説明

バイオ燃料電池用燃料容器及びバイオ燃料電池システム

【課題】燃料電池本体にポンプなどの燃料供給用の機構を設けなくても、簡便な操作で、電池内の燃料溶液を入れ替えることができるバイオ燃料電池用燃料容器及びバイオ燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料溶液が貯留される燃料溶液貯留部と、廃液が貯留される廃液貯留部と、燃料溶液の排出及び使用後の溶液の吸引を行う送液機構とを備える燃料容器を使用して、表面に酵素が存在する電極を備えたバイオ燃料電池の燃料交換を行う。具体的には、送液機構により、燃料容器の燃料溶液貯留部に貯留されている燃料溶液をバイオ燃料電池に注入すると共に、バイオ燃料電池内の使用後の溶液(廃液)を廃液貯留部に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、酸化還元酵素を用いたバイオ燃料電池用の燃料容器及びバイオ燃料電池システムに関する。より詳しくは、バイオ燃料電池における燃料供給と使用後の廃液回収の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
反応触媒として酸化還元酵素を使用したバイオ燃料電池は、グルコース及びエタノールのように通常の工業触媒では利用できない燃料から、効率よく電子を取り出すことができるため、高容量でかつ安全性が高い次世代の燃料電池として注目されている。図17は酵素を使用したバイオ燃料電池の反応スキームを示す図である。例えば、図17に示すように、グルコースを燃料とするバイオ燃料電池の場合、負極(アノード)ではグルコース(Glucose)の酸化反応が進行して電子が取り出され、正極(カソード)では大気中の酸素(O)の還元反応が進行する。
【0003】
また、一般に、燃料電池は、燃料溶液を補充することにより、繰り返し発電を行うことができるという特徴があり、電池内部に燃料を補給するための燃料カートリッジが使用されている(例えば、特許文献1,2参照)。例えば、特許文献1に記載の燃料カートリッジは、手で押すことにより燃料を電池に注入できるようになっている。また、特許文献2に記載の燃料カートリッジでは、電池との接続部の構造を工夫することで、燃料補給時の液だれを防止している。
【0004】
更に、従来、燃料が充填された燃料タンクと、電池内で生成された生成物を回収する回収タンクとを備えた燃料カートリッジも提案されている(特許文献3参照)。この特許文献3に記載の燃料カートリッジでは、燃料であるメタノールが電池内に注入されて空いたスペースに、廃液を貯留する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−227092号公報
【特許文献2】特開2008−192345号公報
【特許文献3】特開2006−49032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。バイオ燃料電池の場合、ダイレクトメタノール燃料電池とは異なり、燃料溶液に燃料以外の成分が含まれていることが多く、燃料溶液を補充する際は、使用(発電)後の溶液を取り出す作業と、新たな燃料溶液を注入する作業が必要となる。この入れ替え作業は、煩雑で、作業中に使用済みの溶液が手や服に付着する虞もあり、更に、使用済みの溶液を捨てることができる場所で行う必要もあり、不便であるという問題点がある。
【0007】
そこで、特許文献3に記載されているような廃液回収タンクを備えた燃料カートリッジを使用することが考えられるが、この従来の燃料カートリッジは、燃料電池使用時は、常に燃料タンクから廃液回収タンクへの送液システムを稼働させる必要がある。即ち、特許文献3に記載の燃料カートリッジは、燃料電池本体にポンプを付属させ、かつそのポンプを常時稼働させなければならないため、電池本体で発電した電力を常にポンプに供給することとなり、燃料電池の発電効率が低下するという問題点がある。
【0008】
また、この特許文献3に記載の燃料カートリッジのように、燃料電池本体にポンプを付属させると、燃料電池システムが大型化するという問題点もある。更に、バイオ燃料電池は、電池本体にポンプを付属させると、グルコースなどの固体燃料を使用した場合に、停止している間にポンプや送液チューブに残留した燃料が乾燥して固化し、目詰まりが起こって故障の原因になるという問題点もある。
【0009】
そこで、本開示は、燃料電池本体にポンプなどの燃料供給用の機構を設けなくても、簡便な操作で、電池内の燃料溶液を入れ替えることができるバイオ燃料電池用燃料容器及びバイオ燃料電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係るバイオ燃料電池用燃料容器は、表面に酵素が存在する電極を備えたバイオ燃料電池に使用される燃料溶液が貯留される燃料溶液貯留部と、前記バイオ燃料電池で使用された後の溶液が貯留される廃液貯留部と、を備え、前記燃料溶液貯留部の燃料溶液を前記バイオ燃料電池に注入すると共に、該バイオ燃料電池内の使用後の溶液を前記廃液貯留部に回収するものである。
本開示においては、燃料溶液貯留部と廃液貯留部とを備えているため、廃液回収及び燃料供給を、一連の作業で実施できる。また、バイオ燃料電池に別途ポンプなどを設けなくても、重力、押圧力及び内部ポンプなどにより、液の注入及び回収が可能である。
この燃料容器では、前記燃料溶液貯留部が前記バイオ燃料電池の燃料注入口に連結され、前記排液貯留部が前記バイオ燃料電池の廃液排出口に連結されてもよい。
また、前記燃料貯留部及び前記廃液貯留部は、その内部に貯留される液の量に応じて容積が変化してもよい。
更に、前記燃料溶液の排出及び前記使用後の溶液の吸引を行うポンプを備えることもできる。
その場合、前記燃料貯留部に、燃料溶液の1回分の供給量を計量する計量部が設けられていてもよい。
【0011】
本開示に係るバイオ燃料電池システムは、前述したバイオ燃料電池用燃料容器を備えたものである。
【0012】
また、本開示に係る他のバイオ燃料電池システムは、表面に酸化還元酵素が存在する電極を備えたバイオ燃料電池と、前記バイオ燃料電池の燃料注入口に連結された燃料供給容器と、前記バイオ燃料電池の燃料排出口に連結された廃液回収容器と、を有するものであり、前記燃料供給容器と、廃液回収容器とは、前記バイオ燃料電池を介して連通されており、前記燃料供給容器を加圧するか、又は前記廃液回収容器を引圧することにより、前記燃料供給容器内の燃料が前記バイオ電池内に導入される。
このバイオ燃料電池システムでは、前記バイオ燃料電池の燃料注入口に、燃料以外の液体が貯留された液体供給容器が連結されており、前記燃料と前記液体の混合物がバイオ燃料電池に供給されてもよい。
また、電極に存在している酵素の種類が異なる複数のバイオ燃料電池が、一方の廃液排出口と他方の燃料溶液注入口とを連結することにより、直列状に配置することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、燃料溶液貯留部及び廃液貯留部を備え、燃料電池本体にポンプなどの燃料供給・排出用の機構を設けなくても、液の注入及び回収が可能であるため、簡便な操作で、電池内の燃料溶液を入れ替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)及び(b)は本開示の第1の実施形態の燃料容器の構成及び使用方法を模式的に示す図である。
【図2】(a)〜(c)は本開示の第1の実施形態の変形例の燃料容器の構成及び使用方法を模式的に示す図である。
【図3】本開示の第1の実施形態の変形例の燃料容器20とバイオ燃料電池30との連結部分の構成を示す断面図である。
【図4】図3に示す燃料容器20とバイオ燃料電池30を使用した玩具を示す図である。
【図5】(a)及び(b)は本開示の第2の実施形態の燃料容器の構成及び使用方法を模式的に示す図であり、(a)は使用前、(b)は使用後の状態を示す。
【図6】各貯留部の容積が変化しない燃料容器を示す図である。
【図7】ポンプの位置が異なる燃料容器を示す図である
【図8】(a)及び(b)は手動ポンプを備えた燃料容器の構成及び使用方法を模式的に示す図である。
【図9】(a)〜(c)は本開示の第2の実施形態の変形例の燃料容器の構成及び使用方法を模式的に示す図である。
【図10】(a)及び(b)は2つの電池部が直列に接続した構成のバイオ燃料電池に、燃料溶液を供給する方法を示す図である。
【図11】本開示の第3の実施形態の燃料容器の構成及び使用方法を模式的に示す図である。
【図12】図11に示す燃料容器80の応用例を示す図である。
【図13】(a)及び(b)は本開示の第4の実施形態のバイオ燃料電池システムの構成及び燃料の供給・排出方法を模式的に示す図である。
【図14】本開示の第4の実施形態の変形例の燃料電池システムの構成を模式的に示す図である。
【図15】(a)〜(d)は本開示の第5の実施形態のバイオ燃料電池システムの構成及び使用方法を模式的に示す図である。
【図16】本開示の第6の実施形態のバイオ燃料電池システムの構成及び動作を模式的に示す図である。
【図17】酵素を使用したバイオ燃料電池の反応スキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示を実施するための形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す各実施形態に限定されるものではない。また、説明は、以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態
(使い切り型の燃料容器の例)
2.第1の実施の形態の変形例
(溶液の逆流・漏出防止機構を備える燃料容器の例)
3.第2の実施の形態
(ポンプを備えた燃料容器の例)
4.第2の実施の形態の変形例
(燃料注入口と廃液回収口とが共通のバイオ燃料電池用の燃料容器の例)
5.第3の実施の形態
(燃料溶液貯留部と廃液貯留部とが共通の燃料容器の例)
6.第4の実施形態
(燃料容器とは別に廃液容器が設けられている燃料電池システムの例)
7.第4の実施の形態の変形例
(燃料容器が複数設けられている燃料電池システムの例)
8.第5の実施の形態
(シリンジ型の燃料容器を使用した燃料電池システムの例)
9.第6の実施の形態
(酵素が異なる複数の燃料電池を備える燃料電池システムの例)

【0016】
<1.第1の実施の形態>
[全体構成]
先ず、本開示の第1の実施形態に係るバイオ燃料電池用燃料容器(以下、単に燃料容器ともいう。)について説明する。図1(a)及び(b)は本実施形態の燃料容器の構成及び使用方法を模式的に示す図である。図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の燃料容器1は、少なくとも燃料溶液貯留部2と廃液貯留部3とを備えている。
【0017】
[燃料溶液貯留部2]
燃料溶液貯留部2は、交換用の燃料溶液が貯留される部分であり、燃料溶液排出口4に連通しており、バイオ燃料電池10の燃料タンク11に設けられた燃料注入口12に連結される。この燃料貯留部2は、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエステル、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、アクリル樹脂及びポリアセタール樹脂などのプラスチック材料や、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム及びシリコーンゴムなどの各種ゴム材料などにより形成することができる。
【0018】
[廃液貯留部3]
廃液貯留部3は、バイオ燃料電池10で使用した後の溶液(廃液)を貯留する部分であり、廃液回収口5に連通しており、バイオ燃料電池10の燃料タンク11に設けられた廃液排出口13に連結される。この廃液貯留部3も前述した燃料溶液貯留部2と同様に、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエステル、ABS樹脂、アクリル樹脂及びポリアセタール樹脂などのプラスチック材料や、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム及びシリコーンゴムなどの各種ゴム材料などにより形成することができる。
【0019】
[使用方法]
次に、本実施形態の燃料容器1の使用方法、即ち、燃料容器1を使用して、バイオ燃料電池10の燃料溶液を交換する方法について説明する。本実施形態の燃料容器1を使用する場合は、予め、燃料溶液貯留部2に燃料溶液を充填しておく。そして、図1(b)に示すように、燃料容器1の燃料溶液排出口4とバイオ燃料電池10の燃料注入口12を連結させると共に、燃料容器1の廃液回収口5とバイオ燃料電池10の廃液排出口13とを連結する。
【0020】
次に、バイオ燃料電池10の燃料タンク11から、使用済みの溶液を取り出し、廃液貯留部3内に回収する。その方法としては、例えば、廃液貯留部3がバイオ燃料電池10の燃料タンク11よりも下方になるように配置し、重力を利用して排出させる方法がある。その場合、例えば、燃料容器1の燃料溶液排出口4やバイオ燃料電池10の燃料注入口12にコックなどを設け、未使用の燃料溶液が燃料タンク11内に混入しないようにすることが望ましい。また、燃料タンク11における廃液貯留部3側の側面は、廃液排出口13に向かって傾斜していることが望ましい。これにより、燃料タンク11内に残留する廃液の量を低減することができる。
【0021】
次に、燃料容器1の燃料溶液貯留部2から、交換用の燃料溶液をバイオ燃料電池10の燃料タンク11に注入する。その方法としては、燃料貯留部2がバイオ燃料電池の燃料タンク11よりも上方になるように配置し、重力を利用して排出させる方法がある。このとき、廃液の排出により燃料タンク11内が負圧になっているため、燃料貯留部2から排出された燃料溶液は、燃料タンク11内にスムーズに注入される。
【0022】
また、燃料溶液貯留部2側においても、燃料容器1の廃液回収口5やバイオ燃料電池10の廃液排出口13に逆流防止弁などを設け、注入した燃料溶液が燃料容器1に流出しないようにすることが望ましい。更に、燃料溶液貯留部2の燃料タンク11側の側面は、燃料溶液排出口4に向かって傾斜していることが望ましい。これにより、燃料溶液貯留部2内に残留する燃料溶液の量を低減することができる。
【0023】
このように、図1に示す燃料容器1においては、燃料溶液貯留部2及び廃液貯留部3の配置及び構造によって、ポンプを使用せずに、送液が可能となっている。なお、本開示は重力を利用して燃料交換を行う方法に限定されるものではなく、例えば、燃料容器1やバイオ燃料電池10の筐体が柔軟な素材で形成されている場合は、燃料容器1やバイオ燃料電池10を押圧することで、溶液の回収・注入を行うことができる。この場合は、燃料溶液貯留部2や廃液貯留部3自体が送液機構として機能する。
【0024】
また、予め、燃料溶液貯留部2に空気を封入しておき、その空気圧を利用して燃料溶液を燃料タンク11に注入したり、予め、廃液貯留部3を減圧状態にしておき、圧力差を利用して廃液を吸引したりしてもよい。更に、廃液貯留部3が柔軟な素材で形成されている場合は、廃液貯留部3を押圧することにより、その内部を一旦負圧にして、スポイトと同様の原理で、燃料タンク11内の廃液を吸い出すこともできる。
【0025】
このように、本実施形態の燃料容器1では、燃料溶液貯留部2と廃液貯留部3とを備えているため、使用済みの溶液の回収と新たな燃料溶液の補充とを一回の作業で行うことができる。また、バイオ燃料電池10にポンプなどを設けなくても、燃料容器1単独で送液が可能であるため、従来のバイオ燃料電池にも適用可能である。
【0026】
更に、燃料注入後のバイオ燃料電池10は、燃料容器1を取り外せば再度使用することが可能となる。一方、バイオ燃料電池から回収された廃液は、中性付近の溶液で、その中に含まれるものは主に未反応のグルコースや反応生成物であるグルコノラクトンなどのグルコース分解物である。このため、廃液が貯留された燃料容器1は、一般ごみとして廃棄することが可能であり、更に、特許文献3に記載の燃料カートリッジのように、安全性を確保するために複雑な構造にする必要もない。
【0027】
また、燃料回収容器も兼用しているため、作業場所を考慮する必要がなく、持ち運びの利便性も向上する。更に、燃料交換時に溶液が漏出することがないため、安全性が向上し、幼児による誤飲などを防止することもできる。更にまた、燃料溶液が外気と接触する機会が少なくなるため、燃料溶液に異物が混入することも防止する効果もある。更にまた、バイオ燃料電池10の場合、特許文献3に記載の従来の燃料電池のように、発電時に燃料電池本体に廃液タンクを付属させておく必要がないため、電池の小型化を阻害せず、また、携帯する必要がないため、複数回使用可能なサイズにすることも可能である。
【0028】
<2.第1の実施の形態の変形例>
[全体構成]
次に、本開示の第1の実施形態の変形例に係る燃料容器について説明する。図2(a)〜(c)は本変形例の燃料容器の構成及び使用方法を模式的に示す図である。なお、図2においては、図1に示す第1の実施形態の燃料容器の構成要素と同じものには、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図2(a)に示すように、本変形例の燃料容器20は、溶液の逆流及び漏出を防止する機構を備えており、同様の逆流・漏出防止機構を備えたバイオ燃料電池30の燃料溶液を交換するものである。
【0029】
[燃料容器20]
本変形例の燃料容器20には、燃料溶液貯留部2に注入用管6が連結されると共に、廃液貯留部3に回収用の管7が連結されている。そして、注入用管6及び回収用管7の途中又は連結部には、例えばコック8,9などの液の逆流や漏出を防止する機構が取り付けられている。
【0030】
[バイオ燃料電池30]
本変形例の燃料容器20が適用されるバイオ燃料電池30には、燃料タンク11に設けられた燃料溶液注入孔12及び廃液排出口13の開閉を行うコック14,15が設けられている。また、このバイオ燃料電池30には、燃料容器20との連結部分、即ち、燃料溶液注入口12及び廃液排出口13に、逆流・漏出防止機構が設けられている。
【0031】
図3は本変形例の燃料容器20とバイオ燃料電池30との連結部分の構成を示す断面図である。図3(a)及び(b)に示すように、バイオ燃料電池30の燃料溶液注入口12には、逆流・漏出防止機構として、逆止弁16及びコック14が設けられている。そして、この逆流・漏出防止機構は、通常は図3(a)に示すように、逆止弁16及びコック14が閉じた状態になっているが、燃料溶液が注入される際は、図3(b)に示すように、注入用管6が挿入されることにより逆止弁16が開き、更にコック14も開放される。
【0032】
[使用方法]
次に、本変形例の燃料容器20の使用方法、即ち、燃料容器20を使用して、バイオ燃料電池30の燃料溶液を交換する方法について説明する。本変形例の燃料容器20を使用する場合も、予め、燃料溶液貯留部2に燃料溶液を充填しておく。そして、図2(b)に示すように、先ず、燃料容器20の回収用管7をバイオ燃料電池10の廃液排出口13に連結し、燃料容器20及びバイオ燃料電池30の廃液側のコック9,15を開く。このとき、燃料容器20及びバイオ燃料電池30の燃料溶液側のコック8,14は閉じたままにしておく。
【0033】
また、燃料容器20及びバイオ燃料電池30は、廃液貯留部3が燃料タンク11よりも下方に位置するように配置することが望ましい。これにより、燃料タンク11内の使用済み溶液は重力により自発的に排出され、燃料容器20の廃液貯留部3に貯留される。そして、廃液の使用済み溶液の排出が完了した後、燃料容器20及びバイオ燃料電池30の廃液側のコック9,15を閉じ、回収用管7を外す。
【0034】
次に、新しい燃料溶液を、バイオ燃料電池30に注入する。具体的には、燃料容器20の注入用管6をバイオ燃料電池30の燃料注入口12に連結し、燃料容器20及びバイオ燃料電池30の燃料溶液側のコック8,14を開く。このとき、燃料容器20及びバイオ燃料電池30の廃液側のコック9,15は閉じたままにしておく。
【0035】
また、燃料容器20及びバイオ燃料電池30は、燃料貯留部2が燃料タンク11よりも上方に位置するように配置することが望ましい。これにより、燃料貯留部2内の交換用燃料溶液は重力により自発的に排出され、バイオ燃料電池30の燃料タンク11に貯留される。そして、燃料溶液の注入が完了した後、燃料容器20及びバイオ燃料電池30の燃料溶液側のコック8、14を閉じ、注入用管6を外す。
【0036】
このように、本変形例の燃料容器20では、逆流・漏出防止機構を備えているため、燃料溶液交換時に溶液が外部に漏れたり、廃液と新規な燃料溶液とが混合したりすることがない。このため、簡便な操作で、確実に燃料溶液の交換を行うことができ、更に、廃液や燃料溶液により手や衣類を汚すこともない。
【0037】
更に、この燃料容器20及びバイオ燃料電池30は、種々の製品に応用することが可能である。図4は図3に示す燃料容器20とバイオ燃料電池30を使用した玩具を示す図である。例えば、図4に示すように、車型の玩具31に動力源としてバイオ燃料電池30を搭載し、燃料容器20を燃料スタンド型にすることによって、燃料スタントで給油するように、玩具31のバイオ燃料電池30に燃料溶液を注入することができる。
【0038】
なお、本変形例における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態の燃料容器と同様である。
【0039】
<3.第2の実施の形態>
[全体構成]
次に、本開示の第2の実施形態に係るバイオ燃料電池用燃料容器について説明する。図5(a)及び(b)は本実施形態の燃料容器の構成及び使用方法を模式的に示す図であり、図5(a)は使用前、図5(b)は使用後の状態を示す。なお、図5においては、図1に示す第1の実施形態の燃料電池の構成要素と同じものには、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図5(a)及び(b)に示すように、本実施形態の燃料容器40は、燃料溶液貯留部42及び廃液貯留部43に加えて、ポンプ41が設けられている。
【0040】
[ポンプ41]
ポンプ41は、送液機構であり、燃料溶液貯留部42内の燃料溶液を排出すると共に、バイオ燃料電池10の燃料タンク11から廃液を吸引するためのものである。このポンプ41の種類は、特に限定されるものではないが、燃料容器40が使用後廃棄する「使い切りタイプ」の場合は、例えば手動で動作するものやぜんまいなどの弾性体の復元力を利用したものを利用することができる。また、燃料容器40を繰り返し使用する場合は、ペリスタポンプや空気圧を利用するポンプ、外部及び内部電源を使用するものなど種々のポンプが使用可能である。
【0041】
[燃料溶液貯留部42,廃液貯留部43]
また、本実施形態の燃料容器40では、燃料溶液貯留部42及び廃棄貯留部43が伸縮可能な材料で構成されており、液量に応じてその容積が変化するようになっている。このような材料としては、例えば天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの各種ゴム材料を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
[使用方法]
次に、本実施形態の燃料容器40の使用方法、即ち、燃料容器40を使用して、バイオ燃料電池10の燃料溶液を交換する方法について説明する。本実施形態の燃料容器40を使用する場合も、予め、燃料溶液貯留部42に燃料溶液を充填しておく。これにより、使用前(燃料溶液交換前)は、廃液貯留部43よりも燃料溶液貯留42の方が、容積が大きくなっている。
【0043】
次に、本実施形態の燃料容器40も、前述した第1の実施形態の燃料容器と同様に、燃料溶液貯留部42及び廃液貯留部43を、バイオ燃料電池10の燃料タンク11と連結する。その後、図5(a)に示すように、手動又は各種動力源を使用してポンプ41を動作させて、先ず、バイオ燃料電池10の燃料タンク11から、使用済みの溶液を取り出し、廃液貯留部43内に回収する。これにより、廃液貯留部43の容積が増加し、燃料溶液貯留部42を押圧することとなる。
【0044】
次に、ポンプ41と燃料溶液貯留部42の押圧力によって、燃料容器40の燃料溶液貯留部42から、交換用の燃料溶液をバイオ燃料電池10の燃料タンク11に注入する。これにより、図5(b)に示すように、燃料溶液貯留部42の容積が減少する。
【0045】
このように、本実施形態の燃料容器40では、送液機構としてポンプ41を備えているため、例えば注入及び排出する液の量が多い場合でも、より迅速に燃料交換を行うことができる。また、燃料貯留部42と廃液貯留部43の位置に制限がなくなるため、設計の自由度が増す。更に、特許文献3に記載の燃料カートリッジでは、常時ポンプを稼働させる必要があるが、本実施形態の燃料容器40では、燃料交換時のみポンプ40を稼働させればよいため、電力稼働の場合でも、バイオ燃料電池10のエネルギー効率が低下することはない。なお、本実施形態の燃料容器における上記以外の構成及び効果は前述した第1の実施形態及びその変形例の燃料容器と同様である。
【0046】
なお、図5には、燃料溶液貯留部42及び廃液貯留部43の容積が変化する燃料容器の例を示しているが、本開示はこれに限定されるものではない。具体的には、図6に示す燃料容器45のように、燃料溶液貯留部2及び廃液貯留部3の容積が変化しない場合でも、ポンプ41により、送液及び排液をすることが可能である。
【0047】
また、ポンプ41の位置も特に限定されるものではなく、図7に示す燃料容器46のように、燃料貯留部2と廃液貯留部3との間に、ポンプ41を配置してもよい。この場合、燃料タンク11から使用済みの溶液を廃液貯留部3に回収する際と、新しい燃料を燃料貯留部2から燃料タンク11に注入する際の両方でポンプ41を使用することができるようになるため、確実な燃料交換を実現することができる。
【0048】
更に、例えば、図8(a)及び(b)に示す燃料容器50ように、燃料溶液貯留部52に、1回分の注入量を計測し保持する計量部52aを設け、手動ポンプ51によりこの計量部52aに燃料溶液を汲み上げた後、バイオ燃料電池10に供給する構成としてもよい。この場合は、ポンプ51を押し下げる事で、燃料貯留部52から計量部52aに1回分の燃料溶液が送られ、過剰に汲み上げられた分は、燃料貯留部52に戻される。
【0049】
一方、燃料タンク11から廃液貯留部53に、使用済みの溶液を回収する際は、例えば前述した第1の実施形態と同様に、重力などを利用して排出させる。このような構成にすることにより、燃料容器50を複数回使用することが可能となる。また、一つの燃料溶液50で、複数回燃料交換を行うことができるため、廃棄数を減少させることができると共に、廃棄物の分量自体を減量化することができるため、環境への負荷も低減する。
【0050】
<4.第2の実施の形態の変形例>
[全体構成]
次に、本開示の第2の実施形態の変形例に係る燃料容器について説明する。前述した第1,2の実施形態の燃料容器は、燃料溶液排出口と廃液回収口がそれぞれ個別に設けられているが、本開示はこれに限定されるものではなく、これらが1つで兼用されていてもよい。図9(a)〜(c)は本変形例の燃料容器の構成及び使用方法を模式的に示す図である。なお、図9においては、図5に示す第2の実施形態の燃料容器40及び図6に示す燃料容器45の構成要素と同じものには、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
図9(a)〜(c)に示すように、本変形例の燃料容器60は、燃料溶液貯留部2と廃液貯留部3とが、1つの送排液口61に連結されている。そして、燃料溶液貯留部2に連通する流路と、廃液貯留部3に連通する流路とが合流する部分には、コック62が設けられている。この燃料容器60は、例えば、燃料タンク71に廃液排出口が設けられておらず、燃料溶液注入口72から廃液を排出する必要があるバイオ燃料電池70に好適である。
【0052】
[使用方法]
次に、本変形例の燃料容器60の使用方法、即ち、燃料容器60を使用して、バイオ燃料電池70の燃料溶液を交換する方法について説明する。本変形例の燃料容器60を使用する場合も、予め、燃料溶液貯留部2に燃料溶液を充填しておく。そして、図9(a)に示すように、先ず、燃料容器60の送排液口61をバイオ燃料電池70の燃料溶液注入口72に連結する。
【0053】
その後、図9(b)に示すように、バイオ燃料電池70の廃液側のコック73を開く。このとき、燃料容器60コック62は、燃料貯留部2側は閉じ、廃液貯留部3側に開放した状態にして、ポンプ41を動作させる。これにより、バイオ燃料電池70の燃料タンク71から廃液が取り出され、廃液貯留部3に回収される。
【0054】
次に、図9(c)に示すように、廃液が完全に排出された後、燃料容器60のコック62を操作し、廃液貯留部3側を閉じ、燃料貯留部2側を開放する。これにより、燃料貯留部2に充填された交換用の燃料溶液が、バイオ燃料電池70の燃料タンク71に注入される。
【0055】
このように、本変形例の燃料容器60では、燃料溶液貯留部2と廃液貯留部3とが、1つの送排液口61に連結されているため、コックの数が少なくなり、操作がより簡便になる。また、逆流・漏出防止機構を必要とする箇所も少なくなるため、製造コストを低減することもできる。
【0056】
本変形例の構成は、例えば、複数の電池部が直列又は並列で接続された構成のバイオ燃料電池にも適用が可能である。図10(a)及び(b)は2つの電池部が直列に接続した構成のバイオ燃料電池に、燃料溶液を供給する方法を示す図である。図10(a)及び(b)に示すように、電池部76a及び電池部76bが直列に接続されており、2つの電池部76a,76bで燃料供給口を共有しているバイオ燃料電池75の場合でも、供給燃料容器60を使用することにより、容易にかつ効率的に燃料溶液の交換を行うことができる。
【0057】
<5.第3の実施の形態>
[全体構成]
次に、本開示の第3の実施形態に係るバイオ燃料電池用燃料容器について説明する。図11(a)〜(c)は本実施形態の燃料容器の構成及び使用方法を模式的に示す図であり、図12はその応用例を示す図である。図11(a)〜(c)に示すように、本実施形態の燃料容器80は、燃料溶液貯留部が伸縮自在となっている。
【0058】
[使用方法]
この燃料容器80により、バイオ燃料電池70に燃料を供給する場合は、先ず、図11(a)に示すように、燃料溶液が貯留された燃料容器80を、バイオ燃料電池70の燃料供給口に連結する。そして、図11(b)に示すように、燃料容器80を縮小させて、燃料溶液をバイオ燃料電池70内に供給する。その後、バイオ燃料電池70では発電を開始するが、その間、燃料溶液を連結したままにしていてもよい。
【0059】
次に、バイオ電池内の使用済み溶液を回収する際は、図11(c)に示すように、再び燃料容器80を伸長させる。これにより、バイオ燃料電池70から使用済みの溶液が吸い出され、燃料容器80内に回収される。そして、この燃料容器80は、廃液と共に廃棄してもよいが、洗浄して再利用することも可能である。
【0060】
また、この燃料容器80は、図12に示すように、市販の飲料容器81に連結して使用することも可能である。その場合、燃料容器80を伸長させて、飲料容器81内の飲料を燃料容器80内に充填する。その後、燃料容器80とバイオ燃料電池70とを連結し、燃料溶液を圧縮させることにより、電池内に燃料溶液として飲料を注入する。
【0061】
このように、本実施形態の燃料容器は、手や衣類を汚すことなく、燃料の供給及び回収を行うことができる。また、燃料溶液に市販の飲料を使用する場合でも、飲料へのコンタミネーションを防止することができるため、飲料の一部を燃料用として燃料容器に移し、残りはそのまま飲むことも可能となる。更に、本実施形態の燃料容器は、伸縮性があるため、使用しないときは縮小させることでコンパクトに収容することができ、携帯性に優れる。更にまた、縮小させた状態であれば、バイオ電池に装着してもその携帯性を損なわないため、使用済み溶液を必要なときに回収し、燃料溶液を入れ替ることが可能となる。
【0062】
<6.第4の実施の形態>
[全体構成]
次に、本開示の第4の実施形態に係るバイオ燃料電池システムについて説明する。図13(a)及び(b)は本実施形態のバイオ燃料電池システムの構成及び燃料の供給・排出方法を模式的に示す図である。図13(a)及び(b)に示すように、本実施形態の燃料電池システムにおいては、燃料容器102とは別に、廃液を貯留する廃液容器103が設けられている。
【0063】
そして、燃料容器102はアダプタ104aを介して、バイオ燃料電池10の燃料溶液注入口12に連結され、廃液容器103はアダプタ104bを介して、バイオ燃料電池10の廃液排出口13に連結されている。そして、なお、本実施形態のバイオ燃料電池システムにおける上記以外の構成は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0064】
[使用方法]
このバイオ燃料電池システムにおいて、バイオ燃料電池10に燃料を供給する場合は、図13(a)に示すように燃料容器102を加圧するか、又は図13(b)に示すように廃液容器103を引圧すればよい。同様に、バイオ燃料電池10から燃料を取り出す場合も、燃料容器102を加圧するか又は廃液容器103を引圧すればよい。
【0065】
また、本実施形態のバイオ燃料電池システムでは、バイオ燃料電池10を使用しない時、即ち、発電しないときは、一時的に、燃料容器102に燃料溶液を戻す又は廃液容器103に燃料溶液を移してもよい。このように、電極部分から燃料を分離し、電極部分を乾燥させて保存することにより、電池の保存性及び安定性を向上させることができる。
【0066】
また、発電によって電極表面に生成する反応生成物は、燃料溶液中の拡散速度が比較的小さいため、反応生成物による酵素反応阻害などによってバイオ燃料電池10の性能が低下することがあるが、前述した方法で燃料溶液の注入や交換を行うことにより、電池性能を容易に回復することができる。なお、この使用方法は、前述した第1〜3の実施形態及びその変形例の燃料容器でも実施可能であり、その場合でも、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
本実施形態のバイオ燃料電池システムにおいては、バイオ燃料電池10を介して、燃料容器102と廃液容器103とが連通し、燃料溶液が一方向に流れる構成となっているため、燃料電池本体にポンプなどの燃料供給・排出用の機構を設けなくても、液の注入及び回収が可能である。また、この燃料電池システムは、1回の操作で、簡便にかつ作業者が手を汚すことなく、バイオ燃料電池10に燃料を供給したり、燃料交換を行ったりすることができる。更に、使用済みの廃液は、廃液容器103で分離・回収するため、廃棄する際も燃料が直接手に触れることがない。
【0068】
<7.第4の実施の形態の変形例>
[全体構成]
次に、本開示の第4の実施形態の変形例に係るバイオ燃料電池システムについて説明する。図14は本変形例のバイオ燃料電池システムの構成を模式的に示す図である。前述した第4の実施形態のバイオ燃料電池システムでは、燃料電池10に、燃料容器102及び廃液容器103を、それぞれ1個ずつ連結しているが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0069】
例えば、図14に示すように、燃料電池10のバイオ燃料電池10の燃料溶液注入口12に、アダプタ104cを介して、燃料容器112と、燃料以外の液体が貯留された液体供給容器113を連結することができる。この場合、例えば、燃料容器112に燃料又は燃料溶液を充填し、液体供給容器113に水又は緩衝溶液を充填する。これにより、燃料電池10内に任意の濃度やpHの燃料溶液を供給することが可能となる。
【0070】
[使用方法]
本変形例のバイオ燃料電池システムでは、バイオ燃料電池10に燃料を供給する場合は、燃料容器112及び液体供給容器113を加圧すればよい。その際、燃料容器112と液体供給容器113の押圧力や体積を調整することにより、燃料電池10に供給される燃料溶液の濃度やpHを変更することができる。一方、バイオ燃料電池10から燃料を取り出す場合は、廃液容器103を引圧すればよい。
【0071】
このように、本変形例のバイオ燃料電池システムにおいては、容易に燃料溶液の濃度やpHを調節することができる。なお、本変形例のバイオ燃料電池システムにおける上記以外の構成及び効果は、前述した第4の実施形態と同様である。
【0072】
<7.第5の実施の形態>
[全体構成]
次に、本開示の第5の実施形態に係るバイオ燃料電池システムについて説明する。図15(a)〜(d)は本実施形態のバイオ燃料電池システムの構成及び燃料の供給・排出方法を模式的に示す図である。図15(a)に示すように、本実施形態の燃料電池システムでは、廃液容器130がシリンジの形状をしている。
【0073】
[使用方法]
本実施形態のバイオ燃料電池システムにより燃料溶液を供給する際は、燃料電池10の廃液排出口123に、廃液容器(シリンジ)130を連結する。そして、図15(b)に示すように、燃料電池120の燃料溶液注入口122を、燃料容器(図示せず)に連結するか又は燃料容器内の燃料溶液に直接接触させて、廃液容器130のピストンを引く。これにより、廃液容器130内が陰圧となり、燃料電池120内に燃料溶液が吸引される。
【0074】
また、使用後は、図15(c)に示すように、廃液容器130のピストンを更に引き、燃料電池120内の廃液124を、廃液容器130内に吸い出す。その際、燃料容器を取り外しておき、燃料電池120内に空気が導入されるようにする。これにより、燃料電池120内を乾燥させることができる。更に、このバイオ燃料電池システムでは、図15(d)に示すように、燃料電池120から廃液容器130を取り外すことで、内部に貯留されている廃液124を容易に捨てることができる。
【0075】
本実施形態のバイオ燃料電池システムでは、廃液容器をシリンジ形状にしているため、電極部分から燃料を容易に分離することができると共に、燃料電池120内に空気取り入れることもできる。これにより、電極部分を乾燥させて保存することができるため、電池の保存性及び安定性を向上させることができる。また、1回の操作で、簡便にかつ作業者が手を汚すことなく、燃料の供給及び交換を行うことができ、更に、使用済みの廃液を廃棄する際も燃料が直接手に触れることがない。
【0076】
なお、本実施形態のバイオ燃料電池システムにおける上記以外の構成及び効果は、前述した第4の実施形態と同様である。
【0077】
<8.第6の実施の形態>
[全体構成]
次に、本開示の第6の実施形態に係るバイオ燃料電池システムについて説明する。図16は本実施形態のバイオ燃料電池システムの構成及び動作を模式的に示す図である。図16に示すように、本実施形態のバイオ燃料電池システムでは、電極に存在している酵素の種類が異なる複数のバイオ燃料電池150,160,170が設けられている。
【0078】
各燃料電池は、直列状に配置され、一方の廃液排出口と他方の燃料溶液注入口とが連結されている。また、その両端には、燃料容器142と廃液容器143が連結されている。具体的には、燃料電池150の廃液排出口153に燃料電池160の燃料溶液注入口162が連結され、燃料電池160の廃液排出口163には燃料電池170の燃料溶液注入口172が連結されている。そして、燃料電池150の燃料溶液注入口152には燃料容器142が連結され、燃料電池170の廃液排出口173には廃液容器143が連結されている。
【0079】
[動作]
本実施形態のバイオ燃料電池システムの場合、例えば、燃料電池150での反応で生じた反応生成物を、燃料電池160において燃料として使用し、更に、燃料電池160の反応で生じた反応生成物を燃料電池170において燃料として使用する。例えば、燃料がグルコースである場合、燃料容器142を押圧することにより、燃料容器142に貯留されているグルコースを含む燃料溶液144が、燃料電池150に供給される。
【0080】
そして、燃料電池150において、電極に存在するグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)等の酵素により、グルコースが酸化され、グルコノラクトン(D−グルコノ−δ−ラクトン)が生成すると共に電子が取り出される。燃料電池150において使用後のグルコノラクトン又はD−グルコン酸を含有する廃液は、燃料溶液145として燃料電池160に供給され、燃料電池160において、電極に存在するグルコン酸5−5デヒドロゲナーゼなどの酵素によって酸化されて、5−デヒドロ−D−グルコン酸が生成すると共に電子が取り出される。
【0081】
同様に、この5−デヒドロ−D−グルコン酸を含む廃液は、燃料溶液146として燃料電池170に供給され、燃料電池170において、電極に存在する酵素によって酸化されて電子が取り出される。この酵素反応を順次行うことで、最終的には、グルコースなどの燃料を、二酸化炭素(CO)まで分解することができる。そして、このバイオ燃料電池システムでは、最終生成物である二酸化炭素は、大気中に放出することなく、廃液容器143に分離・回収することが可能である。
【0082】
更に、本実施形態のバイオ燃料電池システムの各燃料電池150,160,170は、直列状に配置した状態で使用することができるが、燃料交換を行った後で連結を解除し、個別に使用することもできる。また、各燃料電池150,160,170を直列又は並列に接続して使用することも可能である。
【0083】
本実施形態のバイオ燃料電池システムでは、燃料を多段階で酸化し、その段階毎に発電を行うことで、これまで廃棄していた反応生成物を、燃料として使用することができる。これにより、廃液量を低減することができると共に、酵素反応の効率及び燃料の利用効率を向上させることができる。
【0084】
なお、本実施形態のバイオ燃料電池システムにおける上記以外の構成及び効果は、前述した第4の実施形態と同様である。また、本実施形態のバイオ燃料電池システムは、前述した第1〜3の実施形態及びその変形例の燃料容器を適用することも可能であり、その場合でも、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
本開示は、以下のような構成もとることができる。
(1)
表面に酵素が存在する電極を備えたバイオ燃料電池に使用される燃料溶液が貯留される燃料溶液貯留部と、
前記バイオ燃料電池で使用された後の溶液が貯留される廃液貯留部と、
前記燃料溶液の排出及び前記使用後の溶液の吸引を行う送液機構と、を備え、
前記燃料溶液貯留部の燃料溶液を前記バイオ燃料電池に注入すると共に、該バイオ燃料電池内の使用後の溶液を前記廃液貯留部に回収するバイオ燃料電池用燃料容器。
(2)
前記燃料溶液貯留部が前記バイオ燃料電池の燃料注入口に連結され、
前記排液貯留部が前記バイオ燃料電池の廃液排出口に連結される(1)に記載のバイオ燃料電池用燃料容器。
(3)
前記燃料貯留部及び前記廃液貯留部は、その内部に貯留される液の量に応じて容積が変化する(1)又は(2)に記載のバイオ燃料電池用燃料容器。
(4)
前記送液機構がポンプである(1)〜(3)のいずれかに記載のバイオ燃料電池用燃料容器。
(5)
前記燃料貯留部には、燃料溶液の1回分の供給量を計量する計量部が設けられている(4)に記載のバイオ燃料電池用燃料容器。
(6)
(1)〜(5)のいずれかに記載のバイオ燃料電池用燃料容器を備えたバイオ燃料電池システム。
(7)
表面に酸化還元酵素が存在する電極を備えたバイオ燃料電池と、
前記バイオ燃料電池の燃料注入口に連結された燃料供給容器と、
前記バイオ燃料電池の燃料排出口に連結された廃液回収容器と、を有し、
前記燃料供給容器と、廃液回収容器とは、前記バイオ燃料電池を介して連通されており、前記燃料供給容器を加圧するか、又は前記廃液回収容器を引圧することにより、前記燃料供給容器内の燃料が前記バイオ電池内に導入されるバイオ燃料電池システム。
(8)
前記バイオ燃料電池の燃料注入口には、燃料以外の液体が貯留された液体供給容器が連結されており、前記燃料と前記液体の混合物がバイオ燃料電池に供給される(7)に記載のバイオ燃料電池システム。
(9)
電極に存在している酵素の種類が異なる複数のバイオ燃料電池が、一方の廃液排出口と他方の燃料溶液注入口とを連結することにより、直列状に配置されている(6)〜(8)のいずれかに記載のバイオ燃料電池システム。
【符号の説明】
【0086】
1、20、40、45、46、50、60、80、102、112、142 燃料容器
2、42、52 燃料溶液貯留部
3、43、53 廃液貯留部
4 燃料溶液排出口
5 廃液回収口
6 注入用管
7 回収用管
8、9、14、15、62,73 コック
10、30、70、75、120、150、160、170 燃料電池
11、71 燃料タンク
12、72、122、152、162、172 燃料溶液注入口
13、123、153、163、173 廃液排出口
16 逆止弁
31 玩具
41、51 ポンプ
52a 計量部
61 送排液口
76a、76b 電池部
81 飲料容器
103、130、143 廃液容器
104a〜104c アダプタ
113 液体供給容器
124 廃液
131 ピストン
144〜146 燃料溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酵素が存在する電極を備えたバイオ燃料電池に使用される燃料溶液が貯留される燃料溶液貯留部と、
前記バイオ燃料電池で使用された後の溶液が貯留される廃液貯留部と、
前記燃料溶液の排出及び前記使用後の溶液の吸引を行う送液機構と、を備え、
前記燃料溶液貯留部の燃料溶液を前記バイオ燃料電池に注入すると共に、該バイオ燃料電池内の使用後の溶液を前記廃液貯留部に回収するバイオ燃料電池用燃料容器。
【請求項2】
前記燃料溶液貯留部が前記バイオ燃料電池の燃料注入口に連結され、
前記排液貯留部が前記バイオ燃料電池の廃液排出口に連結される請求項1に記載のバイオ燃料電池用燃料容器。
【請求項3】
前記燃料貯留部及び前記廃液貯留部は、その内部に貯留される液の量に応じて容積が変化する請求項1に記載のバイオ燃料電池用燃料容器。
【請求項4】
前記送液機構がポンプである請求項1に記載のバイオ燃料電池用燃料容器。
【請求項5】
前記燃料貯留部には、燃料溶液の1回分の供給量を計量する計量部が設けられている請求項4に記載のバイオ燃料電池用燃料容器。
【請求項6】
請求項1に記載のバイオ燃料電池用燃料容器を備えたバイオ燃料電池システム。
【請求項7】
表面に酸化還元酵素が存在する電極を備えたバイオ燃料電池と、
前記バイオ燃料電池の燃料注入口に連結された燃料供給容器と、
前記バイオ燃料電池の燃料排出口に連結された廃液回収容器と、を有し、
前記燃料供給容器と、廃液回収容器とは、前記バイオ燃料電池を介して連通されており、前記燃料供給容器を加圧するか、又は前記廃液回収容器を引圧することにより、前記燃料供給容器内の燃料が前記バイオ電池内に導入されるバイオ燃料電池システム。
【請求項8】
前記バイオ燃料電池の燃料注入口には、燃料以外の液体が貯留された液体供給容器が連結されており、前記燃料と前記液体の混合物がバイオ燃料電池に供給される請求項7に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項9】
電極に存在している酵素の種類が異なる複数のバイオ燃料電池が、一方の廃液排出口と他方の燃料溶液注入口とを連結することにより、直列状に配置されている請求項7に記載のバイオ燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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