説明

バイオルミネセンス撮像のためのトランスジェニックROSA26−ルシフェラーゼマウス

本発明は、バイオルミネセンスマーカーを発現する非ヒトトランスジェニック動物に関する。本発明は、マウス制御配列に作用可能に結合した、ルシフェラーゼをコードするヌクレオチド配列をゲノムに含み、これによってすべての細胞においてルシフェラーゼが発現されるトランスジェニックマウスを提供する。マウスへのルシフェリン基質の投与によりバイオルミネセンスが生じる。制御配列はRosa26プロモーターである。このマウスはインサイツの細胞成長、分化又は増殖をモニターするために有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本出願は、出典明記によってその開示内容の全体が本明細書中に援用される2005年10月13日発行の米国仮特許出願第60/726521号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、トランスジェニック動物モデル及びこれを用いた画像法(イメージング)に関する。
【0003】
(発明の背景)
トランスジェニックマウスモデルは、それ自体が遺伝子機能、細胞機能又は器官形成の発見の有用なツールであることが明らかとなっている。導入遺伝子は、トランスジェニック動物が発達させる細胞のゲノムに組み込まれる導入されたDNA配列である。一般的に、DNA配列を用いて、一度に及び/又は正常に発現されないところで特定のタンパク質を発現するトランスジェニック動物を生成する。トランスジェニックマウスは、発生のすべての段階ないしは動物の生涯にわたって、又は正常な動物で見られる量よりも高い量で遺伝子を発現するように作製されうる。トランスジェニック動物、特にマウス又はラットなどの動物を生成する方法は当分野では慣習的なものとなっており、例えば米国特許第4736866号及び同第4870009号に記述される。例えば、特定の細胞は、組織特異的制御配列により導入遺伝子発現の標的となりうる。動物の生殖細胞系に組み込まれる導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物を用いて、ある遺伝的バックグラウンドの他の動物と交配させて、さらに経路又は疾患を明らかにすることができる。このような動物は、導入遺伝子過剰発現と関係している病的状態から守る薬剤についての試験動物として使われてもよい。薬剤で処置して、無処置のトランスジェニック動物と比べて病的状態の発生が減少すると、病的状態のための治療的処置となりうることが示唆される。
【0004】
トランスジェニックは、内因性遺伝子と実験的に変更したゲノムDNAとの間の相同組み換えの結果として、不完全又は変更した遺伝子を有する「ノックアウト」動物とは異なる。一般的に、ベクターには数キロベースの変更のない隣接DNA(5'端及び3'端の両方)が含まれる[例えば、相同組み換えベクターについてはThomas and Capecchi, Cell, 51:503 (1987)を参照のこと]。動物の胚性幹細胞に導入される場合、通常特定の遺伝子の発現を促進するトランスジェニックとは対照的に内因性遺伝子は切除されるか又は「ノックアウト」される。
【0005】
トランスジェニック動物の使用により特定の遺伝子又は細胞機能が明らかとなるが、重大な欠点のうちの一つは動物がこの機能を調べるために屠殺されることが多いということである。これにより、トランスジェニック動物が病理学的表現型を示す場合には、遺伝子又は細胞機能における後に生じる欠損のみを調べることが多い。他の欠点は、動物の屠殺により実験のタイムポイントの数が減少しうることである。研究は、各実験のタイムポイントで統計学的に有意な数が得られるように、多数の動物により始めなければならない。これは、実験の経過中、多数の動物を交配し、収容し、飼育しなければいけないので、高価である。また、各実験に用いる動物を交配させ、分析するために時間がかかる。更なる欠点は胚性致死率である。特定の遺伝子が攪乱(perturb)される場合、胚性致死となりうる。これにより、ほとんどないしは全くトランスジェニック後代が得られず、研究者は病態が胚性段階で生じていると決定せざるを得ない。
【0006】
この問題を解決するために、細胞又は臓器の発達を追跡しうるマーカー遺伝子に融合する制御配列が有用である。有益であることが明らかとなった2つのマーカーは、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はホタルルシフェラーゼ遺伝子である。研究者は、これらのマーカー遺伝子を発現しているトランスジェニック動物を連続的に撮像して、遺伝子発現をアッセイするか、腫瘍増殖を分析するか、細胞系統を決定するか、又は、感染の経過を追跡することができる方法を記述している(Contag等, J. of Mag. Res. Imag. 16:378-387 (2002))。通常、GFPのような蛍光マーカーは使いやすくて、一般の研究室のカメラシステム及び蛍光顕微鏡を用いて行うことができる。全体のトランスジェニック動物蛍光撮像は、トランスジェニック動物に必要な励起光を促すことの難しさのために複雑であり、信号雑音比(S/N)を増やす特定量の自己蛍光を有する組織に限定される。それに対して、ルシフェラーゼに基づくバイオルミネセンス撮像は、血液と拡散によって標的細胞に達する酵素基質ルシフェリンの投与を必要とする。ルシフェラーゼが哺乳動物において発現されないので、S/N比率は非常にクリアであり、自己蛍光はもはや問題ではない。
【0007】
トランスジェニック動物研究における上記に示す進歩にもかかわらず、絶えず、撮像するために十分に高いレベルでルシフェラーゼを発現することができる更なるモデルが非常に求められている。ルシフェラーゼを発現するトランスジェニックマウスを調製する以前の試みでは、すべての種類の細胞において、又は、導入遺伝子への有効な制御配列の取込みが無いために十分なレベルでルシフェラーゼを発現させることができなかった。ここで、すべての組織にわたって高いレベルでルシフェラーゼを発現し、そのルシフェラーゼの発現がRosa26プロモーターによって促されるトランスジェニック動物を記載する。さらに、ルシフェラーゼ陽性トランスジェニック動物由来の組織又は細胞を正常な動物に異種移植することができ、異種移植した細胞の成長、分化及び増殖をモニターして定量化することができる。したがって、全体の動物レベルで撮像することができ、時間依存性の現象、例えば発達、癌増殖、概日リズム及び疾患を追跡することができるトランスジェニック動物は、当分野での長きにわたる切実な要望に応えるものである。
【0008】
(発明の概要)
一般に、本発明は、生物発光マーカーを発現する非天然に生じる非ヒトトランスジェニック動物に関する。
【0009】
本発明は、ゲノムにルシフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含むトランスジェニック動物を提供する。前記ヌクレオチド配列は、マウス制御配列に作用可能に結合して、マウスのすべての細胞でルシフェラーゼが発現されるのが好ましい。トランスジェニック動物へのルシフェリン基質の投与によりバイオルミネセンスを可視化することができる。制御配列はRosa26プロモーターであることが好ましい。一実施態様では、Rosa26プロモーターは配列番号:1の配列を含む。他の実施態様では、Rosa26プロモーターは基本的に配列番号:1の配列からなる。さらに他の実施態様では、Rosa26プロモーターは配列番号:1の配列の比較的活性な断片を含む。「比較的活性な断片」は、核酸が配列番号:1からなるRosa26プロモーターに作用可能に結合している場合に生じうる発現レベルの少なくともおよそ75%、80%、85%、90%、95%又は100%であるレベルに、作用可能に結合した核酸の発現を制御する断片を意味する。
【0010】
さらに、本発明は、動物又は細胞を破壊することなく、遺伝子発現又は細胞機能がアッセイする必要がある任意の実験のためのモデルとして有用な、トランスジェニック動物を提供する。あるいは、トランスジェニック動物は、必然的にトランスジェニック動物を破壊することなく、動物のインサイツの細胞成長、分化又は増殖をモニターするために有用である。さらに、本発明は、生物発光撮像によってトランスジェニック動物の生きている細胞の成長、分化又は増殖をモニターするために有用な方法を提供する。
【0011】
他の実施態様では、本発明は、ルシフェラーゼトランスジェニック動物を他のトランスジェニック動物と交配させることを提供する。具体的には、ルシフェラーゼトランスジェニックマウスは、MMTV-HER2導入遺伝子を含むマウスと交配させ、腫瘍の増殖及び転移についてその仔をアッセイすることができる。さらに、交配したマウスの仔を、他の疾患モデルマウスへ移植するルシフェラーゼ陽性である異種移植片組織の組織供給源として用い、ルシフェラーゼ陽性組織移植片を増殖及び転移についてモニターすることができる。
【0012】
他の実施態様では、ルシフェラーゼトランスジェニック動物を、骨髄の供与源として用いることができる。具体的には、ルシフェラーゼトランスジェニック動物の骨髄を、致死的に照射したマウス又は亜致死的に照射したマウスのいずれかに移植して、移植した細胞の数と分布をモニターすることができる。
【0013】
他の実施態様では、本発明は、例えば多発性硬化症(MS)などの疾患モデルにおけるルシフェラーゼ陽性細胞を追跡することを提供する。具体的には、免疫細胞のサブセットを、ルシフェラーゼトランスジェニック動物から単離して、他のマウスモデル、例えばMSを調べるために用いられる実験的自己免疫性脳髄膜炎(EAE)のモデルに移植することができる。
【0014】
更なる実施態様は、免疫細胞疾患を治療しうる薬剤を同定するための方法を提供する。この方法は、免疫細胞をルシフェラーゼトランスジェニック動物から単離して、正常な宿主マウスにそれらを移植し、よって免疫細胞のみが生物発光するキメラマウスを形成することを含んでなる。薬剤はキメラマウスに投与され、免疫細胞の数をアッセイして、この薬剤から期待される通りの減少又は増殖があるか否かを決定する。
【0015】
更なる実施態様は、B細胞リンパ腫を治療しうる薬剤を同定するための方法を提供する。この方法は、B細胞をルシフェラーゼトランスジェニック動物から単離して、正常な宿主マウスにそれらを移植し、よってB細胞のみが生物発光するキメラマウスを形成することを含んでなる。薬剤(例えば、抗-CD20抗体)はキメラマウスに投与され、B細胞の数をアッセイし、減少があるか否かを決定する。
【0016】
他の実施態様では、トランスジェニック動物はルシフェラーゼ導入遺伝子を含んでなり、該ルシフェラーゼ導入遺伝子は破壊配列又は「ノックイン」配列として用いられる。
更なる実施態様では、また、本発明の動物は、ルシフェラーゼトランスジェニック動物への治療法の投与によって毒性を評価するために有用である。また、治療特異性、毒性及び有効性は、正常な動物又は無処置のトランスジェニック動物においてそれによる治療薬の効果の比較によって決定されうる。例えば、一実施態様では、薬剤の毒性を試験する方法が提供され、この方法は、a) ルシフェラーゼを発現するトランスジェニック動物によって生産されるルシフェラーゼのレベルを測定し;b) トランスジェニック動物に薬剤を投与し;そして、c) トランスジェニック動物の組織におけるルシフェラーゼの減少についてトランスジェニック動物を撮像し、このときルシフェラーゼ発現の減少が毒性を示すことを含んでなる。
【0017】
(好適な実施態様の詳細な説明)
定義
本明細書中で用いる「導入遺伝子」なる用語は、例えばここに開示された方法などのヒトの介入によって細胞中に導入されている核酸配列(例えばルシフェラーゼをコードする核酸)を意味する。導入遺伝子は、それが導入されるトランスジェニック動物又は細胞に対して部分的ないしは完全に異種性、つまり外来性でありうる。導入遺伝子は一又は複数の制御配列と、選択された核酸の最適な発現に必要でありうるイントロンのような任意の他の核酸を含みうる。
【0018】
ポリペプチド又は遺伝子との関連で使用される場合の「異種」という用語は、トランスジェニック動物には見出されないポリペプチドをコードするDNA又はアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。よって、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むトランスジェニックマウスは異種ルシフェラーゼ遺伝子を有するものと記述することができる。導入遺伝子は、PCR、ウェスタンブロット又はサザンブロットを含む様々な方法を使用して検出することができる。
【0019】
「コンストラクト」なる用語は、異種核酸配列を含む核酸ベクターを指し、全体の核酸配列の複製を可能にする。
【0020】
「ターゲティングコンストラクト」はターゲッティング領域を含む核酸ベクターを指す。ターゲティング領域は、標的組織、細胞又は動物中の内因性配列に実質的に相同であり、標的組織、細胞又は動物のゲノム中へのターゲティングコンストラクトの組込みをもたらす配列を含む。また、典型的には、ターゲティングコンストラクトは特に対象とする遺伝子又は核酸配列、マーカー遺伝子及び適切な制御配列を含むであろう。
【0021】
遺伝子の「破壊」は、DNAの断片が位置し、内因性相同配列と再結合する場合に生じる。配列破壊又は修飾には、挿入、ミスセンス、フレームシフト、欠失、又は置換、又はDNA配列の交換、又はそれらの任意の組み合わせが含まれうる。
【0022】
「挿入」には、動物、植物、真菌、昆虫、原核生物、又はウイルス由来でありうる異種核酸の挿入が含まれる。破壊は、例えば、その生産を部分的にないしは完全に阻害するか又は遺伝子産物の活性を向上させることによって遺伝子産物を改変し得る。
【0023】
「内因性遺伝子座」なる用語は、宿主動物に見出される天然に生じる遺伝子座を意味する。
「内因性プロモーター」なる用語は、天然のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列と天然に結合するプロモーターを指す。
「Rosa26」又は「Rosa26プロモーター」なる用語は、Zambrowicz等, Proc. Nat. Acad. Sci. 94: 3789-94 (1997)に記載のマウスプロモーター及びその機能的部分を指す。
【0024】
ある対象に適用されるように本明細書中で用いる「天然に生じる」又は「天然に結合する」なる用語は、ある対象が天然に見出されるという事実を示す。例えば、天然の供与源から単離されうる生物体(ウイルスを含む)に存在する、そして研究所の人によって意図的に修飾されていないポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、天然に発生する。
【0025】
核酸に対して、「実質的な相同性」なる用語は、2つの核酸又はその示された配列が、最適に整列させ、適切にヌクレオチドを挿入又は欠失して比較した場合に、少なくとも約80%の配列同一性、より好ましくは約81%の配列同一性、より好ましくは約82%の配列同一性、より好ましくは約83%の配列同一性、より好ましくは約84%の配列同一性、より好ましくは約85%の配列同一性、より好ましくは約86%の配列同一性、より好ましくは約87%の配列同一性、より好ましくは約88%の配列同一性、より好ましくは約89%の配列同一性、より好ましくは約90%の配列同一性、より好ましくは約91%の配列同一性、より好ましくは約92%の配列同一性、より好ましくは約93%の配列同一性、より好ましくは約94%の配列同一性、より好ましくは約95%の配列同一性、より好ましくは約96%の配列同一性、より好ましくは約97%の配列同一性、より好ましくは約98%の配列同一性、より好ましくは約99%の配列同一性を互いに有することを示している。
【0026】
2つの配列を整列させ、%同一性を同定する方法は当業者に公知である。%同一性を決定するための幾つかのコンピュータプログラムが利用可能である。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の技量の範囲内にある様々な方法で達成することができる。当業者であれば、比較されている配列の完全長にわたって最大のアラインメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0027】
あるいは、実質的な相同性は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で鎖の相補鎖にセグメントがハイブリダイズする場合に存在する。ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングに必要な温度が高くなり、プローブが短くなるとそれに必要な温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補鎖がその融点より低い環境にある場合に、変性DNAの再アニール能に依存するプローブとハイブリダイズ可能な配列との所望の相同性の程度が高ければ高いほど、用いられうる相対的な温度は高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにすることになり、低い温度はストリンジェントを低下させることになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細及び説明については、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology(Wiley Interscience Publishers, 1995)を参照のこと。
【0028】
ここで定義される「ストリンジェント条件」又は「高度のストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄に低イオン強度及び高温度を用いる、例えば、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる、例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム;又は(3)42℃で、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%の硫酸デキストラン溶液中でハイブリダイゼーションを行い、42℃で、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中にて10分間の洗浄、ついで55℃で、EDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を用いるものによって同定されうる。
【0029】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」と融合したポリペプチドを含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するのに十分な残基を有するが、その長さは融合するポリペプチドの活性を阻害しないよう十分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜50のアミノ酸残基(好ましくは、約10〜20の残基)を有する。
【0030】
「単離された」ポリペプチドコード化核酸ないし他のポリペプチドコード化核酸は、同定され、ポリペプチドコード化核酸の天然供給源に通常付随している少なくとも1つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。故に、単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、天然の細胞中に存在する特定のポリペプチドコード化核酸分子とは区別される。しかし、単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、例えば、核酸分子が天然の細胞のものとは異なった染色体位置にあるポリペプチドを通常発現する細胞に含まれるポリペプチドコード化核酸分子を含む。
【0031】
「制御配列」なる用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合されたコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適な制御配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0032】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合され」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に寄与するプレタンパク質として発現されているならそのポリペプチドのDNAに作用可能に結合されている;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならばコード配列に作用可能に結合されている;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるならコード配列と作用可能に結合されている。一般的に、「作用可能に結合される」とは、結合されたDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読み取り枠内にある。しかし、エンハンサーは必ずしも近接しているわけではない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、通常の手法にしたがって、合成されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0033】
ここでの目的のための「活性な」又は「活性」とは、天然又は天然に生じるポリペプチドの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するポリペプチドの形態を意味し、その中で、「生物学的」活性とは、天然又は天然に生じるポリペプチドが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力以外の、天然又は天然に生じるポリペプチドによって引き起こされる生物機能(阻害又は刺激)を指す。
【0034】
「アンタゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、天然ポリペプチドの生物学的活性を部分的又は完全にブロック、阻害、又は中和する任意の分子が含まれる。同じように、「アゴニスト」という用語は最も広い意味で用いられ、天然ポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子が含まれる。適切なアゴニスト又はアンタゴニスト分子には、特にアゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、断片、又は天然ポリペプチドのアミノ酸配列変異体、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、小有機分子等が含まれる。ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法は、ポリペプチドと候補アゴニスト又はアンタゴニスト分子を接触させ、そして通常はポリペプチドに関連している一又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することが含まれ得る。
【0035】
「処置」とは、治療的処置及び予防的ないしは阻害的な測定を指し、この目的は、標的とする病理学的状態ないしは疾患を予防又は遅延(小さく)させることである。処置が必要なものには、既に疾患を有するもの、並びに疾患を有する傾向にあるもの又は予防されるべき疾患が有する。
【0036】
「慢性」投与は、急性の様式に対して連続の様式の薬剤(一又は複数)の投与を指し、長期間の間の最初の治療効果(活性)を維持するためのものである。「間欠的な」投与は、中断せずに連続的になされない治療であるが、現実的には周期的なものである。
「動物」は、家庭動物及び家畜及び動物園、スポーツ用、又は愛玩動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む哺乳動物として分類される任意の生物体を指す。動物はマウスであることが好ましい。
一又は複数の治療剤「と組み合わせて」の投与には、同時(同時的)投与及びいずれかの順序での連続的な投与が含まれる。
【0037】
「トランスジェニック動物」又は「Tg」は交換可能に使用され、動物の細胞の一又は複数が、当該分野で周知の実験的技術によるようなヒトの介入によって導入されているルシフェラーゼをコードする異種性核酸を含む任意の動物を含むことを意図する。核酸は、トランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクションによって、又は組換えウイルスでの感染によって、直接又は間接的に細胞中に導入されうる。この核酸は染色体内に組み込まれうるか、又は染色体外に複製するDNAとして残存しうる。「Tg」という用語には、ルシフェラーゼに関してヘテロ接合性及び/又はホモ接合性である動物が含まれる。
【0038】
「バイオルミネセンス」は、生物系の化学反応の間に発される光を指す。例えば、バイオルミネセンスの光はルシフェラーゼによってルシフェリン基質が切断される際に発される。
「リアルタイム」は、反応が起こる実際の時にモニターすることができる任意の反応のモニターを指す。
「ルシフェリン」は、ルシフェラーゼによって酵素的に切断され、バイオルミネセンスが生じうる任意の基質を意味する。
「ノックアウト」は、内因性遺伝子が相同組み換え技術によって切除された動物を指す。
「ノックイン」は、内因性遺伝子が異種性の配列の付加によって破壊されている動物を指す。異種性の配列は任意の配列を含みうるが、機能的なマーカー遺伝子が挿入され、内因性遺伝子と同じ時間的及び空間的順序で発現されることが多い。
【0039】
A.核酸ベクターと宿主細胞の選別と使用
一般に、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、好適な宿主細胞において該ポリペプチドを発現させるために、ベクター、好ましくは核酸ベクターに挿入される。また、これらの核酸コンストラクトは、トランスジェニックマウス又はノックアウト又はノックインの動物のためのターゲティングベクターを調製するために有用でありうる。
また、核酸ベクターは、ルシフェラーゼをコードする核酸配列に作用可能に結合する調節性の核酸配列を含んでもよい。ルシフェラーゼはホタル又は、Renillaルシフェラーゼであってもよい。
【0040】
通常、作用可能に結合した制御配列は、所望の種類の細胞において核酸セグメントないしは配列の発現を増加する。好ましくは、これらの制御配列は元のゲノム性のものである。例えば、核酸ベクターは、宿主細胞中で複製して発現することが可能な様式で、ルシフェラーゼコード配列に作用可能に結合する遺伝子の5'-隣接領域に位置する制御配列を含みうる。具体的には、制御配列はプロモーター配列Rosa26を含む。場合によって、プロモーターは、配列を得た動物における発現レベルと同じレベルで組織特異的な発現をもたらしうる。更なる隣接配列が発現を最適化する際に有用である場合、このような配列を核酸ベクターにライゲートしてもよい。導入遺伝子のプロセシング又は発現のための更なる配列は、ゲノム配列から得られうる。場合によって、核酸ベクターは、プロモーターとルシフェラーゼをコードするDNA配列との間の5'非翻訳領域を含む。好ましくは、制御配列により、発現が標準的な方法を用いて、例えば抗体、バイオルミネセンスないしは核酸プローブを用いた検出を使用して検出されるほどのレベルで、すべての細胞においてルシフェラーゼ導入遺伝子の発現がもたらされる。
【0041】
また、ここに記載されたルシフェラーゼ導入遺伝子をコードする核酸ベクターはDNA配列の下流の3'未翻訳領域を含みうる。そのような領域は発現系のRNA転写物を安定化させることができ、よって発現系から所望のタンパク質の収率を増大させる。本発明のコンストラクトに有用な3'未翻訳領域にはポリAシグナルをもたらす配列がある。そのような配列は、例えば当該分野でよく知られたSV40スモールT抗原、又は他の3'非翻訳配列からに由来してもよい。このような非翻訳領域は、遺伝子を得た又は異なる遺伝子からの同じ制御領域からのものであり、例えば他の合成、半合成又は天然源に由来してもよい。
【0042】
さらに、他のプロモーター又は他の制御配列が利用されてもよい。例えば、異種性のプロモーターにより、発現又は組織特異的な発現のレベルが増加しうる。異なる強度を有する様々なプロモーターは、該プロモーターがトランスジェニック動物、又は所望の種類の組織において機能するかぎり、有用でありうる。
【0043】
核酸ベクターの調製及び宿主生物の形質転換に使用される様々な方法は当分野で公知である。宿主細胞を、ここに記載したルシフェラーゼ生産のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に修正された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編(IRL Press, 1991)及びSambrook等, 上掲に見出すことができる。
【0044】
真核細胞の形質移入及び原核細胞の形質転換の方法、例えば、CaCl、CaPO、リポソーム媒介及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等,に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、一般的に、原核生物に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)による感染が、Shaw等, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開の国際公開第89/05859号に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質移入の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van Solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞との細菌プロトプラスト融合、又は、例えばポリブレン、ポリオルニチン等のポリカチオンもまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0045】
ここに記載のベクターにDNAをクローニング或いは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌のような腸内細菌科を含む。種々の大腸菌株が公に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5772(ATCC53,635)である。他の好ましい原核動物宿主細胞は、大腸菌、例えば、E.coli、エンテロバクター、エルビニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えば、ネズミチフス菌、セラチア、例えば、セラチアマルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌、並びに桿菌、例えばバチルス・スブチルス(B. subtilis)及びバチルス・リチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、1989年4月12日発行のDD266710に記載されたバチルス・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス、などの腸内細菌科を含む。これらの例は限定ではなく例示である。株W3110は、組換えDNA生産発行のための共通の宿主株であるので一つの特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110は、細胞に外来のタンパク質をコードする遺伝子における遺伝子変異をするように修飾してもよく、そのような宿主の例としては、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA prt3 phoA E15 (argF-lac) 169 degP ompT kanrを有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (algF-lac) 169 degP ompT rbs7 ilvG kanrを有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を持つ37D6株である大腸菌W3110株40B4;及び1990年8月7日発行の米国特許第4946783号に開示された変異周辺質プロテアーゼを有する大腸菌株を含む。或いは、クローニングのインビトロ法、例えばPCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応が好ましい。
【0046】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、本明細書中に記載のベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。他に、シゾサッカロミセス・プロンブ(Schizosaccharomyces prombe)(Beach及びNurse, Nature, 290:140 [1981];1985年5月2日発行の欧州特許第139383号);クルベロミセス宿主(Kluveromyces hosts)(米国特許第4,943,529号;Fleer等, Bio/Technology, 9:968-975 (1991))、例えばクルベロミセスラクチス(K. lactis)(MW98-8C, CBS683, CBS4574;Louvencourt等, J. Bacteriol.154(2):737-742 [1983])、クルベロミセス・フラギリス(K. fragilis)(ATCC 12,424)、クルベロミセス・ブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC 16,045)、クルベロミセス・ウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC 24,178)、クルベロミセスワルチイ(K. waltii)(ATCC 56,500)、クルベロミセス・ドロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC 36,906;Van den Berg等, Bio/Technology, 8:135 (1990))、クルベロミセス・テモトレランス(K. thermotolerans)及びクルベロミセス・マルキシアナス(K. marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(欧州特許第402226号);ピチア・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許第183070号;Sreekrishna等, J. Basic Microbiol, 28:265-278 [1988]);カンジダ;トリコデル・マレーシア(Trichoderma reesia)(欧州特許第244234号);アカパンカビ(Case等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:5259-5263 [1979]);シュワニオマイセス(Schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(1990年10月31日発行の欧州特許第394538号);及び糸状真菌、例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)(1991年1月10日発行の国際公開第91/00357号);及びアスペルギルス宿主、例えばアスペルギルス・ニダランス(Balance等, Biochem. Biophys. Res. Commun., 112:284-289 [1983];Tilburn等, Gene, 26:205-221 [1983];Yelton等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:1470-1474 [1984])、及びアスペルギルス・ニガー(Kelly及びHynes, EMBO J., 4:475-479 [1985])が含まれる。ここで好ましいメチロトロピック(C1化合物資化性、Methylotropic)酵母は、これらに限られないが、ハンセヌラ(Hansenula)、カンジダ、クロエケラ(Kloeckera)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス、トルロプシス(Torulopsis)、及びロドトルラ(Rhodotorula)からなる属から選択されたメタノールで成長可能な酵母を含む。この酵母の分類の例示である特定の種のリストは、C. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)に記載されている。
【0047】
グリコシル化ルシフェラーゼの発現に適切な宿主細胞が多細胞生物から得られる。無脊椎動物細胞の例には、ショウジョウバエS2及びスポドスペラSf9等の昆虫細胞、並びに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例にはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及びCOS細胞が含まれる。より具体的な例には、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7,ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293又は293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4,Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));ヒト肝細胞 (Hep G2、HB 8065);及びマウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562、ATCC CCL51)が含まれる。好適な宿主細胞の選択は当業者の技術の範囲内であると思われる。
【0048】
標的とした「ノックアウト」又は「ノックイン」が望ましい場合、ターゲティングコンストラクトが作製されうる。ターゲッティングコンストラクトは、当分野で公知の標準的な方法を使用して生産されてもよい(Sambrook等, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York;E.N. Glover (eds.), 1985, DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II;M.J. Gait (ed.), 1984, Oligonucleotide Synthesis;B.D. Hames & S.J. Higgins (eds.), 1985, Nucleic Acid Hybridization;B.D. Hames & S.J. Higgins (eds.), 1984, Transcription and Translation;R.I. Freshney (ed.), 1986, Animal Cell Culture; Immobilized Cells and Enzymes, IRL Press, 1986;B. Perbal, 1984, A Practical Guide To Molecular Cloning; F.M. Ausubel等, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.を参照)。例えば、ターゲッティングコンストラクトは従来の方法に従って調製されてもよく、この配列は合成されても、天然の供与源から単離しても、操作して、クローニングして、ライゲートして、インビトロ突然変異誘発、プライマー修復に用いるなどしてもよい。様々な段階で、結合した配列をクローニングして、制限酵素切断解析、配列決定法などによって分析してもよい。
【0049】
例えば、ターゲティングDNAは、オリゴヌクレオチドの化学合成、二本鎖DNA鋳型のニックトランスレーション、配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅(又はリガーゼ連鎖反応増幅)、対象配列(例えばクローン化cDNA又はゲノムDNA、合成DNA又は上記の組み合わせの何れか)を含む原核細胞又は標的クローニングベクターの精製、例えばプラスミド、ファージミド、YAC、コスミド、BAC、バクテリオファージDNA、他のウイルスDNA又は複製中間体、又はその精製制限断片、並びに所望のヌクレオチド配列を有する一本鎖及び二本鎖ポリヌクレオチドの他の供給源の精製によって産生することができる。更に、相同の長さは当該分野で既知の方法を使用して選択することができる。例えば、選択は予め決められた内因性標的DNA配列(一又は複数)の複雑性と配列組成に基づいてもよい。
【0050】
一実施態様では、本発明のターゲティングコンストラクトは、破壊されることになる遺伝子の一部又は領域に相同な第一配列とその遺伝子の第二部分又は領域に相同な第二配列を含むターゲティング領域を含む。ターゲティングコンストラクトは、第一及び第二DNA配列間に好ましくは位置するポジティブ選択マーカーを更に含みうる。ポジティブ選択マーカーはプロモーター及びポリアデニル化シグナルに作用可能に結合していてもよい。
【0051】
他の実施態様では、ターゲティングコンストラクトは、ターゲティングコンストラクトの相同アームの一方又は双方の外側に好ましくは位置している、単純ヘルペスウイルスtk(HSV-tk)遺伝子のようなネガティブ選択マーカーを含む一を越える選択マーカー遺伝子を含みうる。ネガティブ選択マーカーはプロモータ及びポリアデニル化シグナルに作用可能に結合しうる(例えば米国特許第5464764号;第5487992号;第5627059号及び第5631153号を参照)。
【0052】
B.トランスジェニック動物の産生
ノックアウトとノックインを含む本発明のトランスジェニック動物を産生する方法は当該分野でよく知られている(一般には、Gene Targeting: A Practical Approach, Joyner編, Oxford University Press, Inc. (2000)を参照のこと)。
【0053】
本発明を実施するために使用する任意の動物の特定の系統(一又は複数)は、全体的な健康、良好な胚の収率、胚の良好な前核可視性(pronuclear visibility)及び良好な繁殖の適応性について選択される。トランスジェニックマウスを産生する場合、C57BL/6ないしはC57BL/6×DBA/2 Fitなどの系統、又はFVB株が用いられることが多い(Charles River Labs, Boston, Mass., The Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME, or Taconic Labs.から市販されている)。好適な系統は、H 2b、H-26又はH-2qハプロタイプを有するもの、例えばC57BL/6又はDBA/1である。
【0054】
適切なターゲティングコンストラクトがひとたび調製されれば、ターゲティングコンストラクトは当該分野で知られている任意の方法を使用して適切な宿主細胞中に導入することができる。例えば、前核マイクロインジェクション;生殖系列中へのレトルウイルス媒介遺伝子移入;胚性幹細胞での標的遺伝子組換え;胚のエレクトロポレーション;精子媒介遺伝子移入;及びリン酸カルシウム/DNA共沈、核中へのDNAのマイクロインジェクション、無傷の細胞との細菌プロトプラスト融合、形質移入、ポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチンなど等々を含む様々な方法を本発明において用いることができる(例えば米国特許第4873191号;Van der Putten等, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 82:6148-6152;Thompson等, 1989, Cell 56:313-321;Lo, 1983, Mol Cell. Biol. 3:1803-1814;Lavitrano等, 1989, Cell, 57:717-723を参照のこと)。
【0055】
本発明の目的のために、トランスジェニック動物は、その一部にのみ導入遺伝子を有するもの(「モザイク動物」)を含む。導入遺伝子は、単一の導入遺伝子として、又はコンカテマー、例えば頭部と頭部又は頭部と尾部の直列型として組み込まれる。特定の細胞型への導入遺伝子の選択的導入も、例えばLasko等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 6232-636 (1992)の技術に従って可能である。
【0056】
マイクロインジェクションは、トランスジェニック動物を作成する好適な方法である。マイクロインジェクションは、遺伝子を動物のゲノムに付加するために好適である。マイクロインジェクションによってトランスジェニック動物を生産する一般的な手段は、雌マウスを交配して、その輸卵管から受精した配偶子を取り除くことである。配偶子は、その生存能を維持するためにM2培地などの培地中で維持する(Hogan, B.等 1986)。マウスに付加される配列を含む精製された核酸ベクターを調製し、緩衝溶液にて希釈する。適当な濃度のベクターをマイクロインジェクション針に充填し、注入される配偶子を操作することができる顕微鏡チャンバーに配置する。針を卵子の雄性前核に挿入し、ベクター溶液を注入する。次いで、注入した卵子は偽妊娠マウス(実際には妊娠していないが適当なホルモン類によって妊娠を維持するように刺激したマウス)の輸卵管に移動し、そこで子宮に進み、着床して、満期まで発達する。
【0057】
あるいは、トランスジェニック動物は、胚性幹(ES)細胞に導入遺伝子を導入して作製されてもよい。導入遺伝子は、DNAトランスフェクションによって、又は、レトロウイルス媒介性のトランスダクションによってES細胞に効率的に導入されうる。その後、このように形質転換したES細胞は、後に胚を生着して、結果として生じるキメラ動物の生殖系を導く胚盤胞と結合されうる。
【0058】
レトロウイルス感染もまた非ヒト動物中に導入遺伝子を導入するために使用することができる。発達中の非ヒト胚を胚盤胞期までインビトロで培養することができる。この期間中、割球がレトロウイルス感染の標的でありうる(Jaenich, R. (1976) PNAS 73:1260-1264)。割球の効果的な感染は透明帯を取り除く酵素処理によって得られる(Manipulating the Mouse Embryo, Hogan編 (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, 1986)。導入遺伝子を導入するために使用されるウイルスベクター系は典型的には導入遺伝子を担持する複製欠陥性レトロウイルスである(Jahner等 (1985) PNAS 82:6927-6931; Van der Putten等 (1985) PNAS 82:6148-6152)。形質移入は、ウイルス産生細胞の単層上で割球を培養することによって簡単かつ効果的に得られる(上掲のVan der Putten; Stewart等 (1987) EMBO J. 6:383-388)。あるいは、感染は後の段階で実施することができる。ウイルス又はウイルス産生細胞を割腔中に注入することができる(Jahner等 (1982) Nature 298:623-628)。殆どのファウンダー(起源物)は、トランスジェニック非ヒト動物を形成した細胞のサブセットにのみ取り込みが生じるので、導入遺伝子に対してモザイクである。更に、ファウンダーは子孫で一般に分離するゲノム中の異なった位置に導入遺伝子の様々なレトロウイルス挿入を含みうる。また、中期妊娠期間胚の子宮内レトロウイルス感染によって生殖系列中に導入遺伝子を導入することもできる(上掲のJahner等 (1982))。
【0059】
一実施態様では、場合によって、トランスジェニックマウスの生成は、研究者が特定する位置において、トランスジェニック動物の遺伝子座の破壊とトランスジェニック動物のゲノムへのルシフェラーゼの導入を伴いうる。内在性遺伝子座の不活性化は、胚性幹細胞の相同組み換えによる目的の破壊によって達成される。あるいは、ルシフェラーゼコンストラクトの組み込みは、トランスジェニック動物のゲノムのいずれの場所で起こってもよい。
【0060】
相同組換えが可能な任意の細胞型を本発明の実施に使用することができる。そのような標的細胞の例には、ヒト、ウシ種、ヒツジ種、マウス種、サル種のようなほ乳類を含む脊椎動物、及び糸状真菌のような他の真核生物、及び植物のような高等多細胞生物から誘導された細胞が含まれる。
【0061】
好適な細胞型には、典型的にはインビトロで培養された移植前胚から得られる胚性幹(ES)細胞が含まれる(例えば、Evans, M. J.等, 1981, Nature 292:154-156; Bradley, M. O.等, 1984, Nature 309:255-258; Gossler等, 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:9065-9069; 及びRobertson等, 1986, Nature 322:445-448を参照のこと)。当業者によく知られた方法を使用してES細胞を培養し、ターゲティングコンストラクト導入の準備をする(例えば、Robertson, E. J.編 "Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells, a Practical Approach", IRL Press, Washington D.C., 1987; Bradley等, 1986, Current Topics in Devel. Biol. 20:357-371; Hogan等,"Manipulating the Mouse Embryo": A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor N.Y., 1986; Thomas等, 1987, Cell 51:503; Koller等, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:10730; Dorin等, 1992, Transgenic Res. 1:101;及びVeis等, 1993, Cell 75:229を参照のこと)。ターゲティングコンストラクトと共に挿入されるES細胞は、それらが導入されることになる発生胚と同じ種の胚又は胚盤胞から由来する。ES細胞は典型的には内部細胞塊に組み込まれ、発生の胚盤胞段階で胚の哺乳動物中に導入される場合に個体の生殖系列に寄与するその能力について選択される。よって、この能力を有する任意のES細胞株が本発明を実施するための使用に適している。
【0062】
ターゲティングコンストラクトが細胞中に導入された後、標的遺伝子の組み込みが成功した細胞が同定される。標的遺伝子中へのターゲティングコンストラクトの挿入は、典型的にはマーカー遺伝子の発現によって細胞を同定することによって検出される。好適な実施態様では、本発明のターゲティングコンストラクトで形質転換された細胞を、選択マーカーを発現しない細胞に対して選択する適切な薬剤で処置する。選択マーカー遺伝子を発現する細胞だけが、ある条件下で生存し及び/又は成長する。例えば、導入されたネオマイシン耐性遺伝子を発現する細胞は化合物G418に耐性がある一方、ネオ遺伝子マーカーを発現しない細胞はG418によって殺される。ターゲティングコンストラクトがまたGFPのようなスクリーニングマーカーを含む場合、蛍光光の下にスクリーニング細胞コロニーを通して相同組換えを同定することができる。相同組換えを受けた細胞はGFP遺伝子を欠失しており、蛍光を発しない。他の例では、ルシフェラーゼを発現する細胞をルシフェリンにて処理して、フローサイトメトリーによりバイオルミネセンスに関して分類することができる。
【0063】
DNAトランスフェクションの後、標的の遺伝子を有するES細胞クローンはサザンブロット分析で決定することができる。あるES細胞クローンの細胞は、育成用の母体に移される胚盤胞に注入されてもよい。高度にキメラな雄の仔(毛色について80〜100%)は、導入遺伝子をそれらの後代に伝えるためにC57BL/6(B6)の雌と交配してもよい。ヘテロ接合の仔を交配することによって、内因性遺伝子の破壊についてホモ接合のマウスが予想されるメンデル頻度で得られうる。
【0064】
あるいは、ポジティブ-ネガティブ選択技術を用いて相同組換え体を選択することができる。この技法は、第一薬剤を細胞集団に加える、例えばネオマイシン様薬剤を形質移入細胞の成長を選択するために、つまりポジティブな選択のために加える。例えばFIAUのような第二薬剤を、つづいてネガティブ選択マーカーを発現する細胞を死滅させるために、つまりネガティブ選択のために加える。ネガティブ選択マーカーを含み発現する細胞は選択薬剤によって死滅される一方、ネガティブ選択マーカーを含まず発現しない細胞は生存する。例えば、コンストラクトの非相同的挿入を伴う細胞はHSVチミジンキナーゼを発現し、よってガンシクロビル(GANC)又はFIAU(1-(2-デオキシ2-フルオロ-B-D-アラビノフルラノシル)-5-ヨードウラシル)のようなヘルペス薬に感受性がある。(例えば、Mansour等, Nature 336:348-352: (1988); Capecchi, Science 244:1288-1292, (1989); Capecchi, Trends in Genet. 5:7076 (1989)を参照のこと)。他の方法には、調節されたポジティブ選択法が含まれ(米国特許出願公開第20030032175A1を参照)、これは単一の選択薬剤の添加を必要とする。
【0065】
成功裏の組換えは、選択された細胞のDNAを分析して相同組換えを確認することによって同定することができる。当該分野で既知の様々な方法、例えばPCR及び/又はサザン分析法を用いて相同組換え事象を確認することができる。
【0066】
選択された細胞は、動物(例えばマウス)の胚盤胞(又は例えば桑実胚のような生存可能な動物を作り出す目的に適した発達の他の段階)に注入してキメラを形成する(例えば、Bradley, A. Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson編, IRL, Oxford, pp.113-152 (1987)を参照のこと)。あるいは、選択されたES細胞を分離したマウス胚細胞と凝集させて凝集キメラを形成する。ついで、キメラ胚を適当な偽妊娠雌育成動物中に移植し、胚を出産させることができる。その生殖細胞に相同組換えDNAを有するキメラ子孫を用いて、動物の全細胞が相同組換えされたDNAを含む動物を育種することができる。
【0067】
上述の内因性遺伝子座の不活化方法に加えて、更なる好適な不活化方法が利用でき、例えば、対象の特異的遺伝子の時間的な制御を移用するtet転写系の使用(Proc. Natl. Acad. Sci. 91:9302-9306 (1994))又は組織特異的制御のためのデオキシサイクリン転写調節制御の導入(Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10933-10938 (1996))が含まれうる。
【0068】
更なる好適な機能的不活化方法には、遺伝子座の標的ノックアウトのためのcre-lox欠失、部位特異的組換え系の利用が含まれ、そこでは、loxP部位が対象の隣接遺伝子に挿入され、creリコンビナーゼが活性化されて遺伝子を欠失させる(Curr. Opin. Biotechnol., 5:521-527 (1994))。
【0069】
あるいは、所望の遺伝子座の転写を阻害し、よって内因性遺伝子座の機能的破壊を生じさせるためにアンチセンス又はRNAi法を利用することができる(ノックダウン法)。そのような状況で、対象の指定遺伝子座の特異的配列を標的とするオリゴヌクレオチドが産生され、成功裏のターゲティングにより機能性タンパク質の産生が阻害される。また、例えば、米国特許公開第11/460606号に記載のpHUSHなどのRNAiベクターには、配列内リボソーム侵入部位(IRES)又は別々のプロモーターコントロール下に標的遺伝子とともに発現されるルシフェラーゼ遺伝子が含まれる。これにより、対象の遺伝子はRNAiによってノックダウンされ、ルシフェラーゼによりこれらの細胞の最終結果が追跡されるであろう。
【0070】
C.導入遺伝子の発現の決定
トランスジェニック動物は、任意の適切な方法によって所望の組織、細胞又は動物の導入遺伝子の存在及び/又は発現についてスクリーニングされうる。スクリーニングは、少なくとも導入遺伝子の一部に相補的であるプローブを用いて、サザンブロット又はノーザンブロット分析によって達成されることが多い。あるいは、Rosa26-ルシフェラーゼ導入遺伝子は、ホモ接合の仔のゲノムDNAのPCR分析によって、さらに検査されてもよい。Rosa26-ルシフェラーゼマウスにおけるルシフェラーゼmRNAの存在又は欠失は、導入遺伝子を有すると思われるマウスの臓器から生成されるcDNAのPCR増幅によって、確認することができる。
【0071】
導入遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体を用いたウエスタンブロット分析は、導入遺伝子産物の存在についてスクリーニングするための代替方法又は更なる方法として実施されうる。一般的に、DNAは、尾部組織から調製され、導入遺伝子についてサザン分析又はPCRによって分析される。あるいは、最も高いレベルで導入遺伝子を発現すると考えられる組織又は細胞は、サザン分析又はPCRを用いて導入遺伝子の存在及び発現について試験されるが、いずれの種類の組織又は細胞がこの分析のために使われてもよい。
【0072】
ルシフェラーゼ導入遺伝子がマーカーであるので、導入遺伝子を有するトランスジェニック動物はバイオルミネセンスによってスクリーニングすることができる。多数のマウスのスクリーニングのために、尾部切片を採取し、ルシフェリン基質を含有する溶液中に置く。陽性の尾部は生物発光性である。
【0073】
D.トランスジェニック動物の使用
本発明のトランスジェニック動物はヒトの細胞機能のモデルを表す。したがって、これらの動物は、細胞機能及び関連した現象の裏にあるメカニズムを調べる際に、そして、癌及び自己免疫性状態などの関連するヒトの疾患の治療及び診断の際に有用な生成物(例えば抗体、小分子など)を生成及び試験するために有用である。
【0074】
さらに、本発明のトランスジェニック動物は、ヒトへの投与のための特定の薬剤の安全性の指標を提供しうる。例えば、薬剤はトランスジェニック動物に投与されてもよく、薬剤の動物への投与の結果としての任意の毒性又は副作用はモニターされうるか又はインビボのヒトの使用のための薬剤の安全性及び耐容性の指標として同定されうる。短期に生じうる有害事象には、頭痛、感染、熱、冷え、疼痛、嘔気、無力症、咽頭炎、下痢、鼻炎、注入反応及び筋肉痛が含まれる。短期有害事象は処置後数日に測定される。長期の副作用には、特定の種類の細胞の細胞毒性、血小板減少による出血現象、炎症性及び/又はアレルギー性反応によるメディエーターの放出、免疫系及び/又は抗治療的薬剤抗体の発達の阻害、終末臓器毒性、及び感染又は悪性腫瘍の発症の増加が含まれる。長期の有害事象は処置後数か月に測定される。薬剤の効果は、薬剤及びルシフェリン基質の投与や特定の効果を予測するための生物発光撮像に供される特定の細胞ないしは身体全体によって調べられる。
【0075】
本発明のトランスジェニック動物は、細胞又は組織を含め、疾患のモデルとして利用することができる。限定するものではないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、小ブタ、ヤギ及び非ヒト霊長類、例えばヒヒ、サル及びチンパンジーを含む任意の種の動物を用いて疾患動物モデルを生成してもよい。これらのシステムは様々な適用法に用いられうる。このようなアッセイは、薬剤、例えば疾患症状を改善することが可能である化合物を同定するように設定したスクリーニング方策の一部として利用されうる。ゆえに、動物ベースモデルの及び細胞ベースのモデルを用いて、疾患を治療する際に有効となりうる薬剤、医薬、療法及び介入を同定してもよい。
【0076】
E.トランスジェニック動物の撮像
インビボバイオルミネセンス撮像は、細胞又は組織から発される光の検出に基づく、用途の多い高感度ツールである。バイオルミネセンスを用いて、非侵襲性の様式で腫瘍細胞、細菌性及びウイルス性の感染、遺伝子発現及び治療応答が追跡されている。バイオルミネセンス撮像により、同じ動物の疾患過程の長期モニタリング、つまり疾患経過の間に多くの時間点で多くの動物を分析するための代替法を提供する。バイオルミネセンスシグナルは、非常に高感度で活発化したCCDカメラで検出される。カメラは、麻酔、マウスプラットフォーム及び内部発光を提供する耐光性容器にマウントされる。
【実施例】
【0077】
実施例1:Rosa26-ルシフェラーゼコンストラクトの作製及び検証
マウスRosa26プロモーターをpBROAD3(InvivoGen, San Diego, CA)由来の1.9KbのHind III-Xba I断片として、1.7Kbのルシフェラーゼ遺伝子を含有するベクターに都合のよい制限酵素部位を用いてクローニングすることによって、Rosa26-ルシフェラーゼコンストラクトを作製した。良好なルシフェラーゼの発現のために、ポリアデニル化部位を、ルシフェラーゼ遺伝子の3'端に接着させた。
【0078】
Rosa26-ルシフェラーゼコンストラクトは、Neo耐性のプラスミドと共に(10:1)ES細胞に同時トランスフェクトして、G418中で選択した。したがって、選択されたクローンは、単一のNeoRプラスミド(ルシフェラーゼ陰性)又は両方のプラスミド(ルシフェラーゼ陽性)のいずれかを含有する。プレートからの直接選択を可能にする、ルシフェリン基質を含有する培地を細胞に加えた(図1)。次いで、これらのクローンを96ウェルプレート中で成長させて単離したコロニーにした。この例を図1に示す。96ウェルプレートの1つのウェル中の細胞数はおよそ50000〜100000であり画像はおよそ1分の露光でキャプチャーした。
【0079】
図2は子宮内のRosa26-ルシフェラーゼトランスジェニック胚のバイオルミネセンス画像を示す。発生中の胚が観察されうる最も早い段階は、E8.5である。生物発光シグナルは、E11.5、E13.5及びE15.5に明確に観察される。注目すべきはE13.5の散在性のシグナルである。このシグナルは全身画像において、トランスジェニック動物がずれるので、生物発光シグナルの上に内臓が乗り、一時的にシグナルが中断する。これは単にマウスを仰向けにすることによって容易に克服される。
【0080】
Rosa26-ルシフェラーゼコンストラクトはすべての組織においてルシフェラーゼを強く発現する。図3は、成体マウスの全身の生物発光撮像によりルシフェラーゼが産生する強力なシグナルを示す。マウス臓器の試験により、ルシフェラーゼシグナルが皮膚、心臓、肺、脾臓、肝臓、腎臓、脳及び胃腸(GI)管において検出されることが示された。この結果は、組織を収集して、タンパク質抽出物を調製して、ルミノメーターにて結果として生じるシグナルを読み込むことによって定量化することができる。このようにアッセイしたトランスジェニック胚及び成体組織は、図4に示される相対的な活性を生産した。樹立Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスは、現在およそ1年間モニターされているが、病態が観察されていない。
【0081】
実施例2:Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックの骨髄を用いた血液系の再増殖
骨髄(BM)に見られる造血幹細胞(HSC)は多分化能である。すべての種類の分化した血液細胞(マクロファージ、巨核球、赤血球など)はHSCに由来する。マウスが全身照射を受けると、血球減少になる。HSCを含有するBMを用いて血液細胞をマウスに再増殖」させない限り、照射を受けたマウスは死にうる。Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスを、全身照射した正常マウスへのBMドナーとして用いた。レシピエントは、350ラドにて亜致死的に処置するか、2×550ラドのγ照射にて致死的に処置した。各レシピエントにおよそ10の骨髄細胞を移植した。ドナー及びレシピエントはFVBバックグラウンドである。実験をするための計画を図7に示す。移植の2週間後に亜致死的に照射を受けたマウスを図8に示す。照射が350ラド用量であるので、以前のFVBマウスを用いた他の結果に基づき、骨髄由来細胞の10〜20%のみがドナーのものである。2週後に、胸腺、脾臓及び脚と背骨の骨髄にシグナルが局在していた(図8)。これは後に切開した臓器にて確認した。4週後に、より強いシグナルがリンパ節に局在した(図9)。
【0082】
照射の用量をより多くすると(2×550ラド用量)、以前のFVBマウスを用いた他の結果に基づき、BM由来の細胞の80〜90%はドナー由来であろう。10日目には、14日目の亜致死的に照射を受けたマウスよりもシグナルが非常に強い(図10)。また、シグナルは、胸腺、脾臓、リンパ節及び骨に局所化しており、後に切開した臓器にて確認した。致死的照射の4週後のマウスは、予想したように、胸腺、脾臓、リンパ節及びBMなどのリンパ臓器において陽性シグナルを示したが、皮膚及び腸でも示した(図11)。これは、BM由来の細胞が皮膚及び腸の組織修復に関与するという発見と一致している。ルシフェラーゼ陽性細胞の分布は、後に切開した臓器にて確認した。
【0083】
実施例3:T細胞群のアッセイ
T細胞群は、照射を受けて、Rosa26-ルシフェラーゼマウスから骨髄によって移植されたマウスにおいて検定された。レシピエントマウスは、セシウム137源を用いて、350ラドの亜致死量又は1100ラドの致死量(3時間の間隔を置いて550ラドの処置を2回)のいずれかで2〜3か月齢のFVBマウスを放射線照射して調製した。2〜6か月齢のRosa26-lucトランスジェニックマウスから骨髄細胞を回収し、15,000,000〜20,000,000個の細胞/レシピエントをレシピエントの尾静脈から注入した。宿主マウスは骨髄移植の1週後にバイオルミネセンスについてアッセイし、細胞生着を検出した。Rosa26-ルシフェラーゼモデルの1つの利点は、時間とともに細胞を追跡できることである。免疫細胞を減少させるために用いた抗体は、自己免疫性疾患の免疫応答を低減する際に有用となりうる。Rosa26-ルシフェラーゼBM細胞を移植したマウスに、0.2mg/マウスの用量の抗CD4抗体又は抗BR3抗体のいずれかを1回腹膜内抗体注射した。図12は抗CD4注射の結果を示す。ルシフェラーゼ陽性T細胞は、胸腺、リンパ節及び脾臓に集積した。これは図13に示すようにT細胞群の分析結果に示される。バイオルミネセンスの喪失で示されるように(図12)、8日間にわたる抗CD4による処置により、胸腺に見られるT細胞の数が減少した。8日間にわたって抗BR3抗体にて処置された宿主マウスは、脾臓及び骨のB細胞喪失を示した(図14)。実際のところ、抗CD4抗体及び抗BR3抗体の組合せにて処置したマウスは、個々の抗体によるものよりも免疫細胞減少の効果が低かった(図15)。このモデルから、Rosa26-ルシフェラーゼマウスが全身性エリテマトーデス、関節リウマチ及び骨関節炎などの疾患のための免疫細胞減少をモデル化する際に用いられうることが示される。
【0084】
実施例4:同種移植片腫瘍モデル
Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスの有用な態様は、腫瘍モデルとしてである。Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスは腫瘍形成のマウスモデル、例として、MMTV-HER2トランスジェニックマウスと交配してもよい(Finkle等, Clin. Can. Res. 10: 2499-2511 (2004))。雌MMTV-HER2マウスは、およそ6か月に乳房腺癌を発症する。肺転移はマウスのおよそ23%に見られる。MMTV-HER2マウスをRosa26-ルシフェラーゼマウスと交配させて、ルシフェラーゼを発現する乳房腺癌を発症する後代(プロジェニー)を作製してもよい。次いで、これらの腺癌を宿主ヌードマウスに異種移植し、腫瘍細胞の成長及び転移を移植したマウスを殺すことなくモニターすることができる。このような方式を図16に示し、実施した。結果を図23に示す。2つの腫瘍を5匹のベージュヌードマウスに移植した。各々のマウスを図23の縦列に示す。撮像は移植の3日後から始め、およそ6週間継続し、4〜7日ごとに各マウスの撮像を行った。図23において、下行方向の列は、経過時間点での各マウスについて撮った画像を表す。より早い時間点では、腫瘍サイズを測定することは難しかったが、ルシフェラーゼシグナルは定量化できた。後の時間点では、ルシフェラーゼシグナルの強度は、腫瘍サイズと相関していた。上から7列目の腫瘍サイズは、左から右に順に:794、544、487、407、及び442mmである。
【0085】
実施例5:サイトカインによって処置された場合、又は、疾患における特定の免疫細胞のインビボ増殖及び分布
EAEは、T細胞及び単核細胞の炎症とその後の中枢神経系の軸索の髄鞘脱落に特徴を有するT細胞媒介性の自己免疫性疾患である。通常、EAEはヒトのMSの関連する動物モデルであると考えられている(Bolton, C., Multiple Sclerosis 1:143 (1995))。急性モデル及び再発-寛解モデルはいずれも開発されている。Current Protocols in Immunology, above, units 15.1 and 15.2に記載のプロトコールを用いて、薬剤は、免疫が媒介する脱髄性疾患に対する単球刺激性又は阻害活性について試験することができる。このモデルにおいて、単球は、Rosa26-ルシフェラーゼマウスから単離して、EAE疾患モデルマウスに投与した(図17)。EAEマウスは、確実に動物のEAEに対する感染性を生産するために、同系交配することが多い。細胞は、身体のどの部位に侵入するかについて追跡することができる。EAEを緩和すると思われる薬剤は、単球集団に対するその効果を決定することによって、このモデルにて試験することができる。
【0086】
実施例6:抗体によるインビボリンパ球クリアランス
T細胞及びB細胞はともに分化及び同定のためのマーカーとして利用可能な細胞表面タンパク質を含む。前記のヒトB細胞マーカーは、ヒトBリンパ球に限定した分化抗原Bp35であり、「CD20」としても知られている。CD20は、早期前B細胞発達の間に発現され、プラズマ細胞分化まで残存する。CD20分子は細胞周期開始及び分化に必要である活性化プロセスを制御すると考えられている。
【0087】
CD20は、正常なB細胞だけでなく悪性のB細胞にも存在し、その増殖は変化せず、B細胞リンパ腫となりうる。ゆえに、CD20表面抗原は、抗原に特異的な抗体によるB細胞リンパ腫のターゲティングの候補として働きうる可能性を有する。これらの抗CD20抗体は正常及び悪性のB細胞のCD20細胞表面抗原に特異的に結合し、B細胞の破壊及び減少が生じる。腫瘍を破壊しうる化学的薬剤又は放射性標識を抗CD20抗体にコンジュゲートし、薬剤が腫瘍性B細胞に特異的に送達される。
【0088】
CD20を標的とするモノクローナル抗体の使用は記述されている(例えば、Weiner, Semin. Oncol., 26, 43-51 (1999);Gopal and Press, J. Lab. Clin. Med., 134, 445-450 (1999);White等, Pharm. Sci. Technol. Today, 2, 95 101 (1999)を参照のこと)。リツキサンTMは、新たにリンパ腫だと診断された患者及び再発性のリンパ腫を有する患者において単剤としても化学療法剤とともにも広く用いられているキメラの抗CD20モノクローナル抗体である(Davis et al, J. Clin. Oncol., 17, 1851 1857 (1999);Solal-Celigny等, Blood, 94, abstract 2802 (1999);Foran等, J. Clin. Oncol., 18, 317- 324 (2000)。また、放射性標識した抗体コンジュゲートの使用も記述されている(例えば、Bexxar;Zelenetz等, Blood, 94, abstract 2806 (1999))。
また、CD20を標的とする抗体の使用は他の状態、特に自己免疫状態を伴う状態に関して記載されている。例えば、抗CD20抗体療法は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス及び強直性脊椎炎の治療において今までも現在も評価されている。(Protheroe等, Rheumatology 38:1150(1999))。また、他の自己免疫性状態は、B細胞減少、例として自己免疫性血小板減少症及び好中球減少症及び自己免疫溶血性貧血を引き起こす抗CD20抗体による処置について研究されている。(Trape等, Haematologica 88:223 (2003);Arzo等, Annals of Rheumatic Diseases 61:922 (2002))。
【0089】
Rosa26-ルシフェラーゼマウスを用いて、免疫細胞クリアランスが生じうる薬剤の有効性を調べうる(図19)。免疫細胞は、Rosa26-ルシフェラーゼマウスから単離され、正常なマウスに注入されてもよい。次いで、正常なマウスは、免疫細胞を減少させるか又は刺激すると思われる薬剤にて処置されうる。例えば、Rosa26-ルシフェラーゼマウスから単離したB細胞を、正常なマウスに注射し、抗CD20抗体にて処理した(図18)。処置したマウスを、ルシフェラーゼ陽性B細胞のクリアランスについてアッセイし、薬剤の効果の程度を決定することができる。マウスが殺される必要はないので、多くの時点で、即時作用性か遅発作用性かを決定するために行うことができる。
【0090】
実施例7: 骨髄細胞は他の組織を補充する
マウスに、致命的に照射を与え、Rosa26-ルシフェラーゼマウスの骨髄細胞を移植した。5匹のマウスの全体を撮像し、移植した細胞が移動した領域を示した(図11)。マウスを屠殺して、多能性骨髄細胞が他の組織に移動し、その細胞群に加えられた可動かを決定した。図20〜22は、移植した細胞が、心臓、肝臓、胸腺、脾臓、筋肉、腎臓、精巣、大腸、皮膚及び体脂肪に様々な程度で組み込まれたことを示す。
【0091】
実施例8:バイオルミネセンス撮像
生きているマウス内に局在する生物発光から生じる低シグナル光子流動の撮像に関する課題を克服するために、二段階のマイクロチャネルプレート(MCP)増強、冷却CCDカメラ(ICCD)を画像システムとして用いる。実際、高い量子効率GaAsP光電陰極の冷却は、典型的にはこの種の適用の限界であるダークカウントを取り除く。二段階MCPは、最高1,000,000の光ゲインを生じ、その後偶発光子流動シグナルをCCDの読み出し雑音より上に増幅する。専用のソフトウェアシステムを併用すると、この構成は豊富な導入遺伝子の発現の低い難しい疾患モデルを撮像することができ、スクリーニングツールとしてバイオルミネセンスの有用性を向上させる獲得時間を減少しうる。
【0092】
ルシフェラーゼは、導入遺伝子として又はルシフェラーゼを発現させるようにトランスフェクションした細胞株の注射によって(例えば異種移植片研究)マウスに組み込まれてもよい。ルシフェラーゼを有するマウスは、ルシフェラーゼ基質であるルシフェリンを腹腔内投与される。ICCDを統合した耐光性撮像チャンバーにそれらを配置して撮像される。第一に、マウスの基準画像を取得し、ルシフェリン投与のおよそ5分後にバイオルミネセンス画像を取得する。カメラの露光時間は、マウスからのバイオルミネセンス発光を局在することができるように設定する(弱いシグナルでは長時間の曝露)。一般的に、2、3秒露光させる。データは、基準画像上にバイオルミネセンス画像を重ねることによって処理される。シグナルは、バイオルミネセンスデータ画像のピクセル強度の対象分析の領域を用いて数量化されうる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】Rosa26-ルシフェラーゼコンストラクトをトランスフェクションしたES細胞のバイオルミネセンスを示す。
【図2】子宮内のRosa26-ルシフェラーゼトランスジェニック胚のバイオルミネセンスを示す。
【図3】Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウス及び個体の切開した臓器のバイオルミネセンスを示す。
【図4】Rosa26-ルシフェラーゼ陽性マウスの胚又は臓器のルシフェラーゼ活性の定量化を示す。
【図5】MMTV-HER2トランスジェニックマウスと交配したRosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスからの生物発光シグナルを示す。
【図6】子宮内の胚及び新生Rosa26-ルシフェラーゼヘテロ接合マウスの生物発光シグナルを示す。
【図7】Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスによる造血幹細胞再増殖の概略図を示す。
【図8】Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスの骨髄による骨髄移植の2週間後に亜致死的に照射を受けたマウスを示す。
【図9】Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスの骨髄による骨髄移植の4週間後に亜致死的に照射を受けたマウスを示す。
【図10】Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスの骨髄の移植の10日後に亜致死的に照射を受けたマウスを示す。
【図11】Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスから、骨髄による移植の4週間後に、致死的に照射を受けたマウスを示す。
【図12】抗CD4抗体にて処置したRosa26-ルシフェラーゼキメラマウスを示す。
【図13】CD4及びCD8抗原を発現する細胞のT細胞分布を示す。
【図14】抗BR3抗体にて処置したRosa26-ルシフェラーゼキメラマウスを示す。
【図15】抗CD4及び抗BR3抗体にて処置したRosa26-ルシフェラーゼキメラマウスを示す。
【図16】腫瘍増殖の分析のためのマウス異種移植片モデルを示す。
【図17】単球の分析のためのマウスEAEモデルを示す。
【図18】抗CD20抗体にて処置することによるB細胞のクリアランスを示す。
【図19】抗VEGF抗体処置に耐性の骨髄由来細胞の役割を示す。
【図20】致死的に照射して、Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスの骨髄を移植したマウスから切開した臓器のバイオルミネセンスを示す。生物発光領域は、骨髄前駆細胞がその組織中の細胞群に関与しうることを示す。
【図21】致死的に照射して、Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスの骨髄を移植したマウスから切開した臓器のバイオルミネセンスを示す。生物発光領域は、骨髄前駆細胞がその組織中の細胞群に関与しうることを示す。
【図22】致死的に照射して、Rosa26-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスの骨髄を移植したマウスから切開した臓器のバイオルミネセンスを示す。生物発光領域は、骨髄前駆細胞がその組織中の細胞群に関与しうることを示す。
【図23】生物発光腫瘍(図16に示す方式を用いて得たもの)を移植されている宿主動物のバイオルミネセンスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種性のコンストラクトを含んでなるトランスジェニック動物であって、ルシフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む該異種性のコンストラクトがRosa26プロモーターに作用可能に結合しており、該異種性のコンストラクトはトランスジェニック動物のゲノムにランダムに組み込まれるものであるトランスジェニック動物。
【請求項2】
前記Rosa26プロモーターが配列番号:1のヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載のトランスジェニック動物。
【請求項3】
前記トランスジェニック動物のすべての細胞がルシフェラーゼを発現する、請求項1に記載のトランスジェニック動物。
【請求項4】
前記動物が繁殖性であり、ルシフェラーゼ導入遺伝子をその仔に伝授する、請求項3に記載のトランスジェニック動物。
【請求項5】
前記動物がルシフェラーゼ導入遺伝子についてヘテロ接合体である、請求項4に記載のトランスジェニック動物。
【請求項6】
前記動物がルシフェラーゼ導入遺伝子についてホモ接合体である、請求項4に記載のトランスジェニック動物。
【請求項7】
腫瘍の成長をモニターする方法であって、
a) ルシフェラーゼを発現するトランスジェニック動物を腫瘍を生産する他のトランスジェニック動物と交配させて仔を産生し;
b) 仔からのルシフェラーゼ陽性腫瘍細胞を宿主動物に移植し;そして、
c) 宿主動物からのバイオルミネセンスを撮像する
ことを含んでなる方法。
【請求項8】
腫瘍細胞の増殖を低減することができる薬剤の同定方法であって、
a) ルシフェラーゼを発現するトランスジェニック動物を腫瘍を生産する他のトランスジェニック動物と交配させて仔を産生し;
b) 仔からのルシフェラーゼ陽性腫瘍細胞を宿主動物に移植し;
c) 宿主動物に薬剤を投与し;
d) 宿主動物を撮像して、腫瘍細胞の減少についてアッセイする
ことを含んでなる方法。
【請求項9】
免疫細胞を減少させるか又は殺傷することができる薬剤の同定方法であって、
a) ルシフェラーゼ陽性免疫細胞をルシフェラーゼを発現するトランスジェニック動物から単離し;
b) 免疫細胞を宿主動物に移植し;
c) 薬剤を宿主動物に投与し;
d) 宿主動物を撮像して、免疫細胞の減少についてアッセイする
ことを含んでなる方法。
【請求項10】
前記宿主動物がEAEの作用を受けやすい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫細胞がリンパ腫細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
a) 請求項1に記載のトランスジェニック動物を作製し;
b) バイオルミネセンスを生成するために有効な量のルシフェリン基質を該トランスジェニック動物に注入し;
c) トランスジェニック動物からのバイオルミネセンスを検出する
ことを含んでなる、画像法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2009−511050(P2009−511050A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535575(P2008−535575)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/039035
【国際公開番号】WO2007/047141
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】