バイオフィルム処理のための方法およびコーティング
細菌によるバイオフィルム形成を処理(又は処置)、低減、または阻害する方法であって、対象物品を有効量のD−アミノ酸を含む組成物と接触させるステップであって、前記組成物が、基本的に、対応するL−アミノ酸を含まず、それにより、バイオフィルムの形成を処理、低減、または阻害するステップを含んでいる。ここで、D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、同時係属中の2010年1月8日出願米国仮出願第61/293、414号、および2010年4月30日出願米国特許仮出願第61/329、930号の優先権を主張する。
【0002】
この出願は、本出願と同日付出願の「バイオフィルム処理のための方法と組成物」の名称の同時係属中国際特許出願と関連している。
【0003】
これらの出願の内容は、参照によって組み込まれる。
【0004】
米国政府の権利に関する記述
本発明は、国立衛生研究所認可CA24487、GM058213、GM082137、GM086258、およびGM18568に基づいて米国政府の支援により行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0005】
バイオフィルムは、表面で定着および増殖し、細胞外ポリマーマトリックスにより覆われている細胞の共同体である。これらは、増殖が遅く、多くは増殖の定常期にある。これらは、全部ではないにしても、多くは病原体により形成されうる。CDCによれば、米国の全感染症中の65%が、共通の病原体により形成されるバイオフィルムが原因である。また、バイオフィルムは、飲料水送水系等の工業環境中にも認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】(なし)
【発明の概要】
【0007】
概要
本発明の態様は、細菌によるバイオフィルム形成を処理(又は処置)、低減、または阻害する方法を特徴とする。一部の実施形態では、この方法は、有効量のD−アミノ酸を含む組成物と表面を接触させ、それによりバイオフィルム形成を処理、低減、または阻害することを含む。一部の実施形態では、細菌は、グラム陰性またはグラム陽性細菌である。特定の実施形態では、細菌は、桿菌、ブドウ球菌、大腸菌、またはシュードモナス細菌である。
他の1つまたは複数の実施形態では、表面は、産業機器、給排水設備、水域、家庭にある表面、織物および紙を含む。
【0008】
他の態様では、本発明は、1つまたは複数のD−アミノ酸を含む工業用、処理用または、医薬組成物等の組成物を特徴とする。特定の実施形態では、組成物は、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−トリプトファン、またはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、組成物は、D−チロシン、D−フェニルアラニン、D−プロリン、またはこれらの組み合わせを含む。さらなる実施形態では、組成物は、2つ以上のD−チロシン、D−ロイシン、D−フェニルアラニン、D−メチオニン、D−プロリン、またはD−トリプトファンを含み、またさらなる実施形態では、後者の組成物が、基本的にデタージェントおよび/またはLアミノ酸を含まない。他の実施形態では、組成物は、本明細書記載の、例えば、水処理または配管系等の工業バイオフィルムの処理に使用される。
【0009】
本開示の一態様は、バイオフィルム形成細菌によるバイオフィルム形成を処理、低減、または阻害する方法に関し、この方法は、対象物品を有効量のD−アミノ酸またはD−アミノ酸の組み合わせを含む組成物と接触させ、それによりバイオフィルム形成を処理、低減、または阻害することを含み、ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、またはD−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的組み合わせである。
【0010】
一部の実施形態では、組成物は、基本的に、対応するL−アミノ酸またはD−アミノ酸もしくはD−アミノ酸の組み合わせに関連するL−アミノ酸を含まない。
【0011】
一部の実施形態では、対象物品は、産業機器、給排水設備、水域、家庭にある表面、織物および紙からなる群より選択される1つまたは複数の物品を含む。さらなる実施形態では、対象物品は、水凝集物の収集、水再循環、下水輸送、製紙パルプ化および製造、ならびに水処理および輸送に関与する1つまたは複数の構成部材である。さらなる他の実施形態では、対象物品は、排水管、浴槽、台所用電気器具、調理台、シャワーカーテン、グラウト、洗面所、工業用の食品または飲料生産設備、フロア、ボート、埠頭、石油掘削用プラットホーム、取水口、濾過装置、送水管、冷却系、または発電所である。
【0012】
一部の実施形態では、対象物品は、金属、金属合金、合成高分子、天然ポリマー、セラミック、木材、ガラス、革、紙、織物、非金属無機物、複合材料およびこられの組み合わせからなる群より選択される材料から作られる。
【0013】
他の実施形態では、接触させる工程は、対象物品にコーティングを適用することを含み、前記コーティングは、有効量のD−アミノ酸を含む。さらなる実施形態では、コーティングは、さらに結合剤を含む。一部の実施形態では、コーティングは、コーティング組成物の表面への毛管作用、吹付け、ディッピング、スピンコーティング、積層、塗布、スクリーン印刷、押し出しまたはドローダウンにより達成される。他の実施形態では、接触させる工程は、前駆物質中にD−アミノ酸を導入し、前駆物質を処理して対象物品中にD−アミノ酸を含浸させることを含む。さらなる実施形態では、接触させる工程は、液体組成物中にD−アミノ酸を導入することを含む。
【0014】
前述の方法の一部の実施形態では、組成物は、D−チロシンを含む。別の実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む。さらに他の実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む。またさらなる実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む。
【0015】
いずれかの前述の方法の一部の実施形態では、方法は、表面を殺生物剤に接触させることをさらに含む。一部の実施形態では、組成物は、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン、キシリトール、トリクロサン、または二酸化塩素を含む。
【0016】
いずれかの前述の方法の別の実施形態では、組成物は、1%未満のL−アミノ酸を含む。
【0017】
いずれかの前述の方法のさらなる実施形態では、組成物は、基本的にデタージェントを含まない。
【0018】
さらなる別の本開示の態様は、バイオフィルム形成に耐性を有するコートされた対象物品に関し、少なくとも1つの露出表面にコーティングを含む対象物品を含み、そのコーティングが、有効量のD−アミノ酸またはD−アミノ酸の組み合わせを含み、それにより、バイオフィルム形成を処理、低減、阻害する。ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、またはD−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的組み合わせである。
【0019】
一部の実施形態では、コーティングは、基本的に、対応するL−アミノ酸またはD−アミノ酸もしくはD−アミノ酸の組み合わせに関連するL−アミノ酸を含まない。
【0020】
一部の実施形態では、対象物品は、産業機器、給排水設備、水域、家庭にある表面、織物および紙からなる群より選択される1つまたは複数の物品を含む。他の実施形態では、対象物品は、水凝集物の収集、水再循環、下水輸送、製紙パルプ化および製造、ならびに水処理および輸送に関与する1つまたは複数の構成部材である。さらなる実施形態では、対象物品は、排水管、浴槽、台所用電気器具、調理台、シャワーカーテン、グラウト、洗面所、工業食品もしくは飲料生産設備、フロア、ボート、埠頭、石油掘削用プラットホーム、取水口、濾過装置、送水管、冷却系、または発電所である。
【0021】
一部の実施形態では、対象物品は、金属、金属合金、合成高分子、天然ポリマー、セラミック、木材、ガラス、革、紙、織物、非金属無機物、複合材料およびこれらの組み合わせからなる群より選択される材料から作られる。さらなる実施形態では、コーティングは、さらに結合剤を含む。他の実施形態では、コーティングは、ポリマーをさらに含み、D−アミノ酸は、ポリマー中に分散されている。
【0022】
一部の実施形態では、D−アミノ酸コーティングは、徐放製剤として配合される。
【0023】
一部の実施形態では、組成物は、D−チロシンを含む。さらなる実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む。またさらなる実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む。さらに他の実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む。
【0024】
一部の実施形態では、組成物は、殺生物剤をさらに含む。さらなる実施形態では、殺生物剤は、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン、キシリトール、トリクロサン、または二酸化塩素を含む。
【0025】
一部の実施形態では、いずれかの前述のコートされた対象物品または組成物は、1%未満のL−アミノ酸を含む。他の実施形態では、コートされた対象物品または組成物は、基本的にデタージェントを含まない。
【0026】
本開示の別の態様は、バイオフィルム形成に耐性を示す組成物に関し、液体基剤、および基剤中に分散した有効量のD−アミノ酸またはD−アミノ酸の組み合わせを含み、それによりバイオフィルム形成の処理、低減または阻害を行い、ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、およびD−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的組み合わせである。
【0027】
一部の実施形態では、組成物は、基本的に、対応するL−アミノ酸またはD−アミノ酸もしくはD−アミノ酸の組み合わせに関連するL−アミノ酸を含まない。
【0028】
一部の実施形態では、液体基剤は、液体、ゲル、ペーストから選択される。
【0029】
一部の実施形態では、組成物は、水、洗浄用配合物、消毒用配合物、塗布およびコーティング用配合物からなる群より選択される。
【0030】
さらに別の本開示の態様は、2つ以上のD−アミノ酸を含むコーティング組成物に関し、この組成物は、少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、およびD−トリプトファンからなる群より選択され、少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される異なるD−アミノ酸であり、さらに高分子結合剤が含まれる。
【0031】
一部の実施形態では、組成物は、基本的にD−アミノ酸に関連する対応するL−アミノ酸を含まない。
【0032】
以下の図は、説明の目的のみで提示されるもであり、制限を加える意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1A及び1Bは、枯草菌株NCIB3610の細胞を示す。この細胞は、12ウエルプレートを使って液体バイオフィルム誘導培地中、22℃で3日間(A)または8日間(B)成長させた。図1C及び1Dは、6〜8日間培養液(C)または3日間培養液(D)の馴化培地をC18 Sep Pakカラムに適用後、乾燥・再懸濁したメタノール溶出液(1:100v/v)を添加した培地中で3日間成長させた細胞を示す。ウエルに添加された最終濃度の濃縮因子は、元の馴化培地の容量ベースで1:4希釈であった。図1Eは、その因子がメタノールを使ったステップワイズ溶出によりC−18カラムでさらに精製されたことを除いて、図1Cと同じである。3μlの40%メタノール溶出液を添加した結果を示す。図1Fは、新しい培地への添加の前に、40%メタノール溶出液をプロテイナーゼKビーズと共に2時間インキュベートし、続いて、遠心分離によりビーズを除去したことを除いて、図1Cと同じである。
【図2】図2Aは、3日間のインキュベーション後に、バイオフィルム誘導培地中で新しく播種した培養液にD−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)、L−チロシン(7mM)、またはL−ロイシン(8.5mM)を添加した場合のペリクル形成に対する効果を示す。図2Bは、ペリクル形成の完全な阻害に必要なD−アミノ酸の最小バイオフィルム阻害濃度(Minimal Biofilm Inhibitory Concentration)(MBIC)を示す。図2Cは、アミノ酸無添加(未処理)、D−チロシン(3μM)の添加またはD−チロシン、D−トリプトファン、D−メチオニンおよびD−ロイシン(各2.5nM)の混合物添加に続いて、さらに8時間インキュベーションした3日間培養液を示す。図2Dは、野性型またはylmEおよびracXに対し二重変異体株(IKG55)の8日間培養液由来の馴化培地から得た濃縮Sep Pak C−18カラム溶出液の効果を示す。図2Eは、12ウエルポリスチレンプレートを用い、37℃のグルコース(0.5%)およびNaCl(3%)を含むTSB培地中で、24時間成長させた黄色ブドウ球菌(株SCO1)を示す。さらに、ウエルへのアミノ酸無添加(未処理)、D−チロシン(50μM)添加またはD−アミノ酸混合物(各15nM)添加の条件を付加した。未結合細胞を洗い流した後、ポリスチレンに結合した細胞をクリスタルバイオレットで染色して可視化した。
【図3】図3Aは、細胞壁への放射性のD−チロシンの組み込みを示す。細胞をバイオフィルム誘導培地中で成長させ、14C−D−チロシンまたは14C−L−プロリン(10μCi/ml)と共に37℃で2時間インキュベートした。結果を、細胞(L−プロリンに対しては360、000cpm/ml、D−チロシンに対しては46、000cpm/ml)への全体組み込みのパーセントとして示す。図3Bは、機能性tasA−mCherry翻訳融合体含有細胞(DR−30(Romero et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2010、近刊))からの全蛍光を示す。D−チロシン(6μM)が存在または非存在の場合について、バイオフィルム誘導培地中で定常期になるまで振盪を加えながら細胞を成長させた。図3Cは、蛍光顕微鏡によるTasA−mCherryの細胞会合を示す。表示されているように、D−チロシン(6μM)が存在または非存在(未処理)の場合について、野性型細胞およびtasA−mCherry融合体含有yqxM6(IKG51)変異体細胞をバイオフィルム誘導培地中で定常期(OD=1.5)になるまで振盪を加えながら細胞を成長させ、PBSで洗浄し、蛍光顕微鏡で可視化した。図3Dは、電子顕微鏡によるTasA線維の細胞会合を示す。D−チロシンのない場合(画像1と2)またはD−チロシン(0.1mM)添加の場合(画像3〜6)について、24時間培養液に対し、12時間追加してインキュベートした。実施例に記載のように、TasA繊維を抗TasA抗体を使って免疫金標識により染色し、透過型電子顕微鏡により可視化した。菌体外多糖の非存在によりTasA繊維の画像化が著しく改善されたので、細胞はepsオペロン(Δeps)に対し変異体であった。中実矢印は、繊維バンドルを示し;中空矢印は、個別の繊維を示す。スケールバーは、500nmである。拡大画像2、4および6のスケールバーは100nmである。画像1と2は、細胞に付着した繊維バンドル、画像3、4と6は、個別の繊維および細胞から離脱したバンドルを示し、画像3〜5は、ほとんどまたは全く繊維状物質のない細胞を示す。
【図4】図4Aは、D−チロシン含有または非含有の固体(上段画像)または液体(下段画像)バイオフィルム誘導培地で3日間成長させた細胞を示す。図4Bは、YqxMの簡略アミノ酸配列を示す。下線は、表示した配列変化中でyqxM2およびyqxM6フレームシフト変異が生じたコドンにより特定される残基である。
【図5】図5は、D−トリプトファン(0.5mM)、D−メチオニン(2mM)、L−トリプトファン(5mM)またはL−メチオニン(5mM)を補充した後、株NCIB3610を播種し、3日間インキュベートしたMSgg培地含有ウエルを示す。
【図6】図6は、D−チロシン(3μM)またはD−ロイシン(8.5mM)を補充後、株NCIB3610を播種し、4日間インキュベートした固体MSgg培地を含むプレートを示す。
【図7】図7は、12ウエルプレート中で成長させ、5日間インキュベートしたNCIB3610(野性型)およびylmEおよびracX(IKG155)の二重欠失変異体を示す。
【図8】図8は、D−アミノ酸の細胞成長に与える効果を示す。細胞をD−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)を含むMSgg培地中で振盪を加えながら成長させた。
【図9】図9Aは、株FC122(PyqxM−lacZを保持)によるPyqxM−lacZの発現を示し、図9Bは、D−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)を含むMSgg培地中で振盪を加えながら成長させた株FC5(PepsA−lacZを保持)によるPepsA−lacZの発現を示す。
【図10】図10は、緑膿菌バイオフィルム形成のD−アミノ酸による阻害を示す。緑膿菌株P014を12ウエルポリスチレンプレートを用い、グリセリン(0.2%)およびカザアミノ酸(20μg/ml)含有M63培地中30℃で48時間成長させた。アミノ酸無添加(未処理)、D−チロシン添加またはD−アミノ酸混合物の条件をウエルに付加した。ポリスチレンに結合した細胞を、未結合細胞を洗い流した後、クリスタルバイオレットで染色して可視化した。ウエルを500μlの1.0%クリスタルバイオレット染料で染色し、2mlの再蒸留水で2回洗い流し、完全に乾燥した。
【図11】図11は、個別D−アミノ酸または4つの混合物と共にTSB培地中で24時間成長させたブドウ球菌バイオフィルムのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図12】図12は、個別D−アミノ酸または4つの混合物と共にM63培地中で48時間成長させた緑膿菌のクリスタルバイオレット染色を示す。
【図13】図13は、個別D−アミノ酸または混合物と共にTSB培地中で24時間成長させたブドウ球菌バイオフィルムのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図14】図14は、L−アミノ酸と共にTSB培地中で24時間成長させたブドウ球菌バイオフィルムのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図15】図15は、浮遊細菌を除去後D−アミノ酸を適用したTSB培地中で形成されたブドウ球菌バイオフィルムの代表的画像である。
【図16】図16は、浮遊細菌を除去後L−アミノ酸を適用したTSB培地中で形成されたブドウ球菌バイオフィルムの代表的画像である。
【図17】図17は、浮遊細菌を除去後TSB培地中で形成されたブドウ球菌バイオフィルム内の細胞の定量化である。細胞をPBS中に再懸濁した。
【図18】図18は、表面上のブドウ球菌バイオフィルム形成に与えるD−aa混合物(1mM)の効果を示す。エポキシ表面をD/L−aa混合物中に浸漬した後、細菌と24時間インキュベートした。
【図19】図19は、表面上のブドウ球菌バイオフィルム形成に与えるD−aa混合物(1mM)の効果を示す。エポキシ表面をD/L−aa混合物中に浸漬した後、細菌と24時間インキュベートした。
【図20】図20は、M63固体培地上の緑膿菌中のバイオフィルム形成に与えるD−aaの効果を示す。コロニーは、室温で4日間成長させた。
【図21】図21は、バイオフィルム誘導条件下における、緑膿菌の6ウエルプレートのボタン中の単一付着細胞のSytox染色を示す。
【図22】図22は、培地中でD−アミノ酸(100μM)またはL−アミノ酸(100μM)混合物と共に48時間成長させたプロテウス・ミラビリスのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図23】図23は、D−またはL−アミノ酸(1mM)を含む、ショ糖(0.5%)培地を添加したBHI培地で72時間成長させたストレプトコッカス・ミュータンスのクリスタルバイオレット染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
特に別義の定義がなければ、本明細書で使われる全ての技術科学用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価な方法および材料が、本発明の実施または試験に使用可能であるが、適切な方法および材料は、以下に記載される。本明細書で挙げた全ての出版物、特許出願、特許、および他の参照は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾が生じる場合は、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は、説明のみの目的であり、制限する意図はない。
【0035】
用語の「防ぐ(prevent)」「防止(preventing)」および「予防(prevention)」は、本明細書では、本明細書記載の組成物(例えば、予防もしくは処理組成物)の投与、もしくは処理薬の組み合わせ(例えば、予防もしくは処理組成物の組み合わせ)の投与の結果としての、表面上のバイオフィルムの発生または発症の阻害またはバイオフィルムの1つまたは複数の徴候もしくは症状の再発、発症、もしくは発生の防止を指す。
【0036】
本発明の他の特徴と利点は、以下の詳細説明および請求項から明らかであろう。当業者には明らかなように、本明細書記載の具体的特徴および実施形態は、他のいずれかの特徴または実施形態と組み合わせることができる。
【0037】
本発明は、少なくとも一部は、成熟バイオフィルム由来の馴化培地中に存在するD−アミノ酸がバイオフィルム形成を防ぎ、既存のバイオフィルム分解の引き金となるという発見に基づいている。標準的アミノ酸は、相互に鏡像関係にあるL−またはD−アミノ酸と呼ばれる2つの光学的異性体のどちらかの形で存在しうる。L−アミノ酸は、タンパク質中に見出される大部分のアミノ酸であるが、D−アミノ酸は細菌のペプチドグリカン細胞壁の成分である。本明細書記載のD−アミノ酸は、生存および非生存表面上のバイオフィルムに浸透でき、細菌の表面への付着およびバイオフィルムのさらなる発達を阻害でき、このようなバイオフィルムを剥離させることができおよび/または生物学的マトリックス中のバイオフィルム形成微生物のさらなる増殖を阻害することができ、またはこのような微生物を消滅させることができる。
【0038】
D−アミノ酸は、当技術分野で既知であり、既知の技術を使って調製可能である。代表的方法には、例えば、米国特許公開第20090203091号に記載のものが含まれる。D−アミノ酸は、また、市販品として入手可能である(例えば、Sigma Chemicals、St.Louis、Mo.から)。
【0039】
本明細書記載の方法には、いずれのD−アミノ酸も使用可能であり、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、またはD−チロシンが、非制限的に含まれる。D−アミノ酸は、単独でまたは他のD−アミノ酸と組み合わせて使用可能である。代表的方法では、2、3、4、5、6、または7以上のD−アミノ酸が組み合わせて使用される。好ましくは、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、またはD−トリプトファンが、単独または組み合わせて、本明細書記載の方法で使用される。他の好ましい実施形態では、D−チロシン、D−プロリンおよびD−フェニルアラニンが、単独または組み合わせて、本明細書記載の方法で使用される。
【0040】
D−アミノ酸は、約0.1nM〜約100μM、例えば、約1nM〜約10μM、約5nM〜約5μM、または約10nM〜約1μMの濃度、例えば、0.1nM〜100μM、1nM〜10μM、5nM〜5μM、または10nM〜1μMの濃度で使用可能である。
【0041】
バイオフィルム形成の阻害または処理に特に有効であると解った代表的D−アミノ酸組成物、コーティング、または溶液には、D−チロシンが含まれる。一部の実施形態では、D−チロシンは、単独で使用され、例えば、1mM未満、または100μM未満、または10μM未満の濃度として、または0.1nM〜100μM、例えば、1nM〜10μM、5nM〜5μM、または10nM〜1μMの濃度で使用できる。
【0042】
他の実施形態では、D−チロシンが1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンと組み合わせて使用される。一部の実施形態では、D−チロシンは、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンと組み合わせて使用される。D−チロシンの1つまたは複数のD−プロリン、D−フェニルアラニン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンとの組み合わせは、相乗的となり得、10μM以下、例えば、約1nM〜約10μM、約5nM〜約5μM、または約10nM〜約1μMの全体D−アミノ酸濃度、または0.1nM〜100μM、例えば、1nM〜10μM、5nM〜5μM、または10nM〜1μMの濃度でバイオフィルム形成を阻害または処理するのに有効である可能性がある。
【0043】
一部の実施形態では、D−アミノ酸の組み合わせは、等モルである。他の実施形態では、D−アミノ酸の組み合わせは、等モルではない。
【0044】
一部の実施形態では、組成物、基本的に、L−アミノ酸を含まない。例えば、組成物は、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.025%未満、約0.01%未満、約0.005%未満、約0.0025%未満、約0.001%、またはそれ未満のL−アミノ酸を含む。他の実施形態では、組成物は、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.05%未満、0.025%未満、0.01%未満、0.005%未満、0.0025%未満、0.001%未満のL−アミノ酸を含む。好ましい実施形態では、L−アミノ酸のパーセンテージは、対応するD−アミノ酸に対する割合である。例えば、L−アミノ酸およびD−アミノ酸のラセミ混合物は、50%L−アミノ酸を含む。
【0045】
一部の実施形態では、組成物、基本的に、デタージェントを含まない。例えば、組成物は、約30重量%未満、約20重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.25重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、約0.025重量%未満、約0.01重量%未満、約0.005重量%未満、約0.0025重量%未満、約0.001重量%未満、またはそれ未満のデタージェントを含む。他の実施形態では、組成物は、全体組成物に対して、約30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、0.025重量%未満、0.01重量%未満、0.005重量%未満、0.0025重量%未満、0.001重量%未満のデタージェントを含む。デタージェント、例えば、界面活性剤含有製剤に置いて、界面活性剤が活性試薬、例えば、D−アミノ酸と相互作用し、往々にして、試薬の有効性に大きな影響を与える可能性がある。一部の実施形態では、特定の界面活性剤型の存在が有効性を変えるかどうかを判定するための選別として、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および双性イオン界面活性剤に対して試薬の有効性を選別する必要が生じうる。デタージェントの低減または除去が組成物の有効性を増加させおよび/または製剤の合併症を低減する。
【0046】
バイオフィルム
ほとんどの細菌は、バイオフィルムとして知られる複合体のマトリックス含有多細胞の共同体を形成できる(O’Toole et al.、Annu.Rev.Microbiol.54:49(2000);Lopez et al.、FEMS Microbiol.Rev.33:152(2009);Karatan et al.、Microbiol.Mol.Biol.Rev.73:310(2009))。バイオフィルム関連細菌は、外界からの刺激、例えば、抗生物質から保護されている(Bryers、Biotechnol.Bioeng.100:1(2008))。しかし、バイオフィルムが熟成するにつれ、栄養素が限定的となり老廃物が蓄積して、バイオフィルム関連細菌は、浮遊実体に戻る方が都合がよくなる(Karatan et al.、Microbiol.Mol.Biol.Rev.73:310(2009))。従って、バイオフィルムは、有限の寿命を有し、最終的な分解を特徴とする。
【0047】
ごく一般的には、バイオフィルムは、生存および非生存表面に付着した、生きているまたは死んでいる微生物、特に細菌と、細胞外の高分子物質(EPSマトリックス)、例えば、多糖類の形のそれらの代謝物とが一緒になった、集合体であると理解されている。浮遊細胞に対しては、通常、優れた増殖阻害または致死の作用を示す抗バイオフィルム物質の活性が、例えば、生物学的マトリックス中への活性物質の不十分な浸透のために、バイオフィルム中で組織化されている微生物に対して大きく低減される可能性がある。
【0048】
他の単細胞の生物に加えて、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌は、バイオフィルムを産生できる。細菌性バイオフィルムは、コロニーを形成している細胞により産生される細胞外の多糖マトリックス内に包まれた細胞表面付着共同体である。バイオフィルム成長は、一連のプログラムされたステップにより発生し、このステップは、最初の表面への付着、3次元マイクロコロニー形成、およびその後の成熟バイオフィルムの成長を含む。バイオフィルム内の細胞の場所が深くなればなるほど(例えば、細胞がバイオフィルムが付着している固体表面に近いほど、大部分のバイオフィルムマトリックスにより遮蔽され、保護される)、細胞はさらに代謝不活性になる。この生理学的変化と勾配の結果、効率的システムが樹立され、それにより微生物が多様な機能的体質を有する細菌性共同体集団が作られる。また、バイオフィルムは、種々の、多様な非細胞性成分で作られ、これらに限定されないが、炭水化物(単体および複合体)、脂質、タンパク質(ポリペプチドを含む)、および糖類およびタンパク質の脂質複合体類(リポ多糖類およびリポタンパク質)を含んでもよい。
【0049】
バイオフィルムは、適した成長条件が発生し、微生物に対し生存を保証する選択優位性を提供できるまで、一定時間の間休眠状態での存在を可能とする。しかし、この選択は、バイオフィルムがヒト細菌感染の約65%に関与すると認められている点で、ヒトの健康に重大な脅威を提起する可能性がある(Smith、Adv.Drug Deliv.Rev.57:1539−1550(2005);Hall−Stoodley et al.、Nat.Rev.Microbiol.2:95−108(2004))。
【0050】
本明細書記載のように、バイオフィルムは、多種多様の生物学的、医学的、商業的、工業的、およびプロセシング作用に影響を与える可能性がある。工業環境では、バイオフィルムは、表面、例えば、パイプおよびフィルターに付着することができる。バイオフィルムは、熱交換器、油送管、水系、フィルター、等の工業システムにおける生物腐食および生物付着の原因となるために、工業環境では、問題を生ずる(Coetser et al.、(2005)Crit.Rev.Micro.31:212−32)。従って、バイオフィルムは、パイプ中の液体の通過を阻害し、水および他の液体系を詰まらせ、さらに病原菌、原虫類、および真菌のリザーバーの役割をする可能性がある。このように、工業バイオフィルムは、工業処理システムにおける経済的非効率の重要な原因である。さらに、異なる種のバイオフィルム産生細菌がこのようなシステム内で共存する可能性がある。従って、このような系では、複数の種に起因するバイオフィルム形成の可能性がある。
【0051】
本明細書記載の方法および材料は、多種多様の商業的、工業的、および処理操作、例えば、水処理/加工業において認められる操作に関連したバイオフィルム形成を防ぐまたは減らすことができる。一部の例では、D−アミノ酸は、このような表面に認められるバイオフィルムに適用できる。他の例では、D−アミノ酸は、バイオフィルム形成細菌が表面に付着するのを防ぐために使用できる。例えば、表面は、産業機器の表面(例えば、優良製造規範(GMP)施設、または食物処理プラント、写真処理現場、等にある設備)、給排水設備の表面、または水域の表面(湖、スイミングプール、海洋、等)でありうる。
【0052】
表面は、細菌性バイオフィルムの形成を防ぐために使用する前に、D−アミノ酸でコート、吹き付け、または含浸することができる。このような表面の具体的な非制限的例では、配管、パイプ、および水凝集物収集、下水排水、製紙パルプ化作業、再循環水系(エアコンシステム、クーリングタワー、等)、および、帯水、水取扱、水処理、および水収集系に付随する支持部材が含まれる。D−アミノ酸の付与により、水の表面またはパイプまたは水処理系の配管表面または水に接触する収集および/または操作系が関与する他の表面のバイオフィルム形成を処理する、防ぐまたは減らすことができる。
【0053】
バイオフィルム形成細菌
本明細書記載の方法は、バイオフィルムの形成および/または脅威を防ぐ、または遅らせるために使用できる。代表的方法では、バイオフィルムは、バイオフィルム成形細菌により形成される。細菌は、グラム陰性菌種またはグラム陽性細菌性種であってもよい。このような細菌の非制限的例には、以下の属のメンバーが含まれる:アクチノバチルス属のメンバー(例えば、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス)、アシネトバクター属のメンバー(例えば、アシネトバクター・バウマンニ)、エロモナス属のメンバー、ボルデテラ属のメンバー(例えば、百日咳菌、ボルデテラ・ブロンキセプチカ、またはパラ百日咳菌)、ブレビバシラス属のメンバー、ブルセラ属のメンバー、バクテロイデス属のメンバー(例えば、バクテロイデス・フラジリス)、バークホルデリア属のメンバー(例えば、セパシア菌または類鼻疽菌)、ボレリア属のメンバー(例えば、ライム病ボレリア)、桿菌属のメンバー(例えば、炭疽菌または枯草菌)、カンピロバクター属のメンバー(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ)、キャプノサイトファーガ属のメンバー、カルジオバクテリウム属のメンバー(例えば、カーディオバクテリウム・ホミニス)、シトロバクター属のメンバー、クロストリジウム属のメンバー(例えば、破傷風菌またはクロストリジウム・ディフィシル)、クラミジア属のメンバー(例えば、トラコーマクラミジア、肺炎クラミジア、またはオウム病クラミジア)、エイケネラ属のメンバー(例えば、エイケネラ・コローデンス)、エンテロバクター属のメンバー、エシェリキア属のメンバー(例えば、大腸菌)、フランシセラ属のメンバー(例えば、野兎病菌)、フソバクテリウム属のメンバー、フラボバクテリウム属のメンバー、ヘモフィルス属のメンバー(例えば、軟性下疳菌またはインフルエンザ菌)、ヘリコバクター属のメンバー(例えば、ピロリ菌)、キンゲラ属のメンバー(例えば、キンゲラ・キンゲ)、クレブシエラ属のメンバー(例えば、肺炎桿菌)、レジオネラ属のメンバー(例えば、在郷軍人病菌)、リステリア属のメンバー(例えば、リステリア菌)、レプトスピラ属のメンバー、モラクセラ属のメンバー(例えば、カタル球菌)、モルガネラ属のメンバー、マイコプラズマ属のメンバー(例えば、マイコプラズマ・ホミニスまたは肺炎マイコプラズマ)、マイコバクテリウム属のメンバー(例えば、マイコバクテリウム結核またはらい菌)、ナイセリア属のメンバー(例えば、淋菌または髄膜炎菌)、パスツレラ属のメンバー(例えば、パスツレラ・マルトシダ)、プロテウス属のメンバー(例えば、プロテウス・ブルガリスまたはプロテウス・ミラビリス)、プレボテラ属のメンバー、プレジオモナス属のメンバー(例えば、プレジオモナス・シゲロイデス)、シュードモナス属のメンバー(例えば、緑膿菌)、プロビデンシア属のメンバー、リケッチア属のメンバー(例えば、リケッチア・リケッチイまたは発疹熱リケッチア)、ステノトロフォモナス属のメンバー(例えば、ステノトロホモナス・マルトフィリア)、ブドウ球菌属のメンバー(例えば、ブドウ球菌または表皮ブドウ球菌)、連鎖球菌属のメンバー(例えば、緑色連鎖球菌、化膿性連鎖球菌(グループA)、ストレプトコッカス・アガラクチア(グループB)、ストレプトコッカス・ボビス、または肺炎球菌)、ストレプトマイセス属のメンバー(例えば、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス)、サルモネラ属のメンバー(例えば、腸炎菌、チフス菌、またはネズミチフス菌)、セラチア属のメンバー(例えば、霊菌)、赤痢菌属のメンバー、スピリルム属のメンバー(例えば、鼡咬症スピリルム)、トレポネーマ属のメンバー(例えば、梅毒トレポネーマ)、ベイヨネラ属のメンバー、ビブリオ属のメンバー(例えば、コレラ菌、腸炎ビブリオ、またはビブリオ・バルニフィカス)、エルシニア属のメンバー(例えば、エンテロコリチカ菌、ペスト菌、または仮性結核菌)、およびザントモナス属のメンバー(例えば、ザントモナス・マルトフィリア)。
【0054】
枯草菌は、特異的に半固体表面上に複合共同体を構築し、静置培養液の空気/液体界面に厚いペリクルを形成する(Lopez et al.、FEMS Microbiol.Rev.33:152(2009);Aguilar et al.、Curr.Opin.Microbiol.10:638(2007);Vlamakis et al.、Genes Dev.22:945(2008);Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:11621(2001))。枯草菌バイオフィルムは、菌体外多糖およびタンパク質TasAから成るアミロイド線維で構成される細胞外のマトリックスにより一緒に保持された長鎖細胞から成る(Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:11621(2001);Branda et al.、Mol.Microbiol.59:1229(2006);Romero et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2010、近刊))。菌体外多糖は、epsA−Oオペロンによりコードされた酵素により産生され(「epsオペロン」)、TasAタンパク質は、yqxM−sipW−tasAオペロン(「yqxMオペロン」)のプロモーター遠位遺伝子によりコードされる(Chu et al.、Mol.Microbiol.59:1216(2006))。
【0055】
バイオフィルム産生細菌、例えば、本明細書記載の種は、本明細書記載のように、インビトロで、または表面上で、生存患者中に見出すことができる。
【0056】
用途/配合
D−アミノ酸組成物は、非生物学的半固形または固体表面上のバイオフィルム形成を減らすまたは防ぐために使用できる。このような表面は、バイオフィルム形成および細菌付着が起こりやすいどのような表面であってもよい。表面の非制限的例には、1つまたは複数の以下の材料から作られる硬質表面が含まれる(これらは任意選択で、例えば、ペンキまたはエナメルでコートされる):金属、プラスチック、ゴム、板、ガラス、木材、紙、コンクリート、岩石、大理石、石膏およびセラミック材料、例えば、磁器。
【0057】
特定の実施形態では、表面は、水または、特に、貯留水と接触する表面である。例えば、表面は、給排水設備、産業機器、水凝集物収集装置、下水輸送用設備、水再循環設備、製紙パルプ化設備、ならびに水処理および水輸送設備の表面であってもよい。排水施設の表面の非制限的例には、浴槽、台所用電気器具、調理台、シャワーカーテン、グラウト、洗面所、工業食品および飲料生産設備、およびフロアリングが含まれる。他の表面には、海洋構造物、例えば、ボート、埠頭、石油掘削用プラットホーム、取水口、濾過装置、およびのぞき窓が含まれる。
【0058】
D−アミノ酸は、有効量のD−アミノ酸の表面への充填またはロードに関連する被覆、コーティング、接触、等のどの既知の手段によっても表面に適用可能である。D−アミノ酸は、例えば、蒸発により除去してD−アミノ酸コーティングを残す適切なキャリア、例えば、液体キャリア、と共に表面に適用可能である。具体的な例では、D−アミノ酸は、例えば、ポリマー/D−アミノ酸フィルムを表面に吹付け付けることにより、例えば、ポリマー/D−アミノ酸溶液中にディッピングまたはこれを表面にスピンコーティングすることにより、または他の共有結合もしくは非共有結合の手段により表面に直接付着される。他の例では、表面は、D−アミノ酸を吸収する吸収性物質(例えば、ヒドロゲル)でコートされる。
【0059】
D−アミノ酸は、病院または医学環境での表面の処理に適している。本明細書記載のD−アミノ酸および組成物をコーティング、潤滑剤、洗浄または清浄溶液、等として適用した場合、バイオフィルム形成を阻害またはバイオフィルム形成を低減することができる。
【0060】
本明細書記載のD−アミノ酸は、また、特に、織物繊維材料を保持する場合、の処理に適する。このような材料は、例えば、絹、ウール、ポリアミドまたはポリウレタン、および特に各種セルロース繊維材料の染色されていないおよび染色されたまたは印刷された繊維材料である。このような繊維材料は、例えば、天然セルロース繊維、例えば、綿、リネン、ジュートおよび麻、ならびにセルロースおよび再生セルロースである。紙、例えば、衛生目的で使われる紙にも、1つまたは複数の本明細書記載のD−アミノ酸を使った抗バイオフィルム特性を付与することもできる。また、不織布、例えば、おむつ/おしめ、生理用ナプキン、パンティーライナー、および衛生用布巾および家庭用品に、抗バイオフィルム特性を付与することもできる。
【0061】
また、本明細書記載のD−アミノ酸は、特に、工業配合物、例えば、コーティング、潤滑剤等に抗バイオフィルム特性を付与する、または維持する処理をするのにも適している。
【0062】
また、本明細書記載のD−アミノ酸は、洗浄および清浄配合物、例えば、液体または粉末洗浄剤または柔軟剤にも使用可能である。本明細書記載のD−アミノ酸は、また、硬質表面の洗浄と消毒のための家庭用および汎用洗浄剤としても使用可能である。代表的洗浄配合物は、例えば、次の組成を有する:0.01〜5重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸、3.0重量%のオクチルアルコール4EO、1.3重量%の脂肪アルコールC8〜C10ポリグルコシド、3.0重量%のイソプロパノール、および水添加100%。
【0063】
また、本明細書記載のD−アミノ酸は、木材の抗バイオフィルム処理および革の抗バイオフィルム処理、抗バイオフィルム特性を付与した革の保護および革の貯蔵にも使用可能である。本明細書記載のD−アミノ酸は、また、化粧品および家庭用品を微生物の被害から保護するためにも使用可能である。
【0064】
本明細書記載のD−アミノ酸は、問題になっている対象物品または対象物品の表面に1つまたは複数の本明細書記載のD−アミノ酸を組み込むことにより、またはコーティングまたはフィルムの一部としてこれらの表面に抗バイオフィルムを適用することにより、生物付着を防ぐ、または表面の微生物蓄積を除去または管理するのに有用である。このような表面は、海洋環境(淡水、半塩水および塩水環境を含む)と接触する表面、例えば、船体、ドックの表面または循環または通過水システム中のパイプの内面を含む。同様な生物付着を受けやすい他の表面としては、例えば、雨水露出壁、シャワー室の壁、屋根、排水路、プール域、サウナ、例えば、地階またはガレージなどの湿気環境露出フロアおよび壁、、および工具箱およびアウトドア家具さえも挙げられる。米国特許第7、618、697号(参照により全体が組み込まれる)は、生物付着から表面を保護するコーティングまたはフィルムとして有用な化合物を開示している。
【0065】
フィルムまたはコーティングの一部として適用する場合は、本明細書記載の1つまたは複数のD−アミノ酸は、結合剤を含む組成物の一部としてもよい。結合剤は、本抗バイオフィルムと適合する任意のポリマーまたはオリゴマーであってよい。結合剤は、抗付着組成物調製の前のポリマーまたはオリゴマーの形であってもよく、または、基質への適用後を含む調製の間または後の重合により形成されてもよい。特定の適用、例えば、特定のコーティング適用では、適用後の抗付着組成物オリゴマーまたはポリマーを架橋させることが望ましいであろう。本明細書で使われる用語の「結合剤」には、材料、例えば、木材、プラスチック、ガラスおよび他の表面の保護の目的で商業的に使用されているグリコール、オイル、ワックスおよび界面活性剤もまた含まれる。例には、木材用防水剤、ビニル保護剤、保護ワックス、等が挙げられる。
【0066】
組成物は、コーティングまたはフィルムであってもよい。組成物が、例えば、カレンダー仕上げまたは共押し出しを含む接着剤の使用または溶融塗布により表面に適用される熱可塑性フィルムの場合は、結合剤は、フィルム調製に使用される熱可塑性ポリマーマトリックスである。組成物がコーティングの場合には、組成物は、液体溶液または懸濁液、ペースト、ゲル、オイルとして適用でき、またはコーティング組成物は、固体、例えば、粉末コーティングでもよく、これは、その後、熱、UV光他の方法により硬化される。
【0067】
本発明の組成物は、コーティングまたはフィルムでもよいので、結合剤は、コーティング調製またはフィルム調製に使用される任意のポリマーを含むことができる。例えば、結合剤は、熱硬化、熱可塑、エラストマー、元々架橋しているまたは架橋させたポリマーである。熱硬化、熱可塑、エラストマー、元々架橋しているまたは架橋させたポリマーには、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ハロゲン化ビニルポリマー例えば、PVC、天然および合成ゴム、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、不飽和ポリアミド、ポリイミド、シリコン含有およびカルバマートポリマー、フッ素化ポリマー、置換アクリルエステル由来、例えば、エポキシアクリラート、ウレタンアクリラートまたはポリエステルアクリラート由来架橋性アクリル樹脂が含まれる。また、ポリマーは、前出材料の混合物でも、共重合体でもよい。
【0068】
生体適合性コーティングポリマー、例えば、ポリ[−アルコキシアルカノアート−co−3−ヒドロキシアルケノアート](PHAE)ポリエステル(Geiger et.al.Polymer Bulletin 52、65−70(2004))もまた、本発明の結合剤として使用可能である。アルキド樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン含有ポリマー、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、フッ素化ポリマーおよびビニルアセタートポリマー、ビニルアルコールおよびビニルアミンは、本発明に有用な通常のコーティング結合剤の非制限的例である。他の既知のコーティング結合剤は、本開示の一部である。
【0069】
コーティングは、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアナート、イソシアヌラート、ポリイソシアナート、エポキシ樹脂、無水物、ポリ酸およびアミンで架橋可能であり、アクセラレータを加えても加えなくてもよい。本明細書記載の組成物は、生物蓄積に好適な条件に暴露される表面に適用される、例えば、コーティングであってもよい。前記コーティング中の本明細書記載の1つまたは複数のD−アミノ酸の存在が、表面への生物の付着を防ぐ。
【0070】
本明細書記載のD−アミノ酸は、完全なコーティングまたはペンキ配合物、例えば、海洋ゲルコート、セラック、ワニス、ラッカーもしくはペンキの一部であってもよく、または抗付着組成物は、本発明のポリマーと結合剤のみ、または本発明のポリマー、結合剤およびキャリア物質のみを含んでもよい。このようなコーティング配合物または適用において、当技術分野で既知の他の添加物もまた、適する。
【0071】
コーティングは溶媒ベースでも水性でもよい。水性コーティングは、通常、より環境に優しいと考えられる。一部の例では、コーティングは、本明細書記載の1つまたは複数のD−アミノ酸、および結合剤または水ベースコーティングもしくはペンキの水性分散液であってもよい。例えば、コーティングは、1つまたは複数のD−アミノ酸およびアクリル、メタクリル酸またはアクリルアミドポリマーもしくはコポリマーまたはポリ[−アルコキシアルカノアート−co−3−ヒドロキシアルケノアート]ポリエステルの水性分散液を含んでもよい。
【0072】
コーティングは、前にコートされた対象物品上に適用された保護剤コーティング、仕上げ塗装または保護ワックス、等の既にコーティングがなされている表面にも適用可能である。コーティングシステムには、海洋コーティング、木材コーティング、他の金属用コーティングおよびプラスチックおよびセラミック上のコーティングが含まれる。代表的海洋コーティングは、不飽和ポリエステル、スチレンおよび触媒を含むゲルコートである。一部の例では、コーティングは、ハウスペイント、または他の修飾的または保護ペンキである。また、ペンキまたはセメント、コンクリートまたは他の石造物品に適用される他のコーティングであってもよい。コーティングは、地階または基礎用等の防水剤であってもよい。
【0073】
一部の例では、コーティング組成物は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、へら引き、または刷毛、ローラーまたは他の塗布器を含む任意の従来の手段により表面に塗装できる。乾燥または硬化時間を考慮して適用してもよい。
【0074】
コーティングまたはフィルムの厚さは、用途に応じて変わるが、当業者ならわずかな試験の後に容易に決定できる。
【0075】
一部の例では、本明細書記載の組成物は、保護用のラミネートフィルムの形であってもよい。このようなフィルムは、熱硬化、熱可塑、エラストマー、または架橋ポリマーを含んでもよい。これらに限定されないが、このようなポリマーの例には、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ハロゲン化ビニルポリマー、例えば、PVC、天然および合成ゴム、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和のポリエステル、不飽和のポリアミド、ポリイミド、フッ素化ポリマー、シリコン含有およびカルバマートポリマーが含まれる。ポリマーは、また、前述の材料の混合物および共重合体であってもよい。
【0076】
本明細書記載の組成物がプリフォームフィルムである場合は、例えば、接着剤の使用、または表面上への共押し出しにより表面に適用可能である。また、本発明のエステルを採用するのが好都合でもあるシーラントまたはコーキングの使用が必要と思われる締め具を介して機械的に貼り付けることもできる。プラスチックフィルムは、また、カレンダー仕上げ、溶融塗布およびシュリンクラップを含む熱を使った適用が可能である。
【0077】
他の例では、本明細書記載の組成物は、研磨剤、例えば、家具研磨剤、または分散剤もしくは界面活性剤配合物、例えば、グリコールもしくはミネラルオイル分散剤または例えば、木材保護に使われるような他の配合物の一部であってもよい。有用な界面活性剤の例には、これらに限定されないが、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレアート(PST)、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレアート(PSH)、ポリオキシエチレン6トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン12トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン18トリデシルエーテル、TWEEN(登録商標)界面活性剤、トリトン(登録商標)界面活性剤、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、例えば、PLURONIC(登録商標)およびポロキサマー(登録商標)製品シリーズ(BASF)を含む、ポリオキシエチレンベース界面活性剤が含まれる。他のマトリックス形成成分には、デキストラン、直鎖PEG分子(MW500〜5、000、000)、星形PEG分子、コーム型およびデンドリマー状、多分岐PEG分子、ならびに類似の直鎖、星形、およびデンドリマーポリアミンポリマー、および種々の炭酸塩化、全フッ素置換(例えば、DUPONT ZONYL(登録商標)フッ素系界面活性剤)およびシコーン化(例えば、ジメチルシロキサン−エチレンオキシドブロック共重合体)界面活性剤が含まれる。
【0078】
本明細書記載のD−アミノ酸の広範囲の適用を考えると、D−アミノ酸含有組成物は、他の添加物、例えば、抗酸化剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン、ホスフィットまたはホスホニット、ベンゾフラン−2−オン、チオ相乗剤、ポリアミド安定剤、金属ステアラート、各形成剤、充填剤、強化剤、潤滑剤、乳化剤、染料、顔料、分散剤、他の光学的光沢剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、等、例えば、下記に列挙した材料、またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0079】
処置される基質は、無機または有機基質、例えば、金属または金属合金;上述のように元来架橋しているまたは架橋させた熱可塑性、エラストマーポリマー;天然ポリマー、例えば、木材またはゴム;セラミック材料;ガラス;革または他の織物であってもよい。基質は、例えば、非金属無機表面、例えば、シリカ、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄、炭素、シリコン、種々のケイ酸塩およびゾルゲル、石造物、および複合材料、例えば、グラスファイバーおよびプラスチック木材(ポリマーと木材削りくず、木粉または他の木材粒子の混合物)であってもよい。
【0080】
基質は、同じまたは異なる部材の各層からなる多層対象物品であってもよい。コートまたは積層される表面は、既にコーティングまたは積層を適用した露出表面であってもよい。
【0081】
コートまたは積層される無機または有機基質は、どのような固形形態であってもよい。
【0082】
例えば、ポリマー基質は、フィルムの形状のプラスチック、射出成形対象物品、押し出し製品、繊維、フェルトまたは織物であってもよい。例えば、耐久財、例えば、壁板、鼻隠し板および郵便受け、の構築組み立てまたは製造に使用される成形または押し出し高分子対象物品は、すべて本D−アミノ酸の組込みの利益を得ることができる。特定の状況下では、1つまたは複数のD−アミノ酸を、例えば、成形プロセス等の形成の間に高分子対象物品中に組み込むことができる。
【0083】
本方法から利益が得られるプラスチックには、これらに限定されないが、耐久財または機械部品の構築または製造に使われる下記を含むプラスチックが含まれる。アウトドア家具、ボート、壁板、屋根ふき材、つや出し材料、保護フィルム、ステッカー、シーラント、プラスチック木材および繊維強化複合材料等の複合材料、ディスプレイに使われるフィルムを含む機能性フィルムならびに合成繊維から構築される対象物品、例えばオーニング、例えば、キャンバスまたは帆に使われる繊維およびゴム対象物品、例えば、アウトドアマット、フロアカバー、プラスチックコーティング、プラスチック容器およびパッケージング材料;キッチンおよび浴室用具(例えば、ブラシ、シャワーカーテン、スポンジ、バスマット)、ラテックス、フィルター材料(空気および水フィルター)、医学の分野で使われるプラスチック対象物品、例えば、包帯材、注射器、カテーテル等、いわゆる「医療機器」、手袋およびマットレス。代表的なこのようなプラスチックスは、ポリプロピレン、ポリエチレン、PVC、POM、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸およびメタクリル酸、ポリブタジエン、熱可塑性ポリオレフィン、イオノマー、不飽和のポリエステルおよびABS、SANおよびPC/ABSを含むポリマー樹脂の混合物である。
【0084】
1つまたは複数の本明細書記載のD−アミノ酸の再循環冷却水中への組込み等の特定の状況では、パイプおよび他の機械的な装置の壁のバイオフィルム蓄積を防ぐために、数ppmのD−アミノ酸の使用で有効である。しかし、浸出に起因する幾分かのロス、アミノ酸に関連する反応による幾分かのロスおよび分解反応等による幾分かのロス等とは、実施に当たり、適用が想定される期間にわたり、D−アミノ酸が暴露される環境的ストレスを考慮に入れて、有効であると思われる濃度を有する配合物を調製する必要があることを意味する。
【0085】
例えば、工業用水への適用では、処理される水に対して、約0.001重量%〜約10重量%または、例えば、0.001重量%〜10重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能であり、しばしば約10%未満の上限値が使用可能であり、例えば、約5%、約3%、約2%または約1%以下でさえも、多くの環境中で有効である可能性があり、例えば、約0.01%〜約5%、または約0.01%〜約2%の1つまたは複数のD−アミノ酸の添加レベルが使用可能である。他の実施形態では、10%、5%、3%、2%、1%、未満の上限値が使用可能であり、例えば、0.01重量%〜5重量%、または約.01重量%〜2重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能である。本D−アミノ酸の高活性を考慮すれば、非常に少ない量で、環境中で有効であり、約0.000001%〜約0.5%の濃度、例えば、約0.000001%〜約0.1%または、約0.000001%〜約0.01%の濃度が、工業用水適用で使用可能である。他の実施形態では、0.000001%〜0.5%の濃度、例えば、0.000001%〜0.1%または0.000001%〜0.01%濃度が、工業用水適用で使用可能である。
【0086】
D−アミノ酸、特に低濃度のものは、摂取の可能性のある用途、例えば、バイオフィルム発生の可能性のある再利用可能水ボトルまたは飲用容器であっても安全に使用可能である。このような水輸送機器の表面は、1つまたは複数の本明細書記載のD−アミノ酸を含む製剤で洗浄可能であり、または低レベルの1つまたは複数のD−アミノ酸を、導管を通過する水の中に導入可能である。例えば、約0.0001重量%未満または約1重量%までの、典型的には、約0.1重量%未満の1つまたは複数のD−アミノ酸をこのような水中に導入できる。他の例では、0.0001重量%以下または1重量%まで、典型的には、0.1重量%未満の1つまたは複数のD−アミノ酸を、このような水の中に導入可能である。本D−アミノ酸の高活性を考慮すると、非常に少ない量で多くの環境中で有効であり、約0.000001%〜約0.1%、例えば、約0.000001%〜約0.01%、または約0.000001%〜約0.001%がこのような用途に使用可能である。別の例では、0.000001%〜0.1%、0.000001%〜0.01%、または0.000001%〜0.001%の濃度が、使用可能である。
【0087】
一部の例では、液体製剤は、約0.0005μM D−アミノ酸〜約50μM D−アミノ酸、例えば、約0.001μM D−アミノ酸〜約25μM D−アミノ酸、約0.002μM D−アミノ酸〜約10μM D−アミノ酸、約0.003μM D−アミノ酸〜約5μM D−アミノ酸、約0.004μM D−アミノ酸〜約1μM D−アミノ酸、約0.005μM D−アミノ酸〜約0.5μM D−アミノ酸、約0.01μM D−アミノ酸〜約0.1μM D−アミノ酸、または約0.02μM D−アミノ酸〜約0.1μM D−アミノ酸の濃度で調製される。他の実施形態では、液体製剤は、0.0005μM D−アミノ酸〜50μM D−アミノ酸、0.001μM D−アミノ酸〜25μM D−アミノ酸、0.002μM D−アミノ酸〜10μM D−アミノ酸、0.003μM D−アミノ酸〜5μM D−アミノ酸、0.004μM D−アミノ酸〜1μM D−アミノ酸、0.005μM D−アミノ酸〜0.5μM D−アミノ酸、0.01μM D−アミノ酸〜0.1μM D−アミノ酸、または0.02μM D−アミノ酸〜0.1μM D−アミノ酸の濃度で調製される。好ましくは、D−アミノ酸組成物は、ナノモル濃度、例えば、約5nM、約10nM、約15nM、約20nM、約25nM、約30nM、約50nM、またはそれ以上の濃度である。他の実施形態では、D−アミノ酸組成物は、約5nM、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、または50nMの濃度である。
【0088】
コーティングまたはフィルムとして使用される場合は、短期の使用には、少量の1つまたは複数のD−アミノ酸の存在でよく、例えば、季節限定または廃棄用途等に使用可能である。一般的に、約0.001%以下から約5%まで、例えば、約3%まで、または約2%までを、このようなコーティングまたはフィルムに使用可能である。他の実施形態では、0.00重量1%から5重量%まで、または重量3%まで、または2重量%までの1つまたは複数のD−アミノ酸を使用可能である。本D−アミノ酸の高活性を考慮すれば、多くの環境中で非常に少量で有効であり、約0.0001%〜約1%、例えば、約0.0001%〜約0.5%、または約0.0001%〜約0.01%の濃度をコーティング適用に対し使用可能である。他の実施形態では、0.0001重量%〜1重量%、0.0001重量%〜0.5重量%、または0.0001重量%〜0.01重量%の濃度の1つまたは複数のD−アミノ酸をコーティング適用に対し使用可能である。
【0089】
より堅牢な用途、例えば、海洋、プール、シャワーまたは建設用材料へのコーティングに対しては、より高レベルの1つまたは複数のD−アミノ酸を使用可能である。例えば、コーティングまたはフィルム配合物ベースで約0.01%〜約30%を採用可能である;多くの用途では、約0.01%〜約15%、または約0.01%〜約10%で有効であり、約0.01%〜約5%、または約0.01%〜約1%、または約0.1%以下のD−アミノ酸でさえ、使用可能であることが多い。他の実施形態では、0.01%〜15%、または0.01%〜10%で有効であり、0.01%〜5%、または0.01%〜1%、またはただの0.1%の1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能であることが多い。
【0090】
成形プラスチック製品への組込みに対しては、約0.00001%〜約10%の1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能で、例えば、重量ベースで、約0.0001%〜約3%、例えば、約0.001%から約1%までの1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能でありうる。一部の実施形態では、0.00001%〜10%の1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能であり、または0.0001%〜3%、または0.001%から1%までの1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能である。すでに成形済みの製品または線維の表面中にD−アミノ酸が含浸された状況では、表面に存在するD−アミノ酸の実際の量は、基質材料、含浸組成物の配合、および含浸ステップの間に使われた時間と温度に依存すると思われる。本D−アミノ酸の高活性を考慮すると、非常に少ない量で多くの環境中で有効であり、重量ベースで、約0.0001%〜約1%、例えば、約0.0001%〜約0.1%、もしくは約0.0001%〜約0.01%の濃度がプラスチックスに使用可能である。他の実施形態では、0.0001重量%〜1重量%、もしくは0.0001重量%〜0.1重量%、もしくは、0.0001重量%〜0.01重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸をプラスチックに使用可能である。
【0091】
D−アミノ酸を使った処理によるバイオフィルムの阻害または減少は、当技術分野で充分に確立された技術を使って測定できる。これらの技術は、吸着生物の発色を測定し、顕微鏡法を使ってインビボで微生物を観察することにより細菌の付着を評価すること、または毒性試薬に応答したバイオフィルム中の細胞死をモニターすることを可能にする。処理後、バイオフィルムは、バイオフィルムに覆われている表面積、厚さ、および一貫性(例えば、バイオフィルムの健全性)を減らすことができる。バイオフィルムアッセイの非制限的例には、マイクロタイタープレートバイオフィルムアッセイ、蛍光ベースバイオフィルムアッセイ、Walker et al.、Infect.Immun.73:3693-3701(2005)による静的バイオフィルムアッセイ、空気液体界面アッセイ、コロニーバイオフィルムアッセイ、およびKadouri Drip−Fedバイオフィルムアッセイ(Merritt et al.、(2005)微生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Microbiology)1.B.1.1−1.B.1.17)が含まれる。このようなアッセイは、バイオフィルム形成の破壊または阻害に対するD−アミノ酸の活性の測定に使用できる(Lew et al.、(2000)Curr.Med.Chem.7(6):663−72;Werner et al.、(2006)Brief Funct.Genomic Proteomic 5(1):32−6)。
【0092】
一部の例では、D−アミノ酸は、第2の試薬、例えば、殺生物剤、抗生物質と組み合わせて使用し、バイオフィルムを処理するまたはバイオフィルムの形成を防ぐことができる。抗生物質は、順次または同時にD−アミノ酸と組み合わせることができる。例えば、本明細書記載の組成物のいずれかを1つまたは複数のD−アミノ酸と、1つまたは複数の第2の試薬とを含むように処方することができる。
【0093】
抗生物質は、細菌の増殖を阻害する、または細菌を死滅させる当業者に既知の任意の化合物でよい。有用な抗生物質の非制限的例には、リンコサミド(クリンダマイシン);クロラムフェニコール;テトラサイクリン(例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン);アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、アミカシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン);ベータ−ラクタム(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、イミペネム、アズトレオナム);糖ペプチド抗生物質(例えば、バンコマイシン);ポリペプチド抗生物質(例えば、バシトラシン);マクロライド(エリスロマイシン)、アンフォテリシン;スルホンアミド(例えば、スルファニルアミド、スルファメトキサゾール、スルファセタミド、スルファジアジン、スルフイソキサゾール、スルファシチン、スルファドキシン、マフェナイド、p‐アミノ安息香酸、トリメトプリム−スルファメトキサゾール);メテナミン;ニトロフラントイン;フェナゾピリジン;トリメトプリム;リファンピシン;メトロニダゾール;セファゾリン;リンコマイシン;スペクチノマイシン;ムピロシン;キノロン(例えば、ナリジクス酸、シノキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、ペルフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、レボフロキサシン);ノボビオシン;ポリミキシン;グラミシジン;および抗シュードモナス(例えば、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリンカルベニシリン)またはそれらのいずれかの塩もしくは変異体が含まれる。このような抗生物質は、市販品として、例えば、Daiichi Sankyo、Inc.(Parsipanny、NJ)、Merck(Whitehouse Station、NJ)、Pfizer(New York、NY)、Glaxo Smith Kline(Research Triangle Park、NC)、Johnson & Johnson(New Brunswick、NJ)、AstraZeneca(Wilmington、DE)、Novartis(East Hanover、NJ)、およびSanofi−Aventis(Bridgewater、NJ)から入手可能である。使用される抗生物質は、細菌感染のタイプに依存する。
【0094】
追加の既知の殺生物剤には、トリクロサン、二酸化塩素、ビグアナイド、クロルヘキシジン、キシリトール、等が含まれる。
【0095】
抗菌剤の有用な例には、これらに限定されないが、次のものが含まれる:ピリチオン、特に、亜鉛錯体(ZPT);Octopirox(登録商標);ジメチルジメチロールヒダントイン(Glydant(登録商標));メチルクロロイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリノン(Kathon CG(登録商標));ナトリウムスルフィット;ナトリウムビスルフィット;イミダゾリジニル尿素(Germall 115(登録商標))、ジアゾリジニル尿素(Germaill II(登録商標));ベンジルアルコール;2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1、3−ジオール(Bronopol(登録商標));ホルマリン(ホルムアルデヒド);ヨードプロピニルブチルカルバマート(Polyphase P100(登録商標));クロルアセトアミド;メタンアミン;メチルジブロモニトリルグルタロニトリル(1、2−ジブロモ−2、4−ジシアノブタンまたはTektamer(登録商標));グルタルアルデヒド;5−ブロモ−5−ニトロ−1、3−ジオキサン(Bronidox(登録商標));フェネチルアルコール;o−フェニルフェノール/ナトリウムo−フェニルフェノール;ナトリウムヒドロキシメチルグリシナート(Suttocide A(登録商標));ポリメトキシ二環式オキサゾリジン(NuoseptC(登録商標));ジメトキサン;チメロサール;ジクロロベンジルアルコール;カプタン;クロルフェネシン;ジクロロフェン;クロロブタノール;グリセリルラウラート;ハロゲン化ジフェニルエーテル;2、4、4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(トリクロサン(登録商標)またはTCS);2、2’−ジヒドロキシ−5、5’−ジブロモ−ジフェニルエーテル;フェノール性化合物;フェノール;2−メチルフェノール;3−メチルフェノール;4−メチルフェノール;4−エチルフェノール;2、4−ジメチルフェノール;2、5−ジメチルフェノール;3、4−ジメチルフェノール;2、6−ジメチルフェノール;4−n−プロピルフェノール;4−n−ブチルフェノール;4−n−アミルフェノール;4−tert−アミルフェノール;4−n−ヘキシルフェノール;4−n−ヘプチルフェノール;モノおよびポリアルキルおよび芳香族ハロフェノール;p−クロロフェノール;メチルp−クロロフェノール;エチルp−クロロフェノール;n−プロピルp−クロロフェノール;n−ブチルp−クロロフェノール;n−アミルp−クロロフェノール;sec−アミルp−クロロフェノール;シクロヘキシルp−クロロフェノール;n−ヘプチルp−クロロフェノール;n−オクチルp−クロロフェノール;o−クロロフェノール;メチルo−クロロフェノール;エチルo−クロロフェノール;n−プロピルo−クロロフェノール;n−ブチルo−クロロフェノール;n−アミルo−クロロフェノール;tert−アミルo−クロロフェノール;n−ヘキシルo−クロロフェノール;n−ヘプチルo−クロロフェノール;o−ベンジルp−クロロフェノール;o−ベンジル−m−メチルp−クロロフェノール;o−ベンジル−m;m−ジメチルp−クロロフェノール;o−フェニルエチルp−クロロフェノール;o−フェニルエチル−m−メチルp−クロロフェノール;3−メチルp−クロロフェノール;3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−エチル−3−メチルp−クロロフェノール;6−n−プロピル−3−メチルp−クロロフェノール;6−イソ−プロピル−3−メチルp−クロロフェノール;2−エチル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−sec−ブチル−3−メチルp−クロロフェノール;2−イソ−プロピル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−ジエチルメチル−3−メチルp−クロロフェノール;6−イソ−プロピル−2−エチル−3−メチルp−クロロフェノール;2−sec−アミル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;2−ジエチルメチル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−sec−オクチル−3−メチルp−クロロフェノール;p−クロロ−m−クレゾール:p−ブロモフェノール;メチルp−ブロモフェノール;エチルp−ブロモフェノール;n−プロピルp−ブロモフェノール;n−ブチルp−ブロモフェノール;n−アミルp−ブロモフェノール;sec−アミルp−ブロモフェノール;n−ヘキシルp−ブロモフェノール;シクロヘキシルp−ブロモフェノール;o−ブロモフェノール;tert−アミルo−ブロモフェノール;n−ヘキシルo−ブロモフェノール;n−プロピル−m、m−ジメチルo−ブロモフェノール;2−フェニルフェノール;4−クロロ−2−メチルフェノール;4−クロロ−3−メチルフェノール;4−クロロ−3、5−ジメチルフェノール;2、4−ジクロロ−3、5−ジメチルフェノール;3、4、5、6−テラブロモ−2−メチルフェノール;5−メチル−2−ペンチルフェノール;4−イソプロピル−3−メチルフェノール;パラ−クロロ−メタ−キシレノール(PCMX);クロロチモール;フェノキシエタノール;フェノキシイソプロパノール;5−クロロ−2−ヒドロキシジフェニルメタン;レゾルシノールおよびその誘導体;レゾルシノール;メチルレゾルシノール;エチルレゾルシノール;n−プロピルレゾルシノール;n−ブチルレゾルシノール;n−アミルレゾルシノール;n−ヘキシルレゾルシノール;n−ヘプチルレゾルシノール;n−オクチルレゾルシノール;n−ノニルレゾルシノール;フェニルレゾルシノール;ベンジルレゾルシノール;フェニルエチルレゾルシノール;フェニルプロピルレゾルシノール;p−クロロベンジルレゾルシノール;5−クロロ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;4’−クロロ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;5−ブロモ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;4’−ブロモ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;ビスフェノール酸化合物;2、2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール);2、2’−メチレンビス−(3、4、6−トリクロロフェノール);2、2’−メチレンビス(4−クロロ−6−ブロモフェノール);ビス(2−ヒドロキシ−3、5−ジクロロフェニル)スルフィド;ビス(2−ヒドロキシ−5−クロロベンジル)スルフィド;安息香酸エステル(パラベン);メチルパラベン;プロピルパラベン;ブチルパラベン;エチルパラベン;イソプロピルパラベン;イソブチルパラベン;ベンジルパラベン;ナトリウムメチルパラベン;ナトリウムプロピルパラベン;ハロゲン化カルバニリド;3、4、4’−トリクロロカルバニリド(トリクロカーバン(登録商標)またはTCC);3−トリフルオロメチル−4、4’−ジクロロカルバニリド;3、3’、4−トリクロロカルバニリド;クロルヘキシジンおよびそのジグルコナート;ジアセタートおよびジヒドロクロリド;ウンデセン酸;チアベンダゾール、ヘキセチジン;ポリ(ヘキサメチルエネビグアニド)塩酸塩(Cosmocil(登録商標));銀化合物、例えば、有機銀塩またはJM Acticare(登録商標)および微粒子化した銀粒子等のそれらの製剤を含む無機銀塩、銀塩化物。
【0096】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これは、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものではない。室温は、20〜25℃の範囲の温度を示す。
【実施例】
【0097】
材料と方法
株と培地。 Luria−Bertani(LB)培地中、37℃またはMSgg培地(Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:11621(2001))中、23℃で枯草菌NCIB 3610およびその誘導体を成長させた。固形培地には、1.5%Bacto agarを添加した。必要な場合は、枯草菌の増殖用に抗生物質を次の濃度で添加した:テトラサイクリン10μg/ml、およびエリスロマイシン5μg/ml、スペクチノマイシン500μg/ml。
【0098】
本実験で使った株:
全枯草菌株は、強固なバイオフィルムを形成する野生株のNCIB3610の誘導体である(Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:11621(2001)) ;
株FC5(PepsA−lacZ cat)(Chu et al.、Mol.Microbiol.59:1216(2006)) ;
株FC122(PyqxM−lacZ spec)(Chuetal.、Mol.Microbiol.59:1216(2006)) ;
株IKG55(ΔracX::spec ΔylmE::tetR) ;
株DR−30(tasA−mCherry cat);
株IKG40(yqxM2);
株IKG44(yqxM6);
株IKG50(yqxM2 tasA−mCherry);
株IKG51(yqxM6 tasA−mCherry);
ブドウ球菌SC01(Kolter labコレクション由来)。
【0099】
株構築。標準的手法を使って株を構築した(J.Sambrook、D.W.Russell、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning.ALaboratory Manual.)(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、USA、2001)。ロングフランキングPCR変異誘発を使ってΔracX::specおよびΔylmE::tetRを生成した(Wach、Yeast 12:259(1996))。DNAを、コンピテント細胞のDNA媒介形質転換により、株PY79誘導体中に導入した(Gryczan et al.、J.Bacteriol.134:318(1978))。SPP1ファージ媒介形質導入を使って、抗生物質耐性結合変異をPY79誘導体からNCIB 3610中に導入した(Yasbin et al.、J.Virol.14:1343(1974))。
【0100】
試薬。 アミノ酸をSigma−Aldrich(St.Louis、MO)から入手した。14C−D−チロシンおよび14C−L−プロリンをAmerican Radiolabeled Chemicals、Inc(St.Louis、MO)から入手した。
【0101】
コロニーおよびペリクル形成。固形培地上へのコロニー形成形成のために、細胞を最初にLB培地中で指数増殖期迄増殖し、3μlの培養液を1.5%Bacto agar含有固形MSgg培地上に配置した。プレートを23℃でインキュベートした。液体培地中のペリクル形成のために、細胞を指数増殖期迄成長させ、12ウエルプレート(VWR)中で、6μlの培養液を6mlの培地と混合した。プレートを23℃でインキュベートした。コロニーとペリクルの画像をSPOTカメラ(Diagnostic Instruments、USA)で撮影した。
【0102】
馴化培地の調製。LB培地中で細胞を指数増殖期まで成長させた。0.1mlの培養液を100mlのMSgg培地に添加し、500mlビーカー中、23℃で振盪を加えずに成長させた。次に、遠心分離を使って8、000rpm、15分間ペリクルおよび馴化培地を集めた。馴化培地(上清液)を取りだし、0.22μmフィルターを通して濾過した。濾液を4℃で貯蔵した。さらなる精製のために、C−18 Sep Pakカートリッジを使って、5%毎のステップの0%〜100%メタノールによる段階的溶出により、バイオフィルム阻害活性を分別した。
【0103】
馴化培地中のD−アミノ酸の特定および定量化。(A)アミノ酸の定量化。Tyr、Leu、Met、およびTrpの標準溶液を種々の濃度(0.001〜0.2mM)で調製した。これらの溶液を0%〜60%から100%CH3CN(0.1%ギ酸含有)のステップ勾配溶媒系(Thermo Scientific Hypercarb 4.6mm×100mm、5μm)の(0−12−20分)の条件でLC/MSで分析し、イオンカウント積分により各アミノ酸濃度の検量線を得た。馴化培地試料を、全4つのキラルアミノ酸の全体濃度測定と同じ方法でLC/MSを使って分析した。(B)D−アミノ酸の特定。試料をSpeedVac中で乾燥し、100μLの1N NaHCO3に溶解した。10mg/mLのL−FDAA(N−(2、4−ジニトロ−5−フルオロ−フェニル)−L−アラニンアミド)溶液をアセトン中で調製し、50μLのアセトン溶液を1N NaHCO3中の試料に添加した。反応混合物を80℃で5分間インキュベートし、50μLの2N HClを添加して反応を停止させた。誘導体を、10%〜100%CH3CN(0.1%ギ酸含有)の勾配溶媒系を使って30分間にわたりLC/MS(Agilent 1200シリーズHPLC/6130シリーズMS、Phenomenex Luna C18、4.6mm×100mm、5μm)を使って分析した。L−FDAA−アミノ酸の保持時間をL−FDAA真性標準アミノ酸比較した。
【0104】
クリスタルバイオレット染色。細胞を6ウエルプレートで成長させたこと以外は、以前記載したのと同様にクリスタルバイオレット染色を行った(O’Tooleetal.、Mol.Microbiol.30:295(1998))。ウエルを500μlの1.0%クリスタルバイオレット染料で染色し、2mlの再蒸留水で2回洗浄し、完全に乾燥した。
【0105】
蛍光顕微鏡観察。蛍光顕微鏡分析用として、1mlの培養液を採取した。細胞をPBS緩衝液で洗浄し、50μlのPBS緩衝液中に懸濁した。カバースライドをポリL−リシン(Sigma)で前処理した。試料をOlympusワークステーションBX61顕微鏡を使って調査した。自動化ソフトウェアプログラムSimplePCIを使って画像を取り込み、MetaMorphプログラム(Universal Imaging Corporation)を使って解析した。
【0106】
透過型電子顕微鏡観察および免疫標識。試料を蒸留水で希釈し、炭素またはホルムバール/炭素被覆グリッド上に吸着させた。真空エバポレーター中でグロー放電で使用する前にグリッド表面を親水性にした。試料がフィルム表面上に吸着されるとすぐに、過剰試料を濾紙(Whatman#1)で拭き取り、グリッドを5μlの染色溶液(1〜2%水性ウラニルアセタート)上に数分間浮かべた後、拭き取った。試料を乾燥し、Tecnai(登録商標)G2SpiritBioTWIN顕微鏡を使い、加速電圧80KVで調査した。AMT 2k CCDカメラで画像を撮影した。
【0107】
TasAの免疫局在性のために、ニッケルグリッド上の希釈試料を0.1%ツイーン20含有PBS中の1%脱脂粉ミルクから成るブロッキング緩衝液上に30分間浮かべ、ブロッキング緩衝液で1:150に希釈した抗TasA一次抗体と共に2時間インキュベートした後、PBSTで洗浄し、ヤギ抗ウサギ20nm金二次抗体(Ted Pella、Inc.、Redding、CA)に1時間暴露し洗浄した。全てのグリッドをウラニルアセタートおよび鉛シトラートで染色した後、上述のように観察した。
【0108】
β−ガラクトシダーゼ活性のアッセイ。細胞をMSgg培地中、37℃でウォーターバスを使って浸透を加えながら培養した。1mlの培養液を各時点で採取した。β−ガラクトシダーゼ活性を以前に記載の方法と同様に測定した(Chai et al.、Mol.Microbiol.67:254(2008))。
【0109】
アミノ酸の細胞壁への組込み。増殖の指数増殖期の中間点で50mlの培養液中の細胞を遠心分離により採取し、0.05Mのリン酸塩緩衝液(pH7)で洗浄し、5mlの同じ緩衝液中に再懸濁した。細胞を、10μCi/mlの14C−D−チロシンまたは14C−L−プロリンで処理し、37℃で2時間、さらにインキュベートした。全細胞および細胞壁画分の放射能をモニターし、間隔を置いて試料を取り出した。全細胞中への取り込みの測定用として、0.1mlの試料を採取した。細胞壁への取り込みの測定用として、0.5mlの試料を採取した。細胞を遠心分離により採取し、0.1mg/mlリゾチーム含有SM緩衝液[0.5Mショ糖、20mM MgCl2、および10mMカリウムホスファート、pH(6.8)]中に再懸濁した。次に、細胞を37℃で10分間インキュベートした。その後、得られたプロトプラストを5000rpmで10分間の遠心分離より取り出し、細胞壁物質を上清液中に残した。細胞壁画分はタンパク質を含まないことが、抗シグマA抗体を使った免疫ブロット法分析により確認された。最後に、10mlの5%トリクロロ酢酸を全細胞試料および細胞壁物質に添加し、氷上で少なくとも30分間維持した。TCA不溶性物質をMilliporeフィルター(0.22μm孔径、Millipore)上に採取し、5%TCAで洗浄した。フィルターを風乾し、シンチレーションバイアル中に置き、シンチレーションカウンターを使って、TCA不溶性物のカウント/分を測定した。
【0110】
実施例1.枯草菌により形成されたバイオフィルム中のD−アミノ酸の選別
枯草菌は、バイオフィルムを誘導培地中での3日間のインキュベーション後の静置培養空気/液体界面に分厚いペリクルを形成する(図1A)。しかし、追加の3から5日のインキュベーションにより、ペリクルは、その構造的健全性を失う(図1−B)。成熟バイオフィルムが、バイオフィルム分解の引き金を引く因子を産生するのかどうかを調べるために、馴化培地の濃縮および部分精製抽出物の新しい培地を添加した場合のペリクル形成に与える効果をアッセイした。この目的のために、8日間培養液由来の馴化培地をC18 Sep Pakカラムに負荷した。次に、そのカラムからの濃縮した溶出液を、新しく播種した培養液に添加した。等容量の馴化培地由来の物質の25%に相等する濃縮溶出液の量が、ペリクル形成を防ぐのに充分であった(図1C)。対照としての、3日間培養液由来の馴化培地を使って調製した追加の濃縮溶出液は、ペリクル形成に対しほとんどまたは全く効果を示さないことが観察された(図1D)。さらなる因子の精製は、メタノールの濃度増加と共にカートリッジを段階的に溶出することにより達成される。40%メタノールでの溶出により、ペリクル形成の阻害に対し高度に活性な画分が得られた(図1E)。しかも、この物質は、細胞成長にはほとんどまたは全く影響を与えなかった。バイオフィルム阻害活性は、100℃で2時間の加熱およびプロテイナーゼK処理に耐性を示した(図1F)。
【0111】
D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンが、液体および固形培地の両方で、枯草菌によるバイオフィルム形成を阻害するものとして選別された(図2A、5、6)。図2Aは、バイオフィルムを誘導する培地中の新しく播種した培養液中へのD−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)、L−チロシン(7mM)、またはL−ロイシン(8.5mM)の添加の、3日間のインキュベーション後のペリクル形成に対する効果を示す。D−チロシンおよびD−ロイシンの両方が、対応するL−アミノ酸に比較して、バイオフィルム成長に対する有意な阻害を示した。同様に、図5は、D−トリプトファン(0.5mM)、D−メチオニン(2mM)、L−トリプトファン(5mM)またはL−メチオニン(5mM)を補充したMSgg培地を含み、株NCIB3610を播種し、3日間インキュベートしたウエルを示す。D−アミノ酸のみが、バイオフィルム形成の阻害に対し活性であった。
【0112】
図6は、D−チロシン(3μM)またはD−ロイシン(8.5mM)を補充した固形MSgg培地を含み、株NCIB3610を播種し、4日間インキュベートしたプレートを示す。D−チロシンおよびD−ロイシン補両方がバイオフィルム形成を阻害した。
【0113】
D−メチオニン、D−トリプトファン、D−チロシンおよびD−ロイシンは、対応するL−アミノ酸に比較して、バイオフィルム成長に対する有意な阻害を示した。対照的に対応するL−異性体および他のアミノ酸のD−異性体、例えば、D−アラニンおよびD−フェニルアラニンは、枯草菌に対するバイオフィルム阻害アッセイで有効ではなかった。
【0114】
次に、バイオフィルム形成を防ぐのに必要な最小濃度(MIC:最小阻害濃度(Minimal inhibitory concentration))を測定した。図2Bに示すように、それぞれのD−アミノ酸は、活性が変わり、D−チロシンが最も有効であった。D−メチオニン、D−トリプトファン、およびD−ロイシンは、約1mMのMICであり、一包、D−チロシンは、約100nMのMICである。著しいのは、全ての4つのD−アミノ酸の混合物(等モル量の)は、特に強力で、10nM未満のMBICであった。従って、D−アミノ酸は、相乗的に作用する。D−アミノ酸は、バイオフィルム形成を阻害するのみでなく、破壊された既存バイオフィルムを破壊した。図2Cは、3日間培養液を示し、これに対し、どのアミノ酸も添加されない(未処理)、またはD−チロシン(3μM)が添加された、またはD−チロシン、D−トリプトファン、D−メチオニンおよびD−ロイシン(各2.5nM)の混合物が添加されたものに対し、続いて、さらに8時間インキュベーションを行った。D−チロシンまたは4つのD−アミノ酸の混合物の追加により、8時間の間に、ペリクルの顕著な崩壊が起こった。
【0115】
D−アミノ酸は、これらのアミノ酸のα−炭素立体中心をL−型からD−型へ変換する酵素であるアミノ酸ラセマーゼにより生成される(Yoshimura et al.、J.Biosci.Bioeng.96:103(2003))。バイオフィルム阻害因子はD−アミノ酸であるという考えと一致する遺伝的証拠は、ylmEおよびracX、遺伝子の変異体を使って得られ、その予測された産物は、既知のラセマーゼに類似の配列を示した。ylmEまたはracX単独に対する株変異体は、ペリクル分解の中程度の遅延を示した(デーは示さず)。図7は、12ウエルプレート中で成長させ、5日間インキュベートした、NCIB3610(WT)ならびにylmEおよびracX(IKG155)に対し2重に欠失した株変異体を示す。想定上のラセマーゼである二重変異体細胞により形成されたペリクルの分解が有意に遅延し、ラセマーゼ活性が特異的に低減した株もまた、低減した抗バイオフィルム阻害を示すことを示唆している。また、二重変異体由来馴化培地は、野性型由来の馴化培地とは対照的に、バイオフィルム形成阻害に関し無力であった。図2Dは、野性型または二重変異体が有意なバイオフィルム成長を示すylmEおよびracXの二重株変異体(IKG55)の8日間培養液由来の馴化培地の濃縮Sep Pak C−18カラム溶出液の効果を示す。
【0116】
次いで、D−アミノ酸がバイオフィルム成熟の間に産生されるのかどうか、また、成熟バイオフィルムの分解を説明するのに充分な存在量で産生されるのかどうかを測定した。従って、LC/MSを行い、続いて、ペリクル形成の初期および後期に採取した馴化培地に対し、Nα−(2、4−ジニトロ−5−フルオロフェニル)−L−アラニンアミド(L−FDAA)による誘導体化を使ってD−アミノ酸を特定した。D−チロシン(6μM)、D−ロイシン(23μM)、およびD−メチオニン(5μM)は、6日目までにバイオフィルム形成を阻害するのに必要な、またはそれ超の濃度で存在したが、3日目には、10nM未満の濃度で、例えば、バイオフィルム形成を阻害するのに十分ではないレベルで存在したという結果であった。
【0117】
馴化培地と同様に、D−アミノ酸は、細胞成長を阻害せず、マトリックスオペロンepsおよびyqxMの発現も阻害しなかった(図8〜9)。図8は、D−アミノ酸の細胞成長に与える影響を示す。細胞を、D−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)含有MSgg培地中で振盪を加えながら成長させた。D−アミノ酸処理培養液中の細胞成長は、実質的に未処理試料と同じであった。図9Aは、株FC122(PyqxM−lacZ保有)によるPyqxM−lacZの発現を示し、図9Bは、D−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)含有MSgg培地中で振盪を加えながら成長させた株FC5(PepsA−lacZ保有)によるPepsA−lacZの発現を示す。この場合も、D−アミノ酸処理試料にたいするyqxMおよびeps発現は、実質的に未処理試料と同じであった。
【0118】
D−アミノ酸は、細胞壁のペプチドグリカン成分のペプチド架橋中に組み込まれることを以前報告した。確認のため、細胞をバイオフィルム誘導培地中で成長させ、14C−D−チロシンまたは14C−L−プロリン(10μCi/ml)と共に37℃で2時間インキュベートした。図3Aは、放射性D−チロシンの細胞壁への組込みを示す。14C−D−チロシンを使って、D−チロシン(14C−L−プロリンではそうではないが)は、細胞壁に組み込まれたことが示された。結果を細胞中への合計組込み(L−プロリンに対しては360、000cpm/ml、D−チロシンに対しては46、000cpm/ml)のパーセントで表す。
【0119】
細胞壁中に組み込まれたD−アミノ酸が、TasA繊維を細胞への固定から離脱させることが可能かどうかを調べるために、TasAと蛍光のレポーターmCherryの機能性融合体の局在化を調べた。図3Bは、機能性tasA−mCherry翻訳融合体を含む細胞由来の合計蛍光を示す。細胞を、D−チロシン(6μM)の存在または非存在下のバイオフィルム誘導培地中で振盪を加えながら定常期まで成長させた。図3Bに示すように、D−チロシンによる処理は、TasA−mCherryの合計蓄積に対しほとんどまたは全く効果がなかった。対照的に、細胞を遠心分離で洗浄し、再懸濁した後、蛍光顕微鏡で調べた場合は、未処理細胞(凝集していることが多い)は、TasA−mCherryで強力に装飾されていることが認められた。対照的に、D−チロシン処理細胞(ほとんど非凝集)は、低レベルの蛍光を示すに過ぎなかった。D−ロイシンおよび4つのD−アミノ酸等モル混合物でも、同様の結果が得られた。非修飾TasAタンパク質の局在化もまた、金標識抗TasA抗体を使って透過電子顕微鏡で解析された。図3Dは、電子顕微鏡によるTasA繊維の細胞会合を示す。24時間培養液を、D−チロシン無し(画像1と2)またはD−チロシン(0.1mM)添加あり(画像3〜6)の場合で、追加の12時間のインキュベートを行った。TasA繊維を、抗TasA抗体を使って免疫金標識により染色し、実施例に記載のように透過電子顕微鏡により可視化した。外多糖の非存在によりTasA繊維の画像処理が著しく改善されたので、細胞は、菌体epsオペロン(Δeps)の変異であった。中実矢印は、繊維バンドルを示し、中空矢印はそれぞれの繊維を示す。スケールバーは、500nmである。拡大画像2、4および6のスケールバーは、100nmである。画像1と2は、細胞に付着した繊維バンドルを示し、画像3、4および6は、細胞から離脱した個別繊維およびバンドルを示し、画像3〜5は、繊維物質がほとんど無いか全く無い細胞を示す。TasA繊維は、未処理ペリクルの細胞に固定されているように見えた(図3D、画像1と2)。対照的に、D−チロシンで12時間処理した細胞は、TasA繊維ではほとんど装飾されていない細胞の混合物および細胞に固定されていない遊離TasA繊維または繊維凝集体で構成されていた(図3D、画像3〜6)。理論に拘泥する意図はないが、D−チロシンがバイオフィルムを処理する1つの機序は、細胞による繊維の脱落の導入である可能性がある。
【0120】
D−アミノ酸が、TasA繊維の細胞への固定を破壊することにより作用することの遺伝的証拠をD−チロシン耐性変異体の単離から入手した。図4Aは、D−チロシン非含有または含有固形(上段画像)または液体(下段画像)バイオフィルム誘導培地で3日間成長させた細胞を示す。D−チロシン(図4A)またはD−ロイシン(データを示さず)含有固形培地上で成長の間に形成された平坦コロニー上に、しわの寄った乳頭状突起が自然に現れた。重要なことは、全ての4つの活性D−アミノ酸を含むプレート上には、このような乳頭状突起は出現しなかったことである。精製される場合、これらの自然の変異体は、D−チロシンまたはD−ロイシンの存在下、しわの寄ったコロニーやペリクルを生じた。いくつかのこのような変異体が単離されたが、大抵は、yqxMオペロンまたはその近くに変異を含んでいた。2つの変異が詳細に調査され、759塩基対長yqxM遺伝子の3’末端近傍のフレームシフト変異であることがわかった。yqxM2は、yqxM読み取り枠中の塩基対728の位置のG:Cの挿入であり、yqxM6は、塩基対568の位置のA:Tの欠失であった(図4B)。図4Bは、YqxMの簡略アミノ酸配列を示す。下線は、yqxM2およびyqxM6フレームシフト変異により図に示された配列変化を生じ、コドンから特定された残基である。
【0121】
図3Cは、蛍光顕微鏡によるTasA−mCherry細胞会合を示す。tasA−mCherry融合体含有の野性型細胞およびyqxM6(IKG51)変異体細胞を、バイオフィルム誘導培地中で、図中で示したようにD−チロシン(6μM)の存在またはD−チロシン非存在(未処理)下で振盪を加えながら定常期(OD=1.5)まで成長させ、PBSで洗浄し、蛍光顕微鏡で可視化した。蛍光顕微鏡結果は、yqxM2およびyqxM6の存在が、凝集およびD−チロシン処理細胞に対するTasA−mCherryによる細胞装飾を復活させたことを示す(図3C)。以前に行った仕事では、TasAと細胞の結合のためにYqxMが必要であることが示された(Branda et al.、Mol.Microbiol.59:1229(2006))。理論に拘泥する意図はないが、D−アミノ酸のバイオフィルム阻害効果が、YqxM変異体によって打ち負かされるというこの発見は、D−アミノ酸の細胞壁への組込みの効果が、TasA繊維の細胞への固定を傷害することであるという考えを補強するものである。YqxMのC末端近傍ドメインは、細胞壁中のD−チロシンまたはD−ロイシンの存在に呼応してTasA放出の引き金になる可能性がある。
【0122】
実施例2.黄色ブドウ球菌および緑膿菌によるバイオフィルム形成におけるアミノ酸の選別
他の細菌に関し、バイオフィルム形成に対するD−アミノ酸の効果について調査した。病原菌ブドウ球菌は、プラスチック表面上にバイオフィルムを形成する(Otto、Curr.Top.Microbiol.Immunol.322:207(2008))。これは、非結合細胞を洗い流し、結合細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって検出できる。図2Eは、12ウエルポリスチレンプレートを用い、グルコース(0.5%)とNaCl(3%)含有TSB培地中で37℃、24時間成長させた黄色ブドウ球菌(株SCO1)を示す。さらに、アミノ酸添加無し(未処理)、D−チロシン(50μM)またはD−アミノ酸混合物(各15nM)添加の条件をウエルに付加した。非結合細胞を洗い流し、クリスタルバイオレットで染色することによりポリスチレン結合細胞を可視化した。図2Eは、50μM濃度のD−チロシンおよび50nM濃度のD−アミノ酸混合物(D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニン;各50nM)が病原菌によるバイオフィルム形成の阻害に対し極めて効果的であることを示す。
【0123】
さらに、図10は、10μMのD−チロシンが緑膿菌によるバイオフィルム形成の阻害に対し効果的であったことを示し、また、D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンの1μMの等モル混合物が有効であったことを示す。図10は、D−アミノ酸による緑膿菌バイオフィルム形成の阻害を示す。緑膿菌株P014を、12ウエルポリスチレンプレートを用い、グリセリン(0.2%)およびカザアミノ酸(20μg/ml)含有M63培地中で、30℃、48時間成長させた。さらに、アミノ酸添加無し(未処理)、D−チロシンまたはD−アミノ酸等モル混合物添加の条件をウエルに付加した。非結合細胞を洗い流し、クリスタルバイオレットで染色することによりポリスチレン結合細胞を可視化した。ウエルを500μlの1.0%クリスタルバイオレット染料で染色し、2mlの再蒸留水で2回洗浄後、完全に乾燥した。
【0124】
実施例3.ブドウ球菌および緑膿菌バイオフィルム阻害に対し活性なD−アミノ酸混合物
2つの異なる混合物は、ブドウ球菌バイオフィルムの形成の阻害に対し極めて活性である。1つは、D−チロシン、D−メチオニン、D−ロイシンおよびD−トリプトファンの等モル混合物である。枯草菌、ブドウ球菌(図11)、および緑膿菌(図12)の全試験細菌株で、D−trp、D−met、D−tyrおよびD−leuのD−aa混合物は、個別のアミノ酸よりも極めて低い濃度で活性であった。表1の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。表2の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard PA14、培地はM63、細胞播種は1.5x109cfuとした。バイオフィルムをクリスタルバイオレット法を使って可視化した。データを下表1と2に示す:
【表1】
【表2】
【0125】
D−チロシン、D−フェニルアラニン、D−プロリンの等モル混合物は、上記混合物よりもさらに効果的である。また、その混合物は、個々のアミノ酸それぞれよりも混合物として活性が大きい(図13と14)。表3と4の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムをクリスタルバイオレット法を使って可視化した。データを表3と4に示す:
【表3】
【表4】
【0126】
実施例4.黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成の代替定量方法
浮遊細胞をGilsonピペットで完全に除去し、次いで、ペーパータオル越しに液体を排出した。次に、バイオフィルムプレートの画像を黒を背景に注意深く撮影した(図15と16)。表5と6の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムを黒を背景として視覚に訴える方法で可視化した。データを表5と6に示す:
【表5】
【表6】
【0127】
バイオフィルム細胞をPBS中に再懸濁することにより上記表5と6のプレートから除去し、これらのOD600を分光光度計を使って測定した(図17)。表7の実験では、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムを吸収された細菌のOD600を測定することにより可視化した。データを表7示す:
【表7】
【0128】
実施例5.エポキシ表面上のブドウ球菌バイオフィルム形成に対するD−アミノ酸の効果
異なる表面からのD−アミノ酸の徐放方法開発の可能性を試験する目的で、エポキシ表面をD−アミノ酸混合物中で24時間インキュベートした。これを完全に乾燥し、黄色ブドウ球菌を播種した新しいTSB培地中でインキュベートした。表8と9の実験では、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムを黒を背景として視覚に訴える方法で可視化した。図18と19に示すように、D−aa混合物(上述のような)は、浸漬状態の基質上のブドウ球菌バイオフィルム形成を劇的に低減させた。データを表8と9に示す:
【表8】
【表9】
【0129】
さらに、Norland光学接着剤61表面をD−チロシン、D−プロリン、D−フェニルアラニンと共に24時間インキュベートした。これを完全に乾燥し、黄色ブドウ球菌を播種した新しいTSB培地中でインキュベートした。D−aa混合物(L−混合物ではそうではないが)は、ブドウ球菌バイオフィルム形成を劇的に低減した。
【0130】
この実施例では、ポリマー基質は、UVO−114(Epoxy Technology)およびNorland光学接着剤61(Norland Products)UV−硬化型ポリマーを使って、ポリジメチルシロキサン(SYLGARD184、Dow Corning)中で成形した。
【0131】
実施例6.緑膿菌バイオフィルム形成に対するD−アミノ酸の効果を観察する別の方法
枯草菌と同様に、緑膿菌は、複合体構造を特定の培地に形成する。これらの複合体構造には、細胞外マトリックスの適切な形成と構築が必要である。D−チロシン(500μM)またはD−トリプトファン(500μM)の追加により、特定培地の緑膿菌バイオフィルム形成が阻害され(図20)、一方、L−チロシン(500μM)およびL−トリプトファンの追加では、そうならなかった。同様の結果が枯草菌でも得られた。これらの実験では、生物体/株はP.a.Harvard PA14、培地はM63、細胞播種は1.5x109cfuとした。
【0132】
D−アミノ酸のある場合と無い場合について、Syto−9染色を使って6ウエルプレート上でバイオフィルム形成を観察する別の方法は、以下の通りである:緑膿菌バイオフィルムをPBSで2回洗浄した後、PBS中の5%グルタルアルデヒドで少なくとも1時固定した。次に、固定バイオフィルムを、PBSで再度1回洗浄し、PBS中の0.1%v/vトリトンX−100(PBST)中に15分間浸漬した。溶液を冷PBST中の0.1nM SYTOX green(Invitrogen)と入れ替え、暗所で少なくとも15分間緩やかに揺らした。バイオフィルムの蛍光像をXeランプおよびK3ライカフィルターキューブを使ってライカDMRX複式顕微鏡で取り込んだ。図21に示すように、D−チロシンの存在下で、バイオフィルムプレートの底に付着した細胞の数が激減した。単一細胞付着量をimageJを使って定量化した。D−aaに浸漬したエポキシ表面に付着した細胞の量の減少は、L−aa対照に比較して相当多かった。
【表10】
【0133】
実施例7.グラム陰性病原菌に与えるD−アミノ酸の効果の評価
広範囲の抗バイオフィルム活性の可能性を評価するために、効果のあるD−チロシン、D−フェニルアラニン、およびD−プロリンの等モルカルテットをグラム陰性病原菌プロテウス・ミラビリスに対して試験した。図22に示すように、D−aa混合物はプロテウス・ミラビリスに対して活性であった。表11のバイオフィルムは、クリスタルバイオレット法により可視化した。データを表11に示す:
【表11】
【0134】
実施例8:グラム陽性の病原菌に対するD−アミノ酸の効果の評価
広範囲の抗バイオフィルム活性の可能性を評価するために、効果のあるD−チロシン、D−フェニルアラニン、およびD−プロリンの等モルカルテットをグラム陽性の病原菌ストレプトコッカス・ミュータンスに対して試験した。図23に示すように、D−aa混合物は、ストレプトコッカス・ミュータンスに対し活性であった。表12のバイオフィルムをクリスタルバイオレット法により可視化した。データを表12に示す:
【表12】
【0135】
実施例9:D−チロシン含有コーティング
樹脂固形分の重量ベースで、0.5%のD−チロシンを市販ポリエステルポリオールおよび市販イソシアヌラートベースの2成分ポリエステルウレタンコーティング中に組み込む。コーティング系は、全体樹脂固形分ベースで0.015%のジブチルスズジラウラートにより触媒された。
【0136】
コーティング製剤をへら引きにより透明ガラススライド約4”x6”上に塗布して約2ミル(0.002”)のフィルム厚さにする。
【0137】
これらのフィルムを120°F(49℃)のオーブン中で硬化する。
【0138】
実施例10:D−アミノ酸混合物含有ポリマー
液体シリコーンゴムシートを米国特許第5、973、030号に記載のようにして調製する。製剤中に、D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のDアミノ酸混合物をさらに0.01〜1重量パーセント添加する。
【0139】
実施例11:D−アミノ酸混合物含有水ベース工業用コーティング
D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のDアミノ酸混合物を1重量パーセント含む水ベース透明アクリル産業コーティング製剤を2ミル厚さでガラススライドにコートする。
【0140】
実施例12:D−アミノ酸混合物含有溶媒ベース工業用コーティング
D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のDアミノ酸混合物を1重量パーセント含む溶媒べースポリウレタンコーティングを調製する。このコーティングを2ミル厚さでガラススライドに塗布する。
【0141】
実施例13:D−アミノ酸混合物含有UV硬化型水ベース工業用コーティング
透明UV硬化型水性産業コーティングを高速スターラーで各成分(下表参照)の混合により配合した。
【表13】
【0142】
調合製剤に、D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物を添加し、高せん断速度(2000rpm)下、室温で30分間攪拌する。比較の目的のため、D−アミノ酸不含の対照製剤を同じ方法で調製する。
【0143】
コーティングを50μmスリットコーターで白塗装アルミニウムパネルに塗布し、60℃で10分間乾燥した後、2つの中圧水銀ランプ(2x80W/cm)を用いて5m/minで硬化する。
【0144】
実施例14:D−アミノ酸混合物含有溶媒ベース工業用コーティング
2液型溶媒使用ポリウレタンコーティングを下記の手順で調製する:
【0145】
D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物を、ミルベース配合として結合剤および溶媒に添加し、高せん断速度で10分間、5μm未満の粒径になるまで攪拌する。
【0146】
ミルベース配合
【表14】
【0147】
コーティング製剤は、成分Aの材料を混合し、最終段階で塗布の前に成分Bを添加して調製する(下表参照)。全体製剤中のD−アミノ酸混合物の含量は、0.1重量.%である。
【表15】
【0148】
それぞれのコーティング製剤を白塗装アルミニウムパネル上にスプレーし(乾燥被覆厚さ:40μm)、80℃で30分乾燥する。
【0149】
実施例15:油中水型(W/O)代表的配合
以下のD−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物0.1wt/wt%含有W/O乳剤を調製する。
W/O乳剤:
部分A
流動パラフィン 7.5部
イソヘキサデカン 6.0
PEG−7水素化ヒマシ油 4.1
イソプロピルパルミタート 2.0
Cera microcristallina 0.5
ラノリンアルコール 0.6
部分B
水 全体配合で100部に希釈
硫酸マグネシウム 1.0
グリシン 3.20
部分C
D−アミノ酸混合物 0.5%wt/wt水溶液の20部
【0150】
実施例16:水中油型(O/W)代表的配合
以下のD−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物0.1wt/wt%含有O/W乳剤を調製する。
部分A
ステアレス−2 2.2部
ステアレス−21 1.0
PEG−15 ステアリルエーテル 6.0
ジカプリリルエーテル 6.0
部分B
水 全体配合で100部に希釈
ナトリウムポリアクリラート 0.2
部分C
D−アミノ酸混合物 0.5%wt/wt水溶液の20部
【0151】
実施例17:黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成のインビボ阻害
Anguita−Alonso et al.、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、51:2594(2007)に記載のように、D−アミノ酸または2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせのインビボ試験を行う。
【0152】
実施例18:黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成の別のインビボ阻害
Beenken et al.、J.Bacteriology、186:4665(2004)に記載のように、D−アミノ酸または2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせのインビボ試験を行う。
【0153】
実施例19:D−Tyr、D−Leu、D−TypおよびD−Metの安定水性混合物の調製
アミノ酸D−MetおよびD−Leuを、室温で5mg/mLの濃度で脱イオン水に別々に溶解する。通常、各アミノ酸に対し、10mLの溶液が調製される。D−トリプトファンは、脱イオン水に5mg/mLの濃度で溶解するが、40〜50℃、5〜10分の少しの加熱が必要である。D−チロシンは、5mg/mLの濃度で0.05M HClに溶解するが、40〜50℃、5〜10分の加熱が必要である。加熱超音波処理浴を使って、アミノ酸の溶解を促進することができる。全ての溶液は組み合わされ、室温で細菌濾過を行って約40mLの保存液が得られる。
【0154】
実施例20:D−Tyr、D−Pro、およびD−Pheの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0155】
実施例21:D−Tyr、D−Asp、およびD−Gluの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0156】
実施例22:D−Tyr、D−Arg、D−His、およびD−Lysの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0157】
実施例23:D−Tyr、D−Ile、D−Val、およびD−Asnの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0158】
実施例24:D−Tyr、D−Cys、D−Ser、D−Thr、およびD−Glnの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0159】
等価物
本発明をその詳細説明と関連付けて説明してきたが、前述の記載は説明の目的のためのものであって本発明の範囲を制限する意図はなく、これは添付の請求項の範囲によって定められることは理解されるべきである。他の態様、優位性、および変更は以下の特許請求の範囲に含まれる。
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、同時係属中の2010年1月8日出願米国仮出願第61/293、414号、および2010年4月30日出願米国特許仮出願第61/329、930号の優先権を主張する。
【0002】
この出願は、本出願と同日付出願の「バイオフィルム処理のための方法と組成物」の名称の同時係属中国際特許出願と関連している。
【0003】
これらの出願の内容は、参照によって組み込まれる。
【0004】
米国政府の権利に関する記述
本発明は、国立衛生研究所認可CA24487、GM058213、GM082137、GM086258、およびGM18568に基づいて米国政府の支援により行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0005】
バイオフィルムは、表面で定着および増殖し、細胞外ポリマーマトリックスにより覆われている細胞の共同体である。これらは、増殖が遅く、多くは増殖の定常期にある。これらは、全部ではないにしても、多くは病原体により形成されうる。CDCによれば、米国の全感染症中の65%が、共通の病原体により形成されるバイオフィルムが原因である。また、バイオフィルムは、飲料水送水系等の工業環境中にも認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】(なし)
【発明の概要】
【0007】
概要
本発明の態様は、細菌によるバイオフィルム形成を処理(又は処置)、低減、または阻害する方法を特徴とする。一部の実施形態では、この方法は、有効量のD−アミノ酸を含む組成物と表面を接触させ、それによりバイオフィルム形成を処理、低減、または阻害することを含む。一部の実施形態では、細菌は、グラム陰性またはグラム陽性細菌である。特定の実施形態では、細菌は、桿菌、ブドウ球菌、大腸菌、またはシュードモナス細菌である。
他の1つまたは複数の実施形態では、表面は、産業機器、給排水設備、水域、家庭にある表面、織物および紙を含む。
【0008】
他の態様では、本発明は、1つまたは複数のD−アミノ酸を含む工業用、処理用または、医薬組成物等の組成物を特徴とする。特定の実施形態では、組成物は、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−トリプトファン、またはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、組成物は、D−チロシン、D−フェニルアラニン、D−プロリン、またはこれらの組み合わせを含む。さらなる実施形態では、組成物は、2つ以上のD−チロシン、D−ロイシン、D−フェニルアラニン、D−メチオニン、D−プロリン、またはD−トリプトファンを含み、またさらなる実施形態では、後者の組成物が、基本的にデタージェントおよび/またはLアミノ酸を含まない。他の実施形態では、組成物は、本明細書記載の、例えば、水処理または配管系等の工業バイオフィルムの処理に使用される。
【0009】
本開示の一態様は、バイオフィルム形成細菌によるバイオフィルム形成を処理、低減、または阻害する方法に関し、この方法は、対象物品を有効量のD−アミノ酸またはD−アミノ酸の組み合わせを含む組成物と接触させ、それによりバイオフィルム形成を処理、低減、または阻害することを含み、ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、またはD−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的組み合わせである。
【0010】
一部の実施形態では、組成物は、基本的に、対応するL−アミノ酸またはD−アミノ酸もしくはD−アミノ酸の組み合わせに関連するL−アミノ酸を含まない。
【0011】
一部の実施形態では、対象物品は、産業機器、給排水設備、水域、家庭にある表面、織物および紙からなる群より選択される1つまたは複数の物品を含む。さらなる実施形態では、対象物品は、水凝集物の収集、水再循環、下水輸送、製紙パルプ化および製造、ならびに水処理および輸送に関与する1つまたは複数の構成部材である。さらなる他の実施形態では、対象物品は、排水管、浴槽、台所用電気器具、調理台、シャワーカーテン、グラウト、洗面所、工業用の食品または飲料生産設備、フロア、ボート、埠頭、石油掘削用プラットホーム、取水口、濾過装置、送水管、冷却系、または発電所である。
【0012】
一部の実施形態では、対象物品は、金属、金属合金、合成高分子、天然ポリマー、セラミック、木材、ガラス、革、紙、織物、非金属無機物、複合材料およびこられの組み合わせからなる群より選択される材料から作られる。
【0013】
他の実施形態では、接触させる工程は、対象物品にコーティングを適用することを含み、前記コーティングは、有効量のD−アミノ酸を含む。さらなる実施形態では、コーティングは、さらに結合剤を含む。一部の実施形態では、コーティングは、コーティング組成物の表面への毛管作用、吹付け、ディッピング、スピンコーティング、積層、塗布、スクリーン印刷、押し出しまたはドローダウンにより達成される。他の実施形態では、接触させる工程は、前駆物質中にD−アミノ酸を導入し、前駆物質を処理して対象物品中にD−アミノ酸を含浸させることを含む。さらなる実施形態では、接触させる工程は、液体組成物中にD−アミノ酸を導入することを含む。
【0014】
前述の方法の一部の実施形態では、組成物は、D−チロシンを含む。別の実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む。さらに他の実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む。またさらなる実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む。
【0015】
いずれかの前述の方法の一部の実施形態では、方法は、表面を殺生物剤に接触させることをさらに含む。一部の実施形態では、組成物は、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン、キシリトール、トリクロサン、または二酸化塩素を含む。
【0016】
いずれかの前述の方法の別の実施形態では、組成物は、1%未満のL−アミノ酸を含む。
【0017】
いずれかの前述の方法のさらなる実施形態では、組成物は、基本的にデタージェントを含まない。
【0018】
さらなる別の本開示の態様は、バイオフィルム形成に耐性を有するコートされた対象物品に関し、少なくとも1つの露出表面にコーティングを含む対象物品を含み、そのコーティングが、有効量のD−アミノ酸またはD−アミノ酸の組み合わせを含み、それにより、バイオフィルム形成を処理、低減、阻害する。ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、またはD−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的組み合わせである。
【0019】
一部の実施形態では、コーティングは、基本的に、対応するL−アミノ酸またはD−アミノ酸もしくはD−アミノ酸の組み合わせに関連するL−アミノ酸を含まない。
【0020】
一部の実施形態では、対象物品は、産業機器、給排水設備、水域、家庭にある表面、織物および紙からなる群より選択される1つまたは複数の物品を含む。他の実施形態では、対象物品は、水凝集物の収集、水再循環、下水輸送、製紙パルプ化および製造、ならびに水処理および輸送に関与する1つまたは複数の構成部材である。さらなる実施形態では、対象物品は、排水管、浴槽、台所用電気器具、調理台、シャワーカーテン、グラウト、洗面所、工業食品もしくは飲料生産設備、フロア、ボート、埠頭、石油掘削用プラットホーム、取水口、濾過装置、送水管、冷却系、または発電所である。
【0021】
一部の実施形態では、対象物品は、金属、金属合金、合成高分子、天然ポリマー、セラミック、木材、ガラス、革、紙、織物、非金属無機物、複合材料およびこれらの組み合わせからなる群より選択される材料から作られる。さらなる実施形態では、コーティングは、さらに結合剤を含む。他の実施形態では、コーティングは、ポリマーをさらに含み、D−アミノ酸は、ポリマー中に分散されている。
【0022】
一部の実施形態では、D−アミノ酸コーティングは、徐放製剤として配合される。
【0023】
一部の実施形態では、組成物は、D−チロシンを含む。さらなる実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む。またさらなる実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む。さらに他の実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む。
【0024】
一部の実施形態では、組成物は、殺生物剤をさらに含む。さらなる実施形態では、殺生物剤は、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン、キシリトール、トリクロサン、または二酸化塩素を含む。
【0025】
一部の実施形態では、いずれかの前述のコートされた対象物品または組成物は、1%未満のL−アミノ酸を含む。他の実施形態では、コートされた対象物品または組成物は、基本的にデタージェントを含まない。
【0026】
本開示の別の態様は、バイオフィルム形成に耐性を示す組成物に関し、液体基剤、および基剤中に分散した有効量のD−アミノ酸またはD−アミノ酸の組み合わせを含み、それによりバイオフィルム形成の処理、低減または阻害を行い、ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、およびD−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的組み合わせである。
【0027】
一部の実施形態では、組成物は、基本的に、対応するL−アミノ酸またはD−アミノ酸もしくはD−アミノ酸の組み合わせに関連するL−アミノ酸を含まない。
【0028】
一部の実施形態では、液体基剤は、液体、ゲル、ペーストから選択される。
【0029】
一部の実施形態では、組成物は、水、洗浄用配合物、消毒用配合物、塗布およびコーティング用配合物からなる群より選択される。
【0030】
さらに別の本開示の態様は、2つ以上のD−アミノ酸を含むコーティング組成物に関し、この組成物は、少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、およびD−トリプトファンからなる群より選択され、少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される異なるD−アミノ酸であり、さらに高分子結合剤が含まれる。
【0031】
一部の実施形態では、組成物は、基本的にD−アミノ酸に関連する対応するL−アミノ酸を含まない。
【0032】
以下の図は、説明の目的のみで提示されるもであり、制限を加える意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1A及び1Bは、枯草菌株NCIB3610の細胞を示す。この細胞は、12ウエルプレートを使って液体バイオフィルム誘導培地中、22℃で3日間(A)または8日間(B)成長させた。図1C及び1Dは、6〜8日間培養液(C)または3日間培養液(D)の馴化培地をC18 Sep Pakカラムに適用後、乾燥・再懸濁したメタノール溶出液(1:100v/v)を添加した培地中で3日間成長させた細胞を示す。ウエルに添加された最終濃度の濃縮因子は、元の馴化培地の容量ベースで1:4希釈であった。図1Eは、その因子がメタノールを使ったステップワイズ溶出によりC−18カラムでさらに精製されたことを除いて、図1Cと同じである。3μlの40%メタノール溶出液を添加した結果を示す。図1Fは、新しい培地への添加の前に、40%メタノール溶出液をプロテイナーゼKビーズと共に2時間インキュベートし、続いて、遠心分離によりビーズを除去したことを除いて、図1Cと同じである。
【図2】図2Aは、3日間のインキュベーション後に、バイオフィルム誘導培地中で新しく播種した培養液にD−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)、L−チロシン(7mM)、またはL−ロイシン(8.5mM)を添加した場合のペリクル形成に対する効果を示す。図2Bは、ペリクル形成の完全な阻害に必要なD−アミノ酸の最小バイオフィルム阻害濃度(Minimal Biofilm Inhibitory Concentration)(MBIC)を示す。図2Cは、アミノ酸無添加(未処理)、D−チロシン(3μM)の添加またはD−チロシン、D−トリプトファン、D−メチオニンおよびD−ロイシン(各2.5nM)の混合物添加に続いて、さらに8時間インキュベーションした3日間培養液を示す。図2Dは、野性型またはylmEおよびracXに対し二重変異体株(IKG55)の8日間培養液由来の馴化培地から得た濃縮Sep Pak C−18カラム溶出液の効果を示す。図2Eは、12ウエルポリスチレンプレートを用い、37℃のグルコース(0.5%)およびNaCl(3%)を含むTSB培地中で、24時間成長させた黄色ブドウ球菌(株SCO1)を示す。さらに、ウエルへのアミノ酸無添加(未処理)、D−チロシン(50μM)添加またはD−アミノ酸混合物(各15nM)添加の条件を付加した。未結合細胞を洗い流した後、ポリスチレンに結合した細胞をクリスタルバイオレットで染色して可視化した。
【図3】図3Aは、細胞壁への放射性のD−チロシンの組み込みを示す。細胞をバイオフィルム誘導培地中で成長させ、14C−D−チロシンまたは14C−L−プロリン(10μCi/ml)と共に37℃で2時間インキュベートした。結果を、細胞(L−プロリンに対しては360、000cpm/ml、D−チロシンに対しては46、000cpm/ml)への全体組み込みのパーセントとして示す。図3Bは、機能性tasA−mCherry翻訳融合体含有細胞(DR−30(Romero et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2010、近刊))からの全蛍光を示す。D−チロシン(6μM)が存在または非存在の場合について、バイオフィルム誘導培地中で定常期になるまで振盪を加えながら細胞を成長させた。図3Cは、蛍光顕微鏡によるTasA−mCherryの細胞会合を示す。表示されているように、D−チロシン(6μM)が存在または非存在(未処理)の場合について、野性型細胞およびtasA−mCherry融合体含有yqxM6(IKG51)変異体細胞をバイオフィルム誘導培地中で定常期(OD=1.5)になるまで振盪を加えながら細胞を成長させ、PBSで洗浄し、蛍光顕微鏡で可視化した。図3Dは、電子顕微鏡によるTasA線維の細胞会合を示す。D−チロシンのない場合(画像1と2)またはD−チロシン(0.1mM)添加の場合(画像3〜6)について、24時間培養液に対し、12時間追加してインキュベートした。実施例に記載のように、TasA繊維を抗TasA抗体を使って免疫金標識により染色し、透過型電子顕微鏡により可視化した。菌体外多糖の非存在によりTasA繊維の画像化が著しく改善されたので、細胞はepsオペロン(Δeps)に対し変異体であった。中実矢印は、繊維バンドルを示し;中空矢印は、個別の繊維を示す。スケールバーは、500nmである。拡大画像2、4および6のスケールバーは100nmである。画像1と2は、細胞に付着した繊維バンドル、画像3、4と6は、個別の繊維および細胞から離脱したバンドルを示し、画像3〜5は、ほとんどまたは全く繊維状物質のない細胞を示す。
【図4】図4Aは、D−チロシン含有または非含有の固体(上段画像)または液体(下段画像)バイオフィルム誘導培地で3日間成長させた細胞を示す。図4Bは、YqxMの簡略アミノ酸配列を示す。下線は、表示した配列変化中でyqxM2およびyqxM6フレームシフト変異が生じたコドンにより特定される残基である。
【図5】図5は、D−トリプトファン(0.5mM)、D−メチオニン(2mM)、L−トリプトファン(5mM)またはL−メチオニン(5mM)を補充した後、株NCIB3610を播種し、3日間インキュベートしたMSgg培地含有ウエルを示す。
【図6】図6は、D−チロシン(3μM)またはD−ロイシン(8.5mM)を補充後、株NCIB3610を播種し、4日間インキュベートした固体MSgg培地を含むプレートを示す。
【図7】図7は、12ウエルプレート中で成長させ、5日間インキュベートしたNCIB3610(野性型)およびylmEおよびracX(IKG155)の二重欠失変異体を示す。
【図8】図8は、D−アミノ酸の細胞成長に与える効果を示す。細胞をD−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)を含むMSgg培地中で振盪を加えながら成長させた。
【図9】図9Aは、株FC122(PyqxM−lacZを保持)によるPyqxM−lacZの発現を示し、図9Bは、D−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)を含むMSgg培地中で振盪を加えながら成長させた株FC5(PepsA−lacZを保持)によるPepsA−lacZの発現を示す。
【図10】図10は、緑膿菌バイオフィルム形成のD−アミノ酸による阻害を示す。緑膿菌株P014を12ウエルポリスチレンプレートを用い、グリセリン(0.2%)およびカザアミノ酸(20μg/ml)含有M63培地中30℃で48時間成長させた。アミノ酸無添加(未処理)、D−チロシン添加またはD−アミノ酸混合物の条件をウエルに付加した。ポリスチレンに結合した細胞を、未結合細胞を洗い流した後、クリスタルバイオレットで染色して可視化した。ウエルを500μlの1.0%クリスタルバイオレット染料で染色し、2mlの再蒸留水で2回洗い流し、完全に乾燥した。
【図11】図11は、個別D−アミノ酸または4つの混合物と共にTSB培地中で24時間成長させたブドウ球菌バイオフィルムのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図12】図12は、個別D−アミノ酸または4つの混合物と共にM63培地中で48時間成長させた緑膿菌のクリスタルバイオレット染色を示す。
【図13】図13は、個別D−アミノ酸または混合物と共にTSB培地中で24時間成長させたブドウ球菌バイオフィルムのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図14】図14は、L−アミノ酸と共にTSB培地中で24時間成長させたブドウ球菌バイオフィルムのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図15】図15は、浮遊細菌を除去後D−アミノ酸を適用したTSB培地中で形成されたブドウ球菌バイオフィルムの代表的画像である。
【図16】図16は、浮遊細菌を除去後L−アミノ酸を適用したTSB培地中で形成されたブドウ球菌バイオフィルムの代表的画像である。
【図17】図17は、浮遊細菌を除去後TSB培地中で形成されたブドウ球菌バイオフィルム内の細胞の定量化である。細胞をPBS中に再懸濁した。
【図18】図18は、表面上のブドウ球菌バイオフィルム形成に与えるD−aa混合物(1mM)の効果を示す。エポキシ表面をD/L−aa混合物中に浸漬した後、細菌と24時間インキュベートした。
【図19】図19は、表面上のブドウ球菌バイオフィルム形成に与えるD−aa混合物(1mM)の効果を示す。エポキシ表面をD/L−aa混合物中に浸漬した後、細菌と24時間インキュベートした。
【図20】図20は、M63固体培地上の緑膿菌中のバイオフィルム形成に与えるD−aaの効果を示す。コロニーは、室温で4日間成長させた。
【図21】図21は、バイオフィルム誘導条件下における、緑膿菌の6ウエルプレートのボタン中の単一付着細胞のSytox染色を示す。
【図22】図22は、培地中でD−アミノ酸(100μM)またはL−アミノ酸(100μM)混合物と共に48時間成長させたプロテウス・ミラビリスのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図23】図23は、D−またはL−アミノ酸(1mM)を含む、ショ糖(0.5%)培地を添加したBHI培地で72時間成長させたストレプトコッカス・ミュータンスのクリスタルバイオレット染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
特に別義の定義がなければ、本明細書で使われる全ての技術科学用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価な方法および材料が、本発明の実施または試験に使用可能であるが、適切な方法および材料は、以下に記載される。本明細書で挙げた全ての出版物、特許出願、特許、および他の参照は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾が生じる場合は、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は、説明のみの目的であり、制限する意図はない。
【0035】
用語の「防ぐ(prevent)」「防止(preventing)」および「予防(prevention)」は、本明細書では、本明細書記載の組成物(例えば、予防もしくは処理組成物)の投与、もしくは処理薬の組み合わせ(例えば、予防もしくは処理組成物の組み合わせ)の投与の結果としての、表面上のバイオフィルムの発生または発症の阻害またはバイオフィルムの1つまたは複数の徴候もしくは症状の再発、発症、もしくは発生の防止を指す。
【0036】
本発明の他の特徴と利点は、以下の詳細説明および請求項から明らかであろう。当業者には明らかなように、本明細書記載の具体的特徴および実施形態は、他のいずれかの特徴または実施形態と組み合わせることができる。
【0037】
本発明は、少なくとも一部は、成熟バイオフィルム由来の馴化培地中に存在するD−アミノ酸がバイオフィルム形成を防ぎ、既存のバイオフィルム分解の引き金となるという発見に基づいている。標準的アミノ酸は、相互に鏡像関係にあるL−またはD−アミノ酸と呼ばれる2つの光学的異性体のどちらかの形で存在しうる。L−アミノ酸は、タンパク質中に見出される大部分のアミノ酸であるが、D−アミノ酸は細菌のペプチドグリカン細胞壁の成分である。本明細書記載のD−アミノ酸は、生存および非生存表面上のバイオフィルムに浸透でき、細菌の表面への付着およびバイオフィルムのさらなる発達を阻害でき、このようなバイオフィルムを剥離させることができおよび/または生物学的マトリックス中のバイオフィルム形成微生物のさらなる増殖を阻害することができ、またはこのような微生物を消滅させることができる。
【0038】
D−アミノ酸は、当技術分野で既知であり、既知の技術を使って調製可能である。代表的方法には、例えば、米国特許公開第20090203091号に記載のものが含まれる。D−アミノ酸は、また、市販品として入手可能である(例えば、Sigma Chemicals、St.Louis、Mo.から)。
【0039】
本明細書記載の方法には、いずれのD−アミノ酸も使用可能であり、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、またはD−チロシンが、非制限的に含まれる。D−アミノ酸は、単独でまたは他のD−アミノ酸と組み合わせて使用可能である。代表的方法では、2、3、4、5、6、または7以上のD−アミノ酸が組み合わせて使用される。好ましくは、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、またはD−トリプトファンが、単独または組み合わせて、本明細書記載の方法で使用される。他の好ましい実施形態では、D−チロシン、D−プロリンおよびD−フェニルアラニンが、単独または組み合わせて、本明細書記載の方法で使用される。
【0040】
D−アミノ酸は、約0.1nM〜約100μM、例えば、約1nM〜約10μM、約5nM〜約5μM、または約10nM〜約1μMの濃度、例えば、0.1nM〜100μM、1nM〜10μM、5nM〜5μM、または10nM〜1μMの濃度で使用可能である。
【0041】
バイオフィルム形成の阻害または処理に特に有効であると解った代表的D−アミノ酸組成物、コーティング、または溶液には、D−チロシンが含まれる。一部の実施形態では、D−チロシンは、単独で使用され、例えば、1mM未満、または100μM未満、または10μM未満の濃度として、または0.1nM〜100μM、例えば、1nM〜10μM、5nM〜5μM、または10nM〜1μMの濃度で使用できる。
【0042】
他の実施形態では、D−チロシンが1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンと組み合わせて使用される。一部の実施形態では、D−チロシンは、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンと組み合わせて使用される。D−チロシンの1つまたは複数のD−プロリン、D−フェニルアラニン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンとの組み合わせは、相乗的となり得、10μM以下、例えば、約1nM〜約10μM、約5nM〜約5μM、または約10nM〜約1μMの全体D−アミノ酸濃度、または0.1nM〜100μM、例えば、1nM〜10μM、5nM〜5μM、または10nM〜1μMの濃度でバイオフィルム形成を阻害または処理するのに有効である可能性がある。
【0043】
一部の実施形態では、D−アミノ酸の組み合わせは、等モルである。他の実施形態では、D−アミノ酸の組み合わせは、等モルではない。
【0044】
一部の実施形態では、組成物、基本的に、L−アミノ酸を含まない。例えば、組成物は、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.025%未満、約0.01%未満、約0.005%未満、約0.0025%未満、約0.001%、またはそれ未満のL−アミノ酸を含む。他の実施形態では、組成物は、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.05%未満、0.025%未満、0.01%未満、0.005%未満、0.0025%未満、0.001%未満のL−アミノ酸を含む。好ましい実施形態では、L−アミノ酸のパーセンテージは、対応するD−アミノ酸に対する割合である。例えば、L−アミノ酸およびD−アミノ酸のラセミ混合物は、50%L−アミノ酸を含む。
【0045】
一部の実施形態では、組成物、基本的に、デタージェントを含まない。例えば、組成物は、約30重量%未満、約20重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.25重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、約0.025重量%未満、約0.01重量%未満、約0.005重量%未満、約0.0025重量%未満、約0.001重量%未満、またはそれ未満のデタージェントを含む。他の実施形態では、組成物は、全体組成物に対して、約30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、0.025重量%未満、0.01重量%未満、0.005重量%未満、0.0025重量%未満、0.001重量%未満のデタージェントを含む。デタージェント、例えば、界面活性剤含有製剤に置いて、界面活性剤が活性試薬、例えば、D−アミノ酸と相互作用し、往々にして、試薬の有効性に大きな影響を与える可能性がある。一部の実施形態では、特定の界面活性剤型の存在が有効性を変えるかどうかを判定するための選別として、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および双性イオン界面活性剤に対して試薬の有効性を選別する必要が生じうる。デタージェントの低減または除去が組成物の有効性を増加させおよび/または製剤の合併症を低減する。
【0046】
バイオフィルム
ほとんどの細菌は、バイオフィルムとして知られる複合体のマトリックス含有多細胞の共同体を形成できる(O’Toole et al.、Annu.Rev.Microbiol.54:49(2000);Lopez et al.、FEMS Microbiol.Rev.33:152(2009);Karatan et al.、Microbiol.Mol.Biol.Rev.73:310(2009))。バイオフィルム関連細菌は、外界からの刺激、例えば、抗生物質から保護されている(Bryers、Biotechnol.Bioeng.100:1(2008))。しかし、バイオフィルムが熟成するにつれ、栄養素が限定的となり老廃物が蓄積して、バイオフィルム関連細菌は、浮遊実体に戻る方が都合がよくなる(Karatan et al.、Microbiol.Mol.Biol.Rev.73:310(2009))。従って、バイオフィルムは、有限の寿命を有し、最終的な分解を特徴とする。
【0047】
ごく一般的には、バイオフィルムは、生存および非生存表面に付着した、生きているまたは死んでいる微生物、特に細菌と、細胞外の高分子物質(EPSマトリックス)、例えば、多糖類の形のそれらの代謝物とが一緒になった、集合体であると理解されている。浮遊細胞に対しては、通常、優れた増殖阻害または致死の作用を示す抗バイオフィルム物質の活性が、例えば、生物学的マトリックス中への活性物質の不十分な浸透のために、バイオフィルム中で組織化されている微生物に対して大きく低減される可能性がある。
【0048】
他の単細胞の生物に加えて、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌は、バイオフィルムを産生できる。細菌性バイオフィルムは、コロニーを形成している細胞により産生される細胞外の多糖マトリックス内に包まれた細胞表面付着共同体である。バイオフィルム成長は、一連のプログラムされたステップにより発生し、このステップは、最初の表面への付着、3次元マイクロコロニー形成、およびその後の成熟バイオフィルムの成長を含む。バイオフィルム内の細胞の場所が深くなればなるほど(例えば、細胞がバイオフィルムが付着している固体表面に近いほど、大部分のバイオフィルムマトリックスにより遮蔽され、保護される)、細胞はさらに代謝不活性になる。この生理学的変化と勾配の結果、効率的システムが樹立され、それにより微生物が多様な機能的体質を有する細菌性共同体集団が作られる。また、バイオフィルムは、種々の、多様な非細胞性成分で作られ、これらに限定されないが、炭水化物(単体および複合体)、脂質、タンパク質(ポリペプチドを含む)、および糖類およびタンパク質の脂質複合体類(リポ多糖類およびリポタンパク質)を含んでもよい。
【0049】
バイオフィルムは、適した成長条件が発生し、微生物に対し生存を保証する選択優位性を提供できるまで、一定時間の間休眠状態での存在を可能とする。しかし、この選択は、バイオフィルムがヒト細菌感染の約65%に関与すると認められている点で、ヒトの健康に重大な脅威を提起する可能性がある(Smith、Adv.Drug Deliv.Rev.57:1539−1550(2005);Hall−Stoodley et al.、Nat.Rev.Microbiol.2:95−108(2004))。
【0050】
本明細書記載のように、バイオフィルムは、多種多様の生物学的、医学的、商業的、工業的、およびプロセシング作用に影響を与える可能性がある。工業環境では、バイオフィルムは、表面、例えば、パイプおよびフィルターに付着することができる。バイオフィルムは、熱交換器、油送管、水系、フィルター、等の工業システムにおける生物腐食および生物付着の原因となるために、工業環境では、問題を生ずる(Coetser et al.、(2005)Crit.Rev.Micro.31:212−32)。従って、バイオフィルムは、パイプ中の液体の通過を阻害し、水および他の液体系を詰まらせ、さらに病原菌、原虫類、および真菌のリザーバーの役割をする可能性がある。このように、工業バイオフィルムは、工業処理システムにおける経済的非効率の重要な原因である。さらに、異なる種のバイオフィルム産生細菌がこのようなシステム内で共存する可能性がある。従って、このような系では、複数の種に起因するバイオフィルム形成の可能性がある。
【0051】
本明細書記載の方法および材料は、多種多様の商業的、工業的、および処理操作、例えば、水処理/加工業において認められる操作に関連したバイオフィルム形成を防ぐまたは減らすことができる。一部の例では、D−アミノ酸は、このような表面に認められるバイオフィルムに適用できる。他の例では、D−アミノ酸は、バイオフィルム形成細菌が表面に付着するのを防ぐために使用できる。例えば、表面は、産業機器の表面(例えば、優良製造規範(GMP)施設、または食物処理プラント、写真処理現場、等にある設備)、給排水設備の表面、または水域の表面(湖、スイミングプール、海洋、等)でありうる。
【0052】
表面は、細菌性バイオフィルムの形成を防ぐために使用する前に、D−アミノ酸でコート、吹き付け、または含浸することができる。このような表面の具体的な非制限的例では、配管、パイプ、および水凝集物収集、下水排水、製紙パルプ化作業、再循環水系(エアコンシステム、クーリングタワー、等)、および、帯水、水取扱、水処理、および水収集系に付随する支持部材が含まれる。D−アミノ酸の付与により、水の表面またはパイプまたは水処理系の配管表面または水に接触する収集および/または操作系が関与する他の表面のバイオフィルム形成を処理する、防ぐまたは減らすことができる。
【0053】
バイオフィルム形成細菌
本明細書記載の方法は、バイオフィルムの形成および/または脅威を防ぐ、または遅らせるために使用できる。代表的方法では、バイオフィルムは、バイオフィルム成形細菌により形成される。細菌は、グラム陰性菌種またはグラム陽性細菌性種であってもよい。このような細菌の非制限的例には、以下の属のメンバーが含まれる:アクチノバチルス属のメンバー(例えば、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス)、アシネトバクター属のメンバー(例えば、アシネトバクター・バウマンニ)、エロモナス属のメンバー、ボルデテラ属のメンバー(例えば、百日咳菌、ボルデテラ・ブロンキセプチカ、またはパラ百日咳菌)、ブレビバシラス属のメンバー、ブルセラ属のメンバー、バクテロイデス属のメンバー(例えば、バクテロイデス・フラジリス)、バークホルデリア属のメンバー(例えば、セパシア菌または類鼻疽菌)、ボレリア属のメンバー(例えば、ライム病ボレリア)、桿菌属のメンバー(例えば、炭疽菌または枯草菌)、カンピロバクター属のメンバー(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ)、キャプノサイトファーガ属のメンバー、カルジオバクテリウム属のメンバー(例えば、カーディオバクテリウム・ホミニス)、シトロバクター属のメンバー、クロストリジウム属のメンバー(例えば、破傷風菌またはクロストリジウム・ディフィシル)、クラミジア属のメンバー(例えば、トラコーマクラミジア、肺炎クラミジア、またはオウム病クラミジア)、エイケネラ属のメンバー(例えば、エイケネラ・コローデンス)、エンテロバクター属のメンバー、エシェリキア属のメンバー(例えば、大腸菌)、フランシセラ属のメンバー(例えば、野兎病菌)、フソバクテリウム属のメンバー、フラボバクテリウム属のメンバー、ヘモフィルス属のメンバー(例えば、軟性下疳菌またはインフルエンザ菌)、ヘリコバクター属のメンバー(例えば、ピロリ菌)、キンゲラ属のメンバー(例えば、キンゲラ・キンゲ)、クレブシエラ属のメンバー(例えば、肺炎桿菌)、レジオネラ属のメンバー(例えば、在郷軍人病菌)、リステリア属のメンバー(例えば、リステリア菌)、レプトスピラ属のメンバー、モラクセラ属のメンバー(例えば、カタル球菌)、モルガネラ属のメンバー、マイコプラズマ属のメンバー(例えば、マイコプラズマ・ホミニスまたは肺炎マイコプラズマ)、マイコバクテリウム属のメンバー(例えば、マイコバクテリウム結核またはらい菌)、ナイセリア属のメンバー(例えば、淋菌または髄膜炎菌)、パスツレラ属のメンバー(例えば、パスツレラ・マルトシダ)、プロテウス属のメンバー(例えば、プロテウス・ブルガリスまたはプロテウス・ミラビリス)、プレボテラ属のメンバー、プレジオモナス属のメンバー(例えば、プレジオモナス・シゲロイデス)、シュードモナス属のメンバー(例えば、緑膿菌)、プロビデンシア属のメンバー、リケッチア属のメンバー(例えば、リケッチア・リケッチイまたは発疹熱リケッチア)、ステノトロフォモナス属のメンバー(例えば、ステノトロホモナス・マルトフィリア)、ブドウ球菌属のメンバー(例えば、ブドウ球菌または表皮ブドウ球菌)、連鎖球菌属のメンバー(例えば、緑色連鎖球菌、化膿性連鎖球菌(グループA)、ストレプトコッカス・アガラクチア(グループB)、ストレプトコッカス・ボビス、または肺炎球菌)、ストレプトマイセス属のメンバー(例えば、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス)、サルモネラ属のメンバー(例えば、腸炎菌、チフス菌、またはネズミチフス菌)、セラチア属のメンバー(例えば、霊菌)、赤痢菌属のメンバー、スピリルム属のメンバー(例えば、鼡咬症スピリルム)、トレポネーマ属のメンバー(例えば、梅毒トレポネーマ)、ベイヨネラ属のメンバー、ビブリオ属のメンバー(例えば、コレラ菌、腸炎ビブリオ、またはビブリオ・バルニフィカス)、エルシニア属のメンバー(例えば、エンテロコリチカ菌、ペスト菌、または仮性結核菌)、およびザントモナス属のメンバー(例えば、ザントモナス・マルトフィリア)。
【0054】
枯草菌は、特異的に半固体表面上に複合共同体を構築し、静置培養液の空気/液体界面に厚いペリクルを形成する(Lopez et al.、FEMS Microbiol.Rev.33:152(2009);Aguilar et al.、Curr.Opin.Microbiol.10:638(2007);Vlamakis et al.、Genes Dev.22:945(2008);Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:11621(2001))。枯草菌バイオフィルムは、菌体外多糖およびタンパク質TasAから成るアミロイド線維で構成される細胞外のマトリックスにより一緒に保持された長鎖細胞から成る(Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:11621(2001);Branda et al.、Mol.Microbiol.59:1229(2006);Romero et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2010、近刊))。菌体外多糖は、epsA−Oオペロンによりコードされた酵素により産生され(「epsオペロン」)、TasAタンパク質は、yqxM−sipW−tasAオペロン(「yqxMオペロン」)のプロモーター遠位遺伝子によりコードされる(Chu et al.、Mol.Microbiol.59:1216(2006))。
【0055】
バイオフィルム産生細菌、例えば、本明細書記載の種は、本明細書記載のように、インビトロで、または表面上で、生存患者中に見出すことができる。
【0056】
用途/配合
D−アミノ酸組成物は、非生物学的半固形または固体表面上のバイオフィルム形成を減らすまたは防ぐために使用できる。このような表面は、バイオフィルム形成および細菌付着が起こりやすいどのような表面であってもよい。表面の非制限的例には、1つまたは複数の以下の材料から作られる硬質表面が含まれる(これらは任意選択で、例えば、ペンキまたはエナメルでコートされる):金属、プラスチック、ゴム、板、ガラス、木材、紙、コンクリート、岩石、大理石、石膏およびセラミック材料、例えば、磁器。
【0057】
特定の実施形態では、表面は、水または、特に、貯留水と接触する表面である。例えば、表面は、給排水設備、産業機器、水凝集物収集装置、下水輸送用設備、水再循環設備、製紙パルプ化設備、ならびに水処理および水輸送設備の表面であってもよい。排水施設の表面の非制限的例には、浴槽、台所用電気器具、調理台、シャワーカーテン、グラウト、洗面所、工業食品および飲料生産設備、およびフロアリングが含まれる。他の表面には、海洋構造物、例えば、ボート、埠頭、石油掘削用プラットホーム、取水口、濾過装置、およびのぞき窓が含まれる。
【0058】
D−アミノ酸は、有効量のD−アミノ酸の表面への充填またはロードに関連する被覆、コーティング、接触、等のどの既知の手段によっても表面に適用可能である。D−アミノ酸は、例えば、蒸発により除去してD−アミノ酸コーティングを残す適切なキャリア、例えば、液体キャリア、と共に表面に適用可能である。具体的な例では、D−アミノ酸は、例えば、ポリマー/D−アミノ酸フィルムを表面に吹付け付けることにより、例えば、ポリマー/D−アミノ酸溶液中にディッピングまたはこれを表面にスピンコーティングすることにより、または他の共有結合もしくは非共有結合の手段により表面に直接付着される。他の例では、表面は、D−アミノ酸を吸収する吸収性物質(例えば、ヒドロゲル)でコートされる。
【0059】
D−アミノ酸は、病院または医学環境での表面の処理に適している。本明細書記載のD−アミノ酸および組成物をコーティング、潤滑剤、洗浄または清浄溶液、等として適用した場合、バイオフィルム形成を阻害またはバイオフィルム形成を低減することができる。
【0060】
本明細書記載のD−アミノ酸は、また、特に、織物繊維材料を保持する場合、の処理に適する。このような材料は、例えば、絹、ウール、ポリアミドまたはポリウレタン、および特に各種セルロース繊維材料の染色されていないおよび染色されたまたは印刷された繊維材料である。このような繊維材料は、例えば、天然セルロース繊維、例えば、綿、リネン、ジュートおよび麻、ならびにセルロースおよび再生セルロースである。紙、例えば、衛生目的で使われる紙にも、1つまたは複数の本明細書記載のD−アミノ酸を使った抗バイオフィルム特性を付与することもできる。また、不織布、例えば、おむつ/おしめ、生理用ナプキン、パンティーライナー、および衛生用布巾および家庭用品に、抗バイオフィルム特性を付与することもできる。
【0061】
また、本明細書記載のD−アミノ酸は、特に、工業配合物、例えば、コーティング、潤滑剤等に抗バイオフィルム特性を付与する、または維持する処理をするのにも適している。
【0062】
また、本明細書記載のD−アミノ酸は、洗浄および清浄配合物、例えば、液体または粉末洗浄剤または柔軟剤にも使用可能である。本明細書記載のD−アミノ酸は、また、硬質表面の洗浄と消毒のための家庭用および汎用洗浄剤としても使用可能である。代表的洗浄配合物は、例えば、次の組成を有する:0.01〜5重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸、3.0重量%のオクチルアルコール4EO、1.3重量%の脂肪アルコールC8〜C10ポリグルコシド、3.0重量%のイソプロパノール、および水添加100%。
【0063】
また、本明細書記載のD−アミノ酸は、木材の抗バイオフィルム処理および革の抗バイオフィルム処理、抗バイオフィルム特性を付与した革の保護および革の貯蔵にも使用可能である。本明細書記載のD−アミノ酸は、また、化粧品および家庭用品を微生物の被害から保護するためにも使用可能である。
【0064】
本明細書記載のD−アミノ酸は、問題になっている対象物品または対象物品の表面に1つまたは複数の本明細書記載のD−アミノ酸を組み込むことにより、またはコーティングまたはフィルムの一部としてこれらの表面に抗バイオフィルムを適用することにより、生物付着を防ぐ、または表面の微生物蓄積を除去または管理するのに有用である。このような表面は、海洋環境(淡水、半塩水および塩水環境を含む)と接触する表面、例えば、船体、ドックの表面または循環または通過水システム中のパイプの内面を含む。同様な生物付着を受けやすい他の表面としては、例えば、雨水露出壁、シャワー室の壁、屋根、排水路、プール域、サウナ、例えば、地階またはガレージなどの湿気環境露出フロアおよび壁、、および工具箱およびアウトドア家具さえも挙げられる。米国特許第7、618、697号(参照により全体が組み込まれる)は、生物付着から表面を保護するコーティングまたはフィルムとして有用な化合物を開示している。
【0065】
フィルムまたはコーティングの一部として適用する場合は、本明細書記載の1つまたは複数のD−アミノ酸は、結合剤を含む組成物の一部としてもよい。結合剤は、本抗バイオフィルムと適合する任意のポリマーまたはオリゴマーであってよい。結合剤は、抗付着組成物調製の前のポリマーまたはオリゴマーの形であってもよく、または、基質への適用後を含む調製の間または後の重合により形成されてもよい。特定の適用、例えば、特定のコーティング適用では、適用後の抗付着組成物オリゴマーまたはポリマーを架橋させることが望ましいであろう。本明細書で使われる用語の「結合剤」には、材料、例えば、木材、プラスチック、ガラスおよび他の表面の保護の目的で商業的に使用されているグリコール、オイル、ワックスおよび界面活性剤もまた含まれる。例には、木材用防水剤、ビニル保護剤、保護ワックス、等が挙げられる。
【0066】
組成物は、コーティングまたはフィルムであってもよい。組成物が、例えば、カレンダー仕上げまたは共押し出しを含む接着剤の使用または溶融塗布により表面に適用される熱可塑性フィルムの場合は、結合剤は、フィルム調製に使用される熱可塑性ポリマーマトリックスである。組成物がコーティングの場合には、組成物は、液体溶液または懸濁液、ペースト、ゲル、オイルとして適用でき、またはコーティング組成物は、固体、例えば、粉末コーティングでもよく、これは、その後、熱、UV光他の方法により硬化される。
【0067】
本発明の組成物は、コーティングまたはフィルムでもよいので、結合剤は、コーティング調製またはフィルム調製に使用される任意のポリマーを含むことができる。例えば、結合剤は、熱硬化、熱可塑、エラストマー、元々架橋しているまたは架橋させたポリマーである。熱硬化、熱可塑、エラストマー、元々架橋しているまたは架橋させたポリマーには、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ハロゲン化ビニルポリマー例えば、PVC、天然および合成ゴム、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、不飽和ポリアミド、ポリイミド、シリコン含有およびカルバマートポリマー、フッ素化ポリマー、置換アクリルエステル由来、例えば、エポキシアクリラート、ウレタンアクリラートまたはポリエステルアクリラート由来架橋性アクリル樹脂が含まれる。また、ポリマーは、前出材料の混合物でも、共重合体でもよい。
【0068】
生体適合性コーティングポリマー、例えば、ポリ[−アルコキシアルカノアート−co−3−ヒドロキシアルケノアート](PHAE)ポリエステル(Geiger et.al.Polymer Bulletin 52、65−70(2004))もまた、本発明の結合剤として使用可能である。アルキド樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン含有ポリマー、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、フッ素化ポリマーおよびビニルアセタートポリマー、ビニルアルコールおよびビニルアミンは、本発明に有用な通常のコーティング結合剤の非制限的例である。他の既知のコーティング結合剤は、本開示の一部である。
【0069】
コーティングは、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアナート、イソシアヌラート、ポリイソシアナート、エポキシ樹脂、無水物、ポリ酸およびアミンで架橋可能であり、アクセラレータを加えても加えなくてもよい。本明細書記載の組成物は、生物蓄積に好適な条件に暴露される表面に適用される、例えば、コーティングであってもよい。前記コーティング中の本明細書記載の1つまたは複数のD−アミノ酸の存在が、表面への生物の付着を防ぐ。
【0070】
本明細書記載のD−アミノ酸は、完全なコーティングまたはペンキ配合物、例えば、海洋ゲルコート、セラック、ワニス、ラッカーもしくはペンキの一部であってもよく、または抗付着組成物は、本発明のポリマーと結合剤のみ、または本発明のポリマー、結合剤およびキャリア物質のみを含んでもよい。このようなコーティング配合物または適用において、当技術分野で既知の他の添加物もまた、適する。
【0071】
コーティングは溶媒ベースでも水性でもよい。水性コーティングは、通常、より環境に優しいと考えられる。一部の例では、コーティングは、本明細書記載の1つまたは複数のD−アミノ酸、および結合剤または水ベースコーティングもしくはペンキの水性分散液であってもよい。例えば、コーティングは、1つまたは複数のD−アミノ酸およびアクリル、メタクリル酸またはアクリルアミドポリマーもしくはコポリマーまたはポリ[−アルコキシアルカノアート−co−3−ヒドロキシアルケノアート]ポリエステルの水性分散液を含んでもよい。
【0072】
コーティングは、前にコートされた対象物品上に適用された保護剤コーティング、仕上げ塗装または保護ワックス、等の既にコーティングがなされている表面にも適用可能である。コーティングシステムには、海洋コーティング、木材コーティング、他の金属用コーティングおよびプラスチックおよびセラミック上のコーティングが含まれる。代表的海洋コーティングは、不飽和ポリエステル、スチレンおよび触媒を含むゲルコートである。一部の例では、コーティングは、ハウスペイント、または他の修飾的または保護ペンキである。また、ペンキまたはセメント、コンクリートまたは他の石造物品に適用される他のコーティングであってもよい。コーティングは、地階または基礎用等の防水剤であってもよい。
【0073】
一部の例では、コーティング組成物は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、へら引き、または刷毛、ローラーまたは他の塗布器を含む任意の従来の手段により表面に塗装できる。乾燥または硬化時間を考慮して適用してもよい。
【0074】
コーティングまたはフィルムの厚さは、用途に応じて変わるが、当業者ならわずかな試験の後に容易に決定できる。
【0075】
一部の例では、本明細書記載の組成物は、保護用のラミネートフィルムの形であってもよい。このようなフィルムは、熱硬化、熱可塑、エラストマー、または架橋ポリマーを含んでもよい。これらに限定されないが、このようなポリマーの例には、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ハロゲン化ビニルポリマー、例えば、PVC、天然および合成ゴム、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和のポリエステル、不飽和のポリアミド、ポリイミド、フッ素化ポリマー、シリコン含有およびカルバマートポリマーが含まれる。ポリマーは、また、前述の材料の混合物および共重合体であってもよい。
【0076】
本明細書記載の組成物がプリフォームフィルムである場合は、例えば、接着剤の使用、または表面上への共押し出しにより表面に適用可能である。また、本発明のエステルを採用するのが好都合でもあるシーラントまたはコーキングの使用が必要と思われる締め具を介して機械的に貼り付けることもできる。プラスチックフィルムは、また、カレンダー仕上げ、溶融塗布およびシュリンクラップを含む熱を使った適用が可能である。
【0077】
他の例では、本明細書記載の組成物は、研磨剤、例えば、家具研磨剤、または分散剤もしくは界面活性剤配合物、例えば、グリコールもしくはミネラルオイル分散剤または例えば、木材保護に使われるような他の配合物の一部であってもよい。有用な界面活性剤の例には、これらに限定されないが、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレアート(PST)、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレアート(PSH)、ポリオキシエチレン6トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン12トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン18トリデシルエーテル、TWEEN(登録商標)界面活性剤、トリトン(登録商標)界面活性剤、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、例えば、PLURONIC(登録商標)およびポロキサマー(登録商標)製品シリーズ(BASF)を含む、ポリオキシエチレンベース界面活性剤が含まれる。他のマトリックス形成成分には、デキストラン、直鎖PEG分子(MW500〜5、000、000)、星形PEG分子、コーム型およびデンドリマー状、多分岐PEG分子、ならびに類似の直鎖、星形、およびデンドリマーポリアミンポリマー、および種々の炭酸塩化、全フッ素置換(例えば、DUPONT ZONYL(登録商標)フッ素系界面活性剤)およびシコーン化(例えば、ジメチルシロキサン−エチレンオキシドブロック共重合体)界面活性剤が含まれる。
【0078】
本明細書記載のD−アミノ酸の広範囲の適用を考えると、D−アミノ酸含有組成物は、他の添加物、例えば、抗酸化剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン、ホスフィットまたはホスホニット、ベンゾフラン−2−オン、チオ相乗剤、ポリアミド安定剤、金属ステアラート、各形成剤、充填剤、強化剤、潤滑剤、乳化剤、染料、顔料、分散剤、他の光学的光沢剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、等、例えば、下記に列挙した材料、またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0079】
処置される基質は、無機または有機基質、例えば、金属または金属合金;上述のように元来架橋しているまたは架橋させた熱可塑性、エラストマーポリマー;天然ポリマー、例えば、木材またはゴム;セラミック材料;ガラス;革または他の織物であってもよい。基質は、例えば、非金属無機表面、例えば、シリカ、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄、炭素、シリコン、種々のケイ酸塩およびゾルゲル、石造物、および複合材料、例えば、グラスファイバーおよびプラスチック木材(ポリマーと木材削りくず、木粉または他の木材粒子の混合物)であってもよい。
【0080】
基質は、同じまたは異なる部材の各層からなる多層対象物品であってもよい。コートまたは積層される表面は、既にコーティングまたは積層を適用した露出表面であってもよい。
【0081】
コートまたは積層される無機または有機基質は、どのような固形形態であってもよい。
【0082】
例えば、ポリマー基質は、フィルムの形状のプラスチック、射出成形対象物品、押し出し製品、繊維、フェルトまたは織物であってもよい。例えば、耐久財、例えば、壁板、鼻隠し板および郵便受け、の構築組み立てまたは製造に使用される成形または押し出し高分子対象物品は、すべて本D−アミノ酸の組込みの利益を得ることができる。特定の状況下では、1つまたは複数のD−アミノ酸を、例えば、成形プロセス等の形成の間に高分子対象物品中に組み込むことができる。
【0083】
本方法から利益が得られるプラスチックには、これらに限定されないが、耐久財または機械部品の構築または製造に使われる下記を含むプラスチックが含まれる。アウトドア家具、ボート、壁板、屋根ふき材、つや出し材料、保護フィルム、ステッカー、シーラント、プラスチック木材および繊維強化複合材料等の複合材料、ディスプレイに使われるフィルムを含む機能性フィルムならびに合成繊維から構築される対象物品、例えばオーニング、例えば、キャンバスまたは帆に使われる繊維およびゴム対象物品、例えば、アウトドアマット、フロアカバー、プラスチックコーティング、プラスチック容器およびパッケージング材料;キッチンおよび浴室用具(例えば、ブラシ、シャワーカーテン、スポンジ、バスマット)、ラテックス、フィルター材料(空気および水フィルター)、医学の分野で使われるプラスチック対象物品、例えば、包帯材、注射器、カテーテル等、いわゆる「医療機器」、手袋およびマットレス。代表的なこのようなプラスチックスは、ポリプロピレン、ポリエチレン、PVC、POM、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸およびメタクリル酸、ポリブタジエン、熱可塑性ポリオレフィン、イオノマー、不飽和のポリエステルおよびABS、SANおよびPC/ABSを含むポリマー樹脂の混合物である。
【0084】
1つまたは複数の本明細書記載のD−アミノ酸の再循環冷却水中への組込み等の特定の状況では、パイプおよび他の機械的な装置の壁のバイオフィルム蓄積を防ぐために、数ppmのD−アミノ酸の使用で有効である。しかし、浸出に起因する幾分かのロス、アミノ酸に関連する反応による幾分かのロスおよび分解反応等による幾分かのロス等とは、実施に当たり、適用が想定される期間にわたり、D−アミノ酸が暴露される環境的ストレスを考慮に入れて、有効であると思われる濃度を有する配合物を調製する必要があることを意味する。
【0085】
例えば、工業用水への適用では、処理される水に対して、約0.001重量%〜約10重量%または、例えば、0.001重量%〜10重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能であり、しばしば約10%未満の上限値が使用可能であり、例えば、約5%、約3%、約2%または約1%以下でさえも、多くの環境中で有効である可能性があり、例えば、約0.01%〜約5%、または約0.01%〜約2%の1つまたは複数のD−アミノ酸の添加レベルが使用可能である。他の実施形態では、10%、5%、3%、2%、1%、未満の上限値が使用可能であり、例えば、0.01重量%〜5重量%、または約.01重量%〜2重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能である。本D−アミノ酸の高活性を考慮すれば、非常に少ない量で、環境中で有効であり、約0.000001%〜約0.5%の濃度、例えば、約0.000001%〜約0.1%または、約0.000001%〜約0.01%の濃度が、工業用水適用で使用可能である。他の実施形態では、0.000001%〜0.5%の濃度、例えば、0.000001%〜0.1%または0.000001%〜0.01%濃度が、工業用水適用で使用可能である。
【0086】
D−アミノ酸、特に低濃度のものは、摂取の可能性のある用途、例えば、バイオフィルム発生の可能性のある再利用可能水ボトルまたは飲用容器であっても安全に使用可能である。このような水輸送機器の表面は、1つまたは複数の本明細書記載のD−アミノ酸を含む製剤で洗浄可能であり、または低レベルの1つまたは複数のD−アミノ酸を、導管を通過する水の中に導入可能である。例えば、約0.0001重量%未満または約1重量%までの、典型的には、約0.1重量%未満の1つまたは複数のD−アミノ酸をこのような水中に導入できる。他の例では、0.0001重量%以下または1重量%まで、典型的には、0.1重量%未満の1つまたは複数のD−アミノ酸を、このような水の中に導入可能である。本D−アミノ酸の高活性を考慮すると、非常に少ない量で多くの環境中で有効であり、約0.000001%〜約0.1%、例えば、約0.000001%〜約0.01%、または約0.000001%〜約0.001%がこのような用途に使用可能である。別の例では、0.000001%〜0.1%、0.000001%〜0.01%、または0.000001%〜0.001%の濃度が、使用可能である。
【0087】
一部の例では、液体製剤は、約0.0005μM D−アミノ酸〜約50μM D−アミノ酸、例えば、約0.001μM D−アミノ酸〜約25μM D−アミノ酸、約0.002μM D−アミノ酸〜約10μM D−アミノ酸、約0.003μM D−アミノ酸〜約5μM D−アミノ酸、約0.004μM D−アミノ酸〜約1μM D−アミノ酸、約0.005μM D−アミノ酸〜約0.5μM D−アミノ酸、約0.01μM D−アミノ酸〜約0.1μM D−アミノ酸、または約0.02μM D−アミノ酸〜約0.1μM D−アミノ酸の濃度で調製される。他の実施形態では、液体製剤は、0.0005μM D−アミノ酸〜50μM D−アミノ酸、0.001μM D−アミノ酸〜25μM D−アミノ酸、0.002μM D−アミノ酸〜10μM D−アミノ酸、0.003μM D−アミノ酸〜5μM D−アミノ酸、0.004μM D−アミノ酸〜1μM D−アミノ酸、0.005μM D−アミノ酸〜0.5μM D−アミノ酸、0.01μM D−アミノ酸〜0.1μM D−アミノ酸、または0.02μM D−アミノ酸〜0.1μM D−アミノ酸の濃度で調製される。好ましくは、D−アミノ酸組成物は、ナノモル濃度、例えば、約5nM、約10nM、約15nM、約20nM、約25nM、約30nM、約50nM、またはそれ以上の濃度である。他の実施形態では、D−アミノ酸組成物は、約5nM、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、または50nMの濃度である。
【0088】
コーティングまたはフィルムとして使用される場合は、短期の使用には、少量の1つまたは複数のD−アミノ酸の存在でよく、例えば、季節限定または廃棄用途等に使用可能である。一般的に、約0.001%以下から約5%まで、例えば、約3%まで、または約2%までを、このようなコーティングまたはフィルムに使用可能である。他の実施形態では、0.00重量1%から5重量%まで、または重量3%まで、または2重量%までの1つまたは複数のD−アミノ酸を使用可能である。本D−アミノ酸の高活性を考慮すれば、多くの環境中で非常に少量で有効であり、約0.0001%〜約1%、例えば、約0.0001%〜約0.5%、または約0.0001%〜約0.01%の濃度をコーティング適用に対し使用可能である。他の実施形態では、0.0001重量%〜1重量%、0.0001重量%〜0.5重量%、または0.0001重量%〜0.01重量%の濃度の1つまたは複数のD−アミノ酸をコーティング適用に対し使用可能である。
【0089】
より堅牢な用途、例えば、海洋、プール、シャワーまたは建設用材料へのコーティングに対しては、より高レベルの1つまたは複数のD−アミノ酸を使用可能である。例えば、コーティングまたはフィルム配合物ベースで約0.01%〜約30%を採用可能である;多くの用途では、約0.01%〜約15%、または約0.01%〜約10%で有効であり、約0.01%〜約5%、または約0.01%〜約1%、または約0.1%以下のD−アミノ酸でさえ、使用可能であることが多い。他の実施形態では、0.01%〜15%、または0.01%〜10%で有効であり、0.01%〜5%、または0.01%〜1%、またはただの0.1%の1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能であることが多い。
【0090】
成形プラスチック製品への組込みに対しては、約0.00001%〜約10%の1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能で、例えば、重量ベースで、約0.0001%〜約3%、例えば、約0.001%から約1%までの1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能でありうる。一部の実施形態では、0.00001%〜10%の1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能であり、または0.0001%〜3%、または0.001%から1%までの1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能である。すでに成形済みの製品または線維の表面中にD−アミノ酸が含浸された状況では、表面に存在するD−アミノ酸の実際の量は、基質材料、含浸組成物の配合、および含浸ステップの間に使われた時間と温度に依存すると思われる。本D−アミノ酸の高活性を考慮すると、非常に少ない量で多くの環境中で有効であり、重量ベースで、約0.0001%〜約1%、例えば、約0.0001%〜約0.1%、もしくは約0.0001%〜約0.01%の濃度がプラスチックスに使用可能である。他の実施形態では、0.0001重量%〜1重量%、もしくは0.0001重量%〜0.1重量%、もしくは、0.0001重量%〜0.01重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸をプラスチックに使用可能である。
【0091】
D−アミノ酸を使った処理によるバイオフィルムの阻害または減少は、当技術分野で充分に確立された技術を使って測定できる。これらの技術は、吸着生物の発色を測定し、顕微鏡法を使ってインビボで微生物を観察することにより細菌の付着を評価すること、または毒性試薬に応答したバイオフィルム中の細胞死をモニターすることを可能にする。処理後、バイオフィルムは、バイオフィルムに覆われている表面積、厚さ、および一貫性(例えば、バイオフィルムの健全性)を減らすことができる。バイオフィルムアッセイの非制限的例には、マイクロタイタープレートバイオフィルムアッセイ、蛍光ベースバイオフィルムアッセイ、Walker et al.、Infect.Immun.73:3693-3701(2005)による静的バイオフィルムアッセイ、空気液体界面アッセイ、コロニーバイオフィルムアッセイ、およびKadouri Drip−Fedバイオフィルムアッセイ(Merritt et al.、(2005)微生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Microbiology)1.B.1.1−1.B.1.17)が含まれる。このようなアッセイは、バイオフィルム形成の破壊または阻害に対するD−アミノ酸の活性の測定に使用できる(Lew et al.、(2000)Curr.Med.Chem.7(6):663−72;Werner et al.、(2006)Brief Funct.Genomic Proteomic 5(1):32−6)。
【0092】
一部の例では、D−アミノ酸は、第2の試薬、例えば、殺生物剤、抗生物質と組み合わせて使用し、バイオフィルムを処理するまたはバイオフィルムの形成を防ぐことができる。抗生物質は、順次または同時にD−アミノ酸と組み合わせることができる。例えば、本明細書記載の組成物のいずれかを1つまたは複数のD−アミノ酸と、1つまたは複数の第2の試薬とを含むように処方することができる。
【0093】
抗生物質は、細菌の増殖を阻害する、または細菌を死滅させる当業者に既知の任意の化合物でよい。有用な抗生物質の非制限的例には、リンコサミド(クリンダマイシン);クロラムフェニコール;テトラサイクリン(例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン);アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、アミカシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン);ベータ−ラクタム(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、イミペネム、アズトレオナム);糖ペプチド抗生物質(例えば、バンコマイシン);ポリペプチド抗生物質(例えば、バシトラシン);マクロライド(エリスロマイシン)、アンフォテリシン;スルホンアミド(例えば、スルファニルアミド、スルファメトキサゾール、スルファセタミド、スルファジアジン、スルフイソキサゾール、スルファシチン、スルファドキシン、マフェナイド、p‐アミノ安息香酸、トリメトプリム−スルファメトキサゾール);メテナミン;ニトロフラントイン;フェナゾピリジン;トリメトプリム;リファンピシン;メトロニダゾール;セファゾリン;リンコマイシン;スペクチノマイシン;ムピロシン;キノロン(例えば、ナリジクス酸、シノキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、ペルフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、レボフロキサシン);ノボビオシン;ポリミキシン;グラミシジン;および抗シュードモナス(例えば、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリンカルベニシリン)またはそれらのいずれかの塩もしくは変異体が含まれる。このような抗生物質は、市販品として、例えば、Daiichi Sankyo、Inc.(Parsipanny、NJ)、Merck(Whitehouse Station、NJ)、Pfizer(New York、NY)、Glaxo Smith Kline(Research Triangle Park、NC)、Johnson & Johnson(New Brunswick、NJ)、AstraZeneca(Wilmington、DE)、Novartis(East Hanover、NJ)、およびSanofi−Aventis(Bridgewater、NJ)から入手可能である。使用される抗生物質は、細菌感染のタイプに依存する。
【0094】
追加の既知の殺生物剤には、トリクロサン、二酸化塩素、ビグアナイド、クロルヘキシジン、キシリトール、等が含まれる。
【0095】
抗菌剤の有用な例には、これらに限定されないが、次のものが含まれる:ピリチオン、特に、亜鉛錯体(ZPT);Octopirox(登録商標);ジメチルジメチロールヒダントイン(Glydant(登録商標));メチルクロロイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリノン(Kathon CG(登録商標));ナトリウムスルフィット;ナトリウムビスルフィット;イミダゾリジニル尿素(Germall 115(登録商標))、ジアゾリジニル尿素(Germaill II(登録商標));ベンジルアルコール;2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1、3−ジオール(Bronopol(登録商標));ホルマリン(ホルムアルデヒド);ヨードプロピニルブチルカルバマート(Polyphase P100(登録商標));クロルアセトアミド;メタンアミン;メチルジブロモニトリルグルタロニトリル(1、2−ジブロモ−2、4−ジシアノブタンまたはTektamer(登録商標));グルタルアルデヒド;5−ブロモ−5−ニトロ−1、3−ジオキサン(Bronidox(登録商標));フェネチルアルコール;o−フェニルフェノール/ナトリウムo−フェニルフェノール;ナトリウムヒドロキシメチルグリシナート(Suttocide A(登録商標));ポリメトキシ二環式オキサゾリジン(NuoseptC(登録商標));ジメトキサン;チメロサール;ジクロロベンジルアルコール;カプタン;クロルフェネシン;ジクロロフェン;クロロブタノール;グリセリルラウラート;ハロゲン化ジフェニルエーテル;2、4、4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(トリクロサン(登録商標)またはTCS);2、2’−ジヒドロキシ−5、5’−ジブロモ−ジフェニルエーテル;フェノール性化合物;フェノール;2−メチルフェノール;3−メチルフェノール;4−メチルフェノール;4−エチルフェノール;2、4−ジメチルフェノール;2、5−ジメチルフェノール;3、4−ジメチルフェノール;2、6−ジメチルフェノール;4−n−プロピルフェノール;4−n−ブチルフェノール;4−n−アミルフェノール;4−tert−アミルフェノール;4−n−ヘキシルフェノール;4−n−ヘプチルフェノール;モノおよびポリアルキルおよび芳香族ハロフェノール;p−クロロフェノール;メチルp−クロロフェノール;エチルp−クロロフェノール;n−プロピルp−クロロフェノール;n−ブチルp−クロロフェノール;n−アミルp−クロロフェノール;sec−アミルp−クロロフェノール;シクロヘキシルp−クロロフェノール;n−ヘプチルp−クロロフェノール;n−オクチルp−クロロフェノール;o−クロロフェノール;メチルo−クロロフェノール;エチルo−クロロフェノール;n−プロピルo−クロロフェノール;n−ブチルo−クロロフェノール;n−アミルo−クロロフェノール;tert−アミルo−クロロフェノール;n−ヘキシルo−クロロフェノール;n−ヘプチルo−クロロフェノール;o−ベンジルp−クロロフェノール;o−ベンジル−m−メチルp−クロロフェノール;o−ベンジル−m;m−ジメチルp−クロロフェノール;o−フェニルエチルp−クロロフェノール;o−フェニルエチル−m−メチルp−クロロフェノール;3−メチルp−クロロフェノール;3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−エチル−3−メチルp−クロロフェノール;6−n−プロピル−3−メチルp−クロロフェノール;6−イソ−プロピル−3−メチルp−クロロフェノール;2−エチル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−sec−ブチル−3−メチルp−クロロフェノール;2−イソ−プロピル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−ジエチルメチル−3−メチルp−クロロフェノール;6−イソ−プロピル−2−エチル−3−メチルp−クロロフェノール;2−sec−アミル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;2−ジエチルメチル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−sec−オクチル−3−メチルp−クロロフェノール;p−クロロ−m−クレゾール:p−ブロモフェノール;メチルp−ブロモフェノール;エチルp−ブロモフェノール;n−プロピルp−ブロモフェノール;n−ブチルp−ブロモフェノール;n−アミルp−ブロモフェノール;sec−アミルp−ブロモフェノール;n−ヘキシルp−ブロモフェノール;シクロヘキシルp−ブロモフェノール;o−ブロモフェノール;tert−アミルo−ブロモフェノール;n−ヘキシルo−ブロモフェノール;n−プロピル−m、m−ジメチルo−ブロモフェノール;2−フェニルフェノール;4−クロロ−2−メチルフェノール;4−クロロ−3−メチルフェノール;4−クロロ−3、5−ジメチルフェノール;2、4−ジクロロ−3、5−ジメチルフェノール;3、4、5、6−テラブロモ−2−メチルフェノール;5−メチル−2−ペンチルフェノール;4−イソプロピル−3−メチルフェノール;パラ−クロロ−メタ−キシレノール(PCMX);クロロチモール;フェノキシエタノール;フェノキシイソプロパノール;5−クロロ−2−ヒドロキシジフェニルメタン;レゾルシノールおよびその誘導体;レゾルシノール;メチルレゾルシノール;エチルレゾルシノール;n−プロピルレゾルシノール;n−ブチルレゾルシノール;n−アミルレゾルシノール;n−ヘキシルレゾルシノール;n−ヘプチルレゾルシノール;n−オクチルレゾルシノール;n−ノニルレゾルシノール;フェニルレゾルシノール;ベンジルレゾルシノール;フェニルエチルレゾルシノール;フェニルプロピルレゾルシノール;p−クロロベンジルレゾルシノール;5−クロロ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;4’−クロロ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;5−ブロモ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;4’−ブロモ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;ビスフェノール酸化合物;2、2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール);2、2’−メチレンビス−(3、4、6−トリクロロフェノール);2、2’−メチレンビス(4−クロロ−6−ブロモフェノール);ビス(2−ヒドロキシ−3、5−ジクロロフェニル)スルフィド;ビス(2−ヒドロキシ−5−クロロベンジル)スルフィド;安息香酸エステル(パラベン);メチルパラベン;プロピルパラベン;ブチルパラベン;エチルパラベン;イソプロピルパラベン;イソブチルパラベン;ベンジルパラベン;ナトリウムメチルパラベン;ナトリウムプロピルパラベン;ハロゲン化カルバニリド;3、4、4’−トリクロロカルバニリド(トリクロカーバン(登録商標)またはTCC);3−トリフルオロメチル−4、4’−ジクロロカルバニリド;3、3’、4−トリクロロカルバニリド;クロルヘキシジンおよびそのジグルコナート;ジアセタートおよびジヒドロクロリド;ウンデセン酸;チアベンダゾール、ヘキセチジン;ポリ(ヘキサメチルエネビグアニド)塩酸塩(Cosmocil(登録商標));銀化合物、例えば、有機銀塩またはJM Acticare(登録商標)および微粒子化した銀粒子等のそれらの製剤を含む無機銀塩、銀塩化物。
【0096】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これは、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものではない。室温は、20〜25℃の範囲の温度を示す。
【実施例】
【0097】
材料と方法
株と培地。 Luria−Bertani(LB)培地中、37℃またはMSgg培地(Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:11621(2001))中、23℃で枯草菌NCIB 3610およびその誘導体を成長させた。固形培地には、1.5%Bacto agarを添加した。必要な場合は、枯草菌の増殖用に抗生物質を次の濃度で添加した:テトラサイクリン10μg/ml、およびエリスロマイシン5μg/ml、スペクチノマイシン500μg/ml。
【0098】
本実験で使った株:
全枯草菌株は、強固なバイオフィルムを形成する野生株のNCIB3610の誘導体である(Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:11621(2001)) ;
株FC5(PepsA−lacZ cat)(Chu et al.、Mol.Microbiol.59:1216(2006)) ;
株FC122(PyqxM−lacZ spec)(Chuetal.、Mol.Microbiol.59:1216(2006)) ;
株IKG55(ΔracX::spec ΔylmE::tetR) ;
株DR−30(tasA−mCherry cat);
株IKG40(yqxM2);
株IKG44(yqxM6);
株IKG50(yqxM2 tasA−mCherry);
株IKG51(yqxM6 tasA−mCherry);
ブドウ球菌SC01(Kolter labコレクション由来)。
【0099】
株構築。標準的手法を使って株を構築した(J.Sambrook、D.W.Russell、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning.ALaboratory Manual.)(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、USA、2001)。ロングフランキングPCR変異誘発を使ってΔracX::specおよびΔylmE::tetRを生成した(Wach、Yeast 12:259(1996))。DNAを、コンピテント細胞のDNA媒介形質転換により、株PY79誘導体中に導入した(Gryczan et al.、J.Bacteriol.134:318(1978))。SPP1ファージ媒介形質導入を使って、抗生物質耐性結合変異をPY79誘導体からNCIB 3610中に導入した(Yasbin et al.、J.Virol.14:1343(1974))。
【0100】
試薬。 アミノ酸をSigma−Aldrich(St.Louis、MO)から入手した。14C−D−チロシンおよび14C−L−プロリンをAmerican Radiolabeled Chemicals、Inc(St.Louis、MO)から入手した。
【0101】
コロニーおよびペリクル形成。固形培地上へのコロニー形成形成のために、細胞を最初にLB培地中で指数増殖期迄増殖し、3μlの培養液を1.5%Bacto agar含有固形MSgg培地上に配置した。プレートを23℃でインキュベートした。液体培地中のペリクル形成のために、細胞を指数増殖期迄成長させ、12ウエルプレート(VWR)中で、6μlの培養液を6mlの培地と混合した。プレートを23℃でインキュベートした。コロニーとペリクルの画像をSPOTカメラ(Diagnostic Instruments、USA)で撮影した。
【0102】
馴化培地の調製。LB培地中で細胞を指数増殖期まで成長させた。0.1mlの培養液を100mlのMSgg培地に添加し、500mlビーカー中、23℃で振盪を加えずに成長させた。次に、遠心分離を使って8、000rpm、15分間ペリクルおよび馴化培地を集めた。馴化培地(上清液)を取りだし、0.22μmフィルターを通して濾過した。濾液を4℃で貯蔵した。さらなる精製のために、C−18 Sep Pakカートリッジを使って、5%毎のステップの0%〜100%メタノールによる段階的溶出により、バイオフィルム阻害活性を分別した。
【0103】
馴化培地中のD−アミノ酸の特定および定量化。(A)アミノ酸の定量化。Tyr、Leu、Met、およびTrpの標準溶液を種々の濃度(0.001〜0.2mM)で調製した。これらの溶液を0%〜60%から100%CH3CN(0.1%ギ酸含有)のステップ勾配溶媒系(Thermo Scientific Hypercarb 4.6mm×100mm、5μm)の(0−12−20分)の条件でLC/MSで分析し、イオンカウント積分により各アミノ酸濃度の検量線を得た。馴化培地試料を、全4つのキラルアミノ酸の全体濃度測定と同じ方法でLC/MSを使って分析した。(B)D−アミノ酸の特定。試料をSpeedVac中で乾燥し、100μLの1N NaHCO3に溶解した。10mg/mLのL−FDAA(N−(2、4−ジニトロ−5−フルオロ−フェニル)−L−アラニンアミド)溶液をアセトン中で調製し、50μLのアセトン溶液を1N NaHCO3中の試料に添加した。反応混合物を80℃で5分間インキュベートし、50μLの2N HClを添加して反応を停止させた。誘導体を、10%〜100%CH3CN(0.1%ギ酸含有)の勾配溶媒系を使って30分間にわたりLC/MS(Agilent 1200シリーズHPLC/6130シリーズMS、Phenomenex Luna C18、4.6mm×100mm、5μm)を使って分析した。L−FDAA−アミノ酸の保持時間をL−FDAA真性標準アミノ酸比較した。
【0104】
クリスタルバイオレット染色。細胞を6ウエルプレートで成長させたこと以外は、以前記載したのと同様にクリスタルバイオレット染色を行った(O’Tooleetal.、Mol.Microbiol.30:295(1998))。ウエルを500μlの1.0%クリスタルバイオレット染料で染色し、2mlの再蒸留水で2回洗浄し、完全に乾燥した。
【0105】
蛍光顕微鏡観察。蛍光顕微鏡分析用として、1mlの培養液を採取した。細胞をPBS緩衝液で洗浄し、50μlのPBS緩衝液中に懸濁した。カバースライドをポリL−リシン(Sigma)で前処理した。試料をOlympusワークステーションBX61顕微鏡を使って調査した。自動化ソフトウェアプログラムSimplePCIを使って画像を取り込み、MetaMorphプログラム(Universal Imaging Corporation)を使って解析した。
【0106】
透過型電子顕微鏡観察および免疫標識。試料を蒸留水で希釈し、炭素またはホルムバール/炭素被覆グリッド上に吸着させた。真空エバポレーター中でグロー放電で使用する前にグリッド表面を親水性にした。試料がフィルム表面上に吸着されるとすぐに、過剰試料を濾紙(Whatman#1)で拭き取り、グリッドを5μlの染色溶液(1〜2%水性ウラニルアセタート)上に数分間浮かべた後、拭き取った。試料を乾燥し、Tecnai(登録商標)G2SpiritBioTWIN顕微鏡を使い、加速電圧80KVで調査した。AMT 2k CCDカメラで画像を撮影した。
【0107】
TasAの免疫局在性のために、ニッケルグリッド上の希釈試料を0.1%ツイーン20含有PBS中の1%脱脂粉ミルクから成るブロッキング緩衝液上に30分間浮かべ、ブロッキング緩衝液で1:150に希釈した抗TasA一次抗体と共に2時間インキュベートした後、PBSTで洗浄し、ヤギ抗ウサギ20nm金二次抗体(Ted Pella、Inc.、Redding、CA)に1時間暴露し洗浄した。全てのグリッドをウラニルアセタートおよび鉛シトラートで染色した後、上述のように観察した。
【0108】
β−ガラクトシダーゼ活性のアッセイ。細胞をMSgg培地中、37℃でウォーターバスを使って浸透を加えながら培養した。1mlの培養液を各時点で採取した。β−ガラクトシダーゼ活性を以前に記載の方法と同様に測定した(Chai et al.、Mol.Microbiol.67:254(2008))。
【0109】
アミノ酸の細胞壁への組込み。増殖の指数増殖期の中間点で50mlの培養液中の細胞を遠心分離により採取し、0.05Mのリン酸塩緩衝液(pH7)で洗浄し、5mlの同じ緩衝液中に再懸濁した。細胞を、10μCi/mlの14C−D−チロシンまたは14C−L−プロリンで処理し、37℃で2時間、さらにインキュベートした。全細胞および細胞壁画分の放射能をモニターし、間隔を置いて試料を取り出した。全細胞中への取り込みの測定用として、0.1mlの試料を採取した。細胞壁への取り込みの測定用として、0.5mlの試料を採取した。細胞を遠心分離により採取し、0.1mg/mlリゾチーム含有SM緩衝液[0.5Mショ糖、20mM MgCl2、および10mMカリウムホスファート、pH(6.8)]中に再懸濁した。次に、細胞を37℃で10分間インキュベートした。その後、得られたプロトプラストを5000rpmで10分間の遠心分離より取り出し、細胞壁物質を上清液中に残した。細胞壁画分はタンパク質を含まないことが、抗シグマA抗体を使った免疫ブロット法分析により確認された。最後に、10mlの5%トリクロロ酢酸を全細胞試料および細胞壁物質に添加し、氷上で少なくとも30分間維持した。TCA不溶性物質をMilliporeフィルター(0.22μm孔径、Millipore)上に採取し、5%TCAで洗浄した。フィルターを風乾し、シンチレーションバイアル中に置き、シンチレーションカウンターを使って、TCA不溶性物のカウント/分を測定した。
【0110】
実施例1.枯草菌により形成されたバイオフィルム中のD−アミノ酸の選別
枯草菌は、バイオフィルムを誘導培地中での3日間のインキュベーション後の静置培養空気/液体界面に分厚いペリクルを形成する(図1A)。しかし、追加の3から5日のインキュベーションにより、ペリクルは、その構造的健全性を失う(図1−B)。成熟バイオフィルムが、バイオフィルム分解の引き金を引く因子を産生するのかどうかを調べるために、馴化培地の濃縮および部分精製抽出物の新しい培地を添加した場合のペリクル形成に与える効果をアッセイした。この目的のために、8日間培養液由来の馴化培地をC18 Sep Pakカラムに負荷した。次に、そのカラムからの濃縮した溶出液を、新しく播種した培養液に添加した。等容量の馴化培地由来の物質の25%に相等する濃縮溶出液の量が、ペリクル形成を防ぐのに充分であった(図1C)。対照としての、3日間培養液由来の馴化培地を使って調製した追加の濃縮溶出液は、ペリクル形成に対しほとんどまたは全く効果を示さないことが観察された(図1D)。さらなる因子の精製は、メタノールの濃度増加と共にカートリッジを段階的に溶出することにより達成される。40%メタノールでの溶出により、ペリクル形成の阻害に対し高度に活性な画分が得られた(図1E)。しかも、この物質は、細胞成長にはほとんどまたは全く影響を与えなかった。バイオフィルム阻害活性は、100℃で2時間の加熱およびプロテイナーゼK処理に耐性を示した(図1F)。
【0111】
D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンが、液体および固形培地の両方で、枯草菌によるバイオフィルム形成を阻害するものとして選別された(図2A、5、6)。図2Aは、バイオフィルムを誘導する培地中の新しく播種した培養液中へのD−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)、L−チロシン(7mM)、またはL−ロイシン(8.5mM)の添加の、3日間のインキュベーション後のペリクル形成に対する効果を示す。D−チロシンおよびD−ロイシンの両方が、対応するL−アミノ酸に比較して、バイオフィルム成長に対する有意な阻害を示した。同様に、図5は、D−トリプトファン(0.5mM)、D−メチオニン(2mM)、L−トリプトファン(5mM)またはL−メチオニン(5mM)を補充したMSgg培地を含み、株NCIB3610を播種し、3日間インキュベートしたウエルを示す。D−アミノ酸のみが、バイオフィルム形成の阻害に対し活性であった。
【0112】
図6は、D−チロシン(3μM)またはD−ロイシン(8.5mM)を補充した固形MSgg培地を含み、株NCIB3610を播種し、4日間インキュベートしたプレートを示す。D−チロシンおよびD−ロイシン補両方がバイオフィルム形成を阻害した。
【0113】
D−メチオニン、D−トリプトファン、D−チロシンおよびD−ロイシンは、対応するL−アミノ酸に比較して、バイオフィルム成長に対する有意な阻害を示した。対照的に対応するL−異性体および他のアミノ酸のD−異性体、例えば、D−アラニンおよびD−フェニルアラニンは、枯草菌に対するバイオフィルム阻害アッセイで有効ではなかった。
【0114】
次に、バイオフィルム形成を防ぐのに必要な最小濃度(MIC:最小阻害濃度(Minimal inhibitory concentration))を測定した。図2Bに示すように、それぞれのD−アミノ酸は、活性が変わり、D−チロシンが最も有効であった。D−メチオニン、D−トリプトファン、およびD−ロイシンは、約1mMのMICであり、一包、D−チロシンは、約100nMのMICである。著しいのは、全ての4つのD−アミノ酸の混合物(等モル量の)は、特に強力で、10nM未満のMBICであった。従って、D−アミノ酸は、相乗的に作用する。D−アミノ酸は、バイオフィルム形成を阻害するのみでなく、破壊された既存バイオフィルムを破壊した。図2Cは、3日間培養液を示し、これに対し、どのアミノ酸も添加されない(未処理)、またはD−チロシン(3μM)が添加された、またはD−チロシン、D−トリプトファン、D−メチオニンおよびD−ロイシン(各2.5nM)の混合物が添加されたものに対し、続いて、さらに8時間インキュベーションを行った。D−チロシンまたは4つのD−アミノ酸の混合物の追加により、8時間の間に、ペリクルの顕著な崩壊が起こった。
【0115】
D−アミノ酸は、これらのアミノ酸のα−炭素立体中心をL−型からD−型へ変換する酵素であるアミノ酸ラセマーゼにより生成される(Yoshimura et al.、J.Biosci.Bioeng.96:103(2003))。バイオフィルム阻害因子はD−アミノ酸であるという考えと一致する遺伝的証拠は、ylmEおよびracX、遺伝子の変異体を使って得られ、その予測された産物は、既知のラセマーゼに類似の配列を示した。ylmEまたはracX単独に対する株変異体は、ペリクル分解の中程度の遅延を示した(デーは示さず)。図7は、12ウエルプレート中で成長させ、5日間インキュベートした、NCIB3610(WT)ならびにylmEおよびracX(IKG155)に対し2重に欠失した株変異体を示す。想定上のラセマーゼである二重変異体細胞により形成されたペリクルの分解が有意に遅延し、ラセマーゼ活性が特異的に低減した株もまた、低減した抗バイオフィルム阻害を示すことを示唆している。また、二重変異体由来馴化培地は、野性型由来の馴化培地とは対照的に、バイオフィルム形成阻害に関し無力であった。図2Dは、野性型または二重変異体が有意なバイオフィルム成長を示すylmEおよびracXの二重株変異体(IKG55)の8日間培養液由来の馴化培地の濃縮Sep Pak C−18カラム溶出液の効果を示す。
【0116】
次いで、D−アミノ酸がバイオフィルム成熟の間に産生されるのかどうか、また、成熟バイオフィルムの分解を説明するのに充分な存在量で産生されるのかどうかを測定した。従って、LC/MSを行い、続いて、ペリクル形成の初期および後期に採取した馴化培地に対し、Nα−(2、4−ジニトロ−5−フルオロフェニル)−L−アラニンアミド(L−FDAA)による誘導体化を使ってD−アミノ酸を特定した。D−チロシン(6μM)、D−ロイシン(23μM)、およびD−メチオニン(5μM)は、6日目までにバイオフィルム形成を阻害するのに必要な、またはそれ超の濃度で存在したが、3日目には、10nM未満の濃度で、例えば、バイオフィルム形成を阻害するのに十分ではないレベルで存在したという結果であった。
【0117】
馴化培地と同様に、D−アミノ酸は、細胞成長を阻害せず、マトリックスオペロンepsおよびyqxMの発現も阻害しなかった(図8〜9)。図8は、D−アミノ酸の細胞成長に与える影響を示す。細胞を、D−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)含有MSgg培地中で振盪を加えながら成長させた。D−アミノ酸処理培養液中の細胞成長は、実質的に未処理試料と同じであった。図9Aは、株FC122(PyqxM−lacZ保有)によるPyqxM−lacZの発現を示し、図9Bは、D−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)含有MSgg培地中で振盪を加えながら成長させた株FC5(PepsA−lacZ保有)によるPepsA−lacZの発現を示す。この場合も、D−アミノ酸処理試料にたいするyqxMおよびeps発現は、実質的に未処理試料と同じであった。
【0118】
D−アミノ酸は、細胞壁のペプチドグリカン成分のペプチド架橋中に組み込まれることを以前報告した。確認のため、細胞をバイオフィルム誘導培地中で成長させ、14C−D−チロシンまたは14C−L−プロリン(10μCi/ml)と共に37℃で2時間インキュベートした。図3Aは、放射性D−チロシンの細胞壁への組込みを示す。14C−D−チロシンを使って、D−チロシン(14C−L−プロリンではそうではないが)は、細胞壁に組み込まれたことが示された。結果を細胞中への合計組込み(L−プロリンに対しては360、000cpm/ml、D−チロシンに対しては46、000cpm/ml)のパーセントで表す。
【0119】
細胞壁中に組み込まれたD−アミノ酸が、TasA繊維を細胞への固定から離脱させることが可能かどうかを調べるために、TasAと蛍光のレポーターmCherryの機能性融合体の局在化を調べた。図3Bは、機能性tasA−mCherry翻訳融合体を含む細胞由来の合計蛍光を示す。細胞を、D−チロシン(6μM)の存在または非存在下のバイオフィルム誘導培地中で振盪を加えながら定常期まで成長させた。図3Bに示すように、D−チロシンによる処理は、TasA−mCherryの合計蓄積に対しほとんどまたは全く効果がなかった。対照的に、細胞を遠心分離で洗浄し、再懸濁した後、蛍光顕微鏡で調べた場合は、未処理細胞(凝集していることが多い)は、TasA−mCherryで強力に装飾されていることが認められた。対照的に、D−チロシン処理細胞(ほとんど非凝集)は、低レベルの蛍光を示すに過ぎなかった。D−ロイシンおよび4つのD−アミノ酸等モル混合物でも、同様の結果が得られた。非修飾TasAタンパク質の局在化もまた、金標識抗TasA抗体を使って透過電子顕微鏡で解析された。図3Dは、電子顕微鏡によるTasA繊維の細胞会合を示す。24時間培養液を、D−チロシン無し(画像1と2)またはD−チロシン(0.1mM)添加あり(画像3〜6)の場合で、追加の12時間のインキュベートを行った。TasA繊維を、抗TasA抗体を使って免疫金標識により染色し、実施例に記載のように透過電子顕微鏡により可視化した。外多糖の非存在によりTasA繊維の画像処理が著しく改善されたので、細胞は、菌体epsオペロン(Δeps)の変異であった。中実矢印は、繊維バンドルを示し、中空矢印はそれぞれの繊維を示す。スケールバーは、500nmである。拡大画像2、4および6のスケールバーは、100nmである。画像1と2は、細胞に付着した繊維バンドルを示し、画像3、4および6は、細胞から離脱した個別繊維およびバンドルを示し、画像3〜5は、繊維物質がほとんど無いか全く無い細胞を示す。TasA繊維は、未処理ペリクルの細胞に固定されているように見えた(図3D、画像1と2)。対照的に、D−チロシンで12時間処理した細胞は、TasA繊維ではほとんど装飾されていない細胞の混合物および細胞に固定されていない遊離TasA繊維または繊維凝集体で構成されていた(図3D、画像3〜6)。理論に拘泥する意図はないが、D−チロシンがバイオフィルムを処理する1つの機序は、細胞による繊維の脱落の導入である可能性がある。
【0120】
D−アミノ酸が、TasA繊維の細胞への固定を破壊することにより作用することの遺伝的証拠をD−チロシン耐性変異体の単離から入手した。図4Aは、D−チロシン非含有または含有固形(上段画像)または液体(下段画像)バイオフィルム誘導培地で3日間成長させた細胞を示す。D−チロシン(図4A)またはD−ロイシン(データを示さず)含有固形培地上で成長の間に形成された平坦コロニー上に、しわの寄った乳頭状突起が自然に現れた。重要なことは、全ての4つの活性D−アミノ酸を含むプレート上には、このような乳頭状突起は出現しなかったことである。精製される場合、これらの自然の変異体は、D−チロシンまたはD−ロイシンの存在下、しわの寄ったコロニーやペリクルを生じた。いくつかのこのような変異体が単離されたが、大抵は、yqxMオペロンまたはその近くに変異を含んでいた。2つの変異が詳細に調査され、759塩基対長yqxM遺伝子の3’末端近傍のフレームシフト変異であることがわかった。yqxM2は、yqxM読み取り枠中の塩基対728の位置のG:Cの挿入であり、yqxM6は、塩基対568の位置のA:Tの欠失であった(図4B)。図4Bは、YqxMの簡略アミノ酸配列を示す。下線は、yqxM2およびyqxM6フレームシフト変異により図に示された配列変化を生じ、コドンから特定された残基である。
【0121】
図3Cは、蛍光顕微鏡によるTasA−mCherry細胞会合を示す。tasA−mCherry融合体含有の野性型細胞およびyqxM6(IKG51)変異体細胞を、バイオフィルム誘導培地中で、図中で示したようにD−チロシン(6μM)の存在またはD−チロシン非存在(未処理)下で振盪を加えながら定常期(OD=1.5)まで成長させ、PBSで洗浄し、蛍光顕微鏡で可視化した。蛍光顕微鏡結果は、yqxM2およびyqxM6の存在が、凝集およびD−チロシン処理細胞に対するTasA−mCherryによる細胞装飾を復活させたことを示す(図3C)。以前に行った仕事では、TasAと細胞の結合のためにYqxMが必要であることが示された(Branda et al.、Mol.Microbiol.59:1229(2006))。理論に拘泥する意図はないが、D−アミノ酸のバイオフィルム阻害効果が、YqxM変異体によって打ち負かされるというこの発見は、D−アミノ酸の細胞壁への組込みの効果が、TasA繊維の細胞への固定を傷害することであるという考えを補強するものである。YqxMのC末端近傍ドメインは、細胞壁中のD−チロシンまたはD−ロイシンの存在に呼応してTasA放出の引き金になる可能性がある。
【0122】
実施例2.黄色ブドウ球菌および緑膿菌によるバイオフィルム形成におけるアミノ酸の選別
他の細菌に関し、バイオフィルム形成に対するD−アミノ酸の効果について調査した。病原菌ブドウ球菌は、プラスチック表面上にバイオフィルムを形成する(Otto、Curr.Top.Microbiol.Immunol.322:207(2008))。これは、非結合細胞を洗い流し、結合細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって検出できる。図2Eは、12ウエルポリスチレンプレートを用い、グルコース(0.5%)とNaCl(3%)含有TSB培地中で37℃、24時間成長させた黄色ブドウ球菌(株SCO1)を示す。さらに、アミノ酸添加無し(未処理)、D−チロシン(50μM)またはD−アミノ酸混合物(各15nM)添加の条件をウエルに付加した。非結合細胞を洗い流し、クリスタルバイオレットで染色することによりポリスチレン結合細胞を可視化した。図2Eは、50μM濃度のD−チロシンおよび50nM濃度のD−アミノ酸混合物(D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニン;各50nM)が病原菌によるバイオフィルム形成の阻害に対し極めて効果的であることを示す。
【0123】
さらに、図10は、10μMのD−チロシンが緑膿菌によるバイオフィルム形成の阻害に対し効果的であったことを示し、また、D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンの1μMの等モル混合物が有効であったことを示す。図10は、D−アミノ酸による緑膿菌バイオフィルム形成の阻害を示す。緑膿菌株P014を、12ウエルポリスチレンプレートを用い、グリセリン(0.2%)およびカザアミノ酸(20μg/ml)含有M63培地中で、30℃、48時間成長させた。さらに、アミノ酸添加無し(未処理)、D−チロシンまたはD−アミノ酸等モル混合物添加の条件をウエルに付加した。非結合細胞を洗い流し、クリスタルバイオレットで染色することによりポリスチレン結合細胞を可視化した。ウエルを500μlの1.0%クリスタルバイオレット染料で染色し、2mlの再蒸留水で2回洗浄後、完全に乾燥した。
【0124】
実施例3.ブドウ球菌および緑膿菌バイオフィルム阻害に対し活性なD−アミノ酸混合物
2つの異なる混合物は、ブドウ球菌バイオフィルムの形成の阻害に対し極めて活性である。1つは、D−チロシン、D−メチオニン、D−ロイシンおよびD−トリプトファンの等モル混合物である。枯草菌、ブドウ球菌(図11)、および緑膿菌(図12)の全試験細菌株で、D−trp、D−met、D−tyrおよびD−leuのD−aa混合物は、個別のアミノ酸よりも極めて低い濃度で活性であった。表1の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。表2の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard PA14、培地はM63、細胞播種は1.5x109cfuとした。バイオフィルムをクリスタルバイオレット法を使って可視化した。データを下表1と2に示す:
【表1】
【表2】
【0125】
D−チロシン、D−フェニルアラニン、D−プロリンの等モル混合物は、上記混合物よりもさらに効果的である。また、その混合物は、個々のアミノ酸それぞれよりも混合物として活性が大きい(図13と14)。表3と4の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムをクリスタルバイオレット法を使って可視化した。データを表3と4に示す:
【表3】
【表4】
【0126】
実施例4.黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成の代替定量方法
浮遊細胞をGilsonピペットで完全に除去し、次いで、ペーパータオル越しに液体を排出した。次に、バイオフィルムプレートの画像を黒を背景に注意深く撮影した(図15と16)。表5と6の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムを黒を背景として視覚に訴える方法で可視化した。データを表5と6に示す:
【表5】
【表6】
【0127】
バイオフィルム細胞をPBS中に再懸濁することにより上記表5と6のプレートから除去し、これらのOD600を分光光度計を使って測定した(図17)。表7の実験では、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムを吸収された細菌のOD600を測定することにより可視化した。データを表7示す:
【表7】
【0128】
実施例5.エポキシ表面上のブドウ球菌バイオフィルム形成に対するD−アミノ酸の効果
異なる表面からのD−アミノ酸の徐放方法開発の可能性を試験する目的で、エポキシ表面をD−アミノ酸混合物中で24時間インキュベートした。これを完全に乾燥し、黄色ブドウ球菌を播種した新しいTSB培地中でインキュベートした。表8と9の実験では、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムを黒を背景として視覚に訴える方法で可視化した。図18と19に示すように、D−aa混合物(上述のような)は、浸漬状態の基質上のブドウ球菌バイオフィルム形成を劇的に低減させた。データを表8と9に示す:
【表8】
【表9】
【0129】
さらに、Norland光学接着剤61表面をD−チロシン、D−プロリン、D−フェニルアラニンと共に24時間インキュベートした。これを完全に乾燥し、黄色ブドウ球菌を播種した新しいTSB培地中でインキュベートした。D−aa混合物(L−混合物ではそうではないが)は、ブドウ球菌バイオフィルム形成を劇的に低減した。
【0130】
この実施例では、ポリマー基質は、UVO−114(Epoxy Technology)およびNorland光学接着剤61(Norland Products)UV−硬化型ポリマーを使って、ポリジメチルシロキサン(SYLGARD184、Dow Corning)中で成形した。
【0131】
実施例6.緑膿菌バイオフィルム形成に対するD−アミノ酸の効果を観察する別の方法
枯草菌と同様に、緑膿菌は、複合体構造を特定の培地に形成する。これらの複合体構造には、細胞外マトリックスの適切な形成と構築が必要である。D−チロシン(500μM)またはD−トリプトファン(500μM)の追加により、特定培地の緑膿菌バイオフィルム形成が阻害され(図20)、一方、L−チロシン(500μM)およびL−トリプトファンの追加では、そうならなかった。同様の結果が枯草菌でも得られた。これらの実験では、生物体/株はP.a.Harvard PA14、培地はM63、細胞播種は1.5x109cfuとした。
【0132】
D−アミノ酸のある場合と無い場合について、Syto−9染色を使って6ウエルプレート上でバイオフィルム形成を観察する別の方法は、以下の通りである:緑膿菌バイオフィルムをPBSで2回洗浄した後、PBS中の5%グルタルアルデヒドで少なくとも1時固定した。次に、固定バイオフィルムを、PBSで再度1回洗浄し、PBS中の0.1%v/vトリトンX−100(PBST)中に15分間浸漬した。溶液を冷PBST中の0.1nM SYTOX green(Invitrogen)と入れ替え、暗所で少なくとも15分間緩やかに揺らした。バイオフィルムの蛍光像をXeランプおよびK3ライカフィルターキューブを使ってライカDMRX複式顕微鏡で取り込んだ。図21に示すように、D−チロシンの存在下で、バイオフィルムプレートの底に付着した細胞の数が激減した。単一細胞付着量をimageJを使って定量化した。D−aaに浸漬したエポキシ表面に付着した細胞の量の減少は、L−aa対照に比較して相当多かった。
【表10】
【0133】
実施例7.グラム陰性病原菌に与えるD−アミノ酸の効果の評価
広範囲の抗バイオフィルム活性の可能性を評価するために、効果のあるD−チロシン、D−フェニルアラニン、およびD−プロリンの等モルカルテットをグラム陰性病原菌プロテウス・ミラビリスに対して試験した。図22に示すように、D−aa混合物はプロテウス・ミラビリスに対して活性であった。表11のバイオフィルムは、クリスタルバイオレット法により可視化した。データを表11に示す:
【表11】
【0134】
実施例8:グラム陽性の病原菌に対するD−アミノ酸の効果の評価
広範囲の抗バイオフィルム活性の可能性を評価するために、効果のあるD−チロシン、D−フェニルアラニン、およびD−プロリンの等モルカルテットをグラム陽性の病原菌ストレプトコッカス・ミュータンスに対して試験した。図23に示すように、D−aa混合物は、ストレプトコッカス・ミュータンスに対し活性であった。表12のバイオフィルムをクリスタルバイオレット法により可視化した。データを表12に示す:
【表12】
【0135】
実施例9:D−チロシン含有コーティング
樹脂固形分の重量ベースで、0.5%のD−チロシンを市販ポリエステルポリオールおよび市販イソシアヌラートベースの2成分ポリエステルウレタンコーティング中に組み込む。コーティング系は、全体樹脂固形分ベースで0.015%のジブチルスズジラウラートにより触媒された。
【0136】
コーティング製剤をへら引きにより透明ガラススライド約4”x6”上に塗布して約2ミル(0.002”)のフィルム厚さにする。
【0137】
これらのフィルムを120°F(49℃)のオーブン中で硬化する。
【0138】
実施例10:D−アミノ酸混合物含有ポリマー
液体シリコーンゴムシートを米国特許第5、973、030号に記載のようにして調製する。製剤中に、D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のDアミノ酸混合物をさらに0.01〜1重量パーセント添加する。
【0139】
実施例11:D−アミノ酸混合物含有水ベース工業用コーティング
D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のDアミノ酸混合物を1重量パーセント含む水ベース透明アクリル産業コーティング製剤を2ミル厚さでガラススライドにコートする。
【0140】
実施例12:D−アミノ酸混合物含有溶媒ベース工業用コーティング
D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のDアミノ酸混合物を1重量パーセント含む溶媒べースポリウレタンコーティングを調製する。このコーティングを2ミル厚さでガラススライドに塗布する。
【0141】
実施例13:D−アミノ酸混合物含有UV硬化型水ベース工業用コーティング
透明UV硬化型水性産業コーティングを高速スターラーで各成分(下表参照)の混合により配合した。
【表13】
【0142】
調合製剤に、D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物を添加し、高せん断速度(2000rpm)下、室温で30分間攪拌する。比較の目的のため、D−アミノ酸不含の対照製剤を同じ方法で調製する。
【0143】
コーティングを50μmスリットコーターで白塗装アルミニウムパネルに塗布し、60℃で10分間乾燥した後、2つの中圧水銀ランプ(2x80W/cm)を用いて5m/minで硬化する。
【0144】
実施例14:D−アミノ酸混合物含有溶媒ベース工業用コーティング
2液型溶媒使用ポリウレタンコーティングを下記の手順で調製する:
【0145】
D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物を、ミルベース配合として結合剤および溶媒に添加し、高せん断速度で10分間、5μm未満の粒径になるまで攪拌する。
【0146】
ミルベース配合
【表14】
【0147】
コーティング製剤は、成分Aの材料を混合し、最終段階で塗布の前に成分Bを添加して調製する(下表参照)。全体製剤中のD−アミノ酸混合物の含量は、0.1重量.%である。
【表15】
【0148】
それぞれのコーティング製剤を白塗装アルミニウムパネル上にスプレーし(乾燥被覆厚さ:40μm)、80℃で30分乾燥する。
【0149】
実施例15:油中水型(W/O)代表的配合
以下のD−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物0.1wt/wt%含有W/O乳剤を調製する。
W/O乳剤:
部分A
流動パラフィン 7.5部
イソヘキサデカン 6.0
PEG−7水素化ヒマシ油 4.1
イソプロピルパルミタート 2.0
Cera microcristallina 0.5
ラノリンアルコール 0.6
部分B
水 全体配合で100部に希釈
硫酸マグネシウム 1.0
グリシン 3.20
部分C
D−アミノ酸混合物 0.5%wt/wt水溶液の20部
【0150】
実施例16:水中油型(O/W)代表的配合
以下のD−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物0.1wt/wt%含有O/W乳剤を調製する。
部分A
ステアレス−2 2.2部
ステアレス−21 1.0
PEG−15 ステアリルエーテル 6.0
ジカプリリルエーテル 6.0
部分B
水 全体配合で100部に希釈
ナトリウムポリアクリラート 0.2
部分C
D−アミノ酸混合物 0.5%wt/wt水溶液の20部
【0151】
実施例17:黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成のインビボ阻害
Anguita−Alonso et al.、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、51:2594(2007)に記載のように、D−アミノ酸または2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせのインビボ試験を行う。
【0152】
実施例18:黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成の別のインビボ阻害
Beenken et al.、J.Bacteriology、186:4665(2004)に記載のように、D−アミノ酸または2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせのインビボ試験を行う。
【0153】
実施例19:D−Tyr、D−Leu、D−TypおよびD−Metの安定水性混合物の調製
アミノ酸D−MetおよびD−Leuを、室温で5mg/mLの濃度で脱イオン水に別々に溶解する。通常、各アミノ酸に対し、10mLの溶液が調製される。D−トリプトファンは、脱イオン水に5mg/mLの濃度で溶解するが、40〜50℃、5〜10分の少しの加熱が必要である。D−チロシンは、5mg/mLの濃度で0.05M HClに溶解するが、40〜50℃、5〜10分の加熱が必要である。加熱超音波処理浴を使って、アミノ酸の溶解を促進することができる。全ての溶液は組み合わされ、室温で細菌濾過を行って約40mLの保存液が得られる。
【0154】
実施例20:D−Tyr、D−Pro、およびD−Pheの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0155】
実施例21:D−Tyr、D−Asp、およびD−Gluの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0156】
実施例22:D−Tyr、D−Arg、D−His、およびD−Lysの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0157】
実施例23:D−Tyr、D−Ile、D−Val、およびD−Asnの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0158】
実施例24:D−Tyr、D−Cys、D−Ser、D−Thr、およびD−Glnの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0159】
等価物
本発明をその詳細説明と関連付けて説明してきたが、前述の記載は説明の目的のためのものであって本発明の範囲を制限する意図はなく、これは添付の請求項の範囲によって定められることは理解されるべきである。他の態様、優位性、および変更は以下の特許請求の範囲に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌によるバイオフィルム形成を処理(又は処置)、低減、または阻害する方法であって、
対象物品を有効量のD−アミノ酸を含む組成物と接触させるステップであって、前記組成物が、基本的に、対応するL−アミノ酸を含まないステップと、それにより、バイオフィルムの形成を処理、低減、または阻害するステップを含み、
ここで、D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される方法。
【請求項2】
細菌によるバイオフィルム形成を処理(又は処置)、低減、または阻害する方法であって、
対象物品を有効量のD−アミノ酸の組み合わせを含む組成物と接触させるステップと、それにより、バイオフィルムの形成を処理、低減、または阻害するステップを含む方法。
【請求項3】
D−アミノ酸の組み合わせが、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象物品が、産業機器、給排水設備、水域、家庭にある表面、織物および紙からなる群より選択される1つまたは複数の物品である請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
対象物品が、関与する水凝集物の収集、水再循環、下水輸送、製紙パルプ化および製造、ならびに水処理および輸送に関与する1つまたは複数の構成部材である請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
対象物品が、排水管、浴槽、台所用電気器具、調理台、シャワーカーテン、グラウト、洗面所、工業用の食品もしくは飲料生産設備、フロア、ボート、埠頭、石油掘削用プラットホーム、取水口、濾過装置、送水管、冷却系、または発電所である請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
対象物品が、金属、合金、合成高分子、天然ポリマー、セラミック、木材、ガラス、革、紙、織物、非金属無機物、複合材料およびこれらの組み合わせからなる群より選択される材料から作られる請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
接触させるステップが、対象物品にコーティングを適用することを含み、前記コーティングが有効量のD−アミノ酸を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
コーティングが、結合剤をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
コーティングが、コーティング組成物の表面への毛管作用、吹付け、ディッピング、スピンコーティング、積層、塗布、スクリーン印刷、押し出しまたはドローダウンにより達成される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
接触させるステップが、D−アミノ酸を前駆物質中に導入し、前駆物質を対象物品に対し処理してD−アミノ酸を含浸させることを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
接触させるステップが、D−アミノ酸を液体組成物中に導入することを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
組成物が、D−チロシンを含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
組成物が、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
組成物が、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
組成物が、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン.utamic酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項17】
組成物が、D−チロシン、D−プロリンおよびD−フェニルアラニンを含む請求項13に記載の方法。
【請求項18】
組成物が、D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファンおよびD−メチオニン含む請求項13に記載の方法。
【請求項19】
表面を殺生物剤と接触させることをさらに含む請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
組成物が1%未満のL−アミノ酸を含む請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
組成物が、基本的にデタージェント(detergent)を含まない請求項1〜120のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
組成物が、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン、キシリトール、トリクロサン、または二酸化塩素を含む請求項19に記載の方法。
【請求項23】
バイオフィルム形成に耐性を示すコートされた対象物品であって、
少なくとも1つの露出表面上にコーティングを含む対象物品を含み、コーティングが、有効量のD−アミノ酸を含み、基本的に、対応するL−アミノ酸を含まず、それにより、バイオフィルム形成を処理(又は処置)、低減、または阻害し、
D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される対象物品。
【請求項24】
バイオフィルム形成に耐性を示すコートされた対象物品であって、
少なくとも1つの露出表面上にコーティングを含む対象物品を含み、コーティングが、有効量のD−アミノ酸の組み合わせを含み、それにより、バイオフィルム形成を処理、低減、または阻害する対象物品。
【請求項25】
D−アミノ酸の組み合わせが、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである請求項24に記載のコートされた対象物品。
【請求項26】
対象物品が、産業機器、給排水設備、水域、家庭にある表面、織物および紙からなる群より選択される1つまたは複数の物品である請求項23、24または25のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項27】
対象物品が、水凝集物の収集、水再循環、下水輸送、製紙パルプ化および製造、ならびに水処理および輸送に関与する1つまたは複数の構成部材である請求項23、24または25のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項28】
対象物品が、排水管、浴槽、台所用電気器具、調理台、シャワーカーテン、グラウト、洗面所、工業用の食品または飲料生産設備、フロア、ボート、埠頭、石油掘削用プラットホーム、取水口、濾過装置、送水管、冷却系、または発電所である請求項23、24または25のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項29】
対象物品が、金属、金属合金、合成高分子、天然ポリマー、セラミック、木材、ガラス、革、紙、織物、非金属無機物、複合材料およびこれらの組み合わせからなる群より選択される材料から作られる請求項23、24または25のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項30】
コーティングが結合剤をさらに含む請求項23〜29のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項31】
コーティングが、ポリマーをさらに含み、D−アミノ酸が、ポリマー中に分散されている請求項23〜30のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項32】
D−アミノ酸コーティングが、徐放製剤として配合されている請求項23〜31のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項33】
組成物がD−チロシンを含む請求項23〜32のいずれか1項に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項34】
組成物が、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む請求項34に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項35】
組成物が、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む請求項34に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項36】
組成物が、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む請求項34に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項37】
組成物が、D−チロシン、D−プロリンおよびD−フェニルアラニンを含む請求項34に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項38】
組成物が、D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファンおよびD−メチオニンを含む請求項34に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項39】
さらに殺生物剤を含む請求項23〜38のいずれかに1項に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項40】
殺生物剤が、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン、キシリトール、トリクロサン、または二酸化塩素を含む請求項39に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項41】
組成物が、基本的に、デタージェントを含まない請求項23〜40のいずれか1項に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項42】
バイオフィルム形成に耐性を示す組成物であって、
液体基剤;および
基剤中に分散された有効量のD−アミノ酸を含み、それにより、バイオフィルム形成を処理、低減、または阻害し、
組成物が、基本的に、対応するL−アミノ酸を含まず、さらに
D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される組成物。
【請求項43】
バイオフィルム形成に耐性を示す組成物であって、
液体基剤;および
基剤中に分散された有効量のD−アミノ酸の組み合わせを含み、それにより、バイオフィルム形成を処理、低減、または阻害し、
D−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである組成物。
【請求項44】
液体基剤が、液体、ゲル、ペーストから選択される請求項42または43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
組成物が、水、洗浄用配合物、消毒用配合物、塗布およびコーティング用配合物からなる群より選択される請求項42または43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、およびD−トリプトファンからなる群より選択され、少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される異なるD−アミノ酸である2つ以上のD−アミノ酸;ならびに
高分子結合剤を含む、コーティング組成物。
【請求項47】
有効量のD−アミノ酸を含む少なくとも1つの成分であって、少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、およびD−トリプトファンからなる群より選択される成分、および、少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される異なるD−アミノ酸を含み、この場合の組成物が、基本的に対応するL−アミノ酸と前記成分中に組み込まれた前記D−アミノ酸を含まない、対象物品。
【請求項1】
細菌によるバイオフィルム形成を処理(又は処置)、低減、または阻害する方法であって、
対象物品を有効量のD−アミノ酸を含む組成物と接触させるステップであって、前記組成物が、基本的に、対応するL−アミノ酸を含まないステップと、それにより、バイオフィルムの形成を処理、低減、または阻害するステップを含み、
ここで、D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される方法。
【請求項2】
細菌によるバイオフィルム形成を処理(又は処置)、低減、または阻害する方法であって、
対象物品を有効量のD−アミノ酸の組み合わせを含む組成物と接触させるステップと、それにより、バイオフィルムの形成を処理、低減、または阻害するステップを含む方法。
【請求項3】
D−アミノ酸の組み合わせが、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象物品が、産業機器、給排水設備、水域、家庭にある表面、織物および紙からなる群より選択される1つまたは複数の物品である請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
対象物品が、関与する水凝集物の収集、水再循環、下水輸送、製紙パルプ化および製造、ならびに水処理および輸送に関与する1つまたは複数の構成部材である請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
対象物品が、排水管、浴槽、台所用電気器具、調理台、シャワーカーテン、グラウト、洗面所、工業用の食品もしくは飲料生産設備、フロア、ボート、埠頭、石油掘削用プラットホーム、取水口、濾過装置、送水管、冷却系、または発電所である請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
対象物品が、金属、合金、合成高分子、天然ポリマー、セラミック、木材、ガラス、革、紙、織物、非金属無機物、複合材料およびこれらの組み合わせからなる群より選択される材料から作られる請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
接触させるステップが、対象物品にコーティングを適用することを含み、前記コーティングが有効量のD−アミノ酸を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
コーティングが、結合剤をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
コーティングが、コーティング組成物の表面への毛管作用、吹付け、ディッピング、スピンコーティング、積層、塗布、スクリーン印刷、押し出しまたはドローダウンにより達成される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
接触させるステップが、D−アミノ酸を前駆物質中に導入し、前駆物質を対象物品に対し処理してD−アミノ酸を含浸させることを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
接触させるステップが、D−アミノ酸を液体組成物中に導入することを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
組成物が、D−チロシンを含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
組成物が、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
組成物が、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
組成物が、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン.utamic酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項17】
組成物が、D−チロシン、D−プロリンおよびD−フェニルアラニンを含む請求項13に記載の方法。
【請求項18】
組成物が、D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファンおよびD−メチオニン含む請求項13に記載の方法。
【請求項19】
表面を殺生物剤と接触させることをさらに含む請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
組成物が1%未満のL−アミノ酸を含む請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
組成物が、基本的にデタージェント(detergent)を含まない請求項1〜120のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
組成物が、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン、キシリトール、トリクロサン、または二酸化塩素を含む請求項19に記載の方法。
【請求項23】
バイオフィルム形成に耐性を示すコートされた対象物品であって、
少なくとも1つの露出表面上にコーティングを含む対象物品を含み、コーティングが、有効量のD−アミノ酸を含み、基本的に、対応するL−アミノ酸を含まず、それにより、バイオフィルム形成を処理(又は処置)、低減、または阻害し、
D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される対象物品。
【請求項24】
バイオフィルム形成に耐性を示すコートされた対象物品であって、
少なくとも1つの露出表面上にコーティングを含む対象物品を含み、コーティングが、有効量のD−アミノ酸の組み合わせを含み、それにより、バイオフィルム形成を処理、低減、または阻害する対象物品。
【請求項25】
D−アミノ酸の組み合わせが、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである請求項24に記載のコートされた対象物品。
【請求項26】
対象物品が、産業機器、給排水設備、水域、家庭にある表面、織物および紙からなる群より選択される1つまたは複数の物品である請求項23、24または25のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項27】
対象物品が、水凝集物の収集、水再循環、下水輸送、製紙パルプ化および製造、ならびに水処理および輸送に関与する1つまたは複数の構成部材である請求項23、24または25のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項28】
対象物品が、排水管、浴槽、台所用電気器具、調理台、シャワーカーテン、グラウト、洗面所、工業用の食品または飲料生産設備、フロア、ボート、埠頭、石油掘削用プラットホーム、取水口、濾過装置、送水管、冷却系、または発電所である請求項23、24または25のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項29】
対象物品が、金属、金属合金、合成高分子、天然ポリマー、セラミック、木材、ガラス、革、紙、織物、非金属無機物、複合材料およびこれらの組み合わせからなる群より選択される材料から作られる請求項23、24または25のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項30】
コーティングが結合剤をさらに含む請求項23〜29のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項31】
コーティングが、ポリマーをさらに含み、D−アミノ酸が、ポリマー中に分散されている請求項23〜30のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項32】
D−アミノ酸コーティングが、徐放製剤として配合されている請求項23〜31のいずれか1項に記載のコートされた対象物品。
【請求項33】
組成物がD−チロシンを含む請求項23〜32のいずれか1項に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項34】
組成物が、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む請求項34に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項35】
組成物が、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む請求項34に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項36】
組成物が、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む請求項34に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項37】
組成物が、D−チロシン、D−プロリンおよびD−フェニルアラニンを含む請求項34に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項38】
組成物が、D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファンおよびD−メチオニンを含む請求項34に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項39】
さらに殺生物剤を含む請求項23〜38のいずれかに1項に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項40】
殺生物剤が、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン、キシリトール、トリクロサン、または二酸化塩素を含む請求項39に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項41】
組成物が、基本的に、デタージェントを含まない請求項23〜40のいずれか1項に記載のコートされた対象物品または組成物。
【請求項42】
バイオフィルム形成に耐性を示す組成物であって、
液体基剤;および
基剤中に分散された有効量のD−アミノ酸を含み、それにより、バイオフィルム形成を処理、低減、または阻害し、
組成物が、基本的に、対応するL−アミノ酸を含まず、さらに
D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される組成物。
【請求項43】
バイオフィルム形成に耐性を示す組成物であって、
液体基剤;および
基剤中に分散された有効量のD−アミノ酸の組み合わせを含み、それにより、バイオフィルム形成を処理、低減、または阻害し、
D−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである組成物。
【請求項44】
液体基剤が、液体、ゲル、ペーストから選択される請求項42または43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
組成物が、水、洗浄用配合物、消毒用配合物、塗布およびコーティング用配合物からなる群より選択される請求項42または43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、およびD−トリプトファンからなる群より選択され、少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される異なるD−アミノ酸である2つ以上のD−アミノ酸;ならびに
高分子結合剤を含む、コーティング組成物。
【請求項47】
有効量のD−アミノ酸を含む少なくとも1つの成分であって、少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、およびD−トリプトファンからなる群より選択される成分、および、少なくとも1つのD−アミノ酸が、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される異なるD−アミノ酸を含み、この場合の組成物が、基本的に対応するL−アミノ酸と前記成分中に組み込まれた前記D−アミノ酸を含まない、対象物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2013−516297(P2013−516297A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548214(P2012−548214)
【出願日】平成23年1月10日(2011.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2011/020706
【国際公開番号】WO2011/109119
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月10日(2011.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2011/020706
【国際公開番号】WO2011/109119
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】
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