説明

バイオマスの蒸気ガス化に使用されるタールを改質するための触媒

本発明は、カンラン石担体に鉄塩含有溶液を含浸し、次にそれを加熱処理することにより調製される、鉄化合物層が堆積されているカンラン石担体を含む触媒に関する。前記触媒は、特にバイオマスの蒸気ガス化に由来するガス状媒体において、タールを蒸気改質するのに有用である。さらに、前記触媒は、合成ガス中で形成されるタールの量を抑制しながら、バイオマス由来の有機化合物の蒸気ガス化に触媒作用を及ぼすために単独で使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一触媒反応の分野に関する。より詳細には、本発明は、タールの蒸気改質を行うために有用な担持触媒型の触媒系に関し、そして有機化合物のガス化プロセス、特にバイオマスの蒸気ガス化プロセスを行うために非常に有利であることが判明している。
【背景技術】
【0002】
バイオマス(例えば、木材)に由来する有機化合物は、主に加熱のための、燃料として長く使用されている。その比較的低い発熱特性のために、この余り有利ではない使用は、つい最近になって、より良好な別の変換法、つまり、特に、有機化合物を、例えば燃料電池中のガス燃料、又は化合物の合成のための塩基性ガス成分などの有用なガスに変換する工程から成るガス化に取って代わられた。
【0003】
典型的には、バイオマス由来の化合物のガス化は、変換するための化合物を、比較的高温で、蒸気及び適切な触媒の存在下において置換する蒸気ガス化を伴う。複雑な熱化学的プロセスの後に、これは、有機化合物を、主に水素、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素、並びにメタンを含むガス混合物(「合成ガス」という)に変換する。現在使用されている熱−化学変換プロセスの中でも、蒸気による流動床ガス化は、有利な滞留時間を提供し、さらに、生成ガスの高い発熱量(窒素希釈化ガスを生成する空気中のガス化プロセスより高い)により形成される残留物の量を減らしながら、これに伴う高い加熱温度によりガス生成物(特に水素)を最適化された収率で得ることができる。
【0004】
有機化合物の蒸気ガス化プロセスに由来するこれらのガス混合物によって頻発する課題は、有機化合物の蒸気ガス化プロセスが、好ましくない副生成物(それは、合成ガスを汚染しかねない)の形成を伴うことである。具体的には、特に、それに伴う高温のために、蒸気ガス化反応は、タールを生成することが多い。
【0005】
本明細書の意味においては、用語「タール」は、ベンゼンより高い分子量を有する芳香族化合物(例えばトルエン又はナフタレン)、さらには前記芳香族化合物を含む混合物を意味するものとする。典型的には、蒸気ガス化プロセスにより生成するタールとしては、酸化の有無によらず1〜5個の芳香族核を含む化合物が挙げられる。
【0006】
蒸気ガス化に由来するガス中の前記タールの存在によって、これらのガスは、幾つかの工業的用途、例えばガスタービン又は燃料電池にとって不適当なものとなる。タールは、凝集して、これらのデバイスを詰まらせ易い複雑な構造になる傾向を事実上有する。この欠点は、バイオマス蒸気ガス化プロセスの経済的実行可能性にとって大きな障害である。
【0007】
より一般的には、タールは、触媒の表面に堆積し、結果として、その段階的な不活性化を起こす傾向があるので、蒸気ガス化中のタールの発生は、別の問題(すなわち、生成したタールは、ガス化を行うために使用される触媒を汚染する傾向があること)を引き起こす。
【0008】
ガス化プロセスの下流で(いわゆる二次的除去法)、又はこれらのタールが形成される反応器内で直接に(反応器内におけるタール形成の阻害、及び/又は形成されたタールの変換を可能にする、いわゆる一次法)、これらのタールを除去するために、様々な方法が提案されているが、必ずしも満足できるわけではない。
【0009】
二次法の中では、化学的方法(特に、熱分解)又は機械的方法(ろ過器、サイクロン、遠心分離器、スクラバー)が考えられており、バイオマス蒸気ガス化プロセスに由来するガスのタール含有量を減らすのに効率的であるが、詳細には(特に分解のための)エネルギー消費条件又は(特に、分解ろ過器又はスクラバーに関する)処理条件についてコストがかかると判明している。
【0010】
一次法については、タールを除去するか、又は発生源でそれらの形成を阻害するために、異なる種類の触媒を蒸気ガス化反応器に加えることが想定されており、実際には、おおよそ効率的であると分かっている。一般に、提案された触媒は、典型的には、下記反応(式中、Cはタールを表す。)の一方及び/又は他方に従って、水及び/又はCOの存在下で、タールを、水素、CO及び/又はCOを顕著に含むガス混合物に変換する工程から成る改質反応を利用して、タールの触媒的減少を達成することを目的としている:
+nHO→nCO+(n+m/2)H
+nCO→2nCO+m/2H
これに関連して、触媒として、砂、ドロマイト及び焼成されたマグネサイト、さらには、カンラン石及びゼオライト、並びに金属化合物(特に、担持された酸化ニッケル)を主成分とする触媒を使用することが、提案されている。得られた結果は、触媒的に有効であることが概ね確実であり、大体において、近接する組成に応じて触媒によって恐らく変化する。この点において、ガス化反応器内で起こる反応は、不適切に理解されており、それ故に適切な触媒の選択は経験的に行われていることに注目するべきである。関連する作用機序は、現時点では余り分かっていないので、触媒を実際に試す前に触媒が有効であるか否かを事前に予測することを不可能にしている。
【0011】
提案された触媒の中では、ドロマイト(炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウム)は、酸化物形態へと焼成される必要があり、その酸化物形態は、比表面積の損失、及び触媒摩滅(触媒の段階的な崩壊)の現象を発生させる脆性化を引き起こし、そしてガス流出物中の微粒子の好ましくない形成を引き起こし、顕著には工業用途において、特に流動床反応器内で、ドロマイトの使用を困難にする。
【0012】
カンラン石(典型的には、式(Mg1−xFeSiO{式中、xは、ゼロ以外の数であり、一般に、0.1のオーダーである}を満たすマグネシウム及び鉄の混合ケイ酸塩)は、摩滅に対してより耐性がある。それらは(焼成されたドロマイトの場合と同様に)タールの分解について幾つかの活性を有するが、それでも、それらは、工業的規模でのそれらの使用を想定したときに余り効率的ではないと分かっている。
【0013】
金属化合物を主成分とする触媒を検討すると、様々な触媒が、バイオマス蒸気ガス化型の反応において試されている。この点において、特にニッケル触媒が開発されており、その中の幾つかは、タールの実質的な改質によって、特に740℃より高い適用温度で、上記カンラン石及び焼成されたドロマイトよりも比較的効率的なタール改質を可能にすることが判明した。例えば、アルミナに担持されたニッケル系触媒が、例えば、「Ind. Eng. Chem. Res., vol. 36, p1335 (1997)」において具体的に記述されており、つい最近になって、仏国特許出願第2809030号明細書において、カンラン石担体に堆積されたニッケル系活性相を含む触媒が、タールの蒸気改質にとって良好な結果を与えることも記述されている。
【0014】
それでもなお、これらの利点にも関わらず、ニッケル系触媒は、特に流動床反応器内で使用されたときに、摩滅の現象に影響され易いという欠点を有する。時間とともに触媒効率が喪失することに加えて、これらの摩滅の現象は、ニッケルにより形成されたガスの無視できない汚染を引き起こし、その汚染は、ニッケルの毒性と見なされているので、工業的規模では容認できない。
【0015】
さらに、ニッケル触媒は、バイオマスの蒸気ガス化中に得られることが多い硫黄含有化合物などの化合物と接触したときに、不活性になる傾向がある。また、ニッケル触媒の表面に形成される酸化数0のニッケルは、触媒を汚染するかもしれない炭素凝集体(コークス)の形成を引き起こし易いコーク前駆体であることが分かっている。また、ニッケル系触媒は、それらの使用後に再利用しなければならないので、特にコストがかかることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、タールの蒸気改質、特にバイオマス由来の有機化合物の蒸気ガス化中に形成されたタールの蒸気改質に触媒作用を及ぼすのに適した新規な触媒系、具体的には、タールの水素への変換に関して上記ニッケル触媒と同様の効率を有するが、特に毒性及びコストに関して、ニッケル触媒を使用して直面した課題を解決できる新規な触媒系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このために、本発明では、カンラン石系担体上に鉄化合物を含む特定の担持型触媒の使用が提案される。
【0018】
より正確には、本発明の対象は、カンラン石担体に鉄塩含有溶液を含浸し、次に、有利には含浸後に予備乾燥を行ってから、400〜1,400℃、好ましくは600〜1,400℃の温度で、含浸された担体を(概ね空気中で)熱処理することにより得ることができる、鉄化合物含有層が堆積されているカンラン石系担体を含む触媒であって、該担体に堆積されている鉄の量は、該触媒の全質量に対して加えられた鉄元素の質量として表され、少なくとも5%である、前記触媒である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、今では、本発明者らは、カンラン石上に堆積された鉄を含むこの特定の触媒は、特に有機化合物(特に、バイオマスに由来するもの)の蒸気ガス化プロセスから生じたガスにおいて、タールの蒸気改質に特に効率的なことを証明している。具体的には、本発明の触媒は、大部分のタール(概ね60%を超える、さらには80%を超える、恐らくは90%以上に達するタール)を変換させ、典型的には、ガス化により生じたガス中で、タール含有量を少なくとも10分の1まで減少させる。さらに、本発明の触媒は、高収率の水素を生成させる。バイオマスの蒸気ガス化中に発生したガスの存在下で、特にCO、CO、H及びCHの存在下で、この触媒作用は維持される。さらに、この触媒は、高温で活性なままであり、かつ700〜900℃の範囲の温度で蒸気改質反応を顕著に行えるようにする。
【0020】
注目すべきことに、バイオマスの蒸気ガス化について予想され、試験されており、かつ一般にはタールの処理に特に有効な活性を示していない僅かな鉄化合物含有触媒について現在入手できるデータを検討すると、これらの結果は予想外のものであることが分かっている。それどころか、鉄系触媒に関する論文は、むしろ担体上の鉄の堆積が、タールの蒸気改質に関与しないという結果になるという仮定を引き起こす傾向がある。
【0021】
例えば、バイオマスのガス化に由来するガス中のタールの除去を可能にする触媒が、「Catalysis Today, vol 27, pp. 55-62 (1996)」に記述されている。鉄の使用は、この点において予測されているが、タール変換率の改良につながっていない。具体的には、ドロマイトがこの論文において試験されており、鉄含有ドロマイトは同等の結果になった。
【0022】
同様に、「Fuel, vol. 87, pp 451-459 (2008)」において、Feの堆積を行うアルミナが、スギ木材の触媒的ガス化について試験されており、またアルミナ単独に近い結果が得られている。
【0023】
したがって、意外にも、本発明により開発された特定の鉄系触媒は、上記ニッケル触媒により得られる結果と少なくとも同等の結果になることが明らかである。さらに、今では、本発明者らは、本発明による触媒の触媒特性は、経時的にも著しくに安定であり、実験室規模と工業的規模の両方において、これらの触媒の有利な使用を可能にすることを証明している。
【0024】
また、本発明のために本発明者らにより行われた研究では、本発明に係る触媒によって、カンラン石上に堆積された層に大量の(典型的には、該触媒の全質量に対して10〜20質量%、さらには、この割合を超える)鉄を統合することが可能であること、より一般的には、カンラン石に加えられた鉄のほぼ全体が、改質反応に触媒作用を及ぼして、特に強い活性を有する触媒を得るのに適していることを確認することが可能である。
【0025】
さらに、含浸、乾燥及び焼成によるカンラン石上の層の堆積は、初期カンラン石担体よりも高い比表面積を最終触媒に与え(一般に、初期カンラン石の1m/g未満に対して最終触媒は10m/gのオーダーである)、タールと触媒の間の適切な交換表面積を増加させ、さらに、その効率を増加させる。
【0026】
また、ニッケル触媒とは逆に、本発明の触媒は、毒性化合物を含まず、それ故に、それらは、バイオマスの蒸気ガス化に由来するガスが、毒性化合物を含まずに得られるようにするので、使用前に処理する必要がなく、そして操作者にとっては、水素及びCOの使用に関する危険を除いて、危険がない。
【0027】
さらに、本発明の触媒中の鉄化合物の存在については、これらは、有機化合物の蒸気ガス化により発生するガスに通常は存在する幾つかの化合物の含有量を減らすことができると分かっている。具体的には、反応媒体内、又はバイオマス蒸気ガス化反応の下流における本発明の触媒の使用は、処理された有機化合物の少なくとも一部分が窒素又は硫黄の原子を含むことが多いバイオマス蒸気ガス化プロセスにおいて、頻繁に形成される硫黄含有化合物(特にHS)及びアンモニウムNHの少なくとも一部分を避けることができる。
【0028】
また、カンラン石(地殻中で最も豊富な鉱物の一種)、及び大部分が入手可能である鉄を使用する本発明の触媒は、環境に注意を払っており、かつ低コストな触媒であることに注目すべきである。
【0029】
これらの様々な利点を考慮して、本発明の触媒は、ニッケル触媒に対する最も興味を引く代替物であって、ニッケル触媒の欠点を有することなく、その利点を共有する代替物を提供する(特に、この点に関しては、本発明の触媒が、ニッケル触媒とは逆に、使用後の触媒を再処理するという煩雑な工程を必要としないことに注目すべきである)。
【0030】
さらに、具体的には、本発明の触媒がカンラン石を含むという事実を考慮すると、本発明の触媒は、特にバイオマス由来の、有機化合物の蒸気ガス化のための触媒として使用されることができる。この場合には、その触媒は2つの役割を果たす。すなわち、(1)それは、有機化合物の蒸気ガス化を確実にし;そして(2)それは、この蒸気ガス化中に形成されたタールの効率的な分解を確実にする。この点において、カンラン石の摩滅傾向が低いことは、触媒が毒性化合物を含まないという事実と合わせて、触媒が流動床の形態で使用されるプロセスにおいて、有機化合物の蒸気ガス化のために本発明の触媒を使用することを可能にする。しかしながら、本発明の触媒は、固定床の形態で使用されてもよい。
【0031】
本発明の触媒は、バイオマスの蒸気ガス化プロセスに由来する媒体に存在しているタールの改質のために使用されるとき、気体燃料、及び化合物の合成のために構成される塩基性ガスの両方として非常に適している精製ガスを生成させる。原則として、そのようにして得られたガスは、十分に精製されているので、それら自体で幾つかの用途において使用されることができ、また、それらのガスは、タールの実質的な除去のための膜触媒フィルターによってろ過できるように十分に低いタール含有量(一般に、得られたガス中のタール含有量は、フィルターの許容閾値より低い)を有し、具体的には、それらのガスは、特にSOFC型の、燃料電池のアノードにおける燃料;又は熱及び/又は電気の製造のためのガスタービン中の燃料として使用できる精製ガスを得ることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0032】
具体的には、本発明の触媒は、鉄含有層が堆積されているカンラン石系担体を含む。
【0033】
「カンラン石系担体」については、全体又は一部分がカンラン石で形成されている担体を意味し、有利には、その担体は、担体の全質量に対して、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも80質量%のカンラン石を含み、好ましくは、この担体は、実質的に(好ましくは、担体の全質量に対して、少なくとも90%、さらには少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98質量%の割合の)カンラン石から形成されている。
【0034】
本発明の触媒において担体として使用されるカンラン石は、周知の種類の材料である。それは、マグネシウム及び鉄カチオンが四面体シリカに含まれているマグネシウム及び鉄の混合ケイ酸塩である。有利には、本発明の触媒に存在する担体のカンラン石は、式(Mg1−xFeSiO{式中、xは、0ではない数であり、概ね1未満、ほとんどの場合には0.01〜0.5、例えば0.25未満であり、xは、概ね0.05〜0.15であり、例えば0.08〜0.12のオーダーである。)で表され、そして微量成分として(典型的には、1%、好ましくは0.5%未満の割合までの)Ca、Cr、Ni又はAlなどの追加の元素を含んでよく、さらには鉄を含まなくてもよい(すなわち、鉄が、ケイ酸塩の構造に含まれていなくてもよい)。
【0035】
好ましくは、本発明の触媒中の担体として、天然カンラン石が使用され、それは、例えば、目安としては、オーストリア又はイタリアにある天然カンラン石鉱山に由来してよい。具体的には、本発明の使用に十分に適する天然カンラン石は、Magnolithe社(オーストリア)により販売されているカンラン石である。
【0036】
好ましい一実施形態によれば、本発明の触媒に使用されるカンラン石は、式(Mg1−xFeSiO{式中、xは、0.05〜0.15、好ましくは0.08〜0.12である。}で表されるカンラン石である。
【0037】
好ましくは、その実際の式に関係なく、本発明の触媒に担体として使用されるカンラン石は、カンラン石の全質量に対して:
28質量%〜35質量%のMg;
1質量%〜10質量%のFe;
18質量%〜22質量%のSi;
所望により、0.5質量%以下のNi;
所望により、0.5質量%以下のCa;
所望により、0.5質量%以下のAl;及び
所望により、0.5質量%以下のCr
を含む。
【0038】
具体的には、本発明を実施するために十分に適したカンラン石は、カンラン石の全質量に対して:30.5質量%のMg;7.1質量%のFe;19.6質量%のSi;0.20質量%のCa;0.07質量%のAl;及び0.08質量%のCrの含有物を有する。
【0039】
好ましくは、本発明により担体として使用されるカンラン石は、有利には1,000℃を超える温度で、より好ましくは1,200℃より高い温度で、典型的には1,500〜1,700℃の温度で、焼成型の熱処理を事前に受けたカンラン石である。
【0040】
また、本発明による担体として、分離された形態のカンラン石を使用することが好ましい。有利には、本発明の触媒に存在するカンラン石系担体は、(典型的には、天然カンラン石を製粉することにより得られる)100μm〜750μm、好ましくは250〜600μm、例えば350〜500μm(典型的には、425μmのオーダー)の平均粒径を有する粉末の形態である。一般に、前記担体を含む触媒は、同様(そして概ね同一)の粒径を有する。
【0041】
本発明による触媒は、上記担体上に鉄化合物を堆積することにより得られる。
【0042】
本発明の触媒では、該担体に堆積された鉄の量は、該触媒の全質量に対して堆積された鉄元素の質量を基準として、少なくとも5%である。特に興味深い結果が、10%以上、例えば10〜20%の量で得られる。一般に、担体に堆積された鉄の量は、良好なタール変換率を得るために20%を超える必要はないが、より高い量(例えば、25%以下、さらには30%以下の範囲である)が、本発明により除外されるものではない。
【0043】
本発明の触媒では、鉄塩溶液を含浸し、次に、一般に空気中で、より一般的には、鉄を主成分とする化学種を担体の表面に固定させて、カンラン石に存在する鉄と強く相互作用させる酸化雰囲気で、熱処理することにより、鉄を担体の表面に加える。
【0044】
典型的には、本発明に使用できる触媒は、下記工程を含む方法を実行することにより得られる:
(A) 好ましくは上述の種類の(有利には、少なくとも1,000℃、例えば1,500〜1,700℃の温度で事前に加熱処理された)カンラン石系担体に鉄塩を含む溶液を含浸し;次に
(B) 工程(A)後に得られた含浸された固体を乾燥し、次に
(C) 400〜1,400℃の温度で、好ましくは600〜1,400℃の温度で、好ましくは空気中で、乾燥された固体を加熱処理する。
【0045】
別の態様によれば、この製造方法は、本発明の別の特定の対象を形成する。
【0046】
工程(A)及び(B)での含浸及び乾燥は、既知の手段そのものを用いて行なわれることができる。典型的には、カンラン石は、それを、好ましくは分離された状態で、鉄塩溶液と接触させることにより(一般に、その溶液中でカンラン石の分散体を形成することにより)含浸され、その後に、得られた混合物は、一般に50〜150℃の温度で(例えば、溶媒の還流下で、典型的には回転エバポレーター中で)、一般に5〜20時間(典型的には、10時間〜15時間のオーダー)に亘って、蒸発濃縮される。
【0047】
好ましくは、工程(A)で使用される鉄塩溶液は、水溶液である。より一般的には、それは、極性溶媒(例えば、エタノール、又は水/エタノール混合物)中の溶液でよい。
【0048】
工程(A)で使用される鉄塩は、第二鉄塩、第一鉄塩、並びに数種類の第一鉄塩及び/又は第二鉄塩の混合物でよい。特に、使用される塩は、硝酸塩、塩化物又は酢酸塩でよく、特に、それらの良好な安定性及び削減されたコストを考慮すると、一般には、硝酸塩が非常に最適である。典型的には、工程(A)で使用される鉄塩は、硝酸(第二)鉄、硝酸(第一)鉄、塩化(第二)鉄、塩化(第一)鉄、酢酸(第二)鉄、酢酸(第一)鉄、又はこれらの塩の2つ以上の混合物である。興味深い一実施形態によれば、本発明の触媒を調製するために使用される鉄塩は、式Fe(NOの硝酸鉄(III)である。
【0049】
工程(A)で使用される溶液の濃度は、触媒の表面に堆積するのに好ましい鉄の量に比例して算出される。一般に、溶液に加えられる鉄塩のほぼ全量が、工程(A)及び(B)後にカンラン石に堆積することになり、次に、工程(A)で使用された溶液に加えられることになる鉄塩の量が、最終触媒中の所望のFe/カンラン石比率と正比例して算出される。
【0050】
特に上述の工程(C)で、本発明の触媒を調製するために適用する熱処理工程は、堆積された鉄をカンラン石と結合させる。このために、それは、好ましくは空気中で行われる。好ましくは、熱処理は、600℃以上の、より好ましくは700℃より高い、さらに好ましくは850℃より高い温度で行われる。しかし、触媒の温度プログラム還元(TPR)の解析により分かる通り、熱処理は、高すぎる温度で行われないことが好ましく、さもなければ、鉄とカンラン石の間の強い相互作用が、強くなりすぎて、加えられた鉄の一部分をタール改質反応のために使用不可能なものにし、タール改質のための触媒作用を減少させるであろう。この理由により、特に工程(C)で、本発明の触媒を調製するために適用する熱処理の温度は、好ましくは1,400℃未満、より有利には1,200℃未満である。それ故に、典型的には、この熱処理工程を900〜1,100℃の温度で行うことが有利である。
【0051】
典型的には、堆積された鉄塩の良好な変換、及び鉄を主成分とする化学種とカンラン石との最適な結合を達成するために、工程(C)での熱処理は、2〜10時間に亘る上記温度での工程(B)の後に、得られた乾燥固体を放置しておくことにより行われる。
【0052】
本発明による触媒のX線回折分析(XRD)によって、この触媒の表面に堆積された鉄の含浸量に関係なく、カンラン石の構造は、工程(C)後に得られた触媒中で保持されていることが示される。
【0053】
さらに、X線光電子顕微鏡(XPS)及びメスバウワー顕微鏡による分析では、本発明の触媒は、酸化数II及びIIIの鉄を基本的に含み、鉄(II)は、カンラン石内に存在し、そして鉄(III)は、酸化鉄(III)(Fe)又はFe−Mgスピネル相の形態で表面及びカンラン石粒子境界に位置し、そして表面上で得られる鉄(III)の量は、工程(C)での熱処理の温度とともに増加することが示される。作用機序に拘束されるものではないが、発明者らにより行われた研究の観点から、表面上、及びタールの改質における触媒の活性に関与する粒子境界に位置する鉄(酸化鉄)の存在があることを提案できるという実情がある限り、触媒のこの特定の構造は、特に興味深いことが分かる。この酸化鉄(III)は、タールの触媒的改質により媒体中で形成された蒸気及びガスと接触したときに、恐らく点還元を受けてFe(II)又はFe種になり、これらの金属種は、恐らくタール改質の触媒反応における実際の活性種であり、一方で、カンラン石構造内に存在する鉄(II)は、不活性なようである。
【0054】
また、メスバウワー顕微鏡による本発明の触媒の分析によって、工程(C)での熱処理の温度が増加すると、カンラン石内の酸化数+IIの鉄の量は減少することが示され、(改質に適していない)この酸化数+IIの鉄は、還元性Fe(III)へ酸化されることになる。
【0055】
本発明の触媒を調製する実際の態様に関係なく、有利には、ガス状媒体中に存在するタールを、水素を含むガス状混合物、並びにCO及び/又はCOへ変換するように、本発明の触媒は、これらのタールの蒸気改質を蒸気の存在下で行うために使用されることができる。この点について、本発明の触媒は、例えば仏国特許出願第2809030号明細書に記述されている通り、カンラン石に担持されているニッケル系触媒の活性と同様であり、かつ単独で使用されるカンラン石の活性よりも非常に高い活性を示す。
【0056】
さらに特定の態様によれば、本発明の対象は、本発明の触媒のこのような使用、より詳細には、ガス状媒体中に存在するタールを蒸気改質するための方法であって、蒸気の存在下で該タールを本発明の触媒と接触させる方法に関する。
【0057】
この方法では、好ましくは、タールの触媒との接触は、水素の存在下でも行われる。この場合、触媒は、蒸気及び水素の存在下で、好ましくは1:1より大きいH/HOモル比で、タールと接触させられており、さもなければ触媒失活の現象が時間とともに観察されるであろう。しかし、このH/HOモル比は、好ましくは2:1より低いままであるが、さもなければ、大量に存在する水素は、改質反応に悪影響を及ぼす傾向があり、それによってタール変換率を減少させ、そして水素収率を減少させるであろう。
【0058】
原則としては、本発明による触媒を用いる蒸気改質プロセスにおいてタールを水素に変換する効果は、触媒とタールの接触時間が長くなるにつれて高くなる。
【0059】
また、有利には、本発明の触媒を用いる蒸気改質反応は、700℃より高い(より有利には、少なくとも750℃、さらに好ましくは、少なくとも775℃の)温度で、好ましくは700〜900℃、より好ましくは750〜850℃、例えば800〜850℃(典型的には、825℃付近)の温度で行われる。
【0060】
特に興味深い一実施形態によれば、本発明によるタールの蒸気改質のための方法は、有機化合物(特に、バイオマス由来のもの)の蒸気ガス化により得られた媒体の、タール含有ガス媒体としての処理のために適用されることができる。この種類の適用では、触媒は、タールを改質するために有用なだけでなく、幾つかの場合には、HS種の硫黄含有化合物又はアンモニアなどの媒体に存在する他の汚染物質の捕集を可能にすることも分かっている。
【0061】
本明細書で上述した通り、本発明の触媒には、タールの改質、及びバイオマスに由来する化合物の蒸気ガス化を行うために活性であるという利点がある。したがって、触媒は、有利には、バイオマス由来の有機化合物の蒸気ガス化の実施、及びこの反応中に形成されたタールの全部又は一部の同時変換のために単一触媒として使用されることができる。
【0062】
この点において、本発明の触媒には、下記反応スキーム:
CO+HO→CO+H
に従って、いわゆるガス−水変換反応において活性であるという利点があり、蒸気ガス化中に形成されたCOの変換を通じて水素の割合を増加させることができる。それにより、本発明の触媒は、ガス−水変換反応に効力のないニッケル触媒とは特に異なる。
【0063】
別の特定の態様によれば、本発明の対象は、バイオマス由来の有機化合物、蒸気及び本発明の触媒を接触させることにより行われる、前記有機化合物の蒸気ガス化のための方法である。
【0064】
本発明の触媒を用いる上記蒸気ガス化及び蒸気改質法では、有利には、この触媒は、流動床又は循環流動床の形態で使用されることができる。また、固定床の形態で使用されることもできるが、この実施形態は、ほとんど有効ではないことが概ね分かっている。
【0065】
また、本発明の触媒を用いる蒸気ガス化及び蒸気改質法には、検討中の反応においてそれ自体で使用される触媒の予備活性化を必要としないという無視できない利点がある。本発明者らによる研究では、これに関して、触媒の予備還元により進行させる必要がなく、タール改質反応における触媒の活性及びこの反応における水素収率が、予備還元が起こるか否かによらず概ね不変なままであることが証明されることができる。触媒の事前活性化を行う必要がないことは、本発明の触媒系の重要な利点になることを意味し、より詳細に換言すれば、その利点は、これらの触媒を用いる方法の実用性及び作業コストに関する重要な利点である。
【実施例】
【0066】
下記で説明される実施形態の例から、本発明の様々な態様及び利点が、さらに明らかになるであろう。
【0067】
実施例
下記実施例1及び2で定義された条件下で、本発明による2つの触媒C1及びC2を調製して、実施例3及び4で説明されているプロトコルに従って試験した。
【0068】
触媒C1及びC2の調製のために、担体として、400〜600μmの粒径を有し、かつ1,600℃で予め焼成されている、Magnolithe社から入手したカンラン石を使用した。使用したカンラン石の元素質量組成は下記の通りである:
30.5質量%のMg 7.1質量%のFe 19.6質量%のSi
0.20質量%のCa 0.07質量%のAl 0.08質量%のCr
【0069】
実施例1:触媒C1(10%Fe/カンラン石)の調製
担体の含浸
20gの上記カンラン石を、2.1モル/Lの濃度を有する硝酸(第二)鉄Fe(NO・9HOの水溶液20mLと混合した。
【0070】
乾燥
大気圧で、回転エバポレーター内において、油浴により120℃の温度で2時間に亘って加熱しながら、水を蒸発させ、その後、混合物を100℃で15時間(終夜)に亘って乾燥した。
【0071】
熱処理
先の乾燥工程から得られた材料を、空気中において1,000℃の温度で4時間に亘って加熱処理した。
【0072】
実施例2:触媒C2(20%Fe/カンラン石)の調製
より濃度の高い(すなわち5モル/Lの濃度を有する)硝酸(第二)鉄Fe(NO・9HOの水溶液を用いて担体の含浸を行うこと以外は、触媒C1と同条件下で、本実施例を行なった。
【0073】
このように調製された触媒C1及びC2を使用して、2種類のタール(すなわち、バイオマスの蒸気ガス化プロセスにおいて形成されるタールの代表的なものであるトルエン及び1−メチルナフタレン)の触媒的蒸気改質反応を(事前に予備還元することなく)行なった。
【0074】
実施例3:トルエンの蒸気改質
実施例3.1
12体積%のHO;
22.3体積%のH
20体積%のN;及び
45体積%のAr
の組成を有し、かつトルエンを(バイオマスガス化プロセス中に得られる典型的なタール含有物の上限範囲と一致する)30g/Nmの濃度で含むガス状媒体を825℃で処理するために触媒C1及びC2を使用した。
【0075】
トルエンの蒸気改質を行うために、下記の理論上の変換反応:
(トルエン)+14HO→18H+7CO
1110(1−メチルナフタレン)+22HO→27H+11CO
を行うための化学量論量と一致する濃度で、水蒸気をガス状媒体に加えた。
【0076】
媒体中に存在する水素は、1.5:1のH/HOモル比を有する。
【0077】
次に、このように調製されたガス状混合物を、床反応器内において825℃で、400mgの触媒(それぞれ、C1又はC2)と接触させた。
【0078】
XRD、メスバウワー顕微鏡及びTPR分析によって、これらの条件下では、触媒はカンラン石構造の基部を常に含み、特にその表面に存在する鉄(III)は、金属鉄相(Fe)の発現のために大体において消えることが示された。触媒C1については、存在する鉄は、金属鉄として基本的に(40%を超えて)分布しており、鉄(II)は、カンラン石構造内に部分的に(25%を超えて)存在しており、鉄(II)の他の部分については(15%を超える)酸化物の形態で存在している。触媒C2については、鉄の分布は、下記:金属鉄として55%超、カンラン石構造内の鉄(II)として14%超、及び酸化鉄の形態の鉄(II)として14%超である。残分は、鉄(III)形態である。
【0079】
触媒C1(10%Fe/カンラン石)によって、トルエンについては90%の変換率が得られ、水素収率は60%であった。これらの変換率及び収率は、30時間の全試験時間の初めから終わりまで、時間によって変わらないことが分かった。
【0080】
触媒C2(20%Fe/カンラン石)によって、得られたトルエンの変換率は、かなり高く、すなわち95%であり、水素収率は60%のオーダーであり、これらの変換率及び収率も、試験が行われている30時間に亘って変わらなかった。
【0081】
比較のために、再び同一条件下で、ガス混合物をカンラン石のみで処理した。これらの条件下で得られたトルエン変換率は31%であり、水素収率は30%であった。これらは、触媒C1及びC2により得られた値より大幅に低いものである。
【0082】
触媒C1により得られた結果は、変換率及び収率に関しては、仏国特許出願第2809030号明細書で例示されているNi/カンラン石触媒(それはカンラン石上に3.9%のニッケルを含む)を同一条件下で用いて得られたものと等しいことに注目すべきである。
【0083】
実施例3.2
また、触媒C1及びC2を同一温度で使用して、流動床におけるバイオマスのガス化から得られた混合物と同様のガス混合物[その乾燥ガスの体積組成は、35%の水素、35%の一酸化炭素、17%の二酸化炭素、10%のメタン、3%のトルエン(すなわち、バイオマスガス化プロセス中に得られる典型的なタール含有物の上限範囲と一致する30g/Nm)であった]を処理した。
【0084】
水蒸気を、上記反応の化学量論量と一致する量(気体流中で25体積%、すなわち、14モルの水/トルエンのモル)でこの媒体に加え、トルエンのCO及びHへの変換反応を行なった。
【0085】
触媒C1(10%Fe/カンラン石)によって、ガス混合物が得られ、それが反応器(乾燥基体)を出たときの体積組成は、下記:46%の水素、28%の一酸化炭素、18%の二酸化炭素、10%のメタンであった。これは、少なくとも95%のトルエンの変換率と一致する。トルエンの変換率及びガスの組成は、30時間の試験が行なわれている全期間に亘って、時間によって変わらないことが分かった。
【0086】
実施例4:1−メチルナフタレンの蒸気改質
実施例4.1
触媒C1を使用して、36体積%のHO、20体積%のN及び43体積%のArの組成を有し、かつ1−メチルナフタレンを(バイオマスガス化プロセス中に得られた典型的なタール含有物の上限範囲と一致している)30g/Nm(1体積%)の濃度で含むガス混合物を825℃で処理した。
【0087】
蒸気改質を行なうために、蒸気を、化学量論量の3倍と一致する濃度(すなわち、66モルの水/1−メチルナフタレンのモル)でガス混合物に加えた。
【0088】
次に、大気圧下で固定床反応器内において825℃で、反応器の入口でのガス流速が3NL/hである状態で、このように調製されたガス混合物を400mgの触媒C1と接触させた。
【0089】
XRD、メスバウアー分光器及びTPR分析によって、これらの条件下では、カンラン石構造は維持されていることが示された。水のみが存在する場合には、触媒上に存在する鉄は、カンラン石構造体を基準として、(62%を超える)Fe、(13%を超える)FeO、及び(21%を超える)鉄(II)の形態で分布している。
【0090】
これらの条件下では、触媒C1によって、40%の1−メチルナフタレンの変換率、及び25%の水素収率を得た。これらの変換率及び収率は、8時間の試験時間の全期間に亘って変わらないことが示された。
【0091】
実施例4.2
実施例4.1と同じ温度、圧力及び流量の条件下で、触媒C2を使用して、12体積%のHO、20体積%のN及び68体積%のArの体積組成を有し、かつ30g/Nmの濃度の1−メチルナフタレン、及び化学量論量と一致する濃度の蒸気を含むガス混合物を825℃で処理した。
【0092】
そして、触媒C2は、1−メチルナフタレンについて25%の変換率、及び15%の水素収率を得ることを可能にした。これらの変換率及び収率は、8時間の試験の全期間に亘って、時間によって変わらないことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンラン石担体に鉄塩含有溶液を含浸し、次に400〜1,400℃、好ましくは600〜1,400℃の温度で、好ましくは面積によらず、含浸された担体を熱処理することにより得ることができる、鉄化合物含有層が堆積されているカンラン石系担体を含む触媒であって、該担体に堆積されている鉄の量は、該触媒の全質量に対して加えられた鉄元素の質量を基準として、少なくとも5%である、前記触媒。
【請求項2】
前記カンラン石は、式(Mg1−xFeSiO{式中、xは、0ではない数であり、かつ1未満であり、好ましくは0.01〜0.5である。}で表される、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記カンラン石は、カンラン石の全質量に対して:
28質量%〜35質量%のMg;
1質量%〜10質量%のFe;
18質量%〜22質量%のSi;
所望により、0.5質量%以下のNi;
所望により、0.5質量%以下のCa;
所望により、0.5質量%以下のAl;及び
所望により、0.5質量%以下のCr
を含む、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記カンラン石系担体は、100μm〜750μm、好ましくは250μm〜600μmの平均粒径を有する粉末の形態である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
前記担体に堆積されている鉄の量は、前記触媒の全質量に対して加えられた鉄元素の質量を基準として、10〜20%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
以下の逐次工程:
(A) カンラン石系担体に鉄塩含有溶液を含浸する工程;
(B) 工程(A)後に得られた、含浸された固体を乾燥する工程;
(C) 工程(B)後に得られた、乾燥された固体を、好ましくは空気中で、400〜1,400℃、好ましくは600〜1,400℃の温度で放置することにより、該乾燥された固体を加熱処理する工程
を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
【請求項7】
前記工程(A)で使用する溶液は、水溶液である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(A)で使用する鉄塩は、Fe(NOで表される硝酸(第二)鉄である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(C)の熱処理は、前記工程(B)から得られた乾燥された固体を、600〜1,400℃、好ましくは900〜1,100℃の温度で放置することにより行われる、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(C)の熱処理は、前記工程(B)後に得られた乾燥された固体を、請求項9に記載の温度で2〜10時間に亘って放置することにより行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ガス状媒体に存在するタールの蒸気改質方法であって、蒸気の存在下で、そして好ましくは水素の存在下で、該タールを請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒と接触させる、前記方法。
【請求項12】
蒸気及び水素の存在下で、H/HOモル比が1:1を超え、かつ2:1より低い状態で、前記触媒を前記タールと接触させる、請求項11に記載の蒸気改質方法。
【請求項13】
前記タールを含むガス状媒体は、例えばバイオマスに由来する、有機化合物の蒸気ガス化により得られる、請求項11又は12に記載の蒸気改質方法。
【請求項14】
バイオマスに由来する有機化合物を蒸気ガス化する方法であって、該有機化合物、蒸気及び請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒を流動床の形態で接触させる、前記方法。

【公表番号】特表2012−527345(P2012−527345A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511326(P2012−511326)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050962
【国際公開番号】WO2010/133801
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【出願人】(509257684)ユニベルシテ ドゥ ストラスブール (2)
【Fターム(参考)】