説明

バイポーラ板として有用である多孔質構造及びその作成方法

本発明は、多孔質の炭素繊維マトリクス(15)を有することを特徴とする多孔質構造に係る。該多孔質マトリクスは、密封層(19,23)によってその面(17,21)のうち1つで範囲を定められる。該密封層は、炭素繊維、炭素ナノチューブ、ガラス性炭素から選択された要素で作られ、炭素炭素結合によって多孔質マトリクスに対して固定される。本発明はまた、かかる多孔質構造を作る方法に係る。本発明は、燃料電池及び熱交換器に対して適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特には燃料電池装置においてバイポーラ板又は電極/バイポーラ板の組立体として使用され得る多孔質構造に係る。
【0002】
本発明はまた、かかる多孔質構造を製造する工程に係る。
【0003】
本発明の一般的な分野は、燃料電池、特には固体ポリマ電解質の種類の燃料電池の分野として定義付けられ得る。
【背景技術】
【0004】
燃料電池は、互いの上部上に積み重ねられる複数の電池要素を一般的に有する組立体である。燃料電池の各電池要素においては、電気化学反応は、継続的に電池要素へと取り込まれる2つの反応物質の間に作られる。通常使用される燃料は、水素又はメタノールであり、夫々、水素/酸素型(PEMFC型の電池)の混合を有して動作する電池であるか、又は、メタノール/酸素型(DMFC型の電池)の混合を有して動作する電池であるか、に依存する。
【0005】
燃料は、陰極と接触するようにされる一方、この場合は酸素である酸化剤は陽極と接触するようにされる。
【0006】
陽極及び陰極は、イオン交換膜型の電解質によって分けられる。
【0007】
陰極では、例えば水素である燃料は、次の式、
2H → 4H + 4e
によって表される酸化反応を受ける。
【0008】
陽極では、一般的には酸素である酸化剤は、次の式、
+ 4H + 4e→ 2H
によって表される還元反応を受ける。
【0009】
したがって電気化学反応が発生し、その作られるエネルギは、電力へと転換される。陽子Hは、陰極から陽極に向かって流れ、電解質を通る。陰極で作り出される電子は、電力の生成に寄与するよう外部回路を介して陽極に伝達される。
【0010】
同時に、陽極では、水が作り出され、電極/膜/電極のユニットから取り除かれる。
【0011】
従来技術による燃料電池においては、複数の電極/膜/電極のユニットは、これらのユニットのうちの1つのみによって送られたものより大きい電力を得るよう、1つが他の上部上に積み重ねられる。これらのユニット間の電気的導通及び配電は、導電板を用いて一般的には行われる。該板は、バイポーラ板とも称される。
【0012】
従ってこれらのバイポーラ板を用いることによって、1つのユニットの陽極は、近接するユニットの陰極に対して接続され得る。これらのバイポーラ板は、燃料電池の効率性に対して不利である抵抗損を避けるよう、可能な限り最も高い導電率を更に与える。
【0013】
バイポーラ板は、また、配電を与える機能以外の機能を実行しなければならない。
【0014】
これは、第1のユニットの陰極及び近接する第2のユニットの陽極が、例えばこれらのバイポーラ板を介して反応剤を継続的に供給されなければならないためであり、その場合、前出の板は続いて反応剤送出の役割を果たす。
【0015】
加えて、バイポーラ板はまた、余分な水を取り除く要素を組み入れることによって陽極での製品の抽出に役立つ。
【0016】
バイポーラ板は、電極/膜/電極のユニットのスタック内でのいかなる過熱にも対処する役割を果たす熱交換器を更に組み入れ得る。
【0017】
最後に、これらのバイポーラ板の他の機能は、特に1つが他の上部上に積み重ねられる際に、電極/膜/電極のユニットに機械的全体性を与えるようにされ得る、ことが留意される。かかる組立体は、電池の全体的な容積に小さな厚さを与え、これは、例えば電気自動車における用途等の対象とする用途に非常に適合する。
【0018】
従来技術においては、多種のバイポーラ板構造は、反応剤を供給するよう存在する。
【0019】
第1の構造は、経路がバイポーラ板の少なくとも1つの面上で機械加工される。これらの経路は、接触する電極の面の上方に可能な限り均質に反応剤を供給するよう設計される。
【0020】
これらの経路は、通常、これらの経路へと注入される反応剤が電極の面の大部分にわたって蛇行するようにされる。かかる結果を得るよう使用される手段は、180°下向きエルボによって間を空けられた水平断面である。これらの断面が陽極で作り出された水を取り戻すこと及び取り除くこともできることが、留意されるべきである。
【0021】
しかしながら、この手段の特別な配置は、産業上の利用に対して適切である電気化学転換効率をもたらすのに十分広い変換範囲を与えない、ことが分かっている。
【0022】
この問題点を緩和するよう、他の構造が従来技術において提案されている。
【0023】
この構造においては、高い気孔率を有する金属発泡体は、機械的機構が作られる金属部分に接続されるよう使用される。この金属発泡体は、反応剤が適切に供給され、多種の製品が取り除かれることを確実とする。
【0024】
しかしながら、金属発泡体をバイポーラ板に接続するという事実は、高い抵抗の生成に寄与し、ユニット内の電気伝導における低減に繋がる。
【0025】
電気伝導に関連された問題は、金属発泡体を圧縮することによって部分的に解決され得るものの、この型の燃料電池の環境の非常に腐食性のある化学的性質によって、及び、特に金属発泡体内のストランド破損等の多くの不具合の存在によって、非腐食性被覆剤を使用しても腐食の問題は存続する、ことが結果的に判明する。
【0026】
したがって、従来技術においてバイポーラ板として使用される構造は全て、以下の問題点、
・ 該構造は、流体を供給されるべき要素と構造との間の交換に対する不十分な範囲により、反応剤の効果的な供給を可能としない、こと、
・ 該構造は、可能な限り異なる材料でできた複数の部品を有し得るという事実により、接触抵抗及び腐食の問題をもたらす、こと、
のうち1つ又はそれ以上を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって本発明は、特にはバイポーラ板及び電極/バイポーラ板の組立体を形成するよう使用され得る多孔質構造を提案することを目的とする。
【0028】
本発明はまた、かかる多孔質構造を製造する工程を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
故に、第1の目的によれば、本発明は、多孔質の炭素繊維マトリクスを有する多孔質構造に係る。前出の多孔質マトリクスは、その面のうちの少なくとも1つの上で、炭素繊維、炭素ナノチューブ、ガラス性炭素、又はこれらの組合せから選択された炭素要素でできている不浸透層によって固定され、前出の不浸透層は、炭素炭素結合を介して多孔質マトリクスに接続される。
【0030】
かかる多孔質構造は、以下の、
・ 炭素のみを有するため、この構造は、従来技術の多孔質構造が有さない電気的導通、優れた導電率、及び高い化学的不活性を有すること、
・ この構造の部分(マトリクス及び不浸透層)が炭素炭素結合を除く機械的手段によって接続されなくなっているため、この構造は、流体の流れに対して使用される際に、流体漏れの問題は有さないこと、
・ 上述された同一の理由で、本発明の多孔質の構造の多種の構成部品が同一の材料(炭素)でできており炭素炭素結合によって共に接続されるという事実により、電気伝導に対して使用される際に、従来技術の構造において固有の接触抵抗が存在しない限りにおいては、本発明の多孔質構造は、電圧降下の影響を受けやすくはないこと、及び、
・ 最終的に、多孔質構造を有するよう上述された通りの炭素要素のみを使用するという事実は、後者の寸法及び重量の低減を可能にすること、
である利点を有する。
【0031】
第2の目的によれば、本発明は、既に定義付けられた通り多孔質構造を製造する工程に係る。該工程は、
1) 炭素繊維マトリクスの1つの面上又は2つの対向する面上での、炭素繊維及び炭素ナノチューブから選択された炭素要素の成長、及び、その後に続く前出の炭素要素の緻密化によって、及び/又は、
2) 炭素要素がガラス性炭素である際の炭素繊維マトリクスの1つの面上又は2つの対向する面上でのガラス性炭素の形成によって、
前出の不浸透層を作り出す段階を有する。
【0032】
故に、本発明の工程は、以下の、
・ 従来技術の工程とは異なり、かかる多孔質領域は異なる種類の材料の重ね合せによって設計されない限りにおいて、多孔質領域の設計を単純化すること、
・ 多孔質領域の多種の構成部分の気孔率が制御され得ること、
・ 全て炭素に基づく使用される材料の結果、優れた化学的、電気化学的及び熱的安定性を示す領域を得ることを可能にすること、及び、
・ 継続的な製造ラインにおいて実行され得る段階を有すること、
である利点を有する。
【0033】
最後に、第3の目的によれば、本発明は、本発明に従った多孔質構造を有するバイポーラ板又は電極/バイポーラ板の組立体に係る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の他の利点及び特徴は、以下の非制限的な詳細の説明において明らかとなる。
【0035】
上述された通り、本発明は、バイポーラ板として及び/又は電極/バイポーラ板組立体として使用され得る多孔質構造に係る。
【0036】
故に、多孔質構造は、多孔質炭素繊維マトリクスを有する。該多孔質マトリクスは、その面のうちの少なくとも1つの上で、炭素繊維、炭素ナノチューブ、ガラス性炭素、又はこれらの組合せから選択された炭素要素でできている不浸透層によって固定され、該不浸透層は、炭素炭素結合を介して多孔質マトリクスに接続される。
【0037】
本発明によれば、多孔質構造は、一般的には全体的に開口の多孔を有する、ことが指摘されるべきである。
【0038】
「多孔質炭素繊維マトリクス」という語は、前述及び以下においては、炭素繊維ストランドの絡み合いを有する可撓性の部品を意味し、絡み合いの度合いは、所望される気孔率に依存する、ことが示されるべきである。
【0039】
多孔質マトリクスは、不浸透層、即ち、気体及び液体に対して不浸透性である層によって、その面のうち少なくとも1つの上で固定される。この不浸透層は、炭素繊維、炭素ナノチューブ、及びガラス性炭素から選択された炭素要素で作られること、及び、炭素炭素結合を除いて機械的手段によっては多孔質マトリクスに対して接続されないこと、である特別な特徴を有する。
【0040】
結果として、多孔質構造は、従来技術の多孔質構造の場合と同様に、特には多孔質構造がバイポーラ板として使用される際に、電圧降下に関する接触抵抗を有さない構成部品を有する。
【0041】
本発明の多孔質構造の想定される使用に依存して、これらは多種の形態を有し得る。
【0042】
故に、特に図1中に図示される第1の実施例によれば、多孔質構造1は、不浸透層7によって第1の面5上で、及び、また、炭素繊維および炭素ナノチューブから選択された炭素要素でできた多孔質層11によって第2の面9上で、固定される多孔質炭素繊維マトリクス3を有し、上述された特徴を示す。前出の多孔質層11は、多孔質マトリクス2に対して炭素炭素結合によって接続される。多孔質層は、この層が置かれるようにされた使用に依存して所定の気孔率を有する、ことが理解される。
【0043】
図2中の第2の実施例によれば、多孔質構造13は、不浸透層19によって第1の面17上で、及び他の不浸透層23によって第1の面に対向する第2の面21上で固定された多孔質マトリクス15を有する。前出の不浸透層19,23は、上述された通りである。
【0044】
本発明の多孔質構造はまた、炭素繊維及び炭素ナノチューブから選択された炭素要素でできた多孔質層を上述された不浸透層上及び/又は多孔質マトリクスの面上に有し得、図3及び図4中に特に図示される。
【0045】
故に、図3は、図1中に示す通り、不浸透層29によって面39上で、及び多孔質層31によって対向する面32上で固定された多孔質マトリクス27、並びに、前出の不浸透層29上の他の多孔質層33を有する。
【0046】
図4は、多孔質構造35を図示する。該構造は、多孔質マトリクス37のいずれかの面上の2つの不浸透層39,41によって2つの対向する面40,42上で固定された多孔質マトリクス37を有し、不浸透層に対して、2つの多孔質層43,45は、炭素炭素結合によって固定される。
【0047】
実施例のうちいずれか1つによれば、多孔質構造は、上述された多孔質層上に蒸着された(図1、図5及び図6中で夫々参照符号12を有する)活性層を有し得る、ことが留意されるべきである。
【0048】
上述された多種の単純な構造は、より複雑な構造を与えるよう組み合わされ得る、ことが理解されるべきである。
【0049】
故に、図5は、図1中に図示される通り、不浸透層7を介して共に接続される2つの多孔質構造をもたらす複雑な多孔質構造に対応する。
【0050】
図6は、不浸透層(7,19,23)を介して図1に従った2つの多孔質構造1に接続される図2に従った多孔質構造13をもたらす複雑な多孔質構造に対応する。
【0051】
本発明の多孔質構造は、バイポーラ板として、及び/又は電極/バイポーラ板組立体として使用され得る。本発明の多孔質構造はまた、熱交換器において使用され得る。
【0052】
バイポーラ板は、燃料電池の2つの近接する電池要素の対向する極性を物理的に離す一方、電気的導通を確実にする構成部品であることが再度考慮される。バイポーラ板は、その分離の役割に加えて、適切な反応剤(すなわち燃料又は酸化剤)を上述された電極に対して与える役割を実行し得る。
【0053】
電極/バイポーラ板組立体は、上述されたバイポーラ板と電極の少なくとも一部分、即ち、(可能であれば上述された多孔質層に対応する)反応剤拡散域と(可能であれば上述された活性層に対応する)光学的に活性の領域の組合せをもたらす組立体である。「活性層」という語は、本発明に従って、問題となっている電極で適切な電気化学反応を触媒することができる少なくとも1つの触媒を有する層であることを意味すると理解される、ことが示されるべきである。
【0054】
故に、図1、及び、図4ないし図6中に図示される多孔質構造は特に、バイポーラ板として、及び/又は電極/バイポーラ組立体として使用され得る。
【0055】
故に、図1中に図示される構造は、前出の組立体が電池要素のスタックを有して燃料電池へと組み込まれるよう意図される際にスタックの端部に位置付けられた電極/バイポーラ板組立体に対応し得る。この場合、不浸透層7及び多孔質マトリクス3は、半分の板に対応し、1つの電極上にのみ基礎を置かれる限りにおいては、多孔質層11は、電極反応剤拡散領域に対応し、触媒層12は、電極の活性領域に対応する。
【0056】
図4中に図示される構造は、冷却回路を有するバイポーラ板に対応し得る。該構造においては、
・ 多孔質マトリクス37は、冷却剤循環領域に対応し、
・ 多孔質層43,45は、反応剤供給領域に対応し、また、
・ 不浸透層39,41は、反応剤供給領域から冷却剤循環領域を分ける。
【0057】
図5中に図示される多孔質構造は、冷却回路を有さない電極/バイポーラ板組立体に対応し得る。該構造においては、
・ 多孔質マトリクス3は、反応剤供給領域に対応し、
・ 多孔質層11は、2つの近接する電池要素に属する電極に対して拡散域に対応し、
・ 活性層12は、2つの近接する電池要素に属する電極の活性領域に対応し、また、
・ 不浸透層7は、2つの反応剤供給領域を分ける。
【0058】
図6中に図示される構造は、電極/バイポーラ板組立体に対応し得る。該組立体においては、
・ 多孔質マトリクス15は、冷却剤循環領域及び多孔質マトリクス3は、2つの反応剤供給領域に対応し、
・ 多孔質層11は、2つの近接する電池要素に属する電極に対する拡散領域に対応し、
・ 活性層12は、2つの近接する電池要素に属する電極の活性領域に対応し、また、
・ 不浸透層7,19,23は、2つの反応剤供給領域から冷却剤循環領域を分ける。
【0059】
図2中に図示される構造は、バイポーラ板に対応し得、
・ 多孔質マトリクス15は、冷却剤循環領域に対応し、また、
・ 不浸透層19及び23は、燃料電池の2つの近接する電池要素の2つの電極の間に分離を与え得る。
【0060】
最後に、図3中に図示される構造は、冷却回路を有さない電極/バイポーラ板組立体に対応し得、
・ 多孔質構造27及び多孔質層31は、反応剤供給領域に対応し、
・ 多孔質層33は、上述された供給領域とは異なる反応剤供給領域に対応し、また、
・ 不浸透層29は、2つの上述された供給領域を分ける。
【0061】
上述された多種の形態に対して、いずれの多孔質層内の気孔率も、この多孔質層が置かれる使用に依存して変化し得る、ことが理解されるべきである。2つの離れた多孔質層の間の気孔率はまた、これらの多孔質層が気体(O等)の供給に対して設けられるか、あるいは、液体(メタノール等)の供給に対して設けられるかに依存して異なり得る。
【0062】
上述された通り、本発明は、既に定義付けられた通りの多孔質構造等を製造する工程に係る。該工程は、炭素繊維マトリクスの1つの面上又は2つの対向する面上での炭素要素の成長によって、及びその後に続く(これらの炭素要素が炭素繊維または炭素ナノチューブである際の)前出の炭素要素の緻密化又はガラス性炭素によって、前出の不浸透層を製造する段階を有する。
【0063】
本発明によれば、「炭素繊維マトリクス」という語は、炭素繊維の絡みをもたらす構成部品を意味するよう理解されることが示されるべきであり、該絡みの密度は、所望の気孔率に依存して変化する。
【0064】
繊維炭素マトリクスは、市販のものであり得るか、あるいは例えば炭素繊維のニードル・パンチによって予め製造され得る。ニードル・パンチ技術は、ニードル・パンチャーを使用して空間における3つの方向においてフリースの繊維を機械的に絡ませることに存する。絡ませる操作は、所望の気孔率に従って制御されることが可能である。
【0065】
不浸透層を作る段階は、これらの不浸透層が、炭素繊維マトリクスにおいて、より正確にはこの炭素繊維マトリクスの構成開口において、完全に又は部分的に固定されるよう実行される。故に、不浸透層によって面のうち少なくとも1つの上で固定される(炭素繊維マトリクスの構造によって形成された)多孔質領域である。該領域は、前出のマトリクスの開口を貫通し、結果としてもたらされる構成部品は、故に、「一個構成(one−part)」の部品であり、即ち、該構成部品は、結果として、例えば溶接によって共に合わせられた複数の部分を形成せず、上述された通り、この種類の構成部品において固有の問題点を有さない。
【0066】
故に、かかる不浸透層は、炭素要素が炭素繊維又は炭素ナノチューブである際に、炭素繊維マトリクスの面のうち少なくとも1つの上での炭素要素の成長、及びその後に続く前出の炭素要素の緻密化によって得られ得る。かかる不浸透層はまた、炭素繊維マトリクスの面の少なくとも1つの上でガラス性炭素の形成によって得られ得る。また、不浸透層が炭素繊維又は炭素ナノチューブ、及びガラス性炭素等のいずれの炭素要素をも有する際に、炭素要素の成長とガラス性炭素の形成の両方を組み合わせることが、考えられ得る。
【0067】
炭素要素が炭素繊維である際、前出の炭素繊維を成長させる段階は、炭素繊維の前駆繊維をパイロライズすることに存し得る。該前駆繊維は、可能であれば、ピッチから得られる繊維又はポリアクリロニトリル(PAN)系繊維等のポリマ繊維である。熱分解段階は、次の、
・ 炭素繊維マトリクスの適切な面を石油ピッチ又は適切なモノマで含浸する段階、
・ 前駆繊維がポリマ繊維である場合、前出のモノマを重合させ、続いて適切なポリマ繊維を得るようスピニング操作をする段階、あるいは、
・ 前駆繊維がピッチ繊維である場合、ピッチ繊維を得るためのスピニング段階、
によって先行される。
【0068】
スピニング操作は、十分に絡められた繊維の網状組織を得るように実行され、熱分解の最後には、結果としてもたらされる層は不浸透層であるようにされる。
【0069】
炭素ナノチューブを成長させる段階は、仏国特許発明第2 844 510号明細書において定義付けられた工程を使用して炭素繊維マトリクス上で実行され得る。この工程は、次の、
・ マトリクスの適切な面を硝酸塩又は酢酸塩の形状におけるCo,Ni又はFe等のナノチューブの成長に対する金属触媒である1つ又はそれ以上の塩を有する水溶液で含浸する段階、
・ 例えば100℃乃至250℃の温度まで浸透されたマトリクスを過熱することによる熱処理によって、前出の塩を酸化物へと分解する段階、及び、
・ マトリクスが、気体前駆物質の分解(クラッキング)によって炭素の形成を可能とする温度まで加熱された炉において、気体炭素前駆物質と接触するようにすることによって炭素ナノチューブを合成する段階、
を特に有する。
【0070】
気体前駆物質は、芳香族炭化水素又は非芳香族炭化水素であり得る。例えば、アセチレン、エチレン、プロピレン、又はメタンが使用され得る。クラッキングに対して所望される炉温は、450℃乃至1200℃の範囲であり得る。
【0071】
仏国特許発明第2 844 510号明細書中に説明される通り、(不浸透層が炭素繊維または炭素ナノチューブで作られているかを問わず)得られた構造は、続いて、液体処理又は化学蒸気浸透法によって緻密化される。
【0072】
ガラス性炭素の形成段階は、フラン樹脂又はフェノール樹脂を有する適切な面上で炭素繊維マトリクスを浸透することによって、また、それに続いて熱分解の段階によって実行され得る。
【0073】
本発明の多孔質構造が、布地で作られている、あるいは、不浸透層上に蒸着される1つ又はそれ以上のマトリックス固定多孔質層を有する。該多孔質層は、炭素繊維及び炭素ナノチューブ等の炭素要素の成長によって得られ得、成長は、この成長後に所望の気孔率を有する層を得るよう制御される。
【0074】
多孔質構造はまた、触媒ベースの活性層を有する。該層は、適切な触媒を有する懸濁液を噴霧すること又はコーティングすること等の活性層の製造において従来用いられた技術によって得られ得る。かかる懸濁液は、白金炭素の懸濁液であり得る。
【0075】
故に、上述された特徴により、本発明の多孔質構造は、定義付けられた気孔率を有する多種の領域の存在に依存して、燃料電池、バイポーラ板として低温で動作するPEMFC又はDMFC型及び中間温度で動作する電池(250℃で動作するリン酸電池等)の分野においてだけではなく、熱交換器の分野においても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に従った多種の多孔質構造の断面図である。
【図2】本発明に従った多種の多孔質構造の断面図である。
【図3】本発明に従った多種の多孔質構造の断面図である。
【図4】本発明に従った多種の多孔質構造の断面図である。
【図5】本発明に従った多種の多孔質構造の断面図である。
【図6】本発明に従った多種の多孔質構造の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の炭素繊維マトリクス(3,15,27,37)を有する多孔質構造であって、
前記多孔質マトリクスは、その面(5,17,21,30,40,42)のうちの少なくとも1つの上で、炭素繊維、炭素ナノチューブ、ガラス性炭素、又はこれらの組合せから選択された炭素要素でできている不浸透層(7,19,23,29,39,41)によって固定され、
前記不浸透層は、炭素炭素結合を介して前記多孔質マトリクスに接続される、
多孔質構造。
【請求項2】
前記多孔質マトリクス(3)は、請求項1において定義付けられる通り、前記不浸透層(7)によって第1の面(5)上で固定され、炭素繊維及び炭素ナノチューブから選択された炭素要素でできている多孔質層(11)によって前記第1の面(5)に対向する第2の面(9)上で固定され、
前記多孔質層は、炭素炭素結合を介して前記多孔質マトリクスに接続される、
請求項1記載の多孔質構造。
【請求項3】
前記多孔質マトリクス(15)は、前記不浸透層(19)によって第1の面(17)上で、及び、他の前記不浸透層(23)によって前記第1の面(17)に対向する第2の面(21)上で固定され、
前記不浸透層は、請求項1で定義付けられた通りである、
請求項1記載の多孔質構造。
【請求項4】
前記不浸透層(29,39,41)上及び/又は前記多孔質マトリクス(27)の1つの面(32)上で、炭素繊維及び炭素ナノチューブから選択された炭素要素でできた多孔質層(31,33,43,45)を更に有する、
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の多孔質構造。
【請求項5】
前記多孔質層(11)上に活性層(12)を更に有する、ことを特徴とする、
請求項2記載の多孔質構造。
【請求項6】
バイポーラ板又は電極/バイポーラ板の組立体であって、
請求項1乃至5のうちいずれか一項において定義付けられる多孔質構造を有する、
バイポーラ板又は電極/バイポーラ板の組立体。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか一項において定義付けられる多孔質構造を製造する方法であって、
1) 炭素繊維マトリクスの1つの面上又は2つの対向する面上での、炭素繊維及び炭素ナノチューブから選択された炭素要素の成長、及び、その後に続く前記炭素要素の緻密化によって、及び/又は、
2) 前記炭素要素がガラス性炭素である際、炭素繊維マトリクスの1つの面上又は2つの対向する面上でのガラス性炭素の形成によって、
前記不浸透層を作り出す段階を有する、ことを特徴とする、
工程。
【請求項8】
前記炭素繊維のニードル・パンチングによって前記炭素繊維マトリクスを作り出す段階を有する、
請求項7記載の製造工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−500118(P2007−500118A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521637(P2006−521637)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050362
【国際公開番号】WO2005/013398
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(500106374)
【Fターム(参考)】