説明

バイオリアクター生産性を向上させるポジティブサイトモジュリン

本発明は、転写後のタンパク質へのmRNA翻訳工程を制御することによるタンパク質合成の活性化に関する。前記タンパク質翻訳を活性化することができるポリペプチドが提供される。本発明の主要な産業上の用途は、バイオリアクターによる場合を含む培養細胞における組換えタンパク質生産の制御である。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、転写後のタンパク質へのmRNA翻訳工程を制御することによるタンパク質合成の活性化に関する。本発明の主要な産業上の用途は、バイオリアクターによるタンパク質生産の制御である。
【0002】
背景技術
真核細胞を用いた組換えタンパク質の生産の向上は、特にバイオリアクターにおけるこれらの細胞の使用に、主として重要である。バイオリアクターによるタンパク質の生産は、2003年〜2010年の間に約4倍に増加すると予想されている(製薬企業のArthur Doolittle Office−LEEMによって2004年に示された"Optimisation de l'attractivite de Ia France pour la production biologique")。
【0003】
細胞系による自然発生的in vivoタンパク質生産(The naturally occuring in vivo production of proteins)は、現在、当業者には周知である:プレメッセンジャーRNA(プレmRNA)が核内でゲノム配列から転写される。次いで、それらはスプライシングプロセス、3’ポリアデニル化プロセスおよび5’キャッピングプロセスによってmRNAに成熟され、続いて細胞質に輸送され、そこでそれらは翻訳機構によって用いられて、タンパク質合成を命令する。
【0004】
mRNAの5’末端に付加されたキャップはメチル化グアノシン三リン酸である。細胞質において、この修飾ヌクレオチドは、mRNAの5’末端への小さな40Sリボソームサブユニットの補充に必要なタンパク質複合体eIF4Fによって特異的に認識される。一度補充されたら、その40Sリボソームサブユニットは、メチオニンコドン(AUG)に遭遇するまでmRNAに沿って移動する。第二のリボソームサブユニット(60S)の結合後にこのコドンにおいて翻訳が開始される。従って、この一連の事象の効率を増進するいずれの分子も翻訳効率を増進するであろう。少数の細胞ウイルスmRNAの場合、翻訳開始に5’キャップをショートカットするメカニズムを利用する。本発明の概念はこの翻訳開始モードを利用しないため、本明細書ではそのメカニズムを記載しない。前記複合体eIF4Fは、5’キャップと結合するタンパク質eIF4E、およびeIF4Gなどのいくつかの翻訳開始因子を含む(Wickens et al, 2000)。この後者の因子は、前記eIF4F複合体の集合を可能にするプラットフォームとしての役割を果たす。前記タンパク質eIF4Gは、いくつかの他のタンパク質、既に記述したeIF4E、およびmRNAの3’末端に付加されるポリアデノシン配列と結合するポリ(A)結合タンパク質(PABP)と結合することができる(図1参照)。PABPとeIF4Gとの結合により、mRNAの環状化、前記eIF4F複合体の安定化およびキャップ依存性翻訳のシミュレーション(simulation)がもたらされる(Wickens et al., 2000)。前記eIF4F複合体を不安定にするいずれの事象も翻訳減少を引き起こす。従って、mRNAによる3’ポリ(A)テールの喪失は、そのmRNAと結合するPABPの喪失をもたらし、それがmRNAの翻訳減少に関連する(Kahvejian et al., 2001; Kahvejian et al., 2005)。それに対して、mRNAの翻訳は、ポリ(A)テールの長さが増加する(mRNAと結合するPABP数の増加をもたらす事象)ときに刺激を受ける(Richter, 1999)。この場合、ポリ(A)テールの長さの増加は、eIF4Gと相互作用することが可能である結合PABP数の増加につながり、それが次には翻訳を刺激すると
考えられる。注目すべきは、PABPとポリ(A)テールとの結合が、上記した翻訳への影響の他に、mRNAも安定化することである。PABPが枯渇した細胞では、翻訳が減少し、mRNAの分解が増加する。
【0005】
自然発生的in vivoタンパク質生産の多くの態様は周知であるが、この知識を産業上の利用に応用する、例えば組換えタンパク質の大量生産を推進する措置は、一般化された形で講じられていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、ロタウイルスに存在する非構造タンパク質3の使用が、真核生物組換えタンパク質生産の産業上の要件に応じることができることを見出した。
【0007】
ロタウイルス(レオウイルス科(Reoviridae family))は哺乳類細胞に感染し、内因性翻訳機構を利用して、ウイルスタンパク質を合成する(Padilla-Noriega et al., 2002)。ウイルスmRNAは5’キャップを有するが3’ポリ(A)テールは有していない。その代わりに、ウイルスmRNAは、ウイルスmRNAの3’末端の特異的配列と、そしてタンパク質eIF4Gと結合する、PABPのようなタンパク質NSP3(非構造タンパク質3)をコードする(Piron et al., 1998)。NSP3とeIF4Gとの相互作用は、PABPと相互作用するeIF4Gの同じドメインによって起こる(Piron et al., 1998)。加えて、eIF4G−PABP相互作用に関しては、複合体NSP3−eIF4GはeIF4GとeIF4Eとの相互作用を安定化し、その結果としてeIF4Eとキャップとの相互作用を安定化する(Vende et al., 2000)。従って、PABPを翻訳刺激因子としてのその役割においてタンパク質NSP3に機能的に置き換えることができる。RNAおよびeIF4GとのNSP3の相互作用は2つの別のドメインによって起こる(Piron et al., 1999)。適当なリガンドと結合するこれらのドメイン各々の結晶構造は公開されている(Deo et al., 2002; Groft and Burley, 2002)。
【0008】
本発明者らは、機能的に異なる2つの部分、RNAと特異的に相互作用することができるドメインおよびエフェクタードメインからなるハイブリッドタンパク質分子(本明細書においてキメラポリペプチドまたはタンパク質とも呼ぶ)であるサイトモジュリン概念(ポジティブサイトモジュリン、またはサイトブーストプロジェクト(cytoboost project))を開発した。RNA結合ドメインは、標的配列を含むmRNAと結合する。このドメインは、前記分子を標的mRNAに特異的に結合するテザーとしての役割を果たす。第二のドメインはエフェクタードメインであり、サイトブーストプロジェクトでは、このエフェクタードメインが標的mRNAの翻訳刺激を引き起こす。テザリング(RNA結合)ドメインまたはエフェクタードメインのいずれかを変えることによって、それぞれ、サイトモジュリンのRNA標的または得られる効果を変えることができる。
【0009】
図のように、サイトモジュリンは、機能的に異なる2つのドメイン:テザリングドメインおよびエフェクタードメインからなるハイブリッド分子である(図2参照)。
【0010】
サイトモジュリンのテザリングドメインは、配列特異性を有するmRNAと結合する。これは、サイトモジュリンが翻訳調節因子としてのその機能を発現し、または標的とするmRNAの安定性を発現するのに必要である。テザリングドメインはいくつかの方法によって得ることができる。バイオリアクターによる生産を増加するためにサイトモジュリンを使用する本ケースでは、サイトモジュリンは、テザリングドメインおよび標的配列の選択においてより大きな自由を与える組換えmRNAを認識するものでなければならない。真核細胞、ウイルス、バクテリオファージおよび細菌などの多様な生物では、ある一定数のRNA結合タンパク質が報告されている。真核細胞で通常発現されるタンパク質由来のテザリングドメインの使用は、サイトモジュリンの特異性の問題を引き起こす。これらの分子は、組換え標的mRNAと結合するだけでなく、そのタンパク質の内因性標的である細胞mRNAとも結合するであろう。バクテリオファージのゲノムによってコードされるRNA結合タンパク質が選択されてきた。
【0011】
ポジティブサイトモジュリンのエフェクタードメインは、翻訳が刺激を受けるように翻訳機構と相互作用しなければならない。この相互作用を達成するためには、前記エフェクタードメインが翻訳機構のリボ核タンパク質複合体の形成を安定化または支援すべきである。翻訳制御に関する調査の現状から、主として5’キャップの認識または40Sリボソームサブユニットの補充のレベルにおいて調節が存在することが示されている。
【0012】
本発明のポジティブサイトモジュリンは、3つのドメイン:
二量体としてRNAと結合するN末端ドメイン;
その二量体化に重要であると思われる中央ドメイン;
eIF4Gと結合するC末端ドメイン;
からなるタンパク質NSP3由来のエフェクタードメインに基づく。
【0013】
このようにして、本発明者らは、タンパク質翻訳を活性化することができる「ポジティブサイトモジュリン」(「サイトブーストプロジェクト」)または「ポジティブキメラポリペプチド」を得た。真核細胞における標的タンパク質の発現を特異的に増加させる活性分子(ポジティブサイトモジュリン)は本発明の対象である。これらの分子は、適当な構造修飾によって最大化したタンパク質生産のために、バイオリアクター条件に有効である。
適用するために対象となる遺伝子およびポジティブサイトモジュリンを安定的に発現する細胞系統を受け入れる発現プラスミドを含むキットの形で産業/経済開発が提案されている。
【0014】
本発明において使用されるNSP3タンパク質は、鳥類ロタウイルスA、好ましくは鳥類ロタウイルスAvRV−1、鳥類ロタウイルスCh−1、鳥類ロタウイルスPO−13、鳥類ロタウイルスRK3、鳥類ロタウイルスTy−1、鳥類ロタウイルスTy−2、または鳥類ロタウイルスTy−3のNSP3から選択してよい。本発明において使用されるNSP3タンパク質は、ウシロタウイルスA(ウシロタウイルス993/83またはウシロタウイルスRFなど)、ヤギロタウイルスA、ウマロタウイルスA、ヒトロタウイルスA、好ましくはヒトロタウイルス(血清型P13/株1845)、ヒトロタウイルス1、ヒトロタウイルス2、ヒトロタウイルス4、ヒトロタウイルスDG8、ヒトロタウイルスG1、G10、G12、G2、G3、G4、G6、G8、またはG9、ヒトロタウイルスP1B、ヒトロタウイルスP3、ヒトロタウイルスRMC321、あるいは型不明ヒトロタウイルスのNSP3タンパク質であってもよい。NSP3タンパク質は、ウサギ(lapine)ロタウイルス(ウサギ(lapine)ロタウイルス株BAP(野生型)、ウサギ(lapine)ロタウイルス株BAP−2、ウサギ(lapine)ロタウイルス株C−11、ウサギ(lapine)ロタウイルス株R−2、またはロタウイルス株ALAなど)、またブタロタウイルスA、好ましくはブタロタウイルスA株134/04−15、ウサギロタウイルス、好ましくはウサギロタウイルス(株ALABAMA)、およびロタウイルス5血清型G2、ロタウイルスG8、ロタウイルスサブグループ1、ロタウイルスサブグループ2、サルロタウイルスA/SA11、サル11ロタウイルス(血清型3/株SA11−Patton)、サル11ロタウイルス(血清型3/株SA11−Ramig)、サルロタウイルス、サルロタウイルスA/SA11−4F、サルロタウイルスA/SA11−both、サルロタウイルスA/SA11−C14、サルロタウイルスA/SA11−FEM、サルロタウイルスA/SA11−SEM、ブタ(swine)ロタウイルス株S8、あるいは未分類ロタウイルスA(イヌロタウイルス、イヌロタウイルス血清型P13/株K9、イヌロタウイルス株CU−1、子ヒツジロタウイルス、アカゲザルロタウイルス、ロタウイルスGB−503、ロタウイルスGB−5737、ロタウイルスRattG1、ロタウイルス株1321、ロタウイルス株TUCH、およびロタウイルスTK159など)のNSP3からさらに選択してよい。
【0015】
よって、NSP3タンパク質は、上記の非限定的なリストのあらゆる群Aレトロウイルスから誘導してよい。
【0016】
特に、本発明において使用されるNSP3は、群Aウシロタウイルス株RFのNSP3タンパク質であり、そのアミノ酸配列は、アドレスhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/においてCAA79754およびZ21639(ヌクレオチド配列)という番号でオンラインでアクセス可能である。これらのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号46および配列番号47として本明細書において開示されている。
【0017】
本発明において使用してよい別の好ましいNSP3は、群Aロタウイルス株サルSA11、好ましくはサルロタウイルスA/SA11−C14のものであり、そのアミノ酸配列は、アドレスhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/においてAAL58537およびAY065843(ヌクレオチド配列)という番号でオンラインでアクセス可能である。これらのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号29および配列番号30として本明細書において開示されている。
【0018】
さらに、本発明者らは、前記NSP3タンパク質が他のタンパク質とも結合することを避けるために、本発明の翻訳ポジティブサイトモジュリン(「キメラポリペプチド」)の効果的な刺激に必要な最小領域を決定した。ポジティブサイトモジュリンの最大特異性はこのようにして決定された。
【0019】
本発明者らは、群Aウシロタウイルス株RFのNSP3タンパク質のいくつかの特定の断片がタンパク質翻訳を活性化/刺激する能力を有することを示した。これらのペプチドは以下である:アミノ酸10−313;150−313;206−313;229−313;250−313;272−313;283−313、およびアミノ酸6−313;146−313;202−313;225−313;246−313;268−313;279−313。これらの好ましいペプチド総ての構成概要を図6に示し、そのアミノ酸配列を配列表の配列番号32〜配列番号45に示している。前記配列番号32〜45の配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列も本発明の範囲内である。
【0020】
群Aウシロタウイルス株RFのNSP3タンパク質の別の断片は、配列番号46の配列のアミノ酸163〜313に対応する。
【0021】
同様に、群Aサルロタウイルス株A/SA11−C14のNSP3タンパク質のいくつかの特定の断片がタンパク質翻訳を活性化/刺激する能力を有する。これらのペプチドは以下である:アミノ酸10−315;150−315;206−315;229−315;250−315;272−315;283−315、アミノ酸10−313;150−313;206−313;229−313;250−313;272−313;283−313、アミノ酸6−315;146−315;202−315;225−315;246−315;268−315;279−315、およびアミノ酸6−313;146−313;202−313;225−313;246−313;268−313;279−313。サルロタウイルスA/SA11−C14株から誘導されたこれらペプチドの構成概要を図5に示し、そのアミノ酸配列を配列表の配列番号1〜配列番号28に示している。前記配列番号1〜28の配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列も本発明の範囲内である。
【0022】
下記表3では、一部のロタウイルス群A NSP3タンパク質についての同一性スコアを示している。
【0023】
タンパク質生産を増加するのに必要な最小領域は、サイトモジュリンの効果の変調を目的とした修飾を行うために用いられる。バイオリアクターにおいて使用するには効率を高めることが重要である。NSP3とeIF4Gとの界面またはその界面の構造形成のいずれかに関与するアミノ酸の部位特異的突然変異誘発は、これら2つのタンパク質の相互親和性に影響を及ぼし、それゆえに翻訳が刺激を受ける程度に影響を及ぼすはずである。
【発明の具体的説明】
【0024】
第一の態様において、本発明は、タンパク質翻訳を活性化することができる、配列番号32のアミノ酸配列もしくは配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する配列、またはその断片のうちのいずれか1つを含んでなるまたはからなるポリペプチドを対象とする。
【0025】
タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドとの用語は、アミノ酸配列またはアミノ酸配列を含むそれらの誘導体もしくは類似体を指すために、本明細書において区別せずに用いられる。同じように、核酸、ヌクレオチド酸、ポリヌクレオチドなどの表現は、核酸配列を指すために、本明細書において区別せずに用いられる。
【0026】
本発明における2アミノ酸または核酸配列間の同一性パーセントとは、最良のアライメント後に得られた、比較する2配列間の同一アミノ酸残基またはヌクレオチドの割合を意味する;この割合は純粋に統計的であり、2配列間の違いはランダムに分布し、それらの全長にわたっている。最良のアライメントまたは最適アライメントは、例えば本明細書において後に算出される、比較する2配列間の最高の割合の同一性に対応するアライメントである。2核酸またはアミノ酸配列間の配列比較は、最適アライメント後にこれらの配列を比較することにより通常行われ、該比較は、配列類似性の局所領域を同定および比較するために、1つのセグメントについてまたは1つの「比較ウインドウ」について行われる。比較のための配列の最適アライメントは、手動でまたはSmith and Waterman (1981)の局所相同性のアルゴリズム(Ad. App. Math. 2:482)を利用して、Neddleman and Wunsch (1970)の局所相同性のアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:443)を利用して、Pearson and Lipman (1988)の類似性検索法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444)を利用して、これらのアルゴリズムを用いたコンピューターソフトウェア(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)を利用して行うことができる。
【0027】
2つのアミノ酸または核酸配列の間の同一性パーセントは、「比較ウインドウ」(この比較ウインドウでは比較する該核酸またはアミノ酸配列の領域は、これらの2配列間での最適アライメントのための参照配列に関して付加または欠失を含んでなる可能性がある)を用いて最善の方法で、これらの2つのアライメントした配列を比較することにより決定される。これらの2配列間の同一性パーセントを得るためには、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基が2配列間で同一である位置の数を決定し、この同一位置数を「比較ウインドウ」内の位置総数で割り、得られた結果に100を掛けることによって同一性パーセントを算出する。
【0028】
好ましい実施態様では、配列番号32のアミノ酸配列もしくは配列番号32と少なくとも70%の同一性を有する配列の前記断片は、配列番号33の配列、および配列番号33と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される。
【0029】
別の好ましい実施態様では、配列番号32のアミノ酸配列もしくは配列番号32と少なくとも70%の同一性を有する配列の前記断片は、配列番号34および配列番号35の配列、ならびに配列番号34および配列番号35と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される。
【0030】
別の好ましい実施態様では、配列番号32のアミノ酸配列もしくは配列番号32と少なくとも70%の同一性を有する配列の前記断片は、配列番号36および配列番号37の配列、ならびに配列番号36および配列番号37と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される。
【0031】
別の好ましい実施態様では、配列番号32のアミノ酸配列もしくは配列番号32と少なくとも70%の同一性を有する配列の前記断片は、配列番号38および配列番号39の配列、ならびに配列番号38および配列番号39と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される。
【0032】
別の好ましい実施態様では、配列番号32のアミノ酸配列もしくは配列番号32と少なくとも70%の同一性を有する配列の前記断片は、配列番号40および配列番号41の配列、ならびに配列番号40および配列番号41と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される。
【0033】
別の好ましい実施態様では、配列番号32のアミノ酸配列もしくは配列番号32と少なくとも70%の同一性を有する配列の前記断片は、配列番号42および配列番号43の配列、ならびに配列番号42および配列番号43と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される。
【0034】
別の好ましい実施態様では、配列番号32のアミノ酸配列もしくは配列番号32と少なくとも70%の同一性を有する配列の前記断片は、配列番号44および配列番号45の配列、ならびに配列番号44および配列番号45と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される。
【0035】
好ましくは、配列番号32〜配列番号45の配列のうちのいずれか1つと少なくとも70%の同一性を有する前記配列は、次のロタウイルスのうちのいずれか1つに由来する:ウシロタウイルスA、ヤギロタウイルスA、ウマロタウイルスA、ヒトロタウイルスA、ウサギ(lapine)ロタウイルス、ブタロタウイルスA、ウサギロタウイルス、ロタウイルス5血清型G2、ロタウイルスG8、ロタウイルスサブグループ1、ロタウイルスサブグループ2、サルロタウイルスA/SA11、サルロタウイルスA/SA11−C14およびブタ(swine)ロタウイルス株S8。好ましくは、前記配列はサルロタウイルスA/SA11−C14(受託番号:AAL58537)に由来し、対応する好ましい断片は上記および図5に開示されている。
【0036】
上記に定義した活性化ポリペプチドは、好ましくは細胞系において、タンパク質翻訳を非特異的に活性化するために使用されるが、該活性化ポリペプチドは、例えばUCHIDA et al (2002)に記載されている従来の方法に従ってウサギ網状赤血球溶解物からなる細胞mRNA抽出物をインキュベートすることによるなど、無細胞系においてタンパク質翻訳を活性化するためにも使用され得る。
【0037】
第二の態様において、本発明は、対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳を特異的に活性化することができるキメラポリペプチドであって、配列番号46の配列もしくは配列番号46と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する配列の非構造タンパク質3(NSP3)またはその断片のうちのいずれか1つを含んでなりまたはからなり、該NSP3またはその断片のうちのいずれか1つがRNA結合タンパク質と融合したキメラポリペプチドに関する。
【0038】
上記に定義したキメラポリペプチドは、対応するタンパク質において対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳を特異的に活性化するために使用される。
【0039】
好ましくは、NSP3タンパク質の前記断片は、配列番号32のアミノ酸配列もしくは配列番号32と少なくとも70%の同一性を有する配列、またはその断片のうちのいずれか1つを含んでなるまたはからなる、本発明のポリペプチドである。好ましくは、前記断片は、配列番号33〜配列番号45の配列、および配列番号33〜配列番号45の配列と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される。
【0040】
本発明の別の好ましいキメラポリペプチドは、配列番号48の配列または配列番号48と少なくとも70%の同一性を有する配列を含んでなるまたはからなる。
【0041】
本発明のキメラポリペプチドのRNA結合タンパク質は、下記表1に開示されるタンパク質のうちの1つであってよい:
【0042】
【表1】

【0043】
よって、さらなる一実施態様では、本発明は、前記RNA結合タンパク質がMS2CP、N、IRPおよびUlAからなる群から選択される、本発明のキメラポリペプチドに向けられる。好ましくは、前記RNA結合タンパク質は、二量体化する能力を保有するが凝集を防止する突然変異すなわち欠失を含むMS2CP(Peabody and Ely, 1992; Le Cuyer et al, 1995)または上記欠失突然変異を含むまたは含まない2つのMS2CPコード配列の遺伝子融合物(Peabody and Lim, 1996)である。
【0044】
表1に記載されていない他のRNA結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0045】
有利には、選択されたRNA結合タンパク質は前記キメラポリペプチドのN末端に局在するが、前記キメラポリペプチドのC末端に局在してもよい。
【0046】
前記キメラポリペプチドでは、前記RNA結合タンパク質は前記エフェクタードメインと直接融合されていてもよく、これは、
(i)前記RNA結合タンパク質が前記キメラポリペプチドのN末端部分に局在する場合には、前記RNA結合タンパク質のC末端位置に局在する最後のアミノ酸は、前記エフェクタードメインのN末端位置に局在するアミノ酸と、好ましくは通常のペプチド結合により、化学的に結合し;または
(ii)前記RNA結合タンパク質が前記キメラポリペプチドのC末端部分に局在する場合には、前記エフェクタードメインのC末端位置に局在するアミノ酸は、前記RNA結合タンパク質のN末端位置に局在するアミノ酸と、好ましくは通常のペプチド結合により、化学的に結合する
ということを意味する。
【0047】
別の実施態様では、前記RNA結合タンパク質と前記エフェクタードメインは互いに直接結合しておらず、それどころか前記キメラポリペプチドでは好ましくは疎水性であるスペーサーアミノ酸配列または「リンカー」によって分離されている。前記スペーサーアミノ酸配列は、そのアミノ酸分子のフレキシブル領域を構成するのに十分なサイズを有し、前記RNA結合タンパク質の相対移動を可能にする。前記スペーサー配列は3〜50アミノ酸長間、好ましくは5〜30アミノ酸長間、最も好ましくは5〜20アミノ酸長間である。好ましくは、前記スペーサー配列またはスペーサーペプチドが疎水性である場合には、前記スペーサーペプチドは前記ポリペプチドが細胞膜を通るのを容易にする。かかる場合には、前記スペーサーペプチドは大半の疎水性アミノ酸(アミノ酸バリン、ロイシンまたはイソロイシンなど)を含む。
【0048】
この実施態様では、前記スペーサーペプチドは、その配列中に好ましくは少なくとも50%の疎水性アミノ酸、より好ましくは少なくとも60%の疎水性アミノ酸、最も好ましくは少なくとも80%の疎水性アミノ酸を含んでなる。
【0049】
特定の実施態様では、前記スペーサーペプチドは、3〜50個のアラニンアミノ酸、好ましくは5〜30個のアラニンアミノ酸、より好ましくは5〜20個のアラニンアミノ酸、最も好ましくは5〜10個のアラニンアミノ酸を含んでなるポリ(アラニン)アミノ酸鎖である。
【0050】
別の実施態様では、前記スペーサーペプチドは、3〜50個のアミノ酸、最も好ましくは5〜10個のアミノ酸からなり、その配列はサイトモジュリンの機能を修飾しない。例えば、前記スペーサーペプチドは配列番号50の配列であってよい。
【0051】
さらに別の実施態様では、前記スペーサーペプチドは、サンプル中に存在する前記キメラポリペプチドの検出または精製を可能にするタグである。例えば、前記スペーサーペプチドは配列番号31の配列の「HA TAG」ペプチドであってよい。
【0052】
より好ましい実施態様では、配列番号32〜配列番号46の配列のうちのいずれか1つと少なくとも70%の同一性を有する前記配列は、次のロタウイルスのうちのいずれか1つに由来する:ウシロタウイルスA、ヤギロタウイルスA、ウマロタウイルスA、ヒトロタウイルスA、ウサギ(lapine)ロタウイルス、ブタロタウイルスA、ウサギロタウイルス、ロタウイルス5血清型G2、ロタウイルスG8、ロタウイルスサブグループ1、ロタウイルスサブグループ2、サルロタウイルスA/SA11、サルロタウイルスA/SA11−C14およびブタ(swine)ロタウイルス株S8。好ましくは、前記配列はサルロタウイルスA/SA11−C14(受託番号:AAL58537)に由来し、対応する好ましい断片は上記および図5に開示されている。
【0053】
好ましくは、本発明において使用されるNSP3タンパク質は、鳥類ロタウイルスA、好ましくは鳥類ロタウイルスAvRV−1、鳥類ロタウイルスCh−1、鳥類ロタウイルスPO−13、鳥類ロタウイルスRK3、鳥類ロタウイルスTy−1、鳥類ロタウイルスTy−2、または鳥類ロタウイルスTy−3のNSP3から選択される。本発明において使用されるNSP3タンパク質は、ウシロタウイルスA(ウシロタウイルス993/83など)、ヤギロタウイルスA、ウマロタウイルスA、ヒトロタウイルスA、好ましくはヒトロタウイルス(血清型P13/株1845)、ヒトロタウイルス1、ヒトロタウイルス2、ヒトロタウイルス4、ヒトロタウイルスDG8、ヒトロタウイルスG1、G10、G12、G2、G3、G4、G6、G8、またはG9、ヒトロタウイルスP1B、ヒトロタウイルスP3、ヒトロタウイルスRMC321、あるいは型不明ヒトロタウイルスのNSP3タンパク質であってもよい。NSP3タンパク質は、ウサギ(lapine)ロタウイルス(ウサギ(lapine)ロタウイルス株BAP(野生型)、ウサギ(lapine)ロタウイルス株BAP−2、ウサギ(lapine)ロタウイルス株C−11、ウサギ(lapine)ロタウイルス株R−2、またはロタウイルス株ALAなど)、またブタロタウイルスA、好ましくはブタロタウイルスA株134/04−15、ウサギロタウイルス、好ましくはウサギロタウイルス(株ALABAMA)、およびロタウイルス5血清型G2、ロタウイルスG8、ロタウイルスサブグループ1、ロタウイルスサブグループ2、サルロタウイルスA/SA11、サル11ロタウイルス(血清型3/株SA11−Patton)、サル11ロタウイルス(血清型3/株SA11−Ramig)、サルロタウイルス、サルロタウイルスA/SA11−4F、サルロタウイルスA/SA11−both、サルロタウイルスA/SA11−C14、サルロタウイルスA/SA11−FEM、サルロタウイルスA/SA11−SEM、ブタ(swine)ロタウイルス株S8、あるいは未分類ロタウイルスA(イヌロタウイルス、イヌロタウイルス血清型P13/株K9、イヌロタウイルス株CU−1、子ヒツジロタウイルス、アカゲザルロタウイルス、ロタウイルスGB−503、ロタウイルスGB−5737、ロタウイルスRattG1、ロタウイルス株1321、ロタウイルス株TUCH、およびロタウイルスTK159など)のNSP3からさらに選択してよい。
【0054】
好ましくは、本発明のキメラポリペプチドは、該キメラポリペプチドのその標的細胞の原形質膜の通過を可能とする輸送シグナルをさらに含んでなる。前記輸送シグナルは当業者には周知である。前記輸送シグナルは、例えば上記のようなスペーサーペプチドであってよい。
【0055】
第三の態様において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるまたはからなる核酸に関する。好ましくは、前記核酸は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの制御のための誘導性調節ポリヌクレオチドをさらに含んでなる。
【0056】
第四の態様において、本発明は、本発明のキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるまたはからなる核酸に関する。有利な実施態様では、前記核酸は、配列番号49の配列を含んでなるまたはからなる。好ましくは、前記核酸は、本発明のキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの制御のための誘導性調節ポリヌクレオチドをさらに含んでなる。
【0057】
本発明はまた、本明細書において定義したキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなり、誘導性調節ポリヌクレオチドとしても本明細書において開示されている、誘導シグナルまたは誘導剤の直接または間接作用に対して感受性が高い調節ポリヌクレオチドも含んでなる核酸にも関する。
【0058】
実際には、本発明のポジティブキメラポリペプチドによるある特定の予定標的タンパク質の翻訳の制御とは、細胞培養の特定の時間においては、例えばバイオリアクターにおいて、その標的タンパク質は生産されないが、一方、別の時間においては、その生産が逆に求められるということを意味する。好ましい誘導性調節系を下記表2に記載している:
【0059】
【表2】


【0060】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸を含んでなるベクターに関する。
【0061】
さらなる態様において、本発明は、キメラポリペプチドを安定的にまたは一時的に発現させる宿主細胞に関し、この宿主細胞は、該キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるもしくはからなる、本発明の核酸、または該核酸を含んでなるベクターを含んでなる。
【0062】
好ましくは、前記宿主細胞は、対象となる標的ポリヌクレオチドをコードする発現プラスミドをさらに含んでなる。
【0063】
本発明の意味における用語ベクターまたはプラスミドとは、1本または2本鎖形態であることは関係なく、環状または線状のDNAまたはRNA分子を意味する。
【0064】
本発明の組換えベクターは、好ましくは発現ベクターである。このベクターは細菌またはウイルス起源のベクターであってよい。
【0065】
どんな場合でも、本発明のポリペプチドまたはキメラポリペプチドをコードする核酸は、細胞におけるその発現の調節シグナルを含む1つまたはいくつかの配列の制御下にある。
発現制御配列および発現ベクターの選択は、宿主の選択に応じたものとなる。種々の発現宿主/ベクター組合せを使用してよい。本発明の好ましい細菌ベクターは、例えばベクターpBR322(ATCC N 37017)あるいはpAA223−3(Pharmacia, Uppsala, Sweden)およびpGEM1(PromegaBiotech, Madison, Wl, USA)などのベクターであってよい。他の市販のベクター、例えばベクターpQE70、qQE60、Pqe9(QUIAGEN)、psiX174、pBluescript SA、pNH8A、pMH16A、pMH18A、pMH46A、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTIおよびpSG(Stratagene)も挙げてよい。
【0066】
真核生物宿主に有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルスおよびサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含んでなるベクターが挙げられる。細菌宿主に有用な発現ベクターとしては、公知の細菌プラスミド、例えば大腸菌(E. coli)由来のプラスミド(col E1、pCR1、pBR322、pMB9およびそれらの誘導体を含む)、より幅広い宿主域のプラスミド、例えばM13および糸状一本鎖DNAファージが挙げられる。好ましい大腸菌ベクターとしては、λファージpLプロモーターを含むpLベクター(米国特許第4,874,702号)、T7ポリメラーゼプロモーターを含むpETベクター(Studier et al., Methods in Enzymology 185: 60-89, 1990)およびpSP72ベクター(Kaelin et al., 前掲)が挙げられる。酵母細胞に有用な発現ベクターとしては、2.mu.プラスミドおよびその誘導体。が挙げられる。昆虫細胞に有用なベクターとしては、pVL 941が挙げられる。植物細胞に有用な発現ベクターとしては、限定されるものではないが、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)およびタバコモザイクウイルス(TMV)が挙げられる。加えて、これらベクターには種々の発現制御配列のうちのいずれを使用してもよい。かかる有用な発現制御配列としては、前述の発現ベクターの構造遺伝子と関連する発現制御配列が挙げられる。有用な発現制御配列の例としては、例えば、SV40またはアデノウイルスの初期および後期プロモーター、lac系、trp系、TACまたはTRC系、ファージλの主要オペレーターおよびプロモーター領域、例えばpL、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の糖分解酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、例えば、Pho5、酵母α−接合系のプロモーターおよび原核または真核細胞およびそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが分かっている他の配列、ならびにその様々な組合せが挙げられる。
【0067】
本明細書に記載の本発明のポリペプチドを大量生産するためには、任意の好適な宿主を使用してよく、これらには、細菌、真菌(酵母を含む)、植物、昆虫、哺乳類、または他の適当な動物細胞もしくは細胞系統、ならびにトランスジェニック動物または植物が含まれる。さらに特には、これらの宿主には、周知の真核生物および原核生物宿主、例えば大腸菌、シュードモナス菌(Pseudomonas)、バチルス属細菌(Bacillus)、ストレプトミセス属の放線菌(Streptomyces)、真菌、酵母、昆虫細胞Spodoptera Frugiperda(SF9)など)、および動物細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)、マウスNS/O細胞、アフリカミドリザル細胞(COS1、COS7、BSC1、BSC40、およびBMT10など)、およびヒト細胞(ヒト胎児腎臓細胞(HEK293)など))の株、ならびに植物組織培養細胞も含まれ得る。
【0068】
当然、総てのベクターおよび発現制御配列が同様に十分に本発明のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を発現する機能を果たすとは限らないことは理解されるべきである。総ての宿主が同じ発現系で同様に十分に機能を果たすとも限らない。しかしながら、当業者ならば、必要以上に試験を行わずにこれらのベクター、発現制御系および宿主の中から選択し得る。
【0069】
ベクターへのポリヌクレオチド配列の挿入についての当技術分野で公知の方法のいずれを使用してもよい。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, J. Wiley & Sons, NY (1992)(これらの両方が引用することにより本明細書の一部とされる)参照。従来のベクターは、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を生産するためにポリヌクレオチド配列に機能しうる形で連結された適当な転写/翻訳制御シグナルからなる。本発明のポリペプチドまたはポリペプチド複合体の発現を制御するために、プロモーター/エンハンサーも使用してよい。プロモーターの活性化は、組織特異的であり得るしまたは代謝産物もしくは投与する物質によって誘導可能であり得る。かかるプロモーター/エンハンサーとしては、限定されるものではないが、ネイティブE2Fプロモーター、サイトメガロウイルス最初期プロモーター/エンハンサー(Karasuyama et al., J. Exp. Med., 169: 13 (1989));ヒトβ−アクチンプロモーター(Gunning et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 84: 4831 (1987);マウス乳腺癌ウイルス長末端反復配列(MMTV LTR)中に存在するグルココルチコイド誘導性プロモーター(Klessig et al., Mol. Cell. Biol, 4: 1354 (1984));モロニーマウス白血病ウイルスの長末端反復配列(MuLV LTR)(Weiss et al., RNA Tumor Viruses, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1985));SV40初期領域プロモーター(Bernoist and Chambon, Nature, 290:304 (1981));ラウス肉腫ウイルスのプロモーター(RSV)(Yamamoto et al., Cell, 22:787 (1980));単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 78: 1441 (1981));アデノウイルスプロモーター(Yamada et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 82: 3567 (1985))が挙げられる。
【0070】
哺乳類宿主細胞に適合する発現ベクターとしては、例えば、プラスミド;鳥類、ネズミおよびヒトレトロウイルスベクター;アデノウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクター;ならびに非複製ポックスウイルスが挙げられる。特に、複製欠損組換えウイルスは、複製欠損ウイルスしか産生しないパッケージング細胞系統において作製することができる。Current Protocols in Molecular Biology: Sections 9.10-9.14 (Ausubel et al., eds.), Greene Publishing Associcates, 1989参照。
【0071】
遺伝子導入系に用いる特定のウイルスベクターは、現在、十分に確立されている。例えば:Madzak et al., J. Gen . Virol, 73: 1533-36 (1992: パポーバウイルスSV40); Berkner et al., Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158: 39-61 (1992: アデノウイルス); Moss et al., Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158: 25-38 (1992: ワクシニアウイルス); Muzyczka, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158: 97-123 (1992: アデノ随伴ウイルス); Margulskee, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158: 67-93 (1992: 単純ヘルペスウイルス(HSV)およびエプスタイン−バーウイルス(HBV)); Miller, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158: 1-24 (1992: レトロウイルス); Brandyopadhyay et al., Mol. Cell. Biol., 4: 749-754 (1984: レトロウイルス); Miller et al., Nature, 357: 455-450 (1992: レトロウイルス); Anderson, Science, 256: 808-813 (1992: レトロウイルス)(これらの総ては引用することにより本明細書の一部とされる)参照。
【0072】
本発明のポリペプチドをコードする核酸は、従来のトランスフェクション技術(例えば、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクションなど)により、in vitro培養下で増殖している真核細胞に導入することができる。核酸はまた、例えばin vivoでの細胞への核酸の導入に好適な送達メカニズム(例えばレトロウイルスベクター(例えば、Ferry, N et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8377-8381;およびKay, M. A. et al. (1992) Human Gene Therapy 3:641-647参照)、アデノウイルスベクター(例えば、Rosenfeld, M. A. (1992) Cell 68:143-155;およびHerz, J. and Gerard, R. D. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2812-2816参照)、受容体媒介によるDNA取り込み(例えば、Wu, G. and Wu, C. H. (1988) J. Biol. Chem. 263:14621; Wilson et al. (1992) J. Biol. Chem. 267:963-967;および米国特許第5,166,320号参照)、直接DNA注入(例えば、Acsadi et al. (1991) Nature 332:815-818;およびWolff et al. (1990) Science 247: 1465-1468参照)または粒子衝撃(例えば、Cheng, L. et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:4455-4459;およびZelenin, A. V. et al. (1993) FEBS Letters 315:29-32参照))を適用することにより、in vivoで細胞に移入することもできる。組換え宿主細胞の培養および組換えタンパク質の生産に使用するのに適切な培養培地は当業者には周知である。
【0073】
さらなる態様において、本発明は、本発明のキメラポリペプチド、または該キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるもしくはからなる、本発明の核酸、または該核酸を含んでなるベクター、または本発明の宿主細胞を含んでなる、対象となる標的ポリヌクレオチドのタンパク質翻訳制御系に関する。好ましくは、前記タンパク質翻訳制御系は、対象となる標的ポリヌクレオチドをコードする発現プラスミドをさらに含んでなる。
【0074】
さらなる態様において、本発明は、対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳をin vitroで制御するための方法に関し、この方法は、次の工程:
(a)宿主細胞に対象となる該標的ポリヌクレオチドを導入する工程;
(b)工程(a)において得られた組換え宿主細胞を適切な培養培地で培養し、これにより該宿主細胞が対象となる該標的ポリヌクレオチドを安定的に発現することを可能とする工程;および
(c)対象となる該標的ポリヌクレオチドの発現を活性化するために、該培養培地に本発明のキメラポリペプチドを加える工程
を含んでなる。
【0075】
さらなる態様において、本発明は、対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳をin vitroで制御するための方法に関し、この方法は、次の工程:
(a)宿主細胞に、対象となる該標的ポリヌクレオチド、ならびに前記キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるもしくはからなる、本発明の核酸、または該核酸を含んでなるベクターを導入する工程;
(b)工程(a)において得られた組換え宿主細胞を適切な培養培地で培養し、これにより該宿主細胞が対象となる該標的ポリヌクレオチドを安定的に発現することを可能とする工程;および
(c)該培養培地に該誘導性調節ポリヌクレオチドと相互作用することができる薬剤を加え、これにより該キメラポリペプチドをコードする核酸の発現の調節を可能とする工程
を含んでなる。
【0076】
さらなる態様において、本発明は、本発明のキメラポリペプチド、または該キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるもしくはからなる、本発明の核酸、または該核酸を含んでなるベクターを含んでなる、対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳を制御するためのキットに関する。
【0077】
好ましくは、前記キットは、対象となる標的ポリヌクレオチドを含んでなる組換えベクターをさらに含んでなる。
【0078】
さらなる態様において、本発明は、本発明の宿主細胞を含んでなる、対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳を制御するためのキットに関する。好ましくは、前記キットは、対象となる標的ポリヌクレオチドを含んでなる組換えベクターをさらに含んでなる。
【0079】
キットは、一般に、前記検出を行うためにまたは診断アッセイを行うために必要な2つ以上の成分を含んでなる。成分は、化合物、試薬、容器および/または装置であってよい。
【0080】
さらなる態様において、本発明は、培養宿主細胞を含んでなるバイオリアクターにおいて対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳を活性化するための本発明のタンパク質翻訳制御系または本発明のキットの使用に関する。
【0081】
本発明はまた、本発明のポリペプチドまたは本発明のキメラポリペプチドの生産のための方法にも関し、この方法は、
a)該ポリペプチドをコードする核酸を適切な発現ベクターに挿入する工程、
b)適切な培養培地で、工程(a)において得られた組換えベクターで予め形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞を培養する工程、
c)該馴化培養培地を回収するか、または例えば音波処理によりもしくは浸透圧変化により該宿主細胞を溶解する工程、
d)該培養培地から、あるいは工程(c)において得られた細胞溶解物から、該ポリペプチドを分離および精製する工程、
e)所望により、生産された組換えポリペプチドを特性評価する工程
を含んでなる。
【0082】
本発明のポリペプチドは、該ポリペプチドに向けられる抗体を最初に固定しておいたイムノアフィニティークロマトグラフィーカラム上への固着により特性評価してよい。
【0083】
別の態様において、本発明のポリペプチドまたは本発明のキメラポリペプチドは、AUSUBEL et al. (1989, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience N. Y.)に記載されている周知の方法に従って、一連のクロマトグラフィーカラムでの移動により精製してよい。前記ポリペプチドは、均質溶液中または固相中での古典的化学合成技術により調製してもよい。例示例として、本発明のポリペプチドまたは本発明のキメラポリペプチドは、HOUBEN WEILにより開示されている均質溶液中での技術(1974, In methode der Oganischen Chemie, E.Wunshed., volume 15-1 etl5-li, Thieme, Stuttgart)によりあるいはMERRIFIELDにより開示されている固相合成技術(1965a, Nature, vol. 207 (996) : 522-523; 1965b Science, vol. 150 (693) : 178-185)により調製してよい。
【0084】
最後に、本発明は、本発明のキメラポリペプチドを含んでなる医薬組成物に関する。
【0085】
【表3】

【0086】
次の実施例および図面により本発明をさらに具体化する。
【実施例】
【0087】
本発明者らは、ポジティブサイトモジュリンを得た。このポジティブサイトモジュリンは、ファージタンパク質MS2CPを含むRNA結合ドメインまたはテザリングドメインおよびウイルスタンパク質NSP3由来のエフェクタードメインからなる。第一の証明では、リポータータンパク質の発現に対するこのサイトモジュリンの効果を、ヒト黒色人種子宮頸類上皮癌(a Human Negroid cervix epitheloid carcinoma)由来の確立された標準的ヒト細胞系統であるHeLa細胞において研究した。これらの細胞におけるタンパク質発現に対するポジティブサイトモジュリンの効果を、これまでに記載されている、ヒトタンパク質CUG−BP1と融合された同じテザリングタンパク質(MS2−CP)由来のネガティブサイトモジュリン(ペプチドタンパク質翻訳阻害剤およびタンパク質翻訳制御のためのその使用WO2005010038−2005−02−03)の存在によってもたらされるものと比較した。さらなる対照として、リポータータンパク質発現に対する前記テザリングタンパク質単独(C末端HAタグと融合したもの)発現の効果も判定した。前記リポータータンパク質(ウミシイタケ(Renila)ルシフェラーゼ)をコードするmRNAを、トランスフェクトしたプラスミド内の双方向性CMVプロモーター(a bidirectonal CMV promotor)から転写した。このmRNAでは、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼコード領域に続く3’非翻訳領域に、前記テザリングタンパク質についての複数の結合部位が含まれた。ホタルルシフェラーゼをコードする遺伝子もこの同じ双方向性CMVプロモーターから発現された。このmRNAには前記テザリングタンパク質の結合部位がないため、トランスフェクション効率の正規化を可能にした。よって、データをウミシイタケ(Renila)ルシフェラーゼ活性とホタルルシフェラーゼ活性の比(Luc R/Luc F)として表している。
【0088】
図3では、ポジティブサイトモジュリン(MS2CP/NSP3)でのHeLa細胞の2つの別のトランスフェクションについて、ネガティブサイトモジュリンMS2−CP/CUG−BP1でトランスフェクトした細胞について、およびHAタグ付き形態のMS2CPでトランスフェクトした細胞について得られたデータを示している。ベースラインとしてHAタグ付きMS2CPの存在下でウミシイタケルシフェラーゼの正規化した発現を得ると、ウミシイタケルシフェラーゼについての発現は、予測通りにネガティブサイトモジュリンの存在下で減少した。それに対して、ウミシイタケルシフェラーゼの発現は、ポジティブサイトモジュリン(MS2CP/NSP3)も発現させた細胞において強く増強された。
【0089】
ポジティブサイトモジュリンのこの刺激効果がHeLa細胞に限定されないことを確認するために、HEK 293細胞を使用してこれらの測定を繰り返した。HEK 293細胞も上皮形態を有し、ヒト胎児腎臓に由来するものであった。この第二の証明に関する結果は図4に示し、この図ではHEK 293細胞のデータをHeLa細胞のものと比較している。図4に示したHeLa細胞についてのデータは、図3に示したものとは異なっており、新しい試験の結果得られたものである。両方の細胞種について、各々のエフェクタープラスミドで3つの独立したトランスフェクションを行った。この場合も、両方の細胞種でネガティブサイトモジュリンを発現させたときにウミシイタケルシフェラーゼ活性の予測された減少が観察された。さらに、ポジティブサイトモジュリンはHEK 293細胞におけるウミシイタケルシフェラーゼの発現も刺激し、これはその効果が単細胞種に限定されないことを示している。
【0090】
参照文献
【表4】


【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】キャップ依存性翻訳。因子eIF4G(白抜き楕円)はプラットフォームの役割を果たし、このプラットフォームにおいて、mRNAの5’末端においてキャップ(黒色点)と結合している因子eIF4E(斜交平行線模様)と、3’ポリ(A)テールと結合しているPABP(斜線平行線模様)とが結合することができる。40Sおよび60Sリボソームサブユニット(灰色楕円)、開始(AUG)および終止(STOP)コドン(黒色正方形)を示している。
【図2】サイトモジュリンの一般構造。ポジティブ(サイトブースト)効果またはネガティブ(抗ウイルス)効果を有するサイトモジュリンを、それぞれ、左側または右側に楕円により示した。テザリングドメイン(斜交平行線模様)およびエフェクタードメイン(白色)を区別している。原則として、ポジティブサイトモジュリンおよびネガティブサイトモジュリンの両方において同じテザリングドメインが使用され得る。この可能性を利用して、エフェクタードメインを試験する。
【図3】プロトタイプサイトモジュリンによる翻訳の刺激。HeLa細胞を、サイトモジュリンをコードするプラスミドと、ウミシイタケルシフェラーゼおよびホタルルシフェラーゼを個別にコードする2つのリポーターmRNAが該プラスミドから転写される第二のプラスミドで同時トランスフェクトした。発現したサイトモジュリンの識別をグラフの下に示している。リポータープラスミドでは、ウミシイタケルシフェラーゼをコードするリーディングフレームが、サイトモジュリン中に存在するMS2CPタンパク質によって認識されるMS2ステムループ配列に続いている。ホタルルシフェラーゼの活性によりトランスフェクション効率に関する正規化が可能である。阻害性サイトモジュリンのプロトタイプであるサイトモジュリンMS2CP/CUG−BP1をここでは陰性対照として使用する。MS2CPNSP3サイトモジュリンについての2つのバーは2つの別の試験に対応する。これらの試験では、ポジティブサイトモジュリンを、ウシNSP3 RF株のアミノ酸163〜313(配列番号48の配列参照)が続く2つのMS2−CP配列の遺伝子インフレーム融合物によりコードした。ルシフェラーゼ活性はウミシイタケ活性とホタル活性の比として表している。示した値は、個別トランスフェクション試験における三連アッセイの平均±標準偏差である。
【図4】プロトタイプサイトモジュリンによる翻訳の刺激:HeLa細胞およびHEK 293細胞における効果の比較。図面の下に示すように、HeLa細胞またはHEK 293細胞を、サイトモジュリンをコードするプラスミドと、ウミシイタケルシフェラーゼおよびホタルルシフェラーゼを個別にコードする2つのリポーターmRNAが該プラスミドから転写される第二のプラスミドで同時トランスフェクトした。発現したサイトモジュリンの識別をグラフの右側に示している。リポーターmRNAおよびサイトモジュリンをコードするプラスミドは、図3の凡例に記載したものと同じである。ルシフェラーゼ活性はウミシイタケ活性とホタル活性の比(Luc R/Luc F)として、MS2CP単独を含むサイトモジュリンについて観察されたこの比と比べて表している。示した値は、3つの別の試験(n=3)で得られたデータの平均±標準偏差である。
【図5】群Aロタウイルス株サルSA11のNSP3タンパク質由来のペプチドの構成概要。
【図6】群Aウシロタウイルス株RFのNSP3タンパク質由来のペプチドの構成概要。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質翻訳を活性化することができる、配列番号32のアミノ酸配列もしくは配列番号32と少なくとも70%の同一性を有する配列、またはその断片のうちのいずれか1つを含んでなる、ポリペプチド。
【請求項2】
前記断片が、配列番号33の配列、もしくは配列番号33と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記断片が、配列番号34および配列番号35の配列、ならびに配列番号34および配列番号35と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記断片が、配列番号36および配列番号37の配列、ならびに配列番号36および配列番号37と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記断片が、配列番号38および配列番号39の配列、ならびに配列番号38および配列番号39と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記断片が、配列番号40および配列番号41の配列、ならびに配列番号40および配列番号41と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記断片が、配列番号42および配列番号43の配列、ならびに配列番号42および配列番号43と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記断片が、配列番号44および配列番号45の配列、ならびに配列番号44および配列番号45と少なくとも70%の同一性を有する配列の断片からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号32〜配列番号45の配列のうちのいずれか1つと少なくとも70%の同一性を有する前記配列が、次のロタウイルス:ウシロタウイルスA、ヤギロタウイルスA、ウマロタウイルスA、ヒトロタウイルスA、ウサギロタウイルス、ブタロタウイルスA、ウサギロタウイルス、ロタウイルス5血清型G2、ロタウイルスG8、ロタウイルスサブグループ1、ロタウイルスサブグループ2、サルロタウイルスA/SA11、サルロタウイルスA/SA11−C14およびブタロタウイルス株S8のうちのいずれか1つに由来するものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳を特異的に活性化することができるキメラポリペプチドであって、配列番号46の配列もしくは配列番号46と少なくとも70%の同一性を有する配列の非構造タンパク質3(NSP3)またはその断片のうちのいずれか1つを含んでなり、該NSP3またはその断片のうちのいずれか1つがRNA結合タンパク質と融合した、キメラポリペプチド。
【請求項11】
前記NSP3タンパク質断片が請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリペプチドである、請求項10に記載のキメラポリペプチド。
【請求項12】
その配列が配列番号48の配列を含んでなる、請求項10に記載のキメラポリペプチド。
【請求項13】
前記RNA結合タンパク質が、MS2CP、N、IRPおよびUlAからなる群から選択される、請求項10〜12のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項14】
前記キメラポリペプチドの標的細胞の原形質膜の通過を可能とする輸送シグナルをさらに含んでなる、請求項10〜13のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる、核酸。
【請求項16】
請求項10〜14のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる、核酸。
【請求項17】
配列番号49のポリヌクレオチドを含んでなる、請求項16に記載の核酸。
【請求項18】
請求項10〜14のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの制御のための誘導性調節ポリヌクレオチドをさらに含んでなる、請求項16または請求項17に記載の核酸。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項に記載の核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項20】
請求項16〜18のいずれか一項に記載の核酸または請求項19に記載のベクターを含んでなる、キメラポリペプチドを安定的にまたは一時的に発現させる宿主細胞。
【請求項21】
対象となる標的ポリヌクレオチドをコードする発現プラスミドをさらに含んでなる、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項22】
請求項10〜14のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド、または請求項16〜18のいずれか一項に記載の核酸、または請求項19に記載のベクター、または請求項20もしくは21に記載の宿主細胞を含んでなる、対象となる標的ポリヌクレオチドのタンパク質翻訳制御系。
【請求項23】
対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳をin vitroで制御するための方法であって、
(a)宿主細胞に対象となる該標的ポリヌクレオチドを導入する工程;
(b)工程(a)において得られた組換え宿主細胞を適切な培養培地で培養し、これにより該宿主細胞が対象となる該標的ポリヌクレオチドを安定的に発現することを可能とする工程;および
(c)対象となる該標的ポリヌクレオチドの発現を活性化するために、該培養培地に請求項10〜14のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドを加える工程
を含んでなる、方法。
【請求項24】
前記キメラポリペプチドが、該キメラポリペプチドの前記標的細胞の原形質膜の通過を可能とする輸送シグナルをさらに含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳をin vitroで制御するための方法であって、
(a)宿主細胞に、対象となる該標的ポリヌクレオチド、ならびに請求項18に記載の核酸または該核酸を含んでなる請求項19に記載のベクターを導入する工程;
(b)工程(a)において得られた組換え宿主細胞を適切な培養培地で培養し、これにより該宿主細胞が対象となる該標的ポリヌクレオチドを安定的に発現することを可能とする工程;および
(c)該培養培地に該誘導性調節ポリヌクレオチドと相互作用することができる薬剤を加え、これにより該キメラポリペプチドをコードする核酸の発現の調節を可能とする工程
を含んでなる、方法。
【請求項26】
請求項10〜14のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド、または請求項19に記載のベクターを含んでなる、対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳を制御するためのキット。
【請求項27】
対象となる前記標的ポリヌクレオチドを含んでなる組換えベクターをさらに含んでなる、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
請求項20または21に記載の宿主細胞を含んでなる、対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳を制御するためのキット。
【請求項29】
培養宿主細胞を含んでなるバイオリアクターにおいて対象となる標的ポリヌクレオチドの翻訳を活性化するための、請求項22に記載のタンパク質翻訳制御系または請求項26〜28のいずれか一項に記載のキットの使用。
【請求項30】
請求項10〜14のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドを含んでなる、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−544296(P2009−544296A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521235(P2009−521235)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057483
【国際公開番号】WO2008/009727
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(509021672)
【氏名又は名称原語表記】INRA TOULOUSE
【Fターム(参考)】