利用されることとなる。
【0070】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様にケーシング7は金属製であり、反応槽4や分離器5はガラス製とされている。油脂類貯留槽1、アルコール類貯留槽2、反応槽4、分離器5、回収槽6を具備している点や、それらの構成は、上記実施形態1と共通するため、その説明は省略する。
【0071】
また、本実施形態においても、バイオディーゼル燃料の原料である植物油とメタノールを連続的に反応槽4へ供給し、反応槽4でマイクロ波による照射処理を行ってきわめて短時間に脂肪酸メチルエステルを生成させ、分離器5で蒸留を行って、脂肪酸メチルエステルから分離された未反応のメタノールを返送して再利用し、分離器5で分離された脂肪酸メチルエステルを回収槽6へ供給してバイオディーゼル燃料に供するので、メタノールの連続的な再生が可能になるとともに、バイオディーゼル燃料の連続的な製造が可能となる。また、連続的なバイオディーゼル燃料の製造が可能となることで、小型の装置を提供することが可能となる。
【0072】
(実施形態3)
図4は、他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図を示す。本実施形態のバイオディーゼル燃料の製造装置においては、反応槽4と分離器5を収納するケーシング7a、7bがそれぞれ別個に設けられ、それに応じてマイクロ波発振器8a、8bがそれぞれのケーシング7a、7bに設けられている。この点で、1つのケーシング7内に反応槽4と分離器5が収納されていた上記実施形態1、2と相違している。
【0073】
従って、本実施形態では、反応槽4内での油脂類とアルコール類との反応の促進のためのマイクロ波照射と、分離器5内でのアルコール類の蒸留の促進のためのマイクロ波照射とが、それぞれのマイクロ波発振器8a、8bによって、それぞれのケーシング7a、7b内で別々に行われることとなる。
【0074】
本実施形態では、このように別々のマイクロ波発振器8a、8bによって別々のケーシング7a、7b内で反応槽4と分離器5にマイクロ波照射を行うので、反応槽4内での油脂類とアルコール類との反応に必要な条件、及び分離器5内でのアルコール類の蒸留に必要な条件にそれぞれ応じて適宜、マイクロ波照射を行うことができる。
【0075】
油脂類貯留槽1、アルコール類貯留槽2、ミキサー3、反応槽4、分離器5、回収槽6を具備している点や、それらの構成は、上記実施形態1と共通するため、その説明は省略する。
【0076】
本実施形態においても、バイオディーゼル燃料の原料である植物油とメタノールを連続的に反応槽4へ供給し、反応槽4でマイクロ波による照射処理を行ってきわめて短時間に脂肪酸メチルエステルを生成させ、分離器5で蒸留を行って、脂肪酸メチルエステルから分離された未反応のメタノールを返送して再利用し、分離器5で分離された脂肪酸メチルエステルを回収槽6へ供給してバイオディーゼル燃料に供するので、メタノールの連続的な再生が可能になるとともに、バイオディーゼル燃料の連続的な製造が可能となる。また、連続的なバイオディーゼル燃料の製造が可能となることで、小型の装置を提供することが可能となる。
【0077】
(実施形態4)
図5は、他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図を示す。本実施形態のバイオディーゼル燃料の製造装置においても、上記実施形態3と同様に、反応槽4と分離器5を収納するケーシング7a、7bがそれぞれ別個に設けられ、それに応じてマイクロ波発振器8a、8bがそれぞれのケーシング7a、7bに設けられている。
【0078】
また本実施形態では、上記実施形態2と同様にミキサー3が具備されておらず、油脂類貯留槽1から油脂類が直接反応槽4へ供給され、またアルコール類貯留槽2からアルコール類が直接反応槽4へ供給されることとなる。
【0079】
油脂類貯留槽1、アルコール類貯留槽2、反応槽4、分離器5、回収槽6を具備している点や、それらの構成は、上記実施形態2と共通するため、その説明は省略する。
【0080】
本実施形態においても、バイオディーゼル燃料の原料である植物油とメタノールを連続的に反応槽4へ供給し、反応槽4でマイクロ波による照射処理を行ってきわめて短時間に脂肪酸メチルエステルを生成させ、分離器5で蒸留を行って、脂肪酸メチルエステルから分離された未反応のメタノールを返送して再利用し、分離器5で分離された脂肪酸メチルエステルを回収槽6へ供給してバイオディーゼル燃料に供するので、メタノールの連続的な再生が可能になるとともに、バイオディーゼル燃料の連続的な製造が可能となる。また、連続的なバイオディーゼル燃料の製造が可能となることで、小型の装置を提供することが可能となる。
【0081】
(実施形態5)
図6は、他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図を示す。本実施形態のバイオディーゼル燃料の製造装置においては、反応槽4のみがケーシング7内に収納されており、分離器5はケーシング7内に収納されていない。この点で、反応槽4と分離器5の双方がケーシング7内に収納されている実施形態1と相違する。
【0082】
反応槽4のみがケーシング7内に収納されているので、マイクロ波発振器8の作動によるマイクロ波照射は反応槽4のみに対してなされ、分離器5に対してはなされない。
【0083】
油脂類貯留槽1、アルコール類貯留槽2、ミキサー3、反応槽4、分離器5、回収槽6を具備している点や、それらの構成は、上記実施形態1と共通するため、その説明は省略する。
【0084】
(実施形態6)
図7は、他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図を示す。本実施形態のバイオディーゼル燃料の製造装置においては、上記実施形態5と同様に反応槽4のみがケーシング7内に収納されており、分離器5はケーシング7内に収納されていない。また、上記実施形態2と同様にミキサー3が具備されておらず、油脂類貯留槽1から油脂類が直接反応槽4へ供給され、またアルコール類貯留槽2からアルコール類が直接反応槽4へ供給されることとなる。
【0085】
油脂類貯留槽1、アルコール類貯留槽2、反応槽4、分離器5、回収槽6を具備している点や、それらの構成は、上記実施形態2と共通するため、その説明は省略する。
【0086】
(実施形態7)
図8は、他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図を示す。本実施形態のバイオディーゼル燃料の製造装置においては、ミキサー3、反応槽4、分離器5の3つがケーシング7内に収納されており、マイクロ波発振器8の作動によるマイクロ波照射が、ミキサー3、反応槽4、分離器5の3つに対してなされるように構成されている。
【0087】
油脂類貯留槽1、アルコール類貯留槽2、ミキサー3、反応槽4、分離器5、回収槽6を具備している点や、それらの構成は、上記実施形態1と共通するため、その説明は省略する。
【0088】
(実施形態8)
図9は、他実施形態としてのバイオディーゼル燃料の製造装置の概略ブロック図を示す。本実施形態のバイオディーゼル燃料の製造装置においては、ミキサー3と反応槽4が1つのケーシング7a内に収納されており、分離器5が別のケーシング7b内に収納されている。
【0089】
従って、本実施形態では、1方のケーシング7aに設けられたマイクロ波発振器8aの作動によるマイクロ波照射が、ミキサー3及び反応槽4に対してなされ、他方のケーシング7bに設けられたマイクロ波発振器8bの作動によるマイクロ波照射が、分離器5に対してなされるように構成されている。
【0090】
油脂類貯留槽1、アルコール類貯留槽2、ミキサー3、反応槽4、分離器5、回収槽6を具備している点や、それらの構成は、上記実施形態1と共通するため、その説明は省略する。
【0091】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、原液としての油脂類を貯留する油脂類貯留槽1と、アルコール類を貯留するアルコール類貯留槽2を具備させたが、このような油脂類貯留槽1やアルコール類貯留槽2を具備させることは本発明に必須の条件ではなく、たとえば工場から排出される廃油等の油脂類を、直接ミキサー3或いは反応槽4等へ供給するようなことも可能である。
【0092】
また、上記各実施形態では、油脂類とアルコール類とを反応槽へ供給した後、蒸留器でアルコール類を蒸留し、反応槽若しくはその前段側に返送して再利用したが、このようにアルコール類を返送して再利用することは、本発明に必須の条件ではない。要は、バイオディーゼル燃料とグリセリンと未反応のアルコール類との混合物から、効果的に未反応のアルコール類が分離されればよいのである。
【0093】
さらに、上記実施形態の図2における反応槽4について、形状は図2に示されたものには限定されない。内部に固体アルカリ触媒を具備させうる形状のもので有ればよく、球状、カラム状、その他、種々の形状のものを用いることが可能である。また、反応槽4に設置されているフィルター16の形状や材質なども限定されない。要は、固体アルカリ触媒が通過しない目開きのもので有ればよいのである。
さらに、上記各実施形態では、ケーシング7、7a、7b内に反応槽4や分離器5が収容され、そのケーシング7、7a、7bに設けられていたマイクロ波発振器8、8a、8bの作動によりマイクロ波が反応槽4、分離器5の外部から反応槽4、分離器5を透過して反応槽4内の油脂類やアルコール類、或いは分離器5内のアルコール類等にマイクロ波が照射されるように構成したが、これに限らず、たとえば反応槽4や分離器5の外壁をケーシングと兼用する構成とし、その外壁(ケーシング)にマイクロ波発振器8、8a、8bを設けることも可能である。
上記各実施形態のように、ケーシング7、7a、7b内に反応槽4や分離器5が収容される場合には、マイクロ波が外部から反応槽4、分離器5を透過するので、反応槽4や分離器5はマイクロ波の透過率の高い材料で構成する必要があるが、反応槽4や分離器5の外壁をケーシングと兼用する場合には、必ずしもマイクロ波の透過率の高い材料で反応槽4や分離器5を構成する必要はない。
【0094】
さらに、上記各実施形態では、各成分の沸点の差を利用して最も沸点の低いアルコール類を分離する手段である蒸留を行う蒸留器を分離器5として用いる場合について説明したが、蒸留以外の分離手段を有する分離器5を用いることも可能である。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1乃至6)
本実施例は、上記図2のような装置を用いて、バイオディーゼル燃料を製造する製造方法の実施例である。本実施例では、分離器による蒸留を行って、分離したメタノールを反応槽の前段側に返送して連続的な製造を行った。
【0096】
油脂類としては菜種油を用い、アルコール類としてはメタノールを用いた。固体アルカリ触媒としては消石灰(市販の純度60%のもの)を用いた。反応槽内の反応温度は60℃、マイクロ波の周波数は2.45GHzとした。
【0097】
実施例1乃至6における実験操作条件を表1に示す。すなわち、菜種油とメタノールの混合比率、消石灰の添加量、マイクロ波出力、菜種油とメタノールの混合液の供給速度、反応槽内における混合流体(混合液)の滞留時間の各条件を示している。
【0098】
【表1】

【0099】
また試験結果を表2に示す。表2には、反応によって得られたバイオディーゼル燃料(油相中のメチルエステル)の収率(重量%)と、当該燃料における成分の組成(重量%)を示した。成分としては、リノレイン酸、リノレン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸のそれぞれのメチルエステルが回収され、オレイン酸のメチルエステルが最も多く回収された。さらに、各実施例の結果を比較すると、処理条件毎に収率が変化したが、成分の組成は殆ど変化がないことが分かった。
【0100】
【表2】

【0101】
なお、他の条件を同じ条件とし、菜種油とメタノールの混合比率のみを変えた場合(実施例1,4,5)を比較すると、混合比率によらず、メチルエステルの収率および成分の組成は同様なものであることが分かった。さらに、マイクロ波出力を変えた場合(実施例1,4,6)を比較すると、出力によらず、メチルエステルの収率および成分の組成は同様なものであることも分かった。さらに、滞留時間による差を調べた場合(実施例1,2,3)を比較すると、滞留時間が長いほどメチルエステルの収率が高くなったが、成分の組成は同様なものであることも分かった。
【0102】
(実施例7乃至9)
本実施例は、上記図2のような装置を用いて、バイオディーゼル燃料を製造する製造方法の一実施例である。ただし本実施例では、反応槽としては上記図2のような形状の反応槽を用いず、槽内における流体の混合性を向上させた丸底フラスコ型反応槽を用いて連続的な製造を行った。
【0103】
油脂類としては菜種油を用い、アルコール類としてはメタノールを用いた。固体アルカリ触媒としては消石灰(市販の純度60%のもの)を用いた。反応槽内の反応温度は60℃、マイクロ波の周波数は2.45GHzとした。
【0104】
実施例7乃至9における実験操作条件を表3に示す。すなわち、菜種油とメタノールの混合比率、消石灰の添加量、マイクロ波出力、菜種油とメタノールの混合液の供給速度、反応槽内における混合流体(混合液)の滞留時間の各条件を示している。
【0105】
【表3】

【0106】
また試験結果を表4に示す。表4には、反応によって得られたバイオディーゼル燃料(油相中のメチルエステル)の収率(重量%)と、当該燃料における成分の組成(重量%)を示した。成分としては、リノレイン酸、リノレン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸のそれぞれのメチルエステルが回収され、オレイン酸のメチルエステルが最も多く回収された。さらに、各実施例の結果を比較すると、滞留時間が長くなるほど収率が高くなるが、成分の組成は殆ど変化がないことが分かった。この傾向は実施例1乃至6のものと同様であった。
【0107】
【表4】

【符号の説明】
【0108】
4 反応槽
5 分離器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂類とアルコール類とを固体アルカリ触媒の存在下でマイクロ波を照射して反応させるための反応槽(4)と、該反応槽(4)で生成する反応生成物から未反応のアルコール類を分離するための分離器(5)とを具備し、前記油脂類とアルコール類との反応槽(4)内での反応と、前記反応槽(4)内で生成した反応生成物と未反応のアルコール類の分離器(5)での分離とが連続的に行われるように構成されていることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造装置。
【請求項2】
分離された未反応のアルコール類を反応槽(4)若しくはその前段側に返送する返送ライン(9)が、さらに具備されている請求項1記載のバイオディーゼル燃料の製造装置。
【請求項3】
反応生成物と未反応のアルコール類を、反応槽(4)から分離器(5)へ移送すべく、該反応槽(4)と分離器(5)間にサンフォン管(12)が介装されている請求項1又は2記載のバイオディーゼル燃料の製造装置。
【請求項4】
反応槽(4)内の固体アルカリ触媒が分離器(5)側へ不用意に移送されるのを阻止すべく、濾過処理するためのフィルター(16)が、前記反応槽(4)と分離器(5)間に設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載のバイオディーゼル燃料の製造装置。
【請求項5】
分離器(5)内における反応生成物からの未反応のアルコール類の分離を、マイクロ波照射による加熱によって行うように構成されている請求項1乃至4のいずれかに記載のバイオディーゼル燃料の製造装置。
【請求項6】
油脂類とアルコール類とを、固体アルカリ触媒の存在下でマイクロ波を照射して反応槽(4)内で反応させ、次に、該反応槽(4)で生成する反応生成物から未反応のアルコール類を分離器(5)で分離し、前記油脂類とアルコール類との反応槽(4)内での反応と、該反応槽(4)内で生成した反応生成物と未反応のアルコール類の分離とを連続的に行うことを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項7】
分離されたアルコール類を、返送ライン(9)を介して反応槽(4)若しくはその前段側に返送する請求項6記載のバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項8】
分離器(5)内における反応生成物からの未反応のアルコール類の分離を、マイクロ波照射による加熱によって行う請求項6又は7記載のバイオディーゼル燃料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−46803(P2011−46803A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195494(P2009−195494)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(599073917)財団法人かがわ産業支援財団 (35)
【Fターム(参考)】