説明

バイオマスの処理

バイオマス(例えば、植物バイオマス、動物バイオマス、および都市ごみバイオマス)を処理することにより、エネルギー、燃料、食品、または物質等の有用な中間生成物および製品が生成される。例えば、セルロース系および/またはリグノセルロース系物質等の原料物質を用いて、例えば発酵により、中間生成物または製品を生成するためのシステムが説明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2010年2月17日に出願された、米国仮特許出願整理番号第61/305,281号の優先権を主張するものである。この仮出願の全開示は、参照することにより、本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
セルロース系およびリグノセルロース系物質は、多数の用途において、大量に生成、処理、および使用される。係る物質は、多くの場合において、一度使用されると、廃棄物として廃棄される。すなわち、単なる廃棄物、例えば、汚水、バガス、大鋸屑、およびストーバとみなされるのである。
【0003】
様々なセルロース系およびリグノセルロース系物質、その使用、および用途は、米国特許第7,074,918号、米国特許第6,448,307号、米国特許第6,258,876号、米国特許第6,207,729号、米国特許第5,973,035号、および米国特許第5,952,105号と、2006年3月23日に出願された「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」を発明の名称とする国際出願PCT/US2006/010648号および「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」を発明の名称とする米国特許出願公開第2007/0045456号を含む様々な特許出願に説明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、全般に、炭水化物を含有する物質(例えば、バイオマス物質またはバイオマス由来物質)、係る物質を処理することによりそれらの構造を変化させるための方法、および構造を変化させられた物質から精製された製品に関する。多様な微生物により利用されると、有用な中間生成物または製品、例えばエネルギー、エタノール等の燃料、食品、または物質等が、係る方法の多くにより生成され得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する方法は、機械的処理以外の構造改変処理、例えば、放射線照射、超音波処理、熱分解、酸化、蒸気爆砕、化学処理、およびこれらの組み合わせ等により、バイオマス物質を処理することにより、係る物質の構造を改変し、次いで、構造が改変された物質を機械的に処理することを含む。いくつかの実装において、1つまたは複数のこれらのステップは反復される。例えば、構造改変処理間に機械的処理が実行される状態で、物質に対して構造改変処理、例えば放射線照射、が2回以上実行され得る。いくつかの実装において、バイオマス物質に対して、構造改変の前に、先ず機械的処理、例えば寸法減少、が実行され得る。第1機械的処理、および後続の機械的処理は、同じである(例えば照射後、剪断後にさらに剪断が実施される)か、または異なり(例えば、照射後に、剪断が実施され、続いて研磨が実施される)得る。
【0006】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、構造改変処理が物質の内部結晶構造を脆弱化または部分的に崩壊(例えば微小破壊)させ、後続の機械的処理が、脆弱化された結晶構造を破砕または他の方法でさらに崩壊させると考えられる。この一連の処理を実施することにより、原料の扱いにくさは低減され、その結果、処理済みの原料を製品、例えば燃料へと変換することがより容易となる。省略可能な第1機械的処理ステップは、例えば、原料物質の寸法を減少すること、または開放(opening up)することにより、原料物質を構造改変のために準備するために用いられ得る。
【0007】
本明細書に説明するプロセスを用いて製品を生成するための総エネルギー必要量は、多くの場合、構造改変処理の前に構造改変処理または第1機械的処理のみが実施される同様のプロセスの総エネルギー必要量よりも小さいことが見出されている。例えば、1つまたは複数の機械的処理が構造改変処理に続いて実施される場合、同一の正味効果またはよりよい正味効果を有する構造改変処理が、より低いエネルギーレベルで実施され得る。照射の場合は、いくつかの実施形態において、例えば60Mrad未満の比較的低い線量、例えば、約1Mradから約60Mrad、または約5Mradから約50Mrad、が原料に与えられ得る。このように、本明細書に説明するプロセスは、中間生成物または製品が、処理が困難であり且つ処理にあたりエネルギーを集中的に使用する原料を用いて、比較的低コストで製造されることを可能にする。
【0008】
一方、広範囲の照射が用いられ得る。例えば、照射線量は、約0.1Mradから約500Mrad、約0.5Mradから約200Mrad、約1Mradから約100Mrad、または約5Mradから約60Mradであり得る。
【0009】
1つの態様において、本発明は、照射(例えば、電子ビーム照射)、超音波処理、熱分解、酸化、蒸気爆砕、化学処理、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される構造改変処理が施された、構造改変されたバイオマス原料を、機械的処理することを含む方法を特徴とする。
【0010】
いくつかの実施形態は、1つまたは複数の以下のプロセスを含み得る。機械的処理は、切削、粉砕、圧縮、研磨、剪断、および、細切からなる群から選択されるプロセスを含み得る。粉砕は、例えば、ハンマー粉砕機、ボール粉砕機、コロイド粉砕機、コニカルもしくはコーン粉砕機、ディスク粉砕機、エッジ粉砕機、ウィレー粉砕機、またはグリスト粉砕機を利用することを含み得る。いくつかの実施形態において、構造改変することは、単独で、または本明細書に説明される他の構造改変処理のうちの1つまたは複数と組み合わせて、電子ビームを照射することを含む。機械的処理は、米国特許出願整理番号第12/502,629号に開示されるように、周囲温度で、またはより低い温度で、実施され得る。なお、米国特許出願整理番号第12/502,629号の全開示は、参照することにより本明細書に援用される。この方法は、構造改変ステップおよび機械的処理ステップを、1回または複数回反復することをさらに含み得る。例えば、この方法は、機械的処理の後、追加的な構造改変処理を実施することを含み得る。
【0011】
いくつかの例において、バイオマス原料はセルロース系物質またはリグノセルロース系物質を含む。原料は、例えば、紙、紙製品、木材、木材関連物質、パーティクルボード、草、籾殻、バガス、綿、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザル、マニラ麻、藁、トウモロコシ穂軸、ココナッツヘア、藻類、海草、微生物物質、セルロースアセテート、再生セルロース、その他等の改変セルロース、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせを含み得る。
【0012】
いくつかの方法は、構造改変および機械的処理された原料と、微生物とを混合することをさらに含む。なお、微生物は、原料を利用して、中間生成物または製品、例えば、エネルギー、例えばアルコール等の燃料、食品、または物質を生成する。微生物は、例えば、バクテリアおよび/または酵素であり得る。この方法は、構造改変および機械的処理された原料を糖化することを含み、いくつかの場合においては、糖化された製品を発行することを含み得る。
【0013】
構造改変および機械的処理された原料は、例えば糖化により、製品へと容易に変換され得るという特徴を有する。例えば、いくつかの場合において、構造改変および機械的処理された原料は、少なくとも80%の多孔率を有する。
【0014】
バイオマス原料を、本明細書で用いられる「構造改変」することは、原料の化学結合の配列、結晶構造、または構造を含む原料の分子構造を任意の方法で変化させることを含む。この変化は、例えば、物質の結晶度の回折測定により反映され得ない結晶構造内の微小破壊等により、結晶構造の完全性を変化させることであり得る。物質の構造的完全性における係る変化は、異なるレベルの構造改変処理における製品の歩留まりを測定することにより、間接的に測定可能である。加えて、または代替的に、分子構造における変化は、物質の超分子構造を変化させること、物質を酸化すること、平均分子量を変化させること、平均結晶度を変化させること、表面積を変化させること、重合度を変化させること、多孔率を変化させること、分岐度を変化させること、他の物質上で研磨すること、結晶ドメイン寸法を変化させること、または全ドメイン寸法を変化させることを含み得る。本明細書において「構造改変処理」および機械的処理と称されるものの両方が、バイオマス原料を構造改変する機能を有することに注意するべきである。機械的処理は機械的手段により構造改変を行い、その一方で、構造改変手段は他の種類のエネルギー(例えば、照射、超音波エネルギー、または熱)または化学的手段を用いて構造改変を行う。
【0015】
別段の定義がない限り、本明細書において用いられる専門および科学用語の全部は、本発明が属する当該技術分野の当業者により一般に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に説明するのと同様または等価である方法および物質が、本発明の実施または試験において用いられ得るが、好適な方法および物質は以下で説明される。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参照は、参照されることによりその全体が本明細書に援用される。矛盾が生じる場合は、本明細書が、定義を含んで、管理することとなる。加えて、これらの物質、方法、および例は、単に例示的であり、限定を意図するものではない。
【0016】
本発明に関する他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】バイオマスを製品および副産物へと変換することを示すブロック図である。
【図2】発酵プロセスにおける、バイオマスの処理および処理されたバイオマスの使用を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に説明する方法を用いると、バイオマス(例えば、植物バイオマス、動物バイオマス、および都市ごみバイオマス)を処理することにより、本明細書で説明される等の有用な中間生成物および製品を生成することが可能である。入手が容易ではあるが発酵等のプロセスにより処理することが困難である、セルロース系および/またはリグノセルロース系物質を原料物質として使用し得るシステムおよび方法が以下に説明される。
本明細書に開示される方法は、バイオマス物質に対して、構造改変処理、例えば、照射、超音波処理、熱分解、酸化、蒸気爆砕、化学処理、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される処理を行い、次いで、構造改変された物質を機械的に処理することを含む。いくつかの実装において、1つまたは複数のこれらのステップが反復される。例えば、以下でさらに説明されるように、物質は、機械的処理が照射ステップ間に実施される状態で、2回以上照射され得る。いくつかの実装において、バイオマス物質に対して、構造改変の前に、先ず機械的処理が実行され得る。
バイオマス処理のためのシステム
【0019】
図1は、バイオマス、特に相当量のセルロース系およびリグノセルロース系成分を有するバイオマスを、有用な中間生成物および製品に変換するためのプロセス10を示す。プロセス10は、原料に対して第1機械的処理(12)、例えば、原料110の寸法を減少すること、を行うことを含む。機械的処理された原料は、次いで、その内部構造を変化させるための構造改変処理(14)が、例えば、物質の結晶構造における結合を弱めるか、または微小破壊することにより、行われる。次に、構造改変された物質に対して、さらなる機械的処理(16)が行われる。この機械的処理は、第1機械的処理と同じであるか、または異なり得る。例えば、第1処理が寸法減少(例えば、切削)ステップであり、次いで剪断ステップが実施されてもよい。一方、次いで実行される処理は、研磨または粉砕ステップであってもよい。
【0020】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、構造改変処理が物質の内部結晶構造を、例えば物質の結晶構造を微小破壊することにより、崩壊させると考えられる。構造改変された物質の内部構造は、次いで、後続の機械的処理により、さらに崩壊、例えば、破断、破裂、または破壊、される。
【0021】
次いで、さらなる処理を実行する前に、さらなる構造変化(例えば、扱いにくさの低減)が望まれる場合、物質に対して、さらなる構造改変処理および機械的処理が行われ得る。
【0022】
次いで、処理された物質は、第1処理ステップ18、例えば、糖化および/または発酵、により処理されて、中間生成物および製品(例えば、エネルギー、燃料、食品、および物質)を生成し得る。いくつかの場合においては、第1処理ステップの出力は、直接的に有用であるが、他の場合においては、後処理ステップ(20)により提供される、さらなる処理を必要とする。例えば、アルコールの場合は、後処理は蒸留、および、いくつかの場合においては変性、を含み得る。
【0023】
図2は、 上述のステップを、バイオマスを処理し、次いで、処理されたバイオマスを発酵プロセスにおいて利用することにより、アルコールを生成するために利用する、システム100を示す。システム100は、バイオマス原料に対して第1機械的処理が実行される(上述のステップ12)モジュール102と、機械的処理された原料が例えば照射により構造改変される(上述のステップ14)モジュール104と、構造改変された原料に対してさらなる機械的処理が実行される(上述のステップ16)モジュール106と、を備える。上述のように、モジュール106は、モジュール102と同じ種類であるか、または異なった種類であり得る。いくつかの実装においては、構造改変された原料は、別のモジュール106においてさらに機械的処理されるよりも、むしろ、さらなる機械的処理のためにモジュール102へと戻され得る。
【0024】
所望の原料特性を獲得するに必要な回数だけ反復され得るこれらの処理の後、処理された原料は、発酵システム108へと送達される。混合が発酵の間に実施されてもよい。その場合、混合は、酵素および他の微生物等の、剪断により損傷を受けやすい成分に対する損傷を最小限にするために、比較的穏やか(低剪断)であることが望ましい。いくつかの実施形態において、米国特許出願整理番号第61/218,832号および米国特許出願整理番号第61/179,995号に説明されるように、ジェット混合が用いられる。なお、米国特許出願整理番号第61/218,832号および米国特許出願整理番号第61/179,995号は参照することにより本明細書に援用される。
【0025】
図2を参照すると、発酵は、未精製のエタノール混合物を生成し、この未精製エタノール混合物は保持タンク110へと流れ込む。水または他の溶媒、および他の非エタノール成分は、ストリップ塔112を用いて未精製エタノール混合物から除去され、次いで、エタノールは、蒸留ユニット114、例えば精留塔を用いて蒸留される。蒸留は、真空蒸留によるものであり得る。最終的に、エタノールはモレキュラーシーブ116を用いて乾燥され、および/または必要に応じて変性され、次に、所望の搬送方法に出力される。
【0026】
いくつかの場合において、本明細書に説明するシステムまたはその構成部品は、システムが1つの場所から他の場所へと輸送(例えば、鉄道、トラック、または船舶により)され得るよう、運搬可能であってもよい。本明細書に説明する方法のステップは、1つまたは複数の場所で実行されてもよく、または、いくつかの場合においては、1つまたは複数のステップが運搬中に実行されてもよい。係る可搬性処理は米国特許出願整理番号第12/374,549号および国際公開第2008/011598号に説明され、米国特許出願整理番号第12/374,549号および国際公開第2008/011598号の全開示は、引用することにより本明細書に援用される。
【0027】
本明細書に説明する方法のステップのうちのいずれかは、周囲温度で実行され得る。所望により、冷却および/または加熱が特定のステップの間に用いられ得る。例えば、原料は、脆性を増すために機械的処理の間に冷却され得る。いくつかの実施形態においては、冷却は、第1機械的処理および/または後続の機械的処理の、前に、間に、または後に用いられる。冷却は、12/502,629に説明されるように実行され得る。なお、12/502,629の全開示は引用することにより本明細書に援用される。さらに、発酵システム108における温度は、糖化および/または発酵を高めるために、制御され得る。
【0028】
本明細書に説明する方法の各ステップ並びに用いられる物質について、ここでさらに詳細に説明するであろう。
機械的処理
【0029】
原料の機械的処理は、例えば、切削、粉砕、研磨、圧縮、剪断、または細切を含み得る。
【0030】
第1機械的処理ステップは、いくつかの実装において、原料の寸法を減少させることを含む。いくつかの場合において、束ねられていない原料(例えば、リサイクル紙またはスイッチグラス)は、最初に、剪断および/または細断により準備される。この第1準備ステップにおいて、篩いおよび/または磁石が、例えば、岩石または爪等の、大きすぎるまたは望ましくない物体を供給ストリームから除去するために用いられ得る。
【0031】
最初におよび/または処理中において後に実施され得る、この寸法減少に加えて、機械的処理も、バイオマス物質を「開放(opning up)」、「加圧」、破断、破砕することにより、構造改変処理中において結晶構造の分子鎖切断および/または崩壊を生じ安くすることに対して、有利である。開放された物質も、照射時においてより酸化しやすくなり得る。
【0032】
上述のように、照射後、または他の構造改変処理後において、後続の機械的処理は、構造改変処理により脆弱化または微小破壊された物質の構造内における結合を破断し得る。この物質の分子構造のさらなる破断は、物質の取り扱いにくさを軽減し、例えばばてクリアまたは酵素等の微生物による変換を受けやすくする傾向を有する。
剪断/篩い
【0033】
いくつかの実施形態において、原料は、構造改変の前または後に、例えば回転ナイフカッターを用いて、剪断される。原料は、篩いにかけられてもよい。いくつかの実施形態においては、原料の剪断および原料の篩いがけが並行的に行われ得る。
【0034】
所望により、原料は、第1機械的処理(例えば剪断)の前に、例えばシュレッダーまたは他のカッターを用いて、切断され得る。
いくつかの場合においては、細断または剪断は、「シュレッダー・シェアラ・トレイン(shredder−shearer train)」を用いて遂行される。複数のシュレッダー・シェアラ・トレインは直列に配列され得、例えば、2つのシュレッダー・シェアラ・トレインが、第1のシェアラからの出力が第2のシュレッダーに対する入力として供給されるよう、直列に配列され得る。シュレッダー・シェアラ・トレインを通る複数の経路は、粒子寸法を減少させ、総表面積を増加させる。
他の機械的処理
【0035】
原料を機械的処理する他の方法は、例えば、粉砕または研磨を含む。粉砕は、例えば、ハンマー粉砕機、ボール粉砕機、コロイド粉砕機、コニカルもしくはコーン粉砕機、ディスク粉砕機、エッジ粉砕機、ウィレー粉砕機、またはグリスト粉砕機を用いて行われ得る。研磨は、例えばカット/インパクト型の研磨機を用いて、実行され得る。研磨機の特定例は、石材研磨機、ピン研磨機、コーヒー研磨機、およびバー研磨機を含む。研磨または粉砕は、例えば、ピン粉砕機の場合におけるように、ピンまたは他の要素を往復させることにより、提供され得る。他の機械的処理方法は、機械的な引裂または断裂と、繊維に対して圧力を印加する他の方法と、気流式粉砕とを含む。好適な機械的処理は、以前の処理ステップにより開始された物質の内部構造の崩壊を継続する他の任意の技術をさらに含む。
【0036】
好適なカット/インパクト型研磨機は、A10 Analysis GrinderおよびM10 Universal Grinderの商標名でIKA Worksから市販される研磨機を含む。係る研磨機は、粉砕チャンバ内で高速回転(例えば、30m/sを越える、または50m/sを越える)する金属ビーターおよびブレードを備える。粉砕チャンバは、作動中において、周囲温度であってもよく、または、例えば水またはドライアイスにより冷却されてもよい。
処理状態
【0037】
原料は、乾燥状態、水和状態(例えば、水分含量が10重量パーセント未満)、または湿潤状態(例えば、水分含量が約10重量%から約75重量%)で、機械的処理され得る。いくつかの場合においては、原料は、例えば酸素、窒素、蒸気等のガス(例えば、空気以外のガスのストリームまたは雰囲気)の下で機械的処理され得る。
【0038】
一般的に、原料は、実質的に乾燥状態、例えば、水分含量が10重量%である状態、好適には水分含量が5重量%未満である状態で、機械的処理されることが好適である。なぜなら、乾燥した繊維は脆性がより高く、構造的に崩壊しやすい傾向を有するためである。好適な実施形態においては、実質的に乾燥した、構造改変された原料は、カット/インパクト型研磨機を用いて、研磨される。
【0039】
しかし、いくつかの実施形態においては、原料は液体内に分散され、湿式粉砕され得る。この液体は、好適には、処理された原料がさらに処理、例えば酸化される、液体媒体である。湿式粉砕は一般に高い剪断力を有するプロセスであるため、湿式粉砕は、剪断の前か、または酵素または栄養素等の熱に影響されやすい成分が液体媒体に加えられる前に、行われることが一般に好適である。いくつかの実施形態においては、湿式粉砕装置は、回転子/固定子装置を備える。湿式粉砕は、米国ノースカロライナ州ウィルミントンのIKA Works(www.ikausa.com)から市販されるコロイドおよびコーン粉砕機を含む。
【0040】
所望により、ニグニンが、ニグニンを含む任意の原料から除去され得る。また、原料の分解を助けるため、いくつかの実施形態においては、12/502,629に説明されるように、原料は、照射および/または機械的処理の前に、間に、または後に、冷却され得る。加えて、または代替的に、原料は、熱、化学製品(例えば、鉱酸、塩、または次亜塩素酸ナトリウム等の強力な酸化剤)、および/または酵素を用いて、処理され得る。しかし、多数の実施形態においては、機械的処理と構造改変処理の組み合わせにより、取り扱いにくさが低減されるため、係る追加的な処理は不必要である。
処理済み原料の特徴
【0041】
機械的処理システムは、例えば特定のバルク密度、最大寸法、繊維の長さ対幅比、または表面積率等の特徴を有する供給ストリームを生成するよう、構成され得る。
【0042】
いくつかの実施形態においては、機械的処理されたバイオマス物質のBET表面積は、0.1m2/gを越え、例えば、0.5m2/gより、1.0m2/gより、1.5m2/gより、1.75m2/gより、5.0m2/gより、10m2/gより、25m2/gより、35m2/gより、50m2/gより、60m2/gより、75m2/gより、100m2/gより、150m2/gより、200m2/gより、またはさらには250m2/gより大きい値である。
【0043】
機械的処理された原料の多孔率は、構造改変の前または後において、例えば、20%より、25%より、35%より、50%より、60%より、70%より、例えば80%より、85%より、90%より、92%より、94%より、95%より、97.5%より、99%より、またはさらには99.5%より大きい。
【0044】
物質の多孔率およびBET表面積は、各機械的処理後、および構造改変後、一般に増加する。
【0045】
バイオマス物質が繊維質である場合、いくつかの実装においては、バイオマス物質が複数回機械的処理された後でさえも、機械的処理されたバイオマス物質の繊維は、比較的大きい長さ対直径比(例えば20対1を越える)を有する。加えて、繊維は比較的狭い長さおよび/または長さ対直径比分布を有し得る。
【0046】
本明細書において用いられる平均繊維幅(すなわち直径)は、約5000本の繊維をランダムに選択することにより光学的に判定される平均繊維幅である。平均繊維長さは、修正された長さ加重長さである。BET(Brunauer、Emmet、およびTeller)表面積は多点表面積であり、多孔率は水銀ポロシメトリーにより判定された多孔率である。
【0047】
バイオマス物質が繊維質である場合、機械的処理された物質の繊維の平均長さ対直径比は、例えば、8/1より、10/1より、15/1より、20/1より、25/1より、または50/1より、大きくなり得る。繊維の平均長さは、例えば約0.5mmから2.5mmの範囲、例えば約0.75mmから1.0mmの範囲であり、繊維の平均幅(すなわち直径)は、例えば約5μmから50μmの範囲、例えば約10μmから30μmの範囲である。
【0048】
バイオマス物質が繊維質であるいくつかの実施形態において、機械的処理された物質の繊維の長さの標準偏差は、繊維の平均長さの60未満であり、例えば、平均長さの50%未満、平均長さの40%未満、平均長さの25%未満、平均長さの10%未満、平均長さの5%未満、または平均長さの1%未満でさえある。
高密度化
【0049】
高密度化された物質は、本明細書に説明する方法のうちのいずれかにより処理され得る。低いバルク密度を有する機械的処理された原料は、高いバルク密度を有する製品へと高密度化され得る。例えば、
0.05g/cm3のバルク密度を有する原料物質は、比較的ガス不浸透性の構造、例えばポリエチレン性のバッグまたはポリエチレンとナイロンとが交替するレイヤを有するバッグ内に物質を密閉し、次いで当該構造から封入されたガス、例えば空気を排出することにより高密度化され得る。当該構造から空気を排出した後、物質は、例えば0.3g/cm3を越えるバルク密度、例えば、0.5g/cm3、0.6g/cm3、0.7g/cm3以上、例えば0.85g/cm3のバルク密度を有し得る。高密度化の後、製品は、本明細書に説明する方法のうちのいずれかにより処理され得る。これは、物質を他の位置、例えば、物質が例えば、物質を糖化または発酵するために、溶液に加えられ得る、遠隔の製造プラントに運搬することが望ましい場合に有利である。
本明細書に説明する任意の物質は、例えば運搬または貯蔵のために、高密度化され、次いで、本明細書に説明する1つまたは複数の方法により、さらに処理するために「開放(opened up)」され得る。高密度化については、例えば、米国特許出願整理番号第12/429,045号において説明され、米国特許出願整理番号第12/429,045号の全開示は参照することにより本明細書に援用される。
構造改変処理
【0050】
原料に対して1つまたは複数の構造改変処理が行われ、その結果、例えば、原料の平均分子量を低減すること、原料の結晶構造を変化させること(例えば、回折方法により測定される結晶度を変化させ得るかまたは変化させ得ない構造内の微小破壊により)、および/または原料の表面積および/または多孔率を増加することにより、その構造が改変される。いくつかの実施形態において、構造改変は、原料の分子量を低下させ、および/または原料の酸化レベルを増加させる。
【0051】
原料の構造を改変するプロセスは、照射、超音波処理、酸化、熱分解、化学処理(例えば、酸化処理まはた塩基処理)、蒸気爆砕のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの好適な実装において、構造は、照射を含む方法により改変される。照射が用いられる場合、プロセスは、超音波処理、酸化、熱分解、化学処理、および蒸気爆砕のうちの1つまたは複数をさらに含み得る。
照射処理
【0052】
混合物を照射することは、混合物に対して加速された電子、例えば、2MeV、4MeV、6MeV、またはさらには約8MeVよりも高いエネルギー、例えば約2.0から8.0MeVもしくは約4.0から6.0MeVのエネルギーを有する電子を照射することを含む。いくつかの実施形態において、電子は、例えば光速の75%を超える速度、例えば光速の85、90、95、または99%に加速される。
【0053】
いくつかの事例において、照射は、毎秒約0.25Mradを超える線量率、例えば、毎秒約0.5、0.75、1.0、1.5、2.0Mrad、または毎秒約2.5Mradさえをも超える線量率で行われる。いくつかの実施形態において、照射は、毎時5.0から1500.0キロラドの範囲、例えば毎時10.0から750.0キロラドまたは毎時50.0から350.0キロラドの範囲の線量率で行われる。
【0054】
いくつかの実施形態において、物質が少なくとも0.1Mrad、少なくとも0.25Mrad、例えば少なくとも1.0Mrad、少なくとも2.5Mrad、少なくとも5.0Mrad、少なくとも10.0Mrad、少なくとも60Mrad、または少なくとも100Mradの線量を受けるまで、照射(任意の照射源または照射源の組み合わせを用いて)が行われる。いくつかの実施形態において、物質が、約0.1Mradから約500Mradの範囲、約0.5Mradから約200Mradの範囲、約1Mradから約100Mradの範囲、または約5Mradから約60Mradの範囲の線量を受けるまで、照射が行われる。いくつかの実施形態において、比較的低い照射線量、例えば約60Mrad未満、が適用される。
【0055】
照射は、乾燥状態、湿潤状態、または水等の液体に分散された状態にある任意の試料に適用され得る。例えば、照射は、セルロース系および/またはリグノセルロース系物質に対して行われ得る。ただし、これらの物質においては、セルロース系および/またリグノセルロース系物質の約25重量%未満が、水等の液体で湿潤された表面を有するものである。いくつかの実施形態において、照射は、セルロース系および/またはリグノセルロース系物質に対して行われ得る。ただし、これらの物質においては、セルロース系および/またリグノセルロース系物質のうち、水等の液体で湿潤されたものは実質的にゼロとなっている。
【0056】
いくつかの実施形態において、本明細書に説明する任意の処理は、セルロース系および/またはリグノセルロース系物質が、例えば熱および/または減圧を用いて、必要に応じて乾燥状態に保たれるか、または乾燥された後に、行われ得る。例えば、いくつかの実施形態において、セルロース系および/またはリグノセルロース系物質は、摂氏25度および50%の相対湿度で測定して、約5重量%未満の保有水を有する。
【0057】
照射は、セルロース系および/またはリグノセルロース系物質が、空気、酸素濃厚空気、または酸素そのものに晒されるか、または窒素、アルゴン、またはヘリウム等の不活性ガスにより包囲される間に、適用され得る。最大量の酸素が望まれる場合、空気または酸素等の酸化環境が利用され、照射源からの距離は、オゾンおよび/または窒素酸化物等の反応ガスの形成が最大化されるよう最適化される。
【0058】
照射は、約2.5気圧を超える圧力下で、例えば、5気圧、10気圧、15気圧、20気圧下、または約50気圧さえも超える圧力下で、適用され得る。
【0059】
照射は、ガンマ線、X線等の電離照射、約100nmから約280nmの範囲の波長を有する短波長紫外線照射等の高エネルギー紫外線照射、電子ビーム、低速中性子、またはアルファ粒子等の粒子ビームを利用して行われ得る。いくつかの実施形態において、順にまたは並行的に適用され得るガンマ線および電子ビーム等の照射は、2つ以上の照射源を備える。
【0060】
いくつかの実施形態において、原子軌道から電子を放出する物質に堆積されるエネルギーは、物質を照射するために用いられる。照射は、1)アルファ粒子または陽子等の重荷電粒子、2)例えばベータ崩壊または電子ビーム加速器において生成された電子、または3)例えばガンマ線、X線、または紫外線等の電磁放射により、提供される。1つの手法において、放射性物質により生成される放射は、原料を照射するために用いられ得る。いくつかの実施形態においては、(1)から(3)のうちの任意の順序における任意の組み合わせ、または(1)から(3)の並行的な任意の組み合わせが利用され得る。
【0061】
分子鎖切断が望まれる場合の、および/またはポリマー鎖機能化が望まれる場合の事例において、例えば、陽子、ヘリウム核、アルゴンイオン、シリコンイオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオン、または窒素イオン等の、電子よりも重い粒子が利用され得る。開環分子鎖切断が望まれる場合、正荷電粒子が、開環分子鎖切断を強化するためのルイス酸特性のために利用され得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、照射されたバイオマスは、照射前におけるバイオマスの数量平均分子量(N1)よりも約10%を超えるパーセンテージ(例えば15、20、25、30、35、40、50パーセント、60パーセント、または約75パーセントさえも)だけ低い数量平均分子量(MN2)を有する。
【0063】
いくつかの実施形態においては、最初の数量平均分子量(照射前)は、約200,000から約3,200,000の範囲、例えば約250,000から約1,000,000の範囲または約250,000から約700,000の範囲であり、照射後の数量平均分子量は、約50,000から約200,000の範囲、例えば約60,000から約150,000の範囲または約70,000から約125,000の範囲、である。しかし、いくつかの実施形態においては、例えば、大規模な照射の後、数量平均分子量は、約10,000未満になり得、または約5,000未満にさえなり得る。
【0064】
いくつかの事例において、照射されたバイオマスは、照射前のバイオマスのセルロースの結晶度()よりも低い結晶度()を有するセルロースを有する。例えば、()は、()よりも約10パーセントを超えるパーセント(例えば、15、20、25、30、35、40、または約50パーセントさえも)だけ低くなり得る。
【0065】
いくつかの実施形態においては、最初の結晶化度(照射前)は、約40から約87.5パーセントの範囲、例えば約50から約75パーセントの範囲または約60から約70パーセントの範囲であり、照射後の結晶化度は、約10から約50パーセントの範囲、例えば約15から約45パーセントの範囲または約20から約40パーセントの範囲、である。しかし、いくつかの実施形態においては、例えば、大規模な照射の後、結晶化度は、5パーセント未満になり得る。いくつかの実施形態において、照射後の物質は実質的に非晶質となる。
【0066】
いくつかの実施形態において、照射されたバイオマスは、照射前のバイオマスの酸化レベル()を超える酸化レベル()を有する。物質の酸化レベルが高いと、物質の分散性、膨潤性、および/または可溶性が支援され、その結果、化学的、酵素的、または生物的攻撃に対する感受性が高められ得る。照射されたバイオマス物質は、より多くのヒドロキシ基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、またはカルボン酸基も有し得、これらは親水性を増加する。
電離照射
【0067】
照射の各形態は、放射エネルギーにより判定される特定の相互作用により、バイオマスを電離する。重荷電粒子は、クーロン散乱により物質を電離し、さらに、これらの相互作用により、物質をさらに電離し得る高エネルギー電子が生成される。アルファ粒子はヘリウム原子の原子核と同一であり、例えば、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、いくつかのアクチニド、例えばアクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、キュリウム、カリホルニウム、アメリシウム、およびプルトニウムの同位体等の様々な放射性の原子核のアルファ崩壊により生成される。
【0068】
粒子が利用されるとき、粒子は、中性(帯電しない)であるか、正電荷を帯びるか、または負電荷を帯び得る。帯電時、帯電した粒子は、単一の正電荷もしくは負電荷、または複数の電荷、例えば2つ、3つ、もしくはさらには4つ以上の電荷を有し得る。分子鎖切断が望まれる事例において、正電荷を帯びた粒子が、1つには係る粒子は酸性であるために、望ましい。粒子が利用されるとき、これらの粒子は、電子の静止質量以上の質量、例えば、電子の静止質量の500倍、1000倍、1500倍、または2000倍以上、例えば、10,000もしくはさらには100,000倍、を有し得る。例えば、粒子は、約1原子単位から約150原子単位の範囲、例えば、約1原子単位から約50原子単位の範囲または約1原子単位から約25原子単位、例えば1原子単位、2原子単位、3原子単位、4原子単位、5原子単位、10原子単位、12原子単位、または15原子単位、の質量を有し得る。粒子を加速するために用いられる加速器は、静電直流(electrostatic DC)、電気力学的直流(electrodynamic DC)、RF線形(RF linear)、磁気誘導線形(magnetic induction linear)、または連続波(連続波)であり得る。例えば、Rhodotron system等のサイクロトロン型加速器はベルギー国のIBA社から市販され、一方、Dynamitron(登録商標)等の直流型加速器は、現在のIBA IndustrialであるRDIから市販される。典型的なイオンおよびイオン加速器については、Introductory Nuclear Physics, Kenneth S. Krane, John Wiley & Sons, Inc. (1988), Krsto Prelec, FIZIKA B 6 (1997) 4, 177−206, Chu, William T., “Overview of Light−Ion Beam Therapy”, Columbus−Ohio, ICRU−IAEA Meeting, 18−20 March 2006, Iwata, Y. ら,“Alternating−Phase−Focused IH−DTL for Heavy−Ion Medical Accelerators”, Proceedings of EPAC 2006, Edinburgh, Scotland, and Leitner, C.M.ら, “Status of the Superconducting ECR Ion Source Venus”, Proceedings of EPAC 2000, Vienna, Austriaにおいて論じられている。
【0069】
電子は、クーロン散乱と、電子の速度の変化により生成される制動放射とにより相互作用する。電子は、ベータ崩壊する、ヨウ素、セシウム、テクネチウム、およびイリジウムの同位体等の、放射性原子核により生成され得る。代替的に、電子銃は、熱電子放出により、電子源として用いられ得る。
【0070】
電磁放射は、光電吸収、コンプトン散乱、および対生成という3つのプロセスにより相互作用する。主要な互作用は、入射放射のエネルギーと物質の原子番号とにより決定される。セルロース系物質において吸収された放射に寄与する相互作用の合計は、質量吸収係数により表現される(国際出願PCT/US2007/022719号における「Ionization Radiation」を参照)。
【0071】
電磁放射は、波長に応じて、ガンマ線、X線、紫外線、赤外線、マイクロ波、または電波として下位区分され得る。
【0072】
ガンマ放射は、試料における様々な物質への進入深さが大きいという利点を有する。
ガンマ線源は、コバルト、カルシウム、テクネチウム、クロム、ガリウム、インジウム、ヨウ素、鉄、クリプトン、サマリウム、セレン、ナトリウム、タリウム、およびキセノンの同位体等の放射性原子核を含む。
【0073】
X線源は、タングステンまたはモリブデンまたは合金等の金属ターゲットとの電子ビーム衝突、または、Lynceanにより商業的に製造される等の小型光源を含む。
【0074】
紫外線放射源は、重水素またはカドミウム・ランプを含む。
【0075】
赤外線放射源は、サファイア、亜鉛、またはセレン化物窓セラミックランプを含む。
【0076】
マイクロ波源は、クライストロン、Slevin型RF源、または水素、酸素、もしくは窒素ガスを使用する原子ビーム源を含む。
電子ビーム
【0077】
いくつかの実施形態において、電子ビームが照射源として用いられる。電子ビームは、線量率が高い(例えば、毎秒1Mrad、毎秒5Mrad、または毎秒10Mradさえにもなる)、スループットが高い、汚染が少ない、閉じ込め用機材が小さいという利点を有する。電子は、分子鎖切断を生じさせることに関してもより効率的であり得る。加えて、4〜10MeVのエネルギーを有する電子は、5mmから30mm以上の進入深さ、例えば40mmの進入深さを有する。
【0078】
電子ビームは、例えば静電高電圧発生装置、カスケード型高電圧発生装置、トランス高電圧発生装置(transformer generator)、走査システムを有する低エネルギー加速器、リニアカソードを有する低エネルギー加速器、線形加速器、およびパルス加速器により生成され得る。電離照射源としての電子は、物質の積み重ねが比較的薄い、例えば0.5インチ未満(例えば0.4インチ、0.3インチ、または0.1インチ未満)であるために、有用であり得る。いくつかの実施形態において、電子ビームの各電子のエネルギーは、約0.3MeVから約2.0MeV(百万電子ボルト)の範囲、例えば約0.5MeVから約1.5MeVの範囲または約0.7MeVから約1.25MeVの範囲である。
【0079】
いくつかの実施形態において、バイオマス物質を処理するために用いられる電子は、0.05c以上(例えば、0.10c以上、0.2c以上、0.3c以上、0.4c以上、0.5c以上、0.6c以上、0.7c以上、0.8c以上、0.9c以上、0.99c以上、0.9999c以上)の平均エネルギーを有する。ただしcは光の真空速度に対応する。
【0080】
電子ビーム照射装置は、ベルギー国ルーヴァン・ラ・ヌーヴのIon Beam Applications社または米国カリフォルニア州サンディエゴのTitan社から商業的に入手可能であり得る。
典型的な電子のエネルギーは1MeV、2MeV、4.5MeV、7.5MeV、または10MeVであり得る。典型的な電子ビーム照射装置出力は、1kW、5kW、10kW、20kW、50kW、100kW、250kW、500kW、1000kW、またさらには1500kW以上であり得る。露光時間は出力および線量に依存する一方で、原料スラリーの解重合の有効性は使用された電子エネルギーおよび適用される線量に依存する。典型的な線量は、1kGy、5kGy、10kGy、20kGy、50kGy、100kGy、200kGy、500kGy、1000kGy、1500kGy、または2000kGyの値を取り得る。
【0081】
電子ビーム照射装置出力仕様を考慮する際のトレードオフは、操作コスト、資本コスト、償却費、および装置占有面積を含む。電子ビーム照射の照射線量レベルを考慮する際のトレードオフは、エネルギーコストと、環境、安全、および健康(ESH:environment, safety, and health)上の懸念とである。電子エネルギーを考慮する際のトレードオフはエネルギーコストを含む。なお、ここでは、低電子エネルギーは、特定の原料スラリーの解重合を促進する上で有利である(例えば、Bouchardら,Cellulose (2006) 13: 601−610参照)。
【0082】
より効果的な解重合プロセスを提供するために、電子ビーム照射の二重経路を提供することは有利であり得る。例えば、原料運搬装置は、原料(乾燥形態またはスラリー形態)を、下方におよび最初の運搬方向に対する逆方向に、導き得る。二重経路システムは、より濃密な原料スラリーの処理を可能にし、原料スラリーの濃度からより緊密な解重合を提供し得る。
【0083】
電子ビーム照射装置は、固定ビームまたは走査ビームのいずれかを生成し得る。走査ビームは、大きい走査スウィープ長さおよび高い走査スピードに関して有利である。なぜなら、これは、大きい、固定ビーム幅を効果的に置き換えるためである。さらに、0.5m、1m、または2m以上の利用可能スウィープ幅が利用可能である。
イオン粒子ビーム
【0084】
電子よりも重い粒子は、炭水化物または炭水化物含有物質、例えばリグノセルロース系物質、澱粉質、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせ、および本明細書に説明する他の物質を照射するために利用され得る。例えば、陽子、ヘリウム核、アルゴンイオン、シリコンイオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオン、または窒素イオンが利用され得る。いくつかの実施形態において、電子よりも重い粒子は、より多量の分子鎖切断を誘発し得る。いくつかの事例において、正電荷を帯びた粒子は、その酸性のために、負電荷を帯びた粒子よりも、より大量の分子鎖切断を誘発し得る。
【0085】
より重い粒子ビームは、例えば線形加速器またはサイクロトロンを用いて、生成し得る。いくつかの実施形態において、ビームの各粒子のエネルギーは、約1.0MeV/原子単位から約6,000MeV/原子単位の範囲、例えば約3MeV/原子単位から約4,800MeV/原子単位の範囲または約10MeV/原子単位から約1,000MeV/原子単位の範囲である。
【0086】
イオンビーム処理については、米国特許出願整理番号第12/417,699号において論じられ、米国特許出願整理番号第12/417,699号の全開示は参照することにより本明細書に援用される。
電離照射
【0087】
電磁放射を用いて照射が行われる実施形態においては、電磁放射は、102eVを超える(例えば、10eV、10eV、10eV、10eV、または10eVさえも超える)陽子当たりのエネルギー(電子ボルトにおける)を有し得る。いくつかの実施形態において、電磁放射は、10eVから10eVの範囲(例えば10eVから10eVの範囲)の陽子当たりのエネルギーを有する。電磁放射は、例えば1016hzを超える、1017hzを超える、1018hz、1019hz、1020hz、または1021hzさえも超える周波数を有し得る。いくつかの実施形態において、電磁放射は、1018hzから1022hzの範囲(例えば1019hzから1021hzの範囲)の周波数を有する。
照射処理の組み合わせ
【0088】
いくつかの実施形態においては、2つ以上の照射源、例えば2つ以上の電離照射等、が用いられる。例えば、試料は、電子ビーム、次いでガンマ線放射および約100nmから約280nmの範囲の波長を有する紫外線光により、任意の順序で処理され得る。いくつかの実施形態において、試料は、3つの電離照射源、例えば、電子ビーム、ガンマ線放射、および高エネルギー紫外線光等、を用いて処理され得る。
バイオマスのケンチングおよび制御された官能基化
【0089】
1つまたは複数の電離照射、例えば、フォトニック放射(例えばX線まはたガンマ線)、電子ビーム放射、または正電荷または負電荷を帯びた電子よりも重い粒子(例えば、陽子または炭素イオン)による処理の後、本明細書に説明する炭水化物含有物質と無機物との任意の混合物は電離される。すなわち、これらの混合物は電子スピン共鳴分光計を用いて検出されるレベルのイオン基を有する。イオン基検出の現時点における限界は、室温において約1014スピンである。電離の後、任意の電離されたバイオマスは、ケンチングされることにより、電離されたバイオマスにおけるイオン基レベルは、イオン基が電子スピン共鳴分光計を用いてもはや検出不可能となるよう、低下され得る。例えば、イオン基は、バイオマスに十分な圧力を印加することにより、および/または電離されたバイオマスと接触しイオン基と反応(ケンチング)する流体(例えばガスまたは液体)を利用することにより、ケンチングされ得る。イオン基のケンチングを少なくとも支援するためにガスまたは流体を使用することは、カルボン酸基、エノール基、アルデヒド基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、またはクロロフルオロアルキル基等の所望する量および種類の官能基により、電離されたバイオマスを官能基化することをオペレータが制御することを可能にする。いくつかの事例において、係るケンチングは、電離されたバイオマス物質の安定性を改善し得る。例えば、ケンチングは、酸化に対するバイオマスの耐性を改善し得る。ケンチングによる官能基化は、本明細書に説明するバイオマスの可溶性も改善し、その熱安定性も改善し(熱安定性の改善は合成物の製造において重要であり得る)、様々な微生物による物質活用も改善し得る。例えば、ケンチングによりバイオマス物質に与えられた官能基は、微生物が付着することにより、例えば、様々な微生物によるセルロース加水分解を高めるための受容体部位として機能し得る。
【0090】
電離されたバイオマスが大気中に残る場合、係るバイオマスは、カルボン酸基が大気酸素との反応により生成される程度にまで、酸化されるであろう。いくつかの物質を有するいくつかの事例において、酸化は、炭水化物含有バイオマスの分子量におけるさらなる分解を支援し得、カルボン酸基等の酸化基は、いくつかの事例において可溶性および微生物活用に対して有用であるため、係る酸化は望ましい。しかし、イオン基は照射後しばらくの間(例えば、1日、5日、30日、3ヶ月、6ヶ月、またさらには1年以上)「生きる」ため、物質の特性は長時間にわたって変化し続け得る。このことは、いくつかの事例においては望ましくない場合もある。
【0091】
照射された試料におけるイオン基の電子スピン共鳴分光法による検出および係る試料におけるイオン基の寿命については、Bartolottaら, Physics in Medicine and Biology, 46 (2001), 461−471、およびBartolottaら, Radiation Protection Dosimetry, Vol. 84, Nos. 1−4, pp. 293−296 (1999)において論じられている。
超音波処理、熱分解、酸化
【0092】
1つまたは複数の超音波処理、熱分解、および/または酸化処理シーケンスが、機械的処理された原料を構造改変するために用いられ得る。これらの処理のうちのいずれかは、単独で、または互いとの組み合わせで、および/または照射とともに、用いられ得る。これらの処理は、米国特許出願整理番号第12/429,045号において詳細に説明され、米国特許出願整理番号第12/429,045号の全開示は参照することにより本明細書に援用される。
他の処理
【0093】
蒸気爆砕は、本明細書に説明した処理のうちのいずれも用いず単独で、または本明細書に説明した処理のうちのいずれかとの組み合わせで、用いられ得る。
【0094】
本明細書に説明した任意の処理技術は、通常の、地表における大気圧を超える圧力または係る大気圧より低い圧力で、用いられ得る。例えば、放射、超音波処理、酸化、熱分解、蒸気爆砕、またはこれらの処理のうちのいずれかの組み合わせを利用することにより、炭水化物を含有する物質を提供する任意の処理は、高圧下で行われ得、それにより反応速度が高くなる。例えば、任意の処理または処理の組み合わせは、25MPaを超える圧力(50MPaを、75MPaを、100MPaを、150MPaを、200MPaを、250MPaを、350MPaを、500MPaを、750MPaを、もしくは1,000MPaを超える圧力、またさらには1,500MPaを超える圧力)で行われ得る。
第1処理
糖化
【0095】
処理された原料を容易に発酵され得る形態に変換するために、いくつかの実装においては、最初に原料中のセルロースは、糖化と称される処理において、例えば糖化剤
(例えば、酵素)により、低分子量の炭水化物(例えば、糖質)へと加水分解される。いくつかの実装において、糖化剤は酸(例えば、鉱酸)を含む。酸が用いられる場合、微生物に対して毒性である副産物が生成され得る。その場合、処理は、係る副産物を除去することをさらに含む。除去は、活性炭素(例えば、活性炭)を用いて、または他の好適な技術を用いて、行われ得る。
【0096】
セルロースを含有する物質は、例えば物質と酵素とを溶液内、例えば水溶液内、で混合することにより、酵素を用いて処理される。
【0097】
酵素と、バイオマス(例えばバイオマスのセルロース部分および/またはニグニン部分)を分解するバイオマス破壊生物とは、様々なセルロース分解酵素(セルラーゼ)、リグニナーゼ、または様々な分子バイオマス破壊代謝産物を、含有するかまたは生成する。これらの酵素は、結晶セルロースまたはバイオマスのニグニン部分を相乗効果的に劣化させる機能を有する酵素複合体であり得る。セルロース分解酵素の例としては、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびセロビアーゼ(β−グルコシダーゼ)を含む。セルロース基質は、最初、ランダムな位置においてエンドグルカナーゼにより加水分解され、それによりオリゴマー中間生成物が生成される。次いで、これらの中間生成物が、セロビオヒドロラーゼ等のグルカナーゼを外部分割(exo−splitting)することにより、セルロースポリマーの端部からセロビオースを生成するための基質となる。セロビオースは、グルコースの、水溶性の1、4−結合の二量体である。最終的に、セロビアーゼがセロビオースを開裂して、それによりグルコースが生成される。
発酵
【0098】
微生物は、処理されたバイオマス物質を糖化することにより生成された低分子量糖質を発酵させることにより、いくつかの有用な中間生成物および製品を生成し得る。例えば、発酵または他のバイオプロセスは、アルコール、有機酸、炭化水素、水素、蛋白質、またはこれらの物質のうちのいずれかの組み合わせを生成し得る。
【0099】
酵母およびザイモモナスバクテリアは、例えば、糖化または変換のために用いられ得る。他の微生物は以下の「物質」のセクションにおいて論じられる。酵母に対する最適なpHは約pH4からpH5の範囲であるのに対し、ザイモモナスに対する最適なpHは約pH5からpH6の範囲である。典型的な発酵時間は摂氏26度から摂氏40度の温度範囲において約24時間から96時間の範囲であるのに対し、好熱性微生物はより高い温度を好む。
【0100】
現在国際公開第WO2008/011598号として公開されるようになった米国仮特許出願第60/832,735号に説明される可動性の発酵槽が利用可能である。同様に、糖化装置も可動性であり得る。さらに、糖化および/または発酵は、移動中において、部分的に、または完全に、行われ得る。
後処理
蒸留
【0101】
発酵後、結果として生成された液体を例えば「ビールカラム」を用いて蒸留することにより、エタノールまたは他のアルコールが大部分の水および残渣固体から分離され得る。ビールカラムから排出される蒸気は例えば35重量%のエタノールであり、精留カラムへと供給される。精留カラムから出るほぼ共沸性(92.5%)のエタノールおよび水は、気相のモレキュラーシーブを用いて、純粋(99.5%)エタノールへと精製され得る。ビールカラム底部は、三重効用蒸発器の第1効用へと送られ得る。精留カラム環流凝縮器は、この第1効用に対して熱を提供し得る。第1効用の後、固定は遠心分離機を用いて分離され、回転乾燥器内で乾燥され得る。遠心分離機流出物の1部分(25%)は発酵へとリサイクルされ、その他は第2のおよび第3の蒸発器効用へと送られる。蒸発器凝縮水の大部分は、相当にクリーンな凝縮水として処理に戻される一方で、わずかな部分は低沸点化合物の蓄積を防ぐために、廃水処理へと分岐され得る。
中間生成物および製品
【0102】
例えば係る第1処理および/または後処理を用いて、処理されたバイオマスは1つまたは複数の製品(例えば、エネルギー、燃料、食品、および物質)へと変換され得る。製品の特定例は、水素、アルコール(例えば、エタノール、n−プロパノール、またはn−ブタノール等の1価アルコールまたは2価アルコール)、糖質、バイオディーゼル、有機酸(例えば、酢酸および/または乳酸)、炭化水素、副産物(例えば、セルロース分解性タンパク質(酵素)または単細胞蛋白質等の蛋白質)、およびこれらのうちのいずれかの組み合わせを含むが、これに限定されない。
他の例は、酢酸または酪酸等のカルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸とカルボン酸の塩との混合物、カルボン酸のエステル(例えば、メチル、エチル、およびn‐プロピルのエステル)、ケトン、アルデヒド、アルファ、ベータ不飽和酸(例えばアクリル酸およびエチレン等のオレフィン)を含む。他のアルコールおよびアルコール誘導体は、プロパノール、プロピレングリコール、1、4-ブタンジオール、1、3-プロパンジオール、こられのアルコールのメチルまたはエチルエステルを含む。他の製品は、メチルアクリレート、メタクリル酸メチル、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、これらの酸のうちのいずれかの塩、酸およびそれぞれの塩のいずれかの混合物を含む。
【0103】
食品および医療製品を含む他の中間生成物および製品は、米国仮特許出願整理番号第12/417,900号に説明され、米国仮特許出願整理番号第12/417,900号の全開示は参照することにより本明細書に援用される。
物質
バイオマス物質
【0104】
バイオマスは、例えばセルロース系物質またはリグノセルロース系物質であり得る。係る物質は、紙、紙製品(例えばポリコート紙およびクラフト紙)、木材、木材関連物質(例えばパーティクルボード)、草、籾殻、バガス、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザル、マニラ麻、藁、トウモロコシ穂軸、ココナッツヘア、およびαセルロース成分を豊富に含む物質(例えば綿)を含む。原料は、非再生品の繊維スクラップ物質(例えば、ボロ切れ等の残余物、使用済み廃棄物)から得られ得る。紙製品が使用される場合、それらは、非再生品物質(例えばスクラップ非再生品物質)であるか、または使用済み廃棄物であり得る。非再生品原料は別として、使用済み廃棄物、工業廃棄物(例えば、廃物)および処理廃棄物(例えば、紙処理から出た流出物)も、繊維源として用いられ得る。バイオマス原料は、人間(例えば、下水)、動物もしくは植物廃棄物からも取得または抽出可能である。追加的なセルロース系およびリグノセルロース系物質は、米国特許第6,448,307号、米国特許第6,258,876号、米国特許第6,207,729号、米国特許第5,973,035号、および米国特許第5,952,105号に説明されている。
【0105】
いくつかの実施形態において、バイオマス物質は、1つまたは複数のβ−1、4−結合を有し且つ約3,000から50,000の範囲の数量平均分子量を有する物質であるかまたは係る物質を含む炭水化物を含む。係る炭水化物は、β(1,4)−グリコシド係合の濃縮から得られた(β−グルコース1)から得られたセルロース(I)であるかまたはこれを含む。この結合は、澱粉および他の炭水化物に存在するα(1,4)−グリコシド結合とは対照的である。
【化1】

【化2】

【0106】
澱粉質は、澱粉そのもの(コーンスターチ、小麦澱粉、ジャガイモ澱粉、または米澱粉)、澱粉の派生物、または澱粉を含む物質(例えば、食用食糧製品まはた農作物)を含む。例えば、澱粉質は、アラカチャ、そば粉、バナナ、オオムギ、キャッサバ、葛、アンデスカタバミ、サゴヤシ澱粉、ソルガム、通常の家庭用ジャガイモ、サツマイモ、タロイモ、ヤムイモ、または1つまたは複数の豆(例えば、ソラマメ、レンティル、またはエンドウ豆)であり得る。2つ以上の澱粉質の混合物も、澱粉質である。
【0107】
いくつかの場合において、バイオマスは微生物物質である。微生物源は、炭水化物(例えば、セルロース)の起源、例えば、原生生物、例えば、動物原生生物(例えば、鞭毛虫、アメーバ、繊毛虫、胞子虫等の原虫)および植物原生生物(例えば、アルベオラータ、クロララクニオン藻、クリプト植物、ユーグレナ藻、灰色藻灰色藻、ハプト藻、紅藻、ストラメノパイル、および緑色植物亜界等の藻類)を含むからまたはこれを提供し得る、任意の自然発生のまたは遺伝子組み換えの微生物または生物を含むがこれらに限定されない。他の例は、海草、プランクトン(例えば、大型浮遊生物、中層プランクトン、小形プランクトン、微小プランクトン、ピコプランクトン、フェムプトプランクトン(femptoplankton)、植物性プランクトン、バクテリア(例えば、グラム陽性バクテリア、グラム陰性バクテリア、および極限微生物)、酵母および/またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの事例において、微生物バイオマスは、自然の起源(例えば海、湖、水塊(例えば、塩水、真水)または地上)から得られ得る。代替的に、または加えて、微生物バイオマスは培養システム(例えば、大規模乾燥または湿潤培養システム)から得られ得る。
糖化剤
【0108】
セルラーゼはバイオマスを劣化させ得、菌類またはバクテリアから得られ得る。好適な酵素は、バチルス属、緑膿菌、ツチクビレハリアリ、フサリウム、thielavia属、アクレモニウム属、クリソスポリウム属、トリコデルマ属、ツチクビレハリアリ、ヒトヨタケ属、thielavia属、フサリウム、Myceliophthora、アクレモニウム属、Cephalosporium、Scytalidium、青カビ、またはアスペルギルス(欧州特許第458162号参照)、特に、Humicola insolens(Scytalidium thermophilumとして再分類される。米国特許第4,435,307号参照)、oprinus cinereus、Fusarium oxysporum、Myceliophthora thermophila、Meripilus giganteus、Thielavia terrestris、Acremonium sp、 Acremonium persicinum、Acremonium acremonium、Acremonium brachypenium、Acremonium dichromosporum、Acremonium obclavatum、Acremonium pinkertoniae、Acremonium roseogriseum、Acremonium incoloratum、およびAcremonium furatumからなる群より選択される株により生成されたものに由来するセルラーゼを含み、好適には、Humicola insolens DSM 1800、Fusarium oxysporum DSM 2672、Myceliophthora thermophila CBS 117.65、Cephalosporium sp. RYM−202、Acremonium sp. CBS 478.94、Acremonium sp. CBS 265.95、Acremonium persicinum CBS 169.65、Acremonium acremonium AHU 9519、Cephalosporium sp. CBS 535.71、Acremonium brachypenium CBS 866.73、Acremonium dichromosporum CBS 683.73、Acremonium obclavatum CBS 311.74、Acremonium pinkertoniae CBS 157.70、Acremonium roseogriseum CBS 134.56、Acremonium incoloratum CBS 146.62、およびAcremonium furatum CBS 299.70Hの属に由来するセルラーゼを含む。セルロース分解酵素は、クリソスポリウム属、好適にはクリソスポリウム属lucknowense株から得られ得る。加えて、トリコデルマ属(特に、トリコデルマ属viride、 Trichoderma reesei、およびトリコデルマ属koningii)、好アルカリ性バチルス(例えば米国特許第3,844,890号および欧州特許第458162号参照)、およびストレプトミセス(例えば欧州特許第458162号)が用いられてもよい。
発酵剤
【0109】
発酵に用いられる微生物(単数または複数)は天然微生物および/または改変された微生物であり得る。例えば、微生物はバクテリア(例えば、セルロース分解バクテリア)、菌類(例えば、酵母、植物または原生生物、例えば藻類、原虫、または菌類状の原生生物、例えば、粘菌)であり得る。有機体が適合可能である場合、有機体の混合物も用いられ得る。
【0110】
好適な発酵微生物は炭水化物、例えばグルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、オリゴ糖、または多糖類を、発酵製品に変換する能力を有する。発酵微生物は、Sacchromyces spp.属、例えば、Sacchromyces cerevisiae(パン酵母)、Saccharomyces distaticus、Saccharomyces uvarumと、Kluyveromyces属、例えばKluyveromyces marxianus、Kluyveromyces fragilisとCandida属、例えばCandida pseudotropicalis、およびCandida brassicae、Pichia stipitis (a relative of Candida shehatae、と、Clavispora属、例えばClavispora lusitaniaeおよびClavispora opuntiaeと、Pachysolen属、例えばPachysolen tannophilus, the genus Bretannomyces、例えば、Bretannomyces clausenii (Philippidis, G. P., 1996, Cellulose bioconversion technology, in Handbook on Bioethanol:Production and Utilization, Wyman, C.E., ed., Taylor & Francis, Washington, DC, 179−212)の株を含む。
【0111】
市販のイーストは、例えば、Red Star(登録商標)/Lesaffre Ethanol Red(米国のRed Star/Lesaffreから入手可能)、FALI(登録商標)(米国のBurns Philip Food社の1部門であるFleischmann’s Yeastから入射可能)、SUPERSTART(登録商標)(現在はLalemandであるAlltech社から入手可能)、GERT STRAND(登録商標)(スウェーデン国のGert Strand ABから入手可能)、およびFERMOL(登録商標)(DSM Specialtiesから入手可能)を含む。
【0112】
バクテリア、例えばザイモモナスおよびクロストリジウム‐テルモセルムも発酵に用いられ得る(Philippidis, 1996, supra)。
他の実施形態
【0113】
本発明に係る多数の実施形態が説明されてきた。しかしながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更例が可能であるこが理解されるであろう。
【0114】
例えば、本明細書で論じられた処理ステップの処理パラメータは、例えば、米国仮特許出願第61/151,724号に開示されるように、原料のニグニン成分に基づいて調節され得る。なお、米国仮特許出願第61/151,724号の全開示は参照することにより、本明細書に援用される。
【0115】
したがって、他の実施形態も以下の請求項の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射、超音波処理、熱分解、酸化、蒸気爆砕、化学処理、およびこられの組み合わせからなる群から選択される処理を施された、構造改変されたバイオマス原料を機械的処理すること、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法。前記機械的処理は、切削、粉砕、研磨、圧縮、剪断、および、細切からなる群から選択されるプロセスを含む、
【請求項3】
前記機械的処理は研磨を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記機械的処理は粉砕を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記粉砕はハンマー粉砕を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記構造改変の前に、前記原料に対して第1機械的処理が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1機械的処理は寸法減少を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1機械的処理は周囲温度で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記原料は、前記第1機械的処理の前に、前記第1機械的処理の間に、または前記第1機械的処理の後に、冷却される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
構造改変は、例えば電子ビーム放射を用いて、照射することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
機械的処理は周囲温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記原料は、機械的処理の前に、機械的処理の間に、または機械的処理の後に、冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
機械的処理は周囲温度を超える温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
照射することは、約1Mradから約60Mradの範囲の線量を前記処理された物質に対して供給することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
追加的構造改変処理を機械的処理後に行うことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記バイオマス原料はセルロース系物質またはリグノセルロース系物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記バイオマス原料は、紙、紙製品、木材、木材関連物質、草、籾殻、バガス、綿、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザル、マニラ麻、藁、トウモロコシ穂軸、ココナッツヘア、藻類、海草、微生物物質、合成セルロース、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記構造改変および機械的処理が行われた原料と、微生物とを混合することをさらに含み、前記微生物は前記原料を利用して、製品を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記製品は、水素、アルコール、有機酸および/または炭化水素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記製品は、エタノールまたはブタノールを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記微生物は、バクテリアおよび/または酵素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記構造改変および機械的処理が行われた原料を利用して、バイオディーゼルを生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記構造改変および機械的処理が行われた原料を糖化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記糖化の製品を発酵することをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記構造改変および機械的処理が行われた原料は、少なくとも80%の多孔率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記バイオマス原料はスイッチグラスを含む、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−519391(P2013−519391A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553945(P2012−553945)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/024470
【国際公開番号】WO2011/103033
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512175199)ザイレコ,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】