説明

バイオマスの加工方法

有用な産物、例えば、燃料、カルボン酸ならびにその等価物(例えば、エステルおよび塩)を産生するために、炭素含有材料、例えば、バイオマス(例えば、植物バイオマス、動物バイオマス、および都市廃棄物バイオマス)または石炭が加工される。例えば、供給材料、例えば、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料および/またはデンプン材料を用いて、エタノール、ブタノール、もしくは有機酸(例えば、酢酸もしくは乳酸)、有機酸の塩、またはその混合物を産生することができるシステムが説明される。所望であれば、有機酸をアルコールに変換することができ、例えば、最初に、酸、酸の塩、または酸およびその塩の混合物をエステルに変換し、次いで、形成されたエステルを水素化することによって有機酸をアルコールに変換することができる。石炭またはバイオマスの熱化学変換に由来するシンガスを利用することができる酢酸生成菌またはホモ酢酸生成菌を用いて、望ましい産物を産生することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスの加工およびそれから作製された産物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
様々な炭水化物、例えば、セルロース材料およびリグノセルロース材料、例えば、繊維の形をしたセルロース材料およびリグノセルロース材料が多くの分野で多量に生産、加工、および使用される。多くの場合、このような材料は一度用いられると、廃棄物として捨てられるか、または廃棄材料、例えば、下水、バガス、おがくず、およびストーバーにすぎないと考えられている。
【0003】
様々なセルロース材料およびリグノセルロース材料、これらの使用ならびに用途が、米国特許第7,307,108号、同第7,074,918号、同第6,448,307号、同第6,258,876号、同第6,207,729号、同第5,973,035号、および同第5,952,105号;ならびに2006年3月23日に出願された「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」PCT/US2006/010648および「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」米国特許公開公報第2007/0045456号を含む様々な特許出願に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,307,108号
【特許文献2】米国特許第7,074,918号
【特許文献3】米国特許第6,448,307号
【特許文献4】米国特許第6,258,876号
【特許文献5】米国特許第6,207,729号
【特許文献6】米国特許第5,973,035号
【特許文献7】米国特許第5,952,105号
【特許文献8】PCT/US2006/010648
【特許文献9】米国特許公開公報第2007/0045456号
【発明の概要】
【0005】
概要
一般的に、本発明は、炭素含有材料、例えば、炭水化物含有材料(例えば、デンプン材料および/またはセルロース材料もしくはリグノセルロース材料)、このような材料を作製する方法、ならびにこれらの材料の構造および/または抵抗性レベルを変えるように、このような材料を加工する方法、ならびに変化した材料から作製された産物に関する。例えば、本明細書に記載の方法の多くは、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料、天然の材料と比較して、抵抗性レベルが低く、分子量が低く、官能基化および/または結晶化度のレベルが異なるセルロース材料および/またはリグノセルロース材料を提供することができる。前記方法の多くは、水素、アルコール(例えば、エタノールまたはブタノール)、有機酸(例えば、酢酸および/または乳酸)、炭化水素、副産物(例えば、タンパク質、例えば、単一細胞タンパク質)、またはこれらのいずれかの混合物などの有用な産物を産生するために、(酵素的加水分解の補助あり、または補助なしで)様々な微生物、例えば、一種類または複数の種類のホモ酢酸生成菌またはヘテロ酢酸生成菌が容易に利用することができる材料を提供する。
【0006】
エタノールまたはn-ブタノールなどの得られる産物の多くは、電源車(powering car)用、貨物自動車用、トラクター用、船用、もしくは列車用の燃料として、またはガソリンなどの他の成分とのブレンドとして、例えば、内燃機関燃焼燃料として、あるいは燃料電池供給材料として直接利用することができる。本明細書において開示される方法により他の産物(例えば、有機酸、例えば、酢酸および/または乳酸)を、燃料として変換および利用可能な他の部分(例えば、エステルまたは無水物)に変換することができる。得られる産物の多くはまた、航空機、例えば、飛行機、例えば、ジェットエンジンのある飛行機またはヘリコプターに動力を供給するのにも利用することができる。さらに、本明細書に記載の産物は、発電用に、例えば、従来の蒸気発生プラントまたは燃料電池プラントにおける発電用に利用することができる。
【0007】
本明細書に記載の方法を用いて産生することができる例示的な産物には、炭化水素、タンパク質、アルコール(例えば、一価アルコールまたは二価アルコール)、例えば、エタノール、n-プロパノール、またはn-ブタノール、カルボン酸、例えば、酢酸または酪酸、カルボン酸の塩、カルボン酸およびカルボン酸の塩の混合物、ならびにカルボン酸のエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、およびn-プロピルエステル)、ケトン、アルデヒド、α,β不飽和酸、例えば、アクリル酸、ならびにオレフィン、例えば、エチレンが含まれる。具体例には、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、ブタノール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、これらのアルコールのメチルエステルまたはエチルエステル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、乳酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、いずれかの酸の塩、ならびにいずれかの酸および各塩の混合物が含まれる。
【0008】
一つの局面において、本発明は、アルコール、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のエステル、またはこれらのいずれかの混合物を作製する方法を特徴とする。前記方法は、炭素含有材料、例えば、バイオマス材料または石炭を、本明細書に記載の任意の処理方法、例えば、放射線照射、超音波処理、熱分解、酸化、および水蒸気爆砕の一つまたは複数によって処理する工程;ならびに処理された炭素含有材料の少なくとも一部を、微生物を用いて変換して、アルコール、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のエステル、またはこれらのいずれかの混合物の一つまたは複数を含む産物を産生する工程を含む。前記方法は、この産物を、酸性化、エステル化、および/または水素化する工程をさらに含んでもよい。例えば、熱化学的変換プロセスからのシンガスを利用することができる酢酸生成菌またはホモ酢酸生成菌を利用して、変換効率を高めることができる。
【0009】
別の局面において、本発明は、一種類または複数の種類のアルコールを作製する方法を特徴とする。前記方法は、炭素含有材料、例えば、バイオマス材料および/または石炭を、放射線照射、超音波処理、熱分解、酸化、および水蒸気爆砕の一つまたは複数によって処理する工程;処理された炭素含有材料の少なくとも一部を、微生物、例えば、石炭またはバイオマスの熱化学的変換プロセスからのシンガスを利用することができる一種類または複数の種類の酢酸生成菌またはホモ酢酸生成菌を用いて、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸エステル、またはこれらのいずれかの混合物を含む産物に変換する行程;ならびに産物を水素化してアルコールを産生する工程を含む。
【0010】
本明細書に記載のどのプロセスにおいても、発生した二酸化炭素および/または遊離したリグニンを捕獲することができる。捕獲された二酸化炭素は全て隔離することができ、例えば、捕獲された二酸化炭素を、例えば、100年を超える期間にわたって、例えば、250年、500年、1,000年を超える期間にわたって、または10,000年を超える期間にわたって二酸化炭素を維持することができる地層に注入することによって隔離することができる。例えば、本明細書に記載のどのプロセスにおいても、発生した二酸化炭素は全て隔離することができ、例えば、本明細書に記載の任意の微生物を用いて二酸化炭素を固定することによって隔離することができる。例えば、微生物は藻類を含んでもよく、二酸化炭素は炭水化物および/または脂質の形で隔離されてもよい。所望であれば、例えば、バイオディーゼルを産生するために、脂質を、エステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、またはプロピルエステルに変換することができる。
【0011】
本明細書で使用する、材料の分子構造の変化とは、構造の化学結合配置またはコンホメーションの変化を意味する。例えば、分子構造の変化は、材料の超分子構造の変化、材料の酸化の変化、平均分子量の変化、平均結晶化度の変化、表面積の変化、重合度の変化、多孔度の変化、分枝度の変化、他の材料へのグラフト、結晶ドメインサイズの変化、またはドメインの全サイズの変化を含んでもよい。
【0012】
本明細書において言及された、または本明細書に添付された全ての刊行物、特許出願、特許、また他の参考文献はその全体が、これらが記載する全てのものについて参照として組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】抵抗性のある材料の抵抗性を減らすためのプロセスを示した模式図である。
【図1A】バイオマスに由来する糖からエタノールへの変換を示した模式図である。
【図1B】バイオマスに由来する糖から有機酸への変換を示した模式図である。
【図2】エタノールを作製するためのプロセスを示した模式図である。
【図3】エタノールを作製するための別のプロセスを示した模式図である。
【図4】エタノールを作製するための別のプロセスを示した模式図である。
【図5】エタノールを作製するための別のプロセスを示した模式図である。
【図6】エタノールを作製するための別のプロセスを示した模式図である。
【図7】エタノールを作製するためのプロセスにおける生物学的変換残渣の利用を示した模式図である。
【図7A】酢酸カルシウムおよびエタノールから酢酸エチルへの変換を示した模式図である。
【図8】プロピレングリコールの産生を示した模式図である。
【図9】様々な地層における炭素捕獲を示した模式図である。
【図10】炭水化物および脂質の光合成を示した模式図である。
【図11】バイオディーゼルの産生を示した模式図である。
【図12】藻類を利用した燃料産生プロセスの模式図であるのに対して、図12Aは領域12の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
炭素含有材料、例えば、バイオマス(例えば、石炭、植物バイオマス、動物バイオマス、および都市廃棄物バイオマス)を(必要であれば)抵抗性レベルが低くなるまで加工して、有用な産物、例えば、有機酸、有機酸の塩、無水物、有機酸のエステル、および燃料、例えば、内燃機関用燃料または燃料電池用の供給材料に変換することができる。大量にあるが、加工しにくいことが多い材料、例えば、例えば、前石炭(pre-coal)もしくは石炭、例えば、泥炭、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭、および無煙炭、オイルサンド、オイルシェール、またはセルロース材料もしくはリグノセルロース材料を容易に用いるシステムおよびプロセスが本明細書において説明される。本明細書に記載のプロセスの多くは、任意の炭素含有材料、例えば、本明細書に記載の任意の炭素含有材料の抵抗性レベルを効果的に減らすことで、供給材料の加工、例えば、バイオプロセス(例えば、本明細書に記載の任意の微生物、例えば、ホモ酢酸生成菌もしくはヘテロ酢酸生成菌、および/または本明細書に記載の任意の酵素を用いたバイオプロセス)、熱処理(例えば、ガス化、クラッキング、もしくは熱分解)、または化学的方法(例えば、酸加水分解もしくは酸化)による加工を容易にすることができる。一般的に、必要に応じて、加工のために、および/または加工後に材料を物理的に処理することができ、多くの場合、サイズ縮小によって物理的に処理することができる。物理的に加工された供給材料は、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解、または水蒸気爆砕などの本明細書に記載の任意の方法の一つまたは複数を用いて処理または加工することができる。様々な処理システムおよび方法は、これらの技術または本明細書もしくは他の場所に記載の他の技術の2つ、3つ、さらには4つを組み合わせて使用することができる。
【0015】
場合によっては、微生物によって多くの望ましい産物、例えば、可燃性燃料(例えば、エタノール、ブタノール、または水素)、有機酸または無水物に変換することができる炭水化物、例えば、セルロースまたはヘミセルロースを含む材料を提供するために、本明細書に記載のプロセスのいずれか一つまたは複数によって、一つまたは複数の糖単位を含む供給材料を処理することができる。産生することができる他の産物および副産物には、例えば、ヒト用食品、動物用飼料、薬、および栄養補助食品(nutriceutical)が含まれる。
【0016】
有機酸が最初に調製される場合、このような酸を他の中間体(例えば、エステルおよび無水物)に変換し、次いで、水素化、例えば、高圧水素化によって、例えば、約25バール〜700バール、例えば、50〜500バール、または100〜400バールの圧力で、触媒、例えば、銅クロマイト触媒、コバルト触媒、亜鉛触媒、またはパラジウム触媒の存在下での高圧水素化によってアルコールに変換することができる。エステルの水素化は、Wall, R.G.,米国特許第4,113,662号において議論されている。有機酸の調製には、場合によっては、本明細書においてさらに議論されるように (例えば、炭素利用効率の点で)アルコールを直接作製することに利点がある場合がある。ある態様では、熱化学的変換プロセスからのシンガスを利用することができる酢酸生成菌またはホモ酢酸生成菌を利用して、変換効率を高めることができる。
【0017】
図1を見ると、場合によって、かつ必要な場合、第一の抵抗性レベルを有する第一の材料、例えば、リグノセルロース材料を加工して、例えば、粒子線、例えば、電子線によって処理することによって加工して、第一の抵抗性レベルより小さい第二の抵抗性レベルを有する第二の材料を産生する。この段階で、かつ必要であれば、第二の材料を、例えば、酵素を用いて、その構成糖、例えば、グルコース、キシロース、およびアラビノースに加水分解することができる。次に、図1Aおよび1Bをまとめて見ると、糖を、微生物、例えば、一種類または複数の種類の細菌または酵母、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)および/もしくはピチア・スティピティス(Pichia stipitis)によってアルコールに直接変換することができるか、または糖を、有機酸、例えば、酢酸および/または乳酸に変換することができる。所望であれば、有機酸をエステルに変換し、次いで、エステルを高圧水素下で、および触媒の存在下で水素化して、アルコールを遊離することができる。
【0018】
バイオマスの例
一般的に、一つもしくは複数の糖単位から完全になる炭水化物である、または一つもしくは複数の糖単位から完全になる炭水化物を含む、あるいは一つもしくは複数の糖単位を含む任意のバイオマス材料を、本明細書に記載の任意の方法によって加工することができ、例えば、バイオマス材料の抵抗性レベルを減らすように加工することができる。例えば、バイオマス材料は、一種類または複数の種類のセルロース材料もしくはリグノセルロース材料またはデンプン材料、例えば、トウモロコシの穀粒、イネの穀粒、または他の食物を含んでもよい。
【0019】
例えば、このような材料は、紙、紙製品、木材、木材関連材料、パーティクルボード、草、もみ殻、バガス、綿、ジュート、アサ、アマ、タケ、サイザル、アバカ、ワラ、コーンコブ、もみ殻、ヤシ毛、藻類、海藻、綿、合成セルロース、またはこれらのいずれかの混合物を含んでもよい。
【0020】
例えば、バイオマスは天然で繊維状でもよい。繊維源には、紙および紙製品(例えば、ポリコーティングされた紙およびクラフト紙)を含むセルロース繊維源、ならびに木材および木材関連材料、例えば、パーティクルボードを含むリグノセルロース繊維源が含まれる。他の適切な繊維源には、天然繊維源、例えば、草、もみ殻、バガス、綿、ジュート、アサ、アマ、タケ、サイザル、アバカ、ワラ、コーンコブ、もみ殻、ヤシ毛;α-セルロース含有量が高い繊維源、例えば、綿が含まれる。繊維源は、バージンスクラップテキスタイル材料、例えば、残留物、使用済み廃棄物、例えば、ぼろ切れから得られてもよい。紙製品が繊維源として用いられる場合、バージン材料、例えば、スクラップバージン材料でもよく、使用済み廃棄物でもよい。バージン原材料とは別に、使用済み廃棄物、産業廃棄物(例えば、くず)、および加工廃棄物(例えば、紙加工からの廃水)も繊維源として用いることができる。また、繊維源は、ヒト廃棄物(例えば、下水)、動物廃棄物、または植物廃棄物から得られてもよく、それに由来してもよい。さらなる繊維源は、米国特許第6,448,307号、同第6,258,876号、同第6,207,729号、同第5,973,035号、および同第5,952,105号に記載されている。
【0021】
いくつかの態様において、炭水化物は、一つまたは複数のβ-1,4結合を有し、約3,000〜50,000の数平均分子量を有する材料であるか、これを含む。このような炭水化物は、β(1, 4)-グリコシド結合の縮合によって(β-グルコース1)から得られたセルロース(I)であるか、これを含む。この結合は、デンプンおよび他の炭水化物に存在するα(1, 4)-グリコシド結合のものと対照をなす。

【0022】
デンプン材料には、デンプンそのもの、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、もしくはコメデンプン、デンプンの誘導体、またはデンプンを含む材料、例えば、食品もしくは作物が含まれる。例えば、デンプン材料は、アラカチャ(arracacha)、ソバ、バナナ、オオムギ、キャッサバ、クズ、アンデスカタバミ、サゴヤシ、モロコシ、普通の家庭用ジャガイモ、サツマイモ、タロイモ、ヤムイモ、または一種類もしくは複数の種類のマメ、例えば、ソラマメ、レンズマメ、もしくはエンドウでもよい。二種類以上のデンプン材料のブレンドもデンプン材料である。
【0023】
特定の態様において、デンプン材料はトウモロコシに由来する。様々なトウモロコシデンプンおよび誘導体が、「Corn Starch」,Corn Refiners Association (11th Edition, 2006)に記載されている。
【0024】
他の炭素含有材料およびブレンドの例
前石炭または石炭、例えば、泥炭、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭、および無煙炭、オイルサンド、オイルシェールも炭素源として利用することができる。さらに、本明細書に記載の任意の産物、例えば、エタノール、酢酸、または酢酸エチルを作製するために、本明細書に記載の任意のバイオマス材料および本明細書に記載の他の任意の炭素含有材料のブレンドを利用することができる。
【0025】
物理的調製
場合によっては、方法は、物理的調製、例えば、材料のサイズ縮小、例えば、切断、摩砕、剪断、微粉砕、または切り刻みによる材料のサイズ縮小を含んでもよい。例えば、場合によっては、剪断または細断によって、緩い供給材料(例えば、再生紙、デンプン材料、石炭、またはスイッチグラス)が調製される。例えば、他の場合では、最初に、材料は、本明細書に記載の任意の方法、例えば、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解、または水蒸気爆砕の一つまたは複数を用いて前処理または加工され、次いで、サイズ縮小されるか、さらにサイズ縮小される。最初に処理、次にサイズ縮小すると、処理された材料の脆性が大きくなり、従って、サイズ縮小がさらに簡単になる傾向があるので有利な場合がある。スクリーンおよび/または磁石を用いて、供給ストリームから、大き過ぎる物体または望ましくない物体、例えば、岩または爪を除去することができる。
【0026】
供給調製システムは、特定の特徴、例えば、特定の最大サイズ、特定の長さ対幅、または特定の表面積比を有するストリームを生じるような構成でもよい。物理的調製は、材料を開放し、プロセスおよび/または試薬、例えば、溶液中の試薬に接触しやすくすることによって反応速度を速めることができる、または必要とされる加工時間を短くすることができる。供給材料の嵩密度を制御することができる(例えば、大きくすることができる)。状況によっては、低嵩密度材料を調製し、(例えば、別の場所への輸送を簡単かつ低コストにするために)材料を高密度化し、次いで、材料を低嵩密度の状態に戻すことが望ましい場合がある。
【0027】
サイズ縮小
ある態様において、加工しようとする材料は、繊維源を剪断することによって得られた繊維を含む繊維材料の形をとる。例えば、剪断は、回転ナイフカッターを用いて行うことができる。
【0028】
例えば、繊維源、例えば、抵抗性がある繊維源または抵抗性レベルが低くなっている繊維源を、例えば、回転ナイフカッター内で剪断して、第一の繊維材料を得ることができる。第一の繊維材料を、第一のスクリーン、例えば、平均目開きが1.59mm(1/16インチ、0.0625インチ)以下のスクリーンに通して、第二の繊維材料を得る。所望であれば、剪断の前に、繊維源を、例えば、シュレッダーで切断することができる。例えば、繊維源として紙が用いられる場合、まず最初に、シュレッダー、例えば、二重反転スクリューシュレッダー、例えば、Munson(Utica, N.Y.)製の二重反転スクリューシュレッダーを用いて、紙を、例えば、1/4〜1/2インチ幅の細片に切断することができる。細断の代わりとして、ギロチンカッターを用いて望ましいサイズまで切断することによって、紙のサイズを縮小することができる。例えば、ギロチンカッターを用いて、紙を、例えば、10インチ幅x12インチ長のシートに切断することができる。
【0029】
ある態様において、繊維源の剪断および、得られた第一の繊維材料の第一のスクリーンの通過が同時に行われる。剪断および通過はまたバッチ型プロセスで行うこともできる。
【0030】
例えば、回転ナイフカッターを用いて、繊維源の剪断および第一の繊維材料の選別を同時に行うことができる。回転ナイフカッターは、繊維源を細断することによって調製された、細断された繊維源を充填できるホッパーを備える。細断された繊維源を固定ブレードと回転ブレードとの間で剪断して、第一の繊維材料を得る。第一の繊維材料はスクリーンを通り、得られた第二の繊維材料をビンに取り込む。第二の繊維材料の収集を助けるために、ビンは、公称大気圧より低い圧力、例えば、公称大気圧より少なくとも10パーセント低い圧力、例えば、公称大気圧より少なくとも25パーセント低い圧力、公称大気圧より少なくとも50パーセント低い圧力、または公称大気圧より少なくとも75パーセント低い圧力を有してもよい。ある態様において、真空源を利用して、ビンを公称大気圧より低い圧力に維持する。
【0031】
剪断は、繊維材料を「開放(open up)」し、「力を加える」ことによって、材料のセルロースの鎖が切断しやすくなる、および/または結晶化度が小さくなるために有利な場合がある。開放された材料はまた放射線照射時に酸化しやすくなっている場合がある。
【0032】
繊維源は、乾燥した状態(例えば、材料の表面上に自由水がほとんど無い、もしくは全く無い)、水和した状態(例えば、10重量パーセントまでの吸収した水を有する)、または例えば、約10重量パーセント〜約75重量パーセントの水を有する湿潤状態で剪断することができる。繊維源は、水、エタノール、またはイソプロパノールなどの液体下に部分的にまたは完全に浸した状態で剪断することもできる。
【0033】
繊維源はまた、(空気以外の気体の流れもしくは雰囲気などの)気体、例えば、酸素もしくは窒素、または蒸気の下で剪断することもできる。
【0034】
繊維材料を作製する他の方法には、例えば、岩の摩砕、機械的な切り離しもしくは引き裂き、ピン研削、または空気粉砕ミリングが含まれる。
【0035】
所望であれば、繊維材料は、それらの長さ、幅、密度、材料のタイプ、またはこれらの属性のいくつかの組み合わせに従って、例えば、連続的に、またはバッチ方式で分離して分画することができる。例えば、複合体を形成するためには、繊維長さの比較的狭い分布を有することが往々にして望ましい。
【0036】
繊維材料はまた、例えば、高速の気体、例えば、空気を用いることによって分離することもできる。このようなアプローチにおいては、繊維材料は、所望であれば、光子によって特徴付けることができる異なる画分を取り除くことによって分離される。このような分離装置は、Lindsey et al., 米国特許第6,883,667号において議論されている。
【0037】
例えば、鉄材料を含む繊維材料が電磁石などの磁石を通り過ぎ、次いで、得られた繊維材料を一連のスクリーンに通すことによって、どのような繊維材料からでも鉄材料を分離することができる。各スクリーンは、サイズの異なる穴を有する。
【0038】
繊維材料は、その調製の直後に放射線照射されてもよく、含水量が、例えば、使用前に約0.5%未満になるように、例えば、約105℃で4〜18時間、乾燥されてもよい。
【0039】
所望であれば、リグニンを含むどのような繊維材料からでも、リグニンを除去することができる。また、セルロースを含む材料の破壊を助けるために、放射線照射前に、材料を、熱、化学物質(例えば、鉱酸、塩基、もしくは強力な酸化剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウム)、および/または酵素で処理することもできる。
【0040】
ある態様において、第一のスクリーンの平均目開きは、0.79mm(1/32インチ、0.03125インチ)未満、例えば、0.51mm(1/50インチ、0.02000インチ)未満、0.40mm(1/64インチ、0.015625インチ)未満、0.23mm(0.009インチ)未満、0.20mm(1/128インチ、0.0078125インチ)未満、0.18mm(0.007インチ)未満、0.13mm(0.005インチ)未満、さらには0.10mm(1/256インチ、0.00390625インチ)未満である。スクリーンは、例えば、適切な直径を有するモノフィラメントを織り合わせて、望ましい目開きを得ることによって調製することができる。例えば、モノフィラメントは、金属、例えば、ステンレス鋼から作られてもよい。目開きが小さくなるにつれて、モノフィラメントの構造的負担が大きくなる場合がある。例えば、0.40mm未満の目開きについては、ステンレス鋼以外の材料、例えば、チタン、チタン合金、アモルファス金属、ニッケル、タングステン、ロジウム、レニウム、セラミック、またはガラスから作られたモノフィラメントからスクリーンを作ることが有利な場合がある。ある態様において、スクリーンは、穴、例えば、レーザーを用いて板の中に切断された穴のあいた板、例えば、金属板から作られる。ある態様において、メッシュの開口領域は、52%未満、例えば、41%未満、36%未満、31%未満、30%未満である。
【0041】
第二の繊維材料を剪断し、得られた材料を、平均目開きが第一のスクリーンより小さい第二のスクリーンに通すことによって、第二の繊維材料から第三の繊維材料を調製することができる。
【0042】
一般的に、繊維材料の繊維は2回以上剪断されても、比較的大きな(例えば、20:1を超える)平均長さ対直径比を有し得る。さらに、本明細書に記載の繊維材料の繊維は、比較的狭い、長さおよび/または長さ対直径比の分布を有してもよい。
【0043】
本明細書で使用する平均繊維幅(例えば、直径)とは、約5,000本の繊維を無作為に選択することによって光学的に決定されたものである。平均繊維長さは、修正された長さ加重長さ(length-weighted length)である。BET(Brunauer, Emmet and Teller)表面積は多点表面積であり、多孔度は、水銀ポロシメトリーによって決定されたものである。
【0044】
第二の繊維材料14の平均長さ対直径比は、例えば、8/1を超えてもよく、例えば、10/1を超えてもよく、15/1を超えてもよく、20/1を超えてもよく、25/1を超えてもよく、または50/1を超えてもよい。第二の繊維材料14の平均長さは、例えば、約0.5mm〜2.5mm、例えば、約0.75mm〜1.0mmでもよく、第二の繊維材料14の平均幅(例えば、直径)は、例えば、約5μm〜50μm、例えば、約10μm〜30μmでもよい。
【0045】
ある態様において、第二の繊維材料14の長さの標準偏差は、第二の繊維材料14の平均長さの60パーセント未満であり、例えば、平均長さの50パーセント未満、平均長さの40パーセント未満、平均長さの25パーセント未満、平均長さの10パーセント未満、平均長さの5パーセント未満、さらには平均長さの1パーセント未満である。
【0046】
ある態様において、第二の繊維材料のBET表面積は、0.1m2/gを超える、例えば、0.25m2/gを超える、0.5m2/gを超える、1.0m2/gを超える、1.5m2/gを超える、1.75m2/gを超える、5.0m2/gを超える、10m2/gを超える、25m2/gを超える、35m2/gを超える、50m2/gを超える、60m2/gを超える、75m2/gを超える、100m2/gを超える、150m2/gを超える、200m2/g、さらには250m2/gを超える。
【0047】
第二の繊維材料の多孔度は、例えば、20パーセントを超えてもよく、25パーセントを超えてもよく、35パーセントを超えてもよく、50パーセントを超えてもよく、60パーセントを超えてもよく、70パーセントを超えてもよく、80パーセントを超えてもよく、85パーセントを超えてもよく、90パーセントを超えてもよく、92パーセントを超えてもよく、94パーセントを超えてもよく、95パーセントを超えてもよく、97.5パーセントを超えてもよく、99パーセントを超えてもよく、さらには99.5パーセントを超えてもよい。
【0048】
ある態様において、第一の繊維材料の平均長さ対直径比と、第二の繊維材料の平均長さ対直径比の比は、例えば、1.5未満、1.4未満、1.25未満、1.1未満、1.075未満、1.05未満、1.025未満であり、さらには実質的に1に等しい。
【0049】
特定の態様において、第二の繊維材料は再剪断され、得られた繊維材料は、平均目開きが第一のスクリーンより小さな第二のスクリーンに通されて、第三の繊維材料が得られる。このような場合、第二の繊維材料の平均長さ対直径比と、第三の繊維材料の平均長さ対直径比の比は、例えば、1.5未満、例えば、1.4未満、1.25未満、さらには1.1未満でもよい。
【0050】
ある態様において、第三の繊維材料を第三のスクリーンに通して、第四の繊維材料を得る。第四の繊維材料を、例えば、第四のスクリーンに通して、第五の材料を得ることができる。類似のスクリーニングプロセスを、望ましい特性を有する望ましい繊維材料を得るように所望の回数で繰り返すことができる。
【0051】
高密度化
本明細書に記載の任意の方法によって、高密度化された材料を加工することができる。または、本明細書に記載の任意の方法によって加工された材料は全て、後で高密度化することができる。
【0052】
嵩密度の小さい材料、例えば、加工済みの繊維材料または未加工の繊維材料を、さらに嵩密度の大きな産物に高密度化することができる。例えば、比較的、気体不透過性のある構造、例えば、ポリエチレンで作られたバッグ、ポリエチレン層とナイロン層が交互に並んで作られたバッグ、または溶ける材料で作られたバッグ、例えば、デンプンベースのフィルムで作られたバッグに繊維材料を入れて密封し、次いで、閉じ込められた気体、例えば、空気を構造から抜くことによって、0.05g/cm3の嵩密度を有する材料組成物を高密度化することができる。構造から空気を抜いた後、繊維材料は、例えば、0.3g/cm3を超える嵩密度、0.5g/cm3、0.6g/cm3、0.7g/cm3以上、例えば、0.85g/cm3の嵩密度を有してもよい。高密度化の前および/または後に、産物は、本明細書に記載の任意の方法によって加工されてもよく、例えば、放射線照射されてもよく、例えば、γ線が照射されてもよい。これは、例えば、エタノールを生産するために、繊維材料組成物を溶液に添加することができる別の位置、例えば、遠くの製造プラントに材料を輸送することが望ましい場合に有利であり得る。実質的に気体不透過性の構造を切断するか、または実質的に気体不浸透性の構造に穴を開けた後に、高密度化された繊維材料は、ほぼ初期嵩密度まで、例えば、初期嵩密度の60パーセント超まで、例えば、初期嵩密度の70パーセント、80パーセント、85パーセント以上、例えば、95パーセントまで戻ることができる。繊維材料の静電気を減らすために、静電防止剤を材料に添加することができる。
【0053】
ある態様において、構造、例えば、バッグは、水などの液体に溶ける材料から形成される。例えば、構造は、水をベースとする系と接触した時に溶けるようにポリビニルアルコールから形成されてもよい。このような態様は、最初に構造の内容物を、例えば、切断または穴あけによって放出することなく、微生物を含む溶液に高密度化構造を直接添加するのを可能にする。
【0054】
任意の材料、例えば、バイオマス材料を任意の望ましい添加剤および結合剤と組み合わせ、その後に、圧力を加えることによって、例えば、材料を、二重反転圧力ロール間に規定されるニップに通すことによって、または材料をペレットミルに通すことによって高密度化することができる。圧力を加えている間に、繊維材料の高密度化を助けるために、任意で、熱を加えることができる。次いで、高密度化材料は放射線照射されてもよい。
【0055】
ある態様において、高密度化前の材料の嵩密度は、0.25g/cm3未満、例えば、0.20g/cm3、0.15g/cm3、0.10g/cm3、0.05g/cm3以下、例えば、0.025g/cm3である。嵩密度は、ASTM D1895Bを用いて決定される。簡単に述べると、前記方法は、既知体積のメスシリンダーに試料を満たし、試料の重量を得る工程を含む。嵩密度は、試料の重量、グラムを、メスシリンダーの既知体積、立方センチメートルで割ることによって計算される。
【0056】
好ましい結合剤には、水溶性であるか、水によって膨張するか、または示差走査熱量測定で求められる25℃未満のガラス転移温度を有する結合剤が含まれる。水溶性結合剤とは、水中で少なくとも約0.05重量パーセントの溶解度を有する結合剤を意味する。水膨張性結合剤とは、水に曝露されると体積が0.5パーセント超増加する結合剤を意味する。
【0057】
ある態様において、水溶性結合剤または水膨張性結合剤は、繊維材料、例えば、セルロース繊維材料の繊維と結合、例えば、水素結合を形成することができる官能基を含む。例えば、官能基は、カルボン酸基、カルボキシレート基、カルボニル基、例えば、アルデヒドまたはケトンのカルボニル基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、アミド基、アミン基、ヒドロキシル基、例えば、アルコールのヒドロキシル基、およびこれらの基の組み合わせ、例えば、カルボン酸基およびヒドロキシル基の組み合わせでもよい。具体的な単量体の例には、グリセリン、グリオキサール、アスコルビン酸、尿素、グリシン、ペンタエリスリトール、単糖または二糖、クエン酸、および酒石酸が含まれる。適切な糖類には、グルコース、スクロース、ラクトース、リボース、フルクトース、マンノース、アラビノース、およびエリトロースが含まれる。多量体の例には、ポリグリコール、ポリエチレンオキシド、ポリカルボン酸、ポリアミド、ポリアミン、ならびにポリスルホン酸およびポリスルホネートが含まれる。具体的な多量体の例には、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド、例えば、POLYOX(登録商標)、酸化エチレンおよび酸化プロピレンのコポリマー、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリルアミド、ポリペプチド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリ(ナトリウム-4-スチレンスルホネート)、ならびにポリ(2-アクリルアミド-メチル-1-プロパンスルホン酸)が含まれる。
【0058】
ある態様において、結合剤には、25℃未満のガラス転移温度を有するポリマーが含まれる。このようなポリマーの例には、熱可塑性エラストマー(TPE)が含まれる。TPEの例には、ポリエーテルブロックアミド、例えば、商標名PEBAX(登録商標)で入手可能なポリエーテルブロックアミド、ポリエステルエラストマー、例えば、商標名HYTREL(登録商標)で入手可能なポリエステルエラストマー、およびスチレンブロックコポリマー、例えば、商標名KRATON(登録商標)で入手可能なスチレンブロックコポリマーが含まれる。25℃未満のガラス転移温度を有する他の適切なポリマーには、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ならびにエチレンおよびアルファオレフィン、例えば、1-オクテンのコポリマー、例えば、商標名ENGAGE(登録商標)で入手可能なコポリマーが含まれる。
【0059】
特定の態様において、結合剤は、リグニン、例えば、天然リグニンまたは合成により改変されたリグニンである。
【0060】
乾燥重量ベースで計算した、材料に添加される結合剤の適量は、例えば、高密度化された材料の総重量に基づいて、約0.01パーセント〜約50パーセント、例えば、0.03パーセント、0.05パーセント、0.1パーセント、0.25パーセント、0.5パーセント、1.0パーセント、5パーセント、10パーセント以上、例えば、25パーセントである。結合剤は、混ざりもののない純粋な液体として、結合剤が溶解している液体として、結合剤の乾燥粉末として、または結合剤のペレットとして材料に添加されてもよい。
【0061】
高密度化された繊維材料はペレットミルに入れて作製されてもよい。材料は、高密度化の後、都合良く、様々な形状を有するペレットまたはチップの形をしてもよい。次いで、ペレットを放射線照射することができる、または本明細書に記載の任意の方法によって処理することができる。ある態様において、ペレットまたはチップの形状は、例えば、1mm以上、例えば、2mm、3mm、5mm、8mm、10mm、15mm以上、例えば、25mmの最大横方向寸法を有する円筒である。ペレットは、中空の内側を有するように作製することができる。中空は、概して、ペレットの中心と並んでいてもよく、またはペレットの中心から外れていてもよい。内側にペレットの中空を作製すると、液体中での溶解速度を速めることができる。
【0062】
ペレットは、例えば、マルチローバル、例えば、示されたようなトリローバル、またはテトラローバル、ペンタローバル、ヘキサローバル、もしくはデカローバルである横方向形状を有することができる。このような横方向形状のペレットを作製することでも、溶液中での溶解速度を速めることができる。
【0063】
可溶化するための、抵抗性を減らすための、または官能基化するための処理
物理的に調製された材料、または物理的に調製されていない材料を、本明細書に記載の任意の産生プロセスにおいて使用するために処理することができる。処理プロセスは、本明細書に記載の任意のプロセス、例えば、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解、または水蒸気爆砕の一つまたは複数を含んでもよい。処理方法は、これらの技術の2つ、3つ、4つ、さらには全てを組み合わせて(任意の順番で)使用することができる。
【0064】
放射線処理
多種多様な供給源に由来する材料を加工して、供給材料から有用な物質を抽出するために、ならびにさらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する部分的に分解された有機材料を得るために、一回または複数回の放射線照射加工シーケンスを使用することができる。放射線照射によって、供給材料の分子量および/または結晶化度および/または抵抗性を小さくすることができる。いくつかの態様では、材料に放射線照射するために、原子軌道から電子を放出する材料に蓄積するエネルギーが用いられる。放射線は、1)重い荷電粒子、例えば、α粒子もしくはプロトン、2)電子、例えば、β崩壊もしくは電子線加速器において生じる電子、または3)電磁放射線、例えば、γ線、X線、もしくは紫外線によって供給されてもよい。一つのアプローチでは、放射性物質によって生じる放射線を用いて、供給材料に放射線照射することができる。いくつかの態様では、(1)〜(3)の任意の組み合わせを任意の順番で、または同時に利用することができる。別のアプローチでは、(例えば、電子線エミッターを用いて生じた)電磁放射線を用いて、供給材料に放射線照射することができる。
【0065】
適用される線量は、望ましい効果および特定の供給材料によって決まる。例えば、高線量の放射線は、供給材料成分内の化学結合を破壊することができる。場合によっては、鎖の切断が望ましい場合、および/またはポリマー鎖の官能基化が望ましい場合、電子より重い粒子、例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオン、または窒素イオンを利用することができる。鎖の開環切断が望ましい場合、鎖の開環切断を高めるために、正に荷電した粒子を、そのルイス酸特性のために利用することができる。例えば、最大酸化が望ましい場合、酸素イオンを利用することができ、最大ニトロ化が望ましい場合、窒素イオンを利用することができる。
【0066】
一つの方法では、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースである、または、これを含む第一の材料に、例えば、電離放射線(例えば、γ線、X線、100nm〜280nm紫外線(UV)、電子線または他の荷電粒子の線)による処理によって放射線照射して、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得る。第二の材料(または第一の材料および第二の材料)は、第二の材料および/もしくは第一の材料またはその構成糖もしくはリグニンを利用して、水素、アルコール(例えば、エタノールもしくはブタノール、例えば、n-、sec-、もしくはt-ブタノール)、有機酸、炭化水素、またはこれらのいずれかの混合物である、あるいはこれを含む燃料または他の有用な産物を産生することができる微生物と(酵素処理と共に、または酵素処理なく)組み合わせることができる。
【0067】
第二の材料は、第一の材料と比較して小さな分子量、場合によっては、小さな結晶化度も有するセルロースを有するので、第二の材料は、微生物および/または酵素を含有する溶液中での分散性、膨張性、および/または可溶性が概して高い。これらの特性により、第二の材料は、第一の材料と比較して、化学的攻撃、酵素的攻撃、および/または生物学的攻撃に対する感受性が高い。このために、望ましい産物、例えば、エタノールの生産速度および/または生産レベルを大幅に改善することができる。放射線照射によって、材料または材料のバイオプロセスに必要な任意の培地を滅菌することもできる。
【0068】
いくつかの態様において、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より約10パーセント超小さく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、さらには約75パーセント超小さい。
【0069】
場合によっては、第二の材料のセルロースの結晶化度(C2)は、第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)より少ない。例えば、(C2)は、(C1)より、約10パーセント超少なく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、さらには約50パーセント超少なくてもよい。
【0070】
いくつかの態様において、開始結晶化度指数(放射線照射前)は、約40〜約87.5パーセント、例えば、約50〜約75パーセント、または約60〜約70パーセントであり、放射線照射後の結晶化度指数は、約10〜約50パーセント、例えば、約15〜約45パーセント、または約20〜約40パーセントである。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な放射線照射後には、5パーセントより低い結晶化度指数となる可能性がある。いくつかの態様において、放射線照射後の材料は実質的に無定形である。
【0071】
いくつかの態様において、開始数平均分子量(放射線照射前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、放射線照射後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な放射線照射後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0072】
いくつかの態様において、第二の材料の酸化レベル(O2)は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高くてもよい。材料の酸化レベルが高ければ、分散、膨張、および/または溶解の助けとなり、さらには、化学的攻撃、酵素的攻撃、または生物学的攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。いくつかの態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境において、例えば、空気または酸素の下で放射線照射が行われ、第一の材料より酸化された第二の材料が産生される。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、またはカルボン酸基の数が増えていてもよく、これらは材料の親水性を高めることができる。
【0073】
電離放射線
各種類の放射線は、放射線のエネルギーにより決まる特定の相互作用を介して炭素含有材料をイオン化する。重い荷電粒子は、主に、クーロン散乱を介して物質をイオン化する。さらに、これらの相互作用によって、物質をさらにイオン化し得る高エネルギー電子が発生する。α粒子はヘリウム原子の核と同一であり、様々な放射性核種(radioactive nuclei)、例えば、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、いくつかのアクチニド、例えば、アクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、キュリウム、カリホルニウム、アメリシウム、およびプルトニウムの同位体のα崩壊によって発生する。
【0074】
粒子が用いられる場合、中性(無電荷)でもよく、正に荷電してもよく、または負に荷電してもよい。荷電している場合、荷電粒子は単一の正電荷もしくは負電荷を有してもよく、多重電荷、例えば、1、2、3、さらには4、またはそれより多い電荷を有してもよい。鎖の切断が望ましい場合、正に荷電した粒子は、その酸性が一因で望ましい場合がある。粒子が用いられる場合、粒子は、静止している電子の質量、またはそれより多い質量、例えば、静止している電子の質量の500倍、1000倍、1500倍、2000倍、10,000倍、さらには100,000倍の質量を有してもよい。例えば、粒子は、約1原子単位〜約150原子単位、例えば、約1原子単位〜約50原子単位、または約1〜約25、例えば、1amu、2amu、3amu、4amu、5amu、10amu、12amu、または15amuの質量を有してもよい。粒子を加速するのに用いられる加速器は、静電気学的DC、電気力学的DC、RF線形、磁気誘導線形(magnetic induction linear)、または連続波でもよい。例えば、サイクロトロン型加速器は、IBA, Belgium、例えば、Rhodatron(登録商標)システムから入手可能であるのに対して、DC型加速器はRDI、現在、IBA Industrial、例えば、Dynamitron(登録商標)から入手可能である。イオンおよびイオン加速器は、Introductory Nuclear Physics, Kenneth S. Krane, John Wiley & Sons, Inc. (1988), Krsto Prelec, FIZIKA B 6 (1997) 4, 177-206, Chu, William T., 「Overview of Light-Ion Beam Therapy」, Columbus-Ohio, ICRU-IAEA Meeting, 18-20 March 2006, Iwata, Y. et al., 「Alternating-Phase-Focused IH-DTL for Heavy-Ion Medical Accelerators」, Proceedings of EPAC 2006, Edinburgh, Scotland, and Leaner, CM. et al., 「Status of the Superconducting ECR Ion Source Venus」, Proceedings of EPAC 2000, Vienna, Austriaにおいて議論されている。
【0075】
γ線には、様々な材料への透過の深さが大きいという利点がある。γ線源には、放射性核種、例えば、コバルト、カルシウム、テクニシウム(technicium)、クロム、ガリウム、インジウム、ヨウ素、鉄、クリプトン、サマリウム、セレン、ナトリウム、タリウム、およびキセノンの同位体が含まれる。
【0076】
X線源には、金属標的、例えば、タングステンもしくはモリブデンまたは合金を用いた電子線衝突、または小型光源、例えば、Lynceanによって商業生産されている小型光源が含まれる。
【0077】
紫外線源には、重水素ランプまたはカドミウムランプが含まれる。
【0078】
赤外線源には、サファイア、亜鉛、またはセレン化物ウィンドウセラミックランプが含まれる。
【0079】
マイクロ波源には、クライストロン、Slevin型RF源、または水素ガス、酸素ガス、もしくは窒素ガスを用いた原子線源が含まれる。
【0080】
いくつかの態様では、電子線が放射線源として用いられる。電子線には、線量率が高い(例えば、1Mrad/秒、5Mrad/秒、さらには10Mrad/秒)、高処理、封じ込めが少ない、閉じ込め装置が小さいという利点がある。電子はまた、鎖の切断において効率が高いこともある。さらに、4〜10MeVのエネルギーを有する電子は、5〜30mm以上、例えば、40mmの透過の深さを有し得る。
【0081】
電子線は、例えば、静電発電機、カスケードジェネレータ、変圧発電機(transformer generator)、低エネルギー加速器とスキャニングシステム、低エネルギー加速器とリニアカソード、直線加速器、およびパルス加速器によって発生させることができる。電離放射線源としての電子は、例えば、積み重なりが比較的薄い、例えば、0.5インチ未満、例えば、0.4インチ未満、0.3インチ未満、0.2インチ未満、または0.1インチ未満の材料に有用な場合がある。いくつかの態様において、電子線の各電子のエネルギーは、約0.3MeV〜約2.0MeV(百万電子ボルト)、例えば、約0.5MeV〜約1.5MeV、または約0.7MeV〜約1.25MeVである。
【0082】
電子線照射装置は、Ion Beam Applications, Louvain-la-Neuve, BelgiumまたはTitan Corporation, San Diego, CAから商業的に入手することができる。代表的な電子エネルギーは、1MeV、2MeV、4.5MeV、7.5MeV、または10MeVでもよい。代表的な電子線照射装置の出力は、1kW、5kW、10kW、20kW、50kW、100kW、250kW、または500kWでもよい。供給材料の解重合のレベルは、使用される電子エネルギーおよび適用される線量によって決まるのに対して、曝露時間は出力および線量によって決まる。代表的な線量は、1kGy、5kGy、10kGy、20kGy、50kGy、100kGy、または200kGyの値をとってもよい。
【0083】
イオン粒子線
炭水化物、または炭水化物、例えば、セルロース材料、リグノセルロース材料、デンプン材料、もしくはこれらのいずれかと本明細書に記載の他の材料の混合物を含む材料に放射線照射するために、電子より重い粒子を使用することができる。例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオン、または窒素イオンを利用することができる。いくつかの態様において、電子より重い粒子は(電子より軽い粒子と比較して)多量の鎖の切断を誘導することができる。場合によっては、正に荷電した粒子が、その酸性度により、負に荷電した粒子より多量の鎖の切断を誘導することができる。
【0084】
より重い粒子の線は、例えば、直線加速器またはサイクロトロンを用いて発生させることができる。いくつかの態様において、粒子線の各粒子のエネルギーは、約1.0MeV/原子単位〜約6,000MeV/原子単位、例えば、約3MeV/原子単位〜約4,800MeV/原子単位、または約10MeV/原子単位〜約1,000MeV/原子単位である。
【0085】
ある特定の態様において、炭素含有材料、例えば、バイオマス材料に放射線照射するために用いられるイオンビームは、複数のタイプのイオンを含んでもよい。例えば、イオンビームは、二種類以上(例えば、三種類、四種類、またはそれより多い)の異なるタイプのイオンの混合物を含んでもよい。例示的な混合物は、炭素イオンおよびプロトン、炭素イオンおよび酸素イオン、窒素イオンおよびプロトン、ならびに鉄イオンおよびプロトンを含んでもよい。さらに一般的には、放射線照射イオンビームを形成するために、上記の任意のイオン(または他の任意のイオン)の混合物を使用することができる。特に、一つのイオンビームに、比較的軽いイオンおよび比較的重いイオンの混合物を使用することができる。
【0086】
いくつかの態様において、材料に放射線照射するためのイオンビームには、正に荷電したイオンが含まれる。正に荷電したイオンは、例えば、正に荷電した水素イオン(例えば、プロトン)、希ガスイオン(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン)、炭素イオン、窒素イオン、酸素イオン、ケイ素原子、リンイオン、ならびに金属イオン、例えば、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、および/または鉄イオンを含んでもよい。どの理論にも拘束されるものではないが、このような正に荷電したイオンは、材料に曝露されるとルイス酸部分として化学挙動して、酸化環境においてカチオン性環開口性の鎖切断反応を開始および持続すると考えられている。
【0087】
ある特定の態様において、材料に放射線照射するためのイオンビームには、負に荷電したイオンが含まれる。負に荷電したイオンは、例えば、負に荷電した水素イオン(例えば、水素化物イオン)、ならびに比較的電子陰性のある様々な核の負に荷電したイオン(例えば、酸素イオン、窒素イオン、炭素イオン、ケイ素イオン、およびリンイオン)を含んでもよい。どの理論にも拘束されるものではないが、このような負に荷電したイオンは、材料に曝露されるとルイス塩基部分として化学挙動して、還元環境においてアニオン性環開口性の鎖切断反応を引き起こすと考えられている。
【0088】
いくつかの態様において、材料に放射線照射するためのビームは中性原子を含んでもよい。例えば、バイオマス材料の放射線照射に用いられるビームには、水素原子、ヘリウム原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ネオン原子、ケイ素原子、リン原子、アルゴン原子、および鉄原子のいずれか一つまたは複数を含めることができる。一般的に、前記のタイプの原子のいずれか2つまたはそれより多くからなる(例えば、3つ以上、4つ以上、またはそれより多くからなる)混合物がビームに存在してもよい。
【0089】
ある特定の態様において、材料に放射線照射するのに用いられるイオンビームには、単一電荷イオン、例えば、H+、H-、He+、Ne+、Ar+、C+、C-、O+、O-、N+、N-、Si+、Si-、P+、P-、Na+、Ca+、およびFe+の一つまたは複数が含まれる。いくつかの態様において、イオンビームは、多電荷イオン、例えば、C2+、C3+、C4+、N3+、N5+、N3-、O2+、O2-、O22-、Si2+、Si4+、Si2-、およびSi4-の一つまたは複数を含んでもよい。一般的に、イオンビームはまた、複数の正電荷または負電荷を有するさらに複雑な多核イオンを含んでもよい。ある特定の態様において、多核イオンの構造によって、正電荷または負電荷は、イオンの構造の実質的に全体にわたって有効に分布することができる。いくつかの態様において、正電荷または負電荷は、イオンの構造の複数の部分にわたって、ある程度局在してもよい。
【0090】
電磁放射線
電磁放射線の照射が行われる態様では、電磁放射線は、例えば、102eVを超えるエネルギー/光子(電子ボルト)、例えば、103eV、104eV、105eV、106eV、さらには107eVを超えるエネルギー/光子(電子ボルト)を有してもよい。いくつかの態様において、電磁放射線は、104〜107eV、例えば、105〜106eVのエネルギー/光子を有する。電磁放射線は、例えば、1016hz、1017hz、1018hz、1019hz、1020hz、さらには1021hzを超える周波数を有してもよい。いくつかの態様において、電磁放射線は、1018〜1022hz、例えば、1019〜1021hzの周波数を有する。
【0091】
線量
いくつかの態様において、材料に、少なくとも0.25Mrad、例えば、少なくとも1.0Mrad、少なくとも2.5Mrad、少なくとも5.0Mrad、または少なくとも10.0Mradの線量が与えられるまで、放射線照射(任意の放射線源または放射線源の組み合わせによる)が行われる。いくつかの態様において、材料に、1.0Mrad〜6.0Mrad、例えば、1.5Mrad〜4.0Mradの線量が与えられるまで、放射線照射が行われる。
【0092】
いくつかの態様において、5.0〜1500.0キロラド/時間、例えば、10.0〜750.0キロラド/時間、または50.0〜350.0キロラド/時間の線量率で、放射線照射が行われる。
【0093】
いくつかの態様では、二種類以上の放射線源、例えば、二種類以上の電離放射線が用いられる。例えば、試料は、電子線の次に、γ線および約100nm〜約280nmの波長を有するUV光によって任意の順番で処理することができる。いくつかの態様では、試料は、三種類の電離放射線源、例えば、電子線、γ線、およびエネルギーの高いUV光によって処理される。
【0094】
超音波処理
多種多様な供給源に由来する材料を加工して、供給材料から有用な物質を抽出するために、ならびに(有機材料が用いられた時に)さらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する部分的に分解された有機材料を得るために、一回または複数回の超音波処理加工シーケンスを使用することができる。超音波処理によって、材料、例えば、本明細書に記載の任意の材料の一つもしくは複数、例えば、一つもしくは複数の炭水化物供給源、例えば、セルロース材料もしくはリグノセルロース材料またはデンプン材料の分子量および/または結晶化度を小さくすることができる。
【0095】
一つの方法では、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第一の材料を、媒体、例えば、水に分散させ、超音波処理して、および/または他の方法で気泡を作って、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得る。第二の材料(またはある特定の態様では、第一の材料および第二の材料)は、第二の材料および/または第一の材料を利用して、水素、アルコール、有機酸、炭化水素、またはこれらのいずれかの混合物である、あるいはこれを含む燃料を産生することができる微生物と(酵素処理と共に、または酵素処理を伴わずに)組み合わせることができる。
【0096】
第二の材料は、第一の材料と比較して小さな分子量、場合によっては、小さな結晶化度も有するセルロースを有するので、微生物を含有する溶液中での、例えば、106微生物/mLを超える濃度での分散性、膨張性、および/または可溶性が概して高い。これらの特性により、第二の材料は、第一の材料と比較して、化学的攻撃、酵素的攻撃、および/または微生物攻撃に対する感受性が高い。このために、望ましい産物、例えば、エタノールの生産速度および/または生産レベルを大幅に改善することができる。超音波処理によって材料を滅菌することもできるが、微生物を生かすことになっている間は使用すべきでない。
【0097】
いくつかの態様において、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より約10パーセント超小さく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、さらには約75パーセント超小さい。
【0098】
場合によっては、第二の材料のセルロースの結晶化度(C2)は、第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)より少ない。例えば、(C2)は、(C1)より、約10パーセント超少なく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、さらには約50パーセント超少なくてもよい。
【0099】
いくつかの態様において、開始結晶化度指数(超音波処理前)は、約40〜約87.5パーセント、例えば、約50〜約75パーセント、または約60〜約70パーセントであり、超音波処理後の結晶化度指数は、約10〜約50パーセント、例えば、約15〜約45パーセント、または約20〜約40パーセントである。しかしながら、ある特定の態様において、例えば、大規模な超音波処理後には、5パーセントより低い結晶化度指数となる可能性がある。いくつかの態様において、超音波処理後の材料は実質的に無定形である。
【0100】
いくつかの態様において、開始数平均分子量(超音波処理前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、超音波処理後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な超音波処理後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0101】
いくつかの態様において、第二の材料の酸化レベル(O2)は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高くてもよい。材料の酸化レベルが高ければ、分散、膨張、および/または溶解の助けとなり、さらには、化学的攻撃、酵素的攻撃、または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。いくつかの態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化媒体中で超音波処理が行われ、第一の材料より酸化された第二の材料が産生される。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、またはカルボン酸基の数が増えていてもよく、これらは材料の親水性を高めることができる。
【0102】
いくつかの態様において、超音波処理媒体は水性媒体である。所望であれば、媒体は、酸化剤、例えば、過酸化物(例えば、過酸化水素)、分散剤、および/または緩衝液を含んでもよい。分散剤の例には、イオン性分散剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、および非イオン性分散剤、例えば、ポリ(エチレングリコール)が含まれる。
【0103】
他の態様において、超音波処理媒体は非水性である。例えば、超音波処理は、炭化水素、例えば、トルエンまたはヘプタン、エーテル、例えば、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランの中で、さらには液化ガス、例えば、アルゴン、キセノン、または窒素の中でも行うことができる。
【0104】
どの理論にも拘束されるものではないが、超音波処理は、セルロースを含有する媒体中で泡を作ることによって炭素含有材料中の結合を壊すと考えられている。泡は成長し、次いで、激しく崩壊する。泡の崩壊はナノ秒未満で起こる場合があり、この間に、内破力(implosive force)は泡の中の局所温度を約 5100 Kまで上げ(場合によっては、さらに高い温度; 例えば、Suslick et al., Nature 434, 52-55を参照されたい)、数百大気圧〜1000大気圧以上の圧力を発生させる。これらの高温および高圧が結合を破壊すると考えられている。
【0105】
さらに、どの理論にも拘束されるものではないが、結晶化度の低下は、少なくとも部分的には、泡が崩壊する間の極めて速い冷却速度から生じると考えられている。冷却速度は約1011K/秒超となる場合がある。一般的に、この速い冷却速度のためにセルロースは組織化および結晶化できなくなるり、その結果、結晶化度の小さい材料が得られる。超音波システムおよび音化学は、例えば、

において議論されている。
【0106】
熱分解
多種多様な供給源に由来する炭素含有材料を加工して、材料から有用な物質を抽出するために、ならびにさらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する部分的に分解された有機材料を得るために、一回または複数回の熱分解加工シーケンスを使用することができる。
【0107】
一例では、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(MN2)を有するセルロースを含む第二の材料を得るために、第一の数平均分子量(MN1)を有するセルロースを含む第一の材料を、例えば、(酸素の存在下または非存在下で)チューブ炉の中で加熱することによって熱分解する。第二の材料(またはある特定の態様では、第一の材料および第二の材料)は、第二の材料および/または第一の材料を利用して、水素、アルコール(例えば、エタノールもしくはブタノール、例えば、n-、sec、もしくはt-ブタノール)、有機酸、炭化水素、またはこれらのいずれかの混合物である、あるいはこれを含む燃料を産生する微生物と(酸加水分解もしくは酵素的加水分解と共に、または酸加水分解もしくは酵素的加水分解を伴わずに)組み合わされる。
【0108】
第二の材料は、第一の材料と比較して小さな分子量、場合によっては、小さな結晶化度も有するセルロースを有するので、微生物を含有する溶液中での、例えば、106微生物/mLを超える濃度での分散性、膨張性、および/または可溶性が概して高い。これらの特性により、第二の材料は、第一の材料と比較して、化学的攻撃、酵素的攻撃、および/または微生物攻撃に対する感受性が高い。このために、望ましい産物、例えば、エタノールの生産速度および/または生産レベルを大幅に改善することができる。熱分解によって第一の材料および第二の材料を滅菌することもできる。
【0109】
いくつかの態様では、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(MN1)より、約10パーセント超小さく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、さらには約75パーセント超小さい。
【0110】
場合によっては、第二の材料のセルロースの結晶化度(C2)は、第一の材料のセルロースの結晶化度(C1)より少ない。例えば、(C2)は、(C1)より、約10パーセント超少なく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、さらには約50パーセント超少なくてもよい。
【0111】
いくつかの態様において、開始結晶化度(熱分解前)は、約40〜約87.5パーセント、例えば、約50〜約75パーセント、または約60〜約70パーセントであり、熱分解後の結晶化度指数は、約10〜約50パーセント、例えば、約15〜約45パーセント、または約20〜約40パーセントである。しかしながら、ある特定の態様において、例えば、大規模な熱分解後には、5パーセントより低い結晶化度指数となる可能性がある。いくつかの態様において、熱分解後の材料は実質的に無定形である。
【0112】
いくつかの態様において、開始数平均分子量(熱分解前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、熱分解後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な熱分解後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0113】
いくつかの態様において、第二の材料の酸化レベル(O2)は、第一の材料の酸化レベル(O1)より高くてもよい。材料の酸化レベルが高ければ、分散、膨張、および/または溶解の助けとなり、さらには、化学的攻撃、酵素的攻撃、または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。いくつかの態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境において熱分解が行われ、第一の材料より酸化された第二の材料が産生される。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、またはカルボン酸基の数が増えていてもよく、これらは材料の親水性を高めることができる。
【0114】
いくつかの態様において、材料の熱分解は連続する。他の態様において、材料は、所定の時間、熱分解され、次いで、第二の所定の時間、冷却された後に、再度、熱分解される。
【0115】
酸化
多種多様な供給源に由来する炭素含有材料を加工して、材料から有用な物質を抽出するために、ならびにさらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する部分的に分解されたおよび/または変化した材料を得るために、一回または複数回の酸化加工シーケンスを使用することができる。
【0116】
一つの方法では、例えば、空気または酸素に富む空気のストリームの中で、第一の数平均分子量(MN1)を有し、第一の酸素含有量(O1)を有するセルロースを含む第一の材料を加熱することによって、第一の材料を酸化して、第二の数平均分子量(MN2)を有し、第一の酸素含有量(O1)より高い第二の酸素含有量(O2)を有するセルロースを含む第二の材料を得る。
【0117】
このような材料は固体および/または液体とも組み合わせることができる。液体および/または固体は、微生物、例えば、細菌、および/または酵素を含んでもよい。例えば、細菌および/または酵素は、セルロース材料またはリグノセルロース材料に作用して、燃料、例えば、エタノールまたは副産物、例えば、タンパク質を産生することができる。燃料および副産物は、2006年6月15日に出願された「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」USSN 11/453,951に記載されている。前述の各出願の全内容は参照として本明細書に組み入れられる。
【0118】
いくつかの態様において、第二の数平均分子量は、第一の数平均分子量の97パーセント以下、例えば、第一の数平均分子量の95パーセント以下、90パーセント以下、85パーセント以下、80パーセント以下、75パーセント以下、70パーセント以下、65パーセント以下、60パーセント以下、55パーセント以下、50パーセント以下、45パーセント以下、40パーセント以下、30パーセント以下、20パーセント以下、12.5パーセント以下、10.0パーセント以下、7.5パーセント以下、5.0パーセント以下、4.0パーセント以下、3.0パーセント以下、2.5パーセント以下、2.0パーセント以下、または1.0パーセント以下である。分子量が減少する量は用途によって決まる。例えば、複合体を提供するいくつかの好ましい態様では、第二の数平均分子量は第一の数平均分子量と実質的に同じである。他の用途では、例えば、エタノールまたは別の燃料もしくは副産物を作製する用途では、分子量が減少する量はさらに多いことが一般的に好ましい。
【0119】
材料を用いて燃料または副産物を作製する、いくつかの態様では、開始数平均分子量(酸化前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、酸化後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様では、例えば、大規模な酸化後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0120】
いくつかの態様において、第二の酸素含有量は、第一の酸素含有量より少なくとも約5パーセント多く、例えば、7.5パーセント多く、10.0パーセント多く、12.5パーセント多く、15.0パーセント多く、または17.5パーセント多い。いくつかの好ましい態様において、第二の酸素含有量は、第一の材料の第一の酸素含有量より少なくとも約20.0パーセント高い。酸素含有量は、試料を、1300℃以上で操作されている炉の中で熱分解することで元素分析することによって測定される。適切な元素分析器は、VTF-900高温熱分解炉が付いているLECO CHNS-932分析器である。
【0121】
どの理論にも拘束されるものではないが、酸化によって、材料、例えば、リグノセルロース材料またはセルロース材料の上にある水素結合基の数が増えると考えられている。このような水素結合基の例には、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、または無水物基が含まれる。このような基は、(例えば、液体中での)材料の分散性および/または可溶性を高めることができる。
【0122】
一般的に、材料の酸化は酸化環境で行われる。例えば、酸化は、酸化環境、例えば、空気または空気に富むアルゴンの中で熱分解することによって行われてもよく、助けられてもよい。酸化を助けるために、酸化の前または間に、様々な化学薬品、例えば、酸化剤、酸、または塩基を材料に添加することができる。例えば、酸化前に過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)を添加することができる。
【0123】
炭素含有材料、例えば、石炭またはセルロース材料もしくはリグノセルロース材料の抵抗性を減らす酸化方法の中には、フェントン化学またはフェントン型化学を用いるものもある。フェントン型化学は、Pestovsky et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2005, 44, 6871-6874において議論されている。Pestovsky et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2005, 44, 6871-6874の全開示は参照として本明細書に組み入れられる。一般的に、このような方法を利用するためには、第一の抵抗性レベルを有する第一の材料、例えば、セルロース材料またはリグノセルロース材料を準備し、5族、6族、7族、8族、9族、10族、または11族の一種類または複数の種類の天然非放射性元素を含む一種類または複数の種類の化合物と組み合わせて、混合物を得る。任意で、元素の少なくとも一部の酸化状態を増やすことができる一種類または複数の種類のオキシダントも混合物と組み合わされる。混合物を材料と接触させ、第一の抵抗性レベルより低い第二の抵抗性レベルを有する第二の材料、例えば、セルロース材料またはリグノセルロース材料を産生するのに十分な時間および条件下で、このような接触を維持する。
【0124】
ある態様において、一種類または複数の種類の元素は、1+、2+、3+、4+、または5+の酸化状態にある。特定の場合では、一種類または複数の種類の元素は、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、またはZn、好ましくは、FeまたはCoを含む。例えば、FeまたはCoは硫酸塩、例えば、硫酸鉄(II)または硫酸鉄(III)の形をとってもよい。特定の場合において、一種類または複数の種類の元素は、2+、3+、または4+の酸化状態にある。例えば、鉄は、鉄(II)、鉄(III)、または鉄(IV)の形をとってもよい。
【0125】
例示的な鉄(II)化合物には、硫酸鉄七水和物、鉄(II)アセチルアセトネート、L-アスコルビン酸(+)-鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)、塩化鉄(II)水和物、塩化鉄(II)四水和物、硫酸エチレンジアンモニウム鉄(II)四水和物、フッ化鉄(II)、グルコン酸鉄(II)水和物、D-グルコン酸鉄(II)脱水和物、ヨウ化鉄(II)、乳酸鉄(II)水和物、モリブデン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)脱水和物、酸化鉄(II)、酸化鉄(II,III)、過塩素酸鉄(II)水和物、鉄(II)フタロシアニン、鉄(II)フタロシアニンbis(ピリジン)錯体、硫酸鉄(II)七水和物、硫酸鉄(II)水和物、鉄(II)スルフィド、テトラフルオロホウ酸鉄(II)六水和物、チタン酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物、硫酸アンモニウム鉄(II)、シクロペンタジエニル鉄(II)ジカルボニル二量体、エチレンジアミン四酢酸水和物鉄(III)ナトリウム塩、およびクエン酸鉄が含まれる。
【0126】
例示的な鉄(III)化合物には、鉄(III)アセチルアセトネート、臭化鉄(III)、塩化鉄(III)、塩化鉄(III)六水和物、塩化鉄(III)溶液、シリカゲル上にある塩化鉄(III)、クエン酸鉄(III),三塩基性一水和物、フェロシアン化鉄(III)、フッ化鉄(III)、フッ化鉄(III)三水和物、硝酸鉄(III)九水和物、シリカゲル上にある硝酸鉄(III)、シュウ酸鉄(III)六水和物、酸化鉄(III)、過塩素酸鉄(III)水和物、リン酸鉄(III)、リン酸鉄(III)脱水和物、リン酸鉄(III)水和物、リン酸鉄(III)四水和物、鉄(III)フタロシアニン塩化物、鉄(III)フタロシアニン-4,4',4'',4'''-テトラスルホン酸,酸素を含む化合物,水和物一ナトリウム塩、ピロリン酸鉄(III)、硫酸鉄(III)水和物、p-トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物、鉄(III)tris(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、およびクエン酸アンモニウム鉄(III)が含まれる。
【0127】
例示的なコバルト(II)化合物には、酢酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)四水和物、コバルト(II)アセチルアセトネート水和物、コバルト(II)ベンジルアセトネート、臭化コバルト(II)、臭化コバルト(II)水和物、および炭酸コバルト(II)水和物が含まれる。
【0128】
例示的なコバルト(III)化合物には、コバルト(III)アセチルアセトネート、フッ化コバルト(III)、酸化コバルト(III)、コバルト(III)セプルクラート三塩化物、塩化ヘキサミンコバルト(III)、bis(シクロペンタジエニル)コバルト(III)ヘキサフルオロホスフェート、およびbis(エチルシクロペンタジエニル)コバルト(III)ヘキサフルオロホスフェートが含まれる。
【0129】
例示的なオキシダントには、過酸化物、例えば、過酸化水素および過酸化ベンゾイル、過硫酸塩、例えば、過硫酸アンモニウム、活性化型酸素、例えば、オゾン、過マンガン酸塩、例えば、過マンガン酸カリウム、過塩素酸塩、例えば、過塩素酸ナトリウム、および次亜塩素酸塩、例えば、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)が含まれる。
【0130】
状況によっては、pHは、接触中に約5.5または約5.5未満、例えば、1〜5、2〜5、2.5〜5、または約3〜5に維持される。条件はまた、2〜12時間、例えば、4〜10時間、または5〜8時間の接触期間を含んでもよい。場合によっては、条件は、300℃を超えない、例えば、250℃、200℃、150℃、100℃、または50℃を超えないことを含む。特別な望ましい場合では、温度は実質的に周囲温度のままであり、例えば、20〜25℃または約20〜25℃である。
【0131】
いくつかの望ましい態様では、例えば、空気を通して、第一のセルロース材料またはリグノセルロース材料および一種類または複数の種類の化合物に、粒子線、例えば、電子線を照射することによりインサイチューでオゾンを発生させることによって、一種類または複数の種類のオキシダントが気体として、第一のセルロース材料またはリグノセルロース材料および一種類または複数の種類の化合物に適用される。
【0132】
特に望ましい態様では、第一のセルロース材料またはリグノセルロース材料は、最初に、一種類または複数の種類の化合物が分散および/または溶解している水または水性媒体の中に分散され、浸漬時間の後に水は除去され(例えば、遊離した水(loose and free water)および自由水が濾過によって除去され)、次いで、例えば、空気を通して、第一のセルロース材料またはリグノセルロース材料および一種類または複数の種類の化合物に、粒子線、例えば、電子線を照射することにより(例えば、それぞれ3MeV〜10MeVの電位差によって加速される)インサイチューでオゾンを発生させることによって、一種類または複数の種類のオキシダントが気体として組み合わせに適用される。浸漬によって、酸化に対して内部を開放することができる。
【0133】
いくつかの態様において、混合物は、一種類または複数の種類の化合物および一種類または複数の種類のオキシダントを含み、一種類または複数の種類の化合物と一種類または複数の種類のオキシダントのモル比は、約1:1000〜約1:25、例えば、約1:500〜約1:25または約1:100〜約1:25である。
【0134】
いくつかの望ましい態様において、混合物は、一種類もしくは複数の種類のヒドロキノン、例えば、2,5-ジメトキシヒドロキノン(DMHQ)、および/または一つもしくは複数のベンゾキノン、例えば、2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン(DMBQ)をさらに含む。これらは電子移動反応を助けることができる。
【0135】
いくつかの望ましい態様において、一種類または複数の種類のオキシダントはインサイチューで電気化学的に発生する。例えば、接触容器または反応容器の中で、過酸化水素および/またはオゾンを電気化学的に発生させることができる。
【0136】
可溶化するための、抵抗性を減らすための、または官能基化するための他のプロセス
この段落のプロセスはいずれも、本明細書に記載のプロセス無く単独で、または本明細書に記載の任意のプロセス:水蒸気爆砕、酸処理(鉱酸、例えば、硫酸、塩酸、および有機酸、例えば、トリフルオロ酢酸を用いた濃酸処理および希酸処理を含む)、塩基処理(例えば、石灰または水酸化ナトリウムを用いた処理)、UV処理、スクリュー押出し処理(例えば、2008年11月18日に出願された米国特許出願第61/073,530号を参照されたい)、溶媒処理(例えば、イオン性液体を用いた処理)、ならびに凍結粉砕(例えば、米国特許出願第61/081,709号を参照されたい)と(任意の順番で)組み合わせて使用することができる。
【0137】
熱化学的変換
熱化学的変換プロセスは、高温で炭素含有材料の分子構造を変える工程を含む。具体例には、ガス化、熱分解、改質、部分的な酸化、およびこれらの混合(任意の順番)が含まれる。
【0138】
ガス化は、炭素含有材料を合成ガス(シンガス)に変換する。合成ガス(シンガス)には、メタノール、一酸化炭素、二酸化炭素、および水素が含まれる。酢酸生成菌またはホモ酢酸生成菌などの多くの微生物は、石炭またはバイオマスの熱化学的変換に由来するシンガスを利用して、アルコール、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のエステル、またはこれらのいずれかの混合物を含む産物を産生することができる。様々な技法によって、炭素質材料、例えば、石炭およびバイオマス(例えば、セルロース材料またはリグノセルロース材料)のガス化を実現ことができる。例えば、ガス化は、流動層反応器を用いた段階的な蒸気改質を利用して実現することができる。流動層反応器の中では、最初に、炭素材料は酸素の非存在下で熱分解され、次いで、添加水素および酸素を供給する蒸気を用いて、熱分解蒸気は合成ガスに改質される。このような技法では、プロセス熱は木炭の燃焼から生じる。別の技法では、スクリューオーガー反応器を利用する。スクリューオーガー反応器の中では、水分(および酸素)が熱分解ステージに導入され、後の方のステージにおいて生じた気体の一部を燃焼することによってプロセス熱が発生する。別の技法では、同伴流改質(entrained flow reformation)を利用する。同伴流改質においては、外部の蒸気および空気が単段ガス化反応器の中に導入される。部分酸化ガス化においては、蒸気を用いることなく純酸素が利用される。
【0139】
燃料、酸、エステル、および/または他の産物の産生
代表的なバイオマス供給源は、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンと、さらに少ない量のタンパク質、抽出物、および無機質を含有する。本明細書に記載のように、本明細書に記載の処理プロセスを用いて、任意で、酸加水分解または酵素的加水分解と共に用いて、セルロース画分およびヘミセルロース画分に含まれる複合糖質を発酵性糖に加工することができる。また、本明細書において議論されるように、遊離した糖を、様々な産物、例えば、アルコールまたは有機酸に変換することもできる。得られる産物は、利用される微生物およびバイオプロセスが起こる条件によって決まる。
【0140】
例えば、(真下の式で表されるように)グルコースをアセテート、酢酸、またはその混合物に変換するためにホモ酢酸生成菌が用いられる場合、
C6H12O6→3CH3COOH
この反応の炭素収率はほぼ100%の炭素収率であり、得られたアセテートは、開始グルコースの化学エネルギーの約94%を含有する(細胞塊産生を無視する)。化学エネルギー効率は、産物の燃焼熱を供給材料の燃焼熱で割った比を100倍してパーセントに変換したものと定義される。例えば、Roels, J. A., Energetics and Kinetics in Biotechnology, Elsevier Biomedical, 1983の表3.7からの値を取ると、グルコースおよび酢酸の燃焼熱(HHVベース)は、それぞれ、2807KJ/molおよび876kJ/molであるので、この反応の化学エネルギー効率は、(3X876/2807)X100=93.4%である。
【0141】
嫌気性細菌などの多くの細菌は、シンガス成分(CO、H2、CO2)を発酵させて有用な産物にすることができる。表1は、多くのホモ酢酸生成菌がシンガス混合物からアセテートを約77%の化学効率で産生することを示す。ヘテロ酢酸生成菌として知られる別のクラスの細菌は、シンガス混合物から直接エタノールを約80%の化学エネルギー効率で産生することができる。この文献には、糖および合成ガス供給材料を両方とも代謝することができるさらに多くの細菌の例、例えば、嫌気性細菌が載っている。例えば、アセトネマ属(Acetonema)およびユーバクテリウム属(Eubacterium)(ブチリバクテリウム属(Butyribacterium))は、本明細書に記載の材料の多くからアセテートおよび酪酸の混合物を産生することができる。
【0142】
(表1)ホモ酢酸生成菌またはヘテロ酢酸生成菌の化学エネルギー効率の例

(Roels, J. A., Energetics and Kinetics in Biotechnology, Elsevier Biomedical, 1983に記載の値に基づく計算)
【0143】
このようなホモ酢酸生成菌またはヘテロ酢酸生成菌の変換(例えば、発酵)からの代表的な例示的産物には、アセテート、プロピオネート、ブチレート、水素、二酸化炭素、およびメタンが含まれる。一種類または複数の種類のホモ酢酸生成菌の純粋培養物を用いると、産物のほとんどをアセテートにすることができる。次いで、このアセテートを有機塩または有機酸として回収するか、またはさらに、アルデヒド、エステル、アルコール、またはアルケンに変換することができる。得られた有機酸混合物を回収する、および/または有機酸塩、酸、アルデヒド、エステル、アルコール、アルケンに変換することができる。所望であれば、混合物を分離して比較的純粋な画分にすることができる。
【0144】
酢酸生成菌および他の細菌における糖経路およびシンガス経路の両方を用いて、本明細書に記載の任意の供給材料の炭素および化学エネルギーを、アセテートまたは本明細書に記載の他の任意の産物もしくは副産物にすることができる(実際の産物および副産物は利用される微生物および条件によって決まる)。変換のために糖およびシンガスの両方を利用する利点の1つは、これによって、発酵性糖質および/または複合糖質の形をした供給材料に存在する炭素の量が限定されることで引き起こされる、入手可能な最大エネルギー効率に関する制限が取り除かれることである。これは、炭水化物の形をしたエネルギーレベルが比較的低いバイオマス供給材料、例えば、高リグニンリグノセルロース材料に特に有用である。
【0145】
一般的に、様々な微生物が、処理された炭素含有材料に作用することによって、例えば、処理された炭素含有材料を発酵させることによって、燃料などの多くの有用な産物を産生することができる。
【0146】
微生物は天然微生物でもよく、操作された微生物でもよい。例えば、微生物は、細菌、例えば、セルロース分解細菌、菌類、例えば、酵母、植物、または原生生物、例えば、藻類、原生動物、もしくは菌類様原生生物、例えば、粘菌でもよい。生物が適合する場合、生物の混合物を利用することができる。微生物は好気性生物でもよく、嫌気性生物でもよい。微生物は、ホモ発酵性微生物(単一の最終産物または実質的に単一の最終産物を産生する微生物)でもよい。微生物は、ホモ酢酸微生物、ホモ乳酸微生物、プロピオン酸細菌、酪酸細菌、コハク酸細菌、または3-ヒドロキシプロピオン酸細菌でもよい。微生物は、クロストリジウム属(Clostridium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ムーレラ属(Moorella)、サーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)、プロプリオニバクテリウム属(Proprionibacterium)、プロピオニスペラ属(Propionispera)、アナエロビオスピリルム属(Anaerobiospirillum)、およびバクテリオデス属(Bacteriodes)より選択される属の微生物でもよい。具体例では、微生物は、クロストリジウム・フォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、酪酸菌(Clostridium butyricum)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、サーモアナエロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)、ラクトバチルス・デルブルキ(Lactobacillus delbrukii)、プロピオニバクテリウム・アシディプロピオニシ(Propionibacterium acidipropionici)、プロピオニスペラ・アルボリス(Propionispera arboris)、アナエロビオスピリルム・スクシニクプロデュセンス(Anaerobiospirillum succinicproducens)、バクテリオデス・アミロフィラス(Bacteriodes amylophilus)、またはバクテリオデス・ルミニコラ(Bacteriodes ruminicola)でもよい。例えば、微生物は、望ましい産物を産生するように操作された組換え微生物、例えば、望ましい産物の直接産生が用いられる、望ましいタンパク質をコードすることができる一つまたは複数の遺伝子で形質転換された組換え大腸菌(Escherichia coli)でもよい(例えば、2005年2月8日に発行された米国特許第6,852,517号を参照されたい)。
【0147】
他の微生物には、サッカロマイセス属(Sacchromyces)の種の株、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Sacchromyces cerevisiae)(パン酵母)、サッカロマイセス・ディスタチカス(Saccharomyces distaticus)、サッカロマイセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum);クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、例えば、種クリベロマイセス・マルキアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クリベロマイセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis);カンジダ属(Candida)、例えば、カンジダ・プソイドトロピカリス(Candida pseudotropicalis)、およびカンジダ・ブラシカエ(Candida brassicae)、クラビスポラ属(Clavispora)、例えば、種クラビスポラ・ルシタニアエ(Clavispora lusitaniae)およびクラビスポラ・オプンチアエ(Clavispora opuntiae)、パキソレン属(Pachysolen)、例えば、種パキソレン・タンノフィラス(Pachysolen tannophilus)、ブレタノマイセス属(Bretannomyces)、例えば、種ブレタノマイセス・クラウセニ(Bretannomyces clausenii)(Philippidis, G. P., 1996, Cellulose bioconversion technology, in Handbook on Bioethanol: Production and Utilization, Wyman, CE. , ed., Taylor & Francis, Washington, DC, 179-212)が含まれる。
【0148】
市販の 酵母には、Red Star(登録商標)/Lesaffre Ethanol Red(Red Star/Lesaffre, USAから入手可能)、FALI(登録商標)(Fleischmann's Yeast, Burns Philip Food Inc., USAの一部門から入手可能)、SUPERSTART(登録商標)(Alltechから入手可能)、GERT STRAND(登録商標)(Gert Strand AB, Swedenから入手可能)、およびFERMOL(登録商標)(DSM Specialtiesから入手可能)が含まれる。
【0149】
バイオマス(bimoss)を発酵させてエタノールおよび他の産物にすることができる細菌には、例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)およびクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)(Philippidis, 1996、上記)が含まれる。Leschineら(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 2002, 52, 1155-1160)は、森林の土壌から嫌気性中温性セルロース分解細菌であるクロストリジウム・フィトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)sp. nov.を単離した。これはセルロースをエタノールに変換する。
【0150】
バイオマスからエタノールおよび他の産物への発酵は、T.マスラニイ(mathranii)を含むサーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)種およびピチア属(Pichia)の種などの酵母種などの、ある種の好熱性微生物または遺伝子操作された微生物を用いて行うことができる。T.マスラニイの株の一例は、Sonne-Hansen et al. (Applied Microbiology and Biotechnology 1993, 38, 537-541)またはAhring et al. (Arch. Microbiol. 1997, 168, 114-119)に記載されたA3M4である。
【0151】
(本明細書に記載の任意の方法によって処理された、または処理されていない)セルロースを含む材料の破壊を助けるために、一種類または複数の種類の酵素、例えば、セルロース分解酵素を利用することができる。ある態様では、まず最初に、例えば、セルロースを含む材料と酵素を水溶液中で組み合わせることによって、材料を酵素で処理する。次いで、この材料と、本明細書に記載の任意の微生物を組み合わせることができる。他の態様では、セルロースを含む材料、一種類または複数の種類の酵素、および微生物は、例えば、水溶液中で組み合わせることによって同時に組み合わされる。
【0152】
バイオマス、例えば、バイオマスのセルロース部分および/またはリグニン部分を分解する酵素およびバイオマス破壊生物は、様々なセルロース分解酵素(セルラーゼ)、リグニナーゼ、または様々な低分子バイオマス破壊代謝産物を含有または製造する。これらの酵素は、相乗的に作用して、結晶性セルロースまたはバイオマスのリグニン部分を分解する酵素の複合体でもよい。セルロース分解酵素の例には、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびセロビアーゼ(β-グルコシダーゼ)が含まれる。セルロース基質は、まず、ランダムな位置でエンドグルカナーゼによって加水分解されて、オリゴマー中間体が生成される。次に、これらの中間体は、セルロースポリマーの末端からセロビオースを生じさせるセロビオヒドロラーゼなどのエキソ開裂グルカナーゼの基質となる。セロビオースはグルコースの水溶性1,4結合二量体である。最後に、セロビアーゼがセロビオースを切断して、グルコースが得られる。
【0153】
セルラーゼはバイオマスを分解することができ、真菌起源でもよく細菌起源でもよい。適切な酵素は、バチルス属(Bacillus)、シュードモナス(Pseudomonas)、フミコラ属(Humicola)、フザリウム属(Fusarium)、チエラビア属(Thielavia)、アクレモニウム属(Acremonium)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、およびトリコデルマ属(Trichoderma)由来のセルラーゼを含み、かつフミコラ属、コプリナス属(Coprinus)、チエラビア属、フザリウム属、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、アクレモニウム属、セファロスポリウム属(Cephalosporium)、シタリジウム属(Scytalidium)、ペニシリウム属(Penicillium)、またはアスペルギルス属(Aspergillus)の種(例えば、EP458162)を含み、特に、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)(シタリジウム・サーモフィルム(Scytalidium thermophilum)として再分類。例えば、米国特許第4,435,307号を参照されたい)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、メリピラス・ギガンテウス(Meripilus giganteus)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、アクレモニウム属(Acremonium)の種、アクレモニウム・ペルシシナム(Acremonium persicinum)、アクレモニウム・アクレモニウム(Acremonium acremonium)、アクレモニウム・ブラシペニウム(Acremonium brachypenium)、アクレモニウム・ジクロモスポルム(Acremonium dichromosporum)、アクレモニウム・オブクラバタム(Acremonium obclavatum)、アクレモニウム・ピンケルトニアエ(Acremonium pinkertoniae)、アクレモニウム・ロセオグリセウム(Acremonium roseogriseum)、アクレモニウム・インコロラタム(Acremonium incoloratum)、およびアクレモニウム・フラタム(Acremonium furatum)から選択された株;好ましくは、種フミコラ・インソレンスDSM 1800、フザリウム・オキシスポルムDSM 2672、ミセリオフトラ・サーモフィラCBS 117.65、セファロスポリウム属の種RYM-202、アクレモニウム属の種CBS 478.94、アクレモニウム属の種CBS 265.95、アクレモニウム・ペルシシナムCBS 169.65、アクレモニウム・アクレモニウムAHU 9519、セファロスポリウム属の種CBS 535.71、アクレモニウム・ブラシペニウムCBS 866.73、アクレモニウム・ジクロモスポルムCBS 683.73、アクレモニウム・オブクラバタムCBS 311.74、アクレモニウム・ピンケルトニエCBS 157.70、アクレモニウム・ロセオグリセウムCBS 134.56、アクレモニウム・インコロラタムCBS 146.62、およびアクレモニウム・フラタムCBS 299.70Hによって産生されたセルラーゼを含む。セルロース分解酵素はまた、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、好ましくは、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)の株から得ることもできる。さらに、トリコデルマ(Trichoderma)属(特に、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、およびトリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii))、好アルカリ性バチルス属(例えば、米国特許第3,844,890号およびEP458162を参照されたい)、ならびにストレプトマイセス属(Streptomyces)(例えば、EP458162を参照されたい)を用いることができる。
【0154】
他の方法では、セルロース材料またはリグノセルロース材料の抵抗性を減らすために、一種類または複数の種類のリグニナーゼおよび/またはバイオマス破壊酵素を利用する。このような方法では、第一の抵抗性レベルを有する第一のセルロース材料またはリグノセルロース材料を準備し、第一のセルロース材料またはリグノセルロース材料と接触するように、一種類もしくは複数の種類のリグニナーゼおよび/または一種類もしくは複数の種類のバイオマス破壊生物、例えば、リグニン破壊生物と組み合わせる。この接触は、例えば、第一の抵抗性レベルより低い第二の抵抗性レベルを有する第二のリグノセルロース材料を産生するのに十分な時間、2〜24時間、例えば、6〜12時間、および第一の抵抗性レベルより低い第二のリグノセルロース材料を産生するのに十分な条件下で、例えば、約6より低いpH、例えば、pH3〜5.5で維持される。抵抗性を減らした後に、例えば、本明細書に記載の任意の産物、例えば、食物もしくは燃料、例えば、エタノールもしくはブタノール(例えば、n-ブタノール)、または参照として本明細書に組み入れられる任意の出願に記載の任意の産物を作製するために、第二のセルロース材料またはリグノセルロース材料と、一種類または複数の種類の酵素および/または微生物を接触させてもよい。
【0155】
リグニナーゼは、例えば、マンガンペルオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、またはラッカーゼの一つまたは複数でもよい。
【0156】
特定の実施では、バイオマス破壊生物は、例えば、白色腐朽菌(white rot)、褐色腐朽菌(brown rot)、または軟腐朽菌(soft rot)の一つまたは複数でもよい。例えば、バイオマス破壊生物は担子菌綱(Basidiomycetes)の菌類でもよい。特定の態様において、バイオマス破壊生物は、白色腐朽菌(Phanerochaete chrysoporium)またはキチリメンタケ(Gleophyllum trabeum)である。
【0157】
リグニナーゼ、バイオマス破壊生物、および低分子代謝産物は、Kirk et al., Enzyme Microb. Technol. 1986, vol. 8, 27-32、Kirk et al., Enzymes for Pulp and Paper Processing, Chapter 1 (Roles for Microbial Enzymes in Pulp and Paper Processing、およびKirk et al., The Chemistry of Solid Wood, Chapter 12 (Biological Decomposition of Solid Wood (pp.455-487)に記載されている。
【0158】
次に、図2を見ると、炭素含有化合物を含む材料、例えば、約75重量%未満の炭素含有化合物が炭水化物の形をとっている、加速された電子によって処理されたリグノセルロース材料からエタノールを産生する方法の一つは、材料の一部を、酢酸、酢酸エステル(例えば、メチルエステルもしくはエチルエステル)、酢酸塩、または酢酸、酢酸エステル、および酢酸塩の混合物(図の中では、単純にCH3COOHおよびCH3COORとして示した)に生物学的変換する工程(酵素の助けあり、または酵素の助けなし)、ならびに熱化学プロセス(ガス化)を用いて材料の別の部分を変換して、シンガス(水素、一酸化炭素、場合によっては、二酸化炭素、またはその成分の混合物(還元ガスと呼ばれることが多い)-図の中ではH2として示した)を産生する工程を含む。次いで、シンガスまたはその成分を、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酢酸、酢酸エステル、および酢酸塩の混合物と、例えば、触媒の存在下および水素高圧下(例えば、50バール〜700バール)で反応させて、エタノールを産生する。エタノールを産生する、この方法の化学エネルギー効率は、生物学的変換のみのプロセスの化学エネルギー効率、またはエタノールを産生するプロセスの一部である熱化学変換工程に最初に材料の全てが供される変換プロセスの化学エネルギー効率より大きい場合がある。
【0159】
場合によっては、酸および/または酸の塩は、生物学的プロセスによって産生される産物である。このような場合、熱化学プロセスによって産生される中間体と反応させる工程の前に、酸および/または酸の塩を酸性化および/またはエステル化によって処理することができる。例えば、生物学的プロセスによって産生される中間体はカルボン酸の塩を含んでもよい。カルボン酸の塩を酸性化して、カルボン酸にすることができる。例えば、生物学的プロセスによって産生される中間体は、メタノールまたはエタノールによってエステル化して、対応するカルボン酸エステルを形成することができるカルボン酸を含んでもよい。酸性化およびエステル化は、生物学的手段または化学的手段によって実現することができる。例えば、一つの態様において、酸性化は、二酸化炭素、または酸性化されるカルボン酸よりpKaが低い酸を、カルボン酸の塩を含む溶液に導入する工程を含んでもよい。別の態様において、酸性化は、三級アミンを二酸化炭素と共に導入して、酸/アミン錯体を形成する工程を含んでもよい。このプロセスは、酸/アミン錯体と水不混和性溶媒を接触させて、水不混和性溶媒およびカルボン酸のエステルを形成する工程をさらに含んでもよい。酸性化およびエステル化の方法は、2005年8月11日に公開されたWO2005/073161および2000年9月14日に公開されたWO00/53791においてさらに詳細に説明されている。
【0160】
図3を見ると、炭素含有化合物を含む材料、例えば、オゾンもしくはフェントン溶液で処理されたリグノセルロース材料からエタノールを産生する別の方法は、材料の一部を、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酢酸、酢酸塩エステル、および酢酸塩の混合物(図の中では、単純にCH3COOHおよびCH3COORとして示した)に生物学的変換する工程(酵素の助けあり、または酵素の助けなし)、ならびに熱化学プロセス(ガス化)を用いて材料の別の部分を変換して、シンガスを産生する工程を含む。一酸化炭素および水素の形をしたシンガスの一部は、変換中に生物学的変換プロセスに送られる。シンガスの別の部分(水素)を利用して、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酢酸、酢酸エステル、および酢酸塩の混合物と、例えば、触媒の存在下および水素高圧下(例えば、25または50バール〜700バール)で反応させて、エタノールを産生する。
【0161】
図4を見ると、炭素含有化合物を含む材料、例えば、抵抗性を減らすように超音波処理されたリグノセルロース材料からエタノールを産生する別の方法は、材料の一部を、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酢酸、酢酸エステル、および酢酸塩の混合物 (図の中では、単純にCH3COOHおよびCH3COORとして示した)を(酵素なしで、または酵素が存在することなく)生物学的変換する工程、ならびに熱化学プロセス(ガス化)を用いて材料の別の部分を変換して、シンガスを産生する工程を含む。一酸化炭素の形をしたシンガスの一部は生物学的変換プロセスに送られる。水素の形をしたシンガスの別の部分を利用して、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酢酸、酢酸エステル、および酢酸塩の混合物と反応させて、エタノールを産生する。
【0162】
図5を見ると、炭素含有化合物を含む材料、例えば、抵抗性を減らすように熱分解されたリグノセルロース材料からエタノールを産生する別の方法は、材料の一部を、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酢酸、酢酸エステル、および酢酸塩の混合物(図の中では、単純にCH3COOHおよびCH3COORとして示した)を(酵素なしで、または酵素が存在することなく)生物学的変換する工程、ならびに熱化学プロセス(ガス化)を用いて材料の別の部分を変換して、シンガスを産生する工程を含む。一酸化炭素および水素の形をしたシンガスの一部は生物学的変換プロセスに送られる。一酸化炭素の形をしたシンガスの別の部分を利用して、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酢酸、酢酸エステル、および酢酸塩の混合物と反応させて、エタノールを産生する。
【0163】
図6を見ると、炭素含有化合物を含む材料、例えば、抵抗性を減らすように熱分解された石炭からエタノールを産生する別の方法は、材料の一部を、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酢酸、酢酸エステル、および酢酸塩の混合物(図の中では、単純にCH3COOHおよびCH3COORとして示した)を(酵素なしで、または酵素が存在することなく)生物学的変換する工程、ならびに熱化学プロセス(ガス化)を用いて材料の別の部分を変換して、水素およびメタノールを含むシンガスを産生する工程を含む。メタノール(CH3OH)の形をしたシンガスの一部は生物学的変換プロセスに送られる。水素の形をしたシンガスの別の部分を利用して、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酢酸、酢酸エステル、および酢酸塩の混合物と反応させて、エタノールを産生する。
【0164】
図7を見ると、炭素含有化合物を含む材料、例えば、オゾンもしくはフェントン溶液で処理された、および/または電子が照射されたリグノセルロース材料からエタノールを産生する別の方法は、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酢酸、酢酸エステル、および酢酸塩の混合物(図の中では、単純にCH3COOHおよびCH3COORとして示した)に生物学的変換可能な材料の全ての部分を、生物学的変換する工程(酵素なしで、または酵素が存在することなく)を含む。次いで、熱化学プロセス(ガス化)を用いて、変換残渣、例えば、リグノセルロース材料のリグニン部分を変換して、シンガスを産生する。水素の形をしたシンガスの一部を利用して、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酢酸、酢酸エステル、および酢酸塩の混合物と、例えば、触媒の存在下および水素高圧下(例えば、25または50バール〜700バール)で反応させて、エタノールを産生する。
【0165】
場合によっては、酢酸塩が選択的に産生される。図7Aに示した反応蒸留プロセス80aを用いて、酢酸塩をエステル(例えば、エチルエステル)に変換することができる。
【0166】
反応区域424において、反応区域の上部では、薄い(5%)酢酸カルシウム水溶液をエタノールと混合し、塔422に送る。反応区域424の下部では、二酸化炭素を塔422に送る。二酸化炭素と酢酸カルシウムおよびエタノールとの同時反応が、反応区画424にある塔422の中心区域において起こり、炭酸カルシウムおよび酢酸エチル(EtAc)が形成する。
【0167】
反応混合物中にある最も揮発性の高い成分は、酢酸エチル/水/エタノール共沸混合物である。この共沸混合物組成物は、82.6%酢酸エチル、9%水、および8.4%エタノールであり、70.2℃の正常沸点を有する。共沸混合物は、いくらかのEtOHおよび水と共に蒸発によって反応混合物から取り出される。反応区画からの下部産物は、懸濁した炭酸カルシウムを含有する水およびエタノール溶液であり、ストリッピング区域に流れる。
【0168】
上部分離区域450において、共沸混合物はエタノールから分離され、水も反応混合物から蒸発する。エタノール/水混合物は反応区画424に再利用され、オーバーヘッド産物は共沸混合物である。二酸化炭素(carbon dixoxide)はオーバーヘッド凝縮液から分離され、補給二酸化炭素と共に塔に再利用される。水を添加し、相分離を引き起こすことによって、共沸混合物を壊すことができる。水およびエタノールに富む層は、反応蒸留塔の適切な点に戻される。
【0169】
反応区域におけるエステル化正反応に有利になるように過剰なエタノールが用いられるので、ストリッピング区域458は過剰なエタノールを反応区画に戻す。ストリッピング区域458において、エタノールは炭酸カルシウム含有水ストリームから取り出される。炭酸カルシウム含有水ストリームは塔422から排出され、遠心分離または濾過などの液体/固体分離462によって分離される。
【0170】
反応蒸留プロセスの正味の効果は、薄い塩溶液から酢酸を回収し、それによって、ストリームの大部分を形成する水を蒸発させることなく、上部に比較的、濃い産物ストリームを生じることである。3つの区域を統合すると全エネルギー要件が低下し、産物エステルの同時取り出しによりエステル化平衡がシフトして、短時間でさらに高い変換が得られる。
【0171】
次に、図8を見ると、炭素含有化合物を含む材料、例えば、約75重量%未満の炭素含有化合物が炭水化物の形をとっている、加速された電子によって処理されたリグノセルロース材料からプロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)を産生する方法の一つは、材料の一部を、乳酸、乳酸エステル、乳酸塩、またはその混合物(図の中では、単純にCH3CH(OH)COOHおよびCH3CH(OH)COORとして示した)に生物学的変換する工程(酵素の助けあり、または酵素の助けなし)、ならびに熱化学プロセス(ガス化)を用いて材料の別の部分を変換して、シンガス(H2として図に示した)を産生する工程を含む。次いで、シンガスを、乳酸、乳酸エステル、乳酸塩、またはその混合物と、例えば、触媒の存在下および水素高圧下(例えば、25または50バール〜700バール)で反応させて、プロピレングリコールを産生する。
【0172】
本明細書において議論されたプロセスと類似のプロセスを用いると、炭素含有材料を利用して、例えば、プロピオン酸、プロピオン酸エステル、プロピオン酸塩、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、またはその混合物を含む混合物から、n-プロパノールを産生することができる。
【0173】
本明細書において議論されたプロセスと類似のプロセスを用いると、炭素含有材料を利用して、例えば、酪酸、酪酸エステル、酪酸塩、酢酸、酢酸エステル、酢酸塩、または酪酸、酪酸エステル、酪酸塩、酢酸、酢酸塩エステル、および酢酸塩の混合物を含む混合物から、ブタノールおよびエタノールを産生することができる。
【0174】
本明細書に記載のプロセスと類似のプロセスを用いると、炭素含有材料を利用して、例えば、コハク酸、コハク酸エステル、コハク酸塩、またはコハク酸、コハク酸エステル、およびコハク酸塩の混合物を含む混合物から、1,4-ブタンジオールを産生することができる。
【0175】
本明細書において議論されたプロセスと類似のプロセスを用いると、炭素含有材料を利用して、例えば、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸エステル、3-ヒドロキシプロピオン酸塩、または3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸エステル、および3-ヒドロキシプロピオン酸塩の混合物を含む混合物から、1,3-プロパンジオールを産生することができる。
【0176】
他の態様
多くの態様が説明された。それにもかかわらず、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更が加えられ得ることが理解されるだろう。
【0177】
例えば、シンガスおよびシンガス成分は炭素含有供給材料から現場で産生されてもよく、その一方で、シンガスまたはその任意の成分は、例えば、油製油所から購入されてもよい。
【0178】
一つの物理的位置で本明細書に記載のプロセスの全てを実施することが可能であるが、ある態様では、プロセスは複数の場所で完了する。例えば、エステル混合物を、別の物理的位置にある高圧水添分解装置に輸送することができる。
【0179】
本明細書において提示された技法は、炭素含有バイオマス材料を用いてうまくいくが、石炭、糖、およびデンプンなどの本明細書に記載の他の任意の炭素含有材料を用いてもうまくいく。例えば、石炭またはデンプンを放射線照射し、次いで、有機酸、塩もしくは酸、および/または有機酸のエステルに変換することができる。
【0180】
本明細書に記載のどのプロセスにおいても、発生した二酸化炭素および/または遊離したリグニンを全て捕獲することができる。捕獲された二酸化炭素は全て、例えば、捕獲された二酸化炭素を、二酸化炭素を維持することができる地層、例えば、採掘可能な炭層(unmineable coal seam)または深部塩水帯水層に注入することによって、例えば、100年超、例えば、250年超、500年超、1,000年超、または10,000年超の期間にわたって隔離することができる。例えば、本明細書に記載のどのプロセスにおいても、発生した二酸化炭素は全て、例えば、本明細書に記載の任意の微生物を利用して二酸化炭素を固定することによって隔離することができる。例えば、微生物は藻類を含んでもよく、二酸化炭素は、炭水化物および/または脂質の形で隔離されてもよい。所望であれば、例えば、バイオディーゼルを産生するために、脂質を、エステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、n-プロピルエステル、イソプロピルエステル、またはブチルエステルに変換することができる。任意のエステルを、例えば、本明細書に記載のように水素化によって、アルコールに変換することができる。
【0181】
次に、図9を見ると、二酸化炭素排出物を様々な地層の中に貯留することができる。例えば、二酸化炭素を、深部塩水帯水層または採掘可能な炭層の中に貯留することができる。二酸化炭素を用いて、届きにくい天然ガスまたは油を地中から出すこともできる。
【0182】
二酸化炭素を捕獲し、食品産業および飲料産業において使用することもできる。例えば、二酸化炭素をドライアイスに変換してもよく、炭酸飲料に使用てもよい。
【0183】
図10を見ると、二酸化炭素を固定することができる本明細書に記載の任意の微生物を、二酸化炭素の隔離において利用することができる。特に、図10は光合成経路を示す。光合成経路では、光、水、栄養分、および二酸化炭素を固定することができる微生物の存在下で、二酸化炭素は、炭水化物および脂質を含む様々な産物に変換される。発生した炭水化物は、本明細書に記載の任意のプロセスにおいて、例えば、エタノールの作製のために利用されてもよく、脂質は、例えば、バイオディーゼルに変換されてもよく、食品に用いられてもよく、栄養補助食品として用いられてもよい。
【0184】
適切な藻類には、微細藻類、例えば、珪藻類およびラン藻類、ならびに大型藻類、例えば、海藻が含まれる。具体例には、ボトリオコッカス・ブラウニ(Botryococcus braunii)、クロレラ属(Chlorella)、ドゥナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)、オゴノリ属(Gracilaria)、プレウロクリシス・カルテラエ(Pleurochrysis carterae)(CCMP647とも呼ばれる)、およびホンダワラ属(Sargassum)が含まれる。
【0185】
次に、図11を見ると、アルコール(ROH)および触媒、例えば、酸、例えば、鉱酸(例えば、硫酸)を用いたエステル化によって、脂質、例えば、トリグリセリド(脂肪)をバイオディーゼルに変換することができる。示したように、トリグリセリドの各分子について、3分子のバイオディーゼルと1分子のグリセロールが形成される。
【0186】
次に、図12および12Aを見ると、廃棄物である二酸化炭素および栄養分を、藻類が水などの溶媒中に懸濁されている循環反応容器に送り込むことができる。パドルホイールが材料を連続して循環しながら、太陽または人工光源などの光源が反応容器の中にある材料に光を照らす。望ましい量の産物、例えば、一種類もしくは複数の種類の炭水化物および/または一種類もしくは複数の種類の脂質が産生された後に、反応器の内容物をあけ、油を回収し、ディーゼルなどの望ましい燃料に変換する。
【0187】
本明細書に記載のどのプロセスにおいても、遊離したリグニンを捕獲および利用することができる。例えば、リグニンは、プラスチックとして捕獲されたように使用されてもよく、合成によって他のプラスチックに改良されてもよい。場合によっては、リグニンはエネルギー源として利用することができ、例えば、燃焼させて熱を供給することができる。場合によっては、リグニンをリグノスルホナートに変換することもできる。リグノスルホナートは、結合剤、分散剤、乳化剤、または捕捉剤として利用することができる。
【0188】
リグニンまたはリグノスルホナートが結合剤として用いられる場合、例えば、豆炭の中に、セラミックの中に、カーボンブラックの結合のために、肥料および除草剤の結合のために、塵埃抑制剤として、合板およびパーティクルボードの作製において、動物用飼料の結合のために、ガラス繊維用の結合剤として、リノリウムペーストの中の結合剤として、ならびに土壌安定剤として利用することができる。
【0189】
分散剤として、リグニンまたはリグノスルホナートは、例えば、コンクリートミックス、クレー、およびセラミック、染料および色素、革なめし、ならびにセッコウ板の中に使用することができる。
【0190】
乳化剤として、リグニンまたはリグノスルホナートは、例えば、アスファルト、色素および染料、殺虫剤、およびワックスエマルジョンの中に使用することができる。
【0191】
捕捉剤として、リグニンまたはリグノスルホナートは、例えば、微量栄養(mico-nutrient)システム、洗浄用化合物、ならびに水処理システム、例えば、ボイラーおよび冷却システム用の水処理システムにおいて使用することができる。
【0192】
熱源として、一般的に、リグニンは、ホロセルロース(セルロースおよびヘミセルロース)より多くの炭素を含有するので、ホロセルロースより高いエネルギー含有率を有する。例えば、ホロセルロースのエネルギー含有率が1ポンド当たり7,000〜8,000BTUであるのに対して、乾燥リグニンのエネルギー含有率は1ポンド当たり約11,000〜12,500BTUであり得る。従って、燃焼のために、リグニンを豆炭およびペレットに高密度化および変換することができる。例えば、リグニンは、本明細書に記載の任意の方法によってペレットに変換することができる。ゆっくりと燃焼するペレットまたは豆炭の場合、例えば、約0.5Mrad〜5Mradの放射線線量を適用することによって、リグニンを架橋することができる。架橋によって、ゆっくりと燃焼するフォームファクターを作ることができる。ペレットまたは豆炭などのフォームファクターは、空気の非存在下で、例えば、400〜950℃で熱分解することによって「合成炭」または木炭に変換することができる。熱分解の前に、構造完全性を維持するために、リグニンを架橋することが望ましい場合がある。
【0193】
従って、他の態様は以下の特許請求の範囲の中にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のエステル、またはこれらのいずれかの混合物を作製する方法であって、以下の工程を含む方法:
炭素含有材料を、放射線照射、超音波処理、熱分解、酸化、および水蒸気爆砕の一つまたは複数によって処理する工程;ならびに
処理された炭素含有材料の少なくとも一部を、微生物を用いて変換して、アルコール、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のエステル、またはこれらのいずれかの混合物の一つまたは複数を含む産物を産生する工程。
【請求項2】
変換中に、シンガスが微生物に送達される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
シンガスが、メタノール、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、およびその混合物からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
シンガスがメタノールを含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
シンガスが一酸化炭素を含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
シンガスが一酸化炭素および水素の混合物を含む、請求項2記載の方法。
【請求項7】
石炭および/またはバイオマスをガス化することによって、シンガスが産生される、請求項2〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
産物を水素化する工程、または産物を、一酸化炭素などの一つまたは他の還元剤に曝露する工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
産物を水素化する工程が、約25バール超の圧力下、触媒の存在下で産物を水素に曝露する工程を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
石炭および/またはバイオマスのガス化によって産生されたシンガスから水素が産生される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
変換する工程が、処理された材料と酵素を接触させる工程を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
アルコールを作製する方法であって、以下の工程を含む方法:
炭素含有材料を、放射線照射、超音波処理、熱分解、酸化、および水蒸気爆砕の一つまたは複数によって処理する工程;
処理された炭素含有材料の少なくとも一部を、微生物を用いて、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のエステル、またはこれらのいずれかの混合物を含む産物に変換する工程;ならびに
産物を水素化して、アルコールを産生する工程。
【請求項13】
カルボン酸が酢酸を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
カルボン酸のエステルが酢酸エチルを含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
微生物がホモ酢酸生成菌またはヘテロ酢酸生成菌を含む、請求項12〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
アルコール、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のエステル、またはこれらのいずれかの混合物を作製する方法であって、以下の工程を含む方法:
炭素含有材料を、放射線照射、超音波処理、熱分解、酸化、および水蒸気爆砕の一つまたは複数によって処理する工程;
処理された炭素含有材料の少なくとも一部を、微生物を用いて変換して、アルコール、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のエステル、またはこれらのいずれかの混合物の一つまたは複数を含む産物を産生する工程;ならびに
発生した任意の二酸化炭素および/または遊離した任意のリグニンを捕獲する工程。
【請求項17】
二酸化炭素が捕獲され、捕獲された二酸化炭素を隔離する工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
二酸化炭素を隔離する工程が、二酸化炭素を所定の位置に維持することができる地層に、捕獲された二酸化炭素を注入する工程を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
二酸化炭素を隔離する工程が、微生物を用いて二酸化炭素を固定する工程を含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
微生物が二酸化炭素を炭水化物および/または脂質の形で固定する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
微生物が二酸化炭素を脂質の形で固定し、脂質をエステルに変換する工程をさらに含む、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図12A】
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【公表番号】特表2012−515549(P2012−515549A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548002(P2011−548002)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/020449
【国際公開番号】WO2010/085380
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(509284598)キシレコ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】